2021.10.31 Inter FM「Daisy Holiday!」より


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H:はい、こんばんは。細野晴臣です。えー、きょうはですね…ゲストがいらっしゃってます。『NO SMOKING』、そして今度の『SAYONARA AMERICA』。僕のライヴの映画を監督して頂いた…

佐渡:あ、佐渡岳利と申します。きょうはちょっと、末席を汚させて頂きます(笑)

H:なに言ってんだい(笑)

佐渡:光栄なお話でございますが…

H:いやいやいや…もう随分、長い付き合いになりますよね。

佐渡:そうですね。

H:だって『イエローマジックショー』からだもんね。

佐渡:2000年ですね。

H:あれ2000年?そうかそうか…随分経ったなぁ。あれは何本作ったかな。

佐渡:あれは3つまでですね。

H:3つやったんだ。それで…最初の時は僕、認識がないんだよな。

佐渡:『イエローマジックショー』の時ですか?

H:うん。あれ…あの時って大物プロデューサーがいましたよね?湊さん(湊剛)という…

佐渡:いましたね(笑)

H:いやいや、ユニークな人がいたなぁ、NHK

佐渡:そうですね。濃い方がいっぱいいたのがどんどんいなくなって、今は薄い…(笑)

H:薄い世代になってきた?(笑)自分自身はどうなんですか?

佐渡:僕は中間ぐらいですね。

H:なるほどね。忙しいでしょう?今はなにを手掛けてますか?

佐渡:今は配信系の…某配信者のものとか。あと番組ももちろんやらせて頂いたりとか。

H:だいたい人気アーティストを手掛けてますよね。

佐渡:え、僕ですか?

H:そう。僕以外ね。Perfumeとか。

佐渡:ああ、そうですね。

H:…あとはよく知らないんですけど(笑)

佐渡:(笑)

H:いやー…だって紅白もやってたでしょう?

佐渡:紅白は毎年やってるんですよ。僕らの部署は必ずほぼ全員参加になるので…

H:あ、そうなんだ。とにかく音楽担当ですよね。

佐渡:そうですね、音楽番組をやらせて頂いてます。

 

H:それで、僕の今回のライヴ…随分前からやってますよね。ずーっとカメラ持って僕を追っかけてたでしょう?

佐渡:イヤだったんじゃないですか?

H:イヤだった(笑)

佐渡:(笑)

H:でも、その記録がすごいなぁと思って。全部は見てないですけどね。今回のライヴはどうでした?

佐渡:外国のですか?これはすごかったと思います。

H:現場にいて撮ってた…じゃあずっとカメラから見てたんですね?

佐渡:そうですね、カメラも見てましたけど…やっぱりお客さんの盛り上がりとかわかるので。

H:そっか。

佐渡:前にもお伝えしたかもしれないですけど、こういう仕事をやっていると時々「おお、来た!」という感じの時があるんですよ。身体が揺さぶられるというか、魂が鷲掴みにされる瞬間ってほんとに少なくあるんですけど。もう、グッと…

H:来ました?

佐渡:来ましたね。

H:勘違いじゃなくて?(笑)

佐渡:勘違いではないと思いますね(笑)

H:どこで来たんだろう?

佐渡:ニューヨークでもロスでも来ましたね…

H:そうですか。やっぱり終盤のほうかな?

佐渡:そうですね。終盤に盛り上がってくると、お客さんのテンションもどんどん盛り上がってくるから…そういうのに呼応されてるというのもあると思うんですけど。自分がそういう風に感じたということはお客さんもそう感じたんじゃないかな、とは思いますね。波形というのかな、波がドーン!と来る感じ。

H:なるほど。その場にいないとそれはわからないよね。で、やってるほうもわからない(笑)

佐渡:あれ、やってるほうはなにか感じられるんじゃないですか?

H:まぁもちろん、それはあるんだけど…たぶん違う感覚なんだろうなぁ。ウケてる!とか、よかった…とか。そういう感じですよ。感動が押し寄せるというよりも…緊張してますからね(笑)

佐渡:(笑)

H:行く前は本当に不安だったんだけど…撮るほうも不安だったんじゃないの?

佐渡:いやー、でも…どうなんでしょうかね。海外に出張して取材をすることが何度かあったんですけど、向こうの音楽関係者に話を聞いたりするとき、やっぱり細野さんのお名前ってすごく出るんですよ。

H:へぇ、それは知らなかった。

佐渡:さすが人気者なんだな…と若かりし頃から思ってました。

H:そんな実感、僕はないなぁ。そうなんだ、初めて聞く(笑)なんでこんなおじいちゃんがいいんだろうね…ブツブツ…(笑)

佐渡:(笑)

H:でも、要所要所は全部撮って頂いていて、映像の作品になってないものもいっぱいあるわけで。例えばブライトンはどのくらい撮ってたかな…あれ、ブライトンって映像作品になってたっけ?

佐渡:ブライトンは『NO SMOKING』に入ってますね。

H:あ、そうだ。水原姉妹が…"東京ラッシュ"のやつ。

佐渡:そうです。

H:あとはそうだ、YMOのメンバーが…

佐渡:そうですね、[ロンドンの]バービカン・ホールで…

H:あ、バービカンだ。

佐渡:それも『NO SMOKING』に入ってますね。

 

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H:映画にするというのはどうですか。難しいでしょう?僕は難しいと思っちゃった。

佐渡:あ、細野さんのですか?

H:そうそうそう、ライヴの映画。僕にとってはやったことなんで…あんまり正視できないというか(笑)

佐渡:でも、どうでしょう…そんなに数は多くはないですけどコンサート映画みたいなものはあると思いますけど。

H:そうですね。

佐渡:大画面で、音も爆音で楽しめるので…コンサートに行かれなかった方とか。特に今回は外国のライヴなので、日本の方は全然行けなかったと思いますから。そこを疑似体験できるというところはすごくいいコンテンツなんじゃないかな、とは思います。

H:そうだね、それはあるね。観てない人はわからないもんね、どんなことが起こったのか。

佐渡:そうなんですよ。あんなにアメリカ人のお客さんがいっぱいいらっしゃって、盛り上がっているというのが…

H:僕も予想してなかったね。

佐渡:本当にこれはすごいな、と思います。

H:ビックリしましたよ、僕も。だってやる前、ステージに上がっていく前まではずっと他人事のように…なんて言ったらいいんだろう、ダメだろうな、とか思ってましたよ(笑)

佐渡:(笑)僕らは並んでるお客さんに取材したりするので…事前にわかるんですね。

H:あ、そっかそっか。そうだ、あの並んでるお客さんのインタビュー、映画を作るときに初めて見たんですよ。

佐渡:はいはい。

H:もちろんチラチラ見てはいたんだけど、なに言ってるかわからなくて(笑)ちゃんと訳が付いてて。それでビックリしたんだよね。

佐渡:みなさん、すごいですよね。

H:すごい。自分より深く聴いてるというか(笑)よく知ってるし、これはウカウカできないなと。あの時初めて思いましたよ。これから作るとき気を付けなきゃな…とかね(笑)

佐渡:(笑)

H:まぁ、誰が聴いてるのかわからないまま作ってたから良いんだろう、と思うんだけどね。気にしちゃったらなんかね…気持ち悪いものができたりして(笑)

佐渡:(笑)

 

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H:なんか音楽かけようかな、じゃあ。えーと…「今回の映画のために音楽を付けてください」と佐渡さんから言われて。

佐渡:はい。

H:2曲ぐらい、と。でも1曲しかできなかったんですけど…(笑)

佐渡:(笑)

H:それを作ってる間に…タイトルも付けてくれ、と。

佐渡:そうですね。

H:で、ライヴの映像だけをまとめてもなぁ…とか思ってて。あるとき屋上に上がってね、このスタジオの。ギターに触ってなかったのは本当なんで…2年ぶりにギターを持ってきて。弾けないんだけどね、チューニングしてないし(笑)それでブツブツとコメントを入れて。そのときに「あ、"さよならアメリカ"だ」と思ってね、音楽が。使いたいなぁと。

佐渡:うんうん。

H:ちょうどロサンゼルスで、はっぴいえんどが行ったスタジオに再訪して。何十年ぶりに行ったのか…40年ぶりかな。

佐渡:2019年当時で46年と…

H:ああ、そんなに経っちゃったんだね。で、スタジオは全然変わってないんで、すごく懐かしかったんですよ。おまけにそのとき[レコーディング現場に]いたヴァン・ダイク・パークスVan Dyke Parks)が楽屋に来てくれたしね、今回。そういうことがあってあの曲を選んだんですけど、じゃあその曲を…11/3に配信になるんで、ちょっと早いですけど、聴いていいですか?いいの?はい。じゃあ"Sayonara America, Sayonara Nippon"。



Sayonara America, Sayonara Nippon - 細野晴臣

  


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H:で、あれを…『SAYONARA AMERICA』というテーマになっちゃったでしょ?どう思います?

佐渡:これはでも…なんて言うんでしょう、痺れるものがありましたね。

H:あ、ほんと?(笑)

佐渡:はい。素晴らしいタイトルだな、と。『NO SMOKING』のときも思いましたけど。

H:ちょっと捻くれてますよね(笑)

佐渡:いや、でもいいんじゃないですか?すごく合点がいったというか…作品を作る上でのすごく良い指針になったという感じがしましたね。

H:なんかね、そこら辺にはすごく責任を負ってる感じがしてたの。だって、出てくるのは自分だしね。この2年間起こっていることとあの時と違うから。どういう風に気持ちを持っていったらいいのかね、難しい…と思ってやってたんですけどね。

佐渡:はいはい…

H:だからどうしても、「今」の自分の気持ちを入れたかったの。それで屋上に上がってしゃべったんですけど。最初はね…横尾忠則さんの「WITH CORONA」という絵のシリーズがあって、あれを使わせてもらおうかと思ったんだけど。横尾さんはいま個展中だしね。まぁ遠慮したんですよね。そのときにコメントを入れようと思って、それが屋上のヴァージョンになったんですよね。どうしたって今の気持ちを言わないと収まらないので。それで自分は落ち着いたんですけど。

佐渡:でも、あの屋上のコメントはまさに…コロナがあって、世界が変わってしまった流れの中で非常に心に沁みわたるものがあったし、観て頂く方にはあれがあることでタイトルがすごく腑に落ちるんじゃないかな、と思いましたけどね。

H:通じてるかな?ならいいんだけどね。

 

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H:まぁたしかに、佐渡さん自身もあれから…2019年のライヴからその後の2020年って、大きな変化があったでしょう?

佐渡:ありましたね。僕としては…テレビが終わるのかな?という感じがすごくしましたから…

H:あー、そこまで行ったか。

佐渡:なんて言うんですかね…世の中みんなが表に出なかった間に家にいて、テレビがあんまりおもしろくないですから…(笑)

H:言っちゃっていいのかな?(笑)

佐渡:ちょっとこれはダメかなぁ、と思ったりとか。

H:まぁでもたしかにね。僕もそうだったなぁ。テレビ、なんとかしてくださいよ(笑)

佐渡:いやー、そうですね(笑)でも、そっちの系統のものはあんまり作ってなかったので…

H:あ、そうだね。

佐渡:どちらかというと今回のような…音楽をちゃんとご覧頂いて、「そこはかとない良さ」というんですか?それが直接なにかを訴えてるというのではないと思うんですけど。

H:そうだよね。音楽というのはそういうところがある、大事かもしれないなぁ、と思っちゃったりしてね。

佐渡:そうですね。あれだけ素晴らしい空間だったライヴについて、今はどんなことを考えてらっしゃるんですか?

H:あのね…こないだ若手のバンドと話したりしていて。先週はD.A.N.が来てくれたんだけど、その前はヨギー(Yogee New Waves)という若いバンドですね。30歳前後の。

佐渡:はいはい。

H:やっぱり彼らはバンド活動ができない時期があったわけでしょう?そうすると、生活に影響してくるわけですよね。切羽詰まってるところがあるわけで。最近になって少し状況が改善されてますから、みんなツアーをやり出してるんですよね。11月からはみんなやり出すんじゃないかなと思うんです。で、僕自身はね…そんなでもないです。やりたいってあんまり思わない(笑)

佐渡:そうなんですか(笑)

H:もう、終わっちゃったね。オワコンというやつ(笑)

佐渡:(笑)あれ、でも海外のファンは待ってるんじゃないですか?

H:あのライヴ前に行列してた人たち。大らかで音楽好きで、いい人たちばっかりだったんですけど、あの人たちが今どうしてるんだろう?というのが気になるんだよね。

佐渡:あの人たちはでも、アメリカだから…マスクしないでガンガン活動されてるんじゃないですか?

H:いや、ニューヨークの規制って厳しいから…なんか異常だったんですよね、ひと頃。パスポートがないと買えないとか。そういう騒動があったんですよ、夏頃。あの人たちはどうしてたんだろう、って最近思うんですよね。音楽聴いてるのかな、と思ったりね。

佐渡:…聴いているんじゃないですか?(笑)

H:ですよね(笑)

佐渡:(笑)

H:佐渡さんは音楽好きでしょう?だからこういう仕事やってるんだよね(笑)

佐渡:そうですね(笑)そんなこととも言えると思います。

H:なにを聴いて育ったんだろう?

佐渡:えー…でも、子どもの頃はやっぱり歌謡曲ですかね?テレビで観て…テレビがすごく好きでしたから。歌謡曲を聴いてて…それでYMOとかが小学校6年生のときですね。

H:え!そんなときなんだ。

佐渡:はい。それでこういう…「音楽」という世界があるんだ、と思ったんですよね。それまではテレビとかと同じ、いろんな娯楽の中の一つだと思ってたので。それで、音楽をちゃんと聴くというジャンルがあるんだなぁ、ということがわかったタイミングだったと思いますね。

H:そこから音楽に目覚めていったんだ。それで就職したわけね、NHKに。

佐渡:そうですね。

H:音楽をやろうと思って。

佐渡:いや、元々はドラマをやろうと思ってたんですよ。

H:あ、そう!ドラマはやった?

佐渡:いや、まったくやらないで…割り振られたところが音楽のところだったんですよ。

H:あ、じゃあ運命だね。

佐渡:そうですね。だから…僕、楽器とか演奏できないので。

H:できたらすごいな…(笑)

佐渡:(笑)だからいまだに信じられないというか。細野さんのような方とご一緒できてるというのが…こんなグレートな方とご一緒できるのは本当に信じられないですね。

H:いやいやいや…僕もだよ(笑)

佐渡:なにを仰ってるんですか(笑)

H:いや、だって…あんまり僕、総合には出してもらえないからね。

佐渡:え、総合テレビですか?NHKの。

H:うん。BS専門家だからね(笑)

佐渡:あれ?でも「ファミリーヒストリー」とか出てらっしゃったじゃないですか。

H:あ、出たな(笑)

佐渡:けっこう出てらっしゃいますよ(笑)

H:毎日、ETVで声やってるしな。

佐渡:(笑)

H:「2・3・5・5」って

佐渡:あの曲、いい曲ですよね。

H:あれはあっちのチームの方が作ってますからね。

佐渡:あー、なるほど。

 

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H:もう1曲かけようかな。じゃあやっぱりライヴからかな…なにがいいですかね?(笑)

佐渡:ライヴの中からですか?えー、なにがいいですかね…アメリカの曲のほうがいいですか?それとも細野さんの曲のほうがいいですか?

H:『SAYONARA AMERICA』なんで、アメリカの曲で行こうかね。

佐渡:じゃあ…"House of Blue Lights"とか。

H:あ、そうしようかね。じゃあ…ライヴの中から"The House of Blue Lights"。これを聴きながらお別れしますが、ゲストは佐渡……

佐渡:…岳利(笑)

H:フルネームってぜったい覚えられない(笑)

佐渡:そうですよね、そんなに大した名前じゃないですし。

H:いやいや…岳利さんでした。どうもありがとう。

佐渡:こちらこそ。ありがとうございました。



The House of Blue Lights (Live at The Mayan Theatre, Los Angeles, July,2019) - 細野晴臣

(from『あめりか』)

  


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