2020.07.26 Inter FM「Daisy Holiday!」より
H:細野晴臣です。えーとね…2月以来かな。初めてかな?ゲストに来て頂いています。ceroの高城くん。
高城:はい、どうも。高城晶平です。よろしくお願いします。
H:高城晶平さん。
高城:はい。
H:どうですか、この3ヶ月か4ヶ月…半年だね、もう。
高城:そうなりますね。いやー、僕…子供が2人いて。
H:あ、ホント?
高城:5歳と1歳の男の子なんですけれども。まず保育園が行けなくなるんで、必然的に家にずっといる…
H:そうだよね。
高城:で、そうなるとやっぱり、そっちがメインになってしまって。楽器もぜんぜん触れてないし、って感じで…(笑)
H:そうなんだ(笑)
高城:もう、なんか、音楽家であることをだいぶ忘れてしまいました。
H:あー、おんなじだよ。
高城:(笑)
H:音楽家であるってことは忘れてるな、そういえば。
高城:うーん。そうですね、そういう人多そうですね。
H:多いね。で、今までやってたことがリセットされちゃって。今はスッカラカンというか、真っ白でね(笑)
高城:おんなじです、ホントに。
H:でも本当は…いつだっけな、3月に来てもらうつもりで。
高城:そうですね。
H:その頃、"Pleocene"やってくれてて。
高城:はい。
H:それを聴いて、あーいいなぁ、これはかけたい、と思って…じゃあ次、コロナが明けたら来てもらってかけよう、と思ってたんだけど…明けてないね(笑)
高城:(笑)結局、そうですね。なかなかこの状況が…どこまで続くのか。
H:ね。ホントになんか、ストレスがじわじわ溜まってるでしょうね。
高城:そうですね…
H:じゃあね、その…早速ですけど、"Pleocene"をかけていいですか?
高城:はい、ぜひ。
H:うれしいな、これ。これ聴いてね、うわー!って思ったんですよ。
高城:あー、うれしいです(笑)
PLEOCENE - Shohei Takagi Parallela Botanica
(from『ミッドナイト・ランデヴー』)
H:いやー、やっとかけられた…(笑)
高城:うれしいです(笑)
H:いやいや、こちらこそ。もう、ホントによくやってもらって、うれしいですね。
高城:難しかったです(笑)
H:だろうね!自分でやろうと思わない(笑)
高城:(笑)
H:これ全部、生でやってるわけ?
高城:そうですね。ギター、アコーディオン、ドラム、ウッドベース。あとシンセサイザーが入ってますけど、基本的はせーの…で。
H:せーので?すごいなぁ。なかなかそれ、僕はやろうと思ったことがない(笑)
高城:(笑)
H:これはでも、ソロの…まぁ、別ヴァージョンですよね。ソロはソロでアルバム…タイトルなんでしたっけ。
高城:えーと、『Triptych』というアルバムを。
H:あ、そうだ、『Triptych』だ。うん。
高城:そうですね、それのシングルカットで7インチのレコードを出して。それのB面として…
H:あ、そっかそっか。
高城:ライヴでよくカヴァーさせて頂いてたんで。
H:それって僕、見たことあったかな?
高城:そうですね、CIRCLE…去年のCIRCLEで演奏してましたね。
H:そっか。そうですね。
高城:あと、去年の細野さんの50周年の…
H:あ、恵比寿の。そこで僕聞いたんだ。
高城:そのときは高田漣さんにだいぶがんばってもらって…(笑)
H:じゃあもう…ceroはもちろん、続いているわけで。
高城:そうですね。今はそのソロと2本というか…やっていっているという感じですね。
H:ceroは…ライヴの予定があったんじゃなかったっけ。
高城:そうですね。日比谷の野音であったんですけど、それが中止になってしまい。
H:そっかそっか。
高城:で、そのまま野音で、無観客で配信をやったんですね。ついこないだ。
H:やってたね。
高城:おそらく、日比谷の野音で無観客でやったのは初めてなんじゃないかな、って…(笑)
H:すごいね、初めてだね(笑)見ものだね。
高城:まぁ寂しいこと…(笑)
H:さみしい(笑)そうだろうね。
高城:異様な雰囲気でしたね(笑)
H:でも、芸人さんよりはまだいいよ(笑)
高城:まぁそうですね。たしかに。笑いっていうのは難しそうですね。
高城:細野さんは無観客っていうのは、どうですか?
H:いやー…まぁ、あんまり関係ないかな、僕は。
高城:通常運転?
H:通常かな?よくわからない。やってみたことないから。
高城:おもしろそうですね、なんか。見てみたいです、ぜひ。
H:いや、見ちゃダメなんだよ(笑)
高城:そうか、無観客だから…(笑)
H:配信か。配信ね。なんかそういうの苦手でね。リモートとかね。あんまり向いてないっていうか。
高城:やっぱり会議だとかそういうのって無駄だ無駄だ、って言われてましたけど、案外その「無駄」っていう部分がけっこう大事だったのかも、とか思いますね。
H:そうだよ。たしかにそうかもしれない。
高城:リモートだとその無駄がなさすぎるところが逆に…ちょっと心配になっちゃいますね。
H:たとえば電話でも…FaceTimeとかで顔を見ながらやると、いつ切っていいかわかんないね(笑)
高城:そうですね。それこそ今流行ってるZoom飲みっていう…一応、顔は合わせて飲んでるんだけど…
H:あれね。
高城:一度やったんですけど。
H:やったんだ(笑)
高城:なんか、すごい飲んでしまって…必要以上に。いつ止めていいかわからなくて…最悪な飲み方になってしまいました。
H:そうか…まぁでも…これは話していいかどうかわからないけど、お店やってるんだよね?
高城:あ、そうですそうです。それはもう周知のことなんで、ぜんぜん大丈夫なんですけど。一応いまお店もボチボチと開いているという感じですね。
H:阿佐ヶ谷って良い街だよな、と思ってね。
高城:うん。とても住みやすいところだし…たしか日本で、狭い面積の中に入っている居酒屋率が日本一らしい。
H:ホントに?(笑)
高城:ええ、阿佐ヶ谷が…意外に1位なんですよね。
H:意外だね。そうか…
高城:札幌とか新宿とかよりも実は、阿佐ヶ谷が密度が一番高いという。
H:そうだったんだね。
高城:小っちゃいお店がいっぱい並んでて。海外から来た方とかはけっこう感動してますね。
H:そういう景色、いいよね。
高城:やっぱり小っちゃいお店ですから、どこも。それがやっぱりおもしろいみたいですね。
H:じゃあ、いろんなミュージシャンなんかが来るの?
高城:そうですね。中央線のその辺りに住んでる人たちもよく来るし、働いてる人もミュージシャンが多いし。僕意外にも。
H:あー、そっか。
高城:まぁやっぱり、みんな今…音楽の仕事、無くなっちゃってますから。
H:そうみたいだね。
高城:大変そうですけどね。
H:大変な人は大変だ。んー。
高城:そうですね。
H:…大丈夫?(笑)
高城:僕は今のところ…(笑)でも、いつあるかわからないから…セカンドライフじゃないですけど、考え始めちゃいますね。音楽以外の生き方ってなにがあるだろう、とか。
H:お店があるじゃないですか(笑)
高城:いやー、そうですね(笑)ただ…
H:それも大変か。んー。
高城:そうですね…難しいところですね。考えちゃいます。
H:そうかそうか。まぁこの歳になるとね、あんまり考えなくなるね(笑)
高城:(笑)なんとかなるか、と…
H:なんとかなるよ。もう、いつもなんとかなってきたんで…
高城:いやー、もう、その気持ちで行きたいと思います、僕も(笑)
H:大丈夫大丈夫。まぁ来年…今はまだ7月、8月。ね。どうなるんだか…ぜんぜんわからないわ、最近のことは…(笑)
高城:(笑)まぁ、今年いっぱいは難しいかもしれませんね。音楽の現場は。
H:だね。なにしろ世界が収まってくれないと、身動きが取れないよね。
高城:ですよね。
H:いろいろ、海外に行く予定、全部無くなっちゃったんで。
高城:そうですか…僕らもceroでアジアツアーとか、少し前から行き始めて。せっかくそういう関係ができてきて、これからそういう関係をあっためていけるのかな、って思ってた矢先なんで…
H:そうかそうか。
高城:また行きたいですね、ホント…
H:うん。そのうちまた、再開するでしょう。みんな待ってるよ。
高城:そうですね(笑)
H:じゃあ、ceroの音楽聴いていいかな?
高城:あ、ぜひぜひ!聴きましょう(笑)
H:適当に選んでいいかな、僕…じゃあね、"C.E.R.O."っていう曲(笑)名刺代わりに。
高城:(笑)
C.E.R.O. - cero
(from『Obscure Ride』)
高城:まぁ、曲はこんな感じで…(笑)
H:いやー、かなりファンキーだな。
高城:ありがとうございます。
H:元々…あれ、僕、ずいぶん前に早稲田の…大学で一緒だったね。
高城:あー、そうですね!あれ…もうどれくらい前になりますかね?もう5年以上前ですね、たぶん。
H:そうだね。あの頃とちょっとまた変わってるよね。
高城:そうですね。あの時…ceroってバンドもだいぶ変遷が多いというか…たぶんその頃、僕がまだベースボーカルで。
H:あ、そうだったっけ(笑)
高城:そうなんですよ。まるで違うバンドでしたね、きっと。
H:違うよね。印象が違うんだよね。
高城:もっと…まぁ、ロックバンド然としてたかな、という。
H:そうそう。あれから…なんだろうな、ミュージシャンとして進化してるっていうか。演奏力もね。なんかそんな感じするよね。
高城:やっぱり、そもそも聴くのが好きな人たちが集まってやってて。
H:そうなんだ。
高城:で、その時々で好きな音楽、みたいなほうに…光に集まるように行ってしまう、と(笑)
H:なるほど。
高城:そうすると変遷がグチャグチャ…あっち行き、こっち行き…(笑)
H:おんなじだよ、僕と(笑)
高城:そんな感じになっていった結果なんですけど。まぁ、「バンド」と一応定義付けてはいますけれども、実際のところはホント…ただ好きな音楽のために、その時々で解散しては集まり、解散しては集まりをずっと繰り返してるっていう。
H:すげえ。音楽的なグループだよね。んー。
高城:そうですね。
H:それにしちゃあ続いてるよね(笑)
高城:それが逆によかったのかもしれないですね。そうやって脱皮を繰り返すということが。
H:なるほど。僕なんかの場合は、はっぴいえんどとかも2年とか3年で終わっちゃってるし…(笑)
高城:(笑)そうですよね。やっぱり…それこそ僕たちが音楽的な変遷をあっち行き、こっち行きってしているのって、どこか念頭に細野さんがあるかな、って思ってて。
H:ドキン(笑)責任取れないよ(笑)
高城:いやいや(笑)でも、やっぱり細野さんのこれまでのディスコグラフィみたいのを見ると、不思議な一貫性がどこかにあったりとかして。
H:ホント?それはうれしいけどね。
高城:感じるんですよね、一ファンとして。だから自分たちのあっち行き、こっち行きだったのが、結果的に聴いた人がなにか一貫性を感じてくれたら僕らもうれしいなぁ、とは思うんですけどね。
H:それはそうだろうね。僕はね、たまたま長くやってるから。その場その場では一貫性を感じられなかったんだけど…(笑)
高城:(笑)
H:トータルで見るとそうなるんだろうね。時間はかかるけどね。
高城:そうですね。まぁ、細野さんの声とかっていうのは変わらずあったり…
H:声は変わらないしね。
高城:そういうのが意外と重要なことなのかもな、とか最近考えたりしてますね。
H:そうかそうか。そうだね。それは言えるかもしれない。
H:なんか、最近聴いてるのを持ってきてくれたの?
高城:そうですね。
H:聴きたいな。どんなの聴いてるんだろう。
高城:えーと…じゃあ友達というか、近いところにいるバンドでWool & The Pantsという3ピースのバンドがいまして。聴いて頂いたらわかると思うんですけど、ものすごい渋くて…
H:(笑)
高城:乾いた音像で。一切リバーブなんかも使わない…(笑)
H:いいね!(笑)
高城:スライ(Sly & The Family Stone)みたいな。そんな手触りの音楽をやってる若い人たちがいるんで…
H:聴きたい。
高城:彼らの"Bottom Of Tokyo"という曲を。
Bottom Of Tokyo - Wool & The Pants
(from『Wool In The Pool』)
H:なるほど。
高城:はい。
H:ミニマルだな。
高城:そうですね(笑)ホントにストイックにやっているという…
H:んー。いくつぐらいの人たちなんだろう。
高城:えーと…まぁ20代だと思うんですけど。
H:あー。
高城:硬質な感じですね。で、まぁ、これ日本語で歌ってるんですけど、「わたし」っていうのが「ワティシ」みたいになっちゃってたりとか。
H:(笑)
高城:言ったら、細野さんの"ジャパニーズ・ルンバ"とかみたいな感じを冷たいファンクに乗っけてる、と。
H:訛ってるんだ(笑)
高城:そういう意味ではユーモアみたいなものも感じるし。なんかとっても粋だな、と。
H:なるほどね。どんな人たちなんだろう(笑)
高城:そうですね(笑)僕もあんまり話したりしたことはないんですけど…なんか回転数間違ったかな、みたいな歌声で…(笑)
H:たしかに。
高城:それが素敵だな、と。
H:最初聴いて、ちょっと笑ってしまいました(笑)
高城:回転数おかしいんじゃないか、みたいな(笑)ライヴでもこのまんまなんで、それがすごいなぁ、と思いますね。
H:いやいや…おもしろいな。なんか、渋いっていうのがすごいおもしろい(笑)
高城:僕がこの曲を選んだのは彼らを紹介したいっていうのももちろんあるんですけど。"Bottom Of Tokyo"というタイトルで、東京のことをちょっと話したいな、なんて思ったりなんかして。
H:なるほどね。
高城:細野さんはこれまで東京を離れてもいいかな、みたいな。離れようかな、みたいに風に思ったこととかってありますか?
H:いやー、しょっちゅう思うんだよね。最近もね。東京、もういいかな、って時々思うんだけど。でもやっぱり離れられないんだよね。
高城:僕も東京生まれ…僕は西東京っていう、まぁそっちのほうなんで。細野さんとはまた違った東京の見え方だと思うんですけど。
H:なるほど。
高城:やっぱり僕も今のところ東京を離れようっていうアイディアはまだ出てこないんですけど。今のコロナとかの状況を前にすると、いずれそういう選択肢も常に念頭に置いといてもいいのかな、とか思い始めちゃったりして。
H:やっぱり?いや、僕もそうなんだよね。東京が好きだけど、それは僕の中の幻想なんだよね。原風景っていうのが今はもう無いから。全部変わっちゃったんで、景色も。
高城:そうなんですよね。
H:だから下町に行ったり。あるいは、ときどき見知らぬ街に行ってね。景色を見に行くんだけどね。時々、あ!残ってる!っていうところがあるわけですよね。
高城:うんうん。
H:まぁでも、東京生まれってなかなか最近いなかったけど…また増えてきてますね。ceroも東京のバンドだ。
高城:そうですね。たしかに…でもこれからまた、周りの人間でも東京を出て行った人も少なくないですからね。
H:そうだよね。
高城:おもしろみみたいなことで言えばやっぱり…それこそ、僕も僕で幻想を東京に見ているんですけど。
H:何年生まれ?
高城:僕は1985年生まれです。
H:…ついこないだじゃない(笑)
高城:(笑)といってももう35歳なんですけど。
H:そうかそうか。まぁでも今の音楽界の中では中堅になってきてるんだね。
高城:そうですね。やっぱり20代前半とかの子、いくらでもいますからね。
H:出てくるもんね。
高城:彼らと僕が見ている東京もまたやっぱり違うだろうし…そういう、20代前半の彼らがどういう東京のおもしろみみたいなのを感じてるのか。ちょっとわからないなぁ、とか思っちゃったり。
H:んー、「ボトム」。"Botto Of Tokyo"。
高城:そうですね(笑)
H:まぁでもceroは若い世代から見たら希望の星でもあると思うよ。
高城:あー、そうなんですかね…
H:なんか、ミュージシャン的にすごく洗練されてきてるし。腕がいいっていうか(笑)
高城:(笑)僕たちがなにか、下の世代になにか希望を与えられてるとすれば、さっき言ったようなあっち行き、こっち行きっていうのが可能なんだ、っていうことを見せられたのはもしかしたら…
H:なるほど。
高城:やっぱり今の…僕より下の世代のいろんなバンドを見てると、すごくコンセプトが最初から出来上がってるのを感じるんですね。
H:あ、ホント?
高城:僕らなんかはまだコンセプトが曖昧というか…
H:おんなじだ、僕と(笑)
高城:(笑)偉いな、と思うんですよ。若い人たちが「僕たちはこれをやる!」っていうのが。
H:そうかそうか。
高城:でも、そうせざるを得なかったのかな、とも思うんですよね。プレゼンテーションが出来なきゃ…
H:なるほどね。今のポップス業界…やっぱり片目で見てるんだろうね。
高城:そうですね。それを思うと自分たちはラッキーだったのかな、と思いますね。
H:うんうん。さらに僕なんかはもっと自由だから(笑)
高城:うらやましいです(笑)
H:いやいや…えー、もう時間が来ちゃったような気がするんだけど。
高城:あー、そうですね。
H:また落ち着いたら来てもらおうかな。
高城:ぜひぜひ、いつでも。
H:マスク無しで。
高城:そうですね(笑)
H:えー…もう曲はかかんないか…じゃあ、ここで締めるね。どうもありがとうございました。高城晶平さんでした。ceroからです。
高城:どうもありがとうございました。