2021.10.24 Inter FM「Daisy Holiday!」より

 

daisy-holiday.sblo.jp

 

H:はい、こんばんは。細野晴臣です。えー、先週に続いてですね…バンドのD.A.N.。ディー、エー、エヌ、D.A.N.。自己紹介をひとつお願いします。

櫻木:D.A.N.のボーカルの櫻木(櫻木大悟)です。

市川:ベースの市川(市川仁也)です。よろしくお願いします。

H:お、3人組だよね。あとの人は…きょうは来れないね。

櫻木:そうなんです。ドラムの川上(川上輝)が…

H:そうか。シンプルな構成だなぁ。櫻木さんは歌うだけなの?

櫻木:僕は一応、シンセだったりギターだったりをやったりします。

H:レコーディングでは色々やれるけど、ライヴもそれでやってるんでしょ?

櫻木:そうですね。うん。

H:えーとね…なんだっけな、ここに書いてあるんだけど…新しいのが出る…出たのかな?もう。

櫻木:もうちょっとで出ますね。そうなんですよ。

H:「成熟と実験で向かう、その先に開かれた新たな景色」。これは期待しちゃうよね(笑)

2人:(笑)

市川:ちょっと恥ずかしいですね(笑)

櫻木:なんかすごく盛ってる気がするけど…(笑)まぁでも、3枚目です。やっと。

H:3枚目だね。やっぱり成熟するだろうね、それは。

櫻木:いやいやいや…

H:だって、前にここに来てくれたのがもう4年前だって言うからね。あれは1stの時だね。

櫻木:ですかね、はい。めちゃくちゃ前ですね。

H:先週、Yogee New Wavesが来てくれて、2人。やっぱりおんなじ場所でみんなと出会ってるんだよね。福岡の「CIRCLE」で。そのときに紹介されて…憶えてるんだよ、それは。

櫻木:いやー、光栄です。本当に。

H:いやいやいや…耄碌してるから忘れっぽいんだけど…(笑)

2人:(笑)

H:えー…なんだろうな、このジャケットを見てもいい感じだよね。

櫻木:まぁ、いい感じにがんばりましたね(笑)

H:すごく楽しみだよ。タイトルが『NO MOON』というアルバムね。さっそく聴かせてもらおう。1曲推薦してもらおうかな。

櫻木:いや、緊張するなぁ…(笑)なにを聴いてもらえばいいんだろう…とりあえず"No Moon"かな?

市川:うん。

櫻木:アルバムのタイトルの…いちばん最後の曲ですね。

H:ぜひぜひ。

 

 

No Moon - D.A.N.

(from『NO MOON』)

  

 

H:いやー…月のない世界だね。ディストピア的な気持ちなのかね。やっぱり。

櫻木:うーん…ただ、どこかで希望を探していたいというか。

H:それはそうだ。音楽っていうのはそういうものだしね。音楽を聴いてますます落ち込むというのはまずいよね(笑)

櫻木:そうですね(笑)たしかに…

 

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H:みんなに訊いてるんだけど、この2年間の影響というのはすごいでしょ?

櫻木:いやー、モロですね。

H:モロだね。活動はどうしてた?

櫻木:僕らはライヴ活動ができなくなったので、収入とかがガッツリ無くなっちゃって。

H:そこに結び付くもんね。それはそうだ。

櫻木:そうですね。経済的に厳しくなって…その影響はやっぱり大きいですね。

H:そうかそうか。それはひしひしと来るよな。

櫻木:はい。もうリアルに…明日どうしよう、みたいな(笑)そういうレベルで結構厳しい思いをして。それでもやっぱり音楽を作ることはすごく楽しいから、それだけは一生懸命やりたい…そういう2年間でしたね。

H:お互いに会ってたわけ?バンド自体は。

櫻木:そうですね。

H:そういう仲間がいると、いいね。

櫻木:そうですね、たしかに。3人で集まって…結構キツいよね、みたいなところはみんな一緒だったと思うので。

H:で、これを作ってたのはいつ頃なの?『NO MOON』は。

市川:去年の暮れぐらいから本格的に作り始めましたね。

櫻木:うん。

H:すごい時間をかけたのかな?

櫻木:どうですかね。半年ちょいとか…ですかね。全部含めると。

H:うんうん。僕も急に止めちゃったんで…止めちゃったというか、まだやってるんだけど(笑)ライヴをやらなくなっちゃったでしょ。だからミュージシャンにはみんなそういう気持ちが共通してるんだろうな、とは思ってたんだけどね。でも、もうそろそろツアーがあるんでしょ?

櫻木:そうですね。11月5日の大阪から始まって…

H:東京が…

櫻木:12月8日ですね。STUDIO COAST

H:そうかそうか。ヨギーの人たちもツアーが始まると言ってたんで…みんな一斉に動き出してることは確かだよね。でも世の中いま…普通にみんな外に出てるから(笑)なんだろう、普通以上に出てるかな。3、4年前より人が多い。車も多いしね。

櫻木:なるほど…ある種、そういう反動なんですかね?

H:それはあると思う。ずーっと閉じこもってて…でもマスクだけはしてるというね。

櫻木:細野さんは今のこの世の中をどうやって見てるんですか?コロナだったりとか。

H:ものすごく少数派だと思う。僕はほら、喫煙で何十年も前から圧迫されてきた身分だから。二級国民というかな(笑)

2人:(笑)

H:だから…世の中の圧力がすごく変わってきた。なんて言うんだろう、人を差別するようになったというかね。

櫻木:ほんとですよね。

H:で、その波は日本だけじゃないからね。世界で押し寄せてるでしょ?先に世界で始まって、次に日本に来るという…今回もおんなじパターンを踏んでるでしょ。だからすごく居心地が…最初は居心地が悪かったんだけど、いまはつらいね。もう、気が弱いから負けそうになるんだよね(笑)

櫻木:いやー、でもしんどいですよね。

H:でも音楽をやっててよかったよ。自由業だから(笑)仕事は自由、という感じで。

2人:(笑)

 

H:D.A.N.は…ツアーやってたでしょ、前。外国?

櫻木:はい。

H:結構、海外で人気があるんだね。

2人:いや~、どうなんですかね~。

H:(笑)

櫻木:もっとがんばりたいんですけどね…

H:がんばってよ(笑)

市川:自分たちが行きたくてなんとか行った、という感じだったんですけど。

H:でも、すごく歓迎されたでしょ?

市川:そうですね、経験にもなりましたし…

H:場所はどういうところだったの?大きなところ?

櫻木:中国とかは会場大きかったですね。

H:中国ってどういう反応をするの?僕はやったことないんだ。

櫻木:メロウで落ち着いた曲だったり、聞き入る曲を好むというか…良い反応がありましたね。ポップでダンサブルなものよりかはどちらかというとそういう方向のほうが…僕らはリアクションがよかったように思いました。

市川:なんか、ムーディーなものが好きな印象ですかね。

H:そうかそうか。意外だね。まぁたしかに、中国のイメージとそこに住んでる人たちのイメージとはずいぶん違うんだろうけどね。

市川:あとはロンドンですかね。

H:お。ロンドンはどうだったの?

櫻木:ロンドンはおもしろいですね…

市川:正直ですね、反応が。

H:え、どんな反応だったんだろう?興味がある。

櫻木:初めてD.A.N.でロンドンに行ったときは…めちゃくちゃくさい、小っこいパブで(笑)ほんとうにションベンくさい、ひどい異臭の…

H:(笑)

櫻木:最初はほんとに2人か3人か…現地の学校に通ってる日本人だったりとかがまばらにしかいなかったんですけど、ライヴが始まると奥のほうの部屋から「なんか音が聞こえる」みたいな感じでどんどん集まってきて。最終的にはいい感じ盛り上がって…みたいな。それはすごく楽しかったですね。

H:へぇ。それってすごくいいパターンだよね。

市川:僕らのことをたぶん知らない人が、単純に音だけで…

H:だんだん増えてくるってすごくいい感じだよね。昔の『グレン・ミラー物語』とかを観るとそんな感じだったからね(笑)やっぱり正直にコミュニケーションしてるのがいちばんいいよね。

市川:そうですね。細野さんもこないだ『あめりか』というライヴアルバムを出されてたじゃないですか。

H:うん、そうなんですよ。

市川:あれを聴かせて頂いたんですけど…

H:どうでしたかね。

市川:いやー、めちゃくちゃ良かったです。

H:あ、よかった。

市川:ずっと聴いてたんですけど…どうですか?アメリカとかにライヴで行くと。

H:僕も似たようなものなんだけど…すごく不安だったんだよね。特に、最近やってた音楽ってアメリカの古いブギウギとかね。カントリーまでやってたから…そんなの、日本人がアメリカ人の前でやっていいのかどうかって(笑)

櫻木:あー、なるほど…

H:そういう不安があったの。まぁでも、ニューヨークやロサンゼルスなら大丈夫かな、と。たぶん南部なんかに行ったら座布団が飛んでくる…というか、ウイスキーの瓶が飛んで来たりするんじゃないかな(笑)

2人:(笑)

H:あるいは熱狂させるか。どっちかだと思う。

櫻木:たしかに緊張感がありますよね(笑)

H:そうなの。予測できなかったね。

市川:伝統芸じゃないですか、その現地の。根付いてるものですよね。

H:そうなんだよ。だから舞台に立つまではわからなかったんだけど、立った瞬間に「あ、歓迎されてる」と思って。東京や大阪でやるのとあんまり変わらなかったね。

櫻木:いやー、それはそうですよ…

H:いやいやいや…わかんないよ。まぁ、それの映像がもうすぐ上映されるんですけどね。

櫻木:あ、そうなんですね。楽しみだな…

H:『SAYONARA AMERICA』というタイトルで…どうしてそうかというと、もう終わっちゃったから…なんて言うんだろうね(笑)

2人:(笑)

H:2019年にやって、次の年にこんな時代になっちゃったから。なんかね…区切りがついちゃったというかね。

市川:時代が変わった、みたいな感じしますよね。

H:変わっちゃったんだね。遠い昔のような気がしてね。

櫻木:なるほどなるほど…

 

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H:では、D.A.N.は…これから先も海外に行くね、たぶん。

櫻木:行く…っすね(笑)

市川:行きたいですね…

櫻木:やっぱり新しいところに行って、新しい人たちに自分たちの音を聴いてもらうのが興奮しますよね。刺激的ですよね。

H:そうそう。

櫻木:リアクションが悪くても良くても楽しいな、と思うので。

H:わかるわ。音楽って別に説明しなくても、音を出せば感じてくれるからね。

櫻木:言葉じゃなく「おーおー」みたいになるんで…あれはおもしろいですね。

H:そうそう、言葉じゃないんだよね。そういう経験を今できてるというのは貴重だけどね。多くのバンドはその経験がないから。意外とね。なんの準備もなくフラッと外国に行って演奏する…そういうのはあんまりないよね。

櫻木:たしかにそうですね。

H:なんか計画して、チケットをどれくらい確保できるか…とかね。「世の中はmoney」だからね。この歌詞にもあったね。

櫻木:そうなんです。実はね。

H:ね。おんなじ考えだね(笑)

櫻木:「貨幣の奴隷」とか、だいぶ尖ったことを言ってて…すみません(笑)

H:いやいや、いいよ(笑)みんなだいぶ遠慮してるよね、言うのを。なんか反応が怖いんだよね、日本の。でも、言ってくれてよかった。「貨幣の奴隷」。

2人:(笑)

H:自分でも言いたいんだけど…なかなか、気が弱いからね僕は…(笑)誰かが言ってくれるのは嬉しいよね。

 

H:この…D.A.N.のいる事務所はヨギーもいる。

櫻木:そうですね。

市川:あとはネバヤン(never young beach)ですね。

H:ネバヤン。バンド同士の交流はそんなにないの?

櫻木:うーん、まぁでも…事務所で会ったりはするよね。

市川:うん。

H:そっかそっか。芸人みたい(笑)

2人:(笑)

櫻木:なんか、楽屋トーク的なことは行われますよ(笑)

市川:あと、never young beachのボーカルの安部。

H:安部勇磨くん。

市川:勇磨のこないだ出たソロアルバム、細野さんがミックスを…

H:何曲かやったね。

市川:あれは僕がベースを弾いたりとかしてて。

H:あれ、そうだったんだ(笑)

市川:そうなんです(笑)そういう、友達同士で「弾いてよ」みたいな感じで弾いたりとか。そういう交流はありますね。

H:それはそうだろうな。僕は普段、誰にも会わないね。

櫻木:あー、そうですか。

H:まぁこういう場があるから、幸いね。ラジオは結構貴重な時間なんですけど。

櫻木:じゃあ、おうちにいることが多いですか?

H:うちに閉じこもってるわけじゃないんだよね。毎っ日外食してるしね。この2年間毎日(笑)

櫻木:え、なんか美味しいものありました?(笑)

H:それは困ったな…あのね、頭の中にあるのはチャーハン・焼きそば・ハンバーグの3つしかないんだけど…

櫻木:いやー、やんちゃですね(笑)

市川:(笑)

H:やんちゃっていうのかな?(笑)

櫻木:いいですね、いちばんうまいですね。

市川:変わらないやつ。

H:で、そういうものが美味しいところは他のメニューも美味しいじゃない。

櫻木:間違いないです。

H:でもね、無くなってきたんだよ。最後のおいしい店が閉店しちゃったの。まぁそれはこういう時代の影響ではなくて…3年ぐらい前かな。世代交代が今、多いじゃない。お年寄りのやってるお店は後を継ぐ人がいないと閉店しちゃうんだよね。

櫻木:うーん、たしかにそうですね。

H:君たちはなにが好きなの?

櫻木:でも、僕らもやっぱりチャーハン…焼きそばもマストですね(笑)

H:いいね(笑)

櫻木:三軒茶屋町中華があって…すごくおすすめのところありますよ。美味しい…きったないですけどね。

市川:(笑)

H:え、知ってるかな…あとで教えて。

櫻木:はい。あそこはうまいですよ…

H:そういうところは貴重だからね、ぜったい知っておくべきなの。応援するためにもね。

櫻木:そうですね。

H:年を取ると新規開拓をしたくないの。

櫻木:あ、じゃあ行くところは決まってるんですか?

H:決まってるの。だいたいは日本そば屋と洋食屋と中華と。

櫻木:えー、洋食気になるなぁ…細野さんが食べてる洋食はどこなんだろう。めっちゃ気になる…

H:あとで教えるよ。

櫻木:知りたい…

 

 

H:さて…もう1曲聴かせてもらおうかな。

市川:じゃあ…インストなんですけど、6曲目の"Fallen Angle"という曲を。

H:おお。

 

 

Fallen Angle - D.A.N.

(from『NO MOON』)

  

 

H:いいね。D.A.N.って元々エレクトロニック系のイメージがあったんだよね。当初はそういう曲が多かったよね。

市川:もっとさわやかな感じでしたね、元々は。

H:あ、そうだったね!たしかに、そうかもしれない。やっぱり今の時代の音というかな。共鳴する人は多いんじゃないかな。

櫻木:そう言ってもらえると嬉しいです。

 

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H:じゃあまた、これからの活動を僕は楽しみにしてますので…D.A.N.のお2人でした。櫻木さんと市川さん。 また来てください。

2人:ありがとうございました。

 

 

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H:緊張してない?なんか(笑)

櫻木:緊張しますよ、それは!

H:これが終わるとみんなおしゃべりしだすんだよね(笑)

2人:(笑)

櫻木:いやー…ほんとに嬉しいです。

市川:みんな大好きなので…

H:え?

市川:本当に大好きな細野さん…

H:大好きなんだ(笑)それは嬉しいけど。

市川:僕らが高校生ぐらいの時ですかね?仲間内ではっぴいえんどだったりYMOとか、細野さんのソロだったりをみんなで掘って、聴いて、というのをやってました。

H:高校の頃?へぇ。

市川:みんなでライヴの映像を掘ったりとか…

H:そういうことを本番でしゃべってくれないと(笑)

市川:そうですね、もうちょっと出してもよかった…(笑)

櫻木:ふつうに飯屋とか、どうでもいいことを聞いちゃった(笑)すみません…

H:いいよいいよ(笑)おもしろい…んー、そうだったんだ。もうだから…世代交代だよ、ほんと。もう疲れちゃった(笑)

櫻木:いやいや…もっと聴きたいですよ?(笑)

H:だって、すごい歳離れてるよね。

櫻木:そうかもしれないですね。

H:40以上だよ。すごいな、それ。でも不思議だな…年齢の格差はないな、音楽は(笑)

2人:ないですね。

H:それがおもしろい。