2021.07.11 Inter FM「Daisy Holiday!」より

 

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H:細野晴臣です。こんばんは、おはようございます。きょうはほんっとに久しぶりに、メンバーの高田漣くんと伊賀航くん。

高田:はい。

伊賀:こんばんは。

H:いらっしゃい。よろしく。

2人:よろしくお願いします。

高田:ご無沙汰しております。

H:ホントに会わなくなっちゃったね(笑)

伊賀:そうですね。

高田:1年ぶり?

伊賀:1年、2年…

H:2年は経ってないけど、まぁ一昨年だもんね。

伊賀:そうですよね。

H:あれから何もやってないんだよ、僕。みなさんはやってるんでしょ?ライヴ。

高田:伊賀くんはやってるよね。

伊賀:ちょっとずつですけど。

H:伊賀くんはやってる噂を聞くね。

伊賀:ホントですか。細野さんもご存知の猪野秀史さん。

H:そうそう。それやったんでしょ?

伊賀:はい。この前ビルボード東京とかでライヴがあって…そうですね、それはやってましたね。

H:他にもけっこうやってるでしょ?

伊賀:他はまぁ、小っちゃく小っちゃく…小っちゃく(笑)

高田:(笑)

H:じゃあわりとこの1年は…ライヴはほんの少しで。あとは何やってたの?

伊賀:あとは…音をもらって家で録音するとか。ベースだけ録るとか。そういうのをやったりですね。

H:なるほど。

伊賀:そんな感じですね。もう、静かにしてます。

H:(笑)漣くんの小説はどうなった?

高田:小説も書いてたんですけど…細野さんにもお手伝いをお願いしたと思いますけど、去年の半分くらいからはうちの父親の写真集の作業がほとんどで…

H:出たね。大変だった?

高田:ものすごい大変で…それで気がついたら終わっちゃってた感じですね(笑)まずデジタル化して、それをメールで皆さんとやり取りして、今度は実際に使いたい写真を皆さんにご連絡して…それも細野さんみたいに交流がある人だったらいいんですけど、もう今どこにいらっしゃるかわからないような人はその素材を探したりとか…それこそ、その顛末をいつかまた書きたいなというぐらい…(笑)

H:1冊になっちゃう(笑)

高田:もうね、おもしろいことがいっぱいありました。

伊賀:写真がすごい量だしね。

高田:うん。それを見るだけでもほんとに…ハードディスクがパンパンになるほど(笑)

 

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H:じゃあ、画面上の問題で一人ずつ伺いますが…伊賀くんは自分のソロとかは作んないのね?

伊賀:ソロですね…(笑)そんなに考えてはないですけど、でもちょっとは…え、なんでそんなお話をいきなり?

H:いや、他に話はないよ。

高田:(笑)

伊賀:そうですよね(笑)いや、自分でも好きで録音とかしてたから、そういうものをなにか形にしたいな、と思ったりとか。

H:どんどんやったほうがいいよ。今すぐ、明日にでもやったほうがいい。

伊賀:そうですね(笑)去年…あ、これは別に放送されなくてもいいんですけど。

H:うん(笑)

高田:(笑)

伊賀:アナログのレコードを自分でカッティングできるというマシンが学研から発売されて。

高田:え、学研?

H:おもちゃなの?

伊賀:おもちゃなんですよ。小っちゃい箱に入ったやつで。

H:付録ね。欲しかったやつだ。

伊賀:あれを買って…盤が付いてくるんですけど、自分で作ったものをカッティングしたりとかして。

H:どうなの?それ。音は。

伊賀:音はね、すごいノイズですよ。ザラザラ。

2人:(笑)

H:おもちゃだね、やっぱり(笑)

伊賀:でもそれがまた、ちょっと味わいっぽくなるというか。

H:なるほど。なんかに使えそうな感じはあるね。

伊賀:そんな感じで…ちょっと録音してみたりとかは考えてます。

 

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H:じゃあ漣くんはどうですか?

高田:僕は…自分のソロと呼ぶのかはちょっとわからないんですけど。先々週まではずっと、とある洋服のブランドのコレクション用の音楽。

H:ほうほう。

高田:このご時勢なのでパリコレとかはできないので、それを映像でやるということになって。それの音楽を作ったりしてて。

H:なるほど。いいね。

高田:で、先週からは…まだだいぶ先なんですけど、来年公開になるある映像作品のサウンドトラックをご依頼頂いたので、まずはその作曲作業がこの夏はずっと続くというか。

H:あ、これからね。

高田:だからしばらくは籠もって…まぁずっと籠もってたんですけど(笑)そのまま継続して籠もって…弦楽四重奏とかが多いと思うので、どちらかというと譜面作業が多いと思います。たぶん。

H:それはおもしろそうね。じゃあ、一昨年に帰って来てから…こんなになっちゃったじゃない。

高田:そうですね。

H:どうなの?なんか集まったりしてるの?

高田:そんなにないんですけど、それこそ伊賀くんの話じゃないですけど、レコーディングも今はだいぶ状況が変わってきて。「せーの」でやるということがどんどんなくなって来てて。僕がこないだやったプロジェクトでも、本当だったらドラムとベースを一緒に録りたいんですけど、いろいろと密にならないように考えられて…結局個別に録音するという方法になってて。ちょっと前にめずらしく伊賀くんと…レコーディングでね。

伊賀:うん。

高田:すごく久しぶりに「一緒に演奏する」というか。

伊賀:そうだね。4月くらいかね。

高田:その前はだって、その前の4月ぐらいだもんね。それも同じレコーディングだったんですけど。そのとき、伊賀くんと一緒に演奏したのが本当に…

伊賀:久々。

高田:人と一緒に演奏したのは本当に久しぶりというか。録音上はあるんですけど、生でやったのはね。

伊賀:久々に録音スタジオに行ってね。

高田:そうそうそう(笑)

H:あの『あめりか』のアルバム、皆さんに確認しないまま出しちゃったような気がするんだけど、大丈夫だった?

高田:いや?たぶん発売する前に聞いてます。

伊賀:来てます。

H:全然、直しはなかったでしょ?

伊賀:そうだと思います。

H:僕も歌の直しがなくて、そのまんま。ほとんどね。ちょっとだけ…声がひっくり返っちゃったから(笑)

高田:すごく臨場感があるというか。やっぱりそのときの空気みたいのをなんとなく思い出すし。でも細野さんが仰るように、それがもう何十年も昔のような気がしてしまうというか。

伊賀:たしかに。

高田:なんというか、元の…どういう生活をしてたのか、正直思い出せないというか(笑)僕、とあるイベントに呼ばれたとき、18時から本番だと言われて、じゃあ17時半くらいに行けばいいですかね、って言ったらリハーサルがあるんで、って言われて。そのときに初めて、そういうイベントにはリハーサルがあるんだということを思い出したぐらいで…(笑)それぐらい色んなことを忘れちゃってるというか。

伊賀:そうだよね。

高田:もう、普通の生活に戻れなくなってることは確かですね。

H:いやホントだよ。もう戻っててもおかしくないはずなんだけど、ダラダラと続くよね(笑)

高田:ほんとですねぇ。

H:だから、あの頃と今と何が違うかといったら、やっぱり自由が制限されてる。そこがいちばん強いよね。

高田:うんうん。

H:だからあの頃の映像を見ると誰もマスクしてない。当たり前だけど(笑)

高田:そうですね、ぎゅうぎゅうにお客さんがいて…とかね。

H:まったく予想もしてなかったよね。こういう事態。たぶんこれがなかったら去年も今年もライヴやってただろうね。

伊賀:そうですよね。行く予定も…

H:あったね。3か所くらい外国もあったけど、もう行く気がぜんぜんなくなっちゃった(笑)

 

 

Sports Men [Live]  - 細野晴臣

(from『あめりか』)

  

 

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高田:なんかこう…仕事は仕事として。そうじゃなく、うかつに外に出るのもどんどんどんどん怖くなってくるというか、今。ようやく出れるようになるかな、と思うと必ず次のことが起きて、というか、次の悪いキャラクターが現れるように…(笑)

伊賀:(笑)

高田:どんどんどんどんボスキャラが増えていくような感じで、どんどん籠もるようになってきて。だからだんだん…そもそも自分は外に出てなかったんじゃないか?という気がしてきちゃってる…(笑)今まで生きてきたことが幻だったんじゃないか、というぐらい遠いもののように思いますね。前の世界が信じられない。

H:たしかにそうだよね。そういうことを言葉で言える?伊賀くんは。

高田:(爆笑)

伊賀:そうですね…いやもう、幻だった…(笑)

H:おんなじじゃん(笑)

高田:すごい近いところに立ったね(笑)

伊賀:そうですね…細野さんはほんとに、なんにもされてないんですか?(笑)

H:いやいや(笑)なにか宿題みたいなことはいっぱいある。いつも言ってるんだけど、夏休みの小学生が一生続いてるみたいな。なんで…本当はもっとヒマでもいいんだけどね。なんか追われてて。ほら毎週、この番組やってるじゃない。

高田:そうですね。

H:で、月に1回手作りでコツコツ作ると、これが時間かかるんだ。ミスがあったり、やり直したりね。

高田:でもまぁ、そうやってちょっと出る機会があるのとないのとでエラい違いというか…僕らも全く出なくてよくなってしまうと、きっとほんとに籠もりがちだから…どこかで強制的に出る機会があるということが自分たちにとっていいときもあるかもしれないよね。

伊賀:やることがある。

高田:もしなんにもしなくてよかったり、少なくとも家から出ないでずっと過ごしてろと言われたら…たぶん伊賀くんも僕もどちらかというとできる人同士なんですけど(笑)

H:なんにもしなさそうだよね(笑)

高田:なんですけど、そうなるとどんどん元に戻れなく…それこそさっきの話じゃないですけど。戻れなくなりそうで。その恐怖感がいっつもあるような気がしますね。

H:おんなじだ。だからテレビに出てる人とかは出ていくのが自然な感じになってるんだろうけどね。ミュージシャンはそうはいかないよね。

高田:そうですね、本当に。

H:僕なんかはステージがない限り、服を新調しないんだよ(笑)

2人:(笑)

H:毎日同じのを着てる(笑)

高田:でも僕もそうですね。とにかく家から出ないので、ほとんどの時間が寝巻ですね。そう言われてみると(笑)

2人:(笑)

H:ホントになんか、だんだん気持ちが家のない人に近い…

伊賀:(笑)

高田:家にずっといるのに…(笑)

H:さまよってるというかね。

高田:なんだか不思議なもので、今の状況が…細野さんもあったと思うんですけど、ツアーに行ってなんかの事情で外に出られないで、ホテルにずっといなきゃいけないみたいな。言葉は悪いですけど、監禁されてるみたいな。そんな感じなんですよね、家にいても。

H:あのさ、感染から隔離するという「quarantine」という言葉があるんだけど、「監禁」という意味だからね。いやー、監禁されてるのか、僕たち(笑)

高田:でもなんか…コロナ禍になって割と早い時期に、たまたま伊賀くんのところにある海産物が大量に届いたというので、ちょっと自分で処理しきれないからみんなに配りたいんだけど、と言って。伊賀くんがわざわざうちの近くまで持ってきてくれたんですよ。その伊賀くんに会う…というか人に会うのがものすごく久しぶりだったので、伊賀くんが救世主のように見えて(笑)アワビだったんですけど、アワビを持った救世主が現れた、みたいな(笑)

H:神話だね。

伊賀:(笑)

H:で、アワビをみんなで食べたの?

高田:いや、それぞれ分けてもらって。

H:これはね、日本の古代の神話に近い。海幸彦…(笑)

2人:(笑)

伊賀:年末にね。

高田:年末だったっけ?そうか。

 

H:最近は…じゃあ一人ひとり。伊賀くんは音楽は聴いてるの?

伊賀:音楽は…逆に前よりも聴く時間がいっぱいできて。たくさん聴きますね、僕は。

H:どんなの?

伊賀:古い音楽よりも新しい、今の音楽のほうが聴いてますね。

H:例えば?かけるかもしれない。

伊賀:例えばね…サム・ゲンデル(Sam Gendel)という。

H:あ!やっぱりね。先週かけたばっかり。

伊賀:かけましたか(笑)サム・ゲンデル、やっぱりそうですか。じゃあやめますか…

H:やめなくてもいいよ(笑)

伊賀:それは最近聴いてました。

H:やっぱりそうか。その気持ちはわかるよ。今の音楽がどうなのか、というのはすごく興味があるし。音楽が伝えてくるものがあるじゃない。

伊賀:細野さんもサム・ゲンデル聴いてますか。

H:聴いてるよ。ブレイク・ミルズ(Blake Mills)とかね。繋がってく。でもラジオでは古い音楽をいっぱいやったりしてて。それも…今度サーフィンとかやらなきゃいけないというか。義務じゃないんだけどね、別に。

伊賀:サーフィン。

H:中学時代になにを聴いてたのか、というのをずーっとやってて。とんでもなくいっぱい聴いてるんだよ、あの頃って。もう30分じゃ収まらないからしょうがないんだよ。でも、いざサーフィンのを聴いてみたら騒がしくて騒がしくて(笑)

高田:そうですね(笑)

H:とても今の気持ちに合わないんだよ(笑)どうしようと思って、ちょっと悩んでるところ。やめちゃおうかな。

2人:(笑)

H:中学のときは夏だ!サーフィンだ!なんてね。♪ジャンジャンジャンジャンジャン…うるさいんだ、いま聴くと(笑)

高田:おもしろい(笑)

 

 

Afro Blue - Sam Gendel

(from『Satin Doll』)

  

 

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H:で、漣くんはなに聴いてるの?

高田:僕はですね…こういう放送でわざわざ、偉そうに言うことじゃないんですけど。

H:いやいや(笑)

高田:伊賀くんには以前話したんですけど、僕、このコロナ禍でお酒をやめまして。まったく飲まなくなったんですよ。

H:おお。すごいね。

高田:それで…その時間がすごい余るというか。飲んでた時間がたくさんあって、こんなに時間を使ってたんだ、と思って。その時間にとにかく本を読むようにしてるんですよ、今。で、その本を読んでる時間に音楽も聴くので、聴く音楽の種類が変わってきたというか。お酒を飲んでるときは、それこそサーフィンじゃないですけど、気持ちが高揚するようなものとか。そういうおもしろみを求めていたのが…それこそ宇宙から侵略者がやってくる、みたいなSFを読んでたらさすがに合わないので(笑)自然と昔のブライアン・イーノBrian Eno)の作品とかみたいなアンビエントや…恐怖映画のバックで流れてそうなものとか。そういうのばかり聴くようになってますね。

H:なるほど。アンビエント、合うよね。本を読まなくても。

高田:なんか怖い気持ちになったりとか。その時聴いてたのがブライアン・イーノの『Music For Installations』というやつだったかな?今度はなにもなしにもそれを聴くとSFの景色が目に浮かんできちゃうというか…そういう抑揚のない音楽というか、あんまり流れないものを…普段生きてるとテレビやなんかで急かされるというか…いろいろあるから、せめて音楽はゆるやかなものを聴きたくなってますね。なんとなく。

H:その気持ちはよくわかる。だからもう2年前にやってた、ああいうライヴはできない(笑)

2人:(笑)

H:まぁでも時々はやりたくなるかもしれない。またやるときは…一緒にできるのかな?全然違っちゃってたりして(笑)

高田:そうですね、10年ぐらい練習しないといけないでしょうね、リハーサルを…(笑)

伊賀:(笑)

H:たしかに(笑)10年ぐらいの感覚はあるよな。懐かしいもん。

伊賀:そうっすね…

高田:不思議と練習って…細かいテクニックは憶えてるんですけど、細野さんがさっき言ってたような、その場で感じていた言葉にできない何かが、全然今は変わっちゃってるから…

H:その通り。

高田:そういうスイッチだけが入らない。身体は憶えてるし、テクニックは残ってるのかもしれないけど、なにかがないんですよね。動かすための動力というか。

H:そうなんだよ。さぁ大変だ(笑)

2人:(笑)

 

 

Unnoticed Planet - Brian Eno

(from『Music For Installations』)

  

 

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H:いっぱい話しちゃって、すぐ時間が経っちゃうね、30分。じゃあ今度はね、大地くん(伊藤大地)たちを呼ぶんで…またおんなじような話を聞こうと思ってる。

高田:よろしくお伝えください。

H:はい、ありがとう。高田漣くん、伊賀航くんでした。

伊賀:ありがとうございました。

高田:ありがとうございました。