2021.03.21 Inter FM「Daisy Holiday!」より(抜粋)
H:こんばんは、細野晴臣です。きょうはですね…初めてですね、澤本さん。電通の…フルネーム忘れちゃった(笑)
澤本:大丈夫です!澤本嘉光といいます。
H:あ、嘉光ね。難しいや。えーと、何年ぶりかな?
澤本:もう、お話しするのは…結構ですね、3年とか。
H:そうですよね。前、ここに遊びに来て…不思議な話をいっぱいしましたよね。
澤本:そうですね、神社系の話とか。あとは1回、スカパラの沖くん(沖祐市)といっしょに来たことがあります。
H:そうそうそう。で、僕は澤本さんの番組に1回出たことがある。
澤本:はい。ありがとうございます。
H:それもずいぶん昔だよなぁ。
澤本:そうですね、もう5年ぐらい前ですね。
H:あの頃と今は違いますよね、やっぱりね。
澤本:違いますね。この1年で相当なものが変わりましたもんね。
H:でしょうね。いや、みんなそうだとは思うけどね。
澤本:きょう、こちらに伺う前に会社に寄ってきたんですけど。表現として「会社に寄ってきた」というぐらいに、会社に行ってないんですよ。
H:そうかそうか(笑)そうだよね。いろいろ…電通もニュースになるしね。
澤本:そうですね。ものすごくニュースになった1年でしたね。
H:でもお仕事はずっと…相変わらずなんですか?
澤本:そうですね。相変わらずテレビコマーシャルとか、Web動画とかのほうですね。電通の仕事としては。
H:個人ではなんか…YouTuberじゃないの?
澤本:YouTuberほどしゃべれないので…(笑)相変わらず映画の脚本をたまに書いてます。
H:あ、そうなんだ。それは…今までどんな映画になったんだろう?
澤本:直近だと…それこそ去年の3月に公開になった直後に、コロナで劇場が封鎖されちゃったんですよ(笑)
H:そうだ!そうなんだね。
澤本:『一度死んでみた』という不謹慎なタイトルの…
H:でも公開は…?
澤本:公開はして頂いて…広瀬すずさんと吉沢亮くんという2人が出てくる映画で。
H:いいメンバーだね。
澤本:そうですね、メンバー的には大変良かったんですけども。コロナのとき…映画の番宣でテレビに出るじゃないですか。
H:うん。
澤本:そのときに「見てね」って言えなかったんですよ。
H:それはつらいね(笑)
澤本:「劇場に来てね」とも言えないし…映画をやるという告知はいいけど、「見てね」とか「来てください」とはなかなか言えなかったですね。
H:そうか。でも、このCMの撮影とかへの影響はあんまりないわけ?
澤本:撮影もですね…昨年の緊急事態宣言のときはやはり全然なくて。で、夏ぐらいからちょくちょく出てきましたが、撮影環境がまったく違いますね、もう。手洗いとかマスクとかだけではなくて。
H:まぁ、それはみんなやってるもんね。
澤本:距離を取らないといけないんで…そうすると、撮影をしている場所に僕たちは近づけないんですよ。
H:あ、そう。
澤本:だから…コマーシャルをつくってるときに僕はセリフを現場で思いついて、「こういうのもできますか?」っていう風に通ったりするのが仕事だったんですけど、「来るな」っていうオーダーがあるので…(笑)
H:厳しいね(笑)
澤本:厳しいですね。仕事のスタンスがちょっと…
H:ギクシャクするね。いや、どの現場でもそういう話は時々聞いてましたけどね。
澤本:細野さんのほうはどうだったんですか?
H:いや、僕はね…あんまり変わらないですね。
澤本:変わらない?(笑)
H:普段からこのスタジオに閉じこもってるしね。
澤本:たしかに、このスタジオに降りてくる階段から雰囲気はまったく変わらなかったですね(笑)
H:変わらないでしょ?(笑)だから…1990年代にずーっとここで、ひとりでやってたのね。アンビエントみたいな音楽を。そこにまた戻っちゃった、みたいなね。
澤本:うんうん。
H:このラジオが救いというかな。ラジオの仕事…仕事というか、遊びなのか(笑)時々、月に1回は1から全部作ってたりして。それが結構おもしろくて。没頭できますね。だから、ものづくりには没頭できる時期なんだろうなぁ、とは思いますね。
澤本:そうですよね。
H:でも、みんなで作るというのは難しいね。だからライヴは全然やってませんよ。
澤本:僕たちも打ち合わせというものが…直でお会いして、というのがほとんどなくなってしまったので。
H:今はまた復活してるんじゃない?そうでもない?
澤本:比率としてはものすごく低いですね。
H:低いか。急には変われないんだね。んー。
澤本:場を読む、という作業がなくなったんですよね。例えばこうやってお話ししているときに細野さんのお顔を見て、あ、ちょっと怒ってるかな?とか。
H:(笑)
澤本:でも、今は並んで画面に映ってるので…
H:わかんないや。
澤本:もう「発言」という感じですね。
H:あれは僕は苦手だな…
澤本:(笑)
H:最新作は何を観られるんだろう、テレビで。
澤本:僕はまだソフトバンクの担当を…
H:ずっとやってますよね。
澤本:はい。で、最近はソフトバンクにドラえもんを持ってきて…
H:そうだ。
澤本:それをやってますね。
H:最初に僕がお会いしたのは妻夫木さん(妻夫木聡)とロケで…あの島は…
澤本:屋久島ですね。
H:屋久島だ(笑)呼ばれてね、僕も行ったんですよね。あれはディレクターだったんですよね?
澤本:あれはですね、僕はコマーシャルの企画、プランナーなので…まぁ脚本家ですね。ディレクターは別にディレクターの方がいらっしゃって。
H:あ、そうか。
澤本:でも、ああいうロケは最近…
H:ないでしょ。
澤本:外ロケはないですね。あのロケは特別に楽しかったですけどね。
H:楽しいね。あれから急に…なんだろうな、どういう縁が出来たのか…そうそう、澤本さんのベルトが左前か右前か、っていう話が…
澤本:はいはい!
H:それが…あ、ヘンな人!と思ってね(笑)
澤本:そうなんですよ(笑)ベルトって普通は反時計回りに巻くじゃないですか。
H:そうだよね。右利きだしね。
澤本:でも僕、ずーっと逆に巻いていて。
H:わざとね。
澤本:わざとです。最初それは、人と違うことをしよう、というのをベルトの巻き方ぐらいから始めたという…(笑)
H:そこから入って行ったんだ(笑)
澤本:あとは身体の向き…螺旋の向きとしてそっちのほうがいい、と言われたんですよ。気功をやっていたときの先生に。
H:あ、そうなんだ。
澤本:向きとして本来はそっちで巻いたほうがいいよ、と言われて。そっちのほうが地球に対していい、と言われて。ホントかな?と思ったけど…
H:いや、あるかもね。東半球と西半球で違うだろうけどね。
澤本:おそらく逆ですね。
H:水が穴からぐるぐる回って落ちてくるでしょ?そのときは右回りなのかな?
澤本:そうですね。北半球と南半球で逆なんですよね。台風の向きもたしか…
H:だったらベルトも逆がいいかもね(笑)
澤本:という理屈かもしれないですね(笑)
H:じゃあ、いまもずっとやってるんだ。
澤本:いまもずっとやってますね。これが元に戻っちゃうと普通の人に戻っちゃう…まぁ普通の人なんですけど(笑)
H:他になにかそういうことはやってるんですか?
澤本:そうですね、あとは日課として神棚を拝むというのと…どこへ行っても近くに神社があると必ずお参りするというのはやってますね。
H:おんなじだ。そういう人が増えてるような気もするんですよね、若い人に。
澤本:そうですね。それと同義かわからないですけど、御朱印を集めて回ってらっしゃる方が。
H:いますよね。まぁ、趣味だよね、それは。根っからですか?そういうのって。子どもの頃から?
澤本:神棚に手を合わせるのは子どもの頃からの癖でして…かつ、やっぱり神社に行くのは好きでしたね。空間として好きでした。
H:空間がいいですもんね。僕もね、子どもの頃から…ちょっとヘンだったな。
澤本:どんな風にヘンだったんですか?(笑)
H:いや、孫悟空に憧れてね。小学校の頃に『西遊記』の分厚い本を買ってもらって読んでたんです。呉承恩の原作に近いやつ。その中で、三蔵法師一行が困ったときにインドからお釈迦様と観音様が助けに来たりするので…こりゃあいいな、と(笑)
澤本:(笑)
H:で、その本の最後にお経が出てたんですよ。最後の1ページにお経が1行。短いんですよ。これだ!と思ってね。それをノートに書き写してね。それが先生に見つかって…「小学生のくせになんだ」と。そんなことがあって、その先生とはちょっと仲良くなったんですけど。そのお経がね、「十方三世一切諸佛、諸尊菩薩…摩訶般若波羅蜜」というのを漢字で模写して覚えたんですけど。
澤本:はい。
H:これはいまだに好きなお経ですね。この世の神仏全部尊敬してます、というような。その分で『西遊記』が締められるんですよ。それの影響はすごく強かったですね。それ以来、神仏の形とかが好きになって…いまもそういう人はいますけどね、みうらじゅんさんみたいな。
澤本:はいはいはい…
H:広辞林という古い辞書があって。そこにお釈迦様とか名もない仏様とか、全部絵が描いてあるんですよね。
澤本:あ、絵付きなんですか。
H:古い絵なんですけどそれがすごく好きで、模写してたんですね。
澤本:絵の模写ですか。
H:うん。それとおんなじことを僕の祖母がやってたんですよね。だから遺伝なのかな?んー。
澤本:それは、細野さんはおばあさんがやってらっしゃったのを見た記憶からやってらっしゃったんですか?
H:いや、後から。そのおばあさんがなんでそういう絵を描いていたかというと…僕は会ったことないんですよ。祖父がタイタニックに乗って生還してきたでしょ?そのときの感謝で南無阿弥陀仏…って、阿弥陀仏の絵を藁半紙に並べて奉納したんですよね。それが形見で出てきてビックリしちゃって。おんなじ配列なんで…(笑)
澤本:じゃあ、ホントにそれは偶然そうなった…
H:偶然です。そういうのがあって、そんなことばっかり考えてたら、母親から「そんな教育をした覚えはない」と言われて(笑)
澤本:(笑)
H:あの時代の家庭というのはだいたい…敗戦後だから、うちの宗教は何だ?と訊くと無宗教だ、と。ああそうなのか、と思ってね。自分はちょっと違うけど、と。そういう母親から見ると僕はやっぱりヘンなんですね。
澤本:(笑)
H:そのくらいへんだった?(笑)
澤本:そうですね、細野さんに比べるとヘン度は低いと思いますけどね…(笑)お墓参りが好きなんですよ。
H:これはすごい!いい日本人だ(笑)
澤本:いやいや…僕は祖父祖母のお墓が鎌倉と北海道の余市という漁村にあるんですけど。
H:いいところにあるなぁ。
澤本:その余市のお墓に…札幌出張だと無理やり行くんですよ。
H:結構遠いかな?
澤本:最近ちょっと近くなったんで、車で1時間ぐらいですけど。レンタカーを借りてお墓参りするんですけど…人がみんないないので、お墓の前で喋るんですよ。来たよー、と。そこにいる人と普通に喋っているかのように。最近ちょっと来てなかったね…とか。
H:(笑)
澤本:きょうは晴れてて海が見えるよね、ということをずーっとお墓に言って。
H:それはね、正しい対話の仕方ですよね。
澤本:なかなか、東京のほうでそれをやると大丈夫かな?っていう感じに見られるけど。でも、その様子を北海道で見ていた人がいると、ちょっとヤバいやつがお墓と喋ってる、ってなると思います(笑)
H:だから、人がいないところでやるのはいいね。誰かに見られるのはイヤだな。ネイティブアメリカンも…薬草を摘む人たち。メディスンマンとか。必ず声に出してお礼を言え、と言うんですよね。思ってるだけじゃダメなんだ、声を出すから伝わるんだ、と。
澤本:はいはい。
H:それ以来、僕も声を出すようにしてます。だから正しいやり方ですね(笑)
澤本:よかったです。間違ってると言われたらどうしようかと…(笑)
H:いやいや…でもやっぱり、なかなかいないかな。お墓の前でブツブツ言ってる人は(笑)
澤本:そうですよね(笑)あまりいてほしくもないかもしれないですけど…
H:仲間の人たちはそういうことを知ってるんですか?
澤本:いや、あんまり言ってないですね…こんなことを言っちゃうのは細野さんだから…(笑)この空間が言わせてる感じがします。
H:いいのかな?ラジオでみんな聴いてるけど(笑)
澤本:大丈夫だと思います(笑)
H:でも、正しいことなんだと思って聞いてましたけどね。それは別に恥ずかしいことではないと思います。
澤本:ホントですか。ありがとうございます。
H:…ずーっと話してていいのかな?(笑)なんか音楽かけようかな。音楽ってどういうのを聴いてるんだろう。
澤本:聴いてるのは最近のやつというよりは…昔って言うと失礼ですけど。結局、自分が中学生までに聴いたものが全部好きなので、その辺りのものを聴いてたりします。
H:中学校のときはなにを聴いてたんでしょう?
澤本:僕は小学校の終わりころからビートルズだったので…それこそYMOとビートルズが同時期です。
H:なるほどね。そうか。自分的にはYMOよりビートルズをかけたいかな、いま。
澤本:(笑)
Dear Prudence - The Beatles
(from『The Beatles』)