2021.10.17 Inter FM「Daisy Holiday!」より

 

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H:はい、こんばんは。細野晴臣です。きょうはですね…久しぶりというか。4人組で前は2人いらっしゃって、きょうは違うメンバーが2人来てます。Yogee New Wavesの…どうぞ。

角館:こんにちは、ギターボーカルの角舘健悟です。

粕谷:ドラムの粕谷哲司です。

2人:よろしくお願いします。

H:ずーっとこのスタジオをキョロキョロ見てましたよね、2人とも(笑)

角館:そうですね(笑)

粕谷:いやー、これは気になりますね。

H:本当?

粕谷:ちょっと散策したくなるような…(笑)

H:機材オタクだね(笑)最近の人はみんなそうなのかな?

粕谷:そうですね、周りの友達もそういうやつが多いですね。

H:みんなよく知ってるしね。それで…新作が出たね。

2人:はい。

H:えーと…『WINDORGAN』ですね。10月13日にリリースという。これ、ジャケットはずーっとおんなじなんですね、前の作品とね。なんで?なんでっていうか…シリーズなのかな?

角館:そうですね…このロゴは最初からあるんですけど。EPではもうちょっと言いたいことというか、言葉とか写真にしているんですけど、アルバムでは精神性を出したくて。色とかの抽象度を上げて。

H:なるほどね。アンビエント時代のアルバムにはこういうのが多かったね。でも「New Wave」なんだね(笑)

角館:そうですね(笑)

粕谷:名ばかりなのでちょっと恐縮ですけども…(笑)

H:いやいや…ツアーもあるし、もうすぐだね。この放送がある頃にはもうやってるんだ。ちょっとスケジュールを見るとですね…お、すげぇいあっぱいある。元気だね。

2人:(笑)

H:えーと、東京はいつだ…11月16日ZeppTokyo、17時、スタート18時。ぜひ、みなさん。生で観たいですよね。

角館:そうですね。

粕谷:でも、この公演数は初めてですね、14都市は。今までも…最大で9都市とか、そんなもんでしたよね。

H:ほほう、人気が出てきたね、さては(笑)

角館:そうだとうれしいですね(笑)

H:知人のエンジニアの娘さんが音楽をかけてて。そのエンジニアが「いいねこれ!誰?」って訊いたらYogee New Wavesだったというね。ついこないだその話を聞いて。そんなにいいのか、なんてね(笑)

2人:(笑)

H:さっそく聴かせてもらおうかな。なにか推薦してくれますか?

粕谷:わぁ、どうしようかな…

角館:迷いますね…

粕谷:せーので指さしてみよう。

角館:ああ、ここでこっそりと…

H:はい、どうぞ(笑)

2人:せーの…

粕谷:…"Long Dream"ね。決まりました、満場一致で(笑)

角館:満場一致です(笑)

H:では、"Long Dream"。聴かせてください。

 

 

Long Dream - Yogee New Waves

(from『WINDORGAN』)

  

 

H:気持ちいいね。すごくナチュラルなサウンドで。

粕谷:ありがとうございます…そうですね、好きなサウンドを詰め込んだ曲だったので2人とも最初に選んだのかもしれないです。

 

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H:最初の頃はどんな感じだっけな…いつ会ったんだっけ?あ、福岡だ。もう随分前だね、あれ。

角館:そうですね、3年前ぐらいじゃないですかね?

H:あ、たった3年前か(笑)この2年間ってすごく長いから…すごい昔に思えるな。そうだったね。

[*福岡の音楽イベント「CIRCLE」で両者が初めて共演したのは2017年。]

 

H:最近はこの2年間どうやって過ごしてきた?って、だいたいみんなに訊いてるんだけど。そうね…2020年ごろはどうしてたの?

粕谷:そうですね…コロナが始まって最初の緊急事態宣言が出たときは、もうメンバーで会うのもどうなんだろう、という。

H:やっぱりそういう感じだったんだね。

粕谷:で、スタジオにもやっぱり入れなかったので、それぞれおうちでなにか個人でできることをやったりとか。リモートでバンドとしての動き…これからどうしていくか、というのをずっと話し合っていたような気がします。

H:いいね。結束が固いね(笑)

2人:(笑)

粕谷:いやーでも、そのときはいちばん結束がぐちゃぐちゃっとなったような印象がありますね。全員不器用というか…(笑)

H:そうなんだ(笑)

粕谷:直接会って話さないとなんかグルーヴしていかないな、というところはすごく感じました。

H:そうか。なかなか会えなかったということね。みんなそういうことなんだろうな、と思うけどね。僕なんかは最初から誰にも会ってないけどね、昔から(笑)

2人:(笑)

H:だからうらやましいよね、バンドって。

角館:頼れますからね、いざというときには。

H:そうだよね。懐かしい。

2人:(笑)

角館:めちゃめちゃうれしい話ですけどね、そのお言葉というか。

H:70年代はそうだったしな。

粕谷:そうですよね。

角館:仲良かったですか?

H:いやー、まぁまぁね(笑)

2人:(笑)

H:いや、仲が良いんだろうね。毎日会ってたから。いつも誰かの部屋…うちか松本隆の部屋で集まってはレコードばっかり聴いてたね。どうなの?レコードは聴くの?

角館:レコード、聴きますね。

粕谷:聴きます、好きですね。

H:レコードというか、CDか(笑)

角館:CDも聴きますけど…

粕谷:レコードで聴きますね、メンバーは。

角館:はい。

H:「こんないいのがあったよ」とか持ってきたりするの?

粕谷:やりますね。でも、今だとサブスクで…こういうのあったよ、みたいなのはずっと…

H:そうだよね。

粕谷:それこそ健悟のハウススタジオというか、おうちに集まってスピーカーでみんなで聴く、みたいな時間はあります。

H:それそれ、それだよ。バンドっぽい(笑)

2人:(笑)

H:で、最近はなにが好みなのかな?そういうの聞きたいんだよな。

角館:最近…個人的にはすごくブラジル音楽が好きで。それこそカエターノ・ヴェローゾCaetano Veloso)とかジルベルト・ジル(Gilberto Gil)とかアジムス(Azymuth)とか。あの辺をダラッと聴いてますね。

H:いいね。落ち着いた人だね(笑)

角館:うれしいです(笑)

H:どうですか?

粕谷:そうですね…僕もブラジル音楽とか。昔のソウルだったりA&R(AOR)がずっと好きなんですけど。スティーリー・ダンSteely Dan)はホントに昔からずっと好きで。でも、最近ちょっと家のスピーカーを新調して。今の音楽というか…2019~2021の音楽を最近聴くようになりました。

H:スピーカーを替えると聴くものが変わるんだ(笑)

粕谷:変わりました。

角館:変わりますねー。

粕谷:今のスピーカーというか…Lowがたっぷり出るようなスピーカーにしたので。

H:いい音だろうな…僕はいっつもヘッドフォンで聴いてるけどね(笑)

2人:そうなんですか!

H:部屋にスピーカー置いてないからなぁ。

粕谷:へぇ…

角館:どうしてですか?鳴りとかですか?

H:前ね、部屋でやってた頃…違う部屋だったんだけどね。文句を言われたことがあるんだよね(笑)やっぱり集合住宅だから…箒の柄かなにかで床か天井かを叩かれたんだよね、ドンドンドン!って(笑)

2人:(笑)

H:すごい怯えちゃうじゃない。

粕谷:そうですね、怖いですよね。

H:あのね、60年代のモニターというのはスタジオでALTECの「銀箱」と呼ばれている、銀色のスピーカーで聴いてたわけ。ある時それがJBLになって、急に音が変わったんだよね。良くなったというか派手になった。音が派手だとミックスが地味になっちゃうというかね(笑)

角館:なるほど。

H:だから今は「銀箱」に憧れてるんだよね。地味な音なの。

角館:いいじゃないですか。

 

H:資料を見ると、曲目の中に"あしたてんきになれ"という曲が入ってるんだけど…全然違う曲だよね?

角館:そうですね。

H:どうして?(笑)

角館:あの、少し…某はっぴいえんどが大好きで(笑)自分たちもこの言葉がとても好きだったので…

H:そうか。それ聴きたいな。いい?聴いても。

角館:あ、いいですよ。

H:じゃあ聴かせてください。

 

 

あしたてんきになれ - Yogee New Waves

(from『WINDORGAN』)

  

 

H:なぁるほど。全然違うね(笑)

角館:全然違いますね(笑)恐縮です。

H:いやいやいや…でも、タイトルは僕も好きなんだよね、"あしたてんきになれ"。

角館:いい言葉ですよね。

H:うんうん。

 

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H:その名前なんだけど…「ヨギー」というのはどこから来てるの?

角館:このヨギーというのはマハリシ・マヘーシュ・ヨーギー(Maharishi Mahesh Yogi)という…

H:あ、そこから!信じられない(笑)

角館:はい(笑)あのヨガマスターの名前からちょっと拝借して…ヨギーという名前を借りてますね。ヒッピー文化というものにすごく興味があったんですよ。バンドを組みたての頃は特に。

H:なるほどね。そうかそうか。それは興味深いね。そうなんだ、そこから来てるとは全然思わなかった。

角館:ちょっと犬の名前みたいでね、ヨギーというのが…なんかいいな、という風に思ってたんですけどね(笑)

H:犬は飼ってるの?

角館:昔、祖母が飼ってましたね。「桃太郎」という犬を…(笑)

H:桃太郎のほうがいいな(笑)

2人:(笑)

H:へぇ…どういう生活圏で暮らしてるの?

角館:僕らは…そうですね。

H:近いの?みんな。

粕谷:近いですね。まぁ、新宿周りですかね。新宿近辺で活動というか、生活圏にしているような感じです。

角館:そうですね。

H: 新宿というとみんな駅周辺のことしかイメージしないけど、すごく広いんだよね。全然違う場所もあるよね、新宿の裏の…西新宿・東新宿とか。いいところあるよね。

角館:喫茶店もすごく多くて…タバコも吸えるんですよね。

H:あ、いいね。引っ越したい(笑)

2人:(笑)

角館:ぜひぜひ…

H:そうか、そういうところか。

粕谷:当時のここら辺の雰囲気というか…どういう感じだったのかなぁ、と。思いを馳せていたんですけど。白金ってあんまり、普段から生活圏でもないし、来ないような場所だったので…

H:そうかもね。なんだろうな…最近のここら辺は好きじゃないんだけど(笑)昔はよかったよ。誰も来ない街なんだよね、外から。でもバブルの頃からヘンになってきたんだね。「シロカネーゼ」とか言い出して。

粕谷:そうですね(笑)

H:で、犬を散歩してるマダムがいっぱいいるね(笑)

粕谷:クネクネした犬がね(笑)

H:そうそう(笑)そういう感じになってきちゃったね。だから、日常使いの喫茶店がないんだよ。

角館:そうなんですか!

粕谷:なんか、残ってるというか…

H:つい数年前までは残ってたの。行きつけの…歩いてすぐ、50歩ぐらいのところに。ROROという喫茶店があったのに、なくなっちゃったんだよね。僕の祖父がよく散歩の帰りに寄って、タバコ吸ってたみたい(笑)

角館:本を読んだりとかしてね…

H:そういうところがないんだよな、今。

粕谷:でも、新宿近辺もそうですね。減っていって…

角館:減りましたね…

H:本当?

粕谷:もう、タバコを吸えるところを探すのに必死ですね。

H:そうか、2人とも吸うんだね(笑)

角館:そうですね(笑)

H:めずらしいよね。

角館:減りましたね、最近ね。

 

 

H:さて…喋ってるうちに時間が来ちゃって。

角館:ありゃ。

H:また来てもらうこともあるだろうし…でも、なにかメッセージをもらおうかな(笑)

2人:(笑)

H:そういえば、数年前恵比寿ガーデンでイベントをやったときに、僕の曲を歌ってもらったんだよね。

角館:そうですね。

H:あれは"はらいそ"と…

角館:"ろっかばいまいべいびい"。

H:もう1回それを聴きたくなっちゃったな。あの時の記録残ってるんで、もう1回聴こうかな。

角館:おお、やったー!僕、"はらいそ"を聴きたいですね…

H:ね。今ないんだけどね(笑)

角館:シンセサイザーをがんばったんです。

粕谷:作ってたね。

角館:ポロポロポロポロ…って。シークエンスで。

H:そうか、それはうれしかったな。まぁ、それはじゃあここでお礼を言っておいて…こっちからのメッセージになっちゃったけど。

2人:(笑)

 

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H:じゃあね、時間なんで…また来てくださいね。Yogee New Wavesのお2人でした。

2人:ありがとうございました。

 

 

@@@@@@@@@@@@@@@@

 

 

角館:高田馬場にはまだタバコの吸える喫茶店が…あるんですよね。

H:へぇ!それはちょっと知りたいな。高田馬場か。行ってないなぁ。

角館:早稲田松竹という小っちゃい映画館あるじゃないですか。

H:あー、それは有名だ。

角館:あそこの向かいのエスペラントというところはまだ吸えて…

H:あ、ホント?覚えやすいね。

角館:行き来してるんですよね。

H:(笑)

(タバコに火を点ける)

H:早稲田もいい喫茶店あるよね、さすがに。

角館:ありますね。で、こいつは早稲田大学なんですよ。

H:やっぱりそうか。

粕谷:俺は早稲田出身で…

角館:僕は日芸なんですけど…早稲田とかは勝手に入っても怒られないじゃないですか(笑)

H:だろうね(笑)「天ぷら」っていうんだよね、そういうの。

粕谷:あ、天ぷらっていうんですか?(笑)なんでですか?

H:わかんない(笑)衣をつけたニセ学生っていう…

角館:(笑)

粕谷:なるほど(笑)

H:学食、いいよね。青山学院の学食がよかったり…

角館:なんなら、細野さんがライヴしたとき観に行きました。

粕谷:早稲田で…

角館:早稲田のホールでceroと2マン。

H:あ、やったやった。そうそう。あ、観に来てたの?(笑)

粕谷:観に行ってました。

角館:ヨギー始めたてで…1stデモができたぐらいで。なんとか聴いてもらおうと思って…投げる準備とかしてたんですけど(笑)

H:(笑)

角館:これは止められるからやめよう、って(笑)その話すればよかったかな。

H:投げる人はあんまりいないよね。

角館:けっこう前のほうにいたので…聴いて!って。

H:投げたの?

角館:投げなかったです(笑)止められたら顰蹙がヤバい、と思って…

H:そうか、来てたのか。

角館:あの日のライヴはめちゃくちゃよかったです。

H:いろんなところでやってきたけどね…いまいくつ?

角館:今年30歳ですね。

H:あ、まだ若いな…

角館:まだまだですよ…(ため息)

H:いやいやいや(笑)

角館:はやく50歳ぐらいになりたいですね。

H:おお…僕も50歳になりたい(笑)

2人:(笑)

角館:足して2で割ったりとかして…(笑)

H:昔の60年代の音楽とか聴くと…ザ・バーズThe Byrds)とかザ・バンド(The Band)、もちろんディラン(Bob Dylan)も。色んな人がいたけど、みんな若いのに大人なんだよね。

粕谷:あー…

角館:そうですよね。

H:音楽もそう。音楽も大人なんだよな。それを聴いてる僕たちは20代なのに…今考えると老けてるというかね。というか今の音楽…日本は全体的に子どもの音楽ばっかりだな、と思うよね、そういうのを聴くと。

角館:そうですね…日本はそうですよね。

粕谷:できるだけ渋いのをやりたい…という気持ちはあるんですけど。

角館:ここでちゃんとやっておかないと…みたいなときもある(笑)

H:じゃあ、はやく50歳になったほうがいいね(笑)

粕谷:そうなんですよね(笑)はやく年を取りたい、という…

H:…このくだりおもしろいね(笑)

角館:なんか緊張してしゃべれなかった…(笑)

H:黙っちゃうんだもん(笑)

角館:なんだかねぇ…(笑)

H:これ使おうかな、どっかで。

角館:ありがとうございます。「風街レジェンド」を観に行ったよね、メンバーで。

粕谷:みんなで行きました。

H:あ、そう?

角館:すごいよかった、あれも…やばい、いっぱい話しちゃう(笑)

H:(笑)

角館:最後に一つだけ話したいことがあって…

H:どうぞ。

角館:ちょっとCDを持ってきたんですけど…

H:なんだ、それを言ってくれないと…(笑)

角館:これ、井上陽水の『ハンサムボーイ』なんですけど…1曲目の"Pi Po Pa"、細野さんやってるじゃないですか。

H:やってる。

角館:これがめちゃめちゃカッコよかった、という話を…

H:(笑)

角館:木琴のアレンジがカッコよすぎ!と思って。

H:なにをやったか全然憶えてないんだよね、それ。

角館:これね…差し上げますよ。

H:え!僕も持ってるんじゃないかな…(笑)

角館:僕も、2枚あるから…

H:ほんと?なんかくれた(笑)

角館:井上陽水の『ハンサムボーイ』をあげるという…(笑)

H:なんでくれたんだろう(笑)

 

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角館:これもめちゃめちゃいいですよ。鈴木弘の『CAT』という…ジャパニーズジャズなんですけど。トロンボーンの…

H:これは知らないな。

角館:これもめちゃくちゃ最高…

H:これはいつの?

角館:これは1974年とか…

H:へぇ。

角館:これも差し上げます。

H:いいの?2枚あるの?

角館:これはね、普通にまた買います。

H:(笑)

角館:いいんです(笑)CD買うの好きなので…

H:じゃあ頂きます。

角館:聴いてください。

H:これは知らなかった。

角館:ぜひぜひ…めちゃくちゃグッドっす。

 

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H:へぇ…70年代っておもしろいよなぁ。

角館:おもしろいですね、機材もねよくなってくる感じしますよね。

H:そうそうそう。

 

2021.10.10 Inter FM「Daisy Holiday!」より

 

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H:こんにちは。こんばんは。細野晴臣です。きょうは…この番組は初めてですよね、吉田美奈子さんです。

吉田:はい、そうです。ありがとうございます、お呼び頂いて。光栄です。

H:いやいやいや…前に一度、美奈子の番組にお邪魔したことはあるよね。

吉田:はい。4時間の番組にお付き合い頂きました(笑)

H:4時間だった?すごいな。

吉田:30数曲ぐらいかけて頂いて。

H:そんなに?この番組は30分なんで…(笑)

吉田:はい(笑)

H:いやー、早速ですけど…

吉田:48年前の…

H:48年!『扉の冬』がリマスターで新しくなったという。

吉田:ボックスが出てるんですよ、それ以外に。アナログ盤とCDとシングルCDと…全部入ってるんですよ。

H:シングルCDなんてかかるの…?

吉田:それで1万円です。

H:まぁ、手ごろかな(笑)

吉田:なんか、ほんとにゴージャスなやつを作って頂いて。

 

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H:そうなんだ。まぁとにかく、この『扉の冬』というデビューアルバム…おいくつだったのかな?

吉田:20歳(笑)

H:48年+20歳…(笑)

吉田:細野さんだって20代ですよ?

H:20代だね。あんまり変わんないんだ。

吉田:え、いくつ違うの?6つ?

H:6つだね。お互いにベテランみたいな気持ち…(笑)

吉田:おじいちゃんはおばあちゃんになって、おばあちゃんはおじいちゃんになっていくんですよね、だんだん。雰囲気が。

H:そうか。僕はおばあちゃんっぽい?

吉田:おばあちゃんっぽくなって…(笑)

H:ときどき言われるかなぁ。でもね、なんだろう…自分には女性性があんまりないんだよ。女のことは全然わからない(笑)

吉田:(笑)

H:気持ちがまったく理解できない。突然怒ったりするじゃない?

吉田:うん、気に入らない。

H:理由が理解できないんだよ。

吉田:理由は…説明すればいいんですか?そういうときって。

H:「なんで?」って訊いても、口を利かなくなるでしょ?女性って。

吉田:あー…いや、私はきちんと説明しますけどね。

H:そのほうがわかりやすいかもね。

吉田:それで「怒ってる?」って言われて、いや、そうじゃなくて指摘しているだけです、って(笑)

H:僕もおんなじだ。ときどき怒るけど、それは自分の感想だっていう。

吉田:同じです。

H:そうするとまぁ、うまくいくよね。

吉田:上手くいきます。話を聞いてもらえるし。

 

H:それはさておき…48年前の出来事を。

吉田:キャー、憶えてますか?(笑)

H:あんまりね、突然言われても…でも、美奈子との場は憶えてるよ。

吉田:スタジオとかそういうことですか?会ったとき?

H:スタジオも憶えてるし、会ったとき。「東京キッド」の…

吉田:「東京キッド」は細野さんたちがライヴバンドだったんですよ。

H:エイプリル・フールだよね。

吉田:そうそう。たまたまエイプリル・フールを観に行って。「東京キッドブラザース」の新しい出し物で歌が歌える人がいない、と。なんでミュージカルなのに歌える人がいないの?となって(笑)それでジャングルジムの上で、亡くなったイラストレーターのペーター佐藤さんと一緒に暗ぁい曲をデュエットしたんですよ。それが始まりですね。

H:なんか、先に…「ヘアー」という渋谷にあったミュージカル喫茶、「東京キッド」のね。あそこでずっとやってたのは憶えてるんだけど。

吉田:いや、「あそこに通え」と言われて…ぜんぜんやる気はなかったんですけど(笑)

H:へぇ、自分から飛び込んでいったのかと思ってた。

吉田:とんでもないです、やる気ないですよ。だっておもしろくない…(笑)

H:まあね。今だから言える(笑)そうか…

吉田:で、ペーターとはすごく仲良くなって。ペーターのアシスタントをやったりして…コラージュをちょうどやり始めたときで、「キッドブラザース」のアートを全部ペーターさんがやっていて。それのお手伝いをしてました。

H:うん。とにかく東京近郊のどこかから単身、東京に飛び出してきて…あの頃の雰囲気ってヒッピーじゃない?

吉田:ヒッピーですね。

H:ヒッピーだったの?

吉田:ヒッピーにしては若くないですか?(笑)

H:若いよね(笑)16歳だよ。

吉田:そうです。音楽の学校に行ってて、あんまりおもしろくなくて。で、バイトで「曲作ってみたら?」と言われて。その当時はまだ学生運動の名残で、新宿の西口広場に3つぐらいのコードで歌を歌ってる人がいて。それよりはちょっとオシャレなコードの曲を作ったら、「いいんじゃない?」という話になって。少しずつ仕事を始めて…

H:あ、そうだったんだね。

吉田:細野さんとか松本さん(松本隆)の背中を見て…ジーッと見て学習して。

H:見られてたんだ(笑)

吉田:そう(笑)それで少しずつ働けるようになったんです。

H:そうやって…その頃は16歳で。『扉の冬』を作ったのは?

吉田:それが20歳ですから…18歳のときに「マッシュルーム」という村井邦彦さんのレーベルがあって。それと契約したんですけど、あんまり作りたくなくて流しちゃったんですよ。それで20歳になって「風都市」ができたでしょ?それでトリオレコードでレーベルができたんで…そこで作ったんです。

H:そうか、これトリオだったんだね。それで、曲は決まってから作ったの?

吉田:いや、曲は少しずつ書いてた曲を…だから原風景の曲が多いです。

H:うん。ちょっと聴こうか。

吉田:なにを聴きます?

H:このアルバムね、すごく出来がいいなと思ってて。ミュージシャンとして(笑)

吉田:ベースの話ですか?(笑)

H:いやいや、全体の話(笑)曲もいいし。演奏も楽しかったのを憶えてる。

吉田:あ、ほんとですか。プログレとか言われたりした曲もありますけど。

H:本当?ぜんぜんそんなことは思ってなかった。なにがいいかな…

吉田:憶えてますか?曲。

H:憶えてるよ。"扉の冬"かけよう。タイトル曲。

吉田:はい。

 

 

扉の冬 - 吉田美奈子

(from『扉の冬』)

  

 

H:おお、なんか透明感が…

吉田:細野さん、いっぱい弾いてますねベース。

H:ちょっと手数が多いかな。

吉田:今は親指でしか弾いてないという噂が…(笑)

H:そうそう、省エネなんで…(笑)親指だけで弾く人って結構いるんだけどね。

吉田:あー、そうですね。

H:ギターでも…ウェス・モンゴメリーWes Montgomery)、親指だけでやってる。すごいよね、あの人。

吉田:すばらしいですよね。

H:あそこまではできない。

吉田:YouTubeで観られるようになってからビックリすることがいっぱいありますね。

H:そうなんだよ。全然知らなかったよね(笑)

吉田:どうやってやってるんだろう?と思って工夫したてけど、実際にああやって見られるわけじゃないですか。今の人たちはすごく恵まれてますよね。

H:そうなんだよ。こっちは想像だけでやってたもんね。

吉田:そう。でも、想像だけでやってるから逆にすごくおもしろいことができたかもしれない。

H:かもね。本家とは違うやり方でおんなじような音を出してたという…(笑)

 

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H:さぁ、それで…この頃、僕の記憶ではローラ・ニーロLaura Nyro)が…

吉田:ローラ・ニーロを教えて頂いて…ローラ・ニーロに狂っていましたね。

H:そうだよね。ピアノも元々弾けてたから、ちょうど…

吉田:いや、でもピアノは亜流なんですよ、ほとんど。学校に行くために先生からきちんと正しく習っただけで。いまはどっちつかずになっちゃうから…歌ばっかりですね、最近は。

H:あ、最近は弾いてないんだね。

吉田:弾いてないですね。両方ダメになっていっちゃう、と思ってしまって。

H:そうかそうか。

吉田:歌はやっぱりちゃんと歌わなきゃいけない、と思う。

H:最近はだから…ソウルシンガーとして、世界中で…(笑)

吉田:え?(笑)ソウルシンガーじゃないですけど…でも歌はいいですよね。世界中にはいい曲がいっぱいあるじゃないですか。でも、シンガーソングライターとしてデビューしちゃうと、常に自分で曲を書いて歌っていなくてはいけない、というのをお客様が強いるんですよ。

H:あるね、そういうの。

吉田:だけどそれがイヤで。昔からジャズの人たちとか、いろんな人たちと一緒にやってたので。

H:そうだよね。

吉田:今ね、日野皓正のクインテットとジョイントでツアーを回ってるんですよ。

H:ほう!もうジャズの世界に入ってるんだ。

吉田:いや、ジャズ…私のルーツはジャズじゃないんですけど、おもしろいです。譚歌という日野さんのグループにいたベースの金澤英明という人と。それからこないだちょっとご病気になっちゃってバンドを辞めた石井彰さんというピアニストと。その3人でライヴをやってます。で、オリジナルのほうは森俊之さんという人と一緒にやってるんですけど、ジャズというかカヴァー全部はその譚歌というデュオの人たちと一緒にやってます。

H:うん。ずいぶん前になるけど、"ガラスの林檎"をカヴァーしてたのを聴かせてもらって。

吉田:ああ、松本さんが大喜びで…45周年でしたっけ?コンサート。今度は50周年?

H:45周年のときにもやったんだ。毎年やればいいのにね(笑)

吉田:そのときに歌いながらパッと見たら、前のほうの壁際で思いっきり踊ってました、松本さん。

H:ええ!そんなの見たことない(笑)

吉田:松本さんが踊ってる!と…(笑)見たことないでしょ?私も初めて見たんですけど。

H:あ、でもね…学生の頃というか、はっぴいえんどをやる前はしょっちゅう踊ってた。

吉田:そうなんだ。踊る作詞家だこの人!と思って(笑)

H:(笑)

 

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吉田:ビックリした、そのときは。

H:やっぱりドラマーだからね。

吉田:あー…すごい練習してるみたいですね。

H:そうそうそう(笑)練習してるの?って訊いたら「3日間やった」と言ってたね。3日でいいのかな?(笑)

吉田:そうか、3日間か…(笑)

H:いろんな噂が立ってるけどね。神戸でバンドを作った…みたいなね。

吉田:なんか写真出てましたけど…ピアノを弾いて歌う女の人がいて。一応、グループっぽかったですよ。

H:ほう。なんか、やる気があるのかないのかわからないな(笑)

吉田:どうなんでしょうね。

H:いやー…多分やらないと思うけどね。

吉田:でも今すごいじゃないですか、マスコミへの出方が。

H:出方はすごいよ。でも、作詞家として出てるだけで。

吉田:でも、まんざらでもない顔してますよ(笑)

H:いやー、うれしいだろうね(笑)

吉田:すごくニンマリしてる(笑)笑ったことないじゃないですか、あの人。写真で。

H:そうそう、いつも…

吉田:ムスッとした顔してるから。あ、笑ってる!と思って…そういうところを見て喜んでるんですけど(笑)

H:そうかそうか(笑)

 

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H:ずいぶん長い付き合いだよね。

吉田:そう。ありがとうございます。光栄です、記憶の片隅に居られるのは。

H:いやいやいや(笑)こうやって会えるしね。で、なんかあるときはときどき歌ってもらったりするじゃない。最近はちょっとないけど…もう1曲?

吉田:はい。なんですか?

H:♪~

吉田:あ、それは"外はみんな"です。

H:じゃあそれだ。はい"外はみんな"。これ好きなんです。

 

 

外はみんな - 吉田美奈子

(from『扉の冬』)

  

 

H:いやー、いま聴いてもいいね、これは。

吉田:細野さんカッコいいですねー!

H:この頃まだベーシストだったんだな(笑)

吉田:この頃は(笑)今はなんですか?マルチプレイヤーですか?細野さん、とにかくね、なにやっても素晴らしいんですよね。ギター弾いても

H:いやいやいや…そんなに褒められると怒られるかも(笑)

吉田:ほんと素晴らしいですよ。やっぱり才能がある人はなにに手を出しても全然問題ない。

H:手を出し過ぎだよ(笑)

 

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H:いやー…美奈子にはすごく親しみがあるんだけど、ときどき怒られるんだよね。

吉田:えー、怒りましたっけ?憶えてないです。

H:いや、憶えてないと思うよ。いつだったかな…アルファの頃だからもうYMOをやってたかな。

吉田:卓の上にコーヒーをこぼすとか、そういう?

H:そういうこともあったけど、それで別に美奈子が怒ることはないからね。松武さん(松武秀樹)に怒られたよ(笑)

吉田:(笑)

H:高いシンセの上に…

吉田:そう、ミルクと砂糖が入ったコーヒーをこぼしましたよね。

H:まずいなぁ、あれは…かわいそうに、松武さん(笑)

吉田:え、でも卓にもこぼしたんじゃなかったかな?

H:卓にもこぼしてるんでしょうね、それは。

吉田:入ったばっかりの新しい機械にこぼして…

H:もう、いろいろこぼすからね、僕(笑)それじゃないんだよ、それじゃなくて…なんだろうな、頭がよくなる本、みたいなバカみたいな本を読んでたの。

吉田:え、細野さんがですか?

H:うん。そしたら「そんなの読んでるから頭良くならないのよ」って(笑)

吉田:えー、ほんとですか?(笑)

H:たしかにそうだよな…でも別に真剣に読んでたわけじゃないんだよ(笑)突然言うんだよ、通りすがりに。表紙を読んで。

吉田:それはきっと観察してるんですね。

H:でもね、反射的にパンッと言うんだよね。

吉田:失礼しました(笑)

H:そういうことって憶えてるんだよね。

吉田:えー、私憶えてないです。

H:いいよ、憶えてなくて。どうってことない話だよ(笑)

吉田:言われた人のほうが憶えてますよね。私はすぐ忘れちゃうんで…なんか降ってくるんですよ、上から(笑)

H:やっぱりね(笑)そういうタイプだよね。

吉田:(笑)

H:なんか体温高いんだってね。

吉田:高いです。でも、手のひらはそうでもないんですけど。

H:いま、僕は36.5度にやっとなってきたんだよ。

吉田:低かったんですか?

H:前はね、ずっと低かった。35度台だった。

吉田:高いほうがいいんですか?

H:高いほうがいい。ウイルスに対抗できるんで…ちょうどいい体温になってきた。別になろうと思ってなったわけじゃないんだけどね(笑)

吉田:よかったですね。きょうは体調大丈夫なんですか?

H:大丈夫、うん。ときどき怠いけどね。どっかでかかってるのかな?(笑)

吉田:(笑)

H:でも、風邪みたいな感じでかかってるかもしれないからね。

吉田:そうですね。でもなんか…氷が解けてるじゃないですか、世界中の氷。

H:うん。

吉田:その中には最低でも50個の未知のバクテリア、ウイルスがいるとか。

H:なんか聞いたことある。

吉田:どうもその中に今回のコロナがあったらしいです。

H:そういう説もあるんだね。

吉田:こわいこわい。

 

H:ところで…音楽の話。

吉田:はい。

H:相変わらずいろいろ聴いたりはしてるんでしょ?

吉田:聴いたりはしますけど…でも、歌ってるのはありものの、昔の曲が多いので、まずはその曲の譜面を見て、メロディーを把握して。ジャズシンガーではないから、系統だった「〇〇風」とかがないので…カヴァーとしては丁寧に元々のメロディーを歌うようにしようとしています。で、それが楽しい。

H:そうなんだね。ということは曲が好きなのかな?

吉田:そうですそうです。曲がすごく好き。

H:あんまりいないんだよね。「あの歌詞が好き」とかいう人はわりと多いんだよ。

吉田:あー…歌詞ももちろんいいですよ。でも、英語だったりすると聴いてても全然[その意味が]分からない人もいるわけで。その行間で言葉を映像に広げてもらうにはどう歌えばいいか、ということはすごく考えながら歌います。

H:僕が言ったのは、シンガーが好き…例えばビリー・ホリデイBillie Holiday)とか。

吉田:それはあんまりないですね。

H:そう、だからそれがめずらしいかな、と思って。

吉田:そうですね。なんかそうなると、その人のモノマネになっちゃうじゃないですか。

H:なってる。みんななっちゃうんだよね。

吉田:それは良くないなぁ、と思って。曲を作った人がその曲をどういう気持ちで作ったか、というのを考えたいですね。それは大切にします。

H:それだ…それなんだよ。いい曲というのは20世紀に山ほどあるからね。全部やりたいんだよ。

吉田:ありますね。でも、細野さんの曲だって歌ってますよ、"終わりの季節"。

H:あー…ありがとうございます(笑)

吉田:あれは歌うと客さんは泣きますね。

H:えー!自分じゃわからない(笑)

吉田:素晴らしいですよ、あの曲。

H:ありがとうございます。じゃあ最後に…曲をかけてお別れしたいな、と。

吉田:はい。

H:自分で選んでくれますか?

吉田:えー…なんだろう、"ひるさがり"が好きです。

H:はいはい…いいですね。じゃあ"ひるさがり"を聴きながら、これで…お別れします。どうもありがとう。

吉田:ありがとうございました。

H:吉田美奈子さんでした。

 

 

ひるさがり - 吉田美奈子

(from『扉の冬』)

  

 

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2021.10.03 Inter FM「Daisy Holiday!」より

手作りデイジー🌼#25

 

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 (以下、すべてH:)

  

 細野晴臣です。1960年代から抜け出せないんですよね。なんか、ブラックホールのような時代だったんですね。同時期に色んなことが起こってますから…パラレルワールドと言ってもいいですね。

 きょうはフォークロックを特集したいんですけど…その黒幕はボブ・ディランBob Dylan)ですね。それを広めていったのがピーター、ポール&マリー(Peter, Paul and Mary)とか…いろいろロックバンドが出てきましたけど、中心にいたのはやはりザ・バーズThe Byrds)ですね。このバーズはテリー・メルチャー(Terry Melcher)というサーフィンオタク…ビーチボーイズとやっていたような人がバーズをプロデュースしたんですね。そしてニューヨークではモダン・フォークが台頭してきまして、その中心にいたのはピーター、ポール&マリーですね。では、そのPPMで…ボブ・ディランのカヴァーの中では彼らにとっては異色なロックビートなんです。"Too Much of Nothing"。

    

  

Too Much of Nothing - Peter, Paul & Mary

(from『Late Again』)

 

 

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 次はですね…「時代は変わる」、"The Times They Are A-Changin'"。これをPPMとオリジナルのボブ・ディランで聴いてください。

 

  

The Times They Are A-Changin' - Peter, Paul & Mary

 

 

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The Times They Are A-Changin' - Bob Dylan

(from『The Times They Are A-Changin'』)

 

 

今の時代にこそ歌われるべき歌かもしれないですね。1963年の作品です。

 

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 次は1964年の"Mr. Tambourine Man"。

 

    

Mr. Tambourine Man - Bob Dylan

(from『Bringing It All Back Home』)

 

 

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 ほとんど同時期にリリースされたのがテリー・メルチャーのプロデュースによるザ・バーズの"Mr. Tmbouring Man"。

 

    

Mr. Tambourine Man - The Byrds

(from『Mr. Tambourine Man』)

 

 

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 今回はですね、ボブ・ディランが主人公じゃないんですよ。テリー・メルチャーなんですよね。なぜかというと、サーフィン時代からここに至る…なにが彼に起こったのか、と。では2番目の大ヒット曲、ピート・シーガー(Pete Seeger)の曲です、"Turn! Turn! Turn!"。

 

    

Turn! Turn! Turn! - The Byrds

(from『Turn! Turn! Turn!』)

 

 

この特徴的なリッケンバッカーの12弦ギターを弾いているのがロジャー・マッギン(Roger McGuinn)で、リーダー格ですね。あとは後にクロスビー、スティルス&ナッシュ&ヤング(Crosby, Stills, Nash & Young)に入ったディヴィッド・クロスビー(David Crosby)、そしてクリス・ヒルマン(Chris Hillman)。みんなそれぞれ、フォークシンガーが集まってやっていたんですね。この"Turn! Turn! Turn!"も"Mr. Tmbouring Man"も「フォークロックの曙」と呼ばれています。

 

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 少し前後しますが、1967年のリリースで…ちょっとビートルズを思わせるような感じですが、"So You Want To Be a Rock 'n' Roll Star"。

 

    

So You Want To Be a Rock 'n' Roll Star - The Byrds

(from『Younger Than Yesterday』)

 

 

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 アメリカ側から見れば「イングリッシュ・インヴェイジョン(ブリティッシュ・インヴェイジョン)」と言われた、すごい波がやってきたわけですね。その中心はもちろんビートルズです。では、1966年のアルバム『Revolver』から"Tomorrow Never Knows"。

 

    

Tomorrow Never Knows - The Beatles

(from『Revolver』)

 

 

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 こうして60年代の末にはもうサイケデリックが芽生えてきたんですけど、この"Tomorrow Never Knows"もその一つですが…その直前にバーズが出した"Eight Miles High"。これが最初のサイケデリックと言われています。

 

    

Eight Miles High - The Byrds

(from『Fifth Dimension』)

 

 

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Three Window Coupe - The Rip Chords

 

 

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 この"Three Window Coupe"という曲ですね。リップ・コーズ(The Rip Chords)の2番目のシングルで、ヒットしましたね。テリー・メルチャーが1964年にブルース・ジョンストン(Bruce Johnston)と一緒にやっていたユニットなんですけど、この数年後にはザ・バーズをやり出すわけですね。ニューヨークでは既にモダン・フォークブームがあって…ベトナム戦争の折で反戦運動がありまして、フォークシンガーたちがこぞってプロテストソングを歌い出して、その中心にいたのがボブ・ディランだったわけです。テリー・メルチャーはそういう動きに非常に敏感だったと思うんですけど、一方でとても複雑な育ちをしていまして。1969年にはシャロン・テート(Sharon Tate)事件に少しだけ関わったりして、非常に悩んだりしたと思うんですね。お母さんはあの大・名歌手ドリス・デイ(Doris Day)です。一人息子ですね。その母親のドリス・デイと一緒に歌っているめずらしい曲があります。"Stewball"という…初めて聴いたときはビックリしました。これは民謡なんですけど、ジョン・レノンの……

     

 

A Word from Doris - Doris Day

(from『Music, Movies & Memories』)

 

 

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Stewball - Terry Melcher & Doris Day 

(from『Music, Movies & Memories』)

 

 

この"Stewball"というのは競馬馬を題材とした古い民謡を改作していったような歌なんですね。元々が古いので、ジョン・レノンはそれを聴いてたんでしょうね。"Happy Xmas"という曲に改作して大ヒットしました。

 

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 テリー・メルチャーは早死にしてしまいましたね。お母さんよりも先に亡くなってしまいました。そのお母さん、ドリス・デイの歌、1956年にヒットした"Que Sera, Sera"。「なるようになるさ」。

     

 

Que Sera, Sera - Doris Day

 

 

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2021.09.26 Inter FM「Daisy Holiday!」より

 

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H:はい、細野晴臣です。こんばんは。みなさんこんばんは!

O:こんばんは、岡田崇です。

コ:こんばんは、コシミハルです。

H:なんか、レギュラーって言ってるわりには久しぶりだね(笑)

O:そうですよね、なかなか…

H:このDaisy Holidayっていつから始まってるの?

O:もう…

(D:20年前。)

O:20年経つんですね。

H:もう20年経ってるの?すげぇな。

O:2001年からじゃないですか?Daisy Holidayになったのが。その前は「Daisy World」があって…

H:そんなに経つか…

O:ご長寿番組ですね(笑)

H:みんな、歳取った?20年…そりゃ歳取るよな。

O:そうだ、最初に出始めたときは20代ですからね、僕。

コ:(笑)

H:そうか!それはちょっとショックだね。今はいったいいくつか知らないが…(笑)ミハルちゃんはあんまり変わらないんだよな。

コ:いや、まぁ…ダメ(笑)

O:(笑)

H:なんかいつも倒れそう、いつも目が回ってるよね。

コ:思っていることと、身体の動きが合わないの。

H:それは老人みんなそうだよ。

コ:ちょっと遅れてくるな…ってない?

H:しょっちゅうあるよ、それは。しょっちゅうというか、それが普通になったよ。だからよく躓くんだよね。躓く?

コ:そう!あるある。

H:それは立派に老人だね(笑)

コ:あと、ドアに手を挟んだり?あ!なぜこんなところに手を…みたいな(笑)

H:その現場知ってるよ(笑)非常に危険だよ、あれは。骨折しなくてよかったけどね。

コ:危険ですね。危なかった…そんなことはまだないですか?岡田くんは。

O:うーん、ときどきあるかもしれない、ぐらいになってきましたね。危ないですね。

H:部屋の中でよろけるってこともあるからね。で、立て直せないの。崩れ落ちるんだよ(笑)

コ:(笑)

H:そうするとね、いろんなものが散らかるんだよ。つかむじゃない?

O:(笑)

H:イヤになっちゃうよね。きょうはそういう話の特集かな?違うか。そう!先週の9/15に…コシミハルの『秘密の旅』というライヴが渋谷のさくらホールで行われまして。

コ:はい。

H:非常によかったですね。僕も岡田くんも撮影班として行きました(笑)

2人:(笑)

H:毎回駆り出されるという…けっこう腰に来るんだよ(笑)

コ:それでいつも撮って頂くのですが、その後誰もその映像を見ないで…カメラがなくなるっていうのはどういう流れなんですか?(笑)今回もカメラを探すのが前日大変でしたよ、あの日から見てない、とかって(笑)

O:4年前から見てないんですよ(笑)ミハルさんのステージを撮るためのビデオカメラになっちゃってるんで…普段使わないですよね、ビデオカメラ。iPhoneがあると。

コ:ええ…

H:まぁそのコンサートはなかなか…人もちゃんと入ってくれてね。よかったですよね。

コ:はい。来て頂いてほんとに感謝…

H:こんな時期にね。やっぱり固定のファンという人々はすごく大事ですよ。どんなことがあっても来てくれるんだね。その代わり、親戚とかは来なかったんでしょ?(笑)

コ:そう!ちょっと危ないから…(笑)

H:まぁでもね、良い雰囲気でしたね。静かで。照明の関根さん(関根聡)がまたよかったですね。

コ:素晴らしかったですね!本当に。

H:怪我をされてね、復帰第1回目のコンサートだったんですよね。

コ:はい。

H:それじゃあ1曲…その日に出たアルバムの『秘密の旅』。

コ:その1曲目の"Ma petite maman"という…母との思い出。

H:ミハルちゃんのお母さんの話だよね。

コ:そうですね。

 

 

Ma petite maman - コシミハル

(from『秘密の旅』)

  

 

H:いやいや…よかった。テクノファンは喜ぶよね。コシミハルと言えば1980年代、テクノですもんね。

コ:自分では曲の作り方とかぜんぜん変わってないので…

H:打ち込み系から、今はパネくん(Febian Reza Pane)たちの…

コ:そうですね、ここ数年はマダム・クルーナーの生演奏という。

H:ですよね。ただこのところ、80年代に出した『TUTU』と『PARALLELISME』が6月に…マスタリングし直してね。音の次元がちょっと変わったよね

コ:はい。

H:で、今は『秘密の旅』が出て。

O:『BOY SOPRANO』とかも8月に配信が始まりましたね、

H:そうだ、『BOY SOPRANO』。あれはイーロン・マスクの奥さんが聴いてたっていう話を聞いたけど…すごいね、それ(笑)

コ:なんか出産のときに…というお話を聞きました(笑)

H:すげぇな、イーロン・マスク…制作費出してくれないかな(笑)

2人:(笑)

H:ロケットに載せられちゃいそうだけどね(笑)

コ:他の惑星でライヴするのもいいですね(笑)

H:そうね(笑)それで『swing slow』が12月に出るというね。

O:そうですね。

コ:はい。

H:旧譜がずらっと…ぜんぶ音が良くなってるので、楽しみですね。

コ:そうですね。

 

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H:岡田くんの新譜は?

O:今年はアナログいっぱい作ってるんですけど…10/20に片岡知子さんの『スキマの国のポルタ』というアニメーションのサントラを出します。

H:それはアナログ、CD?

O:それはアナログだけです。ライセンスなので…アナログだったらライセンス、いいですよ、ということで。

H:あ、そうなんだ。そういうことがあるんだね。

O:元々は指人形とかDVDとか絵本が入ってるボックスセットでしか買えなかったサントラだったので。サントラ単体としては初めての商品化ですね。

H:そういうめずらしいものがすごく出揃う時期だね、いま。すばらしい。じゃあね…コシミハル第2曲目。

コ:なににしようかな…"Domino"とか?シャンソンですけどね。

H:いいね。僕が子供の頃にヒットしてた曲ですよ。では、"Domino"。

 

 

Domino - コシミハル

(from『秘密の旅』)

  

 

H:"Domino"、良い曲ですね。

コ:うん。

 

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H:あの…メンバーを紹介して?

コ:えーと…ピアノがフェビアン・レザ・パネさんで、ベースが渡辺等さん。ドラムスが則武諒さん、ギターが今堀恒雄さんです。

H:ずっとそのメンバーでやってて…ドラムの方が新しく変わったんだよね。で、バンドリーダーがパネくん。

コ:はい、そうです。で、これはレコーディングなのでグロッケンだとか…その辺を後からダビングしたりして…

H:なるほど…

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

コ:それは言っちゃダメ…(笑)

H:ダメなの?これダメなんだ(笑)おもしろいよ、この話(笑)

コ:ダメダメ!それはほんとにダメだから!(笑)

O:(笑)

H:じゃあもう、ちょっと話を変えて…(笑)僕はきょうなんにも素材を持ってきてないんですけど…ですから岡田くん、お願いしますね。

O:じゃあ、先ほどお話しに出した片岡さんの…トモちゃんの曲を1曲。

H:サントラね。

O:"アッチェルはおかんむり"という曲を。

 

 

アッチェルはおかんむり - 片岡知子

(from『スキマの国のポルタ オリジナル・サウンドトラック』)

  

 

H:いやー、おもしろい(笑)

コ:かわいい曲ですね。

H:トモちゃんって、レイモンド・スコット(Raimond Scott)をいつから聴いてるんだろう?

O:僕と同じくらいだと思いますね。1990年代中盤ぐらいじゃないですかね?

H:あ、90年代か。なんだかその色が時々出てるね。

O:そうですね、かなり出てますね。で、この後にカンザスのレイモンド・スコットの倉庫に行って、アセテート版をさんざん、1週間聴くという修行をやったので…それ以降はさらに(笑)

H:あれね。それはいい経験をしてるよなぁ。

O:聴いた曲の印象を事細かに、ぜんぶメモに取ってましたからね。それは相当、血となり肉となり…になったと思いますね、あの修業は(笑)

H:なるほど。そういう人はあんまり多くはないよな。

O:そうですね。

H:そういう岡田くんは音楽やらないの?

O:トンと…

H:トンとご無沙汰してるよね(笑)

O:そうですね、やってないですね…

H:もう、グラフィックの仕事が忙しすぎるのかね。

O:いや、そうでもないです…(笑)

H:そうでもないか(笑)でもほとんど…こっちの仕事はぜんぶやってもらってるけどね。

O:ありがとうございます(笑)

 

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H:いやいやいや…さて、ミハルちゃんのめまいの話でもするかね。

コ:えー!(笑)

O:(笑)

コ:言ってはいけないことばかり…

H:なんで?(笑)

O:コンサートの前日の夜、僕と細野さんのところに連絡があって。

H:そう!なんか、倒れたら…

O:「めまいが大変だから、倒れたら細野さんにMCをお願いしたので2人でDaisy Holidayをやってください」という連絡が来たじゃないですか(笑)

H:いやー、ほんとにそうなるかもしれないな、と思って…ステージ立つか、なんてね。ウソだけど(笑)

O:(笑)

コ:ほんとになんか、具合が悪くなっちゃうんですよね。

H:最近はストレスに弱いよね。

コ:弱いですね。追い込まれるとダメですね。

H:前もね、なんか…ライヴの後に大変なことになってたでしょ。

O:毎回そうですね。

H:毎回だね。大変だな、これは(笑)

コ:(笑)

H:さぁ、もう話すこともない…

O:今回、Blu-rayがついてるんですよね。

H:あ…ごめん(笑)

O:(笑)

コ:あ、そうだ…映像がね。去年こういう状態になってしまって、コンサートを開催することができなかったので…で、会場は…

O:押さえてあったので。

コ:そこでライヴを…演奏だけして映像を撮りました。

O:Blu-rayで一緒に入ってます。

コ:2枚組なので。

H:何曲分?

コ:4曲入ってます。『TUTU』の時代の"Petit paradis"を生で演奏していたりしますね。

H:撮影が…

コ:ジャケットなどを撮影して頂いている秦淳司さんが。

H:ずいぶん昔から付き合いがあるよね。

コ:そうですね、『CORSET』くらいからかな?

H:ファッション写真の人ですよね、元々は。

コ:はい。とても好きなんです、秦さんの写真が。

H:そうね……もうこれでおしまいかな。

O:裏話はいっぱいありそうですけどね(笑)

H:裏話は…これは話せないでしょう、それこそ(笑)

O:それがいちばん話せない話ですよね、たぶん(笑)

H:でもいちばんおもしろい(笑)

O:信じられない…(笑)

H:その過程に付き合ってるからね、我々ね。岡田くんも。巻き込まれてるよね、多少は。

O:何か月やってたんだかね…

H:いや、ほんと…終わってよかったね。

コ:よかったですね。

O:ほんと、締め切りがあるって素晴らしいですね。

H:素晴らしい、ほんと。とくにミハルちゃんにはね。

O:んー…

コ:(笑)

H:普通は終わってから倒れるんだよ、ミハルちゃんはね。今回は元気そうだよね。なんか吹っ切れたのかね。

コ:あれじゃないですか?先に倒れたから…(笑)

H:先のほうがいいよね。あとからは大変だから、ほんとに。いやー…さぁこれで(笑)

O:(笑)

H:もうこういうテンションが…元々こうだったんだよね、20年前はね。違うか(笑)ギャグはよくやってたけど。

O:そうですね。

H:最近やらなくなっちゃった。

O:すごかったですよね。台本とかもありましたね、最初の頃。

H:東くん(東榮一)が中心になって。

O:スタジオに来ると台本渡されて(笑)コントとか…

H:前、ときどき流してたけどまだまだいっぱいあるんで…僕が気に入ってるのは「IT革命」というやつで。あれはおもしろかったけど…流せないな、あれはね。

O:ちょっとね…(笑)

H:だから新しく作ろうか、また。

O:ミハルさんと秦さんで「IT革命」を2021年ヴァージョンを作ると…かなり、ほんとに「IT革命」ですね…(笑)

コ:(笑)

O:この電話録音しようかな、という状況がしょっちゅうあります。

H:そうだよね。いや、やろうやろう。ぜひぜひ…そろそろまたギャグに戻らないとね。コロナでユーモアがなくなっちゃったじゃん。

O:うん。

H:ユーモアが死んじゃってるから…こないだね、僕「オリバーな犬」というのに出たんだよ。

O:はい、見ました。

H:あ、見た?よかった、見てくれて…

O:おもしろかったです。

H:おもしろかった?よかった…オダギリさん、よかった(笑)おもしろい人だなぁ。この時期にああいうのってちょうどよかったみたいね。なんか、デヴィッド・リンチDavid Lynch)っぽいところもあるし。

O:何回も繰り返し見れそうなドラマですね。

H:うんうん。まぁそんなようなところで、先週はオダギリさんが出てくれましたけどね。まぁこんなところでひとつ…じゃあ"秘密の旅"を聴きながら、これで今週は…さよなら?

O:おやすみなさい。

コ:おやすみなさい

H:おやすみ。

 

 

秘密の旅 -Voyage secret- - コシミハル

(from『秘密の旅』)

  

 

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2021.09.19 Inter FM「Daisy Holiday!」より

 

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H:はい、こんばんは。細野晴臣です。

オダギリ:あ、オダギリジョーです。

H:あー、来て下さいまして…(笑)

オダギリ:ありがとうございます。

H:きょうね、周りの取り巻きの女性たちが来たがっててしょうがなかった(笑)

オダギリ:いやいや、そんな雰囲気はなかったですけど(笑)

H:そうか(笑)

オダギリ:いやー、ほんとにありがとうございます。

H:いやいや…この番組ではめずらしいゲストですね。だいたいみんな音楽関係なんですけど。

オダギリ:そうですよね。

H:まぁでもね、今回は…いよいよ始まりますよね。

オダギリ:はい。始まりましたね、数日前に。

H:あ、そっか。『オリバーな犬、(Gosh!!)』。これは僕、出てるんですけど…(笑)

オダギリ:(笑)

H:なんで呼ばれたんだろう、っていう(笑)

オダギリ:いや、細野さんにはやっぱり出てもらいたくなっちゃうんですよね。

H:なんでなんだろうね?それが自分ではよくわからないんですよね。

オダギリ:おもしろいんですよね。

H:そうですか。それはうれしいけどね。

オダギリ:なんか独特で…まず、細野さんの声がやっぱりすばらしいですし。

H:ラジオ向きですよね。

オダギリ:(笑)あとはやっぱり芝居に癖がない…良い意味も悪い意味も癖がない感じなんですよね。

H:出しようがないもんね、だって。何度か映画に出たりさせてもらってますけど…素人ですからね。

オダギリ:でも、すごいリアリティはあるんですよ。

H:そうですか。んー。

オダギリ:そこがやっぱりプロの俳優には出せない雰囲気ですね。

H:たまにそう言うミュージシャンもいますけどね。でも、この前の『ある船頭の話(They Say Nothing Stays the Same)』。

オダギリ:はい。

H:あれはすごい映画ですよね。

オダギリ:そうですね、あれはあれでちょっと挑戦的な作品でしたね。

H:ああいう映画を作る人だとは思ってなかったから。

オダギリ:うーん、僕もあんまり思ってなかった(笑)

H:そうなんだ(笑)ああいう発想はどこから出たんですか?

オダギリ:いやー…結構もう、15年近く前に書いた脚本だったんですけど。

H:おお、そう?そんな前…

オダギリ:でもなんとなく、今の時代のほうが…より映画界が変な方向に偏ってるな、と思ったんですよ。要は「わかりやすい」映画とか、なにかの原作ものとか。そういう数字を求める作品ばかりが作られてきて…ちょっと日本映画に違和感を感じるところだったので、ああいう作品をちょっと作らなきゃいけないな、という気持ちになったんですね。

H:なるほどね。そうかそうか…

 

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H:なんか、映画俳優さん、スターと言ってもいいくらいですけど。そういう人だと思われてますが…いや、僕はそう思ってたけど。本当はすごく…ひねくれてるというか(笑)

オダギリ:いやー、めちゃめちゃひねくれてるんですよね(笑)

H:ですよね(笑)それはね、初めてそう思ったのは…ずいぶん昔にテレビを見てたら、オダギリさんの実験映画作品を流してたんですよ。

オダギリ:えー?もう、すごい昔のドキュメンタリーですかね。

H:すごい昔、うんうん。

オダギリ:あー…やりましたね。

H:でしょ?その映画がね、なんだ?っていう感じで…(笑)不思議な映画でしたね。

オダギリ:そうですね(笑)『バナナの皮』という題名だったんですけど。

H:あ、そういう題名だったんだ(笑)

オダギリ:ほんとに1シチュエーションでずっと回したりしてて。あれはほとんど上映もしなかったので、観てる方は少ないんですけど。

H:観ちゃいましたね。

オダギリ:あー、もうほんとに恐縮です。

H:あれからすごく気になってたんですよ。オダギリジョーって何者だ?という。

オダギリ:(笑)いやー、うれしいですね。

H:不思議な存在感ですよね、日本の映画界の中でね。だから僕はそういう印象を持ってたんです。そういう人が今回、テレビドラマを作ったんですけど…僕、出てますけど、どんなドラマなんだろう、っていうね(笑)

オダギリ:そうですね、まぁ…細野さんのシーンに関しては只々、橋爪さん(橋爪功)との掛け合いを楽しんでもらいたいな、と。

H:ええ、楽しかったですね。

オダギリ:お2人で裏でタバコを吸ってて…楽しそうにおしゃべりされてるなぁ、と思って。僕もうれしかったんですけど。細野さんも橋爪さんも、お2人とも…なんだろう、不良な大人と言うんですかね。そういうところがすごく好きで、その2人をああいうシチュエーションにしてみたかった、という。

H:そういうところがあったんですね。いやー、こういうことがなければ橋爪さんと会うこともないし(笑)おもしろい体験でしたね。

オダギリ:なんか、現場もおもしろい雰囲気になってましたね。普段撮ってるシーンとは違う…みんなちょっとそわそわしてましたね。

H:そうですか。あれは理容店の…ロケですもんね。

オダギリ:そうですね。細野さんがやってくださるということで、細野さんに合う雰囲気のお店をいくつか…

H:あそこら辺はよく通るんで、ああ、このお店知ってる、と思ってたんですよ。

オダギリ:そうですか!カッコいいお店でしたね。

 

 

H:でも、今回はそうとしても、前回の船頭の映画はなんで僕なんですか?(笑)

オダギリ:あれは…あのときは俳優じゃない人に演じてもらいたい、という思いがあって。あと、死を扱う職業でもあるし、役柄としてもそれを背負う役だったので。

H:後で観たらすごい役だな、と思いましたよ(笑)

オダギリ:そうですね、僕もすごく思い入れがあった役で。

H:そうなんだ。僕でいいのかな?と思っちゃって。

オダギリ:いやいやいや!永瀬さん(永瀬正敏)のお父さんという設定だし、ふさわしい方を一生懸命探してたんですけど、やっぱり俳優じゃないなぁ、という思いで。

H:へぇ。

オダギリ:それでいろいろ思いを巡らせて…細野さんやってくれたらうれしいんだけどなぁ、と思って(笑)

H:いやー、ありがたいですけど。そこで僕を思い付くっていうのは不思議ですよね。僕は『メゾン・ド・ヒミコ』のときに音楽やったんで、打ち上げとかそういうところではお会いしてますけどね。

オダギリ:そうですね…

H:音楽はどうなんですか?

オダギリ:いやー、僕は中学の頃からバンドにハマりまして。

H:あ、そうなんだ。

オダギリ:ドラムやってたんですよ。

H:えー!

オダギリ:ドラムから入って…高校卒業するぐらいまではずっとバンドばっかりやってました。

H:それは知らなかった。そうなんですか。

オダギリ:はい。なので…今回は細野さんのラジオということもあるし、ひさしぶりにHISを出して。久しぶりに聴いたんですけど。

H:聴いてもらってるんですね。

オダギリ:清志郎さん(忌野清志郎)とかにすごく影響を受けて。初めて買ったCDがタイマーズでした。

H:あ、そうなんだ。

オダギリ:その頃からずっと…RC(RCサクセション)とかもコピーしたりとか。そんな学生時代でしたね。

H:そうだったんですね。んー。そのバンド活動はその後やってないんですか?

オダギリ:大学で…アメリカに行ったんですよ。芝居の勉強を結果的にしたんですけど、そこからやっぱり、音楽というよりは映画のほうに気持ちが行っちゃって。そこからはあんまり…でも、曲を作るのは好きで。

H:おっ。

オダギリ:あの『バナナの皮』という映画とかも…

H:あ、[音楽も]自分で作ったんだ。

オダギリ:そうなんですよ。

H:それは知らなかったなぁ。

オダギリ:曲を作るのは好きでしたね、昔から。

H:今も続けてますか?

オダギリ:でもなんか、降りてくるときとぜんぜん思い付かないときが…思い付かないときは2,3年出てこないんですよ(笑)

H:2,3年か(笑)2,3年思い付かないと僕、困っちゃうかもな。

オダギリ:そうなんですよ(笑)しかも音楽は昔から好きだったし…それを職業にするということがやっぱり、自分では無理でした。純粋に楽しみたかったですね。

H:まぁでも、映画を作って音楽も自分で作る人も結構いますもんね、今。

オダギリ:うんうん、そうですね。

H:それはちょっと…そういうことをやってもらいたいですね(笑)

オダギリ:そうですね(笑)

 

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オダギリ:『ある船頭の話』のときはティグラン・ハマシアン(Tigran Hamasyan)という…

H:どこの方だっけ?

オダギリ:アルメニアですね。ジャズピアニストなんですけど…それまでの作品では全部、自分で音楽を当ててて。でも「船頭」のときはやっぱり、自分としても勝負だなと思ってたので。自分で音楽を付けるよりはちゃんとしたものを作ってもらおうと思って。

H:そうか。あのアルメニアの…僕、名前が覚えられなくて(笑)ハマシアンさん。結構人気のある作家ですよね。

オダギリ:そうですね。いま注目されてる若いピアニストですね。

 

 

The Boatman (Postlude) - Tigran Hamasyan

(from『They Say Nothing Stays the Same: Original Motion Picture Soundtrack』)

 

 

H:そういう方とはどういう関係なんですか?お友達なんですか。

オダギリ:すごく日本にも造詣があるというか、興味を持っていて。精神性もどこか似てるんですよ、アルメニアと日本って。

H:それはね、わかりますよ。

オダギリ:わかります?

H:すごく古い国ですよね。初めてキリスト教の教会が立った国だったとか。

オダギリ:そうなんですか。温泉も出たりとか、そういう風土も似てるんでしょうね。

H:なんかすごく興味のある国ですね。

オダギリ:ええ。だから性格的にもおっとりしていて、すごく相手のことを思いやるし、気を遣うし…2人でいても楽だし…すごくクリエイティブな空気になりやすいというか。

H:そういう人と組むのはいちばんいいですね。

オダギリ:そうですね。まじめなのでほんとにいろいろ、一生懸命…僕の作りたいものを目指して、時間をかけてくれましたね。

H:なるほど。

 

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H:一方で、前にテレビシリーズで…「大川端」のシリーズ(『リバースエッジ 大川端探偵社』)だっけ。

オダギリ:はいはいはい。

H:あれのテーマ曲がすごく好きで。あれはEGO-WRAPPIN'でしたよね。

オダギリ:EGO-WRAPPIN'さんでしたね。

H:今回もそうですね。

オダギリ:そうなんです。

H:やっぱり、そういう関係なんですか?

オダギリ:EGO-WRAPPIN'の森さん(森雅樹)は…たしか同い年なんですよ。で、森さんは大阪なのかな?僕は岡山なんですけど。なんか近いところ、西日本で育ったという…時代性も含めて似てるものがあるのかな、と思うんですよね。

H:なるほどね。

オダギリ:エゴさんの曲も昔から好きで。今回はテレビドラマをやるというときに…「大川端」もありましたし。僕からするとやっぱり、永瀬さんが昔やった「濱マイク」シリーズ(『私立探偵 濱マイク』)のオープニングの"くちばしにチェリー"かな?あれもすごく好きで。映像とミックスしたときの威力みたいなものが…今だに残ってて。それで今回はエゴさんにお願いしましたね。

 

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H:このドラマ、ご本人はどうなってるんですか?出てるんですよね?

オダギリ:はい、僕出てます。

H:出てますよね?これは観てないとわからないですけど、不思議なドラマ…あらすじとかあるんですか?(笑)

オダギリ:そうですね(笑)あらすじは…警察犬とそのハンドラー、鑑識課の犬係のバディの話なんですけど。ただ、その警察犬を僕が演じてまして。

H:それがなんかね、想像ができないんだよね(笑)

オダギリ:そうなんですよね、本読むだけだとまったく…字だとわからないんですけど。着ぐるみを着て顔だけ出してる、みたいな。

H:顔だけ出してる?じゃあわかるわけですね。

オダギリ:はい。それでちょっと生意気な、だらしない犬をやってます。

H:しゃべるわけですね(笑)

オダギリ:しゃべりますね(笑)

H:この発想もすごい…どこから出てくるんですかね、そういうの。

オダギリ:そうですね…まぁコントではよくある設定ですよね。僕もそういうのはいくつか見たんだろうな、とは思うんですけど。それを映画のレベルに引き上げたいという思いがあったんですよね。

H:なるほどね。

オダギリ:安っぽい、コントっぽいみたいなものは…言い方悪いですけど、作りやすいけど。ほんとにカッコいい大人を集めて、上質な世界観であれを作ったらどうなるんだろうな、と思って。

H:なるほど。これはすごい力作かもしれないなぁ。

オダギリ:ぜひぜひ、ご覧になってください。

H:もう放送はね、1回目が。

オダギリ:1回目は終わりました。

H:収録はその前なんでね、まだ観てないですけど(笑)とにかくね、出演者の量がすごい!

オダギリ:そうですね。

H:全3回ですよね?3回でこの全員が出てるんですよね?(笑)

オダギリ:「船頭」のときは本当にキャストが少なくて。メインどころの数人がずーっと出てる、という映画だったので。

H:そうですね。

オダギリ:今回は逆にいろんな人を絡ませたい…群像劇みたいにしたくて。

H:これは楽しみだね、やっぱり。

オダギリ:はい。もう、むちゃくちゃですね(笑)

H:むちゃくちゃか(笑)反響が楽しみですね。

オダギリ:そうですね。それをNHKで流すというのがまた…実験的というか。

H:すごいすごい。オリンピックでね、放送が延びちゃったんですよね。

オダギリ:ええ。オリンピックもギリギリまでやるのかやらないのかわからなかったですし。だから、いつ放送になるのか…随分時間がかかってしまって。

H:ロケしたのはいつだっけなぁ…冬だったね。

オダギリ:そうですね、去年の11月ですかね。まだまだコロナも大変な時期でしたし。

H:そうでしたね。

オダギリ:だからやっぱり、みんな気を付けて…注意しながら撮ってましたけど。

 

 

The Hunter - EGO-WRAPPIN'

 

 

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H:やっぱりオダギリさんは俳優であると同時に、作家性が強くなってきている感じがしますけど。どっちが好き…というか、両方ですかね?

オダギリ:そうですね…俳優は俳優で苦しくもあり、おもしろみもあるんですけど。やっぱり映画の中では一つの歯車でしかないと思っていて。映画のために身を尽くすというか。そういう役柄だと思うんですけど。

H:はいはい。

オダギリ:やっぱり脚本を書いたり監督をしたりというのは作品を背負うことだと思うので、かかわり方が俳優とはまったく違ってくる。なので、責任感とかをひっくるめると…俳優のほうが楽、という言い方はおかしいんですけど、気軽に参加できるのは俳優ですね。

H:うんうん。いやー、でもおもしろいでしょ?映画を作るのって。

オダギリ:そうですね。大変なことのほうが多いですけど、でもやっぱり乗り越えた先に見える景色みたいなものは…それだけのものはある気がしますね。

H:想像しかできないけど…音楽を作ってるときも僕はのめり込んじゃいますけど、やっぱり映画はさらにのめり込みそうだな、と思いますよ。

オダギリ:そうですよね…細野さん、映画撮ってくださいよ(笑)

H:いやー…(笑)

オダギリ:僕、なんでもやりますから。

H:いや、逆ですよ(笑)

オダギリ:(笑)

H:ミュージックビデオみたいなものを作るときに、お願いしようかな、なんてチラッと思ったことはありますよ。最近ですけど。

オダギリ:えー!ほんとですか?うれしいけど、でも、PVってめちゃめちゃ難しそうですもんね…

H:(笑)

オダギリ:あれはまた違う競技な気がしますね…それこそハマシアンのPVがすごくおもしろいんですよ。毎回ヘンなのを作ってて…まぁでも、いつか…

H:そうね。いつか…なにかやってもらおうかな。

オダギリ:ぜひぜひ。僕も細野さんに音楽付けてほしいです。

H:…やらせてくださいよ!(笑)

オダギリ:え、ほんとですか!やった。

H:ホントだよ!だって、避けてるのかと思った…(笑)いいんですか?

オダギリ:うれしいな…ぜひぜひ!

H:実験作でも何でもいいですよ。

オダギリ:ありがとうございます。じゃあちょっと…早めに準備に取り掛かります。

H:いいねぇ、この話は。発展的だ(笑)

オダギリ:そうですね(笑)

H:なんか、のめり込みの感じがすごく似てるかもしれないな、と思うんだよね。編集が好きだって仰ってたでしょ?

オダギリ:はい。

H:僕も大好きなんですよ、編集。

オダギリ:なんか、2人でどんどん沼に入っていきそう(笑)

H:ぜったい入っていくから…ちょっと危険かもしれないですね(笑)どっちかに任せないとダメだろうね。

オダギリ:時間をかけてやりたいですよね。じっくり。

H:時間はかかりますね。じっくりと…そうですよ。

オダギリ:そうするとやっぱり映画がいいですね。

H:いいですね。なんかこの先、予定はあるんですか?映画は。

オダギリ:いや、もう予定を作ります!せっかくのこういうチャンスなので。

H:やった!それはおもしろいね。もう、いつになっても構わないんで。

オダギリ:はい。

H:これは楽しみになってきたな…映画はいいねぇ、映画大好き(笑)

オダギリ:あれは『ぼくの伯父さん(Mon Oncle)』のポスターが…

H:ここにかかってます。もう、大好きです。

オダギリ:そうなんですね。

H:もう、何度も何度も観ましたね。初めて観たのは小学生のとき、母親に連れられて行ったんですよ。それ以来ずっと…(笑)

オダギリ:えー!僕、もうぜんぜん憶えてなくて…改めてきょうちょっと、観直したいなと思いました。

H:ぜひ観て…とにかくあのユロ伯父さんの動きにすごく影響されて。研究なんかしたりして(笑)

オダギリ:そうですか!へぇ…ジャック・タチ(Jacques Tati)でしたっけ?

H:ジャック・タチです。はい。こっちのポスターもローレル&ハーディ(Laurel and Hardy)という…コメディばっかりですよ。

オダギリ:へぇ!あ、これは僕、ちょっとわからないです。

H:そうですか。もう時代が時代なんですけどね…ハリウッドでは伝統的にコンビが多いんですけど、ちょうど1940年代ぐらいかな。大人気だったんですね。

オダギリ:へぇ…観てみます。

H:はい、ぜひぜひ。

オダギリ:細野さんは、じゃあ…コメディもお好きということなんですかね?

H:大好きです。

オダギリ:あ、そうなんですね。

H:本来はコメディアンですから。

オダギリ:(笑)

H:ほんとなんですよ。コメディだったら僕、よろこんでやりますよ。

オダギリ:へぇ!今回の僕の『オリバーな犬』もコメディエッセンスが多かったりするんですけど。

H:そうですよね。

オダギリ:ええ。なんか…細野さん的には許せました?この世界観は。

H:もちろん!だから楽しみにしてる、まだ観てないから(笑)

オダギリ:よかったよかった…ちょっとふざけすぎてるところもあるんで。

H:そうなの?それはちょっと楽しみだな。

オダギリ:(笑)

H:だって、オダギリさんの同期にいろいろコメディアンがいますもんね。

オダギリ:そうなんです。幼馴染に次長課長の河本くん(河本準一)…

H:すごい幼馴染だ(笑)

オダギリ:あともう2人、超新塾という5人組の…

H:あー、いたいた。おもしろいよね。

オダギリ:あの中の2人はまた幼馴染で。

H:ほんとに?よくまぁコメディアンにならなかったね(笑)

オダギリ:なんか、そういう人間が出る街なのかな…

H:そういう街なんだね(笑)いやー、いろんな話が聴けました。またなんかの機会があったらこちらに来てください。

オダギリ:ぜひぜひ。

H:どうもありがとう!

オダギリ:ありがとうございました!

H:オダギリジョーさんでした。

 

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2021.09.12 Inter FM「Daisy Holiday!」より

 

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H:もう、ざっくばらんに…

UA:ざっくばらん。ばらんばらん…お願いします。楽しくなってきちゃったな。

H:(笑)

UA:銀杏並木を通ってきて…いいですね。

H:イチョウ咲いてないよ、でも(笑)

UA:え、咲いてない?

H:葉っぱあった?

UA:めちゃめちゃ、もう…フッサフサですよ(笑)

H:あ、あるか(笑)まだ冬じゃないんだね。

UA:すさまじいジェットラグ感がありましたけど。

H:プラチナ通りってやつだね。昔は「愛人通り」って呼ばれてたけど。

UA:あらまぁラ・マン(L' Amant)。ラ・マン通り(笑)

H:アパレル系のお金持ちたちの愛人が住んでた、とかね。

UA:不倫場だったんですか?

H:よく知らない。あんまり好きじゃないんだけど。でも、あの道ができたのはオリンピックの頃だよ。前のね、今年じゃないよ。

UA:旬な話ですね。

H:そのときに子どもみたいなイチョウが植えられて…だいたい僕と同い年だね。

UA:じゃあ、そのときから東京の木なの?一応、東京のシンボルですもんね、イチョウって。

H:そうなっちゃったね。

UA:当時はそういうわけじゃなかったのかな?

H:そんなに意識してなかったね。

UA:ふーん。なんかそういう街づくりってお手本がありそう。パリのほうだったりとか。

H:そうだね。イチョウって日本の木なの?中国から来てるんだよね。

UA:元々はそう、大陸から来て…でも、ものすっごい古い木なんですってね。ほんとに古代の木なんですって。

H:そうか。いいね。あそこに並木ができる前から古いイチョウが1本いたのね。それが親戚のおばの家の真ん前に立ってた。古いの。たぶん樹齢1000年くらいじゃないかな。

UA:1000年ですか!

H:知らないけど(笑)

UA:だいたいね(笑)

H:そしたらさ、知らない間に伐られちゃったんだよ。バッサリ。

UA:やだー、祟られそう…なんでだろう?

H:すごいつらくて。そしたらその真ん前に新しい並木のイチョウが一人…女性だよ、たぶん。それは夫婦なんだよ。[古いイチョウが]伐られたら、そいつが枯れちゃったんだよ。

UA:あー、泣けるな…

H:そんなことなかなか目撃できないけど…

UA:なんか、神話じゃないですか。細野神話。

H:いやいや(笑)だから夜中に、ネイティブアメリカンがよくやる…草を刈るときにお金を添えたりするらしいんだけど。

UA:ビーズを置いたりとかね。

H:そうそう。だからいろんなものを置いてきたよ。

UA:あー、ありがとうございました…

H:イチョウの精がここにいた(笑)

UA:そう、わたくしね、ほんとにイチョウに助けられたことがあって。

H:ほんとに?

UA:それこそ天河神社の…神社の中ではなくて、神社を出た向かいに小さなものがあるんですね。神社なのかお寺なのか…そこに小山のようなイチョウの木がいるの。

H:それはすごい古そうだね。

UA:遠くから見たらほんとに山みたいに大きくて。なんかね…35,36歳の頃なんですけど。いろいろ思うことがあってひとりで天河に行って。そのイチョウの木にものすごく励まされちゃって。喜びの涙を流したという。

H:それはイチョウの神様と縁があるね。

UA:はい。それからずっとイチョウがいちばん好き。

H:じゃあもう、胃腸は丈夫でしょ?

UA:はい、座布団ありますかね…なさそうだなぁ、ここ(笑)

H:座布団あるよ(笑)

UA:あ、座布団だ…はい(笑)いかがですか?胃腸の具合などは。めちゃめちゃお元気そうですけど。

H:こないだ胃が張って痛くてね。ものが食べられなかったんだよ。

UA:やだー。

H:そしたらね…イヤな話だけど、空気がいっぱい出たわけ。

UA:上からも下からも?

H:下からじゃないよ、上だけ(笑)胃のほうからね。

UA:あ、よかった(笑)

H:そしたら僕…何年も何年もコーヒーにクリームを泡立てて飲んでたの。そしたらその泡だよ。空気がいっぱいお腹に溜まっちゃってた。

UA:なるほど…それはどうやってわかったの?

H:そのね…ゲップって言っちゃうけど(笑)

UA:(笑)

H:止まらなかったんだよ。全部出ちゃった。

UA:あ、よかったですね。さすが…自分で治せちゃうんですね。

H:やっぱりね、イチョウの神様が。

UA:あー、神様がね。かつてね…泣いちゃったりして(笑)

 

H:…話はさておき、ぜんぜん紹介してなかった(笑)

UA:お久しぶりです、晴臣さん。

H:久しぶりだね。僕のことを晴臣さんと呼ぶのはUAだけだね。

UA:でもハルオーミって呼んでたんですけどね、昔は(笑)

H:そうだね(笑)

UA:きょうは晴臣さんで…

H:はい。UAさんです。

UAUAです。

H:もう、聴いてるとわかるよね、声でね。

UA:わかるかな。

H:わかるわかる。独特の雰囲気が…見ててもそうだけど、声もそうね。

UA:ほんとですか?うれしいです。

H:それで、いつからこっち来てるの?というか、今どこにいるの?

UA:はい、カナダというカントリーの左っかわに浮かぶ島に。

H:いいねー、島にいるんだ!すごいね。どういう運命なの?

UA:なんなんですかね…今の伴侶がカナダに住める権利を持っている者だった…というのが最大の理由ではあるんですけど。まぁでも、まだ小っちゃいんですよね、子どもが。いちばん下が5歳だったりして。

H:あ、そうなんだ。上は…俳優さんだよね。

UA:上は24歳ですね。

H:虹郎くん(村上虹郎)ね。活躍してますよね。

UA:がんばっております。

H:でも、カナダに行く前は沖縄にいたでしょ。

UA:うん。沖縄にいました。

H:その頃よく会ったよね。

UA:そうですね。沖縄にもね、知り合いで細野さんにぞっこんの家族がいまして…ギャラリーをやってるんだけど、その名前も「はらいそ」で(笑)

H:へぇー!

UA:で、息子さんは「晴臣」なの(笑)

H:うそだ!(笑)

UA:ほんとよ、これ(笑)

H:それはちょっと行き過ぎだよ(笑)

UA:思い出しちゃった。もう、そのままですよ。

H:それは沖縄の人なの?

UA:いえ、移住組ですね。デザインとかするカップルで…

H:そうかそうか。

UA:ギャラリー、いつか訪ねてあげてください。もう泣いちゃうよ?

H:行ってみたいね。

 

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H:カナダはどう?住んでて。天国?

UA:島からほとんど出ないんで…カナダをなにもわかってないではあるんですけど(笑)

H:そうなんだ(笑)

UA:その島にいる分にはたいへん子育てしやすくて。信号もコンビニも自動販売機もないような…

H:すごいね。

UA:でも、それは敢えて選んでそうしてるという感じの…ド田舎ではないんですよ。ちゃんと文化も芸術も…

H:やっぱりそこも違うよね、カナダはね。

UA:うん。なかなかレアな場所だなぁとは思ってます。

H:何年目?そこで。

UA:6年になりますね。

H:あ、そんなになるんだ。へぇ。

UA:カナダにライヴはなかったですね。アメリカだけでしたね。もうちょっと上に上がってきてもらえたらよかったのに…

H:そうだったね(笑)

UA:(笑)

H:それで、最近また[日本に]来て…時々来てるもんね。

UA:出張というような…

H:で、フジロック出たんだね。

UAフジロック出ました。

H:どうでした?

UA:はー…あのですね、かなり革命的なフジロックで。

H:今までと違うんだね。

UA:もう、まったく違いますね。まず外国の方々が一切いらしてないというところが徹底的に違いますし…私はある意味、ほんとのフジの祭りだ!と思えたのはあったんですが…

H:なるほど。

UA:とにかく静粛なんですね。

H:へぇ、いいね!

UA:もちろんお酒も一切売ってませんし、持ち込みもダメで…

H:じゃあ、愛知で問題になったフェスとは違うんだね(笑)

UA:あれはちょっと…(笑)昨日も散々その話で盛り上がっちゃって。どういう意味なのかまったくわからないというか。あれね。

H:フジはそうだったんだ。すばらしいね。

UA:完璧ですね、皆さんの態度が。ほんとに。涙ぐましいほどちゃんと守ってくださってて。だから大変静かなんですけど…でもなんかね、確固たる、たしかな感情が…

H:伝わってくる?

UA:逆に、すごく純粋に伝わってくる。

H:それは理想的なフェスティバルだね。

UA:なので、本当に音楽的だったんじゃないかな、とも思うんですよ。

H:いい話だ。

UAダンディーにもぜひ行ってほしかった。

H:ダンディーって誰だ?(笑)

UA:すみません、ハリーにも…(笑)

H:そうか。で、今やってるのがバンドじゃない。

UA:そうです、ロックのバンド。

H:名前をすぐ忘れちゃう…

UAAJICOという。

H:そうだ、AJICO。ツアーもやってるんでしょ?

UA:ツアーやりました!そしてちょうど終わったとこなんです。

H:すごいね、この時期にツアーは…どういう場所でやったの?ホール?

UA:ホールもありましたね。ライヴハウスもありましたし。なんかそれまたロックが似合うなぁ、っていうね(笑)いまロックがいいなぁ、ってしみじみ思っちゃって。やっぱりメッセージになりやすい音楽なので。

H:うんうん。

UA:もちろん、私の100%でやってる感じとは違うかもしれない…ある引き出しでやってる感じなんですが、そこがもう全開しちゃって。「愛でしょ!」って大声で怒鳴ってるみたいな。

H:すごくストレートになるんだね。素直で。

UA:そうなんです(笑)

H:いい時期なのかもな。だって、こういうときに観れるというのはお客さんもうれしいよね。

UA:ほんと。もうみんなの涙で湿気てるみたいな(笑)

H:へぇー(笑)それはちょっと体験してみたかったような気がするな。

UA:いやーなかなか、音楽的には非常に充実してるような…機会が減ってるのは確実ですが、クオリティが上がっているように思いますけどね。

H:それはいい。なるほど。なんだ、僕もやればよかったな(笑)

UA:(笑)

 

H:じゃあそのAJICOを。

UAAJICOかけてくださるんですか?やかましくないですか?大丈夫ですかね。

H:いいんじゃない?(笑)なんでもいい?

UA:なんでもいいですけど…むしろ私が言ったほうがよろしいですか?

H:そうだね。

UA:じゃあやっぱりリード曲みたいな、"地平線 Ma"というもので…お願いします。

 

 

地平線 Ma - AJICO

(from『接続』

  

 

H:音がおもしろいね。

UA:フルで聴いて頂けて…なんか恐縮です(笑)

H:いやいや(笑)

UA:でもけっこう短いんでよかった(笑)

H:短いね(笑)なんかおもしろい音だったな。ライヴっぽいけど…やっぱりロックだな。

UA:んー、バリバリですね。クラヴィがなかなか効いていて。

H:そうだったね。

UA:あれはベースの鈴木正人くんが鍵盤でサポートで入ってくださってて。

H:あ、そうなんだ!

UA:はい、5人体制だったんですね。

 

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H:なんか、ぜんぜん衰えてないなっていう…

UA:(笑)

H:自分が衰えてるからね、うらやましい。

UA:でも切磋琢磨の…衰えてるって言うんですか?

H:自分の中ではね。やっぱり歳には勝てないね。おじいちゃんだから。

UA:昔だったら35歳を過ぎたらもう余生みたいな。だったはずがね…

H:人生50年だったから、だいたいは。今は100年…50を過ぎたらみんなどうするの?っていうね。

UA:私もうすぐそこなんですよね…

H:そうかそうか。では…これからどうするの?

UA:これからですか?カナダに行ったら東京にいた頃とはまったく違った自分になってきて。まぁコアは変わらないんですけど。やっぱりエヴァーグリーンな、ポップというものに対する意識が芽生えちゃって。

H:へぇ!

UA:今は自分なりに…J-POPにはどうしても参入できないな、というのはありますけど(笑)それなりにポップというものを最大限やってみよう、という感じでアルバム作ってます。

H:お、それは楽しみだね。

UA:ぜったい送ります。

H:それはそれは…ちょっと東京で作るものっていうのは限界があるんだよね。

UA:でも東京で作ってるんですよ、ぜんぶ。

H:あ、そっか(笑)

UA:やっぱり日本語でやりたいですし、日本語でやることの意義って…改めておもしろいと思ってますし。海外からも日本語が注目されている部分もあるし。

H:そうだよね。そっか、いまは東京でやってるんだ。

UA:作ってます。

H:メンバーも…バンドではなくていろいろな人ね。

UA:そうですね。でもちょっと、だいぶ固まっては来ちゃいますけどね。あんまりそこら辺はこだわらずに、曲ごとにやってるんですけど。

H:UAにとってポップってどんなの?

UA:そうなんですよ…まさにそこを私が聞きたい(笑)

H:なんて言うんだろう…視野は世界だよね、やっぱり

UA:いえ!そんなことないです。カナダに行ったらUA誰やねん、っていう世界で生きてるので。

H:(笑)

UA:自分の中の日本人性というか。日本のチャンプルーな文化?なんでも受け入れて取り入れて、メタモルフォーゼして出しちゃうという…その感じがすっごくおもしろくなってきちゃって。それでいいやと思っているので。

H:へぇー。いや、それがいちばんおもしろいや。それだけですごく聴きたい(笑)

UA:でもね、やっぱりこだわっちゃったりとかするんですよね。いつもそのせめぎ合いで…

H:それはしょうがないや。

UA:なんなんでしょうね。

H:もう、ここまでくるとみんな聴いてるからね。20代の頃は誰が聴いてるかわからないから、好き勝手やってたけど。

UA:なるほど。

H:今はなんかもう…世界中の人が聴ける状態だから。

UA:うんうん。しかも新旧問わずね。おんなじ、並列で聴きますからね。

H:そうそうそう。じゃあその新曲をひとつ…聴けるわけないか(笑)

UA:え、聴けないですよ!(笑)

H:早く聴きたいな(笑)

UA:めちゃめちゃ聴いて頂きたいですけど…ビクター仲間ですからね。ニッパーくんいっぱいいますからね、ここ。

H:そう。ニッパー…僕、アンバサダーになっちゃってるからね。

UA:いすぎでしょ、これ(笑)いろんなニッパーくんが…ビクターのシンボルマークが…

H:知らない人もいるかもね。ニッパーと言うのはビクターのシンボルのワンワンです。

UA:ね。「His Master's Voice」というね。蓄音器からご主人の声が聞こえてくるんでしたっけ。

H:そうそう。

UA:首傾げて聴いてるんですよね。泣けますよね。

 

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2019年11月「細野観光」にて

 

UA:なんでしたっけ…ポップね。えー、逆にちょっともう…5つぐらい箇条書きで。

H:そんなの無理だよ(笑)

UA:でもやっぱり個人差はありますよね、ポップ観って。

H:そりゃそうだよ。

UA:生い立ちによるところがすごい…私にとってYMOがめちゃめちゃポップなわけですし。

H:本当?

UA:だってエレクトーンで全コピですよ?"RYDEEN"とか。

H:え、やってたんだ。それは初めて聞いた(笑)

UA:ウソでしょー?(笑)だからご一緒したときに思いっきりメロを歌わせて頂いたんですよ。幸宏さんの曲なのに歌っちゃってるという(笑)

H:そうだ(笑)

UA:どうしてもやりたかったですね。

H:あれはおもしろかったよ、うん。

UA:そう、"RYDEEN"完コピでやらせて頂いてました。足でベース弾いて…(笑)

H:え、すごいじゃんそれ。エレクトーン少女?知らなかった(笑)

UA:関西では朝にエレクトーンを弾いて「いってらっしゃい!」とか言ってくださる女性が出てくる番組があって。それに憧れちゃって(笑)毎日リクエストに応えて弾いてくれるというね。すごいなぁって。

H:あ、そうだったんだ。

[*大阪朝日放送ABCテレビ)で長年放送されている「おはよう朝日です」の名物。]

UA:ところが、最近の30代のイケてるミュージシャンたち、エレクトーン経験者が多いんですよ。

H:すごいねヤマハの力は。

UA:私、笑っちゃって。スタジオに4名いたんですよ、エレクトーン行ってた人が。ウソでしょ?って(笑)ちょっと恥ずかしくて言えない、と思ってたのが…いいんだ、みたいな。

H:みんなうまいんだよね、それで。エレクトーンをやってる少女を見るとビックリしちゃう。

UA:カーン!とね、足で色々変えて…

H:ひとりでオーケストラやっちゃうからね。そういうことやってたんでしょ?

UA:まぁそこまでは持たなかったんですけども…不器用で。

H:それがポップってわけじゃないよね?(笑)

UA:そうですね…YMOも弾いてましたし、もちろんキョンキョン小泉今日子)も弾いてたし、シブがき隊も弾いてたっていう。めちゃくちゃだったんですけど(笑)

H:そっか、J-POPだ(笑)

UA:でもスターリンとかも聴いてるっていうね。

H:すごいね。幅広い。どこから今のUAが出てきたんだろうね。きっかけっていうのは…

UA:でも、ヴォーカリストとしてはアレサ・フランクリンAretha Franklin)とジャニス(Janis Joplin)です。

H:あ、そこがいいところだよ。

UA:やっぱりそこ…関西っぽいでしょ?

H:そうかい?(笑)

UA:あ、そんなことないですか?(笑)

H:いや、いいと思うよ。

UA:なんかね、ボーイフレンドが『Aretha's Gold』っていうレコードをプレゼントでくれて。それをもう、ほんとに馬鹿みたいに聴いて。

H:ほんとに好きだったんだね。

UA:驚いちゃって、あの声に。自分でも耳でコピーしてカタカナで書いて、部屋で歌ってた…

H:それだ。原点というのはそれだな。やっぱり。

UA:あとはジャニスの映画を映画館で観たんですよ。もう、めちゃめちゃ泣いちゃって。歌でこんなに泣くってどういうこと?って。

H:そっかそっか。

UA:なので、身体からはみ出るように歌う、というのが…こうじゃなきゃ、ってなっちゃったんですよね。

H:その2つか。

UA:で、ビョークBjörk)の登場とかもあって。やっぱりあの人も肉体…ものすごくフィジカルでしょ?

H:3つ目が出てきたか…

 

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UA:そうなんですよね。ですけど、やっぱりアラフィフってなってくると、そんな肉体をはみ出る歌い方は腰にきちゃったりとか(笑)

H:(笑)

UA:なので、また違った発声を最近はめざしてます。

H:いや、そうであってほしいんだよね。みんな無理して続けようとしてるじゃない?アスリートみたいに。でもアスリートみたいにやると、いつかは折れちゃうじゃん。

UA:ほんとに…腰からの啓示がありまして。

H:星?

UA:腰(笑)

H:あ、腰か(笑)

UA:ウエスト星からの啓示がありまして。やっぱり肉体系…ジャニスはカーン!と力入ってるように見えますけど、アレサなんかはものすごく柔らかかったんですよね、身体。

H:軽いね。そうそう。

UA:自分はもちろん声楽とか通ってませんから、そういうスタイルは学んだことないんですけど。やっぱり力入ってたなぁ、って(笑)

H:いまはじゃあ、抜けてるんだね。

UA:Yes!そうです。「Yes!」っていう感じで歌いたい。

H:それはもうね、いちばん理想的。いいね、ますます聴きたい。

UA:ねー。そうなると晴臣さんに近づいていけるかな、って(笑)

H:(笑)

UA:ハリーの道に(笑)

H:昔っから力が入らなくて…力、ほしい(笑)

UA:いやいや…(笑)いろんな「○○力」みたいなのはお持ちだと思うので…

H:そうか…じゃあもう、後は任せよう。

UA:あ、任せて頂けます?

H:うん。最近はみんなに任せちゃってる。

UA:そういうところもさすがです。いつまでも俺が俺が、って言いそうじゃないですか。最近の日本の古い頭の方はね。

H:まぁ、僕は「俺」って言わないだけだね。「僕は僕は」って言ってる。

UA:それ、「僕」バージョンいいですね。私にとっての「僕」ってないですもんね、女子には。「アタシ」「わたし」「あて」…「僕」的なやついいですよね。

H:「わて」。

UA:わて。ほんまによう言わんわ。

H:わてなんて言わないでしょ?今。

UA:言わないですね。「ウチ」って言ってる子はたまにいますけどね。

H:ちょっと京都っぽいよね。

UA:ビックリしますけどね。

H:自分のことはなんて言うの?「わたし」?

UA:「わたし」ですね。

H:そっか。いいよ、大丈夫(笑)

UA:大丈夫ですか?(笑)

H:…あ、もうね、おしゃべりだけで30分経っちゃった。

UA:あら。なんて時間の密度が…

H:1曲かけられてよかった。じゃあ、しばらくいるんだったらまた会えるね。

UA:ぜひお会いしたいです。いいですか?

H:じゃあスタジオにちょっと見学しに行こうかな。どこでやってるの?

UA:ビクタースタジオですよ(笑)

H:あ、近い(笑)

UA:変わらず、ニッパーくんのところでやっております。

H:そうかそうか。じゃあほんとにちょっと顔出していい?

UA:ほんとですか?めちゃめちゃうれしいです。なんか用意しておきましょうか?

H:なんだろう、チャーハン?

UA:チャーハン!(笑)チャーハンですね、どんな感じの?

H:いやいや、ウソウソ(笑)

UA:ピラフじゃなくてチャーハンですね。

H:焼きそば。

UA:あ、焼きそばとチャーハン。

H:いや、焼きそばじゃないな、ハンバーグ。

UA:ハンバーグね。昔ね、1階にあったんですけどね。おもしろい…あの詩人のおばちゃんがね。

H:あったんだよね。知ってるね(笑)

UA:昔、詩を見せて頂いたりなんかしちゃって。思い出の…

H:…ということで(笑)じゃあまた、スタジオで会いましょう。

UA:はい、ぜひ!スタジオで会いましょう。

H:UAさんでした。ありがとう!

UA:ありがとうございましたー。

 

2021.09.05 Inter FM「Daisy Holiday!」より

手作りデイジー🌼#24

  

daisy-holiday.sblo.jp

 

 (以下、すべてH:)

  

 はい、細野晴臣です。月初めの手作りデイジー。今回は1960年代の大変動…それを背景にしたビーチボーイズThe Beach Boys)、とくにブライアン・ウィルソンBrian Wilson)の音楽を特集していきたいと思います。

 1963年の年はケネディ大統領(John F. Kennedy)が暗殺されました。そしてベトナム戦争が悪化していって、1968年にはロバート・ケネディ(Robert F. Kennedy)も暗殺され、マーティン・ルーサー・キングMartin Luther King, Jr)も暗殺されるという…ホントに大変動の時代ですね。そんな中でビーチボーイズは1964年ごろからもうサーフィン離れをしていまして。とくにブライアン・ウィルソンが非常に内向的になっていくという…そこら辺をちょっと、聴いていきたいと思います。

 

 まずは1965年の作品。非常にジャズ的な手法で書かれた"Let Him Run Wild"。続けて、沖縄音階が特徴的な"Good To My Baby"。

    

  

Let Him Run Wild - The Beach Boys

(from『Summer Days』)

   

  

Good To My Baby - The Beach Boys

(from『The Beach Boys Today!』)

    

     

California Girls (Vocal) - The Beach Boys

(from『Good Vibrations: Thirty Years Of The Beach Boys』)

 

     

Surfin' U.S.A. (Demo Version) - The Beach Boys

(from『Good Vibrations: Thirty Years Of The Beach Boys』)

 

 

 これは"Surfin' U.S.A."のデモなんですけど…これほど僕はビーチボーイズ好きなのに、なぜ今その影響が見れないのか、という…まぁ謎なんですけどね。この60年代は僕の音楽の基礎だったんですけど…ある時、はっぴいえんどを始めた頃、大瀧詠一の前で"Surfin' U.S.A."を歌ったんですよ。ところが低い声なんでね、笑われちゃいましたね。♪Surfin' U.S.A.~。

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 では、最高傑作と呼ばれている"God Only Knows"。

 

     

God Only Knows - The Beach Boys

(from『Pet Sounds』)

     

 

この名曲の歌詞はトニー・アッシャー(Tony Asher)という才人が作ったんですけど、彼は"Good Vibrations"なども作った人ですね。

 

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 1966年、67年あたりにブライアン・ウィルソンは『Smile』という幻のアルバムに取り掛かっていて。これが未完成になった。その頃にできた曲が次の"Cool Cool Water"で、シングルカットされたのは1971年ですね。弟のカール・ウィルソン(Carl Wilson)が編集して、『Sunflower』というアルバムに収録しました。

 

     

Cool Cool Water - The Beach Boys

(from『Sunflower』)

     

 

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 1966年に"Good Vibrations"が大ヒットしたんですけど、その後にブライアン・ウィルソンは『Smile』という幻のアルバム…不思議な音楽に入り込んでいくんですね。その間に傑作がいっぱい生まれたんですが、ブライアン・ウィルソン自身のメンタルがかなり弱ってきている時期でもありました。次の"Wonderful"、この曲はこの頃にできた曲で全部で3ヴァージョンあるんですけど、これは『Smiley Smile』に収録されたヴァージョンで…カール・ウィルソンの声だと思うんですけど、作詞作曲はヴァン・ダイク・パークスVan Dyke Parks)とブライアン・ウィルソンです。それでは、"Wonderful"。

 

     

Wonderful - The Beach Boys

(from『Smiley Smile』)

      

 

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 1968年になりますと…動乱が近づいていますけど、その所為でしょうか。ビートルズThe Beatles)もインドのマハリシ・マヘーシュ・ヨギ(Maharishi Mahesh Yogi)に師事したり、ビーチボーイズでもマイク・ラブ(Mike Love)なんかがそこに通ってました。そんな雰囲気がいっぱい詰まっているアルバムが、この年に出た『Friends』です。その中から"Meant For You"。この歌はなんと30数秒しかないです。

 

     

Meant For You - The Beach Boys

(from『Frineds』)

      

 

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Wish That He Could Stay ~ And Your Dream Comes True - The Beach Boys

(from『Hawthorne, CA』)

      

 

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 ブライアン・ウィルソンは20歳の頃に女子高生と結婚したんですね。彼女の名前はマリリン・ウィルソン(Marilyn Wilson)、最初の奥さんです。そのマリリンが妹のダイアン・ロヴェル(Diane Rovell)といっしょに作ったデュオがスプリング(Spring)というグループなんです。これをブライアン・ウィルソンがプロデュースしました。スプリングという名前は後ほどアメリカン・スプリング(American Spring)に変更になりましたけどね。曲は"Thinkin' 'Bout You Baby"。これは1964年にマイク・ラブとブライアンがいっしょに作って、シャロン・マリー(Sharon Marie)という女の子に提供した曲なんです。その後ビーチボーイズ自身で"Darlin'"という、これがまた素晴らしい曲に改作したんですね。それがまたヒットしました。ではスプリングで、"Thinkin' 'Bout You Baby"。

 

     

Thinkin' 'Bout You Baby - American Spring

(from『Spring』)

      

 

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 1967年ごろにブライアン・ウィルソンが『Smile』のために作った"Surf's Up"。この非常に文学的な詩を書いたのはヴァン・ダイク・パークスで、後の1971年にカール・ウィルソンによってまとめられました。「surf's up」には「いい波が来る」という意味と同時に「サーフィンは終わった」というダブルミーニングがあるんじゃないでしょうか。では、"Surf's Up"。

 

     

Surf's Up - The Beach Boys

(from『Surf's Up』)

      

  

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 さて、1968年というのはひとつのピークだったんですけど、結局1973年にベトナム戦争アメリカの敗北で終わるわけですね。その1968年から20年経った1988年、ブライアン・ウィルソンは初のソロを作るんですけど、ユージン・ランディ(Eugene Landy)というセラピストのもとで作られたんです。そのセラピストはかなり支配的な治療を行っていたようで、いろいろ問題が出てきたようです。では、2014年に映画にもなった"Love and Mercy"。

 

 

Love and Mercy - Brian Wilson

(from『Brian Wilson』)

      

  

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 いよいよ最後の曲ですね。たぶん1963年ごろの音源だと思うんですけど、"Things We Did Last Summer"という曲です。これはスタンダードナンバーで、フォー・フレッシュメン(The Four Freshmen)のような素晴らしい出来ですね。では、来月はいよいよ…全く変わった時代の音楽になります。それを特集したいと思います。

 

     

Things We Did Last Summer - The Beach Boys

(from『Good Vibrations: Thirty Years Of The Beach Boys』)

        

 

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