2021.09.05 Inter FM「Daisy Holiday!」より

手作りデイジー🌼#24

  

daisy-holiday.sblo.jp

 

 (以下、すべてH:)

  

 はい、細野晴臣です。月初めの手作りデイジー。今回は1960年代の大変動…それを背景にしたビーチボーイズThe Beach Boys)、とくにブライアン・ウィルソンBrian Wilson)の音楽を特集していきたいと思います。

 1963年の年はケネディ大統領(John F. Kennedy)が暗殺されました。そしてベトナム戦争が悪化していって、1968年にはロバート・ケネディ(Robert F. Kennedy)も暗殺され、マーティン・ルーサー・キングMartin Luther King, Jr)も暗殺されるという…ホントに大変動の時代ですね。そんな中でビーチボーイズは1964年ごろからもうサーフィン離れをしていまして。とくにブライアン・ウィルソンが非常に内向的になっていくという…そこら辺をちょっと、聴いていきたいと思います。

 

 まずは1965年の作品。非常にジャズ的な手法で書かれた"Let Him Run Wild"。続けて、沖縄音階が特徴的な"Good To My Baby"。

    

  

Let Him Run Wild - The Beach Boys

(from『Summer Days』)

   

  

Good To My Baby - The Beach Boys

(from『The Beach Boys Today!』)

    

     

California Girls (Vocal) - The Beach Boys

(from『Good Vibrations: Thirty Years Of The Beach Boys』)

 

     

Surfin' U.S.A. (Demo Version) - The Beach Boys

(from『Good Vibrations: Thirty Years Of The Beach Boys』)

 

 

 これは"Surfin' U.S.A."のデモなんですけど…これほど僕はビーチボーイズ好きなのに、なぜ今その影響が見れないのか、という…まぁ謎なんですけどね。この60年代は僕の音楽の基礎だったんですけど…ある時、はっぴいえんどを始めた頃、大瀧詠一の前で"Surfin' U.S.A."を歌ったんですよ。ところが低い声なんでね、笑われちゃいましたね。♪Surfin' U.S.A.~。

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 では、最高傑作と呼ばれている"God Only Knows"。

 

     

God Only Knows - The Beach Boys

(from『Pet Sounds』)

     

 

この名曲の歌詞はトニー・アッシャー(Tony Asher)という才人が作ったんですけど、彼は"Good Vibrations"なども作った人ですね。

 

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 1966年、67年あたりにブライアン・ウィルソンは『Smile』という幻のアルバムに取り掛かっていて。これが未完成になった。その頃にできた曲が次の"Cool Cool Water"で、シングルカットされたのは1971年ですね。弟のカール・ウィルソン(Carl Wilson)が編集して、『Sunflower』というアルバムに収録しました。

 

     

Cool Cool Water - The Beach Boys

(from『Sunflower』)

     

 

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 1966年に"Good Vibrations"が大ヒットしたんですけど、その後にブライアン・ウィルソンは『Smile』という幻のアルバム…不思議な音楽に入り込んでいくんですね。その間に傑作がいっぱい生まれたんですが、ブライアン・ウィルソン自身のメンタルがかなり弱ってきている時期でもありました。次の"Wonderful"、この曲はこの頃にできた曲で全部で3ヴァージョンあるんですけど、これは『Smiley Smile』に収録されたヴァージョンで…カール・ウィルソンの声だと思うんですけど、作詞作曲はヴァン・ダイク・パークスVan Dyke Parks)とブライアン・ウィルソンです。それでは、"Wonderful"。

 

     

Wonderful - The Beach Boys

(from『Smiley Smile』)

      

 

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 1968年になりますと…動乱が近づいていますけど、その所為でしょうか。ビートルズThe Beatles)もインドのマハリシ・マヘーシュ・ヨギ(Maharishi Mahesh Yogi)に師事したり、ビーチボーイズでもマイク・ラブ(Mike Love)なんかがそこに通ってました。そんな雰囲気がいっぱい詰まっているアルバムが、この年に出た『Friends』です。その中から"Meant For You"。この歌はなんと30数秒しかないです。

 

     

Meant For You - The Beach Boys

(from『Frineds』)

      

 

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Wish That He Could Stay ~ And Your Dream Comes True - The Beach Boys

(from『Hawthorne, CA』)

      

 

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 ブライアン・ウィルソンは20歳の頃に女子高生と結婚したんですね。彼女の名前はマリリン・ウィルソン(Marilyn Wilson)、最初の奥さんです。そのマリリンが妹のダイアン・ロヴェル(Diane Rovell)といっしょに作ったデュオがスプリング(Spring)というグループなんです。これをブライアン・ウィルソンがプロデュースしました。スプリングという名前は後ほどアメリカン・スプリング(American Spring)に変更になりましたけどね。曲は"Thinkin' 'Bout You Baby"。これは1964年にマイク・ラブとブライアンがいっしょに作って、シャロン・マリー(Sharon Marie)という女の子に提供した曲なんです。その後ビーチボーイズ自身で"Darlin'"という、これがまた素晴らしい曲に改作したんですね。それがまたヒットしました。ではスプリングで、"Thinkin' 'Bout You Baby"。

 

     

Thinkin' 'Bout You Baby - American Spring

(from『Spring』)

      

 

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 1967年ごろにブライアン・ウィルソンが『Smile』のために作った"Surf's Up"。この非常に文学的な詩を書いたのはヴァン・ダイク・パークスで、後の1971年にカール・ウィルソンによってまとめられました。「surf's up」には「いい波が来る」という意味と同時に「サーフィンは終わった」というダブルミーニングがあるんじゃないでしょうか。では、"Surf's Up"。

 

     

Surf's Up - The Beach Boys

(from『Surf's Up』)

      

  

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 さて、1968年というのはひとつのピークだったんですけど、結局1973年にベトナム戦争アメリカの敗北で終わるわけですね。その1968年から20年経った1988年、ブライアン・ウィルソンは初のソロを作るんですけど、ユージン・ランディ(Eugene Landy)というセラピストのもとで作られたんです。そのセラピストはかなり支配的な治療を行っていたようで、いろいろ問題が出てきたようです。では、2014年に映画にもなった"Love and Mercy"。

 

 

Love and Mercy - Brian Wilson

(from『Brian Wilson』)

      

  

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 いよいよ最後の曲ですね。たぶん1963年ごろの音源だと思うんですけど、"Things We Did Last Summer"という曲です。これはスタンダードナンバーで、フォー・フレッシュメン(The Four Freshmen)のような素晴らしい出来ですね。では、来月はいよいよ…全く変わった時代の音楽になります。それを特集したいと思います。

 

     

Things We Did Last Summer - The Beach Boys

(from『Good Vibrations: Thirty Years Of The Beach Boys』)

        

 

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