2021.06.20 Inter FM「Daisy Holiday!」より
H:こんばんは、細野晴臣です。えー、6月20日になっちゃいましたが…どうですか?岡田くん。
O:こんばんは、岡田崇です。えーと…なんでしたっけね(笑)
H:そういう感じだよね(笑)
O:暑くてもう…梅雨だし暑いし、眠いし…
H:これからもっと暑くなるんでしょ?
O:これから夏なんて、想像するとね…
H:今年は夏いらないよね。
O:うーん、秋になってほしい…早くクリスマスに。
H:なるよ。すぐだよ(笑)
O:あっという間ですよね(笑)
H:もう、ますますだね。ん-。「年取ると早く時間を感じる」って前話して、[その理由が]わかった!って言って…忘れちゃったじゃん。
O:はい(笑)
H:で、そういう記事が正式にあるのかと思ったら、あったんだよね。
O:お。
H:「ジャネの法則」という。その中身は、忘れた(笑)
O:一歩前進しましたね(笑)
H:ホントね、記憶力もひどいよ、もう。どうですか?
O:いやー、記憶力はダメですね。昨日なに食べたかも憶えてないくらい。
H:もうこの時代、憶えてなくてもいいことばっかりだけどね。
O:毎日変わらないですしね。ずっと家にいるし。
H:なんだっけ?あれ。流行ってるの。あ…コロナだ(笑)
O:それも忘れちゃったかぁ…(笑)
H:忘れそうになっちゃうんだよ(笑)
O:流行ってるらしいですよ?
H:そう?もう終わったんだと思ってたよ。
O:まだまだ…
H:そうなの?いやー、人によって違うんじゃない?それ。
O:まぁ感覚はね、個人個人違いますよね。
H:これはナントカの法則って言うんだよ(笑)
O:(笑)
H:じゃあ近況…特にないだろうけど、近況を聞こうかな。あるの?
O:あ、ありますよ。あるある。
H:近況あるんだ。聞きたいな。
O:ずっとなにをやっていたかと言うと、去年の10月に亡くなったうちの奥さまの…
H:片岡知子さん。インスタント・シトロン。
O:インスタント・シトロンのアナログリイシューというのを。
H:そうですよね。
O:彼女の誕生日が6月7日なので、その日からスタートしようと思って。
H:ついこないだですね。
O:6月9日に第1弾、1stアルバムと2ndアルバムがユニバーサルから発売されました。
H:出たんだね。
O:で、ちょうど先週で…8月発売の5枚目のアルバムまでテストプレスが終わって。OK出して。
H:もう準備はできてるんだ。
O:はい、順調に。10月まで続くので。
H:続くね。
O:10月の命日には…『スキマの国のポルタ』という荒井良二さん原作のアニメがあって。賞とかも獲ったりしてるんですけども。
H:それはそれはすごい。
O:それのサントラ盤というのが…昔、指人形とかDVDと絵本が付いて、その中にサントラも入ったボックスセットが出たんですけど。
H:うん。
O:それでしか買えなかったので、サントラ盤をアナログで…なんとリルデイジーから出せることになりまして。
H:じゃあ10月まで…結構大変ですね。
O:そうですね。まぁなんか、「自分の作品と岡やんの作品を世に残したい」と言って去っていったので…出せるものはいろいろ、極力出していこうと思って。
H:うん。それはそうだね。とにかく今、リリースが多くてね。
O:「レコードストアデイ」が直後にあったんで…絶対、レコードストアデイには合わせたくなかったんでね、僕は(笑)
H:そうなんだ(笑)
O:なんか限定…まぁ限定は限定なんですけど、争奪戦になったりね、予約ができなかったりとか…いろいろあるんですよ、ストアデイはね。いろんな弊害が。
H:なんかね、いろんな声は聞くけど。あんまり自分では実感がないからね。
O:転売の人がいっぱいいたりね。まぁ、シトロンだとそういう人はいないかもしれないですけど(笑)なんとなく、ちゃんと作品として丁寧にリリースされていくのがいいかな、と思って。
H:それがいいね。で、CDも出るのね。
O:えーと、それは出ないです。2枚とも配信もされていたので…今どきはね、CDはなかなか。
H:CDね、あんまり見ない。
O:7月に出る『Little Gang Of The Universe』というやつはCDも出ます。それはソニーから出るんですけども。
H:えーと、配信というのは…僕が最近困ってるのは、最新のiTunesは隠れちゃうんだよね。
O:なんかね…どんどんイヤな仕様になっていって…(笑)
H:(笑)
O:ホント、やめてほしいですよね。
H:うん。だからアップデートできないんだよね。
O:絶対しないぞ!と思ってますね。
H:アップデートは怖いよね。
O:怖いですね。今まで普通に使ってたものとか…ライブラリーのように音源を全部iTunesで整理してるので。
H:そうそう。
O:そういうのが使えなくなると思ったら…
H:音楽に携わってる人間にとってはかなりキツくなってくるよね。
O:うーん…脳みそみたいなもんですもんね(笑)
H:そうなんだよ。今までは自分の頭の中だけに入ってたのが、いっぱいになっちゃったから外に出さなきゃいけない(笑)
O:外部記憶装置としてね。
H:そうそうそう。それが取り出せなくなっちゃうと困っちゃうしね。
O:んー…いまいち仕様をよくわかってないんですけどね、どうなってるのか。
H:うん。まぁいろんな手段はあるんだろうけど、表からは見えにくくなってきちゃうという。
O:ね。
H:えー、じゃあ音楽を聴かせてください。
O:じゃあせっかくなので、インスタント・シトロンの2ndアルバムから…元気なやつがいいかな。"Walkin' in Wonderland"を。
Walkin' in Wonderland - INSTANT CYTRON
(from『Cheerful Monsters』)
H:元気ですね。
O:いちばん元気な曲かな?(笑)
H:いちばんなんだ(笑)
O:ベースは渡辺等さんですね、これ。ミハルさんと今、トリオでやってる…
H:あ、器用ですね。不思議な人ですよ、才能ある。なんか、ミハルちゃんとちゃんと話してないらしいんだけどね…(笑)
O:(笑)
H:ちゃんと話したことないらしいんだよね(笑)
O:でも、ノンスタンダード時代から一緒ですからね。SHI-SHONENの人ですもんね。
H:そうそう。当時はああいうウッディなベースを弾く人だとは知らなかったね。
O:マルチ弦楽器奏者として…なんでもやりますよね。
H:そうだね。なんか、才能ある人が多いね。そういう人を見ると…あー、自分はなんにもできない!とつい思っちゃうんだよね…(笑)
O:いや…なんでもできるじゃないですか(笑)
H:いやいやいや…だって楽器って触れば音が出るから…それはもう誰でも音は出せるっていうことです(笑)
O:(笑)
H:いや、すごいよホント上手くて。ピアノも練習したけどもう、できないわ。
O:ピアノはね…
H:岡田くんはどうですか?
O:あ、全然ダメですよ(笑)
H:知ってるよ(笑)
O:楽器ねぇ…
H:でも、絵は描けるよね?
O:絵ねぇ…
H:あれ?(笑)
O:もう、なにもできないなぁ…(笑)
H:あららら…まぁでもね、音楽っていうのはそういうもんだよ。できなくてもできるんだよね。
O:打ち込みばっかりですからね、僕は。
H:打ち込みだって立派な楽器だからね。いいなぁ、打ち込みか。やったことないや、最近(笑)
O:(笑)
H:えーと…最近の話題といっても、ホントに単調な日々が続いてるでしょ?もう1年半経っちゃいましたよ。
O:そうですね。
H:6月30日で夏越の大祓ですからね。去年も行きましたけど、ついこないだですね。茅の輪くぐり、やってます?
O:やってないです。
H:やったほうがいいですよ。蘇民将来、蘇民将来…疫病除けですから。だいたいどこの神社でも…氷川様系とか。八幡様もあるしね。目黒だったら大鳥神社とか。
O:そうですね。近い。
H:…はい、きょうはこの辺で。
O:おやすみなさい(笑)
H:いやいや……なんか話して?(笑)
O:えーと…
H:他の話題、仕事でもいいですよ。音楽はどうですか?なんか発見はありますか?
O:いやー、最近全然ですね。あんまりレコードを買うことに勤しんでいない。
H:めずらしいね。まぁそういうときもあるよね。
O:ですが、最近届いたのを聴きますかね。
H:やってるじゃん(笑)
O:じゃあヘンなやつでですね…これはロシアのソノシートなんですけど。
H:それはヘンだな…(笑)
O:"ぼくの伯父さん(Mon Oncle)"をやってるのがあって…(笑)
H:僕、その音源は聴いたことあるんだよ。なんか馴染めない…ロシア語と合わないっていうか。
O:これはね、インストなんですけど。
H:あ、そうなの?じゃあ違うやつだ。ロシア人って『ぼくの伯父さん』好きみたいね。
O:そうなんですか?ジャケット見ても全然、なんて書いてあるかわかんないんですけどね(笑)
H:キリル文字ね。
Моя Дядя (Mon Oncle) - (Unknown Ensemble)
H:ここにソノシートの現物がありますけど…おもしろいですね、ペランペラン(笑)
O:ペランペランですよね(笑)
H:ソノシートって音良いんだね。良くない?
O:まぁちょっと、調節はしてますけど…意外と聴ける音質ですね。
H:わりとね。たいしたもんだよね。いまだに聴けるってすごいな、これは。
O:(笑)
H:たしかに読めないですね。「モノンクル」っていう発音だけど…「モン」っていう部分はなんとなく読める。
O:そうですね。
H:その次に…「A」みたいなのと「R」がひっくり返ったのが…(笑)
O:(笑)
H:えーと、僕が持ってるロシア語の"ぼくの伯父さん"はちょっと見当たらないので今度かけますね。
O:はい。楽しみにしてます。
H:…さて、なんにもない(笑)
O:じゃあですね、もう1枚…ちょっと音質がいまいちですけど、『原始家族フリントストーン(The Flintstones)』ってあったじゃないですか。
H:あったね。ハンナ・バーベラ(Hanna-Barbera)のTVアニメーション。アメリカです。
O:はい。そのフリントストーン&ヒズ・オーケストラ(Fred Flintstone and His Orchestra)。
H:そんなのあるんですか。
O:バンドを率いてたんですね。その"A Night in Bedrock Forest"という曲を。1961年の盤ですけど、レイモンド・スコット(Raymond Scott)ですね、こりゃ。ほとんど。
H:そう。なんでそんなもの持ってるんだろう、と思うね。
O:(笑)
A Night in Bedrock Forest - Fred Flintstone and His Orchestra
H:なるほどね。なんでこういうのってみんなレイモンド・スコット系になるんだろうね(笑)
O:ね(笑)
H:おんなじだよね(笑)影響力がすごいんだね、業界的に。
O:そうですね…アニメを作ろうと思うと、ついついこういう音楽になっちゃうんでしょうね(笑)
H:なっちゃうんだね。
H:そういえば最近は…観たいと思っててまだ観てない映画があって。それはデヴィッド・バーン(David Byrne)の『アメリカン・ユートピア(American Utopia)』。観てないよね?
O:観てないです。
H:いやー、なんかあの人、すごい気になるんだよね。デヴィッド・バーン。
O:デヴィッド・バーンね、カッコいいですよね、ずっと。
H:アメリカでいちばんカッコいいんじゃないか、と思っちゃうよね。ずーっとでも、音楽性は変わらないのね。80年代から。
O:ね。『ストップ・メイキング・センス(Stop Making Sense)』から。
H:すごくあの頃、影響されたんだよね。"Once in a Lifetime"という曲のPVがあって。踊りながら歌うっていう。
O:うん。
H:当時、原宿に竹の子族がいた頃で…それの振付けを取り入れてるの(笑)ビックリしちゃって。
O:(笑)
H:腕を手刀でポンポンッと叩くんだよね。あと鳥のような恰好したりね。ちょっとなんか気持ちがわかるというかね。いまだにあれやってるんだよね、その映画の中でも。変わらない!すごい!全然自分と違う。どんどん変わってっちゃったから(笑)
O:(笑)
H:変わらないものを見るというのは心が落ち着くよ。いいなぁ、うらやましい存在ですよね。カッコいいですよ。アーティストっぽい。
O:そうですね。
H:…あ、話が途切れちゃった。
O:(笑)
H:それで最近、ずっと自分が中学の頃聴いてたのをかけてて。もう疲れちゃって休んでるんだけど(笑)夏だから、と思って、7月…もうすぐだよ、あと2週間先くらい。いよいよ中2の頃に聴いてたサーフィンを…
O:おお…
H:できるのかな?ひとりで聴くのはいいんだけど…並べて聴くとげんなりしないかな、と思って(笑)
O:(笑)
H:でも、ついでだからやっちゃわないとね。
O:この機会に。
H:うん。サーフィン、ホットロッド…聴いてた?聴いてないでしょ。世代が違うよな。
O:いやー…そうですね、ビーチ・ボーイズだとやっぱり『Pet Sounds』とか『Sunflower』とか、あっちから始まっちゃう感じなので…
H:そうだろうね。その前は全然違う世界だもんね。だからその当時、現役で聴いてた世代って僕ぐらいなんだよね。あっという間に終わっちゃうから(笑)1,2年で終わっちゃうからね。それをかけて誰か反応するかなぁ、と思って。
O:いやー、反応するでしょう。
H:するか。だってね、うるさいんだよ(笑)
O:うるさいって言っちゃあ…(笑)
H:だって「ワイプ・アウト」だよ?イヤになっちゃうよ、聴いてて(笑)
O:でも、衝撃だったわけですよね、当時。
H:当時…だって中学生ってそういうのに飛びついちゃうんだよね(笑)おもしろかった…で、高校生ぐらいの連中が始めたの。アメリカで。ヘタクソなんだよね(笑)
O:(笑)
H:それが良かったんだけど、だんだんスタジオミュージシャンがやり出す。取って代わって上手くなっちゃうというね。だいたいそこら辺に…アル・ケイシー(Al Casey)とか、ああいう人がいたんだよね。
O:そうですね。上手い人が…(笑)
H:上手い人がやってたんだよね。ドラムスはハル・ブレイン(Hal Blaine)だったりね。まぁそんなことを予告しておきますが…
O:楽しみです。
H:よろしくお願いします。
H:じゃあ最後の曲、お願いします。全然僕はかけないよ(笑)
O:かからないですね(笑)じゃあ最後もインスタント・シトロンで…1stアルバムのタイトル曲、"Change This World"を聴いてお別れです。
H:はい。じゃあこれを聴いて、また来週。
Change This World - INSTANT CYTRON
(from『Change This World』)