2021.02.28 Inter FM「Daisy Holiday!」より
H:こんばんは、細野晴臣です。きょうはですね…初めて来て頂いた斉藤和義さん。よろしく。
和義:お願いします。
H:ひさしぶりですね。
和義:おひさしぶりです。
H:いつ会ったのかはちょっと憶えてないけど…ステージでよく会ってたよね。
和義:そうですね。あとは1回、番組で…いとうせいこうさんの番組。
H:あ、そうかそうか。そういうこともあったね。
和義:たぶん、お会いするのはそれぶりな気がしますけど。
H:そうだね。ちゃんと、じっくり話したことはないよね(笑)
和義:そうですね。打ち上げでチラッと…ぐらいですかね。緊張します。
H:いやいやいや…(笑)
和義:よく聴いてるんです、この番組。細野さんが紹介した曲とかをよく買ってます。
H:あ、ホント?(笑)うれしいね。
和義:ぜんぜん知らない人ばっかりかかるんで…すごい勉強になってます。
H:そうか。おもしろいな、それ。ぜんぜん…どういう音楽を聴いて育ってきたのか知りたいんだけど。
和義:はい。
H:世代的には僕と2周りくらい違うのかな?
和義:いま54歳なので…
H:あ、そっかそっか。じゃあベテランだなぁ、もう。
和義:ベテランではないですけど…ちょうどビートルズが来日した年生まれなんですよね。
H:そうなんだね。それはわかりやすい。
和義:それこそ歌謡曲が好きでしたし…ギター始めたころ、最初はフュージョンブームみたいなものがあったので。高中さん(高中正義)とかね。"BLUE LAGOON"が弾きたくてギターを始めました。
H:やっぱり最初からギターなんだね。
和義:そうですね。
H:でも、いろんな楽器やるんでしょ?
和義:まぁ、どれもテキトーに…
H:じゃあおんなじだ、僕と。
和義:いやいやいや…
H:ドラムやったりね。トランペットって書いてあったな、どこかに。
和義:小学生のときに鼓笛隊みたいのをちょっとやって。最近またできるかな、と思ったらぜんぜん…
H:あんまり似合わないかもね(笑)
和義:そうですね(笑)
H:やっぱりギターがいちばん似合うね。
和義:細野さんは最初ギターですか?ベースではなくて。
H:うん。最初からベースっていう人はあんまりいないね。
和義:そっか。
H:ギターやってて…誰も弾かないじゃない、ベースって。みんなギターで。
和義:まぁそうですね。
H:津軽三味線みたいにみんなユニゾンでギター弾いてて…(笑)
和義:俺の時代でも…中学生くらいのときに組んだバンドは6人編成だけどギターは4人でしたね(笑)
H:多いよ(笑)
和義:ベースっていう存在をあんまりみんな知らなくて。
H:そうなんだよ。ベースはね…軽く見られてたんだよ。昔はね。「どれがベースの音?」って、普通の人は。
和義:そうですね。でも、意外と…タイトルがわからない曲があったときに、それはどういう曲?って訊いたときに口ずさむメロディーが意外とベースラインだったりする。
H:あ、なるほどね。
和義:だから、意外と聴いてはいるんだろうな、と思って。
H:そうだよね。やっぱり潜在意識に残っちゃうのかね。
和義:そうかもしれないですね。
H:えーと、新作。3/24にリリースですけど、もうかけていいかな?
和義:はい。これはまさに去年の自粛中に…最初はギターとかで作ってたんですけど、いっぱり作りすぎて飽きちゃって。
H:飽きちゃうぐらい?すごいな。
和義:それで曲も録らなきゃな、と思い始めたときにYMOの"BEHIND THE MUSK"を…すみません、細野さんの曲じゃないんですけど(笑)
H:いや、いいんですよ(笑)
和義:あれが前から…もちろんYMOは大好きだったんで。
H:あ、好きだったの?
和義:大好きでした!『スネークマンショー』とかも毎日のように聴いてたし。
H:あー、そうだったのか。
和義:特に『SOLID STATE SURVIVER』はずーっと、あの頃から…
H:中学生ぐらい?それ。
和義:そうですね。小6か中1ですかね。
H:いちばん吸収しちゃう世代だよね。
和義:そうですそうです。で、それを勝手にカヴァーさせて頂いて…
H:そうかそうか。聴きたいな、"BEHIND THE MUSK"。聴いていいの?
和義:はい。
H:聴かせてください。
BEHIND THE MUSK - 斉藤和義
(from『55 STONES』)
H:いやいや、ヴォコーダーだ(笑)歌ってるのかと思ったら。
和義:そうですね(笑)あれを全部生楽器でやってみよう、と思って。やってみました。
H:そうか。クラプトン(Eric Clapton)のアレンジってどんなんだっけな…こういう感じだっけ?
和義:いや、もっと…歌ものですね。マイケル・ジャクソンのも歌ものですね。
H:そうか。
和義:僕は英語がぜんぜんダメなので…
H:そうかそうか。あれ?でもロサンジェルスのレコーディング、どうだったのかな?それがすごい気になるんだけど。それはいつやったんだっけ?
和義:えーと、ロスは5年ぐらい前ですかね。2015年ぐらいに…チャーリー・ドレイトン(Charley Drayton)というドラマーがいて。キース・リチャーズ(Keith Richards)がエクスペンシヴ・ワイノーズ(The X-Pensive Winos)というバンドと最初のソロアルバムを出したときに…
*1988年発表『Talk Is Cheap』。
H:あー、そこら辺は知らなかったな。
和義:スティーヴ・ジョーダン(Steve Jordan)もドラムで。そのチャーリー・ドレイトンとベースとドラムがテレコになったりして。
H:うんうん。
和義:そのチャーリー・ドレイトンがすごく好きで。前にも、2000年初期ぐらいにもいっしょにやってもらったりして。で、久々にまた彼とやろうということで[ロスに]行って。
H:そうかそうか。
和義:で、なぜか彼はダリル・ジョーンズ(Darryl Jones)さんの家に居候してたんですよ。そこで3曲ぐらい…ダリルさんも来てくれて。
H:来た?豪勢。僕も一昨年ロサンジェルスでライヴやって。最近そのライヴ盤が出ましたけど。
和義:めちゃめちゃ盛り上がってるやつですよね(笑)
H:そうですね。あれはヤラセじゃないですから(笑)
和義:歓声がすごいですよね(笑)
H:そのときにコーディネートしてくれた日本人の人がね。
和義:あ、洋平ちゃんですか?鹿野洋平。
H:鹿野洋平くんじゃなくて…洋平くんだったかな?その情報は。あ、そうだ。僕もよく知ってる人だからね。鹿野くん。
和義:うんうん。
H:そしたら「斉藤さんが来ましたよ」と。彼がやったんだっけ?コーディネート。
和義:そうです。何曲かギターとベースも弾いてもらって。
H:そうか。そのときに…ジョー・ヘンリー(Joe Henry)のスタジオなの?どこでやったの?
和義:えーとね、エンジニアの…
H:エンジニアはフリーランド(Ryan Freeland)っていう人かな?違うかな。
和義:誰だったっけ。名前忘れちゃった…
H:ジョー・ヘンリーがすごい好きなんで。よく一緒にやってるエンジニアがサイトで調べて…どんな機材使ってるのか、とかね。で、そのページに「Kazuyoshi Saito」っていう写真があったんだよね。
和義:あ、そうですか。
H:そこに行ったんでしょ?たぶん(笑)
和義:行きましたね(笑)
H:(笑)
和義:一軒家でした。
H:あー、そうだよ。よさそうだよなぁ。行きたくてしょうがない、そこ。
和義:一軒家で、スタジオっていう感じじゃなくて。自分の家族が住んでる家が隣にあって。そのガレージを改造したような…
H:ロサンジェルスにはそういうところ多いよなぁ。んー。
和義:だからあんまり大きな音はずっと出せないんで夜9時までとか。
H:あ、そうなんだ(笑)
和義:だからでかい[音量の]トラックとかを録るとブースの中まで聞こえてきちゃうような感じでしたけど…でもよかったですよ。
H:そうなんだ。良いところでやったなぁ…
和義:2階がコンソールルームになってて、1階がブースで…ブースといってもそんなに広くなくて。
H:あ、意外だね。広くないところでもドラムセット置いたりできるわけね。
和義:ドラムのブースがいちばん広くても、まぁ8畳ぐらいな感じで。あとは2畳もないようなブースが3つぐらいあって。
H:へぇ。ミックスもしたの?
和義:ミックスは日本で。
H:あ、そうなんだ。
和義:ロスのなんていう地域なのかな…
H:僕もよくわかんないな。
和義:海よりももっと内側のほうだったんで。で、ロスのわりに行ってた時期はずーっと曇ってたんで。
H:最近曇ってるんだよね、ロサンジェルスって(笑)
和義:そうですね。なんか千葉で録ってるみたいな感じで。
H:(笑)
和義:ずーっとそこにいたし、どこにも出かけなかったんで。ロスでやってる気がしなかったですけどね。
H:それはまためずらしいね(笑)
H:そのときに洋平くんが言ってたけど…タバコの話していいかな。吸うよね?
和義:ガンガン吸います。
H:おんなじだ(笑)外国行くとすごい大変じゃない、旅は。どこも吸えないじゃん、ホテルは。
和義:そうですね。
H:で、吸えるところを探すんだよね。探すでしょ?
和義:探します、探します。
H:その探したっていう話を聞いたんだよね(笑)
和義:はいはい…(笑)すごい安ホテルみたいなところで…
H:すごい、環境が悪いところなんじゃないの?
和義:そうでした。モーテルみたいな…
H:とにかくタバコ優先なんだね(笑)
和義:そうですそうです(笑)すぐ吸えるように1階にして…
H:いやぁ、気持ちわかるわ(笑)
和義:そのときはまだ部屋でも吸えたんですけど、もう今は完全にダメで。
H:あ、ホント?僕はね、ベランダがあるとこっそり吸っちゃうしね。
和義:あー、ですよね。でもアメリカ人もバンバン吸ってますよね。
H:道はね。道はもう、自由だね。
和義:そうですよね。歩いてるとぜったい「1本売ってくれ」とかって言われます(笑)
H:ホント?(笑)
和義:「1本1ドルで売って」みたいな。
H:なんだそれ(笑)ずいぶん高いな、1ドル。
和義:でも向こうにすると…1箱で1,000円以上しますからね。
H:そうかそうか。
和義:へぇ、よかった。タバコみんな止めていくじゃないですか。
H:ホントにみんな…全員止めたね。
和義:とくに歌う人とか。俺の周りみんな…つい5,6年前までとか…やっぱり50歳を機に止めたりする人も多くて。
H:ね。
和義:で、「普通、止めるでしょ」とかみんなに言われるんですけど。
H:言われるよ。んー。
和義:普通、止めないでしょ、と思うんですけどね(笑)
H:どっちが「普通」なのかね(笑)
和義:うーん。なんか、喉に悪いとかって言いますけど。
H:それはね、嘘だよ。
和義:嘘ですよね。
H:お酒はアルコールで焼けるんだよね。だからちょっと[声が]低くなってるんだよね。
和義:なるほどなるほど。
H:でも、イタリアのオペラ歌手とかみんなタバコ吸うからね。
和義:あ、そうですか。へぇ。そう、喉が逆に鍛えられていいんじゃないか、と思ってるんですけどね。
H:あのね、いろんな良いことがあるよ(笑)
和義:(笑)
H:ここでしか言わないけどね(笑)免疫を少し上げるからね。やっぱり毒だからね。多少の毒を入れると免疫が騒ぐっていうか。
和義:なるほど。そうだと思います。よかった、細野さんのお墨付きがあれば堂々と吸えますよ、これから。
H:いや、お墨付き…(笑)いろいろと理屈を考えないと吸えないから(笑)
和義:(笑)
H:いやー、タバコは嫌いな人多いから。
和義:多いんですかね。
H:タバコの話するだけでももう煙い…みたいなね。
和義:いやー、ホントにね。でも売ってるんだからね。合法なんですから。
H:そうなんですよ。で、僕はお酒が飲めないんだよ。
和義:あー、そっかそっか。
H:飲むでしょ?両方行く?タバコとお酒。
和義:そうですね。でも、どっちかやめろって言われたら酒止めますね。確実に。
H:あ、ホント?(笑)
和義:お酒は普段は…ツアー中だと打ち上げとか飲んじゃってますけど。特に去年の、自粛になっちゃってからは…家に居たらまぁ飲まないし。だからあんまり必要なかったんだな、と思いますね。
H:そうなんだね。だって、お酒のほうがいろんなことが起こるよね、街で。泥酔して道で寝ちゃったり。タバコ吸って街で寝る人はいないじゃん。
和義:そうですね。
H:まぁそんな話はいいか。はい。
和義:(笑)
和義:そういえば一昨年でしたっけ?六本木でやってた細野さんの展覧会というか…
H:展覧会かな?あれ(笑)「細野観光」っていうやつだ。
和義:あれ行ったんですけど、すごいですね。物持ちの良さというか…(笑)
H:みんなに言われるんだよね(笑)
和義:小学生のときに描いたマンガそのままとか。
H:あんなものがあるなんて自分じゃぜんぜん知らなかった。どこかに入れてあるんだね。
和義:そうなんですか。
H:で、捨てないんだよ。捨てられないの。だから、部屋が散乱してるタイプの…片付けられない人間ですよ。
和義:いやいや、それにしてもあんなに…まぁ楽器が取ってあるというのはわかるんですけど。
H:なんでも取ってあるというのは母親の遺伝子かもしれないね。
和義:おやー、あれはすごくおもしろかったです。
H:ありがとうございます。
H:音楽…このアルバム、「フィフティーファイヴ」と読んでいいの?
和義:そうですね。
H:『55 STONES』。『202020』…なんて読むの?(笑)
和義:「ニーマル・ニーマル・ニーマル」っていう…これは去年出したやつですね。
H:そうだね。最近、数字の人が増えたなぁ。いま気が付いたけど。全部新曲…あ、"純風"が入ってるね。わりと毎日聴いてるね、僕。テレビで(笑)
和義:あ、そうですか(笑)
H:結構観ることがあるんだよね(笑)
和義:へぇ、高田純次さんの…
H:そう!毎日聴いてるな。ちょっと聴きたくなるんだよね、そういうのはね。
純風 - 斉藤和義
(from『55 STONES』)
和義:1曲かけたかったのは、細野さんに以前ベースで参加して頂いた曲で…
H:"幸せハッピー"?
和義:あ、それもカヴァーさせて頂いたんですけど…"行き先は未来"という曲があって。林さん(林立夫)にドラムを叩いて頂いて。
H:そうだそうだ。それ聴きたいな。
和義:前にせいこうさんとかの番組に出たときに、いつかベースを弾いてください、という話をして。その後に実際にお願いしたらお受けして頂いて。
H:はい。やったね。
和義:そのときは自分が弾いたベースをデモでお渡ししたんですけど、そのときのヒヤヒヤ感といったらなかったですよ。
H:(笑)
和義:細野さんに弾いてもらうのに自分のベースのデモって…入れなくてもいいだろうなと思いながら。
H:ぜんぜん気になんなかったな。
和義:で、帰ってきたらそれが…
H:おんなじように弾いてた?(笑)
和義:いやいや(笑)ぜんぜんまるっきり感じが違ってて、うわぁ、さすがだ…と思って。
H:いやいや…いろいろ話したいんだけどもう時間が来ちゃったな。曲はかけられないかな?大丈夫?かけちゃおうかな。じゃあその曲を聴いてお別れしようかしら。
和義:はい。
H:じゃあ、また来てもらうしかないな。30分なんで。
和義:あ、お願いします。
H:ありがとね。斉藤和義さんでした。
和義:はい、ありがとうございます。
行き先は未来 - 斉藤和義