2021.07.04 Inter FM「Daisy Holiday!」より
手作りデイジー🌼#22
(以下、すべてH:)
はい、細野晴臣です。いやいや…暑いですよね。毎年学生の頃はこの時期、梅雨と暑さと試験勉強で本当に鬱陶しい時期だったんですけど。まぁ、その後は海に行ったりサーフィンやったり…サーフィンはやってないですね。1日だけやったことありますけど。
僕は中学の頃に…1962, 63年頃、サーフィン・ミュージックに出会いました。きょうはですね、それ以前の音楽…たかだか1,2年の差があるだけなんですけど、ロックンロールのインストバンドがいっぱい出てきたんですね。それはだいたいみんなジャズをやっていて、ジャズミュージシャンがロックビートになだれ込んでいった時代です。ですからベテランが多いわけで…エレキギターというものがだんだんメインに出てきたんですけど、相変わらずメロディーはサックスが取っていたりするという。いわゆる「大人のバンド」が多かったんですよね。それが62年ぐらいからだんだん青少年がエレキだけでやり出した、というのがサーフィン・ミュージックとかね。そこら辺なんですけど。その後に発展していったのがビーチ・ボーイズ(The Beach Boys)のようにコーラスが入っている音楽なんです。ですから、きょうはそのインストバンド、「大人のロック」…サックスがいっぱい入っている。そこら辺を…まぁ30分では無理ですけど、少しずつ紹介していきたいと思います。
まず最初はチャンプス(The Champs)という…このグループは"Tequila"という有名な曲、ありますね。これが1958年に100万枚も売れちゃったんです。日本でもよく知られてるんですけど、この"Tequila"という曲のオリジナルなんですね。なかなかそれはね…あまりにもヒットしすぎて、僕は飽きちゃってかけられないんですけど。でも、聴いてない人も今は多いでしょうからね、若い世代は。ですから"Tequila"をかけて…その後は"Red Eye"というビートがすばらしい、玄人はだしの…玄人はだしっていうか、ホントに玄人の音ですね。それから"Jumping Bean"という…これは付点のビートを使った非常に斬新な音楽。この3つを続けて聴いてください。
Tequila - The Champs
Red Eye - The Champs
Jumping Bean - The Champs
ヨルゲン・イングマン(Jørgen Ingmann)というデンマークのギタリスト、大人気だったんですけど。1961年に"Apache"を大ヒットさせました。元々この曲はイギリスのギタリストのバート・ウィードン(Bert Weedon)という人が発表したんですけど、のちに同じイギリスのグループ、シャドウズ(The Shadows)のレパートリーで有名になった曲です。でも、いちばんヒットしたのはこのヨルゲン・イングマンの"Apache"です。
Apache - Jørgen Ingmann
そのバート・ウィードンというイギリスのギタリスト。ベテランです。イージーリスニング的な音楽が多かったんですけど、次にかけるのはすばらしい…リズム&ブルースっぽい音なので、色々アルバムを聴きましたけどこれがいちばんよかったんですね。バート・ウィードンで"Big Beat Boogie"
Big Beat Boogie - Bert Weedon
大人といえばビル・ブラック(Bill Black)というベーシストですね。プレスリー(Elvis Presley)の初期の頃からベースをやっていました。いちばん最初に有名になったのは"Heartbreak Hotel"ですね。そこでウッドベースを弾いていました。そのビル・ブラック・コンボで、"Two O'clock Jump"!
Two O'clock Jump - Bill Black's Combo
ビル・ブラックはこの曲ではエレキベースなんですけど、初期の頃…プレスリーのバッキングの頃はダブルベース、つまりウッドベースを弾いてました。そのウッドベースをポール・マッカートニー(Paul McCartney)が手に入れたんですよね。そういえば先ほどのバート・ウィードン。彼の教則本というのをポール・マッカートニーも読んでたり、エリック・クラプトン(Eric Clapton)も読んでたり…色んな人に影響を与えてましたね。両者ともすばらしいミュージシャンです。
次は…やはり欠かせないギタリスト。ブルースギターは欠かせませんね。B.B.キング(B.B.King)の"Hully Gully Twist"。1962年。
Hully Gully Twist - B.B.King
Walk Don't Run - The Ventures
これはもう有名な"Walk Don't Run" by ザ・ベンチャーズ(The Ventures)。日本のエレキ少年たちはみんなこれを聴いてました。1960年のヒットなんですけど、実はこれはベンチャーズのオリジナルではなくて。1954年にジャズギタリストのジョニー・スミス(Johnny Smith)が作った曲なんです。ではそのジョニー・スミスのオリジナルを聴いてください。"Walk Don't Run"。
Walk Don't Run - Johnny Smith
このように、原曲はとてもしっとりとしたジャズナンバーなんですけど。やはりベンチャーズの"Walk Don't Run"というのはのちのサーフィン・ミュージックの原型になったスタイルですよね。そういえばそのベンチャーズと一緒に、我々日本人の「テクノ軍団」というのかね?(笑)1980年に制作したアルバムがあります。『カメレオン(Chameleon)』という。これはもう幻に近いアルバムで、日本だけの発売でした。加藤和彦プロデュースによるYMO、そして鈴木慶一、ヒカシュー、近田春夫という面々の参加があってできた曲です。僕が担当した1曲、聴いてください。"Octopus Tree"。
Octopus Tree - The Ventures
(from『Chameleon』)
ベンチャーズといえばもう、日本にエレキブームを巻き起こした張本人ですから、いっぱい語らなくちゃいけない存在なんでしょうけど。たまたまこういうレアな音源が残っていたのでかけちゃいました。
次の曲はですね…1963年にラジオのヒットチャートに入ってきて、それを聴いてすぐにシングル盤を買いに行ったんです。その曲は"Memphis"。チャック・ベリー(Chuck Berry)の曲なんですけど、それをインストの…ギターをメインにした非常にテクニカルな、すばらしい演奏を提示したのがロニー・マック(Lonnie Mack)です。"Memphis"!
Memphis - Lonnie Mack
きょうの最後はですね、ザ・シャドウズ。これはイギリスのグループなんですけど。日本でいちばん有名な曲は"春がいっぱい"という曲です。これは我々のかつての仲間のギタリスト、大村憲司くんもカヴァーしてました。"Spring Is Nearly Here"。
Spring Is Nearly Here - The Shadows