2021.08.29 Inter FM「Daisy Holiday!」より

 

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H:はい、細野晴臣です。ひさしぶりに岡田崇くん、いらっしゃい!

O:こんばんは、岡田崇です。

H:ミハルちゃんがいないね。

O:ね。来ると言っていた…ような気がするんですけども。

H:なんか今、アルバムを作ったストレスで倒れてるとか…(笑)

O:そうですね、マスタリングも終わってジャケットも終わって…疲れ切っちゃったのかな(笑)

H:いっつもストレス抱えるよね。

O:体調は絶対崩すし…もう、ヘロヘロになってますよね。

H:僕たちの中でいちばん凝り性なんじゃないの?

O:締め切りがなかったらたぶん、ホントに終わらないんじゃないですかね。

H:ずーっとやってるよね(笑)入り込んじゃって…目が回って倒れちゃったんじゃないかな(笑)

O:そのがんばっていたミハルさんのニューアルバムが9月15日に。

H:いよいよね。『秘密の旅』という…やっとできたね。

O:そうですね。同じ日に渋谷のさくらホールでコンサートが。

H:そう。おんなじ日なんだね。それもあるんだ、大変だな。

O:ちょっとね、状況がいろいろ変わってきているんで…どうなるかはわからないですけどね。

H:ホントにね。相変わらずだしね、世の中。

O:そうですね。

 

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H:というわけで…実は僕もずっと宿題に追われてて(笑)スタジオにずっと缶詰になってて…車ぶつけちゃいましたよ(笑)

O:(笑)

H:ガードレールですよ。

O:まぁ、対人じゃなくてよかったですけどね。

H:よかった。人にぶつけたことはないんだけど。だいたいガードレールだよ(笑)

O:(笑)

H:パンクしちゃってさ。

O:いやー、大変ですね。

H:なんかね、車が身代わりになってくれるのね。自分の。ペットなんかもそうなんだよね。そういう関係があるみたい。というわけで、ちょっと気を入れて…音楽の番組なんで、音楽をかけようかね。

O:かけましょうかね。

H:全部お任せしますよ(笑)

O:いやいや…(笑)まぁ適当に色々。

H:はい。お願いします。

O:1曲目は…つい最近ですね。『大土蔵録音2020』という…

H:パッと聞いただけじゃわからないね(笑)

O:山田参助とG.C.R.管絃楽団…僕の友達のぐらもくらぶという、SP盤の復刻をやっている方々がいまして。

H:そういう人たちね。

O:そこが…SP盤も有限じゃないですか。で、昔の録音物を今の技術と昔の技術とを使って再現して新録していこうということで。

H:凝り性の人たちだね。

O:これは千葉の佐原にある大きな土蔵…500人ぐらい収容できるような。

H:このジャケット写真にある、蔵のような…

O:そうですね。そこでマイク1本、マツダのA型ベロシティマイク…いわゆるRCAの44BXという。

H:僕も使ってるやつだね。

O:あれの日本ライセンス版、日本で生産していたものがあるんですけど。

H:落語とかのど自慢とかはみんなそういうのを使ってたよね。

O:昔の放送局とかね。そのマイク1本で録音した音源なんです。

H:すばらしい。

O:服部良一の曲で、"夏の行進曲(海へ山へ)"という曲をお聴きください。

 

 

夏の行進曲(海へ山へ) - 山田参助とG.C.R.管絃楽団

(from『大土蔵録音2020』)

  

 

H:古い!(笑)これは今録ったとは思えない。すごい凝ってるなぁ。

O:すごいですよね(笑)

H:なかなかこれはね、できないよ。よくやったなぁ!(笑)

O:すごい大変だったらしいですね、この夏の曲を真冬に、ストーブを何台も焚きながら…防寒着を着ながら(笑)

H:いやいやいや…徹底してるね。よくぞマイク1本でこういう音が録れたな。すばらしいね。

O:相談されてたんで、できるかな、大丈夫かな、と思ったら…

H:ど頭のラッパの時点であの頃の音になってるんだよね(笑)不思議。で、奏法もそうだし、あの歌の感じ。すごいね。

O:山田参助さんね。すばらしいですよ、この人。色んな声色で。

H:ああいう人いたからね、昔(笑)びっくり!こういう人がいるんだね。

O:山田参助さん、絵を描く方で。今は『新やる気まんまん オット! どっこい』を描いてますね。

H:(笑)

O:『やる気まんまん』って、昔あった漫画知らないですか?

H:なんにも知らないよ僕は(笑)なにそれ?『やる気まんまん』?

O:検索すると出てくると思います(笑)

H:そうなんだね。未知の世界だ。すばらしい。

O:これは新録のCDともう1枚、2枚目にはオリジナルのSP音源も一緒に入ってます。

H:聞き比べたいね、それは。これはもうびっくりだ。尊敬しちゃうよ。

 

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H:そういえば…この間ずっと会ってなかったけど、何をしてたんです?

O:僕はまぁいろいろとやっていた…気がするんですけど(笑)

H:(笑)

O:いちばん大きなのが片岡知子さんの。

H:シトロン。

O:インスタント・シトロン(INSTANT CYTRON)のアナログ盤リイシューというのを6月から…6、7、8と3か月、連続で5枚作って。

H:きょう頂いたね。

O:その作業をやって。今は10月20日の命日に『スキマの国のポルタ』というアニメーションの音楽を…片岡さんやってて。それがすばらしいので…レイスコ好きは絶対聴いたほうがいいという(笑)そのアナログ盤が…今度持ってきてお聞かせします。

H:お願いします。じゃあ、その片岡知子さんの…

O:じゃあインスタント・シトロンを、せっかくなので聴いてみましょうか。"Good Day Broken Heart"という曲を。

 

 

Good Day Broken Heart - INSTANT CYTRON

(from『Little Gang Of The Universe』)

  

 

H:いやいやいや…もっと歌声が聴きたくなるね(笑)

O:(笑)

H:この当時の音作りの特徴だよね。自分もそうだったし。最近はどんどん歌が前に出てきてるけど。

O:そうですね。

H:なんかもっと声が聴きたいな、という。ミックスし直すわけにはいかないけどね、ないんだから。

O:この辺は、たぶんね…

H:あるの?

O:データはたぶん…今トライしてるところなんですけど。

H:あ、ホント?

O:RolandのVS-1680というハードディスクレコーダーで録ってるんで…全部家で録ってたので。

H:そうかそうか。

O:そのデータをどうにかできないかなぁ…と思って。データ自体はあるはずなんです。

H:どういうファイルなんだろうね、形式とか。わかんないよね。こういうのはしょっちゅう、どんどん変わっていくからね。

O:そうなんですよね。なんとかトライして、うちで抜き出せるようにしようと思って。いつか。

H:それはやったほうがいいね。おもしろい。さっきの歌の英語の男の人はどなたですか?

O:ん、今のシトロンのですか?長瀬五郎くんという相方です。デュオだったので。

H:あ、そうか。いや、すごいネイティブな人だね。発音がね。びっくりしちゃった。

O:喜びますね、それは(笑)

H:その方は今どうしてるの?

O:今は福岡に戻って…地元で音楽活動を。

H:そうかそうか。

 

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H:ところでこの…今回持ってきてくれた中に三保敬太郎さんが入ってるんだよね。

O:入ってますね。

H:気になるなぁ。

O:こないだ「POPEYE」で細野さんがホラー映画について書いてて。

H:やったやった。

O:その中でヒッチコックAlfred Hitchcock)の『鳥(The Birds)』について書いてたんで…あー、『鳥』の曲ってあったなぁ、と思って。あの映画は音楽がついてないので。

H:鳥の声ばっかりだよね。

O:その鳥の声も本当の鳥の声じゃなくって、トラウトニウムという電子楽器で変調させてる…という話なんですけど。

H:それはすごいね。だから怖いんだな、逆に。

O:そうですね。なので、そのサントラは鳥の声だけになっちゃうので…

H:それも聴きたいけどね(笑)

O:怖すぎるんで、当時ソニー・バーク(Sonny Burke)が曲を付けて…イメージソング的なものでサントラ盤が日本でも出ているんですけど。

H:それは知らなかったね。

O:その中、B面に"鳥のブルース"というのがあって。その曲の三保敬太郎さんカヴァーヴァージョンというのを持ってきたので…

H:ちょっと聴いてみたいですね、それはね。"Blues for the Birds"。

 

 

鳥のブルース(Blues for the Birds) - ミステリー・サウンド・オーケストラ

(from『殺られる!! -ミステリー・ムード集-』)

  

 

H:怖っ(笑)

O:(笑)

H:あの…全面的に鳥の声が入ってる音楽というのは初めて聴いたね(笑)ずっとそっち聴いちゃった。

O:そっちが主体ですからね(笑)

H:いやー…あれはどうやって作ったんだろう。やっぱり電子音楽だね。映画とおんなじ様な声がしてる。いやー、めずらしいなこれは。

O:ジャケットもカッコいいんで…

H:そのジャケットいいですね。フィルムノワールっぽい。三保さんの、もう1曲聴きたいな。

O:じゃあ"グリスビーのブルース"もやってるので、それを。

H:いいですね。選曲がいいよね。

O:ね。三保さん…最高ですよね。

 

 

グリスビーのブルース(Le Grisbi) - ミステリー・サウンド・オーケストラ

(from『殺られる!! -ミステリー・ムード集-』)

  

 

H:なんか、現代音楽だ。(笑)すごいね。いろんな、実験的な時代だったんだよね。

O:そうですね。結構好きにやらせてもらってたんじゃないですかね。ミステリー・サウンド・オーケストラ名義ですけど。

H:そうだね。三保敬太郎さんと言えばレーサーとしても有名でね。僕たちがいちばん馴染んでるのは「11 PM」のテーマソングですね。シャバダバダ…という。いやいやいや…すごい人がいたんだね。

O:ね。

H:きょうは図らずも日本の人たちの音楽特集になっちゃいましたけど(笑)

O:そうですね、図らずも。

H:じゃあ時間なんで…さっきも話してました、きょう来てないコシミハルの新作から1曲、聴いてみましょうかね。

O:そうですね。じゃあタイトル曲の"秘密の旅"という曲を。

H:はい。じゃあ、それを聴きながら…また来週。岡田崇さんでした。

O:おやすみなさい。

 

 

秘密の旅(Voyage Secret) - コシミハル

(from『秘密の旅』)