2018.12.02 Inter FM「Daisy Holiday!」より
全方位から情報量が多すぎてうれしい悲鳴…
H:細野晴臣です。えーとですね…先週はもう、時間が来ちゃったんで続きをやりたいと思いますが…ゲストのテイ・トウワ、そしてまりん(砂原良徳)両氏を迎えて…じゃあ、幸宏(高橋幸宏)の曲の終わりから、どうぞ。
SUNSET - 高橋ユキヒロ
テイ:これこそ今の…アレじゃないですか?「クワイエット・ストーム」じゃないですか?
H:そうだね。横に広がってるね(笑)
砂原:横に拡げました。
H:拡げたんだね。まりんの所為だ(笑)
砂原:なんか、幸宏さんと…ちょうどBEATNIKSのツアーの時にそのこと話してて。幸宏さんが、「別にノスタルジーだけじゃなくて、いま、せっかく新しくやってるんだから、やっぱり新しいものとして…」というようなことを言ってたんで。
H:正しいね。
砂原:じゃあ、そうしよう、ということになったんですね。
H:だから、いま、昔のやつを引っ張り出してきてリマスターするっていうのは大事だよ。たぶん。YMOもそうだったしね。
砂原:ちょっと前に、白黒の写真とかフィルムとかに着色して「ウワー、なんだこの感覚!」っていう…それにちょっと近いものが
H:あるね。
テイ:そうかもね。
H:ドキドキとするんだよね。
砂原:しますね。
テイ:やっぱり、10年前・20年前のリマスター技術ではできなかったことっていうのは…?
砂原:ありますね。なんか、変わってないようで実は変わってきてる…
H:すごい変わってるね。遠くから聴いてるとわかんないけど…(笑)
テイ:10年ぐらい前はヒスノイズ取るくらいでウワー、とか言ってた気がする(笑)カセットとかのね。
砂原:言ってましたね。
H:そうだったな(笑)そういう時代だったよ。
テイ:今はもうちょっと、音像をいじれるっていう…
H:そう。それがね、やっぱり次元が変わったけど…もう一つ思うのは、これは完成型の音像だと思って、これから先どこ行ったらいいの、っていうね…(笑)
砂原:あー。どうなるのかな、と思いつつやってるんですけど…まあ、どんなものでもそうなんですけど、「行くとこまで行く」っていうのが…すべてそうなんですよね。
H:ホントだよね(笑)ホンっトに人間って止まんないよね。
砂原:行くとこまで行っちゃうんですね。
テイ:まりんのほうが僕よりもミックスとか、マスタリングとか考えてるけど。
砂原:まあ、気にしてはいますね。
H:もう、だから、マスタリングのプロだよ。それは。
テイ:そう。
砂原:(笑)ぜんぜんそんなことはないんですけど…
テイ:だから、僕はまりんがいるんで考えなくていいっていうね。
H:いいねぇ。僕もそうしよう。次のやつは。
砂原:(笑)あの、欲求だけですよ。こういう風に聴きたい、っていう欲求がそうさせる…
H:それはそうだよね。おんなじ。
砂原:そうなんですよね。
H:もう、なんかね、感覚でしかないけど…例えば、2年前の音を[いま]聴くと、あ、これ違う…とかね。感覚じゃない。それは。音の。
砂原:はい。
H:その「差」がいますごい…大きな差があって、それで僕はドキドキしてたわけよ。なんか、ワクワクドキドキ。何を聴いてもすげぇ、と思って。
砂原:ただ、このことって口で言い表しにくいじゃないですか。「ここが赤いから、もっと赤くなるのが今っぽい」とか、そんな簡単なことじゃないんで…だから、なかなか人に言っても伝わりにくくて。テイさんとよく言ってたのは、「音圧感」みたいのはちゃんとキープしよう、というのはMETAFIVEやる時に言ってたり。あとは左右の広がりだったり…
H:例えば、昔だったらね、コンプレッサ使うじゃない。そうすると、音圧は出るけど、ヘッドフォンで聴くとヘッドフォンが揺れるの。今の音楽は、音圧があってもヘッドフォンは揺れないの。
砂原:あー、そういうことも出来ますね。
テイ:それは倍音のコントロールが上手い、っていうことですか?
H:倍音なんだよ、問題は。
テイ:ですよね。
H:ぜったいに倍音が肝なんだね。で、その分析っていうのはもう出来てて、昔。それが商品化されてるんでしょ、今は。全部。例えば、Appleの…Macに付いてるGarageband。
砂原:はい。
H:あれでさえ、そういう音になってるから…(笑)
砂原:まあ、みんな意識するんだと思うんですよね。開発してる人は。いまのコンプレッサの話じゃないですけど、例えば…圧縮するとその部分は「圧縮」されるんで、ヘッドフォンがブルブル震えちゃうんですけども…例えば、水で圧縮される感じと蒸気で圧縮される感じって違うじゃないですか。
H:なるほど。
砂原:水だと強過ぎるからこれを蒸気にしたいんだ、っていうと、そんなようなこともイメージとしてはできるんですよね。蒸気だと…圧力はあるんですけど、詰まった感じというか、密閉感は無くすことができたりとか。
H:そうだよね。透明のまんまだよね。そう、「透明感」っていうのがあるんだよね。
砂原:ありますね。やっぱり、湿度が高いと遠くまでの景色は見えないし、色もハッキリは見えないんですけど、それを視界をきれいにすることが出来たり。
H:今のテクノロジーはだいたい…例えばiPhoneにもカメラ2つ付いてるでしょ。あれを使って後で遠景をずらしたりとか。ピントをね。
テイ:後でピントを変えるとか。
H:そういうことにちょっと近いよね。
砂原:そうですね。
テイ:そうですね。だから、倍音を分離させたりとか、位相をいじって。一回、逆相だけ聴いて…そういうことって、マスタリングスタジオでしか見たことなかったようなことが、プリセットで…
H:そうそう。ミュージシャンがみんなやりだした(笑)
テイ:そういうことなんです(笑)だから、僕は言い訳ですけど、砂原くんみたいにならないように…
砂原:(笑)
テイ:「7年ぶり」のアルバムとかね(笑)気をつけて…Ozoneとかのプリセット聴いて…まじめな話すると、要するにやってることが、無駄な倍音とか出てる場合は、プリセットをかけた時にガラッと変わるわけです。だから、どのプリセットをしてもあんまり変わらなくなったら、まりんに渡していいかな、みたいな。
H:なるほどね。
砂原:あー、なるほどなるほど。
H:…すげー専門的な話だな(笑)
砂原:(笑)
テイ:全部カットでも大丈夫ですよ(笑)わかる人いるかな。
H:いや、いないと思うね(笑)
砂原:でも、言葉にはしづらいんですけど、さっき[*先週放送分]「グローバル」って細野さんが言いましたけど、世界中でそのことをみんながボンヤリ気にしてやってるんですよね、やっぱり。
H:まだボンヤリしてるんだよね。でも、アメリカの音楽産業はボンヤリしてないんだよね。すごい確信的にやってるじゃない。
砂原:なるほどなるほど。
H:それで僕はテイラー・スウィフト~、とか言ってるんだけど。
テイ:まあ、ファレル(Pharrell Williams)とかはこういう話出来そうですね。
H:ファレルはすごいな…もう、なんか、大先生になっちゃった(笑)
テイ:そうですね(笑)あんなになるとは思わなかったですよね。
H:いやぁ、僕にとってはテイくんもまりんも大先生なんだよ、いま。ホント。
テイ:いやいやいや…(笑)
砂原:細野さんの音楽聴いてやってきたつもりなんですけど、こっちは…(笑)
H:いや、もうね、71歳ですから…(笑)49歳?まだ?
砂原:そうなんですけど…
H:若い!(笑)テイくんいくつだっけ?
テイ:54歳、妻子持ちです(笑)
H:(笑)
砂原:でも、YMOを聴いてた世代ではわりと下のほう、なんですよね。
テイ:あー、かもね。
砂原:それでも50歳になるっていう感じなんですよね。
H:時間が経ったね。
砂原:そうですね。
テイ:僕より上の人も多いもんね、きっと。
砂原:いますよね。
H:いやー、こんな歳になってこんなことをやるとは思わなかったな、自分でも。
テイ:や、正直僕…細野さん、ここ10年以上ブギとか…どこでしたっけ、青山の地下とかで、近くでライヴを拝見したりとかしてて、楽しいなぁ、でも、打ち込みはもう聴けないなぁ、って…
H:それで、観に来なくなったんだね。
テイ:そんなことないですよ!(笑)
H:(笑)
砂原:でも、僕は細野さんがいまやってるもの…演奏とか。ふつうに音楽としても聴くんですけども、音像をすごい気にして聴いてましたよ、やっぱり。
H:おそろしいね…(笑)
砂原:あー、なにやってんのかなー、って…
H:いや、いまね、僕もそうやって聴いてるんだよね、他人の…音像を聴いてる。
テイ:やっぱ音が良いですよね。『HoSoNoVa』とかあの辺りの。
砂原:いや、全部良いですよ。
H:そうっすか?でもね、僕にとっては「前時代」の音なんで、やり直したいんだよね…(笑)マスタリングだけでもね、やりたい。
砂原:いま、それだけでもけっこう変わりますからね。
H:ただ、僕は別にポップ・ミュージックのグローバル・サウンドを目指してるわけじゃないんで…グローバルの「先」に何があるんだろう、って考えてたわけ。それはね、「ユニヴァーサル・サウンド」っていうんだよ(笑)
テイ・砂原:(笑)
H:それはね、可能性がすごいあるわけ。それは生(楽器)でもいいし。独自の音像っていうのを…今の音像に共通したものを拡張していくと、ユニヴァーサル・サウンドができる、っていう。
テイ:生の場合でも、録り音もやっぱり大事ですから。一時、ローファイみたいのが流行った時ってテキトーに録っておいて後はプラグインでどうにでもなる、みたいな時期もあったじゃないですか。
砂原:はいはい。
H:もう、プラグインは限界だね。
テイ:やっぱり録りは大事ですね。
砂原:大事ですよ。やっぱり、全工程がその方向に向いてるのが理想なんですよね。
H:そうそう。昔はね、暗中模索が多かったの。「あ、こんなの出来ちゃった」、「あ、こんな良いのが出来たな」とかね。たまたま出来たりして。今は、先に音像の理想があるわけだよね。それを目標として作っていくから、最初からその音像のソフトを入れて、やったりしてね。
砂原:そうですよね。抜いたり、外したりしながら…
H:聴き比べしてね。
テイ:やってますね。
H:やってるよね、みんな。そこら辺がね、今のミュージシャンは変わってきた。日本もグローバルを取り入れてる、っていうかね。徐々に出てきてるよね。そうじゃない音楽はアレッ?って思っちゃう(笑)
砂原:そうなんですよ(笑)どんなにリズムカッコよくても、歌上手くても、そこがダメだとぜんぜんおもしろくない、ってなっちゃうんですよね。
H:(笑)
砂原:それさえよかったらもう、ハードロックでも聴けるんじゃないか、みたいな感じなんですよ。
H:そうそうそう。ホント…おんなじ(笑)なんでもいま、聴いてるの。つい数か月前まではなんにも聴かなかった(笑)
テイ:すごいですね、その辺の細野さんのダイナミック・レンジというか。
H:いやー、こういうことは時々起こるよね。10年に1回かな。
テイ:やっぱりあの…一回僕、前細野さんにもお伝えしたと思うんですけど、最初に出会った頃の手前ぐらいが…僕はニューヨークにいたんで。で、細野さんはオーブ(The Orb)とか、イギリスもしくはサンフランシスコのアンビエント系の四つ打ちの人たちと行かれてたじゃないですか。
H:そうですね(笑)
テイ:その時がいちばん近いようで遠い気がした。僕は。でも、いま聴くとやっぱり良いなぁ、と思って。
H:近いの、遠いの、どっち?
テイ:いやいやいや…『Omni Sight Seeing』とか『Medicine Compilation』とか、カッコいいなと思って。あの時は僕…黒人以外よくないとか思ってたんで…(笑)
砂原:(笑)まあニューヨーク…
テイ:ニューヨークにいたんで…(笑)トライブ・コールド・クエスト(A Tribe Called Quest)とかと一緒だったんで。「白っちいな」とか。黒人の作る音楽以外ぜんぶ「白っちい」って思ってたんですよ(笑)
H:じゃあ僕の場合は「黄色っちい」っていう…
テイ:いやいやいや、よくわかんないなぁ、って思ってたんですけど…いまよりは。
H:なるほどね。
テイ:やっぱ、ワン・アンド・オンリーですよね。
砂原:あの頃はでも、まだ都市が音楽を鳴らしてる感じがありましたけど、今はだいぶ減ってきてる…
H:都市じゃないね。
テイ:そうですね。その、ユニヴァーサル・サウンドのことで言うと…うん。
砂原:なんか…例えば、インターネットでこういうコミューンがあって、そこにいるやつはこんな音を出してる、と。それは東京に住んでてもシスコに住んでても一緒だ、みたいな。そんな感じですよね。
テイ:そうだね。
H:うんうん。
砂原:かけます?
H:じゃあ、かけよう。
砂原:僕、じゃあ一個持ってきたのが…そんな新しくないんですよ。でも音像の話してたんで、これはけっこう良いかな、と。
H:楽しみだね。
砂原:この1曲目を…
Modern Hit Midget - Vilod
砂原:もう音像…でしかない、という(笑)
H:それだけで聴けるからね。
砂原:そうなんですよね。
H:あと、歌が上手いよね。連中。こういうの好きだよ。
テイ:まさにあの…細野さんの"肝炎"とか入ってるアルバムみたいな音が後ろで鳴ってるね。
H:あー、なんか…親しみがあるね(笑)
テイ:横尾さん(横尾忠則)とやった…『Cochin Moon』みたいな!『Cochin Moon』にビート乗っけただけ、みたいな(笑)
砂原:(笑)まあちょっと、音像の話があったんで…そんなに新しくはないんですけどね。2015年とかなんですけど。
H:まあ、その頃からあるよね。
テイ:あるよね、早い人は。
砂原:これはね…なんて読むんだろう。ヴァイロード…?あの、リカルド・ヴィラロボス(Ricardo Villalobos)さんのユニットなんですけどね。
テイ:あー、好き好き。去年L.A.かなんかでかかってて、買ったらその人だった。四つ打ち…
砂原:すげぇ、音像楽しいな、っていう。それだけ、っていう…(笑)
テイ:なんかあの、良い曲は書かなさそうだね(笑)
砂原:(笑)
H:なんか、最近…メロディとか和音とか、あんまり関係ないじゃない(笑)もうこれだけで…デザイン、かな。これはね。
テイ:だけど、細野さんはたぶん…『HOSONO HOUSE』って全部曲が良いじゃないですか。
H:これが難しい…!メロディと和音があるんで…(笑)
テイ:それを…ちょっと間引いて、ぼやかしたりして、半無意識で聴くとそれがわかる、みたいな感じになるとおもしろいかも…
H:難しいこと言うなぁ(笑)
テイ:まあ、言うのは簡単だけど…(笑)
砂原:そうなんですよね(笑)
H:もう始めちゃってるしね(笑)そうか、半無意識で…
砂原:メロディとコードとかがあんまりハッキリしてると…予測がついたりするじゃないですか。
H:それはしょうがないよ。
砂原:その予測をある程度わかんなくするためにちょっと音を抜いてったりして…
テイ:言うのは簡単だけど…
砂原:そうですね、言うのは簡単ですけど…
H:それは今回は出来ないかもな…
砂原:僕、そういうことやりたいなと思ってるんですけど、まだやれてませんけど…
テイ:まりんにも言うかな…「音符的」というか、言っちゃうんですけど。音符が読み書きできない所為かわかんないですけど…音符っぽ過ぎるとちょっと古臭いというか…
砂原:ありますね。あります。
H:わかるよ。すごいそれはわかる。
砂原:楽譜…「譜面っぽい」というか。
テイ:譜面的に次、展開来るな、みたいな。聴いててわかっちゃうっていうか。
H:まあ、それはあるだろうね。
テイ:だから…すごく、比較が難しいけど、それこそ絵を描く五木田くん(五木田智央)とかとよく話しますけど…絵、というか、二次元的なことと譜面的なことって近いのかな、って思って。僕らが話してることとももうちょっと…サウンド、ソニック・スカルプチャー的なことを言ってるのかな、っていう。前に出てくる、出てこない、とか。それは勿論歌詞とかとも渾然一体になってだと思うんですけど。ま、どっちがいいとかじゃなくて。
H:まあ、でも、今どきのね、音楽はそういうことだよね。メロディとか旋律から解放されてるから。譜面から。楽譜使ってないからね(笑)
テイ:そうですね。ただ、逆にサウンドデザイン的にイマイチだけど曲は良いのにな、っていうときは…音符的に良いのにな、みたいな。
砂原:ありますよね。それはけっこうありますね。
テイ:「音符的にいいね!」なんて言ったり…(笑)
砂原:褒めちゃったりして…(笑)
H:いいね…(笑)楽器もやらないの?
テイ:僕は…まりんは最近ベース弾いてるじゃない?シンセベース。
H:あ、そうだ。
砂原:僕は…弾こうと思って弾いたわけではなくて…(笑)
H:やらされてる(笑)
砂原:誰もいないのでやってます(笑)
テイ:ウチのバンドいなかったんで。
砂原:はい。
H:凝り性だもんね、まりんはね。
砂原:そんなことないんですけどね…まあ、METAFIVEの時はたまたま誰も弾く人がいなかったんで。そうなったんですけどね。はい。
H:じゃあ、テイくんなんかかけてよ。
テイ:いやー、この話の流れでかけるのは…
H:いいんだよ。大丈夫だ。
テイ:なに持ってきましたっけ…でもさっきの…あ、でもこれかな。あの毎回たぶん、細野さんのとこ来ると僕JBかけてると思うんですけど。
H:ああ。
テイ:昨日届いたJB…リマスターものを聴きましょうか。
H:へー、リマスターなんだね。
テイ:これたぶん、勝手にリマスター…
砂原:あ、勝手に…(笑)
テイ:勝手にリマスター、勝手にエクステンデッドみたいな。
砂原:(笑)
Can I Get Some Help - James Brown
テイ:最近、アナログ盤を…針って細いじゃないですか。あのカートリッジのところに這ってる4本の線があるの知ってますか?リード線って言うんですけど。
砂原:中に線がありますよね。
テイ:すっごい線が細いんですよ。それがパンパンになるぐらい太いやつが売ってて、それに換えたらけっこうね…中域から、スネアの低いとこからタムの胴鳴りとか…まあ、このレコードはそうでもないんですけど、気持ち良かったりしますね。
H:へー。
砂原:あそこを気にしたことなかったですね。
テイ:でしょ?そう、それを五木田くんが気にしてて…
H:オーディオマニアの世界ね。それね。
砂原:いつもあそこはまあ、細い線だなぁとは思って見てましたけど…そっかそっか。
H:線が太いほうがいいのか…
テイ:たぶん…それでまた聴き直したりとかして。やってますね。
H:なるほど。JBの映画観たんだけど、数年前。なんだっけ…誰かがやってた…
テイ:あー、あの演技してるほうのやつ?
[*引用者註:『Get on Up』(2014年)。]
H:そうそうそう。けっこうおもしろかったね。リハ…レコーディングの風景が出てきて、ラッパ…ブラスの人に注意するんだよね。JBが。「いやいや、オマエがやってるのは違う。ブラスもドラムなんだ。」というセリフがあって…(笑)
砂原:なんかあれですよね、生なんですけど実は全部パーツっぽいんですよね、聴いてると。
テイ:立ってるよね。
砂原:パターンだけで出来てる…で、打ち込みっぽくも聞こえる(笑)
H:そうそうそう。オークランドのほうでタワー・オブ・パワー(Tower Of Power)のああいう…リズムのようなラッパが引っ張るという。だから最近……あっ、それで思い出したけど、やっぱりスライ(Sly & The Family Stone)。すごい、音像が。独特。いまずっとグローバルっぽいのを聴いてて、スライ聴くとビックリする。
砂原:どんな風にビックリするんですか?
H:なんだろう、独自の…
砂原:あー、オリジナリティが…
H:そう、オリジナリティ。
砂原:そっか、帰って聴いてみよう…
H:たぶんね、自分で全部、めちゃくちゃやってるんだろうと思うんだけど…エンジニアが「あー、それはやっちゃダメ!」みたいなことをやってると思うんだけどね(笑)それがおもしろいんだな。
砂原:あー、そういうのやっぱりやりたくなりますよね。
H:ホントそう。
砂原:ダメって言われるとなおさら…(笑)
テイ:ドンカマを使ったのはけっこう早かったんじゃないですか?
H:いや、最初じゃないかね?
テイ:ああいう、ファンクの人で?
H:そう。
テイ:エレクトーンの人はいましたけどね(笑)
H:エレクトーンはいたね(笑)それで思い出したけど、当時、スライの『Fresh』が出る頃…1970年代だよね、その前まで、TIN PAN ALLEYで…はっぴいえんどが終わった後かな、鈴木茂と2人でヴィンテージレコードばっかり聴いてたわけ。
砂原:1960年代ですか?もっと前の…?
H:もっと前の。ガーシュイン(George Gershwin)とか。戦前とか。古いレコードを全部聴き漁ってたわけ。2人で。で、ある時、茂が僕に「このまんまで僕たち、大丈夫かな?」って言うんだよね(笑)
テイ:もう、帰ってこれなくなる不安…(笑)
H:そうそうそう。1年くらい、それ続けてたから…その時にラジオで『Fresh』がかかったわけ。あのドンカマのね(笑)
テイ:はいはい。
H:ウワーッと思って、いまと似てるんだよ。
テイ:目が覚めた。
砂原:わかりますね、そういうのありますね(笑)
テイ:今回の…細野さんのグローバル・サウンドに目覚めたきっかけは、作ってて…ある程度『HOSONO HOUSE』を打ち込まれてて、で聴き返してて、なんか違うな、って思ったんですか?
H:いや、すごい苦労したの。昔の音源使ってて、(理想の音が)出てこないから、加工にすごい時間かかって、こんなことやってられない、と思ってやめたの。で、いま入れ直してる…っていう感じ。だから、古い感じのも入ってるし、ヘンなアルバムになっちゃう。メロディもあるし。
テイ:打ち込みもあって…生楽器も弾かれてます?
H:生もやってる。
テイ:ぜんぜん想像がつかない。
砂原:つかないですね(笑)
H:だから僕もわかんない、ぜんぜん(笑)
テイ:そうですか…気になりますね、いちばん、そこが。
H:いやぁ、話は尽きないけど、聴いてる人はチンプンカンプンで…(笑)いや、僕はすごい有意義だったね。
砂原:なんか、話しにくい話なんですよね、やっぱり。
テイ:共通認識というかね。
H:まあ、今度ひとりで、どういう風な音楽がこうだ、っていうのをやってみるから、それで…今回はね、お話のほうが長かったんで。今度は音を聴いてもらって…っていうことをやりますから。大丈夫です。はい。
じゃあ、最後にですね…ジョー・ヘンリー(Joe Henry)の世界観を堪能して頂きたいですが…本人のソロもいいんだけど…おじいちゃんをリメイクするっていうプロデュースが一連とあって。ランブリン・ジャック・エリオット(Ramblin' Jack Elliott)っていう80歳以上のブルースシンガーを引っ張ってきて…引っ張ってきたのかどうかは知らないけど。すばらしい音でやったりね。その次はモーズ・アリソン(Mose Allison)っていう。昔のジャズのピアニストで。白人のね。シンガーソングライターみたいな。その人も老人だよ。その人のアルバムを作って…これも良い音だったんで、それを最後に…「ユニヴァーサル」として聴いてください。
My Brain - Mose Allison