2021.08.15 Inter FM「Daisy Holiday!」より
加藤:今回はSketch Showの再発をエイベックスさんがやられるということで…そのブックレットに収められるお2人のインタビューの1回目ということで、1時間ほどお時間を頂きました。
H:あ、2回目があるのね。
加藤:2回目…たぶんあると思います。で、僕がまとめさせて頂く加藤(加藤一陽)と申します。よろしくお願い致します。
幸宏:よろしくお願いします。
H:いろいろ、訊いてくれるんでしょ?
加藤:はい、こちらから司会させて頂きますので…よろしくお願い致します。
Reform - Sketch Show
(from『Audio Sponge』)
加藤:Sketch Showのアルバム3作品をリリースされるというところで、ファンは「Sketch Show、もう1回やってくれないかな」とか。そういう声はめちゃくちゃ多いですか?
幸宏:多いですねー、そういう人。YMOの次ぐらいに多いですね。当たり前か(笑)
H:あ、そうなの。
加藤:そうですそうです。界隈ではSketch Showのプロップスというか、評価は非常に高くて。みんな待ってるというような…新作も含めてですけど。そういったところでこの再発ということで…今回は改めてお2人に「Sketch Showとは今思えばなんだったのか」みたいなことをファンに届けられたらな、と思って。
幸宏:細野さんの見解と僕の見解はちょっと違ってて。
加藤:違いそうですか?
H:そうなんだ(笑)
幸宏:細野さんは当初始めるとき、「ユキヒロのソロアルバムを僕がプロデュースする」みたいな感覚だったのがなんか2人でやることになっちゃった…という感じだったんですよ。僕は当初から2人でなにかできないかな、と思ってたんで。そこに大きなズレが…(笑)
H:あ、そっか(笑)
幸宏:というか、僕がまんまとはめ込んだというか。
H:最初の半月ぐらいがそんな時期。1か月もなかったような気がするな。
幸宏:そうですね。
H:当時は、初期のエレクトロニカ系の音楽がワーッと増えてきている時期で。
幸宏:特にベルリンのモール・ミュージック(morr music)とか、それからカラオケ・コーク(Karaoke Kalk)とか。ああいうレーベルがバシバシ来て。
H:そう、みんなベッドルームレコーディング系の…いいのがいっぱいあったね。
幸宏:そうそう。で、声はみんなやさしい…インディーズ声と僕は呼んでましたけど。
H:内向的だよね、みんな。
幸宏:外に向かってワー!とは歌わない。そういうのが多かったですね。
加藤:じゃあ、お二方ともそういうのは別々で聴いていた、ということなんですか?
H:最初はね、僕は幸宏からプロデュースを頼まれた、と思い込んでたのね。で、幸宏はなにを聴いてるかその頃は知らないからさ。自分もひっそり聴いてたでしょ?あんまりそういう話はしなかった。最初はね。で、幸宏がどういうのをやりたいのかなって探ってたんだね、僕はね。それで最初にやったのは…なんだっけな、"Turn Down Day"あたりからやったのかな?
幸宏:そうです!"Turn Down Day"を…ああいうアレンジになるとは思わず。当時行きつけの、僕も今行ってきた、髪を切るところでその話をしたら、ギタリストの佐橋くん(佐橋佳幸)というのが細野さんに、「あ、イントロにシタールが入ってますよね!僕やりますよ」と言ってたらしいですね。
H:そっか。やらせなかったな(笑)
加藤:あ、それはないんですね(笑)
幸宏:だって、そういうアレンジじゃないんですもん。
H:でもあのフレーズは大事だから入れたんだよね。
幸宏:すごい静かな…ほんとに"Turn Down Day"な…(笑)
H:いま聴いてもいいよね。
幸宏:いいアレンジですね。
Turn Down Day - Sketch Show
(from『Audio Sponge』)
H:まぁそこら辺からスタートして。だんだん…あれ、これは2人で新しいのを作るんだな、というのがわかってきたんだよね(笑)
加藤:プロデューサーというだけではなかったという…
H:そこからエレクトロニカ系の情報をお互いにいっぱい出し合ってね。
幸宏:そう。ラリ・プナ(Lali Puna)とかミス・ジョン・ソーダ(Ms.John Soda)とか。
H:そこら辺の情報、いまは途切れてるよな。
幸宏:ラリ・プナとは僕、今も直接…
H:やってるんだよね。で、あの頃はいっぱい東京に来てたんだよね。名もない連中も含めて。アイスランドから来てたりとか。
幸宏:来てましたね。
H:ムーム(múm)の2人はここに来たんだよね。
加藤:すごいですね、それ。
H:なんかいろんな人が来たよ。でも名前忘れちゃった、もう(笑)
加藤:なるほど。たしかにエレクトロニカ、フォークトロニカみたいなところだとムームみたいのが筆頭にいて、という時代…
幸宏:僕たち、当時のインタビューはそればっかりだったんですよ。「フォークトロニカなんですか?エレクトロニカなんですか?」ってよく言われて…どっちでもいいじゃん、ってなって(笑)
H:そうそう。だから『Tronika』というのを作ったんだよ(笑)
加藤:それはちょっと皮肉もあったんですね。「トロニカ」というタイトルには。
幸宏:そうですよ。完全な皮肉(笑)あなたが感じたほうとして聴いてください、という。僕はあのアルバム好きなんですよね。
H:いちばん入り込んでたね。
加藤:なるほど…ちょっと『Audio Sponge』のほうに話を戻したいんですけれども。お話を伺っているとなんとなく細野さんがプロデュースするのかな、というところから入っていって。じゃなくて2人で作るんだ、という話になっていった…というところだったんですけど。
幸宏:あのね…1960年代の音楽の要素、影響みたいなのが多分にあるんですよ。"Turn Turn"なんかもそうだし。えー!ってみんなに言われるけど、キンクス(The Kinks)ですよ。"You Really Got Me"。こないだベスト盤を爆音で聴いてたんですけど。30曲ぐらい。みんなカッコいい。
H:いいよね。いま聴けば聴くほどいいよね。
幸宏:ギターサウンドってこれだよ、って。
H:あの頃はフー(The Who)もすごく良かったね。音がいいんだよね。
幸宏:だってツェッペリン(Led Zeppelin)だって観に行ったし、僕。「だって」というのも失礼ですけど(笑)ロックの王道ですから…
H:だってやってたもん(笑)
幸宏:知ってる(笑)僕、「ヤング720」で松本くん(松本隆)が足つりそうになりながら片足でやろうとしてるの見てた。
H:そうそうそう(笑)
加藤:ジョン・ボーンナム(John Bonham)の…
幸宏:しかも、あの忠さん(小坂忠)が歌ってた。
H:そうなんだよ。歌上手かったなぁ(笑)
加藤:それ、すごい話ですね。
H:あ、そうか。じゃあ"ひこうき雲"をやったのかな?
幸宏:いえ、当時は「マホガニーの部屋」というタイトルで…"翳りゆく部屋"というタイトルになりましたね、後に。プロコル・ハルム(Procol Harum)ですね、完全に。
H:あ、そっか。
加藤:僕が別でやらせて頂いている「細野ゼミ」という連載があって。内容がそういう話に今なってるので、いったんSketch Showに戻しますね(笑)
幸宏:それで…Sketch Showにはそういう要素があって。でも音はエレクトロニカで。ただ、ミックスまで全部自分たちでやっていくと、これは自分たちの音になってしまうんじゃないか。ということで、"Turn Turn"は人に預けてみよう、といってテイくん(テイ・トウワ)にミックスを任せたの。
H:そうだね。
幸宏:ただ細野さんが…今でも覚えてるけど。この歌詞をこのメロディで歌ってみますね、でやったらぴったりはまったんです。そしたら細野さんが「ちょっとハモるね」って下をハモったらいきなりYMOになっちゃった(笑)
H:そうそうそう(笑)それはよく覚えてるよ。
幸宏:細野さん、これYMOだ、と。
H:幸宏の高音部と僕の低音部が合わさるとYMOになっちゃうんだよね(笑)
幸宏:そこに教授(坂本龍一)が入ってきてもどっちかに吸収されちゃうんです。倍音で。
Turn Turn - Sketch Show
(from『Audio Sponge』)
幸宏:ところが、その1枚目を作ってると聞きつけた坂本くんがですね、「僕を入れないでなんかやってるって聞いたんだよね」と来て。3人でご飯食べたんですよ、この近くで。地下のお店だったのは憶えてるんですけど。で、「なんか参加できないかな」って。
加藤:ご自身で…
幸宏:めずらしいんですよ?そういうことを言うの。
H:そうだよね。
幸宏:そしたら細野さんが「なんかスライ(Sly & The Family Stone)みたいな曲」って。
H:言った。頼んだよね。
幸宏:「リズムはこっちで考えるから」。で、コードワークが来たんですよ。それでできたのが"Wonderful To Me"ですね。
H:あれはもう、完全にYMOのイメージがあったね。
幸宏:ありましたね。ある曲のテンポを遅くしたリズムですからね。サンプリングして。
H:幸宏と僕は『BGM』にすごい思い入れがあるんで。それをちょっと意識しちゃったという。
幸宏:『BGM』はほんとに2人で入り込みましたからね(笑)僕はああいう感じにあればいいな、と思ってたんだけど。
加藤:あ、そういうイメージもあったんですね。
幸宏:ありました。あれと『テクノデリック』をミックスしたみたいな…という感じだったんですけど。
H:それは言わないけどね。
幸宏:これは書かなくてもいいんですけど、結果的にはそういう思い入れがあったのかな、という感じですね。
加藤:今思えば…
H:それはあったよ。
加藤:それは絶対書いたほうがいいと思うんですけど、もしアレだったら…
H:大丈夫だよ、これは。書いたって。
幸宏:ファンは喜びますね。今から作ってるわけじゃないですけどね(笑)
加藤:めっちゃ喜ぶと思います。鳥肌が立ちました。
Wonderful To Me - Sketch Show
(from『Audio Sponge』)
H:とにかく、その1枚目はいろんな技術的な…便利なグッズがなかったんだよ。
加藤:2002年。
H:だから自分たちで作ったんだよね。グリッチっぽい音をね。
幸宏:いわゆるグリッチノイズっぽいチリチリチリという感じではなくて、パチッという音はね…お菓子についてる、梱包するときに使う…
加藤:あー、プチプチ…
幸宏:あれの音に似てないですか?って細野さんに言って。ちょっと録ってみようよ、ってパチッとやったらほんとにそうで(笑)
加藤:それにディレイをかけたりして、とかですか?
幸宏:いや、ディレイじゃなくてほんとにそのまま。フレーズを打ち込んで。
加藤:昔の円谷プロみたいですね(笑)
H:ホントそう。手作りですよ。で、音を加工していく…例えばエレクトリックピアノが減衰していくでしょ?ただ減衰するだけじゃつまんないんで、ゲートをかけるんですよ。そうするとブツ切れになる。それをやってるのはたぶん、Sketch Showぐらいだと思うんだけどね(笑)
加藤:なるほど…完全に人力エレクトロニカですね。そう考えると。
幸宏:まさにそうですね。
H:それが2枚目になると…出そろってくるんですよね。アプリケーションがね。
幸宏:もういろんなものを聴いて影響を受けちゃったし、多少。
H:僕はアプリケーションを探し回って…まだ楽器屋で売ってる時代だったんだね。パッケージで。銀座の山野楽器かどこか…普通の楽器屋でプラーゴ(Pluggo)というのが売ってたんだね。うわ!これだ!探してたやつだ!って(笑)
幸宏:なんか、嬉しそうに細野さんが持ってきた記憶があるなぁ(笑)
H:ところがマックはまだOS 9の時代ですよ。だから、いま使えないんですよ。逆に言うとね。今こそ使いたいというときがあるんだけど、ダメなんだよ。
幸宏:今はOSをどんどん上げていくとね、なんか使いづらくなっていきますよね。前のやつがうまく使えなかったり。クラウドを使い過ぎてるから、みんなが。
H:だからね、音楽業界の連中はみんなアップデートしないんだよ(笑)
加藤:ありますよね、ここまでで止めてる、みたいな。
H:みんなそう。ただOS 9には戻れない。やろうと思えばできるけど。まだあるんで。
幸宏:途中からみんな言い出しましたよね。オリジナルのOSがいちばんいいよって。それをバージョンアップしちゃうと使いづらくなるとか。
H:そうなんだよ。いっつも苦労してたね、それで。
幸宏:あれ、これ違うな…とか言ってましたよね。
加藤:ということは、OS 9で作ったのが『Audio Sponge』になるんですか?その前ですか?
H:いや、しばらくそうだよね。2枚目ぐらいまで。
加藤:『Tronika』まではOS 9で…
H:だと思うんだ。
幸宏:なんか、『Loophole』ってこなれちゃってますよね、もう。
H:そうだね(笑)
幸宏:いつモール・ミュージックから出てもおかしくない、みたいな…
加藤:たしかに洗練の極みみたいな感じですよね。出来栄えとしては。
幸宏:音のひとつひとつが宝石だと思って作ってましたからね。
H:で、できたやつを小原(小原礼)に聞かせたんだよな。そしたら「チリチリってる」って(笑)
加藤:いい感想ですね(笑)
幸宏:うちでね…尾崎亜美ちゃんがね。
H:あ、そうだ。それだ。
幸宏:「ねぇねぇ、この曲チリチリいってるのって、これはいいの?」そしたら小原が「それはわざとやってるんだよ。だってさ、それは"Sumer Place"じゃない。それはレトロだよ」とか言ってて(笑)「レトロニカ」というのを作ったほうがいいのかな、と思ったね。
H:お、それいいね。それは初めて聞いたよ。今やるといいんじゃない?
幸宏:いいですね。レトロニカにしましょう。
H:そうしよう。決まった(笑)
Theme From A Summer Place - Sketch Show
(from『Audio Sponge』)
幸宏:そういえば、"Wilson"って曲があったでしょ?
H:あれもいいな。
幸宏:あれは細野さんが2階から降りてきたときに、僕がオルガンの音で弾いてたんですよ。そしたら細野さんが「幸宏、それ良い」っ言って。あとは座って自分のコンピューターを広げて自分のことをやり始めて…(笑)
H:(笑)
幸宏:で、あの曲にだんだんなっていくんですけど。僕のイメージはスティーヴ・ライヒ(Steve Reich)だったんですよ。"Four Organs"。
H:あ、そうだったの?ぜんぜんそれ知らないや(笑)
幸宏:ただ、二人とも『キャスト・アウェイ(Cast Away)』観てて。
H:ちょうどね、観たばっかりだった。
幸宏:そういえばブライアン・ウィルソン(Brian Wilson)って砂の上に…部屋に砂を敷き詰めて、そこにピアノを置いて曲を作ってたみたい。実際、そういう映像が出てきたじゃないですか。のちに。
H:出てきた。
幸宏:それで…その当時僕は別荘を持ってて、それが下田だったんですよ。その海岸のところに行って、そして2人で詩を考えていて。「Wilsonってバレーボールのメーカー、あるよね」。
H:『キャスト・アウェイ』に出てくるんだよね、バレーボールが。
幸宏:そう。別にテニスのボールだってWilsonですけどね。スポーツメーカー。だからWilsonっていう子がいて…ボールですけど。「教えてよウィルソン」っていう歌詞が出てくる。
H:それとブライアン・ウィルソンがごっちゃになってるっていう(笑)
加藤:ダブルミーニングというか。
幸宏:あの人もかなり神経が参ってる人だったじゃない?で、僕もすごく参ってる人だったんで…(笑)今だにだけど。だから細野さんと相談して、こういう歌詞どうかな?って。そしたら「いいよ」って(笑)
H:(笑)
Wilson - Sketch Show
(from『Audio Sponge』)
幸宏:そうしてるうちに、細野さんの部屋としてあてがったすごい小部屋があって。そこに細野さん閉じこもったんですよ。ギターを持って。
H:そうだっけ?(笑)
幸宏:あれ、細野さん出てこないなぁ、と思ってたら、しばらくして「1曲できた」って出てきて。それが"Stella"だったんですよね。
H:そうか。そこで作ったんだ。
幸宏:そう。それがびっくりして…いい曲なんで。これは誰のイメージ?って訊いたらそれはもうあって。自分が死んだらこの曲流してもらおうかな、と思うような…そんな歌詞になりましたね。そしてあるとき坂本龍一くんがここに来て。「聴いたよ、アルバム。今年聴いたレコードでいちばんよかった」そんなに褒めらるとは…『BGM』は褒めなかったから…(笑)
H:たしかにね(笑)
幸宏:随分褒めてくれるなぁ、って。3人で番組録ったのかな。
Stella - Sketch Show
(from『Audio Sponge』)
幸宏:で、だんだん近づいていくきっかけになったのが、僕はやっぱりSketch Showなんだろうな、と思ったんですね。
H:そうだろうね。それはそうだよ。その頃はよく比喩で…幸宏と僕が砂場で遊んでたら遠くからそれを見ていて。一緒に遊びたいんだな、って(笑)
幸宏:ワンコみたいですよ(笑)
H:そうは僕は言ってないけど…(笑)
幸宏:いや、僕は最近ワンコ飼い始めて…
Supreme Secret - Sketch Show
(from『Audio Sponge』)
加藤:『Audio Sponge』がまず1作目としてできたときに、「Sketch Showとはこうである」というのが…お2人の中で腑に落ちたというか。そういう風なポイントってあったりするんですか?
幸宏:それはね…バルセロナに行って。
加藤:ソナー(Sónar)ですね。
幸宏:僕たち、後半はけっこうメインアクトになっちゃったんででっかいところでやってましたけど…町の中心部の美術館でしたっけ?現代美術館?そこがメインのときが良かったんですよね。『Audio Sponge』を作り終えて、招待されてそこに行ったんですけど。僕たちがやったのはそこのちょっとしたホールだったんだけど、中庭でDJやってるんです。そこら中でDJやってたんだけど、あるときムームをかけてたんですよ。みんな寝転がって聞いてるんだけど、普通はDJのときってノリノリじゃないですか。で、ぼくがここに来た意味はこれだったのか、ってわかったんですよ。
H:んー、なるほど。
幸宏:なぜSketch Showは呼ばれたんだろう。で、後に結局ヘッドライナーになっちゃうんだけど…
H:それまではテクノ系ってダンスミュージックみたいなものだったんだけど、そうじゃなくなったということだよね。
幸宏:そうですね。なんか「気持ちいいもの」だったんですよ。小気味が良くて、高揚感があって。昔細野さんが「僕は将来、静かな高揚感がある音楽をやりたい」と言ってた。
H:ほんと?そんなの知らない…(笑)
加藤:じゃあそういうことがSketch Showでだんだんそうなっていった…みたいなこともあるんですかね。
幸宏:いや、細野さんは無意識だと思う。
H:その前にアンビエント時代っていうのがあったでしょ。その頃に…
幸宏:そう思ってたんじゃないですか?
H:うん、そう思ってたね。
幸宏:そしたらそこにドーン!と出てきたんですよ。エレクトロニカというものが。
H:そう。アンビエントはポップな音楽ではないんで…ミニマルなんですけど。
幸宏:なにかを鎮めるためにありますよね。
H:アシッドハウスのあたりからダンスからチルアウトに移行して、アンビエントになって。その頃、アンビエントっていうのは大自然の激しさみたいなものがあるなぁ、って感じてたんですよ。
幸宏:そういえば僕、昔はアンビエントはあんまり聴かなかったけど、今の軽井沢の家ではしょっちゅうかけてますよ。
H:今はちょっとした…時代的に合う時代になってきたね、アンビエント。
幸宏:合いますね。やっぱりストレスが多いんじゃないかな。いろいろ。都会には。人が多いところは。自然の中に行くと、野鳥が止まったりするんですよ、ベランダに。餌を毎日置いておくといっぱい飛んでくる。いわゆるジュウシガラ、ヤマガラとか…
H:わかるんだ、見て。全然わかんないや(笑)
幸宏:もう「野鳥のすべて」っていう図鑑まで買っちゃいました(笑)
H:そうか(笑)
加藤:はい、ちょっと話が逸れに逸れましたが…1回目。聞いててめちゃくちゃ興味深かったんでこのまま聞いていきたいんですけど…
幸宏:読む人も興味深いと思いますよ。いかに原点がそういうものだったか、というのをわかってもらえれば。
H:こういうことはあんまり、今まで話してないもんね。
幸宏:お互いに今ので分析できちゃったり…(笑)
H:いま初めて知ったということが多いね。
加藤:次回の1時間で『Tronika』と『Loophole』にフォーカスして、というか。その頃の時代のお2人の感じというところをつかんでいきたいなと思います。きょうはこの辺で終了させて頂きますので。
H:そうですね。お疲れさまでした。
幸宏:お疲れさまでした。