2018.11.25 Inter FM「Daisy Holiday!」より

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daisy-holiday.sblo.jp

 

H:こんばんは。細野晴臣です。さて今日は…2人のゲストをお招きしてます。どうぞ!

?:はい。えー、54歳妻子持ち…

H:(笑)…誰?名前言ってくれない?(笑)

テイ:テイ・トウワでーす。

H:はい。そして…

砂原:はい。私は49歳…砂原良徳です。

H:あれ、「まりん」じゃなかった?

砂原:「まりん」と呼ばれてますけども、私は砂原良徳っていうのが、本当の名前なんですけど…

H:知ってるけど(笑)

砂原:はい、こんばんは。

H:じゃあもう、これからは「まりん」って呼んでいいわけね?

砂原:はい。みなさん、そう呼んでいますね。

 

H:久しぶりですね。

砂原:そうですね、ご無沙汰してます。

H:テイくんも久しぶりだしね。

テイ:そうですね。たぶん…アレじゃないですか?2月の、いつもの新年会以来ぐらいじゃないですか?

H:そうだな。うんうん。で、僕はいまレコーディング中で…みんなは?

テイ:僕は…腰痛とか、いろいろ経て…

H:あれ?(笑)体調の話ね。

テイ:ま、でも…スケッチをしてますけれども。はい。

H:ああ。まりんは…

砂原:やり始めた感じですね。

H:ソロは…何枚目ぐらい?これで。

砂原:4?5?とか、そのくらい…そんなたくさん出てないんですけど。

テイ:ていうか、何年ぶり?

砂原:5~6年ぶりぐらい。

H:あ、そう。

テイ:来年出たとして?

砂原:…7、7[年ぶり]だそうです(笑)

テイ:来年出て7?

砂原:来年出て7年という…

(テイ:急に(マイク音量が)大きくなっちゃった…)

砂原:まあ、そんな感じですよ(笑)

 

H:はい。じゃあね、2人を呼んだきっかけっていうのは、まずYMOの『NEUE TANZ』のリマスターね。

砂原:はい。

H:これが、音が良かった。すばらしい。

砂原:ありがとうございます。

H:選曲もよかったよ。

テイ:(笑)

砂原:ありがとうございます(笑)

H:えー、その中から"Camouflage"を聴きます。

 

 

 (from『NEUE TANZ』)

 

 

H:や、あのね…良い音だよ。今まででいちばん良い音だよね。

テイ:でも、まあ、いちばん新しいんで…そうじゃなきゃ困るよな、っていうのはありますよね(笑)

H:いや、でもね、大事なことがここにはあるのよ。つまり、僕はいま…リメイクをしてるわけ。1973年のソロ…デビューソロ[アルバム]を、曲はそのまま、リメイクしてる。で、ひとりでやってるわけ。

砂原:1973年っていうと、なんでしょうね?(リスナーに向かって)調べてくださいね、自分で。

H:…ああ、そうね(笑)デビュー作だから。ま、言ってもいいんだよ、別に(笑)『HOSONO HOUSE』っていう…(笑)アルバムで。ホント、若気の至りの…

砂原:いやいやいや…

H:いや、そうなんですよ。最初のだからね。で、ひとりでやるって言って、ここに…スタジオに篭ってやりだしたら、機材が全部古いんだよ。ウチの。自分が。

テイ:うーん。

H:ずっと10年、僕は生でやってたじゃん。

砂原:そうですね。

H:で、久しぶりに打ち込み…大好きだった打ち込みに…(笑)

2人:はい(笑)

H:ところがさ、音が出てこないわけ。

砂原:「出てこない」、というのは…

H:こう、なんていうか、前に出てこない。

砂原:あー…

テイ:はいはい。わかりますね…

H:わかるでしょ?(笑)で、この10年ぐらいで、ほら、音楽が変わって来たじゃん。

テイ:あのー、ずっとやっぱり変わってますよね。結局は。結局ずっと変わってるんですよ。

H:ずっと変わってる。だからね、1950年代の音、1960年代の音ってあるじゃん。

2人:はい。

H:やっぱり「2010年代の音」って、できたね。

砂原:あるんですよ。

H:そこら辺の話をしたかったんだけど…とにかくね、悶々としてたの。もっとしゃべっていい?僕。

2人:どうぞ。

H:2000年代の初期の頃に車でよくFM聴いてたんだけど、その頃の音楽が変わってきてるわけよ。低域が違うよね。2人:はい。

H:それは「クワイエット・ストーム(Quiet Storm)」っていう流れだったわけ。アメリカの。FM放送の連中がやりだした。それで、この音どうやって作るんだろう、と思ってたわけよ。低域出てないのに倍音が出てんだよね。

テイ:あー、わかりますね。

H:わかる?

テイ:あの、気配が…

H:そう、気配。これが謎だったわけ。で、誰に訊いてもわかんないの(笑)エンジニアに、君たちアメリカ行って勉強してくれ、って言ったんだけど、誰も行かないし(笑)それで、悶々としたまま忘れてたわけ。生のほうに、僕はずっと没頭しちゃったからさ。

2人:あー…

H:で、今回またやり始めて、またそこに戻っちゃったのね。問題が。それで、この機材はもうお別れだと思って…まあ、好きなものもあるけど、とにかく、新しいものを入れたの。噂に聞いてたようなね、ソフトを…(笑)

2人:はい。

H:で…歴史を辿ってったんだよね。「ニュー・ジャック・スウィング(New Jack Swing)」まで聴いて。

テイ:あら。

H:ぜんぜん聴いてなかったの、僕。テディ・ライリー(Teddy Riley)なんて知らなかったわけ。

テイ:あ、そうですか。え、でも聴かれてたんじゃないですか?

H:まあ、聴いてたよ。あの、ものすごい好きだったの。ただ、誰がやってるかは…マイケル・ジャクソンのいいやつもね、『Dangerous』もよかったし。ネプチューン(The Neptunes)も好きだし。おや?と思うやつは、みんなその系統の人たちで。でも、自分でやろうとしてなかったわけよ。だから、生でブギやってるとそっち行かない、っていうかね(笑)

テイ:そうですね。要らないですもんね。

H:でも今回は…そうはいかなかったわけね。それで、2人を呼んだの。どうなのか、と。

テイ:いやいや、恐縮です、本当に。

H:そこら辺の…ことはどうなってるの?テイくんはどうなってるの?

テイ:んーと…けっこう、でも、一緒に…[まりんと]同じの使ってるのもあるし。僕がもらって[、使ってみて]良いから、まりんにもあげてください、って言ったやつとかもあるかな。

砂原:はい。

H:なんだろう、それは。

砂原:ソフトウェアとか。あとは、まあ…数年前、METAFIVEとかでずっと一緒でしたから。

H:そうだね。

砂原:わりといろんなことを共有して…

H:なるほど。そういうのが大事だよな。僕、ひとりだったから(笑)

砂原:(笑)

テイ:まあでも、ブギはブギでね、うちらできないからね。

砂原:そうですね。生演奏もできない。

H:んー。それで…でも、ブギの音も今の音響のスタイルでやりたくなってきてるんだよね。

テイ:あー。打ち込みも入ってて…

H:打ち込みも好きだけど、生も…ジョー・ヘンリー(Joe Henry)っていう人がいて。

テイ:あ、名前は[聞いたことがあります]…

H:この人がまたすごいんだよね。で、何聴いてもポップ・ミュージックはすげぇ音じゃん。そう思うんだよ。

砂原:どういう風にすごい?

H:なんて言うんだろう…音が進化してるっていうか。

砂原:ああ。まあ、そうですね。なんか、音に…たとえば、かつてなかったような考え方っていうか…スピード、音の速さとか、そういうことはあんまり昔は言ってなかったですけど。「速いね」とか。「遅いね」とか。

H:そうだよね。

テイ:そうだね。

H:なんかね、こう、次元が変わったじゃん?そんな感じがするよね。

2人:はい。

H:それを…僕はずっと葛藤してて。なに聴いてもすごいと思っちゃった。モーニング娘。のミックス聴いて、負けた、と思ったわけ(笑)

砂原:誰がやってるんだろう…(笑)

H:クレジット無いからね(笑)ゲームオタクたちなのかな…よくわかんないんだよね(笑)「知らずにやってる」っていうね。ゲームの世界だとそういうのがあるかもしれない。

2人:んー。

H:あとは、映画の音も良いじゃん。最近のね。あれと共通した何かがあるでしょう?そういうシステムっていうかね。みんな…なんかこう、マニュアルっていうか、ルーティンがあって、僕が思ってるようなのじゃなくて簡単にやってるんだろう、と。思ってたの。

2人:はい。

H:1年ぐらい前からずっとそう思ってたんだけど。で…たとえば、こないだね、冨田ラボっていうのを聴いて。ビッッックリしちゃったんだ(笑)

テイ:ホントですか?

H:あ、ダメか(笑)

テイ:いやいや…でも、細野さんとかをたぶん、ね。尊敬しているような…

砂原:僕、自分のマネージャーとの間でその話題がちょっと出てましたね。

H:あ、ホント?

砂原:はい。おもしろい、ちゃんとやってるね。と。わかってるね、とか。

テイ:新しいやつ?

砂原:新しいやつと、1個前ぐらいだっけ…

H:新しいやつをね、たまたま聴いちゃったんだよ、僕は。たまたまなの。それがテイくんだったら、まあ、それはまたそれでね、いいんだろうけど。[名前を]出してないからね(笑)たまたま聴いちゃったんで、この音作りは異次元だな、と思って。で、モーニング娘。聴いたら、うわぁ、やっぱりすげぇなって…

2人:(笑)

H:それから、何聴いたかな…あっ、米津玄師を聴いたんだ、昨日。そしたらこれもよかったね。

テイ:んー…ぜんぜんわかんないです、僕。聴いてる?

砂原:わかんないっすね。

H:2年前のと今のとはやっぱり音が違うから、ああ、おんなじように変わってきてるってことにすごい興味があるわけ。いま。

2人:はい。

H:で、それを僕、「グローバル・サウンド」って言ってるの。ひとりで。グローバル…グローバル化してるんだよ。

テイ:あー。その、サウンドデザインが…

H:そうそうそう。デザイン。

砂原:わかりますね。

H:わかる?わかってくれるね…

砂原:あの、なんか「形」ありますよね。

H:球体のね。

砂原:はいはいはい。

H:あ、なんかおんなじようなこと考えてる(笑)

砂原:下のほうにキックがあって、その下に座布団みたいに、お皿みたいにベースがあってっていう…

H:空間がね。

砂原:そうですね。広域のパーカッションは左右にあって、これが真横にあるかのような…

H:それね、クワイエット・ストームの時から始まってるんだよね。

砂原:そうですよね。

H:左右の拡がりすげぇな、と思って…(笑)

砂原:あの、サウンド…2000年代以降くらいかな、音が「近い」ところにある、っていうことを言ってる方、けっこういたと思うんですよ。近くで演奏してるかのような。

H:はい。

砂原:で、近くに寄った時に…昔、左右の音はただ近くに、前のほうに寄ってくるだけだったんですけど、今は寄ってくると横に…左右に拡がってくんですね。

H:そうだよね。

砂原:ちょっとラジオじゃわかりにくいですけど(笑)真横に、耳のほうに向いていくっていうんですかね。なんか、「形」ありますよね。完全に。

テイ:お二人ともあれですよ、最終チェックを車で聴かれるじゃないですか。

砂原:はい。

H:そうそう。同じなんだね、車で聴くよ。

テイ:[まりんは]「いまから車で最終チェックしてきます」って、よく車に…

砂原:(笑)

H:おんなじだなぁ。話が合うね、まりん(笑)

砂原:車は、僕、けっこうあれですよ…ドアに空間無いですよ。完全デッドニングで。詰め物して。

H:あー、そこまでやってるんだ。

砂原:震えないようになってますね。

テイ:黒塗りの…

砂原:黒塗りっていうか…最初から黒かったんですけど(笑)

H:塗ったわけじゃないんだ(笑)

テイ:そうか(笑)

 

H:じゃあね、そのクワイエット・ストームの音を聴いてください。

2人:はい。

H:Amerie、"Hatin' On You"っていう曲です。

 

Hatin' On You - Amerie
 (from『All I Have』)

 

テイ:あの…パッドの音以外、短くて僕は好みでした。音は。

H:あー、短いのが好み…わかるわかる(笑)

テイ:短いのしかできないです、僕(笑)

砂原:テイさんは短いですもんね(笑)

テイ:いつも短いって言われるね(笑)

砂原:あとテイさんはパンを振る時、完全に振り切ることが多いじゃないですか。左右に。でも、それはそういう効果出ますよね。

テイ:悩まない…のかな。

H:悩まないんだ。いいなぁ。

テイ:ヘッドホンしないのと、車で音楽聴かないっていう。

H:ヘッドホンもしないの?

テイ:しないっすね、ほぼ。

砂原:僕もしません。

H:えー!あ、そう!

テイ:あ、違いが…(笑)

H:ここら辺がちょっと違うのね(笑)

テイ:いまひさしぶりにして、あ、音短い、とか思って。他人の音楽聴いて。

H:こういう音楽って、ヘッドホンして聴くとその世界が見えてくるじゃん。そう思わない?

テイ:わかりますね。

砂原:で、自分のやったの聴くと、うわぁこんななんだ、って気づくことが多いですね。

H:そっか。それは楽しいよな。

テイ:僕も、ほぼ仕上げの時に初めてゼンハイザーとかでして、ちょっと長かったなぁ、とか。

H:そういうこと?(笑)

テイ:もういいや、って…

砂原:まあ、短いと、あと、レベル入るんですよね。

テイ:そうなんですよ。短いと、入れれる…入れこめるっていう。

砂原:「レベルが入る」っていう…(笑)

テイ:だから、大きくしたいやつは特に短いこと…デュレーションを気にするっていうのが近年は…というか。

H:なるほど。

砂原:あとちょっと、昔は音多かったな、っていう。

H:あー、それはね。んー。

砂原:特に打ち込みは非常に整理しやすいですから、効率的に…この音出すんだったらこれは出さなくていい、とかっていうのをけっこうプログラムできるんで、生なんかよりは効率的に鳴らすことはできると思うんですよ。

H:そうだよね。

砂原:あと、まあ…画面で見て。

H:視覚的に。

テイ:そうですね、視覚的に…あと、小山田くん(小山田圭吾)もそうだけど、けっこううちら3人とかは…

砂原:縦ラインを見て、ダブってるのを消してく、っていうのをよくやりますね。

H:なるほど。

テイ:勝手に消しちゃったりとかして…(笑)

砂原:(笑)

テイ:これ忘れてるんじゃねぇかな、まりん、とか思って消しちゃったり…(笑)

H:ああ、そう(笑)

テイ:その瞬間にやっぱり何を効かす…まあ、1個とか2個とか。

砂原:そうですね。

テイ:ベースここ要らないね、とか。

H:おお、細かいね。んー。

テイ:それは音に出てないんだからしょうがないですよね。

砂原:いや、出てると思いますけどね…(笑)

テイ:そうかな…(笑)

砂原:出てますよ(笑)

H:んー、勉強になるなぁ…

テイ:いやいやいや…打ち込みの神様を前にね…(笑)

H:ぜんぜんダメよ。

テイ:いやいやいや…

H:昔は…若い頃はね、20代の頃なんかは「10年早い」とか注意されたの。「10年早いからウケないよ」とかね、言われてたわけ。今ね、「10年遅くてウケない」っていうね(笑)

砂原:いや、そんなことないと思いますけどね…

H:いや、出遅れてるんですよ。ホントに。

砂原:あと、なんかこう…打ち込みだけじゃなくても、生でも僕はなんとなく…音楽のジャンルとかリズムの…まあ流行りももちろんあるんですけど、それよりも「音像」が時代をいちばん象徴しているような感じが、すごいするんですよね。

H:そう。2010年代…も、そろそろ終わるけど、「音像の時代」だよね。

砂原:そうですよね。ですから、音像が「今」であれば、どんなに演奏が古くても「新しい」っていう…

H:そうなんだよ。

砂原:こないだ幸宏さん(高橋幸宏)の『Saravah!』も、実はマスタリングさせてもらったんですけど。

H:『Saravah!』もよかった!

砂原:あれもやっぱり、この考え方に沿ってマスタリングしたんですよね。

H:よかったよ、あれ。ちゃんと聞こえた。全部。

砂原:わりと気にしてやりました、それを。

テイ:あれ、ミックスも飯尾さん(飯尾芳史)がやり直したんだよね。

H:ミックスもよかったね。

テイ:あんまりやることない、って言ってたもんね。ミックス良かった。

H:最近の幸宏の中で、すごい好きだな、あれ(笑)最近のじゃないけどね。

砂原:なんかこう、聞こえが良くなった分…周りから聞こえてくるのは「こんな良いアルバムだったんだ!」っていう風にいう人がけっこう…

H:それはもう…リメイクっていうか、リマスターっていうか、甲斐があるよね。それはね。

砂原:そうですね。

 

テイ:"SUNSET"聴きません?細野さんのベースが聴きものという…

H:あっ…僕もそれね、ベース聴いちゃったよ、それ。好き(笑)

砂原:全体的にベースは僕…さっきの皿の話じゃないですけど、あの形になるべく近づけるように…

テイ:いちばん下じゃなくて…

砂原:はい。

H:そうなんだよ。これよく聴いたんだよ。こんなベース弾けたかな、とか思って。音が良かった。

 

 

 SUNSET - 高橋ユキヒロ

 (from『Saravah Saravah!』)

 

 

H:えーっと、時間がもういくらあっても足りないんですけど、この続きはまた来週、ということで。お願いします。