2021.03.28 Inter FM「Daisy Holiday!」より
H:こんばんは、細野晴臣です。久しぶりですね、テイ・トウワ!
テイ:こんばんは、テイ・トウワです。
H:いつから会ってないかな?去年会ってないんじゃない?
テイ:会ってないです、丸々。
H:新年会をやるつもりが…飛ばしちゃったんだよね。
テイ:そうですね。そこら辺から今の感じが始まって…なんもできなくなったという。
H:そうだよな。まぁ無事に過ごしたわけだね、1年。
テイ:そうですね、今のところ。
H:顔の色ツヤいいよね。免疫高そうだよね。
テイ:マジですか?(笑)免疫だけは高いと思いますよ。あ、健康診断しましたわ、こないだ。なんも問題ないって言われて。
H:したの?PCR検査もするの?そのとき。
テイ:PCRはその前の…大腸検査のときにしなきゃいけなかったですね。
H:そうなんだ。なんも問題がない?すばらしい。うらやましいな(笑)健康の秘訣はなに?
テイ:温泉じゃないですかね?
H:そうか。温泉は効くっていうしね、コロナに。
テイ:あ、そうですか?そういえば草津温泉がなんだか、って出てましたね。だって、あそこは釘を入れておくと1週間でなくなっちゃうという…
H:おそろしい(笑)
テイ:強酸性ですから(笑)
H:人間も危ないね。溶けちゃう(笑)
テイ:そうですね(笑)
H:じゃあきょうは…山のほうから来たのね?
テイ:はい(笑)空いてましたね、新幹線。
H:こないだね、高橋幸宏と久しぶりに会ったよ。
テイ:写真で拝見しました。
H:すごい元気そうだったんだよね。
テイ:そうですよね。言っていいのかな?一度退院なさって、お祝いということで…
H:そうだよね、それも知ってる。
テイ:はい。うちの向かいで…(笑)
H:近所だからね(笑)
テイ:うちの近くの最寄りのお店、4人でよく行くんですけど。そしたら…うちの家内と、きょうは飲まないでがんばろうね、って言ってたら、いきなり幸宏さんがシャンパン飲みだして(笑)
H:相変わらずだ(笑)
テイ:3杯飲まれてました。もう、僕のほうが先に…ちょっと帰っていいですか?みたいな。
H:元気だなぁ(笑)食欲もあるって言ってたし。見た目は会う前とぜんぜん変わらなかったな。
テイ:ちょっとお痩せになられてましたけどね。でもまた戻ってきてる…?
H:戻ってきてるね。
テイ:すごい生命力というか…よかったです、ホントに。
H:月に1回検診してるらしいから、そのときに会おうかな、と思って。
テイ:はい、ぜひ。
H:さて…テイ・トウワ。こないだ車でラジオ聴いちゃった。出てたでしょ?
テイ:出たりしますよ(笑)
H:特集やってたね。あの、なんていう人だっけ…宇多丸さん?
テイ:はいはいはい、えーとね…宇多丸かな?
H:(笑)
テイ:僕ね、歌麿って言っちゃって。「違います」って。宇多丸さんです、ライムスター(RHYMESTER)の。
H:宇多丸さんがいっぱいしゃべってて、テイくんがほとんどしゃべんなかったんだけど…(笑)
テイ:そうですね(笑)
H:で、そのテーマがね、新作アルバム『LP』。ジャケットカッコいいね、相変わらず。
テイ:ありがとうございます。これは五木田智央先生で…コラージュなんですけど。
H:あ、そうなんだね。いいコンビですね。僕の『No Smoking』もやって頂いて…いま、原画を頂いたところですね。ありがとうございます。
テイ:今の、2回貼っといてください(笑)
H:2回ね(笑)
H:僕の『No Smoking』もやって頂いて…いま、原画を頂いたところですね。ありがとうございます。
H:僕の『No Smoking』もやって頂いて…いま、原画を頂いたところですね。ありがとうございます。
H:(笑)
テイ:そういえば、五木田くんの息子さんが中1になられて…敬語じゃなくていいのか、ゲンちゃんは。
H:(笑)
テイ:すごい、ベースにハマってて。
H:へぇ。
テイ:細野さんの…「神様」のをYouTubeでいろいろ見たりして、弾きまくってて。
H:ホント?なんでベースなんだろうね。不思議。
テイ:ベースにいっちゃいましたね。
H:最近そういう人多いよね、ベース多い。
テイ:お孫さんもそうですしね。
H:そうなんだよ。
テイ:絵を描いてたの辞めちゃって。
H:辞めちゃったの?大丈夫なの?(笑)
テイ:聴いてますかね、ゲンちゃん。
H:じゃあね、さっそく聴いていきましょうかね。『LP』から…やっぱり"HAPPY BIRTHDAY"かな?
テイ:「HAPPY」は付かないんですけどね。
H:あ、そうか(笑)ごめんね、"BIRTHDAY"。
テイ:(笑)
BIRTHDAY - TOWA TEI
(from『LP』)
H:おお…相変わらずだね。
テイ:いやー、神様の前で聴いてもらうのは恥ずかしい…申し訳ない気がするんですけど。大丈夫でした?
H:なんで(笑)いやいや、楽しい。
テイ:ゴウ・ホトダさんがミックスを。熱海でしてくれて。
H:そうなんだ。熱海なんだね。
テイ:シングルを先に出したんで、アルバムをやった後にまた…ゴウさんがちょっといじって。細野さんのヴォコーダーをちょっと下げたほうが、アルバムヴァージョンではいいんで、という。
H:シングルと違うんだね。下げられちゃったか(笑)
テイ:いやいや、ヴォコーダーを下げたんです(笑)
H:あ、そっかそっか(笑)
テイ:ちょっと生を多めに…大丈夫ですかね?
H:そうなんだ。いいじゃん、もちろん。
テイ:あ、よかったです。こないだ美雨ちゃん(坂本美雨)に会ったときに、"BIRTHDAY"を聴いて「あれ、教授(坂本龍一)だ」と思ったらしいんですよ。
H:あれ?ショック(笑)
テイ:近いけどなぁ、って。ショックですよね(笑)
H:いやいや(笑)でも、ヴォコーダーっぽいからかな?
テイ:そうですね、ヴォコーダーですね。きっと。なので、アルバムヴァージョンでは多少、ヴォコーダーが減っております。
H:なるほどなるほど。
テイ:ホントに僕…ベースを頼むのはもちろんおこがましい話なんですけれども。
H:いやー、そんなことないよ。
テイ:歌を頼むのは初めてで。
H:初めてだっけ?そっか。
テイ:ひと言ぐらいは…"GERMAN BOLD ITALIC"とか"LOVE"とか。
H:あー、あったね(笑)いやいや、入れてくれるのはうれしいですよ。忘れてくれてないな、と思って。
テイ:そんなことないですよ(笑)
H:いや、ホントに…(笑)もう忘れられてもおかしくないからね、今は。
テイ:いやいや…いっしょに歌ってるのはHANAちゃんといって…
H:その人のことを僕はよく知らないんですよね。
テイ:でも、お孫さんとかといっしょにステージに立ったでしょ?
H:そうなの?(笑)
テイ:イエローマジック…
H:あー、そうか、あのときの。あのすごく若い女性ね。
テイ:そうです。この時はまだ14歳とかで…最近15になって。
H:やっぱり1年、年取るんだね。
テイ:そうですね。で、出来上がったときに気が付いたのは…細野さんはいま73でしたっけ?
H:はい、そうです。
テイ:HANAちゃんは15、僕は56…20代も30代も40代もいない(笑)
H:いないね(笑)
テイ:60代もいないんですけど…
H:ふしぎ。そういうことを考えたのは初めてだな。そうか、なるほど。
テイ:そういう意味では「HAPPY BIRTHDAY」かな、という。
H:そういうことだね。
テイ:はい。でした。
H:テイくんは誕生日だったの?
テイ:いや、全然(笑)
H:関係ないんだね(笑)
テイ:でもホントまじめな話…いろんな人に言わせたいんでしょうね。コロナでどう変わりました?って。でもあんまり、大きな幹は変わってなくて。ずーっと在宅、30周年なんで。
H:(笑)
テイ:毎日、レコード買ったのが届いたりとか。
H:おんなじだ(笑)
テイ:それぐらいしか社会とのパイプがない気がして。心のどこかで…祝ったりも。
H:あー、そういう気持ちだったんだね。
テイ:スティービー・ワンダー(Stevie Wonder)ばっかりじゃなくてこの曲もどうですか?
H:そうだよな(笑)そういう気持ちね、わかるな。おんなじ気持ちがどっかにあるな、僕も。
テイ:あ、よかった。
H:じゃあ、30周年の記念アルバムということなの?
テイ:まぁ去年が30周年で…いろいろ出来なくなっちゃったんですけれども。去年中に作って…10枚目なので。
H:まだ10枚目?これ。
テイ:そう、少ないですよね(笑)
H:そうだよ(笑)
テイ:やっぱ、YMOの本とか見てるとどんだけ?って思いますよね。
H:いやー、オリジナルアルバムはそんなもんかな。10枚くらいかな?YMOも。
テイ:でも細野さんのソロって…数えたことないけど、紛らわしいタイトルあるじゃないですか。あ、タイトルじゃないや(笑)ほとんど細野さんなんですけど、一応これはバンド扱い、みたいな。
H:あー、そういうときもあったね。
テイ:ありましたね。最近はソロですけど。
H:ぜんぶソロだね、最近は。
テイ:あれ、でもなんか…名前が出てこないですけど…
H:いいよいいよ、僕のことなんか。
テイ:いやいや…(笑)まぁでも[30周年で10枚は]全然少ないほうだとは思うんですけど。
H:たしかに。もっと出してるような気がしてるんだけどね。
テイ:いやいや…
H:じゃあクラブの仕事とかはもう、もちろんしてないね。
テイ:してないです、もう1年以上…新年会がなくなり、4月とかに決まってたイベントがぜんぶなくなって。
H:そうだろうね。
テイ:もうこの際、休止するのもおもしろいかな、と思って。DJの機能を。昔だとエクステンションを外したりできたじゃないですか、マックの。
H:…え、どういう意味?(笑)
テイ:システムの中から機能拡張っていうやつを…
H:ああ、そういうことね。軽くするためにね。
テイ:そうです。アンビエント・ドライヴァーを外す、みたいな。
H:そんなドライバはないよ(笑)
テイ:(笑)
H:そうかそうか。じゃあもう自分の部屋というか、自分のテリトリーでずっと作ってたんだね、これも。
テイ:そうですね。東京に来ることも本当に減ったので。
H:んー。でもいろいろ…作ることは多かったでしょ。メタファイヴ(METAFIVE)もなんかやってなかった?
テイ:やってますね。あと、順番が変わっちゃったんですけど、実はサントラもやりまして。
H:あ、そうなんだ。
テイ:10曲、オリジナルを作りました。
H:多いね。
テイ:細野さんが少ないんですよ(笑)
H:そっか(笑)
テイ:でも僕、細野さんの『万引き家族』って…いいんですかね?「万引き」って放送で言っちゃって。
H:いいんじゃない?映画のタイトルだから(笑)
H:あー、あれね。
テイ:曲というか、劇伴ですよね。ホントに効果的で。
H:へぇ。
テイ:あの、偉そうなことをすみません。
H:いやいやいや(笑)
テイ:少ないのが好きなんです、やっぱり。音楽が。
H:あ、音楽がね?映画の中で。
テイ:映画の中で。あれはだから10曲もなかったんじゃないですか?書下ろし。
H:そうなんだよ。で、映画を観たらすごく小っちゃかったしね(笑)
テイ:作った人はやっぱりそう思うものなんでしょうかね。
H:まぁ別にそれがイヤだとかではなくて。あ、小っちゃいなと思うだけで。これはこれでいいな、と。
テイ:逆に日本の邦画とか…申し訳ないけど、音楽で会話が聞き取りにくい、日本語なのに。というのはありません?字幕が欲しくなるような。
H:あるね。字幕欲しいね、日本の映画も。テレビもそう。ドラマも。
テイ:で、これはまだ内容は言えないんですけど…新しく10曲作ったのと、今までの僕の曲がすごいいっぱい使われてて。それを全部ゴウさんにマルチを渡して。
H:ミックスね。
テイ:やっぱし、昔普通に2ミックスしたものじゃダメらしくて。
H:わかるわ。
テイ:セリフをセンターとかで聞かせるために位相を変えて。
H:映画の音はぜんぜん違うもんね。CDよりもいい場合があるけどね(笑)
テイ:違いますよね。いまはドルビーアトモス(Dolby Atmos)とか…
H:それなんだよ。使いたくてしょうがないんだけど、使えない。
テイ:あー、じゃあ…これはカットでもいいですけど、ゴウさんはドルビーアトモスを部屋の中に…多用してますよ。
H:自分ちにあるわけ?なんだ!今度頼もう(笑)あのシステムはね、自分で揃えられないよ、普通。
テイ:ぜひ細野さんもドルビーアトモス…やって頂きたいです。
H:やりたい。伝えといて。
テイ:言っときます。なんか、すごい営業されるんですよ(笑)
H:そうなの?(笑)
テイ:アトモスだとiPhoneとかでも再生できるから…とか。
H:そうだよね。いやー、いい情報だよ。やっと手掛かりがつかめた。どうしていいかわからなかったんだよね。
テイ:ゴウさんも見よう見まねで…ドルビーの人とやりとりしてやってますけど。何十個あるんでしょうね、モニター。
H:どこなの?場所は。
テイ:熱海の地下1階なんですけど…
H:熱海ね。行こうかな。
テイ:ぜひ。いい温泉ありますから(笑)
H:いいねぇ!いい話だ。ありがとう!(笑)
テイ:いやーよかったです、きょう来られて。ホントに。
H:じゃあ音楽いきます。なにかけていいの?
テイ:なんでも。
H:じゃあ…さっきせっかく幸宏の話をしたからね。
テイ:いいですね。
H:幸宏の声が入ってます。なんという曲でしょうか。
テイ:"CONSUMER ELECTRONICS"。
H:おお!(笑)
CONSUMER ELECTRONICS - TOWA TEI
(from『LP』)
H:…なんて?(笑)
テイ:「家電は静かなほうが良き」って。
H:ヘンなの(笑)
テイ:あの…このアルバム、宗教ですから(笑)
H:宗教なの?(笑)
テイ:レコード教会ですね。レコード教の。
H:あー、そっかそっか。『LP』ね。だいたいこの…"CONSUMER"っていうのは英語表記だと、なにこれ?
テイ:"CONSUMER ELECTRONICS"ですけども、邦題は「家電」というタイトルです。
H:あー、引っかけてるわけだ。ヘンだなぁ…
テイ:でももう、ホントなんかこういう…Siriとかの音も使ってますけど。ピコーン、みたいな。
H:んー、Siriも使ってるんだね。
テイ:あとはマックで僕の声をタイプできる…
H:あー、それもやってるんだ。
テイ:細野さんもどうですか?ご紹介…
H:やりたい。うん。うれしい。
テイ:あ…2回貼りましょう。
H:あー、それもやってるんだ。
テイ:細野さんもどうですか?ご紹介…
H:やりたい。うん。うれしい。
H:あー、それもやってるんだ。
テイ:細野さんもどうですか?ご紹介…
H:やりたい。うん。うれしい。
H:(笑)それはなに?自分で開発したの?
テイ:いやいや…東芝さん聴いてますかね?
H:へぇ、東芝製…ぜんぜん最近そういうの使ってないんだよ。昔は使ってたけど。
テイ:作りましょう。入口までお供します。
H:あ、うれしいな。自分の声で作っていいわけね?
テイ:なんかたぶん、親族とかにサービスで…細野さんがこの世からいなくなられても…(笑)
H:遺るわけね(笑)
テイ:孫とかが「おじいちゃん、きょう僕、就職決まったよ」って、自分でタイプして「よかったね」ってしゃべる…
H:おもしろいね。それいいね。
テイ:じゃあ2つ、きょうは…
H:いやー、いいニュースが2つも。
テイ:ブッ込みましたよ!
テイ:うれしいな。ちょっと2枚はサインしてもらっていいですか?後で。
H:もちろん(笑)
テイ:いやいやいや…
H:全然、でも、年取ってないね。見た目も。
テイ:いやいや、そんなことないですよ。
H:いやホントに。ずーっとテクノだし(笑)
テイ:いやー、それしかできないですね。きっと。
H:それがいいんだよ!うらやましい(笑)あれもこれもやってるとダメなのよ。僕みたいな…ホントにもう、なにしていいかわかんなくなっちゃうけど。ぶつぶつ…
テイ:そうですかね?
H:そうなんですよ。
テイ:でも教授もよく…ニューヨーク時代、ピンポンって来て。
H:近いんだね(笑)
テイ:「なにやってんの?」って。聴かせて。その頃まだ教授はタバコ吸われてて。ブワーって吸いながら、「トウワはいいよな、やりたいことがあって」って(笑)
H:それはまた別…(笑)ちょっと種類が違うけどね。
テイ:(笑)
H:やりたいことなかったのかな?(笑)
テイ:いや、やりたいことはあるけどできない。スキルが追いついてなかったんです。教授はなんでもできちゃうんで。音符的なことは。
H:そういう人にはそういう悩みがあるんだよね。
テイ:いやー、正直ちょっとなに言ってるかわかんないんですけど、っていう(笑)
H:サンドウィッチマンだ(笑)
テイ:まぁみんなそれぞれ…煩悩を抱えて。
H:それはそうですよ。ない人はいないね。テイくんはないでしょ?
テイ:いやー、でも…あんまりないかな?
H:でしょ?なんかわかるよ、それ。
テイ:ホントですか?3人ぐらいに言われたんですよ。「上がり」だって。
H:上がり?
テイ:次はもう…リボーンしない、って。
H:そういうことか。いや、そうかもしれないね。やりたいことをやって、30年。
テイ:はい。テクノを(笑)
H:で、なにも困ってない。すばらしい。
テイ:いや、困ってないっていうか…そういうことにしときましょうかね(笑)
H:(笑)
テイ:でもなんか…わかんないですけど、お金とかがもっといっぱいあったりしたら。
H:それはキリがないわ。
テイ:じゃあお金があったら作らないのか、という話でもないですし。やっぱり作ってるのは楽しい。
H:うんうん。それが楽しいんだよね。
テイ:そうですよね。いやー、神様が仰られると…(笑)
H:神様か…(笑)
テイ:下世話な話ですけど、印税とかっていくら欲しいとか、そういうものじゃないですからね。
H:あんまり考えないよね。先に作っちゃってるから。
テイ:そうなんですよ。それが後から、3か月後とかに来るんで。
H:作ったものがちゃんと[世に]出る、というだけでもう、うれしいんだよね。出ないとやっぱり悲しいからね(笑)
テイ:あと、データだといつになったら「終わった」んだ、という感じが僕はして。
H:はいはいはい。あるね。
テイ:一応ファイル名に「T.D.」とか「MA」とか付けて。終わるんですけど、やっぱし僕の場合はこうやって印刷物になって、人に手で渡せたりとか。
H:商品としてね。それが完成形だよね。
テイ:細野さんはテクノだ、って仰いましたけど、僕は…まぁハズレではないんですけど、音楽の中のレコードが好きなんですよね、たぶん。
H:はい。すみませんでした(笑)
テイ:そんな…(笑)
H:うんうん、LPがね。
テイ:そうですね。LPって基本的に12インチの…
H:うん。ロングプレイ。
テイ:そうですよね。アルバムのことをLPというわけですよね。
H:僕の世代はそうしてきたけど。今はどうなの?
テイ:同じだと思うんですけど…
H:LPってあんまり言わないよね。「アナログ」?
テイ:アナログって言いますかね。ヴァイナルとか。僕は単純に2文字にしたかったので…
H:いつもカッコいいなぁ、と思うよ。タイトルとか。ジャケットがいいなぁ、ホントに…また頼もう。
テイ:そう言って頂けると…あのね、音楽は気張って下げないようにしてるんですけど、ジャケは安いんで。
H:そうなの?(笑)
テイ:もう、おいくらでも…
H:趣味なのかね?
テイ:趣味です趣味です。たぶん、練習する代わりにたまにコラージュ作ったりとか。僕はそっちですかね。
H:なるほどね。やっぱり、根っこがグラフィックの人なんだね。音楽もそうだよ。すごいグラフィカルだしね。
テイ:いやいやいや…もう1曲ぐらいかかりますかね?かからないか。
H:話をカットすればかかるかな?(笑)でもカットしないほうがいいね、おもしろいから。
テイ:そうですか。
H:じゃあもうね、音楽かけられないから。また来てくださいね。
テイ:はい、ありがとうございます。
H:テイ・トウワさんでした。
テイ:でした。
2021.03.21 Inter FM「Daisy Holiday!」より(抜粋)
H:こんばんは、細野晴臣です。きょうはですね…初めてですね、澤本さん。電通の…フルネーム忘れちゃった(笑)
澤本:大丈夫です!澤本嘉光といいます。
H:あ、嘉光ね。難しいや。えーと、何年ぶりかな?
澤本:もう、お話しするのは…結構ですね、3年とか。
H:そうですよね。前、ここに遊びに来て…不思議な話をいっぱいしましたよね。
澤本:そうですね、神社系の話とか。あとは1回、スカパラの沖くん(沖祐市)といっしょに来たことがあります。
H:そうそうそう。で、僕は澤本さんの番組に1回出たことがある。
澤本:はい。ありがとうございます。
H:それもずいぶん昔だよなぁ。
澤本:そうですね、もう5年ぐらい前ですね。
H:あの頃と今は違いますよね、やっぱりね。
澤本:違いますね。この1年で相当なものが変わりましたもんね。
H:でしょうね。いや、みんなそうだとは思うけどね。
澤本:きょう、こちらに伺う前に会社に寄ってきたんですけど。表現として「会社に寄ってきた」というぐらいに、会社に行ってないんですよ。
H:そうかそうか(笑)そうだよね。いろいろ…電通もニュースになるしね。
澤本:そうですね。ものすごくニュースになった1年でしたね。
H:でもお仕事はずっと…相変わらずなんですか?
澤本:そうですね。相変わらずテレビコマーシャルとか、Web動画とかのほうですね。電通の仕事としては。
H:個人ではなんか…YouTuberじゃないの?
澤本:YouTuberほどしゃべれないので…(笑)相変わらず映画の脚本をたまに書いてます。
H:あ、そうなんだ。それは…今までどんな映画になったんだろう?
澤本:直近だと…それこそ去年の3月に公開になった直後に、コロナで劇場が封鎖されちゃったんですよ(笑)
H:そうだ!そうなんだね。
澤本:『一度死んでみた』という不謹慎なタイトルの…
H:でも公開は…?
澤本:公開はして頂いて…広瀬すずさんと吉沢亮くんという2人が出てくる映画で。
H:いいメンバーだね。
澤本:そうですね、メンバー的には大変良かったんですけども。コロナのとき…映画の番宣でテレビに出るじゃないですか。
H:うん。
澤本:そのときに「見てね」って言えなかったんですよ。
H:それはつらいね(笑)
澤本:「劇場に来てね」とも言えないし…映画をやるという告知はいいけど、「見てね」とか「来てください」とはなかなか言えなかったですね。
H:そうか。でも、このCMの撮影とかへの影響はあんまりないわけ?
澤本:撮影もですね…昨年の緊急事態宣言のときはやはり全然なくて。で、夏ぐらいからちょくちょく出てきましたが、撮影環境がまったく違いますね、もう。手洗いとかマスクとかだけではなくて。
H:まぁ、それはみんなやってるもんね。
澤本:距離を取らないといけないんで…そうすると、撮影をしている場所に僕たちは近づけないんですよ。
H:あ、そう。
澤本:だから…コマーシャルをつくってるときに僕はセリフを現場で思いついて、「こういうのもできますか?」っていう風に通ったりするのが仕事だったんですけど、「来るな」っていうオーダーがあるので…(笑)
H:厳しいね(笑)
澤本:厳しいですね。仕事のスタンスがちょっと…
H:ギクシャクするね。いや、どの現場でもそういう話は時々聞いてましたけどね。
澤本:細野さんのほうはどうだったんですか?
H:いや、僕はね…あんまり変わらないですね。
澤本:変わらない?(笑)
H:普段からこのスタジオに閉じこもってるしね。
澤本:たしかに、このスタジオに降りてくる階段から雰囲気はまったく変わらなかったですね(笑)
H:変わらないでしょ?(笑)だから…1990年代にずーっとここで、ひとりでやってたのね。アンビエントみたいな音楽を。そこにまた戻っちゃった、みたいなね。
澤本:うんうん。
H:このラジオが救いというかな。ラジオの仕事…仕事というか、遊びなのか(笑)時々、月に1回は1から全部作ってたりして。それが結構おもしろくて。没頭できますね。だから、ものづくりには没頭できる時期なんだろうなぁ、とは思いますね。
澤本:そうですよね。
H:でも、みんなで作るというのは難しいね。だからライヴは全然やってませんよ。
澤本:僕たちも打ち合わせというものが…直でお会いして、というのがほとんどなくなってしまったので。
H:今はまた復活してるんじゃない?そうでもない?
澤本:比率としてはものすごく低いですね。
H:低いか。急には変われないんだね。んー。
澤本:場を読む、という作業がなくなったんですよね。例えばこうやってお話ししているときに細野さんのお顔を見て、あ、ちょっと怒ってるかな?とか。
H:(笑)
澤本:でも、今は並んで画面に映ってるので…
H:わかんないや。
澤本:もう「発言」という感じですね。
H:あれは僕は苦手だな…
澤本:(笑)
H:最新作は何を観られるんだろう、テレビで。
澤本:僕はまだソフトバンクの担当を…
H:ずっとやってますよね。
澤本:はい。で、最近はソフトバンクにドラえもんを持ってきて…
H:そうだ。
澤本:それをやってますね。
H:最初に僕がお会いしたのは妻夫木さん(妻夫木聡)とロケで…あの島は…
澤本:屋久島ですね。
H:屋久島だ(笑)呼ばれてね、僕も行ったんですよね。あれはディレクターだったんですよね?
澤本:あれはですね、僕はコマーシャルの企画、プランナーなので…まぁ脚本家ですね。ディレクターは別にディレクターの方がいらっしゃって。
H:あ、そうか。
澤本:でも、ああいうロケは最近…
H:ないでしょ。
澤本:外ロケはないですね。あのロケは特別に楽しかったですけどね。
H:楽しいね。あれから急に…なんだろうな、どういう縁が出来たのか…そうそう、澤本さんのベルトが左前か右前か、っていう話が…
澤本:はいはい!
H:それが…あ、ヘンな人!と思ってね(笑)
澤本:そうなんですよ(笑)ベルトって普通は反時計回りに巻くじゃないですか。
H:そうだよね。右利きだしね。
澤本:でも僕、ずーっと逆に巻いていて。
H:わざとね。
澤本:わざとです。最初それは、人と違うことをしよう、というのをベルトの巻き方ぐらいから始めたという…(笑)
H:そこから入って行ったんだ(笑)
澤本:あとは身体の向き…螺旋の向きとしてそっちのほうがいい、と言われたんですよ。気功をやっていたときの先生に。
H:あ、そうなんだ。
澤本:向きとして本来はそっちで巻いたほうがいいよ、と言われて。そっちのほうが地球に対していい、と言われて。ホントかな?と思ったけど…
H:いや、あるかもね。東半球と西半球で違うだろうけどね。
澤本:おそらく逆ですね。
H:水が穴からぐるぐる回って落ちてくるでしょ?そのときは右回りなのかな?
澤本:そうですね。北半球と南半球で逆なんですよね。台風の向きもたしか…
H:だったらベルトも逆がいいかもね(笑)
澤本:という理屈かもしれないですね(笑)
H:じゃあ、いまもずっとやってるんだ。
澤本:いまもずっとやってますね。これが元に戻っちゃうと普通の人に戻っちゃう…まぁ普通の人なんですけど(笑)
H:他になにかそういうことはやってるんですか?
澤本:そうですね、あとは日課として神棚を拝むというのと…どこへ行っても近くに神社があると必ずお参りするというのはやってますね。
H:おんなじだ。そういう人が増えてるような気もするんですよね、若い人に。
澤本:そうですね。それと同義かわからないですけど、御朱印を集めて回ってらっしゃる方が。
H:いますよね。まぁ、趣味だよね、それは。根っからですか?そういうのって。子どもの頃から?
澤本:神棚に手を合わせるのは子どもの頃からの癖でして…かつ、やっぱり神社に行くのは好きでしたね。空間として好きでした。
H:空間がいいですもんね。僕もね、子どもの頃から…ちょっとヘンだったな。
澤本:どんな風にヘンだったんですか?(笑)
H:いや、孫悟空に憧れてね。小学校の頃に『西遊記』の分厚い本を買ってもらって読んでたんです。呉承恩の原作に近いやつ。その中で、三蔵法師一行が困ったときにインドからお釈迦様と観音様が助けに来たりするので…こりゃあいいな、と(笑)
澤本:(笑)
H:で、その本の最後にお経が出てたんですよ。最後の1ページにお経が1行。短いんですよ。これだ!と思ってね。それをノートに書き写してね。それが先生に見つかって…「小学生のくせになんだ」と。そんなことがあって、その先生とはちょっと仲良くなったんですけど。そのお経がね、「十方三世一切諸佛、諸尊菩薩…摩訶般若波羅蜜」というのを漢字で模写して覚えたんですけど。
澤本:はい。
H:これはいまだに好きなお経ですね。この世の神仏全部尊敬してます、というような。その分で『西遊記』が締められるんですよ。それの影響はすごく強かったですね。それ以来、神仏の形とかが好きになって…いまもそういう人はいますけどね、みうらじゅんさんみたいな。
澤本:はいはいはい…
H:広辞林という古い辞書があって。そこにお釈迦様とか名もない仏様とか、全部絵が描いてあるんですよね。
澤本:あ、絵付きなんですか。
H:古い絵なんですけどそれがすごく好きで、模写してたんですね。
澤本:絵の模写ですか。
H:うん。それとおんなじことを僕の祖母がやってたんですよね。だから遺伝なのかな?んー。
澤本:それは、細野さんはおばあさんがやってらっしゃったのを見た記憶からやってらっしゃったんですか?
H:いや、後から。そのおばあさんがなんでそういう絵を描いていたかというと…僕は会ったことないんですよ。祖父がタイタニックに乗って生還してきたでしょ?そのときの感謝で南無阿弥陀仏…って、阿弥陀仏の絵を藁半紙に並べて奉納したんですよね。それが形見で出てきてビックリしちゃって。おんなじ配列なんで…(笑)
澤本:じゃあ、ホントにそれは偶然そうなった…
H:偶然です。そういうのがあって、そんなことばっかり考えてたら、母親から「そんな教育をした覚えはない」と言われて(笑)
澤本:(笑)
H:あの時代の家庭というのはだいたい…敗戦後だから、うちの宗教は何だ?と訊くと無宗教だ、と。ああそうなのか、と思ってね。自分はちょっと違うけど、と。そういう母親から見ると僕はやっぱりヘンなんですね。
澤本:(笑)
H:そのくらいへんだった?(笑)
澤本:そうですね、細野さんに比べるとヘン度は低いと思いますけどね…(笑)お墓参りが好きなんですよ。
H:これはすごい!いい日本人だ(笑)
澤本:いやいや…僕は祖父祖母のお墓が鎌倉と北海道の余市という漁村にあるんですけど。
H:いいところにあるなぁ。
澤本:その余市のお墓に…札幌出張だと無理やり行くんですよ。
H:結構遠いかな?
澤本:最近ちょっと近くなったんで、車で1時間ぐらいですけど。レンタカーを借りてお墓参りするんですけど…人がみんないないので、お墓の前で喋るんですよ。来たよー、と。そこにいる人と普通に喋っているかのように。最近ちょっと来てなかったね…とか。
H:(笑)
澤本:きょうは晴れてて海が見えるよね、ということをずーっとお墓に言って。
H:それはね、正しい対話の仕方ですよね。
澤本:なかなか、東京のほうでそれをやると大丈夫かな?っていう感じに見られるけど。でも、その様子を北海道で見ていた人がいると、ちょっとヤバいやつがお墓と喋ってる、ってなると思います(笑)
H:だから、人がいないところでやるのはいいね。誰かに見られるのはイヤだな。ネイティブアメリカンも…薬草を摘む人たち。メディスンマンとか。必ず声に出してお礼を言え、と言うんですよね。思ってるだけじゃダメなんだ、声を出すから伝わるんだ、と。
澤本:はいはい。
H:それ以来、僕も声を出すようにしてます。だから正しいやり方ですね(笑)
澤本:よかったです。間違ってると言われたらどうしようかと…(笑)
H:いやいや…でもやっぱり、なかなかいないかな。お墓の前でブツブツ言ってる人は(笑)
澤本:そうですよね(笑)あまりいてほしくもないかもしれないですけど…
H:仲間の人たちはそういうことを知ってるんですか?
澤本:いや、あんまり言ってないですね…こんなことを言っちゃうのは細野さんだから…(笑)この空間が言わせてる感じがします。
H:いいのかな?ラジオでみんな聴いてるけど(笑)
澤本:大丈夫だと思います(笑)
H:でも、正しいことなんだと思って聞いてましたけどね。それは別に恥ずかしいことではないと思います。
澤本:ホントですか。ありがとうございます。
H:…ずーっと話してていいのかな?(笑)なんか音楽かけようかな。音楽ってどういうのを聴いてるんだろう。
澤本:聴いてるのは最近のやつというよりは…昔って言うと失礼ですけど。結局、自分が中学生までに聴いたものが全部好きなので、その辺りのものを聴いてたりします。
H:中学校のときはなにを聴いてたんでしょう?
澤本:僕は小学校の終わりころからビートルズだったので…それこそYMOとビートルズが同時期です。
H:なるほどね。そうか。自分的にはYMOよりビートルズをかけたいかな、いま。
澤本:(笑)
Dear Prudence - The Beatles
(from『The Beatles』)
2021.03.14 Inter FM「Daisy Holiday!」より
H:はい、こんばんは。細野晴臣です。こんにちは。
O:こんばんは、岡田崇です。
越:こんばんは、コシミハルです。
H:こんにちは、かもしれないしね。
O:もう、いつ聴いてるかわからないですよね、今。
H:わかんないよね。
越:そうですね。
O:深夜にひっそりやってたのに。
H:そうだよね(笑)やっぱりラジオって聴くんだね。聴いてる人がいるんだね…(笑)
O:たくさんいるみたいですよ。
H:ありがたいことだよね。昔は3,4人しか聴いてなかったんじゃないかな。そんなことはないか(笑)
2人:(笑)
O:そこまでではないですけど…(笑)でも今ほどじゃないですよね。やっぱりリアルタイムで…深夜にやってたんで。
H:そう。リアルタイムの時期だったね、そういえば。
O:それがよかったんですけどね。深夜に流れていくのがね。
H:まぁラジオは…深夜のつもりで作ってるからね、今でも。「おはようございます」とはさすがに言えないよね(笑)
O:でも、通勤のときに聴いてる、とかね。そういう方もいるみたいです。
H:そうだよね。もう、自由だね。うらやましい。
H:いや、ひさしぶりですね、この3人はね。
O:そうですね。
越:はい。
H:最近はゲストが多いんですよね。どうしてたのかな?忙しそうだよね。
O:まぁ、ちょこちょこですね…じゃあここで。
H:あ、告知。
O:6月から片岡知子さん…あ、僕の奥さんですけど。去年亡くなって。6月7日が彼女の誕生日なので、その辺りから…彼女がやっていたインスタント・シトロン(Instant Cytron)というグループのアルバム5枚を3か月にわたって、アナログ盤で…(笑)
H:いや、すごいね。3か月にわたって…それは各社で出るっていうこと?
O:そうですね。東芝EMI時代のはユニバーサルさんから出て、ソニーから1枚出て。あとはドリームスヴィルっていう長門芳郎がやっていたレーベルから2枚出しているんで、それをリルデイジーのほうから出す、という。
H:なるほど。6月ね。皆さんよろしく、と。
O:アナログ盤で…もう、CD買わなかった人なんでね。
H:そうかそうか(笑)
O:CDをほぼ1枚も買わなかった…徹底してアナログだったんで。アナログで出さないと怒られちゃいそうで…(笑)
H:まぁ、今の時代に合ってるね。うん。
O:そうですね。お楽しみに…ということで。
H:じゃあ、ミハルちゃん、告知あるでしょ?
越:え!告知?
H:(笑)
O:いろいろやってますよね、水面下で。
越:いろいろやってる。レコーディングとか…ずーっとしてますけどね。
H:そのうち正式な告知ができるようになりますよね。
O:映像もね。
越:はい。映像も。
H:さて、では音楽を…じゃあ岡田くん。
O:はい。きょうはミッチ・レイ - アート・ハリス(Mitch Liegh - Art Harris)というグループで…1956年の録音です。"Voltaire's Vamp"という曲です。
Voltaire's Vamp - Mitch Liegh-Art Harris
(from『Jean Shepherd – Into The Unknown With Jazz Music』)
H:おお…この人は?ジーン…
O:ジーン・シェパード(Jean Shepherd)というテレビパーソナリティーやラジオで活躍していた方で…その人のスポークン・レコードなんですよね、これ。スポークンの間に木管五重奏のジャズが挟まっている、というレコードで…
H:めずらしい。じゃあこの人は有名だったんだね、当時。
O:テレビとかに出てたぐらいなんで、その人は有名みたいですね。
H:アレンジャーとプレイヤーで、コンピレーションを作ったのはミッチ・レイ…
O:ミッチ・レイとアート・ハリスという…
H:アート・ハリスという人がピアノ、チェレスタ、ハープシコードだ。
O:そうですね。ミッチ・レイが木管。
H:ぜんぜん知らなかったな、僕は。
越:おもしろい。
O:この人たちのソロアルバムもあって、そっちもすばらしいですよ。
H:なかなか品があるよね。
O:クラシックとジャズがいい感じに融合してて。
H:こういう人たちって1950年代、わんさかいるんだよね。
O:でも、わんさかもいないですかね。おもしろいものを探していくとなかなか…まぁ数名。
H:そっか。でも、そういうのは全部集めてるね、岡田くん。
O:そうですね(笑)
H:これはそのうち、みんなが聴けるようにしないといけないんじゃない?
O:したいですね。
H:これは楽しみだな。
O:いろいろね、そういうことをやっていかないとな、と思ってますよ。
H:それにはラジオがピッタリだね。まぁもちろん、アナログ盤も出すといいね。
O:アナログ盤…ちょっとね、ハードルが高いですよね(笑)
H:そう?
O:いやー、製造コストがやっぱりかかるんで…
H:そうなんだ。
O:ブックレットの解説をちゃんと入れてCDで出して、というのが…でも、最近はCDを持ってない人というのが多いんですよ。40代の人でも持ってないという人がいるんで。
H:あらまぁ…
O:CDプレイヤーの使い方もわからない、という方が10代だといるんで…CDにダウンロードコードを付ける時代が来るんじゃないか、という…(笑)
H:そうだよね(笑)もうそれはやってもいいんじゃないかな。自分自身もだんだん、CDが遠くなってきてる…
O:でも配信だけだと、配信してる会社がなくなっちゃったら…いつまでも今みたいにあるとは限らないので。
H:そうなんだよ。デジタル音源は儚いよね。
O:やっぱりCDにブックレットを付けて…というのが。
H:じゃあ、CDは定番として残すべきだね。
O:そう思いますね。
H:勉強になった。[CDは]もういいんじゃないかな、なんて思っちゃってたから(笑)
O:いやいや…あのパッケージがやっぱりいいんじゃないですかね?ちょうど70分ぐらい入る箱ということでね。
H:まぁ、理想だよね。
O:デジタルだと無尽蔵にコンピレーションが作れちゃうんで…選曲の妙、というか。
H:まとまりがないよね。いちばん大事なのは…配信の場合はデジタル・ブックレットがないとね。自分の場合もちょっと気になってるんだけど。
O:そうなんですよね。やっぱり、ちゃんと意志を持ってセレクトしているわけなので…ただ音が並んでるわけじゃない。
H:だって僕、中学生ぐらいからクレジット読んでたからね。
O:その文化がね、もう今はないので…よくないと思いますね。
H:プロデューサー、アレンジャー、[参加している]ミュージシャン…
O:「ああ、この人が…読めないけどこの字面の人が…」って買うじゃないですか(笑)
H:そうそう。そうやって勉強していったんだよね。これはもう、勉強だよ。
O:そう。それで失敗もしてね…
H:学校では教えてくれない勉強、大事だよ。えー、その点、どうでしょうかね。ミハルちゃんは。クレジット見てた?
越:クレジット…
H:あれ?(笑)
越:譜面とか見てたね。譜面買うの好きだった。
H:あ、なんか種類が違うな(笑)
2人:(笑)
H:じゃあ、なんか音楽かけてください。
越:メロディ・ガルドー(Melody Gardot)の"C’est Magnifique"という歌を…ファドのアントニオ・ザンブージョ(António Zambujo)という人とデュエットしてます。
C’est Magnifique (feat. António Zambujo) - Melody Gardot
(from『Sunset In The Blue』)
H:いやー、落ち着いちゃったね。
越:なんか、空気感がいいでしょ?
H:ボサノヴァだね、これは。
越:ゆったりとした…アルバム全体がこういうオーケストレーションで、半分ぐらいはスタンダード。"Moon River"とかいろいろやってるんだけど。オリジナルもその中に…
H:この女性はどこの国の人?
越:アメリカの人だと思う。
H:ミハルちゃんもこういうの聴くんだね。まぁ、なんでも聴くもんね…あれ、黙っちゃった(笑)
O:電話が…(笑)
越:電話だ(笑)
H:電話?(笑)誰から?
越:おばさんだ…(笑)
H:いいよ、話しても(笑)急用じゃないの?
越:大丈夫です(笑)
H:じゃあ、僕はもうかけるものがなくて…最近かけすぎてて。
O:手作りデイジーで…(笑)
H:いやー、聴くのが楽しみだから…聴かせて、岡田くん。
O:じゃあ…たしか1月の放送のときに話題に出た水森亜土さん。
H:わーい!いよいよ聴けるね。
O:その"Cow Cow Boogie"を。
H:これ、アルバム2枚をリルデイジーで…もう出してるの?
O:通販で…まだ買えます。
H:あ、ホント?ぜひぜひ。聴きたい、"Cow Cow Boogie"。
Cow Cow Boogie - 水森亜土
(from『COW COW BOOGIE』)
H:うわー、おもしろい…すばらしいね。
越:うん。すごくいいですよね。
H:音も良いよね。
O:オーディオパークという…深沢のほうにあったオーディオマニアの方がやっていたスタジオ…なのかな?蓄音器が100台くらいあって、SP盤がどわーっと並んでて。そこにホールみたいのがあって、スタジオレコーディングが出来て。
H:知らなかった。
O:昔、十数年前に行ったことがあって。SPレコードコンサートみたいな…行くともう、瀬川さん(瀬川昌久)級のおじいちゃん・おばあちゃん…音楽業界、ジャズ界、映画業界をリタイアされた方々がみんな集まってて。お茶とお菓子を飲みながらSPを聴くという…(笑)
H:いい時代だね。
越:うん。
O:すごくいい感じでしたね。
H:でもそんな感じの音が出てるよね。ホントに音が好きなんだろうな、という。いやー、それにしても先輩だよ。水森さん。
越:ね、ホントに。
O:すばらしいですよね。いまのが2008年の録音。
H:わりと新しいよね。なんか、ご挨拶に行かないと…(笑)
越:(笑)
O:ね、ライヴ観に行きたいですけどね。
越:YouTubeにちょっとだけ観れるけど…
O:最近はちょっとやってないみたいですけどね。コロナで…
H:そうでしたか…
O:よくよく考えたら僕、1枚ジャケットをやったことがある、というのを思い出して…(笑)
H:やってるんだね(笑)縁があるなぁ。おもしろい。
H:じゃあ、またひとつ…
越:はい。じゃあ次はパトリシア・スコット(Patricia Scot)という人で…ノエル・カワード(Noël Coward)の曲で"Mad About The Boy"というのを。
H:ノエル・カワードね。「臆病」っていう意味なんだよね、「Coward」って。
Mad About The Boy - Patricia Scot
(from『Once Around the Clock』)
H:いやー、さらに落ち着いちゃったな。
越:これはなんか、ナイトクラブっていう感じですね。
H:まぁ、行ったことないけどね。
越:(笑)
O:行ってみたい…(笑)
越:昔のシカゴのナイトクラブとかで活躍してた人なので…
H:こういうシンガーになりたいんでしょ?
越:うん、いいね。大人の…遠いなぁ(笑)
O:(笑)
H:どんどん時間が経っちゃって…最後の曲らしいな。
O:あら…
H:なんか、日本の女性歌手の…
O:じゃあですね、48曲ぐらい入ってるすばらしいCDが出たんですけど。沢村みつ子さんという。
H:復刻版ですよね。沢村みつ子さんって…子どもの頃、テレビで観たりしてたよ。
O:1942年生まれで、6歳ぐらいのときから沖縄の進駐軍の将校クラブで歌うようになって。アメリカに渡って…「ジュディ・ガーランド・ショウ(The Judy Garland Show)」に出たりとかして。
H:あ、そうだったんだ。知らなかった。
O:で、日本コロムビアと契約してレコードにたくさん吹き込みをしていて。向こうの映画にも何本か出ていたり。
H:あ、ホントに?へぇ。
O:きょうは…『ラスヴェガスで逢いましょう(Meet Me in Las Vegas)』という1956年の映画があるんですけど、その中で沢村さんがダン・デイリー(Dan Dailey)といっしょに歌っている曲の日本語カヴァー。"マイ・ラッキー・チャーム"という曲を。
H:それは初めて聴くなぁ。じゃあそれを聴きながら、また来週ということで…
マイ・ラッキー・チャーム - 沢村みつ子
(from『沢村みつ子 スーパー・ベスト』)
O:13歳とかですよ、これ。
H:え!すごい…(笑)
越:ジュディ・ガーランドみたい…(笑)
O:YouTubeにこのシーン上がってるんで…それを見るとほんとに小っちゃい子どもが…(笑)すばらしいですよ。
H:ホント?いい感じだね。
2021.03.07 Inter FM「Daisy Holiday!」より
手作りデイジー🌼#18
(以下、すべてH:)
はい、細野晴臣です。きょうは忙しなくなりますよ?小中学生のときに聴いていた音楽をずっと特集してますが、きょうはカントリー&ウェスタンです。最初の曲、フロイド・クレイマー(Floyd Cramer)の"On The Rebound"。1961年。
On The Rebound - Floyd Cramer
前回紹介しそびれてました、ブーツ・ランドルフ(Boots Randolph)のサックス。"Yakety Sax"です。1963年。
Yakety Sax - Boots Randolph
ブーツ・ランドルフは「ヤケティ・サックス」というスタイルを確立した人なんですけど、やはり元はコースターズ(The Coasters)のキング・カーティス(King Curtis)の影響があると思います。まぁ、そこら辺は解説に詳しく書きたいと思います。
それで、こういうのは「ヒルビリー(Hillbilly)」スタイルだと僕は思うんですけど。「ケイジャン(Cajun)」というのはフランス系で、ヒルビリーはアイリッシュ系ということになってますね。いま流れてるのもヒルビリー系…アイリッシュです。2016年に公開された『ブルックリン(Brooklyn)』という映画。これがすばらしかったんですけど、その中のダンスパーティーのシーンでサックスを吹いているのがシーマス・オドネル(Seamus O'Donnell)という人です。"Yellow Rose of Texas"。
The Yellow Rose of Texas - John Carty, James Blennerhassett, Paul Gurney, Seamus O'Donnell and Jim Higgins
(from『Brooklyn: Original Motion Picture Soundtrack』)
門間さん(門間雄介)の本の29ページ…だったと思うんですけど、僕が中学1年生のときに初めて聴いたヒルビリー系の音楽。これをコピーしてギターで弾いていたのが、ハンク・ウィリアムズ(Hank Williams)の"Kaw-Liga"。
Kaw-Liga - Hank Williams
ビッグ・ママ・ソーントン(Big Mama Thornton)のヒット曲、"Hound Dog"。プレスリー(Elvis Presley)もやってましたね。それのヒルビリー・スタイルで…トミー・ダンカン&ミラー・ブラザーズ(Tommy Duncan & The Miller Brothers)。
Hound Dog - Tommy Duncan & The Miller Brothers
さらに古い録音なんですけど…僕もこれをカヴァーしたんです。ジェシ・アシュロック(Jesse Ashlock)のディプレッション・ソング、"My Bank Acount Is Gone"。
My Bank Acount Is Gone - Jesse Ashlock
次はもっと古い曲ですが…ウェスタン・スウィングのはしり、アル・デクスター(Al Dexter)の"Pistol Packin' Mama"。
Pistol Packin' Mama - Al Dexter & His Troopers
スピーディ・ウェスト(Speedy West)とジミー・ブライアント(Jimmy Bryant)のすばらしい演奏。"Stratosphere Boogie"。
Stratosphere Boogie - Jimmy Bryant, Speedy West
このような、粋なウェスタン・スウィングが花開いたのが1950年代ですね。次はテックス・ウィリアムス(Tex Williams)の"Smoke, Smoke, Smoke"。これは僕の"No Smoking"の元ネタと言ってもいいです。
Smoke Smoke Smoke (That Cigarette) - Tex Williams
1950年代、60年代。スターたちが星の数ほどいましたね。ホントに豊かな音楽の時代だったと思います。もうそれは失われてしまったんでしょうか?いや!いましたいました。ディーク・ディッカーソン(Deke Dickerson)の"Ecco-Fonic"!
This Is "Ecco-Fonic" - Deke Dickerson
ディーク・ディッカーソンという人。このギタリストはホットロッド、ロカビリーみたいなことを言われてますが…1990年代から活躍している人で。てっきり昔の人だとばっかり思ってました。いや、頼もしいですね。
では、60年代に戻りまして…とても肯定的な歌を歌う、ボブ・ルーマン(Bob Luman)の"Let's Think About Living"。
Let's Think About Living - Bob Luman
次は毎日のように聴いていたマーティ・ロビンス(Marty Robbins)のヒット曲です。"White Sport Coat"。1957年。
White Sport Coat (And A Pink Carnation) - Marty Robbins
きょうの最後の曲は、少しクールダウンして…エルトン・ブリット(Elton Britt)の"Trip To The Moon"。
Trip To The Moon - Elton Britt
2021.02.28 Inter FM「Daisy Holiday!」より
H:こんばんは、細野晴臣です。きょうはですね…初めて来て頂いた斉藤和義さん。よろしく。
和義:お願いします。
H:ひさしぶりですね。
和義:おひさしぶりです。
H:いつ会ったのかはちょっと憶えてないけど…ステージでよく会ってたよね。
和義:そうですね。あとは1回、番組で…いとうせいこうさんの番組。
H:あ、そうかそうか。そういうこともあったね。
和義:たぶん、お会いするのはそれぶりな気がしますけど。
H:そうだね。ちゃんと、じっくり話したことはないよね(笑)
和義:そうですね。打ち上げでチラッと…ぐらいですかね。緊張します。
H:いやいやいや…(笑)
和義:よく聴いてるんです、この番組。細野さんが紹介した曲とかをよく買ってます。
H:あ、ホント?(笑)うれしいね。
和義:ぜんぜん知らない人ばっかりかかるんで…すごい勉強になってます。
H:そうか。おもしろいな、それ。ぜんぜん…どういう音楽を聴いて育ってきたのか知りたいんだけど。
和義:はい。
H:世代的には僕と2周りくらい違うのかな?
和義:いま54歳なので…
H:あ、そっかそっか。じゃあベテランだなぁ、もう。
和義:ベテランではないですけど…ちょうどビートルズが来日した年生まれなんですよね。
H:そうなんだね。それはわかりやすい。
和義:それこそ歌謡曲が好きでしたし…ギター始めたころ、最初はフュージョンブームみたいなものがあったので。高中さん(高中正義)とかね。"BLUE LAGOON"が弾きたくてギターを始めました。
H:やっぱり最初からギターなんだね。
和義:そうですね。
H:でも、いろんな楽器やるんでしょ?
和義:まぁ、どれもテキトーに…
H:じゃあおんなじだ、僕と。
和義:いやいやいや…
H:ドラムやったりね。トランペットって書いてあったな、どこかに。
和義:小学生のときに鼓笛隊みたいのをちょっとやって。最近またできるかな、と思ったらぜんぜん…
H:あんまり似合わないかもね(笑)
和義:そうですね(笑)
H:やっぱりギターがいちばん似合うね。
和義:細野さんは最初ギターですか?ベースではなくて。
H:うん。最初からベースっていう人はあんまりいないね。
和義:そっか。
H:ギターやってて…誰も弾かないじゃない、ベースって。みんなギターで。
和義:まぁそうですね。
H:津軽三味線みたいにみんなユニゾンでギター弾いてて…(笑)
和義:俺の時代でも…中学生くらいのときに組んだバンドは6人編成だけどギターは4人でしたね(笑)
H:多いよ(笑)
和義:ベースっていう存在をあんまりみんな知らなくて。
H:そうなんだよ。ベースはね…軽く見られてたんだよ。昔はね。「どれがベースの音?」って、普通の人は。
和義:そうですね。でも、意外と…タイトルがわからない曲があったときに、それはどういう曲?って訊いたときに口ずさむメロディーが意外とベースラインだったりする。
H:あ、なるほどね。
和義:だから、意外と聴いてはいるんだろうな、と思って。
H:そうだよね。やっぱり潜在意識に残っちゃうのかね。
和義:そうかもしれないですね。
H:えーと、新作。3/24にリリースですけど、もうかけていいかな?
和義:はい。これはまさに去年の自粛中に…最初はギターとかで作ってたんですけど、いっぱり作りすぎて飽きちゃって。
H:飽きちゃうぐらい?すごいな。
和義:それで曲も録らなきゃな、と思い始めたときにYMOの"BEHIND THE MUSK"を…すみません、細野さんの曲じゃないんですけど(笑)
H:いや、いいんですよ(笑)
和義:あれが前から…もちろんYMOは大好きだったんで。
H:あ、好きだったの?
和義:大好きでした!『スネークマンショー』とかも毎日のように聴いてたし。
H:あー、そうだったのか。
和義:特に『SOLID STATE SURVIVER』はずーっと、あの頃から…
H:中学生ぐらい?それ。
和義:そうですね。小6か中1ですかね。
H:いちばん吸収しちゃう世代だよね。
和義:そうですそうです。で、それを勝手にカヴァーさせて頂いて…
H:そうかそうか。聴きたいな、"BEHIND THE MUSK"。聴いていいの?
和義:はい。
H:聴かせてください。
BEHIND THE MUSK - 斉藤和義
(from『55 STONES』)
H:いやいや、ヴォコーダーだ(笑)歌ってるのかと思ったら。
和義:そうですね(笑)あれを全部生楽器でやってみよう、と思って。やってみました。
H:そうか。クラプトン(Eric Clapton)のアレンジってどんなんだっけな…こういう感じだっけ?
和義:いや、もっと…歌ものですね。マイケル・ジャクソンのも歌ものですね。
H:そうか。
和義:僕は英語がぜんぜんダメなので…
H:そうかそうか。あれ?でもロサンジェルスのレコーディング、どうだったのかな?それがすごい気になるんだけど。それはいつやったんだっけ?
和義:えーと、ロスは5年ぐらい前ですかね。2015年ぐらいに…チャーリー・ドレイトン(Charley Drayton)というドラマーがいて。キース・リチャーズ(Keith Richards)がエクスペンシヴ・ワイノーズ(The X-Pensive Winos)というバンドと最初のソロアルバムを出したときに…
*1988年発表『Talk Is Cheap』。
H:あー、そこら辺は知らなかったな。
和義:スティーヴ・ジョーダン(Steve Jordan)もドラムで。そのチャーリー・ドレイトンとベースとドラムがテレコになったりして。
H:うんうん。
和義:そのチャーリー・ドレイトンがすごく好きで。前にも、2000年初期ぐらいにもいっしょにやってもらったりして。で、久々にまた彼とやろうということで[ロスに]行って。
H:そうかそうか。
和義:で、なぜか彼はダリル・ジョーンズ(Darryl Jones)さんの家に居候してたんですよ。そこで3曲ぐらい…ダリルさんも来てくれて。
H:来た?豪勢。僕も一昨年ロサンジェルスでライヴやって。最近そのライヴ盤が出ましたけど。
和義:めちゃめちゃ盛り上がってるやつですよね(笑)
H:そうですね。あれはヤラセじゃないですから(笑)
和義:歓声がすごいですよね(笑)
H:そのときにコーディネートしてくれた日本人の人がね。
和義:あ、洋平ちゃんですか?鹿野洋平。
H:鹿野洋平くんじゃなくて…洋平くんだったかな?その情報は。あ、そうだ。僕もよく知ってる人だからね。鹿野くん。
和義:うんうん。
H:そしたら「斉藤さんが来ましたよ」と。彼がやったんだっけ?コーディネート。
和義:そうです。何曲かギターとベースも弾いてもらって。
H:そうか。そのときに…ジョー・ヘンリー(Joe Henry)のスタジオなの?どこでやったの?
和義:えーとね、エンジニアの…
H:エンジニアはフリーランド(Ryan Freeland)っていう人かな?違うかな。
和義:誰だったっけ。名前忘れちゃった…
H:ジョー・ヘンリーがすごい好きなんで。よく一緒にやってるエンジニアがサイトで調べて…どんな機材使ってるのか、とかね。で、そのページに「Kazuyoshi Saito」っていう写真があったんだよね。
和義:あ、そうですか。
H:そこに行ったんでしょ?たぶん(笑)
和義:行きましたね(笑)
H:(笑)
和義:一軒家でした。
H:あー、そうだよ。よさそうだよなぁ。行きたくてしょうがない、そこ。
和義:一軒家で、スタジオっていう感じじゃなくて。自分の家族が住んでる家が隣にあって。そのガレージを改造したような…
H:ロサンジェルスにはそういうところ多いよなぁ。んー。
和義:だからあんまり大きな音はずっと出せないんで夜9時までとか。
H:あ、そうなんだ(笑)
和義:だからでかい[音量の]トラックとかを録るとブースの中まで聞こえてきちゃうような感じでしたけど…でもよかったですよ。
H:そうなんだ。良いところでやったなぁ…
和義:2階がコンソールルームになってて、1階がブースで…ブースといってもそんなに広くなくて。
H:あ、意外だね。広くないところでもドラムセット置いたりできるわけね。
和義:ドラムのブースがいちばん広くても、まぁ8畳ぐらいな感じで。あとは2畳もないようなブースが3つぐらいあって。
H:へぇ。ミックスもしたの?
和義:ミックスは日本で。
H:あ、そうなんだ。
和義:ロスのなんていう地域なのかな…
H:僕もよくわかんないな。
和義:海よりももっと内側のほうだったんで。で、ロスのわりに行ってた時期はずーっと曇ってたんで。
H:最近曇ってるんだよね、ロサンジェルスって(笑)
和義:そうですね。なんか千葉で録ってるみたいな感じで。
H:(笑)
和義:ずーっとそこにいたし、どこにも出かけなかったんで。ロスでやってる気がしなかったですけどね。
H:それはまためずらしいね(笑)
H:そのときに洋平くんが言ってたけど…タバコの話していいかな。吸うよね?
和義:ガンガン吸います。
H:おんなじだ(笑)外国行くとすごい大変じゃない、旅は。どこも吸えないじゃん、ホテルは。
和義:そうですね。
H:で、吸えるところを探すんだよね。探すでしょ?
和義:探します、探します。
H:その探したっていう話を聞いたんだよね(笑)
和義:はいはい…(笑)すごい安ホテルみたいなところで…
H:すごい、環境が悪いところなんじゃないの?
和義:そうでした。モーテルみたいな…
H:とにかくタバコ優先なんだね(笑)
和義:そうですそうです(笑)すぐ吸えるように1階にして…
H:いやぁ、気持ちわかるわ(笑)
和義:そのときはまだ部屋でも吸えたんですけど、もう今は完全にダメで。
H:あ、ホント?僕はね、ベランダがあるとこっそり吸っちゃうしね。
和義:あー、ですよね。でもアメリカ人もバンバン吸ってますよね。
H:道はね。道はもう、自由だね。
和義:そうですよね。歩いてるとぜったい「1本売ってくれ」とかって言われます(笑)
H:ホント?(笑)
和義:「1本1ドルで売って」みたいな。
H:なんだそれ(笑)ずいぶん高いな、1ドル。
和義:でも向こうにすると…1箱で1,000円以上しますからね。
H:そうかそうか。
和義:へぇ、よかった。タバコみんな止めていくじゃないですか。
H:ホントにみんな…全員止めたね。
和義:とくに歌う人とか。俺の周りみんな…つい5,6年前までとか…やっぱり50歳を機に止めたりする人も多くて。
H:ね。
和義:で、「普通、止めるでしょ」とかみんなに言われるんですけど。
H:言われるよ。んー。
和義:普通、止めないでしょ、と思うんですけどね(笑)
H:どっちが「普通」なのかね(笑)
和義:うーん。なんか、喉に悪いとかって言いますけど。
H:それはね、嘘だよ。
和義:嘘ですよね。
H:お酒はアルコールで焼けるんだよね。だからちょっと[声が]低くなってるんだよね。
和義:なるほどなるほど。
H:でも、イタリアのオペラ歌手とかみんなタバコ吸うからね。
和義:あ、そうですか。へぇ。そう、喉が逆に鍛えられていいんじゃないか、と思ってるんですけどね。
H:あのね、いろんな良いことがあるよ(笑)
和義:(笑)
H:ここでしか言わないけどね(笑)免疫を少し上げるからね。やっぱり毒だからね。多少の毒を入れると免疫が騒ぐっていうか。
和義:なるほど。そうだと思います。よかった、細野さんのお墨付きがあれば堂々と吸えますよ、これから。
H:いや、お墨付き…(笑)いろいろと理屈を考えないと吸えないから(笑)
和義:(笑)
H:いやー、タバコは嫌いな人多いから。
和義:多いんですかね。
H:タバコの話するだけでももう煙い…みたいなね。
和義:いやー、ホントにね。でも売ってるんだからね。合法なんですから。
H:そうなんですよ。で、僕はお酒が飲めないんだよ。
和義:あー、そっかそっか。
H:飲むでしょ?両方行く?タバコとお酒。
和義:そうですね。でも、どっちかやめろって言われたら酒止めますね。確実に。
H:あ、ホント?(笑)
和義:お酒は普段は…ツアー中だと打ち上げとか飲んじゃってますけど。特に去年の、自粛になっちゃってからは…家に居たらまぁ飲まないし。だからあんまり必要なかったんだな、と思いますね。
H:そうなんだね。だって、お酒のほうがいろんなことが起こるよね、街で。泥酔して道で寝ちゃったり。タバコ吸って街で寝る人はいないじゃん。
和義:そうですね。
H:まぁそんな話はいいか。はい。
和義:(笑)
和義:そういえば一昨年でしたっけ?六本木でやってた細野さんの展覧会というか…
H:展覧会かな?あれ(笑)「細野観光」っていうやつだ。
和義:あれ行ったんですけど、すごいですね。物持ちの良さというか…(笑)
H:みんなに言われるんだよね(笑)
和義:小学生のときに描いたマンガそのままとか。
H:あんなものがあるなんて自分じゃぜんぜん知らなかった。どこかに入れてあるんだね。
和義:そうなんですか。
H:で、捨てないんだよ。捨てられないの。だから、部屋が散乱してるタイプの…片付けられない人間ですよ。
和義:いやいや、それにしてもあんなに…まぁ楽器が取ってあるというのはわかるんですけど。
H:なんでも取ってあるというのは母親の遺伝子かもしれないね。
和義:おやー、あれはすごくおもしろかったです。
H:ありがとうございます。
H:音楽…このアルバム、「フィフティーファイヴ」と読んでいいの?
和義:そうですね。
H:『55 STONES』。『202020』…なんて読むの?(笑)
和義:「ニーマル・ニーマル・ニーマル」っていう…これは去年出したやつですね。
H:そうだね。最近、数字の人が増えたなぁ。いま気が付いたけど。全部新曲…あ、"純風"が入ってるね。わりと毎日聴いてるね、僕。テレビで(笑)
和義:あ、そうですか(笑)
H:結構観ることがあるんだよね(笑)
和義:へぇ、高田純次さんの…
H:そう!毎日聴いてるな。ちょっと聴きたくなるんだよね、そういうのはね。
純風 - 斉藤和義
(from『55 STONES』)
和義:1曲かけたかったのは、細野さんに以前ベースで参加して頂いた曲で…
H:"幸せハッピー"?
和義:あ、それもカヴァーさせて頂いたんですけど…"行き先は未来"という曲があって。林さん(林立夫)にドラムを叩いて頂いて。
H:そうだそうだ。それ聴きたいな。
和義:前にせいこうさんとかの番組に出たときに、いつかベースを弾いてください、という話をして。その後に実際にお願いしたらお受けして頂いて。
H:はい。やったね。
和義:そのときは自分が弾いたベースをデモでお渡ししたんですけど、そのときのヒヤヒヤ感といったらなかったですよ。
H:(笑)
和義:細野さんに弾いてもらうのに自分のベースのデモって…入れなくてもいいだろうなと思いながら。
H:ぜんぜん気になんなかったな。
和義:で、帰ってきたらそれが…
H:おんなじように弾いてた?(笑)
和義:いやいや(笑)ぜんぜんまるっきり感じが違ってて、うわぁ、さすがだ…と思って。
H:いやいや…いろいろ話したいんだけどもう時間が来ちゃったな。曲はかけられないかな?大丈夫?かけちゃおうかな。じゃあその曲を聴いてお別れしようかしら。
和義:はい。
H:じゃあ、また来てもらうしかないな。30分なんで。
和義:あ、お願いします。
H:ありがとね。斉藤和義さんでした。
和義:はい、ありがとうございます。
行き先は未来 - 斉藤和義
2021.02.21 Inter FM「Daisy Holiday!」より
H:こんばんは。細野晴臣です。さぁきょうはですね、ひさしぶりに…LITTLE CREATURESの新譜を出しました、青柳拓次くん。いらっしゃい。
青柳:どうもー、おひさしぶりです。
H:ひさしぶりだね。いつの間にこっちに移住…移住っていうのはヘンだけど(笑)
青柳:(笑)
H:ずっと沖縄に住んでると思ってたから。
青柳:ええ、戻ってきました。3年ぐらい前に。
H:もう随分前だね。まぁ、この1,2年ってあっという間に過ぎちゃったけどね。
青柳:不思議な時期ですね、今は。
H:去年は何もなかったとおんなじような…活動しないしね。
青柳:そうですね。
H:じゃあ、LITTLE CREATURESはいつレコーディングしたんですか?
青柳:これはね、夏頃ですね。去年の。
H:あ、そうなんだ。
青柳:普通に顔を合わせてスタジオに入り…わりと普通に録音しました(笑)
H:普通だよね。それは普通でできるよね。なんでやらなかったのかな、僕も。
青柳:(笑)
H:タイトルは『30』。どういう意味かな?(笑)
青柳:もうホントにそのまま、30周年なので…(笑)
H:そっかそっか。30歳っていうわけじゃないよね、まさか(笑)
青柳:(笑)
H:30周年!随分経ったねぇ。
青柳:そうですね。なんだか…芸人30年、という感じです。
H:メンバーはみんな東京だよね。
青柳:そうですね。
H:まぁちょっと最初にこの『30』から、LITTLE CREATURESで…なにがいいでしょうね。おすすめ。
青柳:じゃあ、いちばん最後の"踊りかける"というのを。
H:じゃあ、それを聴いてみたいと思います。お、良い音だね。
踊りかける - LITTLE CREATURES
(from『30』)
H:おお。カッコいいね、単純に。
青柳:ありがとうございます。
H:LITTLE CREATURESは3人だよね?
青柳:そうですね。
H:僕はベースの鈴木正人くんとはいっしょにやったことあるし、青柳くんともやってるし…もう一方とはやってないんだよね。
青柳:あ、栗原(栗原務)ですね。そういえば、そうですか。
H:去年の1年間って、じゃあ、東京なの?
青柳:東京です。国立…(笑)
H:国立。どんな生活をしてたの?1年間。夏はこのレコーディングをやってたわけだね。
青柳:ええ。そうですね…もうホントに、家でコンピューターを前になんか作ってましたね。劇伴[の仕事]とか多かったので、それをじっと部屋の中で…(笑)
H:じゃあ僕と似たような感じだね。そうなんだよ、音楽作ると楽しいよね、いつだってね(笑)
青柳:そうですね、作ってる間はちょっと気持ちがね…
H:他のメンバーもみんな元気そうだね。よかったよかった。
青柳:そうですね。なんとかやってます。
H:沖縄は今、気持ちがいいんじゃない?そうでもないのか。[感染者数は]増えてるのかな。
青柳:徐々に来てますけど…やっぱり観光の島なので。人の出入りがね…
H:青柳くんが住んでたところは山原(やんばる)のほうだっけ?人があんまりいない…
青柳:そうです!けっこう奥地の…(笑)
H:すばらしいところだよね。
青柳:いいとこでしたね。
H:あそこら辺のシャーマンのおばあちゃんとかと僕、知り合いになったりしてたんだよ。
青柳:あ、ホントですか。
H:山を案内されたり。
青柳:けっこうお祈りする場所が…滝とかあったりとか。
H:そうそう。
青柳:へぇ。それはいつ頃ですか?
H:それはね…もう10年以上前だな。だからそのおばあちゃん、友達になったんだけど今はもういないんだよね。
青柳:どうしてるんですかね。
H:いや、もういなくなっちゃった。かなりご高齢だったんで。
青柳:そうですか。なんか、いろいろ…普通の生活の中にそういう方がいたりとか。
H:周りにもいたでしょ?
青柳:いましたいました。いろんなタイプの方がいましたね…(笑)
H:なんか相談したりしたの?
青柳:訊いたりしたことはありますね。これからどんな風にしてったらいいですかね、とか…(笑)
H:(笑)どう?東京は。
青柳:まぁ、また気持ちは戻ってきてますね。
H:そっかそっか。切り替えられるよね。
青柳:やっぱり、生まれがこちらなので。
H:生まれは何区なの?
青柳:僕は中野区です。実は今、仕事場が中野にあって。また戻ってきてる感じでなんか不思議ですね(笑)
H:あ、ふるさとに(笑)なんか、一周するようなことはあるからね。
青柳:僕は今年で50歳になるんですけど…
H:まだ50か…
青柳:(笑)
H:いや、僕から見るとね(笑)若いな。
青柳:細野さんが50のときはどんな感じだったんですか?
H:なにやってたっけ…40代の続きをやってたような感じだよね(笑)50歳ってあんまり区切りがつかないというかね。60になるとね、なんか区切りがついちゃうんだけど。30代からずっと引きずって50代に行っちゃう、という感じで。
青柳:なるほど、そうなんですね…
H:そうじゃない?そうでもないかな。
青柳:どうなんだろう…このコロナ禍の不思議な…(笑)
H:これはホントに、めったにできない体験をしてるよね。
青柳:そうですね。それでいろいろと考えることがあったりもしますけど。
H:なにを考えてるか知りたいです(笑)
青柳:(笑)
青柳:ひとつ質問してもいいですか?
H:もちろん。
青柳:細野さんはプロジェクト…これからやりたいこととか。いくつか既にあったりするんですか?
H:うっすらとね。一昨年までやってたようなことはもう、アメリカのツアーで…まぁ、ツアーといってもニューヨークとロサンジェルスだけだけど。あとロンドンとか。そういうので一応、締めちゃったというか。完成しちゃったな、という気持ちがあって。
青柳:ええ。
H:それまではアメリカの古い音楽とかブギウギをやってたけど、去年からはやっぱり変わっちゃったね。その前にね、90年代に一度、アンビエントの頃に変わっちゃったんだよね。リセットされたというか。それまでやってたいろんなことをやめちゃって、アンビエントばっかりやってたの。そこからまた段々陸に上がってきて。
青柳:(笑)
H:色がついてきて、また自分の20代の頃に好きだったことをやり出したりして。それでブギウギをやったりして。でも、やっぱり去年の1年でそれは真っ白になっちゃったな。そのときになにを考えてたんだろう…手作りでラジオをやってて。それまでラジオは好き勝手やってたの。誰が聴いてるかはあんまり考えずにね(笑)思うままに好きな曲をかけてたの。
青柳:ええ。
H:でもひとりで、手作りでここで作るようになってから、聴いてる人のことを考えるようになったわけ。つまり、世の中のことを考えるようになったというか(笑)それでやっと、同時代の人たちがなにを考えてるのかにすごく興味が出てきて。
青柳:なるほど。
H:で、耳に入ってくる音楽は内省的なものがすごく多くなって。自分の部屋で作ってるような音になったりとか。自分もそうなんだなぁ、と思って。
青柳:ラジオを通じたひとつのコミュニケーション…演奏とかではなく。
H:そう。音楽を作る以前の話だよね。自分がどうなってるのかはよくわからないんだけど…とにかく、今までのことじゃない、ということは確かだね(笑)
青柳:んー、そうですね。これは皆さん、音楽家の方は思うんですかね。この時期ね。
H:そうだと思うよ。なんか…調子に乗って続けられない、という感じがあるね(笑)
青柳:(笑)
H:きっとね、去年がそういうことじゃなければ調子に乗って続けてたと思うんだよね。
青柳:音楽に限らず、広がるところまで、複雑になるところまでグーッて、なんでもなって…
H:極限だったね。ピークだった。
青柳:そうですね、ピークでしたね。だからここでキュッと…
H:そうそう。いろんなことが見えるようになってきてるしね、今。音楽だけじゃないんですけど。政治とか経済とか。アメリカで起こってることとかね。ああいうことが音楽にどういう影響があるのかって、やっぱり考えるんだよね。で、アメリカのショウビジネスってすごく影響を受けてるじゃない?
青柳:そうですね。
H:映画がいちばん影響を受けてるかもしれない。音楽もメジャーな、派手な動きが聞こえなくなってきてるしね。逆に個人的な音楽が非常に届くようになってきてる。
青柳:そうですね。それこそテイラー・スウィフト(Taylor Swift)みたいな大メジャーな人もかなり内省的な…
H:『Folklore』作ったりね。でも売れるんだけどね(笑)
青柳:そう、それでも売れるという…(笑)
H:そういうさなかで作ったアルバムというのは貴重だと思うんで…もうちょっと聞かせてもらおうかな。
青柳:じゃあ…"あさやけ"という曲をお願いします。
あさやけ - LITTLE CREATURES
(from『30』)
H:斬新な終わり方だね(笑)
青柳:スッ、と終わってますね(笑)
H:この"あさやけ"とか…去年の印象は自然がすごいきれいだったなぁ、と思って。
青柳:そうですね、空とか…
H:自然が生き生きしてて、人間がショボンとしてて(笑)
青柳:(笑)
H:[去年の]桜の季節が忘れられないんだよね。この辺りもそうだけど、西郷山公園とかね。代官山にあるんだけど。あそこまでずっと…桜のところにいたな。
青柳:それは散歩ですか?
H:散歩ね。けっこうやってた。で、桜はクマリンというエキスを放出するんだよね。
青柳:なんですか?それ。クマリン?
H:僕も知らなかったんだけどね。花びらにもあるのかな、幹から出てるらしいんだけど。周りの植物を抑制する成分なんだって。自分が咲き誇るために。
青柳:えー?
H:ということは、ウイルスも抑制するんじゃないかな、と思って…桜があると見に行ってたね。
青柳:それは初めて聞きましたね(笑)
H:うん。知らないことが多いんだけどね、僕も。まぁ東京は自然がけっこうあるんだな、と思って。意外とね。
青柳:あー、実は…なるほど。そうかもしれないですね。でも、散歩とかするようになりましたね、意識的に。
H:だって、3年前に住んでた山原のあたりはもう、すごいでしょ?大自然の中でしょ?(笑)
青柳:自然に襲われるぐらいの…(笑)
H:襲われちゃう(笑)圧倒されるよね。そこで何年いたの?
青柳:僕は8年いましたね。
H:けっこう長いね。じゃあもう、完全にしみ込んでるよね。
青柳:そうだと思います。細胞にちゃんと、沖縄の食べ物が入って…(笑)
H:そうだよね(笑)それはいい滋養というか、いいエネルギーが溜まってるよね。うらやましいね。
青柳:段々抜け始めてる感じもあるんですけど…(笑)
H:まだ大丈夫。
青柳:大丈夫ですかね?(笑)僕は焚火が好きで、沖縄にいる間はずーっと焚火をやってて。
H:いいなぁ…焚火やりたい…すごいやりたい(笑)
青柳:ですよね(笑)それが恋しくて、今はホントに…
H:昔は秋になれば庭でね、いろんなものを…枯葉といらない紙とかお芋とかね。やってたよね。
青柳:いいですね…それが恋しい。
H:それは僕の世代もみんな恋しいかもしれないね。
青柳:あー、そうですか…
H:ところで、この『30』。
青柳:はい。
H:2枚組なんだね。
青柳:そうなんです。1枚はいわゆるオリジナルアルバム。
H:今聴いてたやつね。
青柳:そうです。もう1枚は…まぁ、ベスト盤的な選曲のアコースティックライヴというか、スタジオセッションですね。
H:こっちは英語なんだね。
青柳:そうなんです。初期、中期ぐらいまでは[英語が]多いんです。今もたまに歌いますけど、日本語が多いので…
H:それで、もう1枚頂いたこれは…
青柳:これはドイツ、ミュンヘンのちょっとおもしろいブラスバンドで。
H:ミュンヘン?おもしろそう。
青柳:ちょっと名前が言いにくいんですけど、ホッホツァイツカペレ(Hochzeitskapelle)という…(笑)
H:ぜったい覚えられない(笑)
青柳:「結婚式のバンド」みたいな、そんな意味らしいんですけど。
H:でもプロなんだよね?
青柳:はい。元々は皆さん尖った音楽というか…インディーの、力のあるミュージシャンそれぞれが集まって、新たなコンセプトで。冠婚葬祭に出ていく音楽、みたいな…(笑)
H:どうやって知り合ったの?
青柳:自分が過去にイギリスからアルバムを出したことがあって。そのアルバムを彼らが聴いててくれて。
H:あ、いい関係だね。
青柳:それで声をかけてもらいました。
H:向こうからね。それはすごいラッキーというか、いい出会いだね。
青柳:そうですね。楽しい関係というか。それで曲を書かせてもらって、彼らと一緒に演奏する、という。
H:じゃあミュンヘンまで行ったわけね。
青柳:はい、そうですね。
H:聴きたいね。聴いていいかな?
青柳:ぜひぜひ。
H:じゃあ、なにがいいでしょう?
青柳:えーと…
H:10曲入りで、『Wayfaring Suite』というアルバムタイトル。
青柳:じゃあ2曲目、"Part.1"というのを。
H:じゃあこれを聴きながら…また今度来てくださいね。
青柳:ぜひ!ありがとうございます。
H:では最後に"Part.1"を聴いて…青柳拓次さんでした。
青柳:ありがとうございました。
Part.1 - Hochzeitskapelle & KAMA AINA
(from『Wayfaring Suite』)
2021.02.14 Inter FM「Daisy Holiday!」より
手作りデイジー🌼#17
(以下、すべてH:)
はい、こんばんは。細野晴臣です。先週やったばっかりでまたやるの?っていう感じなんですけど(笑)先週は子どもの頃の音楽体験[特集]をやってて、なんか次もやりたくなっちゃって。1か月待てないんで、つい作ってるんですけど。まぁでも、週に1回やるのは大変でしたね、去年の4月頃は。それは無理なんですけど、時々こうやって続けてやりたくなることがあるんで悪しからず…ということで。
そして先週、5,6歳の頃から中学生頃までの音楽体験をずらっと…まぁ、ホントにざっとやったんですけど。今回はその頃聴いていた音楽がいかに今の自分に影響を与えてくれているか、というサンプルを…オリジナルとカヴァーを並べて聴いていきたいと思います。
最初はマーガレット・ホワイティング(Margaret Whiting)の"Good Morning, Mr. Echo"。1951年のヒットです。続けて、1996年にコシミハルと一緒にやったスウィング・スロー(Swing Slow)でもおんなじ曲をやってますので、ぜひ聴いてください。
Good Morning, Mr. Echo - Margaret Whiting
Good Morning, Mr. Echo - Swing Slow
(from『Swing Slow』)
次は"I'm Leaving It Up To You"という曲。1963年のヒット曲でデイル&グレイス(Dale & Grace)、そしてスウィング・スローです。
I'm Leaving It Up To You - Dale & Grace
I'm Leaving It All Up To You - Swing Slow
(from『Swing Slow』)
1950年代初頭にザ・コースターズ(The Coasters)というドゥーワップグループが登場して、軽快なノヴェルティソングが大流行りしました。その彼らのやってるリズムを継承している、という感じで聴いてください。コースターズで"Yakety Yak"。
Yakety Yak - The Coasters
このコースターズの"Charlie Brown"という曲をカヴァーしているのがザ・コーデッツ(The Chordettes)。
Charlie Brown - The Chordettes
1964年、ロックシンガーのロイ・ヘッド(Roy Head)による"Teen-Age Letter"。
Teen-Age Letter - Roy Head & The Traits
コーデッツと並んで…お嬢さんもやってますね。ペイシェンス&プルーデンス(Patience & Prudence)も"Little Wheel"。これは1969年です。
Little Wheel - Patience & Prudence
1998年の日本にもこのスタイルは受け継がれてます。まぁ、僕が受け継いだんですけどね。では森高千里で"Hey! 犬"。
Hey! 犬 - 森高千里
(from『今年の夏はモア・ベター』)
ポップスのいろんなパターンがあるんですけど、そういうのは結構伝統的なものになってますが…最近では受け継がれてる感じはしませんね。リンク・レイ(Link Wray)のやってる"Comanche"という曲、これは全然最近まで知らなかったんですが…なんかおんなじことを僕もやってるんですよね。"Comanche"。
Comanche - Link Wray & The Wraymen
このリンク・レイは1959年のレコーディングですね。次はシーナ&ザ・ロケッツ(SHEENA & THE ROKKETS)で1997年にレコーディングした"INDIAN HEART"という…これは自分でもすごく好きなんですよ。"INDIAN HEART"というタイトルはシーナが付けてくれました。ありがとう。それではこれで…また来月、ということになるのかな。まだこの感じは続くかもしれないんで、ちょっと予想ができませんね。また来週。
INDIAN HEART - SHEENA & THE ROKKETS
(from『@HEART』)