2018.08.19 Inter FM「Daisy Holiday!」より
真夏の夜のホニャララ…
H:こんばんは。細野晴臣です。えーっと、久しぶりですね、岡田くん。
O:こんばんは、岡田崇です。
H:はい。よろしく。
O:よろしくお願いします。
H:新入荷、持ってきてくれましたよね。
O:新入荷…(笑)
H:新入荷っていうか、入荷…なんていうの?新しい音楽を…(笑)
O:いやいやいや…(笑)
H:この夏は大丈夫?暑さ。
O:いやー、もう、ダメ…ダメです。もう、どうしようっていうぐらい。
H:でも、街出るとみんな平気で歩いてるじゃない。
O:信じられない…
H:なんか暑そうにみえないんだよね、人がね。平気で歩いてるんで。まあ、でも、これからずっと夏はこうなるのかなと思うとね。
O:うんざりしますね。
H:だから、悪夢ばっかり見てるんだよね、僕。
O:あ、そうですか。
H:あとで話すよ。
O:はい(笑)
H:音楽ひとつ、ちょっと…入荷したやつを。
O:入荷…まあ、家から持ってきたものですが。じゃあ"Very Nice Is Bali Bali"というですね…
H:んー?
O:これはPatience & Prudenceが1957年に出したものです。
Very Nice Is Bali Bali - Patience & Prudence
H:なるほどね。あのー、ワンコードだ(笑)めずらしいよね、画期的だな。
O:短いし。
H:うん。ポップミュージックでワンコードって、この当時は考えられない…(笑)まあ、展開はしてるんだけどね。ルーツ音がずっと同じ…ミニマルになってますよね。すごい。新鮮でした。
で、まあ今の音楽も、ちょっと悪夢っぽいけど…(笑)3つぐらい憶えてんの。1つ目はすごい短いんですけど。
O:ええ。
H:エレベーターに乗ってたんですよ。気が付くとエレベーターに乗ってて、そのエレベーターが延々と落下し続けるっていう…おそろしい夢を見ました。いつか底にぶつかるんだろう、という恐怖のまんまね。ずーっと落ちていくんだ。地獄だね(笑)で、目が覚めて。落ちる前にね。
昔はね、エレベーターがどんどん上がっていって、天井突き抜けて空に飛んでく、っていう夢は見たんだけど。落ちてく夢っていうのはなかなかイヤだね(笑)岡田くんはどうですかね。夢、見るでしょう。
O:夢…でも最近見ないですね。
H:見てるんだけど憶えてないんだよ。
O:昔はよく見てましたけど…
H:どんな夢を見るの?岡田くんって。夢見るおじさん(笑)
O:なんか、松坂慶子に…
H:えー?(笑)
O:すごい昔ですよ。20年ぐらい前かな…
H:いいよいいよ、言い訳はいいから(笑)
H:ばっかばかしい…(笑)
O:そういう感じの夢を見てる時期が…
H:あの舞台の音楽がすごい印象深いから、もう1回聴いてみたいな、と思ってたんですよ。
O:お、では…
Rococo - Raymond Scott
*Performed by Metropole Orchestra
H:ああ、いいな。やっぱりなんか…独特ですね。
O:今のは1942年に書かれた曲ですけど、録音が残ってなくて。盤では出てないんですよね。
H:そうだったの?
O:で、ボー・ハンクスとメトロノーム・オーケストラで、再現盤っていうのが2000年代に出て、その中の…
※引用者註:おそらくメトロポール・オーケストラ(Metropole Orchestra)の言い間違い。2002年の『Kodachrome』か?(未確認)
H:つまりこれは、ボー・ハンクスがやってるってことね。
O:そうです。
H:…全然わかんなかった(笑)音は良かったけど。
O:1942年とかなんで、レコーディング・ストとか。まあ戦争中ですけど、あったんで。
H:あー…
O:この頃の音源ってけっこう、録音されてないのが多くて…
H:無いんだね。そうかそうか…
O:ラジオとかが普及してきたんで、実演家団体が…レコードとかラジオをかけると(自分たちの)仕事が無くなる、と。
H:なるほどね。
O:レコーディング・ストを…2年ぐらい、たしかやったんですよね。
H:そんなに長かったんだ。それはちょっと痛手ですね。なるほど…
はい。えー、2つ目の悪夢。これはね、ちょっと強烈だったんだよな…でもいますっかり忘れちゃったな(笑)
O:(笑)
H:なんだっけな…死んじゃうんだ、そうそうそう。車に乗ってて…車から出て、誰かと話してるんですよ。街で、日本の街ね。東京かな…どこかわかんないけど。そしたら車に誰かが乗って、ワーって行っちゃうんだよ。で、追っかけたの。そしたら、廃車工場に入ってっちゃうのね、車が。で、探しに行くと…車があったんだけど、それは廃車にされてて、もう何年も経ってる古い車だったわけ。自分が乗ってた車が。「あれ?もう、ずいぶん時間が経ってるな」と思いつつ。ふと見ると、そこに大瀧詠一くんが、ニコニコして立ってるんだよ。で、なんか僕は「ああ、もう、自分はこの世にはいないんだ」と思ってね、車に…なんか、いつのまにか新しい車になってて。乗ってくと、街を走ってるつもりが、どんどん空に上がってっちゃう…っていう夢です。はい。
O:………
H:あれ?静かになっちゃった(笑)まあ、笑えないですよね。だからそういう…なんだろうな、死んじゃうこととか、けっこう…子供の頃はよく見てたんだよね。で、30代、40代の頃は見ないんだよね、そういうの。で、また子供心に戻ってきちゃってね。
O:んー。
H:子供の頃って、ガバッ、って起きて、死んじゃうんだ…って思ったね。
O:そうですか。
H:なかった?そういうの。ないか(笑)
O:いやー…
H:ま、人それぞれで…じゃあ、音楽ひとつよろしく。
O:はい。えーっと…じゃあ、Baby Dodds Trioというですね、ドラマーの方なんですが…その人の"Tootie Ma Is a Big Fine Thing"という曲を。
H:まったく知らないですね。
O:ニュー・オーリンズの方ですね。
Tootie Ma Is a Big Fine Thing - Baby Dodds Trio
H:いやー、聴くとすぐニュー・オーリンズだ、っていうのがわかるね(笑)
O:(笑)
H:民俗音楽だよね。ルンバ・ブギといったらもう、ね、ニュー・オーリンズの十八番ですよね。この人は知らなかったですけどね、Baby Dodds。
O:Baby Dodds。
H:ニュー・オーリンズのドラマーっていうと、アール・パーマー(Earl Palmer)がすごい有名ですよね。
O:この人はもっと、ぜんぜん前の人ですね。1890何年生まれ…
H:えー、すごい…なるほど。
では、えー…悪夢。
O:悪夢…(笑)何があるかな…トイレの夢はよく見ますね。
H:あ、聞きたいな。漏らしちゃうやつ?違うか(笑)
O:いや…なんて言うんですかね…個室に入りたいんですけど、すごい幾何学的な形のトイレで、どっから見ても外から見えちゃうじゃん、っていうような個室ばっかで、ここじゃできねぇな、と思って別のフロアのトイレに行って、そこもちょっと、ああ…みたいな(笑)
H:(笑)
O:そういう、ずっとトイレに行きたいんだけど入れない、って言う夢はよく見ます。
H:起きるとそれ、おしっこしたいんじゃないの?そういうわけでもないの?
O:いや、あの…トイレ行こう、って言う感じではありますけど、もちろん。
H:でしょ?だいたいそうなんじゃないのかな。んー。
O:そういう、個室に入れない夢は見ますね…
H:あ、ホント。まあ、異次元の世界だね。なるほどね…
O:おしっこしようとしてなんか、こう…小便の…
H:小便(笑)
O:おしっこの…(笑)
H:小便という言葉を久しぶりに聞いたような気がする(笑)
O:なんか、東急文化会館かなんかのトイレに入るんですけど。おしっこしようとすると、壁が無いんですよ。無くって、崖っぷちになってて…
H:あー、なんかいいね、夢っぽくて。
O:下は川が流れてるんですよ。
H:あー、いいねいいね!(笑)
O:で、おしっこすると、なんか…おしっこしてるんだけど、おしっこと一緒に自分が…
H:おしっこって何回言った?(笑)
O:(笑)トイレの中に入ってっちゃって、下の川に…まあ下水だったのか。
H:ちょっとねえ、すごいわ。負けるわ。
O:流れていくんだけど、その川べりに死体がいっぱい積んであって…っていう、そういう夢を昔見ましたよ。
H:地獄のようだ…いやー、おもしろい。
O:それ、その頃ですよ。松坂慶子に刺青…彫った頃に見た夢ですね(笑)
H:そうか…(笑)いや、おもしろいよ。
O:ホントにそういう夢ばっかを、見てる時期が…
H:そうか、ライバルがここにいたか…誰にも負けないと思ってたんだけど(笑)
O:でも、文化会館のトイレっていうのはたぶん…実際に個室に入った時に、隣の個室から本を差し出されたことがあって…
H:それは夢じゃなくて?(笑)夢より怖いね。
O:夢じゃなくって、その…ゲイ雑誌っていうんですかね。
H:ゲイ?アッー…そういう経験があるわけね。
O:差し出されたんですけど、足でそーっと押し戻した経験があるんですけど。
H:映画っぽいな、それ、なんか…おもしろい経験いっぱいしてますね。
O:でも、そのテーマでもう一個あって。それは現実ですけど。シードホール(SEED HALL)で、ルビッチ(Ernst Lubitsch)の『天国は待ってくれる(Heaven Can Wait)』を観に行ったんですよ。
H:うんうん。
O:で、座ってたら、隣の男の人の方からピチャピチャ音がし出して…香水の匂いもし初めて、首周りに香水を付け始めて…映画中ですよ?で、なんかイヤだなぁ、と思ってたら、そっと手の上に手を乗っけてきて…
H:男性にモテるね。うらやましいね。
O:いやー……
H:それが女性だったらね。
O:握り返すところですけど…いや、わかんないけど…(笑)
H:そうなんだ(笑)
O:焦りましたよ。でも、映画終わるまで(席を)立たずに、身体を真横に向けて…映画終わって即行帰った…
H:手はずっと握られてたの?
O:いやいやいや、振りほどいて…
H:コミュニケーションはないわけね、会話とか。
O:ないですよ!
H:…自分のを話す気力が無くなっちゃった、もう。
O:いやいや(笑)もう1個あるじゃないですか。
H:音楽聴いたらね、じゃあ。
O:じゃあですね…これも絶対に知らないと思うんですけど、Dr.ペドロ・ホセ・ロボ(Dr. Pedro Jose Lobo)というですね…
H:紛らわしい名前だ。
O:この人よくわかんないんですけど、マカオの実業家…
H:マカオ!アジアだ。
O:アジアですね。で、マカオを牛耳ってた人らしくて、金の密輸とかを戦争中にやってて…
H:悪いやつだ。マカオのマフィアみたいな。
H:おお!(『007』の)ゴールドフィンガー!
O:ゴールドフィンガーに出てくる、オッド…なんて言うんだっけ?オッドジョブ(Oddjob)だったかな、その辺の金の密輸の話とかを参考にしたという…そういう、ホセ・ロボっていう人がいて。その人が音楽も作ってるんですね。
H:やってるんだ。参っちゃうなあ。
O:その人のですね、"Jumpa Rhumba"という曲を。
Jumpa Rhumba - Dr. Pedro Jose Lobo / Alvy West & His Orchestra
H:いや、なかなか…おもしろいよね(笑)
O:演奏はニューヨークのアルヴィ・ウェスト(Alvy West)っていう楽団が…あの、(フランク・)シナトラとかのバックとかもやっていた楽団が。
H:で、歌ってる人がトビーなんとか(Tobi Michaels)っていう人、女性がいて…じゃあ、そのペドロさんはなにやってるの?
O:さあ…曲を書いたのか…
H:んー…ま、当時のそういう人たちって陽気だね。
O:そうですね。
H:あのね…時間が無くなったんで、悪夢みたいな話は今度また、ね。
O:えー?(笑)
H:長いんだもん。
O:長いんだ…(笑)
H:長いんだよ。最初から最後まで話すと30分くらいかかる…(笑)
O:じゃあ、特集ですね(笑)
H:そういえば昔、「夢、それはドリーム」っていうのをやってたじゃない。
O:はい。
H:それでちょっと、作ってみようかね。久しぶりに。
O:ぜひ、お願いします(笑)
H:SE込みでね。まあ、じゃあ、きょうはそういうことで。最後の曲、になるかな。うん。お願いしますね。
O:はい。じゃあ、先週がジャンゴ(・ラインハルト)だったので…ガロート(Garoto)という、ブラジルの、同じ時期のギタリストで…
H:ほほう。
O:"Tristezas De Um Violao"、「ギターのかなしみ」という…
H:ちょっと期待しちゃうな。では、これを聴きながら、また来週。
Tristezas De Um Violao - Garoto