2019.10.06 Inter FM「Daisy Holiday!」より
H:こんばんは。細野晴臣です。先週、ジョアン・ジルベルト(João Gilberto)特集をそのうちしたい、と思っていましたが…早速、きょうやります。つきましては、伊藤ゴローくんに来てもらってます。よろしくね。
ゴ:よろしくお願いします。
H:いろいろと…いろんなことを教えてもらいたいんです。
ゴ:いやいやいや…(笑)そんな、教えることは…ないんですけども…
H:いやいや…あのね、ゴローくんのギターに惚れてるんですよね。
ゴ:いやぁ、そんなこと言って頂いて…うれしいですけど(笑)
H:いや、ホントに(笑)何曲か僕、いっしょにやって。
ゴ:はい。
H:それで…なんだろう、突然「歌ってくれ」って頼まれたんだよね(笑)
ゴ:そうですね(笑)
H:すごい難しい曲だった(笑)
ゴ:いや、もう細野さんしかないな、と。
H:なんでそう思ったの?だって僕、あんまりそういうのやってないし。まあでも、おかげでやる気が出てきたっていうか。
ゴ:(笑)
H:ボサ・ノヴァ。
ゴ:いやぁ、すごく良かったですよ。
H:あ、そうですか?
ゴ:コンサートも。ね。ライヴでもやりましたね。
H:ね、よかったね。
ゴ:あのときもすごく良いライヴでした…
H:誘ってくれてうれしかったんですよ。
ゴ:いやホント、出て頂いてよかったです(笑)
H:じゃあね、ジョアン・ジルベルトが7/6かな?亡くなったんですね。
ゴ:そうですね。
H:おいくつだったんだっけ?
ゴ:88歳。
H:もう、大往生かな。
ゴ:んー、そうですね。
H:東京に来たときは観に行ったんですか?もちろん。ね?
ゴ:行きましたね(笑)
H:伝説ですよね。
ゴ:そうですね。
H:最近、DVDが出ましたよね。
ゴ:そうですね、出ました。
H:監修してる?
ゴ:いやいや、監修はしてないですけれども…(笑)ちょっと、中に文章を載せて頂きました。
H:じゃあ、早速なんか1曲…挨拶代わりに。
ゴ:はい。
H:ジルベルトさんの声を聴きたい。
ゴ:どれが良いんでしょうかね?
H:もうお任せしちゃう。いちばん好きな曲はなんなの?そういうのあるの?いちばんっていうのは無いよね。ぜんぶ良いから。
ゴ:なんかちょっと…最近、また聴き直してる曲があって。
H:おー、それはなんだろう?
ゴ:(笑)や、これなんか、細野さんにピッタリかな、と思って。
H:ええ?いやいやいや…(笑)
ゴ:これがいいかなと思って。
H:聴かせてください。
ゴ:"Undiú"という曲なんですけど。
H:ほほう…僕、まだわかってないかもしれない。聴けばわかるかな?
ゴ:聴けばわかると思いますよ。えーとね…この白い…
H:あ、白い…「ホワイト・アルバム」と呼ばれているやつ
ゴ:2曲目の…ちょっと長い曲ですけど。
H:はい、聴きましょう。
Undiú - João Gilberto
(from 『João Gilberto』)
H:いやー、ぜんぶ聴いちゃいましたね。
ゴ:はい。長いですね…
H:スキャット、というか、ハミングだけで5分ぐらいやるってすごいね。
ゴ:そうなんですよね。これといって何を歌ってる、というわけじゃなくてですね(笑)
H:どんな意味なんだろう。
ゴ:「Undiú」という言葉の意味はぜんぜんわかんないですね。
H:そうか。あれ、ゴローくんってポルトガル語が出来そうな感じがする。
ゴ:いやいや、ぜんぜん…(笑)挨拶っていうか、それぐらいしか出来ないですけど…
H:いやー、ポルトガル語は難しくてね。
ゴ:細野さんは、でも、すごい雰囲気が…
H:いやいやいや、雰囲気だけで…本当にわからない。
ゴ:あー…でもね、いちばん最初に細野さんとボサ・ノヴァをやった曲、憶えてます?"O Sapo"っていう曲で、カエルの曲。あれも歌詞が無くて。
H:あれは大好きだ。
ゴ:♪ゴルゴル~、ゲルゲル~…みたいな(笑)
H:そうそうそう。あれはね、歌える(笑)あれはわかりやすい。
ゴ:ですよね。で、この曲もまぁ、スキャットみたいな。
H:まぁ、これだったら大丈夫かな(笑)でも、この曲難しいよ。
ゴ:難しいですよね。
H:ずーっと繰り返して、瞑想しちゃうよね(笑)meditationしちゃう。
ゴ:そうですよね。これ、ジョアン・ジルベルトが自分で作った曲なんですけれども。
H:あー、そっかそっか。
ゴ:彼の自作の曲は何曲かあるんですけれども…
H:少ないんだね、意外に。
ゴ:少ないですね。で、初期の頃というか…"Bim Bom"という曲。♪ビンボン、ビンボン…
H:あー、はい。
ゴ:ずっとビンボンビンボン、半分はビンボン言ってる曲なんで…(笑)それも歌詞といった歌詞が無くて。
H:無いか。
ゴ:途中で少し歌詞はあるんですけども…まぁ、わりとスキャットの曲ですよね。
H:そうだね。
ゴ:あと、もっと古い曲で、"Hó-Bá-Lá-Lá"という曲があるんです。あれも、♪オー、バララ、と…(笑)
H:歌詞作るのがイヤなのかね(笑)
ゴ:あまり言葉というか…意味が無いほうが、たぶん、彼はいいのかな、と。
H:そうなんだね。すごく音楽的な人だね。
ゴ:そうですね。
H:なんであんなに音程が良いんだろう、と思って。いつも。すごい…
ゴ:パーフェクトですよね、音程。
H:あと、声がトランペットみたい、というか…管楽器みたい。
ゴ:楽器のような声ですよね。声の出し方…
H:そういう曲もあるよね。歌いだしが楽器みたいな…
ゴ:ありますね。
H:じゃあ…なにがいいかな。
ゴ:なんか、選んでくださいよ、細野さん(笑)
H:じゃあ初期の…これ、読めないんだよね、僕。「シェガ・ディ・サウダーヂ」でいいのかな?
ゴ:"Chega de Saudade"。
H:"Chega de Saudade"。
Chega de Saudade - João Gilberto
(from 『Chega de Saudade』)
H:えー、ジョアン・ジルベルトで、"Chega de Saudade"です。えーと、ゴローくんはいつからジルベルトを聴いてるんだろう?
ゴ:えーと…うちの父親が『Getz/Gilberto』のレコードを持ってて。それを初めて聴いたのが中学生ぐらい…ですかね。
H:ギターはいつから?
ゴ:ギターもね、その頃からポロポロやってたんですけども。でもさすがに、ボサ・ノヴァをやってみよう、なんて…(笑)
H:中学生だとあんまり思わないかもね(笑)
ゴ:思わないですよね(笑)
H:で、そのうち、やり出したんだ、じゃあ。本気で。
ゴ:そうですね。いつかやってみたいな、と思いつつも、なかなか…チャンスが無くて。
H:じゃあ、ブラジルに留学っていうか…行ったりしなかった?(笑)
ゴ:いやいや、それは無いですね(笑)まぁ、[音楽を]やり始めてからレコーディングで行く、みたいな感じで。ひたすら部屋で修行してました。
H:あのギターはどうやって覚えていったの?
ゴ:もう、レコードを聴いて、ひたすら…反復練習というか(笑)
H:そうなんだ。やっぱりジルベルトを?
ゴ:そうです、はい。
H:そうか。やっぱり聴いて…指づかいとか、わからないところあるでしょ?(笑)
ゴ:そう…わからないですよね、実際。わからないんで、こんな感じかなぁ、とか思いながら…(笑)
H:それで、「Live In Tokyo」がDVDで出て…よく見えてるわけでしょ?指が。
ゴ:あれはね、ホント…左手も右手もぜんぶ見えてるというか…
H:じゃあ、確認できるんだね。
ゴ:いろいろ確認できて、すばらしいです。
H:それはすばらしい。僕も見たい。
ゴ:観てください(笑)
H:ギターはどこのを使ってるんですか?
ゴ:ギターは…このギターじゃなきゃダメ、みたいのはそんなにないんですけれども、今は日本の…越前くん(越前良平)っていうギター作家さんがいて。
H:特注で作ってるんだね。
ゴ:そう、彼のギターを使ってますね。
H:ジルベルトはなにを使ってるんですか?
ゴ:ジョアンは…ブラジルのギターですね。ディ・ジョルジオ(Di Giorgio)という…
H:え?
ゴ:ディ・ジョルジオ…ちょっと言いにくいブランドですけども。そのギターをずっと使ってますよね。
H:ディ・ジョルジオ。んー…
H:会ったことある?
ゴ:え?ジョアンですか?
H:はい(笑)
ゴ:いやいや…(笑)無いですよね。
H:無いか。んー。
ゴ:なかなかね、会えないらしいですよ
H:そういう映画をこないだ観に行ったんだよ(笑)
ゴ:僕も観ました(笑)
H:観たでしょ?パンフレットに[コメントを]書いてるよね。
ゴ:なかなか会えないもんですよね。
H:あの映画はね、観てモヤモヤしてきたよ、やっぱり(笑)
ゴ:そうですよね(笑)
H:ホントに会えないのかね。
ゴ:やっぱり、ホントに会えないんですよ。いろんなブラジルのミュージシャンがたくさん出てたじゃないですか。
H:そうだね。周りの人はいっぱい出てきて。
ゴ:そう。彼らは[ブラジルに]行くと会えるんですよ。僕も何度か行ってますけど、行くと必ず…(笑)
H:普通、会えるよね(笑)
ゴ:普通は会えるんですよ。特にジョアンの2人目の奥さん…ミウシャ(Miúcha)っていう。
H:あー、はいはい。映画に出てきた。
ゴ:彼女は、行くと必ず…[劇中では]カフェで話をしてたと思うんですけど、あそこのカフェに必ずいるんですよ。
H:あ、ホント?で、あの映画でもやっぱりそういうシーンがあって…ドイツ人だっけ?青年が会いに行って。その元奥さんのところに行ったら、電話がかかってきたんだよね。
ゴ:そうですね(笑)
H:ジョアン・ジルベルトから(笑)
ゴ:(笑)
H:で、声は聞こえるんだけど…それでも取り次いでくれないのね。なんで?(笑)
ゴ:なんか、あの調子で行くと会えそうな感じですもんね(笑)
H:ね。不思議だった…やっぱり、「神様」になっちゃうね、それじゃあ。
ゴ:そうですね。ミウシャがよく行ってるカフェから見えるところにジョアンは住んでるんですよね。
H:住んでるんだよね(笑)
ゴ:うん。でも、降りてこないんですよ(笑)
H:人が嫌いなの?そういうわけでもない…
ゴ:どうなんでしょうかね…
H:謎だらけなんでいろいろ訊きたかったんだよね。なんか、小野リサさんは電話で話した、っていう話をこないだ聞いた。
ゴ:そうそうそう…なんか話したって言ってましたね。
H:ひょっとすると、会っていっしょになんかやる、っていうのも実現したかもしれないんだろうね、きっと。わかんないけど。
ゴ:どうなんでしょうね。なかなか、電話で話すっていうのも…
H:でも、ジョアン・ジルベルトは電話好きって聞いたけどね(笑)
ゴ:うんうん(笑)なんか、一日中電話してたみたいですよ。
H:あ、そうなんだ(笑)
ゴ:途中でギター弾き出して…ずっと受話器に向かって歌ってくれるらしいですよ(笑)
H:(笑)そうか。不思議な人だなぁ…なんか、ぜんぜん他の人と違うよね。ギターの練習はやっぱり、ものすごい熱心にやったんだろうね。あのお風呂場で。
ゴ:ね。たぶん、相当…
H:引きこもって。
ゴ:引きこもって練習したんだと思いますけどね。んー…
H:サンバが元になってるけど、あの静けさっていうのはジョアン・ジルベルトとアントニオ・カルロス・ジョビン(Antônio Carlos Jobim)の作ったものだなぁ、と思ってたんだよね。
ゴ:いやー、でもそうですよね。
H:だから「ボサ・ノヴァ」ってひとことで言うけど、本当は彼らのものだよね(笑)
ゴ:そうですね。まったくそうだと…(笑)
H:で、日本ではバブル期にボサ・ノヴァが流行ったらしくて…(笑)
ゴ:(笑)
H:カフェ・ボサ・ノヴァ。若い女の子とかが「いいわよねー」みたいな(笑)「"イパネマの女"がいいわよねー」とかね。「風が吹くのよね」とか。そういう話は聞いたことあるけどね(笑)
ゴ:(笑)
H:ということは、今はそんなに景気が良くないからね。どうなんだろうな、と。
ゴ:あー、そうですね。でも細野さんはすごく…合ってる、っていうのもヘンですけども…(笑)
H:(笑)そうかなぁ…
ゴ:いいと思いますよ。
H:いやー、勧めるねぇ…
ゴ:まぁちょっと、言葉がね。言葉というよりは、さっきのスキャットみたいのはすごくピッタリじゃないかな、と。
H:あれはね。まぁスキャットなら…いや、でも、勘弁して(笑)
ゴ:(笑)
H:難しい…(笑)
H:じゃあ曲。えーと、その「ホワイト・アルバム」(『João Gilberto』(1973))っていうのはどういう状況で作られたんでしたっけ?
ゴ:これはですね、アメリカでレコーディングを…ウォルター・カルロス(Walter Carlos)?ウェンディ・カルロス(Wendy Carlos)がプロデュースとかエンジニアを。彼が録ってるんです。
H:え、意外。それは知らなかった。
ゴ:そうなんです。1973年とか74年とか、そのぐらいですよね。
H:ウォルター・カルロス、ウェンディ・カルロスに…女性になっちゃった人だ。『Switched-On Bach』作った人ね(笑)
ゴ:そうです、そうです。
H:そうだったんだ。
ゴ:彼が録ったんですよね。あまり資料が無いんですけども。
H:なんか、地下[で録音した]っていうのは聞いたことがある。
ゴ:そうそうそう。[ジョアンが]スタジオに夕方、っていうか、夜?おもむろにやってきて…(笑)
H:ニュー・ヨークだったかな?
ゴ:ニュー・ヨークですね。
H:やっぱり、このアルバムがいちばん不思議っていうか、ジョアン・ジルベルトの真髄というかね。
ゴ:んー。ホント、そうですね。
H:その中から…うわ、この人すごい、息継ぎがない!肺活量すごい!と思った曲が"Trolley Song"。ここに入ってるかな。
ゴ:はい。"Trolley Song"は…
H:これじゃないや、ごめん。どれだっけね。アルバムが違った。
ゴ:"Trolley Song"は…『彼女はカリオカ(Ela É Carioca)』という…あれもメキシコで録ったアルバムですよね。
H:そうだ。これも名盤だよね。
ゴ:名盤ですね。
H:メキシコだ。そうそうそう…じゃあそこから、いい?"Trolley Song"聴いていい?
ゴ:うん、聴きましょう。
Trolley Song - João Gilberto
(from 『Ela É Carioca』)
H:えー、"Trolley Song"でしたけど。ジョアン・ジルベルトってけっこう、アメリカのこういう音楽やるよね(笑)
ゴ:やりますね。
H:英語で歌ってるのもなかったっけ?
ゴ:ありますね。なんか、かわいらしい英語で歌ってますね(笑)
H:そうそうそう(笑)
H:いやいやいや…話が尽きないからね、すぐ時間経っちゃった。あと1曲になっちゃうんですけど…どうしようかな。じゃあ、ゴローくんとライヴでやった、カエルの歌ね。
ゴ:はい。"O Sapo"ですね。
H:"O Sapo"ね。ではこれを聴きながら、また。来週やります。
O Sapo - João Gilberto
(from 『João Gilberto En Mexico』)
2019.09.29 Inter FM「Daisy Holiday!」より
H:こんばんは、細野晴臣です。さぁて、今週もですね…先週に引き続き、岡田くん、よろしくね。
O:こんばんは、岡田崇です。
H:…もう、のっけからいるから、今回は。19歳の福原音くん。
音:はい、よろしくお願いします。
H:よろしく。えー…不思議なメンバーになってきたね(笑)
O:(笑)
H:年齢差がすごいよね。
O:ねぇ(笑)
H:なんか、中抜けっていうか…今までいなかったよね(笑)
O:20代、30代、40代がいないっていう…(笑)
H:なんで?(笑)そういう人がいてもおかしくないのに、いなかったね。いままで。
O:そうですね。
H:なんだろう、この現象は。んー、おもしろいよね。
O:(笑)
H:さて、きょうはどうしよう。ハル・ハーゾン(Hal Herzon)は先週いっぱい、やりましたよね。3曲かけちゃったけど。
O:かけましたね。
H:エアチェック防止用にね、いろいろ…
O:(笑)
H:誰かが先にCD作っちゃう、なんてね。
O:ハル・ハーゾンはエラ・メイ・モース(Ella Mae Morse)とかといっしょにやってましたね。
H:ホントに?!それは知らない。
O:1945年ぐらいに、ハリウッドで。
H:じゃあ、レコーディングに入ってるんだ。
O:レコーディングにも入ってるかもしれない…ステージでの写真は確認しました。
H:あ、ホント?
O:エラ・メイ・モースのステージで、サックスを吹いてる。
H:なんか、いろいろつながってるんですね。じゃあ、きょうはそのつながりで…なんかあるんでしょ?
O:じゃあですね…まあ、音くんがいるからではないんですけど、最近買ったSP盤で…ソニー・バーク・オーケストラ(Sonny Burke And His Orchestra)で、"The Sidewalk Shufflers"。ヴォーカルをドン・レイ(Don Raye)とジーン・デ・ポール(Gene De Paul)が、やってます。
H:めずらしいね。ドン・レイが出てきたね。
The Sidewalk Shufflers - Sonny Burke And His Orchestra
H:お、この時期にフェードアウトはめずらしいね(笑)
O:たしかに(笑)
H:まぁ、なんか楽しい曲ですよね。先週も感じたけど、ハル・ハーゾンのレコーディングもこれも、音が良いね。
O:お…
H:なんか、レコーディングが良い。
O:ハル・ハーゾン、前に聴いてたのはトランスクリプションで、33回転のビニライト[塩化ビニル]だったんですけど。
H:そうだね。
O:やっぱり、SP盤・78回転のほうがレンジがちょっと広いですね。
H:SP盤のほうが音が良いって、初めての発見だね。それは。
O:ノイズ成分はやっぱりあるんですけど、音自体は…情報量が多いんだと思いますね。
H:回転数が早いしな。
O:78ですからね(笑)
H:おもしろい。なるほど。いやー、音良いよ。
H:んー…ということで。いきなり眠くなっちゃった(笑)
O:(笑)どうでした?ドン・レイの。
音:あれはタップしてたんですか?ドン・レイのヴォードヴィル魂が出てた、みたいなことなんですか…?(笑)
O:(笑)
H:え、音くん、ドン・レイってどういう人なの?(笑)
音:ドン・レイは…ブギウギに関わる人を生み出した人なんですけど、元々はハリウッドのミュージカルとかヴォードヴィルのコメディアンを目指して…ペンシルヴェニアかなんかのコンクールで、ヒューイ・プリンス(Hughie Prince)といっしょに優勝…ヒューイ・プリンスが伴奏をして。ヒューイ・プリンスっていうのはブギウギを作曲してる人なんですけど。
H:そうね。
O:ヴァージニア州かな。
音:あ、ヴァージニア州…
H:訂正が入りました、先生から(笑)
O:(笑)
音:ありがとうございます(笑)
O:チャールストン・ダンスのコンテストね。
H:これはなにかのセミナーなの?(笑)
音・O:(笑)
H:それで…こないだ悠太…孫のね、悠太(細野悠太)。ベース弾いてますけど。きょうは来てないんですけど。合宿かなんか…練習かな?わかんないけど。で、2人でここのスタジオに来てなんかやってたんでしょ?
音:そうですね、ちょっと…
H:なにやってたんだっけ?ジェリー・ルイス(Jerry Lewis)を見てたんだっけ?
音:ジェリー・ルイスを見て、これ[パントマイム]のものまねを…(笑)
H:あの、指揮するやつ…"Typewriter"とか?へぇ。これは見てみたいね。
音:ディーン・マーティン(Dean Martin)との掛け合いのやつとかを…
H:そんなの見てる人、他に知らないぞ(笑)
O:(笑)
H:いや、でも僕も中学のときにジェリー・ルイス見て真似してたんだよね。座り方とかあるんだよ。あと顔ね。顔芸っていうか。
音:顔…(笑)
H:それ以来だね、若いのが真似してるって聞いたのは。
音:真似したくなる…
H:真似したくなるよね。んー。
O:僕も好きで見てましたけど、真似はしてないですからね。
H:(笑)
O:難しそうだもん、あの動き…(笑)
H:いや、天才だよ、ジェリー・ルイスは。すばらしい…タップをやらせると上手く見えるんだよね(笑)
O:(笑)
H:どのくらいできるのか知らないけど、すごい上手く見える。
H:ジェリー・ルイス[の音源]ある?なんか。
O:ジェリー・ルイスですか。あるかな…
H:ちょっと待って…(笑)こっちにはないんだ。けっこう買い溜めたんだけど、ここに無いや。参っちゃったな。
O:(ガサガサ)
H:無いか。
音:岡田さんと、ジェリー・ルイスについていろいろやりとりをさせてもらってて…
H:あ、そうなんだ(笑)
O:LINEでね。夜な夜なLINEで…ジェリー・ルイスの話とかをしてて(笑)
H:へぇ。
音:こんな夜中にいいのかな、とか思いながら…楽しくて(笑)
H:そうかそうか。
O:ちょうど僕もジェリー・ルイスを最初に見たのが高校後半ぐらい…ですかね。テレビで昔はよくやってたじゃないですか。
H:あ、やってたね。わりと深夜に。吹き替え版ね。
O:また見たいな、あれ。吹替えが秀逸ですよ。
H:そう、僕も見てたね、それ。
O:…ジェリ・ールイスの音源は無いですね。
H:無いね。
H:じゃあ、コメディの話、しようかな。えーと、コメディ好きなの?音くんは。
音:もう、大好きですね。
H:あ、そう。その辺もなんか、おんなじだよな…
音:ウッディ・アレン(Woody Allen)とか、すごいあこがれてました。
H:おお。ウッディ・アレンね。んー。
O:だって、落語もやってたんでしょ?
H:あ、そっか。
音:そうです。落語…老人ホームを慰問したりとか。
H:え!そこまでやってたんだ。
音:独演会みたいのを、地域で開かせてもらったりとか…落語も好きです。
O:(笑)
H:すげぇな(笑)ネタはなにをやってたの?
音:ネタは「粗忽の釘」と、志ん生(5代目古今亭志ん生)の…圓生(6代目三遊亭圓生)とかもやってる「八五郎出世」。
H:あー…渋いね。
https://www.youtube.com/watch?v=BkbUZd9wQB4
音:本当はちょっと長いんですけど、「八五郎出世」のところだけ*…
[*「妾馬」の前段部分だけを抜粋して「八五郎出世」として演じられることが多い。]
H:ぜんぶ、覚えるわけね。
音:そうですね。
H:そんなことやったことないよ、僕。好きだけど、落語は…(笑)
音:まぁ、最初はほぼものまねというか…
H:誰のものまね?圓生?
音:僕は…最初は枝雀(2代目桂枝雀)から入って…
H:あ、枝雀?関西弁じゃん。
音:関西だったんで…小学生のときだったので、いちばんわかりやすかった。
H:小学生で枝雀って、あるかな?(笑)
O:(笑)
H:普通無いよな。マニアックだよ、枝雀は。
音:そこから、枝雀のレパートリーをやってみたりして…「代書屋」とか。
H:ほぉ…
音:それで、段々江戸落語のほうに。
H:あ、よかった、江戸に来てくれて。
O:(笑)
H:そう。なんかこう…なんだろうな、追求心が違うのかな、僕とは。そういうの好きだったけど、小学生の時とか。さわりだけ真似するぐらいだよね。圓生とか。できるわけないんだけどね。
H:三平(初代林家三平)だって、「だぁ、ほんっと、たいっへんですから…」しかできないしね(笑)
音:(笑)三平さんのサインがあってビックリしました。
H:あるよ、ここに(笑)いやいやいや…ビックリってのはこっちだよな、もう…
O:(笑)
H:なんかかけよう(笑)
O:(笑)
H:なんか、お願いしますよ。
O:じゃあ、さっきのドン・レイ、裏面も歌ってるんでそっちもかけましょうか。
H:はい、ぜひぜひ。
O:"That The One For Me"、ソニー・バーク・オーケストラ。1951年です。
That The One For Me - Sonny Burke And His Orchestra
H:これはなんか、舞台の音楽なのかな?
O:かもしれないですね。
H:こないだ僕、上野のホールで『オン・ザ・タウン』っていうミュージカル観に行ったんだよね。
O:へぇ。
H:1ヶ月ぐらい前かな?2か月前かな?レナード・バーンスタイン(Leonard Bernstein)の音楽なんですよ。で、日本の指揮者の佐渡さん(佐渡裕)っていう方が全部プロデュースして。イギリスのチームを呼んで、やったんだよね。で、あれは何年だっけな…50年代だったかな。『オン・ザ・タウン(On the Town)』って映画になってるんだけどね。シナトラ(Frank Sinatra)とジーン・ケリー(Gene Kelly)と…水兵さんみたいな人たちが、ニュー・ヨークで遊ぶっていう。休暇で。
O:1950年ですね、たぶん。
H:そうか。ただ、音楽がやっぱり、バーンスタインの次の作品には至らないっていうか。地味過ぎて映画で使われなかったんだよね。
O:(笑)
H:かわいそうに(笑)そういうことがいっぱいあるんだろうな、たぶん。でも、次の『ウエスト・サイド(West Side Story)』でブレイクしたけどね。すごい才能がある人なんだな、と思って。ただ、振り付けがおもしろくなかったな…(笑)
O:(笑)
H:ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー(Royal Shakespeare Company)の人とか、バレエ系の人とか、クラシックっぽかったのかな。タップやらなかったし。タップ習いたい…!音くん、やったほうがいいよ。
音:はい…!
H:できる?
音:いや、そんな…運動神経が…
O:「[タップ]やってました」とかね、言いそうだし。
音:いやいや…(笑)
H:なんか…身体的なアレがぜんぜん無いよな。動きがどんなだか、今度チェックしようかな。動き大事だからね。
音:動き…
O:ステップ練習してるんだもんね。
音:そうですね。
H:そっか。
H:最近、探してる映画があるんだけど。『プロデューサーズ(The Producers)』っていう。メル・ブルックス(Mel Brooks)の作品で。ジーン・ワイルダー(Gene Wilder)とかいろいろ、ヘンな…おもしろい人が出てる。で、ぜんぜん見つかんないんだ、これ(笑)リメイク版が2000年代にあったんだよ。
O:ありましたね。
H:そっちのほうが有名で、それしかないんだよね(笑)オリジナルが無くなっちゃった。
O:オリジナルは何年なんですか?
H:いや…1900年代だよ(笑)
O:でしょうね(笑)
H:何年だっけな…けっこう古いよ。んー。
O:(笑)
[*1968年公開。日本でもBD/DVD化はされているようです。]
H:かろうじてメル・ブルックスさんは健在、だけど作品は作ってないね。みんないなくなっちゃったから。ジーン・ワイルダーとか。だからコメディは…僕の好きな世界はもう…まぁ、音楽もそうだけど。消えちゃったかな、っていうね。なんか作りたいですよね。なんか作る?みんなで(笑)
O:なにかを…(笑)
音:なにかを…
H:学生の映画…(笑)
O:サークルみたいな…(笑)
H:えー、僕からはなんにも、紹介するものが無いんですけど。なんかある?
O:なんかある?
音:え?
O:他人に振る…(笑)
音:紹介っていうのは、話?
H:いや、音楽。リクエストに応えて…
音:えー…じゃあ、ぜんぜん、あの…行きに、来るときに聴いてたアレなんですけど…
H:うん。
音:エヴァリー・ブラザーズ(The Everly Brothers)を…(笑)
H:お、急に…(笑)
O:(笑)
音:好きなアルバムを…涼しいんで…
H:ほほう、エヴァリー・ブラザーズが出てきたか、急に。あの、エヴァリー・ブラザーズのひとりは「ドン」って名前だね(笑)
音:そうですね(笑)
H:ドン・エヴァリー(Don Everly)。フィル・エヴァリー(Phill Everly)と。
音:えーと、"Always It's You"とかが入ってるやつなんです。"Always It's You"で[ここに]着いたんですよね。
H:ちなみに、エヴァリーの中でも好きな曲だよ。"Always It's You"は。
Always It's You - The Everly Brothers
(from 『A Date With The Everly Brothers』)
H:うーん…中学時代に聴いてたやつだよ(笑)ぜんぶラジオで聴いてたね。
音:おお…
H:いやー、なんか…眠くなっちゃった(笑)
O:(笑)
音:ちょっと、そういう感じで…(笑)
H:えーとね。僕が最近何を聴いてるのか、っていうのをちょっと発表すると…
O:はい。
H:あのね、ドキュメンタリーを上映してたの。なにかっていうと、『ジョアン・ジルベルトを探して(Where Are You, Joao Gilberto?)』っていう映画。
O:うんうん。
H:まぁ、単館上映なんだけど、小っちゃなところで。けっこうヘンな映画だったんだよね。ジョアン・ジルベルト(João Gilberto)に会いたくて、ドイツのボサ・ノヴァマニアの青年が会いに行くんだけど、ぜんぜん会えないんだよ。で、[ジョアンが]謎の人物、みたいな、神格化されちゃうんだよね。関係者にはみんな会うんだよ。でも、誰も会わせてくれない(笑)
音:(笑)
H:なんだ、そんな人なの?と思ってね。まぁ、ちょっと癖のある人なんだろうけど。で、前の奥さんと話してたらそこにジョアンから電話がかかってくるんだけど、声は聞こえるんだよね。でも、奥さんは取り次いでくれないわけ(笑)
O:(笑)
H:で、結局最後は、やっとコンタクトが取れて、「じゃあ聴きに来い」と。音楽やるから。リオのホテルにいるんで、部屋を訪ねて行くんだよ。でも扉を開けちゃいけないっていう条件で…(笑)
音:わぁ…(笑)
O:(笑)
H:廊下で聴くことになるわけ(笑)で、部屋の中から音が聞こえてくる…っていうところで終わる(笑)ジョアン・ジルベルトは亡くなっちゃったけどね、やっぱりすごい。亡くなってから神様になっちゃったね(笑)それでまた聴き直しちゃったんだよな。すごい音程の良い人で。楽器みたいな声の人で。特に…ニュー・ヨークの地下で録音したっていうアルバム(『João Gilberto』(1973、邦題:『三月の水』)がすごい…「ホワイト・アルバム」って言われてるんだけどね。すばらしいね。その中で1曲、かけていい?"Águas de Março"。じゃあ、これを聴きながら…今度はまた、ジョアン・ジルベルトの特集でもしようと思います。じゃあみんな、ありがとう。
Águas de Março - João Gilberto
(from 『João Gilberto』)
2019.09.22 Inter FM「Daisy Holiday!」より
Hal Herzon Septetの "Colonial Portrait"、葬式で流してください。
H:こんばんは。細野晴臣です。えーと、きょうはですね…ひさしぶりに岡田くん、よろしくね。
O:こんばんは、岡田崇です。
H:なんか、溜まってるよね。
O:溜まってますかね、ちょこちょこは。
H:えー、ひさしぶりだな。ずっと「恐るべき十代」が来てたから…(笑)
O:圧倒されますよね、十代に(笑)
H:なんか、挑まれてる感じするよね(笑)
O:詳しいんだもん(笑)
H:勝った/負けた、みたいなこと言われたり…(笑)
O:(笑)
H:んー。じゃあね、なにが溜まってるのか、ちょっと教えて。
O:じゃあですね…前にもかけてる、ハル・ハーゾン(Hal Herzon)。
H:あー、はい、そうだ。それ。
O:誰も知らない…(笑)
H:誰も知らないよね(笑)
O:ハル・ハーゾン…前にかけたりしてたのは、16インチの大きいレコード…トランスクリプション盤っていうやつだったんですけど、1枚だけSP盤3枚組で出てるんですよ。それをずーっと探してたんですけど。
H:よく見つけたね、そんなの(笑)
O:ようやく、あった……
H:どこに落ちてるんだ、そういうの?(笑)
O:コネチカットにありました(笑)まあ、オークションですけど。
H:待ってれば出てくるんだね、じゃあ。
O:待ってたら出てきましたね。6ドル99セント[約750円]。
H:高くないね。
O:もう、誰か[高値を]付けたらヤバい、と思ったんで…
H:そうかそうか。そーっとね。
O:あの、8万円ぐらいまで付けたんですよ、僕。
H:…え?それがなんで6ドルなの?
O:いや、僕しか付けなかったんで、いちばん最低価格で…(笑)
H:じゃあよかったね、ラッキーだね。それはお宝だね。
O:送料が40ドル[約4,300円]ぐらいかかって…で、なんか混載便で発送されちゃって…
H:混載便ってなに?
O:混載便って…直行でうちに来なくて、アメリカの都市を転々とするんですよ。
H:へぇ。
O: 料金が安い代わりに…そのsellerの人は9ドルくらいしか送料払ってなくて。残りはe-bayっていうオークション会社の運送会社に入るんですけど。
H:なるほど。
O:もう、SPが割れないかどうか、ドキドキドキドキ…(笑)
H:それはそれは(笑)
O:あとですね、コネチカットからニュージャージーに行って、オハイオに行ってケンタッキーに行って、ルイジアナに行って、アラスカに行って成田に着いたっていうね(笑)
H:旅だね(笑)おもしろい。
O:割れずに…(笑)
H:割れなかったね。よかったよかった。では、聴かしてください。
O:じゃあ、その中から"Robot"を。モートン・グールド(Morton Gould)の曲です。
Robot - Hal Herzon Septet
(from 『Morton Gould's Musical Fantasies』)
H:いやいやいや、おもしろい…おもしろいわ(笑)
O:前のやつよりもテンポがけっこう、遅くなってますけどね。
H:そっかそっか。他のなににも似てないね、誰にも。レイモンド・スコット(Raymond Scott)を引合いに出せば。
O:そうですね。レイモンド・スコット・クインテットは1930年代には終わってますけど、40年代にも続いてたらこんな感じになったかもね、と。
H:ちょっとフューチャリズモっていうか、未来形のね。"Robot"ね。んー、おもしろい。こういう音楽は当時、どうなってたわけ?これは出たんだよね、SP盤でね。
O:これは出ました。
H:で、誰が聴いてたんだろうね?(笑)
O:ううう…(笑)
H:岡田くんみたいな人がいたんだろうね、当時。
O:いたんじゃないですか?やっぱり、レイモンド・スコットは相当売れたんで、当時は。
H:あー、そっか。
O:こういうのを聴く土壌っていうのは、少しはあったんじゃないですかね。
H:んー。まあでも、初めて聴くよね。
O:ようやく買えた…(笑)
H:ホントに、残ってないよね。
O:残ってないですね。僕、見つけた時に、Googleで検索して3,4件しか出てこなかったんで。
H:世界広しと言えどもたった3,4件?
O:亡くなったときの記事が出てきたぐらいですね。
O:で、すぐ、ニュー・ヨークのアーウィン・チューシッド(Irwin Chusid)っていう、レイモンド・スコット・アーカイヴの人に音源を送って。見つけたよ、と。すっごい盛り上がって…(笑)
H:向こうがビックリしたっていうね。
O:バスタ(Basta)とか、ボー・ハンクス(Beau Hunks)とか、あの辺のメンバーにもC.C.で…バーッと話が広がって…(笑)
H:あ、そう(笑)
O:あー、こういう感じでレイモンド・スコットもみんなで共有していったんだろうなぁ、と思って。
H:そうだろうね。じゃあ、発見者だね、岡田くんはね。
O:まぁ、そうですね…
H:考古学的に言うと。
O:[ハル・ハーゾンの]息子さんを見つけて。コンタクトを取りましたけど、お父さんの音楽は聴いたことない、と…(笑)
H:ヒエー。よくあるパターンだよ(笑)
O:なんかもう、50年代で音楽を辞めちゃってたんで…
H:じゃあさ、もう一度…ハル・ハーゾンという人のプロフィールをここで。
O:プロフィールがですね…あんまり、まだわからないんですよ。
H:んー。
O:まぁ、30年代については…チャーリー・バーネット(Charlie Barnet)の楽団だとか。
H:ビッグバンドだ。
O:ビッグバンドでいろいろ…アルトサックスとクラリネットですね、を、やっていて。40年代になって、仕事を求めてハリウッドに行って。
H:んー。[それまでは]ニュー・ヨークにいたのかな?
O:ニュー・ヨークですね。で、ハリウッドで自分のスタジオを作って、そこでこういう楽団…自分のオーケストラを持って。
H:なるほど。
O:映画音楽関係もやっていたでしょうし。
H:うんうんうん。
O:で、やっていたんだけれども、まぁ、いろいろ…ウェストコースト・ジャズだとか、ロックンロールだとか。そういうのが出てきて、音楽の道はもう無い、と思って…
H:絶望しちゃったんだ。
O:で、そのままハリウッドに残って、タレント…ジェームズ・コバーン(James Coburn III)のマネージャーとかをやるんですよ。
H:へぇ!そうなんだ(笑)
O:その、僕がコンタクトを取った息子さんは、お父さんは「芸能プロダクションの人」…
H:だと思ってるわけね(笑)
O:昔の話で、音楽をやってた、っていうのは聞いたことはあるけど、[音源を]聴いたことはない、と。
H:ヒエー…
O:で、納屋を探してもらって(笑)いろいろ、写真とか、モートン・グールドからの手紙とか。
H:じゃあ、そういう人をなんで…日本列島の島国にいる岡田くんが見つけたんだ?(笑)
O:(笑)まぁ、不思議でしょうね。
H:不思議だよ(笑)どこで見つけたんだっけ、最初。
O:最初はオークションのリストで…レジナルド・フォーサイス(Reginald Foresythe)の曲をやってたんですよ。
H:…まずはレジナルド・フォーサイスの説明を(笑)
O:レジナルド・フォーサイスっていうのは…1933年ぐらいに、レイモンド・スコットに先がけてあの手の音楽をやってた人ですね。
H:あの手の、ね(笑)ノヴェルティ・ミュージックっていうね。
O:イギリスの人ですけど、その人もすーごいおもしろくて。その曲を何曲かやっていたので、これは!と思って。
H:あー、カヴァーしてたんだね。
O:はい。それで買ったら…すごかった(笑)
H:あ、そう(笑)それは売ってるんだね。
O:それは…まぁ、あんまり買えないですね。16インチの[トランスクリプション盤]…
H:もちろんCDなんかには…
O:なってないですね。CDにしよう、と思っていますが。
H:いいね!うん。すごいや。何曲か聴けるの?
O:あ、もう1曲聴きましょうか。じゃあ、そのSP盤から"Colonial Portrait"。
H:この曲がラジオでかかるの、初めてじゃない?世界で(笑)
O:おそらく(笑)
Colonial Portrait - Hal Herzon Septet
(from 『Morton Gould's Musical Fantasies』)
H:若干、ちょっと…レイモンド・スコットっぽいところがあったな(笑)
O:(笑)
H:でも、ジャズじゃないんだよな。ぜんぜん。
O:ジャズじゃないですね…ま、曲は全部、今回のはモートン・グールドなんで…
H:そのモートン・グールドっていう人がキーパーソンだよね。要するに、ハル・ハーゾンを見つけた、っていうか…なんだろう。
O:えーと、ハル・ハーゾンを見つけた人自体は、アーヴィング・ミルズ(Irving Mills)なんですよ。
H:そうだ。アーヴィング・ミルズ、よく出てくるよ、その人。
O:で、アーヴィング・ミルズのところ…ミルズ・ミュージック(Mills Music)と契約をして、このレコーディングをしてるんです。
H:そうなんだ。
O:で、モートン・グールドの著作権管理はミルズ・ミュージックがやってる。
H:あ、そういう関係なんだね。や、モートン・グールドってムード音楽でよく出てくる名前だったんだよね、昔。
O:そうですね。この辺の音楽を作ってた、っていうのはほとんど知られてないんじゃないですかね。
H:知らないよ。
O:まだ…有名なものの中で唯一、雰囲気が残ってるのは"Pavanne"じゃないですかね。あれはモートン・グールドなんで。
H:あ、そう。
O:まぁ、ちょっと片鱗がある…かな?
H:で、レジナルド・フォーサイス。
O:レジナルド・フォーサイスそのものの[音源]は、いまちょっと手元になかったんですけど、マリオ・ブラジオッティ(Mario Braggiotti)っていうピアニストがいて、その人がやってるレジナルド・フォーサイスの曲が…
H:聴いていい?
O:それを聴いてみましょうか。"Revolt of the Yes Man"という曲ですね。
Revolt of the Yes Man - Mario Braggiotti and his orchestra
H:すばらしい…なんだこれ(笑)
O:(笑)
H:このジャンルはいまはもう、無いね(笑)
O:無いですね。
H:どこ行っちゃったんだろう(笑)
O:誰もやってないですね(笑)
H:とにかくこの時代…30年代・40年代の音楽家たちはみんなこういうの好きだよね。みんなやってたよね。どこ行っちゃったんだろう(笑)
O:(笑)廃れちゃったんですね。
H:不思議だよなぁ…後を継がないといけないんじゃないの?(笑)
O:(笑)
H:まぁ、ブギウギもそうだけどね。誰も後を継ぐ人がいない音楽…いやー、そうこうしてると、隣にあの「恐るべき十代」が座ってるね、いつの間にか(笑)音くん(福原音)だ。
音:おじゃましてます…
H:いやいやいや…声が小っちゃいよ(笑)
音:すみません…
H:どうだった?いま。聴いてて。ハル・ハーゾン。
音:いや…すごい楽しい。僕はけっこう好きな部類、というか…スピリッツ・オブ・リズム(Spirits of Rhythm)とか。ちょっと違うんですけど、そういうの好きなんで…わりと楽しんで聴きました。
H:スピリッツ・オブ・リズムってあれでしょ、誰?
O:テディ・バン(Teddy Bunn)とかがいたやつです。
音:あー、そうです。
H:んー。よく知らない(笑)あれ、レオ・ワトソン(Leo Watson)がいたのはなんだっけ?
音:レオ・ワトソンもいました。
H:あ、いたっけ?じゃあそれだ。なるほどね。
H:いやー、恐るべし…(笑)
O:出てくる名前がね…(笑)
H:うんうん、ホントだよ(笑)普通、岡田くんとしか話さないからね、こういうの。
O:こないだ、渋谷のレコード屋さんで、音くんとバッタリ会ったんですよ(笑)
H:それも不思議なんだけど、なんで会ったんだろう?(笑)
O:あの…渋谷のレコード屋さんにいて。僕、そのお店には年に1,2回ぐらいしか行かないんですけど、まぁ、用事があって行って。音くんはずーっと前からいたんだよね?
音:そうですね。
O:で、その店員さん…松永良平さんって、ライターの。
H:あー、はいはい。
O:彼が店員やってるんで…で、松永くんと話してて。そういえばこないだのデイジー[=この番組]聴いた?って話をしてて。
H:デイジー(笑)
O:「いや、聴いてない」、「ブギウギ少年が出てきてさ」って話をしたら…(笑)
H:(笑)
O:スーッと視界に入ってきて、「僕です!」(笑)
H:なんだそれは(笑)
O:ビックリでしたね(笑)
H:ね、ビックリだよな。そういうところにパッと入って行く…なんて言うの?感覚があるわけ?なんなの?「きょう行くとなんかあるな」みたいなことはあるわけ?
音:いや、ぜんぜん…(笑)
H:そういうのじゃないんだ(笑)
音:2回目だったんで、ハイファイ[Hi-Fi Record Store]…
O:松永さんと話がしたくて来たんでしょ?
音:そうです。
O:その前は上京して…大学の初日?
音:初日に…大学の近くにあるんで、ウィル・ブラッドリー(Will Bradley)のレコードのことを、ちょっと…噂を聞いて、あるんじゃないかな、と思って。
H:あった?
音:そのときは確か、無かったと思うんですけど…その話をさせて頂いて。
O:(笑)
H:ちなみに、音くんは19歳、だよね?まだね。
音:はい。
H:うん。大学生。この輪っかの中に入ってきました(笑)
O:(笑)
音:すみません(笑)
H:不思議な、現象です。こないだはキーポンくん(KEEPON)が来て…もうちょっと若いですけどね。
O:15歳ですね、まだ。
H:なんか、僕が前作った…リメイクした"薔薇と野獣"を聴いて「負けた!」って思ったんでしょ?(笑)
O:そう言ってましたね(笑)
H:張り合うってのはいいね(笑)ひさしぶりだよ、そういう…挑戦的な感じっていうのは。
音:(笑)
H:音くんもね、ブギウギやってるんで…なんだっけ?「[日本でも自分以外にブギウギを]やってるやつがいる」みたいな感じだよね(笑)
O:(笑)
音:ビックリしました(笑)
H:ビックリしたんだね(笑)んー。また次に出てくるのかね、誰か。
O:ね。
昨日ぼくに「ウィル・ブラッドレーのLPはありますか?」と尋ねてきた少年。中学生のころからブギウギやスイングが大好きで、どうしてもレコードで手にしたくて大学を受け四国から上京した18歳。なんかあったら相談乗るよと名刺渡したけど、もしツイッターやってたら連絡して!https://t.co/k78FU5sAkR
— 松永良平Ryohei Matsunaga (@emuaarubeeque) April 7, 2019
えーと、上の話の信じられない後日談をば。デザイナーの岡田崇さんとお店で話してて「そういえば先週のDaisy Holiday聴いた?」と聞かれた。「細野さんのお孫さんの悠太くんとブギウギにめちゃ詳しい10代の男の子が出ててさ」と岡田さんが教えてくれたタイミングで「それ、ぼくです!」と声がした。
— 松永良平Ryohei Matsunaga (@emuaarubeeque) August 30, 2019
なんと、さっきからお店のなかにいた少年こそ、その彼、福原音くんだった。「また、こないだみたいな音楽の話したくて来たんです。話すきっかけ探してたらぼくの話が出て」と話す彼の顔を見て思い出した。きみはあのときのウィル・ブラッドレー買った子! 岡田さんも彼とは初対面でびっくりしてた。 pic.twitter.com/OFpLzSR2rK
— 松永良平Ryohei Matsunaga (@emuaarubeeque) August 30, 2019
友人から「昨日、細野さんのラジオで松永くんの名前が出たよ」とメール。びっくりして詳しく聞いたら(昨日のその時間はOrgan barでDJしてたので)、福原音くんと岡田さんとがぼくの目の前でばったり出会ったエピソードを岡田さんが紹介してくれたのだそう。 https://t.co/2FcUzid7fV
— 松永良平Ryohei Matsunaga (@emuaarubeeque) September 23, 2019
H:じゃあ、この音楽の続きを…かけるのがもったいないね。
O:(笑)
H:SP盤って2枚組なの?
O:3枚組です。
H:3枚組!じゃあ、いっぱい入ってるね。
O:6曲です。
H:あ、6曲か、たったの(笑)
O:(笑)
H:そのうち、CDにするんだよね?
O:すると思います。
H:これは発見者の権利だよね。
O:いや…(笑)
H:まぁ…そういう活動をもっと、いっぱいしなきゃいけないな、と思ってたんだよね。これから、今後。
O:そうですね。ラジオも20年ぐらいやってますし。
H:そうだ。
O:散々、こういうアンノウン・ミュージックを発掘してきてるんで…(笑)
H:流しっぱなしだよ(笑)
O:形にしていきたいですね、
H:しましょう。ね。いや、楽しみだな。じゃあ、きょうは岡田くん特集なんで…
O:僕特集ですか(笑)じゃあ、もう1曲かけちゃいますか。
H:いいんじゃない?
O:じゃあ、ハル・ハーゾンで"Prime Donna"という曲を。
H:それを聴きながら…きょうはこれでおしまいです。また音くんも来てください。
音:ありがとうございます。
H:じゃあ岡田くん、ありがとうございました。
O:はい。
Prime Donna - Hal Herzon Septet
(from 『Morton Gould's Musical Fantasies』)
2019.09.15 Inter FM「Daisy Holiday!」より
H:こんばんは。細野晴臣です。さぁ!先週の続きを…キーポン(KEEPON)くん。
キ:こんばんは。
H:こんばんは(笑)岡田くん。
O:こんばんは。
H:よろしくね。
O:よろしくお願いします。
キ:はい、よろしくお願いします。
H:どこまでやったかな。えーとね…ニュー・オーリンズね。
キ:はい。ニュー・オーリンズですね。
H:ニュー・オーリンズのどこまで知ってるの?
キ:ニュー・オーリンズは…探り出したら、そもそものマルディ・グラ(Mardi gras)だったり、そういう民族音楽的なほうまで行っちゃうと思うんですけど…
H:行っちゃうと思うけど、まだ行ってないの?
キ:まだ行けてないですね。それはもう、自分のお小遣いの問題だったりするんですけど…
O:レコードが買えない?
H:あー、そっか。
キ:でも、いまの時代、けっこうYouTubeで探しちゃえばなんでも音源出てきちゃうんで。
H:そうでしょ?
O:いいなぁ…
キ:で、最近はカリプソとか…ものすごい昔の音源とか聴いて、ものすごい楽しんでますね。
H:いいよね。それもう[自分と]おんなじだな、まったく…(笑)あのね、[自分が]大瀧詠一と[共に]ニュー・オーリンズの音楽に目覚めた頃っていうのは、もう23,24歳ぐらいかな。
キ:あ、そのきっかけはなんだったんですか?
H:きっかけはやっぱりね、ドクター・ジョン(Dr. John)の『Gumbo』。
キ:あー…それは僕もおんなじです。あ、でも僕は『泰安洋行』ですね。
H:あら…そっか(笑)そのドクター・ジョンの手前に、ザ・バンド(The Band)とかね。岡田くんも聴いてた?そういうの。
O:聴いてました。
H:ね。『Cahoots』とか。アラン・トゥーサン(Allen Toussaint)っていう名前が出てきて…リトル・フィート(Little Feat)もやってたね。
キ:はい。
H:そこら辺で、アラン・トゥーサンっていう人は謎の大人物だろう…ということで(笑)それで、その次にドクター・ジョンが来て。
キ:やっぱりドクター・ジョンはものすごい…「あ、これがニュー・オーリンズか!」って思いましたね。
H:あの『Gumbo』っていうのはすごい…プロデュースが良いんだよ。放っておくとああいうことはやらない人だから。
キ:コンセプトがハッキリしてて。で、長年のけっこう…ニュー・オーリンズっていう言葉はいろんなところで…細野さんの楽曲だったり、大瀧さんの曲とかライナーとかで聞いてたんですけど。
H:うん。
キ:いまいち、どれがニュー・オーリンズなのか、っていうのがちゃんと…まあ、いまだにわかりきれてないところがあるんですけど。結局、自分で理解したのは[ニュー・オーリンズとは]「フィーリング」なんだなって思いました。
H:その通りだ(笑)
H:まあでも、具体的に…ニュー・オーリンズのピアノとかね、スタイルはあるけど、そこら辺は追求する余地があるよね。
キ:そうですね。けっこうピアノは…自分でももう、ものすごいハマりましたね。
H:ピアノも弾くし、ぜんぶやってるわけだから…いったいどれが好きなの?(笑)
キ:えー…僕、意外と好きな楽器が無いんですよ(笑)
H:無いんだ(笑)
キ:だから、結局…自分でも曲をミックスしたりとか、特にこだわってやってる機材が無いので…俯瞰して曲を聴けるのかな、なんて思ったりしてますね。
H:なるほど。そういう点でも大瀧くんタイプだよね。僕なんかはベースを弾いて仕事ができたから、それを見てて大瀧くんが「いいなぁ」とか言ってたんだよね(笑)
キ:(笑)
H:生ギターは弾くけどね。それで仕事があるわけじゃないから…(笑)だからスタジオミュージシャンにはなれなかった、っていうね。まあでも、そういうのを全体的にクリエイトしていくタイプ、っていうのもおんなじだよね。
キ:わりと…これ、細野さんにお話ししたかったんですけど。僕は音楽を作るにあたっていちばん重要なのが、音にするまでの工程がいちばん楽しいんですよね。作ってて。
H:そう、その通りだ(笑)
キ:けっこう、音を具現化することがしやすい時代になってきたじゃないですか、今。
H:うんうん。
キ:で、ハッキリ言って自分じゃなくても出来るような時代だな、って思うんですよ。サウンドループだったり、サンプリングの文化もものすごい発達してきて。
H:エディットの時代だもんね。んー。
キ:でも、僕はそこまでテクニックがあるわけではないんで、音にするまで…曲を作ってるときも詞が先とか曲が先とかじゃなくて、イメージなんですよ。
H:イメージね。それ大事だよ。
キ:それが楽しいんですよ。
H:わかるよ。おんなじだから(笑)
キ:うれしいです(笑)
O:(笑)
キ:同じ世代の人と音楽の話とかしてると、どうしても「技」のほうに目が行きがちなんで…
H:そうそうそう。
キ:ホントに、夢見てるみたいな感覚とおんなじなんですよ。音楽を作るときは。
H:あれ、なんか同じようなこと言ってるじゃん(笑)
O:(笑)
キ:え、そうでした?
H:そうなんだよ(笑)夢を思い出す感じで作ってるから…
キ:あー、そうなんですか?やっぱり。
H:そのイメージに掻き立てられないと、大したものができないんだよな。んー。
キ:わかりやすく言うと、映画っていうより4Dですよね。4D映画みたいな感じで、頭の中に浮かべて。で、音だけじゃなくて…自分の中では匂いだったり視覚だったり、そういうものも含めてイメージして。それを音楽で表現する、って感じなんで。
H:これはどう思う?岡田くん。
O:(笑)
H:天才的な発言だと思わない?(笑)
キ:いやいや…(笑)
O:すげぇ…(笑)
H:岡田くんはどうやって作ってた?最近作ってる?(笑)
O:ぜんぜんやってないですね(笑)まあでも、イメージですよね。インストだったんで。
H:岡田くんも、ほら、楽器が特にどれが好きとか、そういうタイプじゃないじゃん。
O:そうですね。打ち込みが…(笑)
H:打ち込みだよね。だから似たようなもんだよね。
キ:似てますね。
O:そうですね(笑)
H:やっぱりイメージは大事だね。
O:イマジネーションですね。
H:だから、なにが好きか、っていうのも大事だよ。だからね。「ニュー・オーリンズ大好き!」っていう気持ち、すごく僕は強かったから。まあ大瀧くんもそうだしね。おんなじようにカリプソの…だから…これはなんだ?おんなじ、おんなじだよ(笑)
キ:(笑)
H:んー…じゃあさ、なんかキーポンくん、かけて、自分の。
キ:あ、じゃあ自分の曲で。いまちょっとカリプソの話題が出たんで、カリプソを意識した…カリプソをイメージしたナンバーですね。
H:はい。
キ:じゃあ、2曲目の"みんな夢の中"という曲をおかけしたいと思います。
みんな夢の中 - KEEPON
(from『真夜中ボーイ』)
H:なるほどね。これは…カリプソの気持ちなんだろうけど、やっぱりニュー・オーリンズのカルチャーの中に鳴ってるね、音が。
キ:そうですね。今回はニュー・オーリンズをコンセプトにしつつも…ニュー・オーリンズを基点にいろんなところを旅してる、みたいな。そういうイメージで録ってて。
H:なるほどね。
キ:それこそ、ニュー・オーリンズの街並みとかを勝手に妄想したりするんですよ。
H:[現地には]行かないほうがいいね、じゃあ。
キ:そうですね(笑)
O:(笑)
キ:それはやっぱり、マーティン・デニー(Martin Denny)聴いてて、実際にジャングルとか行っちゃうとつまんなそうですもんね。
H:大変だよね(笑)
キ:蒸し暑い部屋の中で聴いてるのがいちばんいいな、ってこないだ気付いたんです。
H:その通り。四畳半で作ったからね、僕も。
キ:(笑)
H:じゃあその、さっきも言ってたけど、ニュー・オーリンズの骨組みで作ったアルバムが『真夜中ボーイ』でしょ。
キ:そうです。
H:で、作っちゃうと、そこから先に行きたくなるわけでしょ。っていうことはいま、なにを考えてるわけ?
キ:いま考えてるのがね、テクノです。
H:あれ?(笑)
O:ええ…(笑)
キ:テクノのことばっかり考えてたら段々髪が短くなってきて…
H:そんなに短くはないけどね(笑)
キ:そうですかね?前まではビートルズっぽい髪にしてたんですけど。
H:そうか。テクノね…テクノのやり方は知ってるんだね(笑)
キ:そうですね。それこそ、そもそも、元々…テクノっていうジャンル自体にはものすごい…こう言っちゃなんですけど、偏見というか、がありまして…
H:(笑)
キ:シンセサイザーだったり打ち込みを駆使した音楽って、僕の世代では巷で流れてた音楽なんですよ。
H:だろうな。んー。
キ:で、そういうものに対してビートルズだったり、先週かけたレスリー・ゴーア(Lesley Gore)だったり。いわゆる、人間が作ってるんだなぁ、っていう、アナログな音楽が好きだったんで。そもそもテクノっていう音楽ジャンル自体、まったく避けてきたんですよ。
H:じゃあ、YMOは聴いてないわけだね。
キ:YMOは今年の夏、聴きまくって…
H:あ、ホント?聴いたんだ(笑)
キ:はい。あ、でも、はっぴいえんどに出会ったとき、細野さんがYMOの一員っていうことはもちろんわかってたんですけど。
H:うんうん。
キ:その、なんでしょう…それでもテクノってあんまり気にかけたことがなくて。で、それで最近知りはじめたんですけど。
H:んー。
キ:逆に、テクノってものすごい人間的だな、って感じるようになってきちゃって。
H:(笑)いいねぇ、包容力があるっていうか…大人だよね(笑)
O:(笑)
キ:僕が聴く曲ってだいたい、グル―ヴ感があったり、生身の人間のソウルフルな感じだったリ。人間的な温かさがある曲を好んで聴いてるんですけど。テクノってまったくそういう…自分の人間的な奥底に響いてこないんですよね。また違う快感があるんですよ、テクノの打ち込みのビート。
H:違う快感ね。そらそうだ。
キ:それがおもしろいな、って気付いたのが…たまたま僕、ものすごい頭痛持ちで。すごい頭痛がひどいときにテクノを聴いたんですよ。
H:んー。
キ:そしたら、なんとなく治っていったんですよ。
O:(笑)
H:あ、そう(笑)
キ:やっぱり、いつもとは違う部分が刺激されてるのかな、と思って。
H:それはあるかもね。
キ:なんかあの…風邪引いたときとかにスライ(Sly & The Family Stone)とかジェームス・ブラウン(James Brown)とか聴いてると、鬱陶しくなってきちゃうんですよ(笑)
H:んー(笑)
キ:気にかけないで、っていうか、無理をしてグル―ヴを聴かされるのとはまた違うフィールドとして、テクノをやってみたいな、と思ってるんですよ。
H:なるほどね。テクノは脳の音楽だから…脳のイマジネーションだけの世界で作ってきたんだよね。
キ:はい。
H:それまで僕は肉体的にやってきたのに、そっちの快感に目覚めちゃったでしょ。そういう時期なんじゃないの?いま。
キ:あ、ホントですか?
H:(笑)いやー、もう、自由だから。
キ:そうですよね。
H:さっきも言ったけど、これから長いからね。15歳でしょ?まだ。で、だいたい音楽の円熟期っていうのが30歳ぐらいなんだよね。
キ:あー、そうなんですか。
H:あと15年もあるんだよ(笑)
キ:半分。半分切りました(笑)
H:だから、それまでに飽きないようにしないと(笑)
キ:でも、逆に音楽以外に興味があることってなかなか少ないんで、それはないかな、って一応…そう願ってますね。今は。
H:まあ、そうね…今は掘り起こすとなんでも聴ける時代で、飽きることはないと思うけどね。
キ:んー、その、アーカイヴを一気に、好きな様に見渡せちゃう、っていうのがちょっと罪悪感があるんですよね。でも、慣れちゃえば平気なんですかね。
H:あのね、大瀧くんの話がよく出てくるけど、今回。彼とはそういう話をいっぱいするわけだよ、当時。「こんなシングル盤見つけた」とかね。ニュー・オーリンズの元になるような…例えばプロフェッサー・ロングヘア(Professor Longhair)まで辿りついたり。そこから先はニュー・オーリンズってあんまりなかったけど(笑)最近、みんな亡くなっちゃったはない。デイヴ・バーソロミュー(Dave Bartholomew)、アラン・トゥーサンも亡くなって、ドクター・ジョンもいなくなって。ついこないだはアート・ネヴィル(Art Neville)が亡くなって。みんないなくなっちゃった。いなくなっちゃったっていうことは、後を継ぐ人が必要だな、って思ってるわけよ。だから、ニュー・オーリンズにここで飽きちゃダメなんだよね(笑)
キ:(笑)
H:まだまだ深いから。
キ:でもなんか、ニュー・オーリンズの音楽に出会ったときから思ってるんですけど、この音楽はたぶん、一生付き合っていく音楽なんだな、って思うくらい衝撃がありました。
H:もう一生付き合ってるもん、ぼくも。うん。ああいう、ドクター・ジョンのようなピアノ、これから練習して弾きたい、なんて思ってるんだよ。いまね。弾けないけど(笑)誰もああいう風に弾けないから。そういうことをやってかないと、途切れちゃうでしょ?
キ:そうですね。
H:そういう話をする仲間がいないんだよ、最近。みんな死んじゃったから(笑)だから…若いから、死なないからよかったよね。
キ:(笑)
O:(笑)
H:こっちの番だけどね、そろそろね。
キ:いやいや…
H:まあ、楽しみ、っちゃあ楽しみだよな。んー。
キ:はい。
H:なんか、じゃあ、聴かせてもらおうかな。
キ:じゃあ、持ってきたものから…どうしようかな。じゃあ、これは昔から大好きな曲なんで、スパンキー・アンド・アワ・ギャング(Spanky & Our Gang)っていう…
H:あー。懐かしい。
キ:ひと言でいうと…粋なコーラス・グループなんですけど、その"Like To Get To Know"という曲を聴きたいです。
H:あ、いっけね、破れちゃった…
キ:あ、ぜんぜん大丈夫です。
H:汚ったねぇ…(笑)
キ:中古なんで(笑)
Like To Get To Know - Spanky & Our Gang
(from『Like To Get To Know』)
H:まあ、ソフトロックと呼ばれてたやつだよね。そういうのもよく聴いてるんだ、じゃあ。
キ:ソフトロックは、わりとそうですね、東海岸もののほうが好きですね。
H:おお…(笑)
O:(笑)
キ:っていうこだわりもあったり…(笑)
H:こういうのは生意気っていうのかね(笑)
キ:そうなんですかね?
H:いやいや…(笑)いや、そうかもしれないなぁ。なるほどね。
O:(笑)
H:えーと、これから誰か、会いたいと思う人いる?
キ:会いたい人ですか…うーん、そのドクター・ジョンが死んじゃったんですよね。
H:ね。そういう人たちはもういないから。
キ:『真夜中ボーイ』の…先週かかった"ニューオーリンズにいこう"っていう曲は、まだドクター・ジョンが生きてるときに作ったんで。
H:あー、そうね。んー。
キ:で、普通に親しみをこめて作った感じだったんですけど、いよいよ発売のプレスをしてる間ぐらいにお亡くなりになったということを聞いて…
H:なるほど。
キ:発売するの大丈夫なのかな、って、ちょっとためらっちゃったんですよ。そんなことがわかってるなら、もうちょっと、軽い気持ちで作らなかったのな、って。
H:まあ、しょうがないよね。それは。
キ:あと…死ぬまでに一度会いたいのはブライアン・ウィルソン。
H:死ぬまでに、っていうのは相手[ブライアン]がね(笑)
O:(笑)
キ:いやいや!僕がです(笑)
H:ホントかね?(笑)ブライアン・ウィルソンね。僕は一度、お会いしたね。
キ:あー、ホントですか。
H:まあ、でも、どうなんだかね。お歳だよね。んー。日本ではどうなの?
キ:日本。いやぁ…
H:僕がおすすめするのは山下達郎だね。
キ:(笑)
H:会いに行ったほうがいいと思うな。
キ:会いに、行けるんですかね?
H:いや、紹介するよ。
キ:ホントですか!
H:うんうん。
キ:いや、だったらぜひ…もう、本当に…えー…
H:なんか、会っておいた方がいいと思うね。
O:(笑)
H:他に、僕はね、思い当たんないんだよな。んー。
キ:いや、もう、きょう細野さんにお会いして、ラジオにも出させて頂いて。「辿りついちゃった感」が満載なんですけど…
H:いやいやいや(笑)こっからだから。
キ:こっからですか。達郎さん…[「サンデー・ソングブック」に]ハガキも相当書いてたんですけど、1回も読まれたことがないんですよね。
H:ホント?あれ?(笑)
O:(笑)
H:なんでかなぁ(笑)
キ:それこそ『Smile』のジャケを完璧にトレースして、"Heroes and Villains"をリクエストしたのが思い出なんですけど…
H:取り上げられなかった?
キ:はい。
H:悔しかったんじゃないかな(笑)
キ:(笑)
H:あー、そう。でも、おもしろいと思うよ。会うと。たぶん、山下くんのほうがしゃべると思うけど。
キ:(笑)
H:負けずにしゃべるね?
キ:しゃべります。大丈夫です。MCも止まんなくなっちゃうんですよね。
H:(笑)
キ:普段学校とかで話せる相手がなかなかいなかったんで…
H:あー、やっぱりね。
キ:その分がMCになった途端、バァーって出ちゃうんですよ。
H:いやいやいや…岡田くん、どうする?これ。今後。
O:どうしましょうかね(笑)
H:どうやって面倒見てくの?
O:いやいやいや…(笑)
H:あの、新曲、何曲か僕がミックスをね。やらせてもらうかもしれない、っていうね。
O:そうですね。2曲ほど。
H:それってどこで、いつ出るの?
O:細野さんのミックスができ次第…(笑)
H:あ、そうなんだ(笑)あの、考えるわ。
O:はい。シングル盤で、出そうと思ってます。
H:あ、そうすか。シングル盤でね。じゃあ、ちょっと…きょうぐらいからやりますんで。
O:お…拝んどこ(笑)
H:もう次の構想っていうか、入りこんでるの?
キ:次の構想はいま、計画中なんですよ。
H:んー。楽しそう。まあ、テクノやるかどうかは知らないけどね(笑)
キ:(笑)
H:いやー、なんか…大瀧詠一の生まれ変わり、っていうね(笑)
O:(笑)
H:今のところはそうだよ。でも、この先はそこから出ないといけないっていうね。
キ:そうですね。今後、いろいろ考えなきゃな、って感じですね。
H:もう、考えなくてもいいよ、あんまり。好きなことを持続できれば。
キ:でも、ホントに去年の5月に『泰安洋行』をレコード屋さんでゲットして。で、その様子がたまたまテレビに…
H:あ、観たよ、それ(笑)
キ:あ、ホントですか?(笑)
O:ちょうど僕が映像を送ったんですよね。
H:そうだそうだ。それで見せてもらったんだ。
O:テレビに出たやつを送ってて。で、野上さん(野上眞宏)の写真展にキーポンくんが来てたんで。細野さんに、あの映像観ました?って訊いたら「観た」って言うんで…「来てましたよ、きょう」、って…(笑)
H:そうかそうか(笑)
O:「話します?」って言ったら「話してみようかな」って言うんで、楽屋のほうに…
キ:はい。あの日のことは一生忘れられませんね。
H:あれ、何年前?
キ:去年です。
H:去年か。1年の成長ってすごいね、この歳は。
キ:いやいやいや…
H:なんかこう、若い所為かね、1年でずいぶん変わるよ。そう思わない?
キ:自分だと、あんまり実感ないですね。
H:そうか。僕たちはそうでもないもんね(笑)
O:(笑)
H:いやー、新陳代謝というか、うらやましいよな。
キ:いや、でも、それこそさっき言った想像っていう面でも、細野さんの音楽ほど想像を掻き立てられる音楽はないんで…本当に、これから…自分もどうしようかな、って感じですね。
H:もうね、みんなにも言ってるんだけど、あとはよろしくね、って感じなんだよね。
キ:いやいや…
H:そういう人が出てきたら、もう…最初はね、絶望してたんだよ。最近の音楽的なカルチャーが、もうダメかな、と。受け継がれてないしね。誰も50s'、60s'、あんまり聴かなくなっちゃって。で、40s'なんてもちろん聴いてない(笑)でも、先週の音くん(福原音)が…
O:登場…(笑)
H:登場してビックリして(笑)次、キーポンくんでしょ?まだ他にもいると思うんだよね。
キ:そもそも自分でも、好きな音楽を受け継いでいくっていうのは、自分のオリジナルをどこまで打ち出していけばいいのか、っていうのがなかなか悩みだったんですけど。
H:はいはい。
キ:影響が濃く出てるっていうことはポップスにおける神髄だ、っていうことを細野さんに言って頂いて。
H:そうだ!
O:(笑)
キ:それで…これからもっと、自分でいろいろ探索してがんばらなきゃな、っていう気になりましたね。
H:うれしいね!(笑)影響プラス自分の世界を作ってくっていう。最初は影響されたまんまでいいよ、もちろん。でも、もう既に世界ができてるんで。
キ:そう、ですか?
H:うん、そう思うよ。
キ:いやー、そう言って頂けるとホント、うれしいです。
H:音がよくなった、っていうのが最初にね、言いたいことだったから。
キ:そうですね。たぶん、機材の使い方とかもわりと丁寧になってきたのかな、と。自分でも…(笑)
H:まあ、今後ね、また付き合いがあると思うんで…
キ:うれしいです。
H:きょうはこれくらいにして、またそのうち、1年後ぐらいに来てもらおうかね。
キ:あー、ホントですか!やったー!
H:1年は僕にとって10年だから…
キ:(笑)
H:はい、それでは…キーポンくんでした。
キ:はい、ありがとうございます。
H:岡田くん、ありがとう。
O:はい。
2019.09.08 Inter FM「Daisy Holiday!」より
H:こんばんは。細野晴臣です。さぁて、きょうは…どういうことになるかね(笑)来てくれてるのは…
O:こんばんは、岡田崇です。
H:えーとね…後で紹介してね、隣にいる少年をね(笑)
O:(笑)
H:どうですか、夏は。
O:いやー、暑かった…ようやく落ち着いてきた感じがしますが。
H:もうね、僕はもう、ホントに負けたんだよね、暑さに。いろんなことに負けてんだけど…ぜんぶに負けたかな。もうなんにも勝たないね。
O:(笑)
H:えー…じゃあさ、隣の人、紹介して。
O:隣にいるのは、「恐るべし10代」。
?:いやいや…(笑)
H:(笑)
O:15歳のキーポンくん(KEEPON)です。
キ:こんばんは。初めまして。
H:来たねー、キーポン。
キ:来ました。僕も暑さにやられました。
H:ホント?いちばん若いのに(笑)
O:じゃあ同じだ(笑)
H:えーと…先週の放送、聴いたの?
キ:先週は聴きました。
H:ちょっと上の先輩が出てたでしょ?
キ:そうですね、僕で言うと「ちょっと先輩」ぐらいですよね。
H:ちょっと先輩(笑)でも、みんな10代だよね。いまいくつ?
キ:僕はいま15歳、ちょうどこの収録から1週間後で16歳になっちゃうんですけど。ギリ、フィフティーンで…
H:あ、そう。しっかりしてるね。
O:(笑)
キ:いえいえ…こう見えてダメダメです。
O:この中でいちばんしっかりしている(笑)
H:しっかりしてるよね。じゃあ、ちょっと、進行をお願いしようかな(笑)
O:じゃあ、キーポンくんの司会で…(笑)
キ:あ…えー、僕が司会ですか(笑)えーと、これはもう、曲に行っちゃっていい感じですかね?
H:いいよ。もう紹介しよう。
O:自己紹介がてら…
キ:じゃあ、えーと…僕はひとりで、多重録音で曲を作ってるんですけども。大好きなニュー・オーリンズ形式を基調とした、僕の4thアルバムが7/12に出まして。
H:しっかりしてるね(笑)
キ:そこから1曲をおかけしたいと思います。
H:ぜひぜひ。
キ:じゃあ、曲は…9曲目の"なんてすてきな日"って曲を、お願いします。
H:ちなみにアルバムは、「真夜中の…」
O:『真夜中ボーイ』。
キ:あ、そうでした、タイトルを忘れてました。『真夜中ボーイ』っていうアルバムから、"なんてすてきな日"。お聴きください。
なんてすてきな日 - KEEPON
(from『真夜中ボーイ』)
H:なるほどね。これは自宅で…ドラムも自分でやってるんでしょ?
キ:そうです。ドラムから歌までぜんぶ…はい。
H:なかなか良い音作ってるなぁ。
キ:ホントですか。
H:1枚目より良くなったね。
キ:はい!ちなみにきょう、1枚目、2枚目、3枚目もお渡ししたいと思って持ってきたんです(笑)
H:あ、ホント?そんなに出してるの?(笑)
キ:以前細野さんにお渡ししたときは自分で糊づけしてたやつだったんですよ。
H:あ、そうだったよね。
キ:それで、正式に印刷版ができたんで、よかったら聴いてください。
H:じゃあ、ありがとう。あ、ホントだ。
キ:今回、『真夜中ボーイ』っていうアルバムを出したんですけど、それにあたっていちばん大変だったのが、音像をきちんと作るっていうことが…
H:音像ね。できてる、できてる。
キ:え!それは、もう…
O:よかったね。
H:ずいぶん進歩したよね。1年で。
キ:いやー、それもなにも、細野さんのおかげですよ、ホントに。
H:いやいやいや…でも、「恐るべし」だね。たしかに(笑)
O:うん(笑)
キ:いやー…
H:どういう音楽環境で育ったの?きょう、お父さんといっしょに来たでしょ?
キ:はい(笑)
H:お父さんの影響はあるわけ?
キ:お父さんの影響は…僕が言うとちょっと悲しいかもしれないんですけど、まったく無いです!(笑)
O:無いんだ(笑)
H:無い…(笑)
キ:ごめんねお父さん。
H:いや、でも…こないだ、先週来た音くん(福原音)もそう言ってたしね。
キ:あー、ホントですか!やっぱりそういうところから生まれてくると…
H:突然変異なのかね、なんなんだろう。いつからこういう音楽…たとえばニュー・オーリンズなんて、いつから?
キ:ニュー・オーリンズは…もちろん細野さんの音楽であったり、はっぴいえんどに出会ってからなんですけど。元々音楽を聴きはじめたのは、教育番組で、Eテレの『クインテット』っていう番組がありまして。宮川泰さんの息子さんの宮川彬良さんがやってる番組で。
H:なるほど!おもしろいもんね。
キ:で、なぜか子ども向けなのにものすごいシブいクラシックとかをやったりするんですよ。まあ、パペット人形劇なんですけど、それが大好きで。
H:いやー、あれはおもしろいだろうね。んー。
キ:で、そのパペットの中にトランペットを吹くキャラクター(シャープ)がいるんですけど、そのパペットがあこがれで、自分も「トランペット吹きたい!」って言うようになったみたいで。で、3歳の頃に初めて手にした楽器がトランペットだったんですよ。
H:お父さんに買ってもらったの?
キ:はい。
O:(笑)
H:お父さんにいろいろ訊きたくなってきたな(笑)
キ:(笑)で、いろいろ、手当たりしだいで…そうですね、いちばん最初の頃の音楽との出会いはクラシックだったんですけど。トランペットでクラシック吹いたりしてて。でも別に、どこか、塾みたいなところに行ってるわけでもなく。
H:うんうん。吹けたんだね?
キ:はい。なんか、ホントにのびのびと見守っててくれたんで…(笑)
H:それがなんでニュー・オーリンズに…(笑)
O:(笑)
キ:そのままトランペットでサッチモ(Louis Armstrong)のほうに行ったり…とかではないんですよ(笑)
H:じゃないんだね(笑)
キ:たぶん、それだけだったらこんなにいろいろ聴けてないと思うんですけど。
H:んー。
キ:なんか…クラシック音楽から次に、もうワンステップ進んだのが、なによりビートルズ。
H:あー、ビートルズなんだ。
キ:5歳の頃…だっけなぁ…
H:早ぇな(笑)
O:クラシック時代は2年なんだね。3歳、4歳…
キ:[クラシックは]なんとなく、根底にある感じですね。自分の中でも。なのでポール・マッカートニーの曲とかも、ものすごくすんなり入ってきて。
H:んー。
キ:それで、なによりも今に通じてる部分が、やっぱり「きれいな曲」が好きなんですよね。ロックにしろ、どんだけハードな曲にしろ、聴き心地が良い曲が好きで。
H:なるほど。
キ:で、自分が好きじゃないなって思う曲は…どれだけ静かな曲でも好きじゃなかったりします(笑)
O:(笑)
H:はっきりしてるよな(笑)
キ:で、そこからビートルズ一本の小学生時代がはじまるんですけど…
H:へぇ、ビートルズからはじまったんだね。なるほど。
キ:はい。で、もう、本当に…これ、自分で言うのも畏れ多いんですけど、「これ以上ビートルズを知ってどうするんだ」っていうときが急に来たんですよ。
H:いくつのとき?(笑)
キ:それが小学校6年ぐらいで…
H:(笑)
キ:6年を通して足元から喉元までビートルズでいっぱいになっちゃって。なんかもう、はやく吐き出したかったみたいなんですよね。それで、作曲をはじめるんですよ。
H:んー。モーツァルトみたいだね。
キ:え、そうなんですか?
H:いや、ぜんぜん違うけど(笑)
キ:(笑)それで…毎回、ここを話すとすごい長くなっちゃうんですけど…作曲するときに、いままで聴いて育ってきたのはやっぱりビートルズだったり、洋楽の…洋モノばっかりだったんで。頭の中にはメロディーだったり…ビートルズそっくりのものがいっぱい浮かぶんですよ。
H:あー、わかるわ。うん。
キ:で、そもそもはビートルズみたいなものを自分なりに、今の時代に表現していきたい、っていうつもりで作曲をはじめたんですよ。
H:んー。
キ:で、そこで躓いたのが作詞について、なんですけど。
H:…そのときに会ったことある(笑)作詞について訊かれたことがある。
キ:あー、それは細野さんと僕が初めて…
H:そう、初めて会ったときだ。
O:野上さん(野上眞宏)の写真展ですよね。
H:そうか。
キ:日本語の載っけ方とか、まったくの手当たり次第でやってたんで。で、1作目を作ったときの音源はホントに…自分のオリジナルでの日本語、なんですよ。
H:うん。
キ:なのでいま聴いても聴き心地が悪いというか、噛み合わせが悪い感じなんですけど…どうしても汗かいてきちゃう、みたいな。そういう音源なんですけど…
H:(笑)
キ:もともと僕は英語で作ろうと思ってた時期があって。ビートルズみたいな曲をやろうとすると、どんなにデタラメでも英語の響きだけが頭の中に浮かんできて。もともと、ビートルズの歌詞の意味とかはあんまり考えずに、響きで捉えてたんで。
H:おんなじだ。
キ:やっぱそこ、同じですか?
H:はい。
キ:で、そうやって英語で作ってみたんですけど…その音源も一部は僕のパソコンの中に残ってて、いま絶対に聴きたくない音源…(笑)
O:(笑)
キ:なんか、英語で歌ったは歌ったものの…ものすごい、自分で思ってた通りの響きの曲は作れたんですけど、歌ってて、まるで他人の曲を歌っているような気持ちになるんですよ。
H:まあね、んー。
キ:で、そこでやっぱり、自分は日本人なんだな、って。
H:それはいくつのとき?(笑)
キ:これは中学校1年で…
H:気が付くのが早すぎる(笑)
キ:いやいや…(笑)学校がちょうど、インフルエンザとかでお休み[休校]になってる期間で…そこら辺で一気に自分で曲を作りましたね。
H:はい。そこからなんでニュー・オーリンズに行ったの?(笑)
キ:(笑)すみません、これ、簡潔に言うのがものすごい大変で…
H:長いんだろうね。
キ:いまちょうど、パート2に入ろうとしているところです。
O:(爆笑)
H;あ、そう(笑)じゃあね、そのニュー・オーリンズってタイトル付いてる曲、聴こうか。
キ:あ、いいですか!じゃあ、同じく『真夜中ボーイ』から、"ニューオーリンズにいこう"という曲を聴いてもらいたいと思います。
H:なんか長そうだね、ニュー・オーリンズに行くまで…(笑)
キ:(笑)
ニューオーリンズにいこう - KEEPON
(from『真夜中ボーイ』)
H:ニュー・オーリンズ行ったことあるの?
キ:無いです。
H:(笑)
キ:ガンボも食べたことないです。
H:ないか(笑)
O:(笑)
H:いやね、ずっとこの『真夜中ボーイ』を聴いてると、大瀧詠一の生まれ変わりかな、と思っちゃうんだよね。僕はね。それ言われるのイヤでしょ?どうなの?
キ:けっこう…どうですかね。去年、大瀧詠一さんのトリビュート・アルバム(『GO! GO! ARAGAIN』)に出させて頂いて。
H:はいはい。
キ:で、大瀧さん…あー、いま「イヤでしょ?」って細野さんから言われるのも、ものすごい不思議な気分なんですけど…(笑)
H:そうかそうか(笑)
O:(笑)
キ:まあ、そうですね、僕はキーポンで在りたいですね。
H:まあね、先は長いから。そうなると思うけど。
キ:でも、「大瀧詠一みたいだ」って言われるのは、正直にうれしい部分もあります。素直に。
H:だからね、前のときと歌が変わってきたじゃない。
キ:はい。
H:声が似てるんだね。
キ:(笑)いろんなアーティストの曲を聴いてきたんですけど、大瀧さんの歌って僕の声質によく合うんですよね。
H:合ってるね。
キ:Low-Middleというか。僕、学校でのテンションもLow-Middleなんで…(笑)Low-Middleがちょうど合うんですよね。
H:なるほど。
キ:で、このアルバム作る前はまだ変声期前だったんで。
H:あ、もう変声期は終わってるよね?
キ:終わってます。
H:んー、じゃあ、大丈夫だ(笑)
キ:それまではビートルズとかも聴いてて、ジョン・レノンだったりポールだったり、わりと高らかに…シャウトするほうを得意としてたんですけど。あるとき、あ、自分けっこう声低いんだな、ってことに気づいて…
H:低かぁないけどね…
O:(笑)
キ:だから、最初は細野さんの素敵な低音の声を聴いて、うらやましいな、ってあこがれてたのが、いつの間にか出るようになっちゃった、っていうのもけっこう最近…
H:ホントかね?(笑)
キ:はい(笑)
H:だから、時々かけてたんだけど…なんだっけな、"朝も早よから1番線"って、"CHOO-CHOO ガタゴト"みたいな曲が…(笑)
キ:(笑)
H:僕の曲で大瀧が歌ってるようなイメージなんだよ。僕が聴くとね。不思議な気持ちになるんだよね。
キ:あー…(笑)実際にそうやって作られた曲ってあんまり無いですよね。
H:無いんだよ。でも、いまね、すごく意識しだしてんのよ。
キ:あ、そうだんですか!
H:大瀧くんが生きていればいっしょにまたやりたいな、って思うわけだよね。いないから。で、いたら[キーポンくんは]会いに行ったじゃん。しょうがないからここに来てる…(笑)
キ:いやいや!そんなことないです(笑)
H:あ、そっか(笑)でもね、生まれ変わり、っていうのがあるんだな。
キ:んー、あるんですかね?
H:あの…大瀧くんが亡くなったときにはもういる[生まれている]んでしょ?
キ:はい。
H:(笑)
キ:でも、その頃はぜんぜん、はっぴいえんどとか…畏れ多いんですけど、知らなくて。
O:何年前なんだっけ?はっぴいえんどを聴いたのは。
キ:はっぴいえんどを初めて聴いたのはそれこそさっき言った…中学校1年のときに作曲をはじめまして。
H:うんうん。
キ:で、一応、自分の手当たりしだいで日本語で作った1stアルバム…『Keepon Draw Four』っていうアルバムなんですけど。あれを音楽好きの…とは言っても50代くらいの方なんですけど。その方に聴かせたら、「これははっぴいえんどみたいだ!」ということを言われて。
H:そうなんだ。んー。
キ:で、[はっぴいえんどを]まったく意識をしていなかったにもかかわらずそう言われた、っていうのが気になってしょうがなくなって。で、その晩にYouTubeではっぴいえんどを検索して…それで聴けちゃうっていう時代もなかなかすごいな、と思うんですけど(笑)聴いた瞬間に、ビートルズ以来の衝撃が起こりました。
H:そっか。なるほど…やっと辿りついたな、はっぴいえんどに(笑)
O:(笑)
キ:で、そこでニュー・オーリンズに…っていうか、はっぴいえんどが突破口になって、そこからいろんな音楽を知りだした感じですね。
H:んー…いやー、大瀧に聴かせたいなぁ。なんて言うかな、と思ってね。んー。だから、先週出た音くんは僕の生まれ変わりなんだよ。
キ:んー…
H:不思議でしょうがないんだよ(笑)
O:おもしろかったですね(笑)
キ:僕もちょっと、細野さんに生まれ変わりたいです。
H:みんな生まれ変わり…まだ生きてるんだけどね(笑)で、音くんはウナ・メイ・カーライル(Una Mae Carlisle)を聴いてたって、僕はもうビックリして。今回はまた、違う種類の驚きがあるよね、キーポンくんはね(笑)なんだか不思議な気持ちになる、っていうね。岡田くんはどう思うの?
O:いや、感心しきりというか…去年、初めてCD-R頂いて、ビックリしちゃって。これをぜんぶ多重録音で、演出までしてるっていう、ことじゃないですか。彼の音楽の…
H:世界観を作ってる。
O:それがすごいなぁ、と思って。ただ楽器ができるとかね、そういう人は多そうだけど。
H:子どもじゃないんだよね。なにこれ?あの、ほら、卓球の選手みたい(笑)スーパーアスリート。
キ:この前もあれですよね、「オリンピック出れる」ってことを言ってくださいましたよね。
H:出れるよ。
キ:出れますかね?
H:そういう種目ある?
O:(笑)
H:いやー、だから…最近、ダンスも上手いじゃん、子どもたちが。ヒップホップ系だけどね。そういう世代が…へんてこりんな世代に…
O:ちょっと新しいところに入ってきてますよね。
H:入ってきたよね。それが驚きだよ。
キ:いやー…そうですかね?自分ではあまり実感がない…
H:でしょうね。
キ:でも、それもなにも、細野さんたちの音楽を聴いてるからこそ育ってきたんだな、って自分では思うんですけど。
H:(笑)ただ、普通は聴いてないんだよね。子どもたちは。
キ:そうですか?
H:聴かない、聴かない。聴いてるっていうのがちょっと驚きだよね。まあ、でも、これから長いよ。
キ:長いですかね。
H:長いよ。いま完成しないほうがいいよ(笑)
キ:(笑)
H:僕、まだ、70で完成してない…72か、ごめん、73かな?72だ(笑)
O:(笑)
H:それじゃあね、僕に聴かせたい曲ってなんか持ってきてくれてるんでしょ?
キ:あ!そうです。
H:それ聴いてみたいんだよね。
キ:じゃあ、どうしようかな…今回、いろいろ選ぶにあたって、本っ当に、自分のレコード棚で一晩更かしたみたいな感じで…(笑)
H:(笑)
キ:細野さんに聴かせる、っていうか、細野さんといっしょに聴ける、ってなると…しかも、数曲って言われてたんで。
H:なんだろうね…
キ:こんなに自分とレコード棚が向き合ったことないです、本当に。
O:(笑)
H:(笑)
キ:で、一晩にらめっこして、結局、6曲にしぼったんですけど。
H:おお…
キ:で、今回、自分の棚からレコードも持ってきました。
H:お、なんだろう。ちょっと見せてもらっていい?
キ:はい、いいですよ。
H:よいしょ…えーと、なになに…んー、なるほど。おお…懐かしいっすね。ひぇ…お、なんだこれ、ライ・クーダー(Ry Cooder)が入ってて、ジミー・ロジャース(Jimmie Rogers)と…どれがいいかね。
キ:どうしよっかな…じゃあ…参ったなぁ…
O:(笑)
H:なんか選んでくれないと。
キ:はじまんないですよね、どうしよう…
H:でれでもいいよ、大丈夫だよ。
キ:じゃあ、最初に"なんてすてきな日"っていうポップな曲をかけたんで、自分の…まあ、ロックももちろんなんですけど、基本的にヒット曲が僕、大好きなんで…かといって自分でヒットを作れる気はしないんですけど…
H:(笑)
キ:じゃあ、そういったポップなナンバーで、僕の大好きなレスリー・ゴーア(Lesley Gore)の…
H:やっぱりね。
キ:"Maybe I Know"をかけたいと思います。
Maybe I Know - Lesley Gore
H:いやいや…僕がこれ聴いてたのは中学1年くらいだね、やっぱり。
キ:あー、僕と同じぐらいですね(笑)
H:ヘンだよね(笑)なんだこれは?(笑)でも、当時聴いてた音楽とかも昨日聴いたような感じなんだよね。ぜんぜん古くならないよね。
キ:んー。
H:だからレスリー・ゴーアはずっと生きてるし…カヴァーしてる人多いけどね、いま。
キ:たぶん、聴いたときの感覚も細野さんとおんなじ感じなんですかね?
H:同じなんじゃない?僕が中学のときに、ラジオ聴いて、こういうのいっぱい聴いてね。居ても立っても居られない感じがあるわけ(笑)
キ:わかります、わかります。
H:そんな感じなんだ。
キ:ワクワクするんですよ。ひとりで部屋で、ワクワクしちゃうんですよね。
H:そうそう。ブライアン・ウィルソンも[ロネッツの]"Be My Baby"を車で聴いて、うわ!と思って飛び出した、って言ってたね(笑)
キ:(笑)
H:そういうもんなんだよ、ポップスってね。
キ:あー、そうなんですね。
H:そこまで行かないとね。
キ:これ、あと余談なんですけど。
H:余談。
キ:僕はけっこう余談が多いって言われちゃうんですけど…(笑)さっきもオリンピックって話したんですけど、来年[東京で]オリンピック第2回目が開催されるじゃないですか。
H:そうね。
キ:そのとき[第1回の当時]、細野さんって…
H:高1かな。
キ:高1ですか。僕とあんまり変わらないんですね。
H:そうだよ、おんなじ。だから、同世代だよ、僕たちは(笑)
キ:(笑)
H:ヘンな感じだ(笑)そうだよ、オリンピック、来年でしょ。ちょうどそのくらいだよ。来年、高校生?
キ:次で高2ですね。
H:高2か。じゃあおんなじぐらいだ。なんだろう…
キ:不思議な感じが…
H:これ、なんなんだろう…この続きは来週だね。
キ:そうですね。
H:またね。
キ:はい。ありがとうございました。
2019.09.01 Inter FM「Daisy Holiday!」より
H:細野晴臣です。さぁ、えー、きょうも…先週の続きをやっていきます。もう一度、自己紹介をお願いしますね。
悠太:あ、細野悠太です。
音:福原音です。
H:ということで…実際の孫と、ヴァーチャルな孫がいるわけで…(笑)
2人:(笑)
H:僕は72歳になって、19歳…不思議ですよね、この差。なんでこんなに話ができるんだろう、と思って。で、こないだ…先週は悠太くんの持ってきた音楽聴かせて、ってところで終わっちゃったんで、そこからいきましょう。
悠太:はい。えーと、じゃあ…トロ・イ・モア(Toro y Moi)の…
H:トワ・エ・モア(Toi et Moi)?
悠太:トロ・イ・モアっていう人。
H:知らない(笑)
Who I Am - Toro y Moi
(from『Outer Peace』)
H:これもイマドキだね。カッコいいけどね。
悠太:そうだね(笑)
H:2人の音楽の差を聞いてると、自分の中には両方あるんで困ってる、っていう感じが出てくるんだよね(笑)
2人:(笑)
H:[自分の中では]わりと分離されてるんだよね。つながらないんだよ。
音:あー…
H:こないだ、僕、『HOCHONO HOUSE』作ったときにすごいそれを感じて。まあ、あれは昔やってたことをやり直すっていう大義名分があったからできたんだけど。普通の状態だとこういう音楽、いまできないんだよ。どうしても「昔」になっちゃうんだよね(笑)でも、聴くのは好きなんだよ。音が良いからね。どっちもフィジカルなんだけどね。ブギ聴いてもフィジカル。どうしよう。
2人:(笑)
H:どうしたらいいの?僕は。
悠太:どうしたらいいの?
音:どうしたら…
H:どうしたらいいんですか?僕は。このまま突き進んでいいんですかね?
音:いや…(笑)
悠太:(笑)
H:ブギはけっこうね、奥が深いようで浅い、っていうか…そんなに、歴史的にね、良いものは少ないんだよ。良いものはぜんぶやっちゃってるから…(笑)
音:そうですね…
H:あ、おんなじ意見だね?じゃあ(笑)
音:やっぱり、1940年代のヒットチャートに…ドン・レイ(Don Raye)…
H:ドン・レイ。ドン・レイが出てくるなんてのはね、ちょっと異常だと思う(笑)
2人:(笑)
音:僕は、[ポピュラー音楽が]ロックとかにつながるヒモみたいな…「蜘蛛の糸」みたいなのがブギウギにはある、と…
H:なるほど。学術的だよ、その考えは。たしかに。
音:だから、すごいよくわからないジャンルではありますよね。ホントに。
H:そうだね。まあね、ブギはロックの元とは言われてるけど、なんだろう…あのビートを受け継いでる人はあんまりいないんだよ、いまね。
音:あー、そうですね。大体はカントリーに寄るかルーツに寄るか、みたいな。やっぱり、あのエッセンスみたいな…ニュアンスはぜんぜん残ってないですよね。
H:ないね。ほとんど聴いたけど、カントリー系のブギも。みんな似ちゃってるの。
音:そうですね。
H:で、なんか、癖が付いちゃってて。♪テンテ・テンテ・テンテ・テンテ・テテンテン…ってなっちゃんだよ、みんな(笑)
音:普通に、「その時代の音楽」になっちゃってるんですよね。
H:なっちゃうんだよね。だから、ひらめきのあるブギを聴きたいんだけど、なかなか無い。
音:そうですね。
H:でも、ドン・レイ周辺のはみんな良いんだよね。フレディ・スラック(Freddie Slack)のはちょっと行き過ぎてるところがあるから。アヴァンギャルドに。
音:"Strange Cargo"とか(笑)
H:そうなんだよ!よく知ってるじゃん(笑)というか、まあ、話さなくてもいいぐらいだ、これ(笑)
2人:(笑)
H:いままで僕、こういうのひとりで考えてたんだよ。たぶん音くんもそうだろうと思うけど。
音:僕もずっと部屋で…
H:(笑)
音:夜中にそういうのを探して、ひとりでこう、うわー!って…(笑)
H:自分だな、それ(笑)自分以外の何者でもないわ。ヘンなの(笑)
音:(笑)
H:でもね、ロックのビートの初期の頃は、やっぱり、ヘンだったでしょ?コンボはみんな4ビートなんだか8ビートなんだかわかんないような、ね。ノリだったじゃん。でも、それに気が付いてる人は日本にいたんだよね。僕は中古本で、旅の途中にムッシュの本を読んでたの。かまやつさん(ムッシュかまやつ、釜萢弘)。
悠太:うんうん。
H:そしたら、スパイダーズの初期の頃に「ロックのビートはスウィングとエイト・ビートが混ざってるんだ」って書いてるわけ。なんだ、みんなそう思って、気が付いてんじゃん!と思ってね。自分だけだと思ってたわけ。それで僕はムッシュはすごいな、と思ったんだよ。そのことに気が付いたときにはもうムッシュが弱っちゃってて、会えなくなってた。で、もういまはいなくなっちゃって、話はできなくなっちゃったけど。話したかったんだよ。もっと早く話しとけばよかった、っていう。だから、音くんはもうスレスレだよ。僕と話ができるっていうのはね。まだ大丈夫だよ、僕(笑)
2人:(笑)
H:あと10年経つとね、もうわかんないからね。いまのうちですよね。じゃあ、なんか、音くん、もう1曲。
音:じゃあ…どうしようかな、ブギの話したんで。ブギのを1曲だけ持ってきてたんで…
H:なんだろう。
音:これ、けっこう好きな…"Rhumboogie"のアンドリューズ・シスターズ(The Andrews Sisters)のヴァージョンがいちばんブギっぽいので。
H:もう、聴かなくてもいいわ、これ(笑)
2人:(笑)
Rhumboogie - The Andrews Sisters
H:はい、アンドリューズ・シスターズの"Rhumboogie"。こもマスタリングがあんまり良くない、っていう。これはついこの間、僕も聴いてた。もう1回聴き直してたの、アンドリューズ・シスターズ。これもドン・レイだね。
音:そうですね。
H:ドン・レイっていう人は何者なのか。僕もよく知らない(笑)
音:ドン・レイが…僕、俳句を9歳ぐらいからやってて。
H:俳句?
悠太:(笑)
音:で、ドン・レイが80年代に「リリックは俳句ではないけど俳句に近い」みたいな題名の本を出してて。内容はぜんぜん出てこないんですけど、それもちょっと僕は…自分がやってる俳句が急に、ドン・レイから出てきたんで…すんごくビックリしました(笑)
H:そうなんだ。それは僕には無い経験だ。
[*『Like Haiku: Haiku・Tanka・Other Verse』(1993, Tuttle Publishing), ISBN: 9781462912414]
H:まあ、ドン・レイって人はなんだかよくわかんないけど、詞を書くほうが多いよね。曲もときどき、やってるみたいだけど。でも、ブギウギの名作にはみんなドン・レイが関わってる、っていう。"The House Of Blue Lights"もそうかな。
音:そうです。
H:"Scrub Me Mama"とかね、いろいろ…ぜんぶそう。
H:で、音くんのお父さんお母さんはどんな人なの?
音:いや、あんまりこういう音楽とかは…普通に。僕も嵐のコンサートとか行ってました、小学校のとき。
悠太:(笑)
H:あ、そうなんだ。
音:はい、ぜんぜん、ジャニーズとか…
H:普通はそのまま大人になるんだよね。
音:普通に、Mステ(ミュージック・ステーション)を楽しみに待ってる小学生でした。
H:普通なんだね。じゃあ、突然変異だね。不思議だ…
音:母親がそういうのを放っておいてくれたんで。好きなことをして…それが大きいですね。
H:そうか。悠太くんの親御さんはどうなの?
悠太:それはウンチャイがいちばんわかってるんじゃない?(笑)
音:(笑)
H:(笑)まあ、普通…
悠太:普通?
H:普通じゃないか(笑)
悠太:普通じゃないよ、なんか…おかしい(笑)
H:おかしいか(笑)まあね…あの、僕の娘の子どもだよね。
悠太:そうですね(笑)
音:その通り…(笑)
H:僕の娘は[悠太のことを]「耳が良い」って自慢してたね。
悠太:あー…
H:んー。そこ[スタジオ]にいるけどね(笑)まあ、だから、隔世遺伝なのかね、そういう意味ではね。だから、いっしょに歩いてると恥ずかしいんだよね。似てるから、みんな。
悠太:(笑)
H:すぐバレちゃう(笑)遺伝ってこわい、と思って。
悠太:いや、もう、ホントにね、似てるって言われるんで…
H:言われるよね、かわいそうに。
2人:(笑)
H:僕が50…ん?いくつのときに生まれたの?あ、そっか、ミレニアム・ベイビーだ。2000年生まれなんだよ、2人ともね。
悠太:そうだね。
H:覚えやすいよね。2019年だから19歳、ってすんごいわかりやすい。つまり19年前ぐらいの僕…あ、まだ悠太が4,5歳の頃に、カイ(青山CAY)でライヴやってたときに観に来て…Sketch Showやってたのかな?で、曲と曲の間で、悠太が、客席から、「ぼくのおじいちゃん!」って。なんだよ、あれ(笑)
2人:(笑)
悠太:僕にもわからない(笑)
H:ドッ、て、会場がウケたの(笑)
悠太:(笑)
H:なかなか、間を縫ってやってくるな、と思って。
悠太:いや、申し訳ないです(笑)
H:いや、いいんだよ(笑)お笑いの素質もあるよね。
悠太:お笑い?(笑)
H:ヘンな踊りとか好きでしょ?だって。
悠太:あー、ヘンな踊りは大好きだね。いっつも家でやってるからね。誰も見てないところで。
音:(笑)
H:あと…前、小っちゃい頃にこの番組で紹介した、あの…
悠太:あー、パラブカル・スピーチ(Parabuccal Speech)?
H:そう!やって、ちょっと。
悠太:コンニチワ!ボクハ、ホソノユウタダヨ!
H:(笑)
音:(笑)
H:これはね、できないね、僕は(笑)いいなぁ~、それ。
2人:(笑)
H:ドナルド・ダックがそうやって声出してるんでしょ?
悠太:ドナルド・ダックの声はちょっと違う…
H:違うのか。あ、そう。外国人はみんなできるんだよ、あれ。
悠太:あ、そうなんだ。
H:ジョン・セバスチャン(John Sebastian)って、僕の先輩の…ラヴィン・スプーンフル(The Lovin' Spoonful)の大先生なんですけど。いっしょにライヴやったことがあるんだけど、東京来て。
悠太:うん。
H:歌をセッションでやってて…♪Ain't Got No Home~ってニュー・オーリンズの曲やってて。で、ジョン・セバスチャンが歌うときになって、ドナルド・ダックの声でやるからビックリしちゃったんだよ。
音:(笑)
H:できないよ、僕は。真似できない。
音:あ、その曲、フロッグ・マン・ヘンリー(Clarence 'Frogman' Henry)の…
H:おお!そうなんだよ(笑)
音:あれ、そうですよね。高い声、低い声…
H:そうそうそう…話が通じやすいな(笑)
H:さて…じゃあね、音くん、僕になんか質問ある?
音:あ…え…おお…
H:(笑)
悠太:質問したがってたから…
音:質問…あの、ブギの…僕もあのノリをやってみたいと思って挑戦したことが…吹奏楽部の人に頼んで。
H:あ、吹奏楽団ね。
音:ヒルビリー・スタイルでやったんですけど…自分でスティール弾いて…
H:ほほう…スティール弾いたの?
音:弾いて…でも、ぜんぜん合わないんですよね。何回も言って、やったりしても…
H:その現場を見たかったな。んー。
音:で、40年代のニュアンスは特に難しい…ちょっと人知を超えたような感覚があるんですけど。それをやってのけてらっしゃるその方法…方法っていうよりは、その気持ちを…
H:いやー…普通、できないと思うよ。日本だよ、ここは。極東と言われてたからね。アジアの、モンスーン地帯の、島国だから(笑)こんなところでブギをやってる…って、自分で疑問に思ってるぐらいだからね。こないだ僕はニュー・ヨークに行って、そういうような話はしたんだよ。アメリカ人の客が聴くわけだから。ヘンな英語で、みんなが忘れてるようなブギをやってきたわけだよ、僕は、そこで(笑)そのときの気持ち、わかるかな?なんとなくわかるでしょ。
音:いや、あの、はい…わかっていいのか、わからないですけど…(笑)
H:(笑)だから、なんで僕がブギやってるかって言うと…僕は1947年生まれで、日本の敗戦の後にアメリカ軍が東京にやって来て、GHQの本部ができて、マッカーサー(Douglas MacArthur)が来て、ブギを流行らせたんだ、と。
悠太:んー…
H:ブギっていうのは戦時中の音楽で、日本にブギを流行らせるっていうのはGHQの政策なんじゃないかな、と思って。だから日本でも笠置シヅ子がヒットさせたり、服部良一さんがね、いっぱい作って。
音:"三味線ブギ"とか(笑)
H:そうそうそう。
音:そこまで…やっぱりあの、G.I.…アメリカ軍の人たちがレコーディングにいた、っていう話を聞くとそういう…
H:その頃にね、米軍…ではないんだろうけど、アメリカから来たジャズバンドが"東京ブギ"やってる音源が残ってるの。それは素っ晴らしいんだよ。ここのどっかにあるんだけど、ちょっと探しとくわ(笑)
音:ムーン・マリカン(Moon Mullican)が"Tokyo Boogie"って、そっくりの…
H:スティールの人?
音:いや、"Honolulu Rock-A Roll-A"とか、その辺の…一応ピアノの人ですね。
H:あ、ピアノの人か。
音:その人が笠置シヅ子そっくりの…わりと似てるんですけど、ぜんぜん違うようにしているやつを…
H:それは知らないな。
音:それを見ると、ちゃんと伝わってるんだな、って。
音:そういう感覚はすごく、細野さんは…僕も当時の日本映画とか好きで。ちょっと新しいですけど、「社長シリーズ」とか…
H:おお。
H:いいねぇ。
音:そういう感覚を音楽にもなんとなく感じる…
H:うんうん。そうでしょ?だから、アメリカ一辺倒じゃないんだよね。ブギやってると特に。日本のそういう…昭和の映画にいっぱい出てくるからね。
悠太:あー…
H:黒澤明の『生きる』っていう映画に、ブーちゃんって呼ばれてる…市村俊幸っていう人がブギを弾いてるんだよ、ピアノで。なんかホームパーティでブギを弾いてるの。だから、ブギっていうのは黒澤明のところまで浸透してるんだよ。だから、アメリカだけの話じゃないんだよね。
音:ある意味…因縁じゃないですけど、やってる意味がすごくわかる。
H:うん。だから、戦後生まれの宿命として[ブギを]やってるんだよ、僕はね。72歳で。ところが19歳が…それは関係ないけどね(笑)
悠太:(笑)
H:まあ…あとはよろしくね(笑)
2人:(笑)
H:だから…ブギのノリはどうか、って、日本では無理なんだよ。うん。ギリギリのところでできてるけど、いま。自分はね。でも、これ以上はどうかな、っていう。人材を集められないんだよ。だったらアメリカに行ってやるかな、って思うけど、それも違うしね。
音:そうですね。
H:だから、いまだに「ハリー細野」の気持ちが出てくるんだよね。フランキー堺みたいな。どうしてもなりきれない。アメリカ人には。でも日本でやってると、アメリカ人みたいなことやってるんだね、って言われるし(笑)
音:どこにも居場所が無い(笑)
H:そう(笑)はっぴいえんどの頃からずっとそう。"さよならアメリカ さよならニッポン"っていう気持ちは、ずっと。そうすると、テクノやってると気が楽だね(笑)根も葉も無いこと。
2人:(笑)
H:まあ、こんな感じだな…もうなんか、おもしろいわ(笑)「恐るべし10代」。そういう特集やってるんだけどね。次のゲストはキーポン(KEEPON)くんってのが来るけど、これがまたヘンなんだ。知ってる?
悠太:いや…
H:16歳だから。
2人:16歳?!
H:うん。で、大瀧詠一そっくりだからね。
音:え?
悠太:(笑)
H:大瀧詠一の声で僕に似たような曲をやってるんだよ。なんだろう、あれ?(笑)これもよくわかんないっていうか、おもしろい…なんだかなぁ…この気持ちは僕しか体験できてないよ。ちょっと興奮してるんだよね。まあ、19歳っていうのはいい歳だよね。大体僕もそのくらいからやってるし。でも、僕がやってるときよりぜんぜん、進化してるね。うらやましい。音源をみんな揃えられるしね。ぜんぶ聴けるじゃん、いま。
悠太:んー。
H:昔は聴けなかったから。昔は聴けなかったから。たとえば、ビートルズを聴いてて"Sweet Little Sixteen"…じゃなくて、"Roll Over Beethoven"か。あれの原曲、チャック・ベリーをその後聴いたんだから。
音:はぁ…
H:そしてビックリしちゃったんだよね。なんだこのひなびた感じは、と思って(笑)
音:(笑)
H:そこからかな。
悠太:んー。
音:でもけっこう、いまはわりとそこの境目が…僕とかはヒットチャート聴いて、これの元曲…とか。これは1か月前にヒットしたのを真似てたり…とか、そういう発見もおもしろいんですけど、いまはあんまりそういう聴き方も…聴くと聞かない…
H:んー…意味がわかんないけどね(笑)
悠太:(笑)
音:すみません…(笑)
H:今後どうするの?2人は。友達になったの?
悠太:まあ、もう、友達。
H:へぇ。ご飯食べたり?
音:僕のうちでご飯作って食べたりとか…
H:ホント?家に行ったりしてるんだね、悠太(笑)
音:タコライス作って…
H:へぇ。美味しいの?
悠太:美味しかった。
H:なんか、映画に行ったって話を聞いたけど。
悠太:あー、そう。なんだっけ。
音:えーと…映画館に行ったのは…アレです、えーと…(笑)
悠太:なんだっけ?(笑)
音:『ぼくの伯父さん』の助監督をしてた…ピエール・エテックス(Pierre Étaix)っていう人の初長編作品。
H:なんて映画だっけ?
音:えーと…『恋する男(Le Soupirant)』みたいな…
H:んー、それどこでやってたの?
悠太:銀座の…
H:あ、エルメス?
音:そうです。
悠太:そうそうそう。
音:僕が怖くて行けなくて、誘って…(笑)
悠太:ヒマだったから。
H:(笑)いやー、いい映画観るね。そうか。僕はその映画観てない…エルメスは何度か行ってるけど、それは知らなかった。ビックリだね。なんだろうな…文化度が高いね。
悠太:音くんがね、すごい…いろいろ、なんでも知ってるから。
音:いやいや…
H:そうか。いい友達ができたね。
音:悠太くんはニュートラルというか、新鮮に楽しんでくれるんで…すごく楽しいです。
H:なんでも吸収しちゃうんだね。いいコンビだね、じゃあ。
悠太:(笑)
H:オッケー!じゃあ、最後に1曲。
悠太:音くん。
音:あ…
H:じゃあ、音くんにしよう。
音:じゃあ、ちょっと新しいんですが、1947年にヒットした…
悠太:新しい(笑)
H:新しいね(笑)
音:えーと…(笑)"Feudin' and Fightin'"っていう、けっこう僕好きな…最近思い出してよく聴いてる。
H:あ、初めて知らない、それ…
音:ドロシー・シェイ(Dorothy Shay)っていう…
H:知らない…じゃあ、これを聴きながら…またそのうち来てもらおうかな、と思ってる。では、福原音くんと、細野悠太くんでした。
2人:(笑)
2019.08.25 Inter FM「Daisy Holiday!」より
H:こんばんは、細野晴臣です。さぁ、えー、きょうはですね…「恐るべし10代」というシリーズをやってますけど、それの第2弾ですね。じゃあね…2人、ここに座ってますね。
?:(笑)
H:19歳2人。まず、自己紹介どうぞ。
悠太:あー…えーと、細野悠太です。
音:えー…福原音です。
H:音くんね。悠太、ね。
悠太:はい。どうも。
H:知ってるよ、僕。見たことある(笑)
悠太:あー、どうもどうも。ありがとうございます。
H:似てるね(笑)
悠太:あー…誰とは言わないが(笑)
音:誰とは言わないが(笑)
H:ベースやってんでしょ?
悠太:そうなんですよ。僕、ベースを…
H:んー、なんか、聞いたことがあるよ。"Tighten' Up"、なかなかよかったよ。
悠太:ありがとうございます(笑)
H:いつからやってんの?ベース。
悠太:高校のときから…高校1年生のときにジャズ研に入って、それで…
H:そうか。いつの間にかやりだしたんだね。
悠太:そうだね。
H:そうだ。その前はなにやってたっけな。
悠太:その前…?
H:なにもやってないか(笑)
悠太:なにもやってない。僕、中学校のとき数学部入ってたよ(笑)
H:あ、それ知らなかったですね。
悠太:(笑)
H:最近、なんか免許証取ろうとしてて、落ちたんだって?
音:(笑)
悠太:そう(笑)ホントについ最近…落ちたんだよね。
H:落ちる人、いるんだね、あれね。
悠太:あんまり勉強して行かなかったら、コテンパンにやられましたね。
H:あー。でも、学校は受かったわけだね、大学はね。勉強しないのに。
悠太:それはね(笑)
H:で、音くんは…なんで2人は仲良くなったんだろう(笑)
音:なんか…僕も不思議なんですけど。
H:ね。音くんはまずね、このスタジオを突然訪ねてきたんだよ。最初ね。
音:そうですね。
H:去年のいつだったかな…あ、今年か(笑)
音:今年の4月の頭ですね…
H:ついこの間だね。それで、うわー!と思って。いろんなこと訊いてくるから。だから、ちょっとビックリしたんだよね。で、なにを訊いてくるか。これから聴けばわかるけど。じゃあね、音くん、持ってきた音楽…自分が好きなやつ、1曲目、ちょっと紹介して。
音:えーと、じゃあ…1940年代らしい、というか。そういうモダンさが好きな人がいて…ウナ・メイ・カーライル(Una Mae Carlisle)っていう人の…
H:うわ、信じられない(笑)
音:"It Ain't Like That"。
H:え、なんで、それ…!?うしたの、いったい?(笑)
悠太:(笑)
音:昔から好きで…
H:昔から?不思議だなぁ…(笑)なんだ、はい、まあ、聴こうか。
It Ain't Like That - Una Mae Carlisle
H:はい、ウナ・メイ・カーライルの…なんだっけ?(笑)
音:"It Ain't Like That"…
H:そうだ。これ、昔から好きだって言ってたけど、音くんが。僕はもっと前から好きなんだけど…(笑)
音:(笑)
H:去年、これ、リハで演奏…1回練習したんだよね。で、まだ[本番では]やってないんだけどね。難しい、これ。
音:やろうとされたのがすごい…
H:んー、少しできるようになってきたね。このノリが好き。
音:そう。
H:おんなじでしょ?
音:はい(笑)
H:なんでだろう(笑)
音:(笑)
悠太:生まれ変わりなんじゃない?(笑)
H:いや、そう思ってるんだよね(笑)おかしいもん、だって。なんでなんだろうな…不思議でしょうがない。だから、そういう音楽的な遺伝子が…孫みたいなもんだよね(笑)
音:(笑)
H:で、悠太は…君は細野くんだよね(笑)
悠太:あ、はい、そうですね(笑)
H:ベース[のプレイング]が、似てるんだよね(笑)
悠太:あー、そうなんだ。
H:だから、ヘンな2人だよね。で、仲良くなっちゃったんだよね、2人。
悠太:うん。
音:そうですね。
H:バンド組まないの?
悠太:バンド…ちょっと。
音:ちょっとだけ…
H:お?なんだ、やりだすか…じゃあ、入れてもらおうかな。
悠太:プロデューサーとして…(笑)
音:そんな…(笑)
H:音くんは…楽器はなにがやりたいの?
音:僕は一応ギターを…小学6年生ぐらいのときに始めたんですけど…
H:おお。
音:それこそ、40年代の曲をひとりでカヴァーするようになった…高1ぐらいのときに、[自分で]いろいろやらないと、誰もやってくれないんで…
悠太:(笑)
音:それで一応、ぜんぶ…多少はかじれたんですけど、でも、ギターがいちばん好きではあります。
H:あ、そう。でも、40年代的にはギターって難しいんじゃないの?
音:そうですね。なので、いちばんどっぷり、っていうか…高1ぐらいのときに、自分が40年代の人間だと思うぐらい…そうやって自己紹介に書くぐらい…「40年代、ハーレムのジャズクラブ育ち」みたいな。そういう冗談を言ってました。
H:生まれ変わりなのかな、なにかのね。
悠太:んー。
音:そのときはギャップがあり過ぎて、ちょっと…
H:周りとぜんぜん違うでしょ、だって。
音:そうですね。ギターでできる音楽じゃないので…
H:そうだよね。だから、人がいないよ。いっしょにやる。育てないとダメ、っていうかなんというか…19歳が人を育てられるかどうか…(笑)
音:(笑)
悠太:いま僕は音くんにいろいろ教えてもらってるんで…
H:あ!育てられてるんだ(笑)
悠太:そう、いま育てられ中(笑)
H:どんな影響…どこまで行ってるの?いま。悠太は。
悠太:いや、でも、ぜんぜんまだ深いところまでは行ってないけど…ウンチャイのその…「おっちゃんのリズム」?
H:ウンチャイって誰だ?それは僕だよ(笑)
2人:(笑)
悠太:僕はおじいちゃんのことをウンチャイと呼んでいるわけですが…(笑)
音:最初はホントにビックリした…(笑)
H:それで、なんだっけ…「おっちゃんのリズム」?
悠太:そう、「おっちゃんのリズム」について教えてもらって。
H:なんだこれは(笑)
悠太:なんだっけ、ドラムが…
音:ブギウギからロックにつながる一本線みたいなのが…僕はあると思うんですけど、そこを日本でも細野さんがやられているのを…ノリをいろいろ比べて聴かせて。
H:すげえな。研究者だね。
音:そういう会をいつも…来てもらって、2人でやってます(笑)
H:そうか…どうなってるんだろうな…
悠太:(笑)
H:悠太はほら、イマドキっぽいじゃん。
悠太:そう……?
H:少し(笑)
悠太:そう、なのかな?(笑)
H:いや、ベースやってるから、いろんな音楽やるじゃない。ラテンもやってるでしょ、最近。
悠太:そうだね。
H:ラテン研究会入ってるんだよね、2人で。
悠太:そうそうそう(笑)
H:で、ファンクもやるでしょ?
悠太:そうだね。
H:最近はなにがいいの?自分ではどこら辺がいいの?
悠太:いま、ネオソウルを…
H:おや…(笑)
悠太:ネオソウルをやっておりますね…
H:ネオソウルって、いったいなんなんだ。
悠太:や、僕もよくわかってない(笑)
H:なんか持ってきた?音源は。
悠太:あ、ぜんぜんネオソウルじゃない…
H:いや、いいよ、なんでもいいよ。なにがかけたいの?
悠太:あ、じゃあちょっとラテンっぽいやつで…ニコラ・クルース(Nicola Cruz)の"Inversions"っていう曲。
H:んー…知らないな、これは。
Inversions - Nicola Cruz & Uji
H:これはもう、長いから途中でね。
悠太:(笑)
H:すごい、やっぱりイマドキっぽいじゃん。
悠太:そう、だね。
H:んー。音くんはこういう音楽、どうなの?
音:こういう音楽はフィジカルで聴く感じで…関係無いな、って(笑)
悠太:(笑)
音:そう思ってたところ、最近はちょっとずつ聴くようにしてるんです。
H:あ、そうなんだ。どっちかっていうと、僕は両方…両方の型を持ってるけど…(笑)自分の中には両方あるんで困ってる、っていうことはあるんだけどね。まあ、普通はイマドキで行っちゃってるからね、みんな。
悠太:まあ、それはね。
H:うん。それはそれでいいんだけど。古い音楽を…悠太はどう思うわけ?
悠太:やー、なんか、まだあんまり…未知数、っていうか、あんまりわかってないところがあるから。
H:うんうん。
悠太:そういうのを教えて欲しいな、って、音くんに。
音:(笑)
H:あ、そうなんだ。んー。ベースなんて…昔、40年代ってみんなアコースティックベースじゃん。ウッドベース。
悠太:うんうん。
H:そういうのはどうすんの?やるの?
悠太:まあ、左利きだから…
H:あー、そっか…
悠太:ちょっと、買えるところもあんまりないかな、とは思うけど…まあ、やってみたいっていうのはある。
H:うん。そうなんだよ、左利きで…僕もベースはいっぱいあるんだけど、それ、あげられないんだよ(笑)
悠太:矯正したほうがいいのかな?やっぱり。
H:いや、いまさら…でも、左利きのベーシストっていいんじゃないかな。カッコがいいよね。
2人:カッコがいい。
H:響きがいい、っていうか。まあ、ギタリストは多いよね。ジミヘン(Jimi Hendrix)もそうだし。みんなやっぱり、自分独自のやり方を編みだしてるけど、いろいろやったらいいんじゃない?ウッドベースも。
悠太:うんうん。
H:で、2人でバンドを組んだらどうなるのか、っていう興味はあるんだけどね。ただ、ドラムスとか周りにいるの?
悠太:いや、いない…
H:いないのか(笑)
音:もうひとり…わりと仲良く3人でしてる人、先輩がいて。その人は悠太くんよりは…なんだろう、1970年代のファンクとかを…
H:あ、ちょっと古いんだね。
音:リズムボックスとかに興味を持ってるらしくて。でも、まあ、なかなか、いろいろ…ドラム…
悠太:そいつは「ドラムなんて要らない」派で、リズムマシンさえあればいい、みたいな…
H:あ、そうなんだ。
音:それもちょっと違う気が…(笑)
H:若者の世界のことはよくわからんが…(笑)
音:僕もわからない…
H:どうしようかな…音くんに訊きたいんだけど、なんで40年代の音楽を聴くようになったの?
音:僕は…きっかけがなに、っていうのははっきり無い、というか、あんまり憶えてなくて。
H:無いの?
音:中学1年ぐらいのころから、1930年代から1950年代ぐらいのポップスのヒットチャートを聴くようになって。
H:ほうほう。
音:で、喘息持ちなんですけど…喘息が悪化して学校生活に支障をきたしたときに、どんどん音楽に癒しを求めちゃったというか…
H:それだ。んー…
音:それで…最初期の録音、というか、レコードができたときのものとかまで聴くようになって…
H:んー、マニアだね。
音:家族にも怖がられるんで、まずいなぁ、って思って…
悠太:(笑)
音:でも楽しいんですけどね、すんごく。
H:それ、漫才師の中川家とおんなじような話だよ(笑)
音:(笑)
悠太:それはどういう…?(笑)
H:え?弟の礼二(中川礼二)っていう人ね。「学校行かなくていいから吉本行け」みたいな、そういう話でしょ?
音:あー。
H:壁に向かっていつもしゃべってる、っていう…(笑)
悠太:(笑)
H:いや、そうか…お笑いじゃなくてよかったね(笑)
音:(笑)
H:えーと…じゃあ、もう1曲、音くん。
音:じゃあ、どうしようかな…細野さんと前にお話しさせて頂いたときに、『Star Spangled Rhythm』っていう…
H:なんでそれを知ってるんだろう、っていう疑問がまずある。
音:僕は元々フレディ・スラック(Freddie Slack)版の…ジョニー・マーサー(Johnny Mercer)が歌ってる分をヒットチャートで聴いてて…
H:ええ?
悠太:ぜんぜんわからない…(笑)
音:原曲がどんななんだろう、っていうのを…
H:ジョニー・マーサー版を聴いてたの?ジョニー・マーサーが歌ってるやつ?ライヴのやつ?
音:えーと、フレディ・スラック・オーケストラの、わりと短い…で、本物[原曲]聴いたらすごい、とんでもない…
H:その映画は観たの?
音:映画も、僕…字幕が付いてなくて…
H:それ…さっきもウナ・メイ・カーライルに注目してて、ジョニー・マーサーにも注目してる。とくに『Star Spangled Rhythm』を観てる。そんな人は、僕以外にはいないんだよ。普通はね。
悠太:(笑)
音:僕も、[現代の日本で]ブギウギをやってる人がいる、っていうことにビックリして…(笑)
悠太:(笑)
H:なんだこれは(笑)ライバル?(笑)
音:いや、そういうことじゃない…(笑)
H:なんか教えてもらおうかな(笑)
音:いやいや…(笑)あの…はい、ビックリしました。
H:じゃあその『Star Spangled Rhythm』から。
音:ちょっと長いんですけど、"Hit The Road To Dreamland"。
H:もうこれは、何十年と聴いてるかな、僕は。
Hit The Road To Dreamland - Mary Martin & Dick Powell
(from『Star Spangled Rhythm』)
H:あのね、突然悪いけど、この音源はエコーがかかってる。
音:そうですね。
H:ちょっと気になるのね、それが(笑)僕の持ってるやつはエコーがついてないから(笑)まあ、そこがおもしろいんだけど。違う音源なんだな。んー。
音:そういうのがけっこう、いっぱいあります。
H:だから、聴き比べないとダメなんですよ。
悠太:ふーん。
H:Monoなのに変な疑似Stereoにしちゃったりね。
悠太:へー。
音:再発の分とかでもぜんぜん…30年代、40年代のは「色付け」されてて。
H:そうなの。
悠太:んー。
H:ジョニー・マーサーはこのラップのとこもぜんぶ歌詞書いてるからすげえな、って思うんだけど。これも僕はライヴでやったりしてたんで…
音:あっ…これをやるんですか(笑)
H:やってるよ(笑)これは得意なレパートリーだよ。
音:おお…
H:知らないだろうけど…(笑)
音:すいません(笑)
悠太:(笑)
H:自分がいつも、なにかけようかな、と思って、ずっと…この何十年とラジオやってて、しょっちゅうかけてる音楽なんだよね。こういうのはね。
音:んー…
H:それをいま、人が持ってきてかけてるっていうのが、不思議でしょうがないんだよね(笑)なんなんだろう…ってずっと思ってるんだよね。んー。たぶん、妙齢の…若い女の子でそんな人がいたら、僕は結婚しちゃうかもしれない(笑)
2人:(笑)
H:っていうか、自分みたいなもんなんだろうな…なんなんだろう、これ。こういう経験初めてだから。なんなんだろう…
悠太:(笑)
H:だから、これ、悠太じゃなくてよかったよ。逆に。
悠太:そう?(笑)
H:自分の孫がそうだったら…なんか、もうちょっと違うことになってただろうね(笑)
悠太:(笑)
H:やっぱり、遺伝子が違うほうに行くのが人間のね、進化だから。同質-同質になっちゃうとね、血族が濃くなっちゃうじゃない?
悠太:そうね。
H:だからちょうどいいんだけど。[悠太には]まったく理解できないところがいっぱいあるから。試験に落ちたりね(笑)
悠太:(笑)
H:行く予定の日がダメだったりとか。
悠太:いやー、申し訳ないです(笑)
H:いいんだよ、いいんだよ(笑)だから、まったく赤の他人の…知らない人が突然ここに来て、"Hit The Road To Dreamland"が好きだ、なんて言われたらね、やっぱり考えるんだよね。なんでだろう、って。どうなってんのかな、って思うわけ。遺伝子が。
音:あー…
H:人間って、同質のものをみんな持ってるけど、僕がやってるブギウギとかってあんまり…誰もやらないんだよ、いま。
悠太:んー。
H:無くなっちゃうから余計…[自分が]やっとかないと残らないな、と思ってやってるのね。でも、そういう人がいるなら…音くんみたいな人がいるなら、やってくれればいいわけだ。そうすると僕はすごい楽なんだよね。安心するの。残るから。
音:でも、40年代とか…僕は特に40年代が好きなんですけど、そういう感覚…すごい、興奮するようなものが散らばってて…そういうのがちゃんとヒットチャートにあって。黒人・白人関係無く…
H:自由だったんだよ。
音:すんごい、音楽のあるべき姿みたいのがひとつ40年代に…まあ、戦争があったおかげでもあるんですけど。そういう感覚みたいのが自分の中で…なんとかこれを…みたいな気持ちが、聴いてるうちに、これできないかな?みたいのが芽生えはじめたんですけど…
H:んー。
音:そのときに、偶然細野さんが…"House Of Blue Lights"をやってるのを夜中…中華街ライヴの再放送を観て。なんとなく「はっぴいえんどとかYMOの人」みたいな認識があったんですけど、すんごくビックリして…
H:なるほど。そりゃビックリするだろうね。
悠太:(笑)
音:でも、細野さんが作られた…アンビエントのときとかテクノのときとかの音源を聴いても、すごく40年代…だけじゃないんですけど、宝物…うおー!っていう興奮みたいなものを思い出すような感覚が、[細野さんの]オリジナルを聴いてもあって。それですごく…
H:なるほどね…そうかそうか。いや、ちょっとね、言葉が出ないわ、僕、もう(笑)
2人:(笑)
H:テーマがなんかね、深淵だよ、これは。なんだこれは…うーん…やっぱり僕の生まれ変わりだよ(笑)
音:いやいや…(笑)
H:おっかしいな、まだ生きてるのに(笑)
2人:(笑)
H:不思議な体験だ。まあ、そういうこともあるけど、2人が何かをやりだすっていうのがすごい僕は…ま、どうせ僕、これからそんなに長くないから。2人がやる時代がこれから来るからね。「2人」って、別に決めつけてるわけじゃないよ?ひとりひとり、自由にやればいいんだけど(笑)音楽をやる道があるんだね、2人はね。
悠太:んー。
H:まあ、音くんはね、演奏家としてはあんまりよくわからないんだよ、まだね。見たこと無いし。悠太はね、肉体的に…リズム感があるから。パフォーマンスをできるわけだよ。音くんは、今のところ研究者だよね。どっちかって言うと。
音:そうですね。
H:なんか学者になれそうなタイプだよね。
悠太:「教授」だ(笑)
音:教授…(笑)
H:でも、まあ、自分で表現しだしたらそれはそれでいいと思うよ。
音:やっぱり、なんか、僕がそう感じてるだけかもしれないですけど…細野さんの音楽のいちばん深い部分というか…そういうものを言葉じゃなくて、表現で語れるように…発達していくツールをうまく使って、その心って伝えられるんじゃないかな、と思うので。やっぱり表現が先に立って…という風には、ちょっと…
H:まあね。僕がやってるのはそれだからね。言葉じゃわかんないもん。自分でも、音楽ってどういう風に表現したらいいか…わかんないのを模索してるのがおもしろいわけじゃん。だんだんできるようになったり、ね。
音:あー。
H:ロック系のミュージシャンのバンドじゃない?いま[いっしょに]やってるのは。そういう人たちがだんだん、ノリが出てくるっていうのはすごいおもしろい。でも、10年かかるんだけどね。だから今度…わかった!2人と僕でバンドを組めばいいんだ、やっぱり(笑)
2人:(笑)
H:プロデュースじゃダメなんだよ。
悠太:あー、そうなんだ。
H:いっしょに演奏しないとダメなんだ。それは楽しいじゃん。ね?
悠太:そうだね。
H:やろうかね。
音:え…
H:ドラムス、誰か連れてくるわ。林立夫ならできる(笑)
2人:(笑)
H:でも、いちばん大事なのはやっぱりキーボード…ピアノなんだよね。
音:そうですね。
H:もちろん、歌もね。なんかいろいろ考えてみるわ。
悠太:ホントに?(笑)
音:すごい…
H:でも、テクノもやるけどね(笑)なんかかけて、じゃあ。悠太。
悠太:あ、僕ですか?
H:あっ…もう時間ね?じゃあ、きょうはここで切るけど。また来週。続きやります。
悠太:はい。