2019.08.18 Inter FM「Daisy Holiday!」より
H:こんばんは。細野晴臣です。えー、きょうも先週に引き続き…このメンバー。
O:こんばんは、岡田崇です。
越:こんばんは、コシミハルです。
H:えーと…体調はみんないいの?大丈夫?
O:んー、なんとか…
越:……
O:あれ?(笑)
越:え?(笑)
H:大丈夫なの?
越:まあまあです(笑)
H:なんか、6月から7月って弱るよね。免疫が落ちるというかね。だるくてだるくてしょうがない…本当にだるい。
O:(笑)
H:三遊亭小遊三さんっていう人…高田文夫さんが紹介してたんだけど、「寝てれば転ぶことは無し」みたいなね(笑)
越:(笑)
O:なるほど(笑)
H:そんなようなことを言う人らしいよ、小遊三さんって。おもしろいね。
H:じゃあきょうは、ひさしぶりに自由に…岡田くんからひとつ、聴かせてください。
O:はい。
H:…あっ、キーポンくん(KEEPON)ね。
O:7月にニューアルバムというか…4枚目のあるばむを…(笑)
H:いつのまに(笑)
O:自主制作で『真夜中ボーイ』というアルバムを出したんですけれども。
H:いま、いくつになったんだろう?
O:いまは15歳…もうそろそろ16歳になるのかもしれないですね。
H:そうか…こないだね、小山田くん(小山田圭吾)のご子息のマイロくん…「恐るべし10代」という、manakaちゃん(Little Glee Monster)といっしょにやったんだけど。
O:はいはい。
H:その続きをこれからまたね、やらなきゃいけないんだけど。そのうちキーポンくんをぜひ。
O:(笑)
H:じゃあ、その新作っていうのをちょっと聴いてみようか。
O:そうですね。じゃあ、1曲…なんにしようかな…けっこうみんなおもしろいんですけど。
H:うん。
O:"朝も早よから1番線"っていう曲を…まあ、ニュー・オーリンズなんですね、今回。
H:ああそう。
O:ニュー・オーリンズの感じと…東京の、地方から人がいっぱい来てる感じを重ね合わせて、15歳の子が…(笑)
H:(笑)
朝も早よから1番線 - KEEPON
(from 『真夜中ボーイ』)
H:いやいやいやいやいやいや…なんなんだこれは(笑)
越:(笑)
O:どうでしょう?(笑)
H:ヘンな気持ちになるよ、これは(笑)誰だ!っていう…
O:15歳のキーポンくんが全部の楽器を多重録音でやってる、っていう…
H:なんだこれは…なんか、こう、最近の子どもたち…子どもじゃないのかな、もう(笑)
O:「子どもらしさ」が、ね、無いですよね(笑)
H:(笑)とにかく、歌ってるのが大瀧詠一で、曲が僕、みたいなね。この世界が来るとは思わなかったですよ、長く生きてて。
O:(笑)
H:なにが受け継がれてるんだろう、これは(笑)
O:でも、確実に受け継がれてますよね。
H:どういう…なにが起こってるんだろう、って思うよね、こういうの聴くとね。本人を今度呼んで、いろいろ訊いてみたいけどね。
O:そうですね、根掘り葉掘り…(笑)
越:でもなんか、すごい自由なんじゃないかな。
H:自由だね。
越:なんかね、ダンスとか見てても思うんだけど…YouTube見ると、みんな踊ってるでしょ?で、すごい、スーパーキッズがたくさんいるのね、世界中に。
H:スーパーキッズが多いよね、いま。
越:たぶんだけど、脳の使い方が自由なんじゃないかな、と思って。想像したことを[そのまま]踊る、みたいな。
H:なるほど。
越:だからきっと音楽も…たとえば細野さんとか大瀧さんのを聴いて、また自分でいろんなことを自由に想像できるようになった…いままでは、ちょっと、ね?
H:なんだろうね、いままでと違うのはなんだろう?
越:ぜんぜん違うと思う。
H:いままでは型にはめようとしてたよね。
越:うん、なんでも。でも、それがすごく「無い」感じがする。
H:無いね。
越:だからきっと、作り方も違うみたいだし。「ポップスはこうじゃないといけない」とかっていうのがきっと無いと思う。すごい楽しい。
H:これ、15歳じゃない?70歳ぐらいになると、なにやってるんだろうね?(笑)
O:(笑)
越:もっともっと自由な感じになってくんじゃないですか?(笑)
H:そうか(笑)んー…負けちゃいられない、って感じだね。自分も自由でいたいし。
何だかもう幸せすぎて、昨夜は全く眠れませんでした。。。
— KEEPON(キーポン) (@KEEPON_offical) August 19, 2019
僕の新曲もかけていただき、本当に感激です。
Daisy Holiday! | InterFM897 | 2019/08/18/日 | 25:00-25:30 #radiko https://t.co/p0ftmxF9UX
H:じゃあ、またちょっと気分を変えて…ミハルちゃんの世界をひとつ聴かせてください。
越:えっと…でもね、ちょっと新しいの。2001年。
H:…それは新しいな(笑)
越:新しいよね(笑)アンジェリーク・キジョー(Angélique Kidjo)っていうアフリカの人なんだけど、その人が歌ってる"Summertime"を…ガーシュイン(George Gershwin)の。
Summertime - Angélique Kidjo
(from 『Keep On Moving』)
H:なるほどね。今っぽいね。
越:うん。
H:ちょっとアンビエントが入ってるんだね(笑)
越:2001年。
H:そうか、2001年ね。最近、フランスのアフリカ系の人のが新鮮だよね。
越:あ、うん、そうね。ラップとかでもいっぱい、いろんな人がいますね。
H:音が良いんだよな。んー。
H:さて…僕?あ、僕ね。
O:(笑)
H:じゃあかけるかねー。これはいつだかわかんないや。やっぱり2000年代の初期の頃かな。シリル・エイミー(Cyrille Aimée)の…"Young At Heart"って曲が大好きなんですけど、それをやってるんで…聴いてください。
Young At Heart - Cyrille Aimée
(from『It's A Good Day』)
H:はい、"Young At Heart"っていう…これはシナトラ(Frank Sinatra)でも有名ですね。昔聴いてたラジオ番組のテーマ曲がこのインスト…ジョー・ロス(Joe Loss)のインストゥルメンタルでやってたんですよ。毎週聴いてたんで…良いメロディだな、と思ってた。
H:えー、岡田くん、なんか紹介してください。
O:じゃあですね…僕も最近のでいきますね。キャット・エドモンソン(Kat Edmonson)という…ウディ・アレン(Woody Allen)の『カフェ・ソサエティ(Café Society)』の中で歌ってた女の子なんですけど。
H:あー!なんか僕も、それ聴いたことあるな。
O:ミッチェル・フルーム(Mitchell Froom)の新譜が今年出たんですけど。
H:おや!
O:配信でしか出てないんですけど、その中でゲストヴォーカルで歌ってて。お、と思って、その子の去年出たアルバムから"Sparkle And Shine"という曲を…ミックスはアル・シュミット(Al Schmitt)ですね、これ。
H:あ、ホント?
Sparkle And Shine - Kat Edmonson
(from 『Old Fashioned Gal』)
H:なるほどね。えー…キャット・エドモンソンという女性歌手ね。あれ、ミッチェル・フルームはなにやってるんですか?
O:えーと、これの前のアルバム(『The Big Picture』)は全面プロデュースしたんですけど、このアルバムはもう離れちゃってて。
H:あ、これは関係ないんだね。
O:で、今年出たミッチェル・フルームのソロに[キャット・エドモンソンが]ゲストヴォーカルで入ってるんで、僕は知ったんです。
H:それを聴いてみたかった(笑)
O:あ、ありますよ。
H:お、そうか。じゃあ、後で聴かせて。
H:えーと、音楽を続けていきたいね。ミハルちゃん、どうぞ。
越:じゃあ、また新しい…60年代。
H:60年代?
O:(笑)
H:まあね、ミハルちゃんにしたら新しいかもね。
越:ゲンズブール(Serge Gainsbourg)(笑)
H:おお、新しいね(笑)
O:(笑)
越:"Ces Petits Riens"、「ささいなこと」っていう曲です。
Ces Petits Riens - Serge Gainsbourg
(from『Gainsbourg Percussions』)
H:若いですね、ゲンズブール。
越:ね。60年代なんでね。すごいシンプルなアレンジで。
H:ゲンズブールね…いっつもタバコを吸ってるんだよね(笑)写真見ると、ぜんぶタバコを咥えてる。別にそれを真似してるわけじゃないよ、僕は(笑)
越:(笑)
H:じゃあその…僕はいいや。
O:じゃあ、ミッチェル・フルームの…
H:それ聴きたい。
O:今年出た新譜から"Forever"。歌をさっきのキャット・エドモンソンが歌ってます。
H:はい。では、これを聴きながら、また来週。
Forever (feat. Kat Edmonson) - Mitchell Froom
(from 『Ether』)
2019.08.11 Inter FM「Daisy Holiday!」より
H:こんばんは。細野晴臣です。えー、きょうはひさしぶりですね。このメンツは。
O:こんばんは、岡田崇です。
越:こんばんは、コシミハルです。
H:いやいや…どうしてたの?みんな。
O:いやー、暑いんで…ダラーっとしてました(笑)
越:暑い。
H:暑いね。
越:暑いですね。
H:選挙もあったしね。
O:ですね。なんだか…
H:いろいろね。いろんなことがありますよね。令和になってから。
O:(笑)
H:えーと…[放送日は]お盆の前の日なんだよね。
O:そうですね。もうすぐ、お盆ですね。
H:ということは、やっぱりね…レオン・レッドボーン(Leon Redbone)のことはちょっと、ね。
O:そうですね。今までなかなか触れる機会が無くて。
H:そうですよね。えーと、ミハルちゃんはレオン・レッドボーンは?
越:…
H:はい、ごめんなさい(笑)えー、岡田くんはいろいろリサーチして…リズム・レッカーズ(Rhythm Wreckers)に辿りついたよね。
O:そうですね。
H:ま、とにかくちょっと、じゃあ、レオン・レッドボーンの楽曲を聴いてみましょうかね。
O:はい。
H:"Desert Blues"でいこうかな。
O:ぜひ。
Desert Blues (Big Chief Buffalo Nickel) - Leon Redbone
(from 『On The Track』)
H:どうですかね…いいね。
O:いいですね。
H:どうですか、ミハルちゃん。
越:これ、コンサートで何度かやってましたよね?
H:そうなんだよ。
越:ね。
H:これやっぱり…自分にとって「元ネタ」かもしれないね。うん。でも、レオン・レッドボーンにとっての元ネタがいっぱいあるんだよね(笑)
O:このとき25歳ですよね、レオン・レッドボーン。
H:若いねー!信じられない(笑)
O:1stアルバムなんですけど、これ。
越:え、そうなの?!すごい大人…
H:1972年ぐらいかな?
O:1975年ですね。
越:え、70年代なの?!
H:いま聴いてもね、ぜんぜん衰えないというか。
越:うん。
O:まあ、ずーっとこの調子でしたけどね(笑)
H:ね。歳とらなかったのに、亡くなっちゃったんですよ。5月30日に。69歳。
越:あ、若いですよね、まだね。
H:謎の人物で、なかなかプロフィールを明かさないっていう。
O:生年月日も…元々はずーっと隠してました。
H:そうだよね。
越:んー…
H:なんかこう…タイムマシンで来たような人だよね(笑)
O:うんうん(笑)プロフィールを偽ってたんだって、デビューのとき。若過ぎるんで(笑)
H:うん。で、その頃、来たんですよね、日本に。
O:1978年に来て、細野さんと同じステージに…ですよね。
H:僕、出たんですよ。うん。いやー、なんか、あんまり憶えてないんだけどね(笑)
[*細野さんは1978年2月24日、東京・九段会館で行われた初来日公演にゲストとして参加。]
O:細野さんは岡田徹さんと2人で…
H:あー、そうだ。
O:リズムボックスと…?
H:あ、そうだ。"演歌チャンチャカチャン"が流行ってた頃なんで…(笑)
O:(笑)
H:そのレッドボーンさん、キプロス出身っていう話ですよね。だからあっちの…地中海系の人なのかね?
O:ね。わかんないですよね、よくね。ホントに、最後まで(笑)
H:んー、謎の人なんですよ。ただ、遺されたアルバムはすばらしいですよね。じゃあ、いまの"Desert Blues"の元ネタっていうのが…そもそもはジミー・ロジャース(Jimmie Rodgers)という人の曲なんで、それを聴いてください。
Desert Blues (Big Chief Buffalo Nickel) - Jimmie Rodgers
H:これがオリジナルのジミー・ロジャースで1929年、ですね。ジミー・ロジャースは「ブルー・ヨーデル(Blue Yodel)」って言って…白人だけど、ブルースとヨーデルを混ぜたような、ね。創始者ですよね。
H:えーと…なんだっけな…あ、レオン・レッドボーンの本名。
O:すごい名前ですよね。
H:ちょっと発表してくれます?
O:ディックラン・ゴルバリアン(Dickran Globalia)。
越:(笑)
H:憶えらんないわ(笑)謎の人物ですね。
O:(笑)
H:で、その…リズム・レッカーズ。これ、どんな人たちだっけ?
O:んーと…やってるのはベン・ポラック(Ben Pollack)っていう…
越:あ、そうなんだ…
O:まあ、有名な指揮者ですよね。
H:ハリウッド映画の…ジミー・スチュアート(James Stewart)がやった『グレン・ミラー物語(The Glenn Miller Story)』に出てきますよね。ドラマーなのね。
O:そうですね。ベン・ポラックが…たしか、ヴォカリオン(Vocalion)っていうレーベルに頼まれて作った楽団で。ライヴ活動とかはしない、スタジオ・レコーディングのための…
H:めずらしいね、楽団としては。
O:そうですね、当時としてはめずらしい形態で…1936年から1938年ぐらいまで活動してて。28曲くらいかな、録音が。
H:そうね。
O:戦前の日本で意外とSP盤が発売されてて。
H:聴かれてたんだね。
O:たしか、10枚くらいは出てたんじゃないですかね。
H:なんか、とても高い声の…少年のような、少女のような…
O:そうですね、ホワイティ・マクファーソン(Whitey McPherson)でしたっけ。
H:ギタリストなのね。少年なの?
O:少年…だと思います。僕もそんなに詳しくはないですけど…
H:とてもおもしろいサウンドで…レッドボーンはそのサウンドに影響されてるよね。
O:そうですね、完全に下敷きに…
H:じゃあちょっと、そのザ・リズム・レッカーズの"Desert Blues"、聴いてください。
Desert Blues - The Rhythm Wreckers
H:これをミハルちゃんに聴かせて…キーボードのあのフレーズを採ってもらって、レコーディングやったんだよね。僕ね。
越:あ、そうね。うん、なんかこのとき、そういえば…いまいろいろ思い出した。いろんな人の[ヴァージョン]を聴いた(笑)
H:聴いたんだ(笑)
越:聴いた聴いた(笑)急に思い出した。ぜんぜん、記憶がね、無くなっちゃうんですよ(笑)
H:ねー。まあ、お互い様ですよ。
O:(笑)
越:思い出したー!
H:じゃあ、それがどうなったかというと、こうなりました、ってことで、自分のをちょっと…『HoSoNoVa』に入れたんで、ずいぶん前ですよ。
デザート・ブルース - 細野晴臣
(from 『HoSoNoVa』)
H:あの…僕はヨーデルできないんだよね(笑)裏声が出なくなっちゃったんだよ、歳とってから。どうしよう(笑)
O:(笑)
H:これはメンバーが…リードギターは徳武くん(徳武弘文)ですね、「Dr.K」。で、漣くん(高田漣)がスティールで、大地くん(伊藤大地)ドラムス、伊賀くん(伊賀航)ベースで、ミハルちゃんがハモンド…っていうか、オルガンですね。を、やってくれまして。えー、僕が25歳のときの…(笑)
O:(笑)
H:で、他にかけるものがあるとするとですね…あ、リズムの面でレオン・レッドボーンにすごく影響したのが…リズム・レッカーズをいっぱい聴き込んでるんだね、レオンさん。
O:うんうん…
H:"A Red Headed Music Maker"っていう曲です。
A Red Headed Music Maker - The Rhythm Wreckers
H:まあ、これのフレーズをレオン・レッドボーンは"Desert Blues"に取り入れたりしてたりね、するという…
H:えー、そういうわけで…レオン・レッドボーンの追悼をやってます。じゃあ最後にね、"Lazy Bones"をかけて…
O:はい。
H:ご冥福をお祈りします。
Lazy Bones - Leon Redbone
(from 『On The Track』)
2019.08.04 Inter FM「Daisy Holiday!」より
H:こんばんは、細野晴臣です。さて、今週も先週に引き続き、6月の終わりにこのスタジオで行った小山田圭吾くんとのインタビュー素材をラジオ版としてお届けします。インタビュアーはele-kingの野田努さんと、音楽ライターの松村正人さんです。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
野田:ちなみに、その…世界のここなら暮らしてもいいかな、って思うような場所ってありますか?
H:小山田くんに訊きたいね、それ。
C:僕ですか?いやー、どうでしょう…
H:(笑)
C:やっぱ東京がいいんですよね…(笑)
H:[日本に]帰ってくるとそう思うけどね。
C:そう思っちゃう。でも、まあ…僕はどこかな…
H:僕はね、発作的に…例えば、YMOでスペインでライヴやったときに、ヒホン(Gijón)っていう街でやったんだけど、その街がメンバーみんな気に入っちゃって。
C:へぇ。
H:「今度ここで待ち合わせよう」とかね(笑)言ってたんですけど。帰ってきて、神戸に行ったら、あ、神戸のほうがいいや、と思って(笑)
C:(笑)細野さん、一時期…あれ、札幌でしたっけ?
H:函館。
C:函館もいい、とか。神戸がいい、とかね、言ってた時期ありましたね。
H:港町、好きなんだよ。んー。
野田:おお。どういうところがお好きなんですか?
H:えーとね…ヒホンもいい港町なんですよね。灯りがいいんですよ。街の照明がね。ほんのり、ガス灯みたいな色の。すごくあこがれて、住んでもいいかな、と思ったけど、実は食べ物がぜんぶスペイン料理なのね。
C:(笑)
野田:そりゃそうですよ(笑)
松村:「実は」っていうことでもない(笑)
H:神戸はやっぱりね、中華、うなぎ、喫茶店…いろんなものが並んでるでしょ。やっぱり日本がすごいな、と思いますよ。
C:でも細野さん、東京以外住んだこと無いですよね。
H:無いね(笑)あ、でも…まあ、埼玉も東京みたいな…
C:あ、そっか。狭山時代がありますね。
松村:住むところで作るものは変わったりするんですか?
H:いや、ときどき考えますよ。例えばアイルランドとかね。あっちのほうのなんにも無い、野原の一軒家で、アンビエント作ったらいいだろうな、とかね(笑)
松村:すごいですね、なんかそれ(笑)
H:思うだけですね(笑)想像だけでやってますから。
松村:あ、でもそういうイマジネーションで音楽をここで作ればまた、それはそれで…
H:そういうことですね。だって、僕はトロピカルの曲やってる頃は四畳半で作ってましたから。
C:四畳半だったんだ。
H:"熱帯夜"っていう曲はクーラーの無い四畳半で…
C:(笑)
H:熱帯夜の日に作ってたんですよね(笑)だから、こう…無いものにあこがれて夢想する、っていうのはいいんじゃないかな。
野田:四畳半からこうやって…飛んでいくんですね。
C:イマジネーションでね。
H:実は6畳ぐらいあったかもしれない。
C:(笑)
松村:そこはいま厳密にないですね、たぶん(笑)
野田:「四畳半トロピカル三部作」って感じだったんですね。それカッコいい…カッコよくないか(笑)
H:カッコよくはないでしょう(笑)
松村:まあでも、そうやってイマジネーションでいろんなところ行けるから、実際に飛行機とか乗るよりも空想で行くほうが細野さん的なのかもしれないですね。
H:そうなんですよ。自分には向いてますね、そういうほうが。
熱帯夜 - 細野晴臣
(from 『TROPICAL DANDY』)
野田:細野さんはいろんな国の音楽なども聴かれて、取り入れたりされてますけど、新しい発見とかってありますか?ここ最近。
H:いまはね、水平世界じゃなくて垂直世界のほうに入り込みますから。
野田:「垂直世界」というのは?
H:「時代」ですね、「時間」。やっぱり1930年代、40年代、50年代あたりの空間が好きなんですよ。
野田:んー…
H:それを今の、現実の世界に当てはめたりもしますけどね。ニュー・ヨーク行ったら、あ、あるな、とかね。そういう世界が。
野田:まだ残ってる?
H:残ってる。で、東京でもまだ探しますけど、どんどん消えてく。今年になってどんどん消えてる、っていう。
松村:この辺りは、でも、まだ古い東京が残ってますね。
H:まあ、ある程度は残ってます。こないだやってましたけど、テレビで…「ブラタモリ」で。
野田:その戦前…というか、30年代から50年代にかけてに興味が働いたきっかけはなんだったんですか?
H:なんなんでしょうね…
野田:自然とそうなったという感じなんですかね?
H:そうですね。
野田:もう、地球上のあらゆる音楽は聴き尽くした感、というところで、むしろ歴史を遡ったほうが発見がある?
H:そのほうが発見が多いんですよね。昔の音を聴くと、今はできない、と思うんですよ。若い頃は、例えばカリブの音楽を聴いても、あ、できない、と思いましたけど。いまは、40年代の音はどうやって作るんだろう、とかね。そういう興味がすごいあるんですよ。
松村:テクノロジーは進んでるわけじゃないですか。そういうシミュレーションというか…できそうな感じがありますけど、細野さんとしてはそれは違うものなんでしょうか。
H:んー、まあ僕もシミュレーションでやってたりしましたけど。なんだろうな…東京の、特に港区なんかはどんどん古いものが無くなって。新しいものばっかりになってる。それは音楽もそうなんですよね。古いものをみんなが好きかっていうと、そうでもないし。誰かがこれを残していかないと…エッセンスっていうのがあるんで。それがどういうものなのか、言葉で表すのはちょっと難しいけど、当時のスタジオの空気とか、マイクの性能もあるだろうけど。人々の生活のリズムというか、生活の音が缶詰のように昔の音楽には詰まってるんで。なんか、ドキドキするんですよね。んー。
松村:その感じっていうのはどうなんですか、小山田くんの中では。音楽を時代、垂直に考える、みたいな。
H:生まれた世代が違うからね。
C:まあ、違いますけど、その時代にしか生まれない音楽っていうのはぜったいにあると思うんですよね。いまの時代の雰囲気の中ではぜったいに生まれない音楽、っていうのはすごいたくさんあると思うし。まだ…1950年代くらいまでって未来に対する希望しかない、みたいな感じだったじゃないですか。
H:そうそうそう。
C:だからやっぱり、その時代までの音楽は曇りなく希望を歌えてる、っていうか。希望を奏でられてる感じ、っていうのがあるんですけど、70年代以降の音楽って翳りみたいなものがどうしても混じってきちゃって。そこはなんか…感じることはありますけどね。「おんなじような曲」は作れるけど、やっぱりなんか違いますよね。
H:あの頃の音楽をいま作っても通じていかない、っていう虞もあるし。だから50年代くらいまでの音楽は僕にとっては「あの世の音楽」って言ってるんですけどね(笑)この世、じゃなくて。今となっては。
C:「Heavenly Music」(笑)
H:(笑)
C:その感覚はなんか、わかりますけどね。
野田:お2人とも日本のミュージシャンの中ではものすごく「音」というところに重きを置いてるっていうか、繊細な耳で作業されてるお2人だと思うんですけど、お互いの作品を聴いても「音」に注意を振り向けてるって感じは…小山田さんは細野さんの作品を聴いても感じますか?
C:もちろんです。
H:ありますよね。
松村:そこはすごくお2人、僕は似てると思っていて。やっぱり「音の探究者」っていうところですよね。それもポップ・ミュージックというフィールド内での探究者…みたいなところはすごく共通してるな、という風に思うんですけどね。
野田:『Point』で細野さんが小山田さんに注目した、っていうのもそういうところに[理由が]あるのではないかな、と。
H:うん、ありますね。やっぱり、世代の違いなのか…
野田:さっき(先週分)は「同世代」だと思われてましたけど…(笑)
H:そうね(笑)
C:もうわかったでしょう、違うって(笑)
H:わかってきた(笑)
野田:ようやく理解して頂いた、っていう(笑)
H:まあ、若者である小山田くんはね、僕とは違う、音楽への視点がある、っていう。それはなんだろう、と思うと、やっぱり「デザイン性」なのかもしれない。
野田:なるほど。
H:それは今の音楽もそうなんですよね。だから、今の音楽なんですよ。、小山田くんの音楽は。
野田:それは「作曲する」というのとは違うものですか?
H:作曲とは違う…なんだろうな、昔から旋律と和音とリズムっていうのが音楽の要素だったのが、今はそれが分解されてるっていうか、もうちょっとデザイン的になってる。だから、ファッションもそうなんだろうけど。そのファッション性っていうのは僕には希薄なんですよね。それを小山田くんは…若いからね(笑)持ってる、と。それはすごい感じる。
野田:逆のベクトルになってきましたけど…(笑)どうですか、小山田さん?
C:いや…でも、そういうサウンドデザイン的なことはもう、細野さん、昔からやってるから…(笑)先駆者だから…
H:話がグルグル…(笑)
野田:結局、どっちが先かの押し付け合いになってますけど…(笑)
Fly - Cornelius
(from 『Point』)
松山:でも…たまに小山田くんと話すことで…ある時期から時間が止まってる、というか。新しいものが出なくなってきてるんじゃないか。例えば『Point』をいま聴いても古い感じがしない。
H:ぜんぜん古くないよね。
松山:でも、細野さんの『Philharmony』にしても『Omni Sight Seeing』にしても、いま聴いてもぜんぜん古くないじゃないですか。だから…例えば60年代・70年代っていうと、5年前ってすごく古く感じたじゃないですか。そういう意味で言うと、時間の流れる感覚っていうのが21世紀に入ってすごく変わった感じがするんですけど。やはり細野さんもそう思われます?
H:思いますね、ええ。なんだろう…この先どうなるの?っていう不安…不安じゃないな。不安はないんだけど…興味がありますね。んー。なんか、行き着くところまで行って飽和状態、っていうのかな。で、いま起こってることは「音像の変化」なんですよね。あとはデザイン性の強い音楽とその音像がピッタリ合ってる。ヴァーチャル化してる。それがいつまでもつんだろう、っていう興味はありますね。それが新しいかどうかはわからないけど。
松山:んー…
H:ついこないだ小山田くんの…あれ、何年前だっけ?
C:2年前ですね。
[*2017年の『Mellow Waves』。その中の1曲を細野さんがリミックスした音源が収録されている『Ripple Waves』は2018年秋にリリース。]
H:2年前か。リミックスをやらせてもらったじゃない?そのときはまだね、[そういう]意識が無かったんだよね。いまやったらきっと違うものができるかな、っていう。そういう気持ちでずっといたんだよね。小山田くんはどうなんだろうね。
C:はい。
H:最近の流行りものの音を聴いてどう思う?どう感じる?
C:んー…どうなんだろうな……でも、細野さんが言ってることはわかります。音像だったり、ヴァーチャルっていうところだったり。いまプラグインとかソフトとかも、どんどんシミュレーション的な…今まではサンプリングして使ってたのがもう完全にシミュレーションで出来るようになってきてて。生楽器とかもだいぶシミュレーションで…ほぼわからない[=区別がつかない]、みたいな。
野田:ギターとかでもですか?
C:ギターはまだ…でも、だいぶ良くなってますね。ベースとかもそうだし、ドラムとかもそうだし。サンプリングのちょっと先に行ってる、っていうか。あとは、空間にどういう風に音を配置するか、みたいな。
H:うん。
野田:そういうところもコントロール可能になってる?
C:まあ…もうちょっと前から可能だったとは思うんですけど、そういう曲が多いっていう感じはしますけどね。でも、明確な「流行」みたいなものっていうのはやっぱり無いですよね。
松山:小山田さんは芸能生活何年目ですか?
C:芸能生活…(笑)30周年です。
松山:「芸能生活」っていうと失礼ですかね(笑)
H:ぜんぜん芸能人っていう意識無いもんね。
C:無いっすね(笑)
松山:芸能人じゃないですね(笑)失礼しました。細野さんと同じあと20年後のキャリアのときには、小山田さんはなにやってると思います?ご自分は。
C:いやー…ぜんぜんわかんないですけどね。でも…たぶん、細野さんと出会った頃っていうか、Sketch Showを細野さんがやってたのって50歳前後だったんですよね。たぶん52,53歳ぐらいなのかな。
松山:今の小山田さんよりもうちょっと上…
C:ちょっと上ぐらいな感じだったんですよね。それ考えるとホント、驚きますね。
松山:そうですよね。
C:それから細野さんも…Sketch Showやってて、アコースティックっていうか、生っぽいほうに変わりましたし。で、そこからまた、ね、こないだの『HOCHONO HOUSE』みたいな、ひとりで完全に作る、みたいなところに行ってるんで。すごい色々、変化されてるから…
松山:わかんない、ってことですね(笑)
H:そうだよね(笑)わかんないよ。計画してないからね。
C:計画…できないですよね。
松山:でも、前にやったこととはなるべく違うことをやりたい、っていうお考えは細野さんの中にはあるのではないですか?
H:それもあるし、おんなじこともやりたいし…(笑)
松山:それも決めてはいらっしゃらない、ってことですね(笑)
野田;でもそういう風に…最初の話に戻ると、細野さんのかつての作品がここ数年でようやく国際的に、真っ当に評価されたっていうのはすごく良いことですよね。それはすごくポジティブな話で。
H:んー。まだ自分ではね、理解してないんですよ。ちゃんと。受け止めきれない、っていうか。なんで?って思うことが多いんですよ。
松山:中古盤屋に行けば一発でわかりますよ(笑)
H:そうなのかな(笑)行かないから…
C:みんな細野さんのレコード探してる…
松山:「H」のコーナーからみんな探してますから(笑)だから常に無いんですよね、ディスクユニオン行っても。
H:あ、そうなんだ。あんまり自覚が無いっていうかな。ヴァンパイア・ウィークエンド(Vampire Weekend)が無印(無印良品)のやってたでしょ?
C:あー、サンプリングしてましたね。
H:そのときに、なんで?!って(笑)
C:しかも相当探さないと出てこないような曲…カセットでしたっけ?あれって。『花に水』ってやつですよね。
松山:『花に水』、どうやって手に入れたの、っていう…
C:まあ、YouTubeですよね。
H:うん、YouTubeでみんな見てるね。
C:見てますよね。
H:で、一応打診があったんだよね、あれ。やる前[サンプリングする前]に。
松山:あ、そうだったんですか。
H:いいよー、って言って(笑)
C:でも、あれぐらいの世代の海外のミュージシャン…MGMTとか、マック・デマルコ(Mac DeMarco)とかもそうだし。会うとみんな「細野さん、細野さん」言ってて。しかも相当マニアックなものを知ってるんですよね。
松山:それがちょっと違いますよね、昔とね。
H:そう、マック・デマルコは不思議な存在だね、僕から見ると。なんで"Honey Moon"日本語でやってるんだろう、って(笑)
C:(笑)
松山:マック・デマルコは最近になって新しいアルバム出したんですけど、そのレビューが海外の音楽サイトに載ってて、もう最初から「ホソノ・チルドレンであるマック・デマルコは~」って書かれてましたからね(笑)
H:ホソノ・チルドレンがアメリカ人にいるんだね(笑)不思議だな…なんか、まだわかんない、理解が及ばないところはありますね。
野田:細野さんが1930年代から50年代の音楽に感じるエッセンスみたいなものを、細野さんの音楽に感じてる、より下の世代が…おそらくいるんではないかな、という気がします。
H:時々ね、ラジオやってて…そういう音楽ばっかり、ずーっとやってますから。古いのばっかりかけて。世界でここでしか聴けないだろう、っていうのもかけたりするんですよ。岡田くん(岡田崇)のおかげでね。そういうのを聴いてるのか、若い女の子が「聴いてます!」って言うんですよね。「おかげで古い音楽を聴き始めました」っていうから、それはうれしいなって思いましたね。
野田:んー。
H:なるべくみんなにそういうことを知ってほしいと思って、実はやってるところがあるんで。例えばブギウギなんかも…僕は4,5歳の頃に聴いて、じっとしてられない音楽だったんですよ。で、いまの若い…若いっていうか、子どもがね、ライヴ観に来て、真剣な目つきで踊ってるんですよ。これはもう、トランス状態ですね。ブギウギを聴いてね。それを見て、あ、やってて大丈夫だ、と思ったんですよね。子どもはすごく大事なんですよね。
野田:そういう普遍的な部分と継承していく部分みたいな…
H:それは、なんかね…まあ、10年ぐらいやってますから、ある程度はみんなわかってもらってる、とは思うんですけどね。[同じようなことを]誰かがやり始めたらそれはそれで、いいな、と思いますね。
松山:今回、『Point』も…18年ぶりなんですよね。18年前の作品なんですよね。
H:そう、ずいぶん経ったね。
松山:だから…その年に生まれた子供がいま、もう18歳…
C:うちの息子がその年に生まれたんですよ。
H:マイロくん、ある程度指標になるっていうか、物差しになるね(笑)
C:(笑)そういえばそうだ。だから、うちの息子もいま、細野さんの音楽に夢中だし。
H:(笑)
C:悠太くんって、細野さんのお孫さんも、いまバリバリベース弾いてて。
H:そうなんです。
野田:ベース教えたりするんですか?
H:いやいや、一切…話したことない(笑)勝手にやってる(笑)
野田:(笑)
C:でもなんか、そういう…子どもたちに伝わるのって、余計な情報とかはなくて、本質的に伝わるじゃないですか。ブギウギで踊ってる子ども、とかって。
H:そう。
C:で、海外の人とかも、そういう余計な情報とか無しに、パッって音楽聴いて、「いい!」ってことだから。それがやっぱり、いちばん…
H:音楽ってそういうものだもんね、元々…最初の1小節を聴いて興奮するんだから(笑)
C:まあ、日本で普通に聴いて…日本の世の中にいると、細野さんっていうといろんなイメージとか…[その音楽を聴く]前の情報ってすごい入ってきちゃうじゃないですか。
H:うんうん。
C:だからやっぱり、海外の人とか子どもとかに伝わるのは、やっぱり本質的に伝わってる感じがしますよね。
H:あ、そういうことだな。
松山:逆にね、『Point』だって、そういう意味でいうと[リリースから]かなり経つわけだから、この再発を機に新しいリスナーが聴くと思いますよ。
H:聴くね、それは。うん。
C:だといいですね。
野田:まあでも、健全な伝わり方が…意外と今の世の中、出来るようになってるっていう。
H:そうだ、そうだ。
野田:そんな感じ…ですかね。
H:めでたしめでたし(笑)
野田:(笑)
一同:ありがとうございました。
In a Dream (Haruomi Hosono Rework) - Cornelius
(from 『Ripple Waves』)
2019.07.28 Inter FM「Daisy Holiday!」より
H:こんばんは、細野晴臣です。さて、今週と来週の2週にわたっては、6月の終わりにこのスタジオで行った小山田圭吾くんとのインタビュー素材をラジオ版としてお届けします。インタビュアーはele-kingの野田努さんと、音楽ライターの松村正人さんです。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
野田:じゃあ、まず、お2人の出会いといいますか…いつ、どのように知り合ったのか、というところからお話し頂ければと思います。
H:僕が憶えてるのは…渋谷のPARCOだったかな。
C:あ、お正月に会ったときですね。その前に「ジョイ」ですよ(笑)
H:あ、「ジョイ」がその前だ(笑)
C:そのちょっと前…ちょうど1stアルバム(『The First Question Award』,1994年)とか出した後ぐらいかな。ジョー伊藤(伊藤穰一, Joi)っていう、僕のはとこなんですけど。から、「家ですき焼きやるから来ない?」って言われて。行ったら細野さんがいたんですよ。それでそのときに、帰りに車で送って頂いて。そこでは僕も緊張して、あんまりしゃべれなかったんですけど、その後、お正月に…PARCOの地下に本屋さんがあったんですけど、そこで偶然会ったんですよ(笑)
H:そうそうそう(笑)
C:それを細野さんが、なぜか、よく憶えててくれてて(笑)
H:いや、そりゃそうだよ(笑)
C:それで…そこからもあんまり接点無かったんですけど、ちょうど『Point』(2001年)を出したときラジオに呼んで頂いて。そこからわりと…細野さんがSketch Showを始めたりとかして。
H:そうだ。で、頼んだりしたの。リミックスとかね。
C:そうなんです。それで、ライヴも誘ってもらって。
H:あ、そうだ。あの巻き込まれた…(笑)
C:こういう、ラジオの収録中になんか…「ライヴあるんだけど、ギター弾いて?」みたいな感じで言われて(笑)細野さん、収録中になにか必ずあるんですよ(笑)
H:そうそうそう。今回はどうかな?(笑)
C:それで、そこからはわりとちょくちょく…いっしょに演奏したり、ラジオに呼んで頂いたりとかもあるし。焼肉食べに行ったりとか(笑)
H:焼肉行ったりね(笑)誕生日の会とかね。
C:そうですね。
野田:去年はロンドンでごいっしょにライヴ、やられてますよね。
H:あ、そうだ。たまたまいたんだっけ?
C:そうなんです。たまたまっていうか、行ったんですよ。ちょっと前に僕、ロンドンでライヴがあって。で、その後に細野さんがあったんですけど…僕はスペインに一回行って、細野さんのライヴ観にロンドンに戻って、それで…っていうのもありましたね。
H:そっかそっか。もう、みんなあそこに来た。
C:坂本さん(坂本龍一)とか幸宏さん(高橋幸宏)とかもちょうどいて…
H:なんでみんな集まったんだろうね(笑)
C:坂本さんも、そういえば僕、スペインでいっしょのフェスだったんですよ。それで行って…
H:あれはでも、僕にとっては偶然みんなが集まったな、っていう印象があるけどね。
C:そうですね。たまたまあの時期にちょうどあの辺にいた、っていう。
H:だったら舞台に引っ張り出さないといけない、と思って(笑)
C:おもしろかったです、あれはね(笑)
H:おもしろかったね。
野田:細野さんの中で、小山田圭吾ってどういう人ですか?
H:(笑)
野田:どういう風に思ってらっしゃるのかな、っていうのをちょっとお聞きしたいな、と思って…(笑)
H:いやー、もう、「切れるミュージシャン」ですよね。「切れる」っていうのは「怒る[キレる]」じゃなくてね(笑)感覚的にすばらしい…あこがれますよ。
C:えー!やめてくださいよ(笑)
H:いや、ホントに…ホントですよ。んー。尊敬してます。
C:(笑)
野田:具体的にはなんか…作品というか、音楽を聴いて…なんだったんですか、きっかけは。
H:もう、[記憶が]ボーっとしてるからな…これ、っていうのは…
C:たぶん、ちょうど『Point』のときにこの番組、Daisy Holidayに呼んで頂いて。たぶん細野さんはあんまり憶えてないと思うんですけど(笑)
H:(笑)
C:収録する前にパッと入ったら、卓の前で細野さんが真剣に聴いてくれてたんですよ、『Point』を。それがすごいうれしくて。
H:『Point』はやっぱり衝撃的だったかもしれない。
C:そこから、やっぱり、呼んで頂けるようになって。だから、初めてちゃんと聴いてもらったのは『Point』なのかな、と僕は思ってますね。
H:そうそう。
Point Of View Point - Cornelius
(from 『Point』)
H:あの、「渋谷系」とか言われてる頃はそれほど…「渋谷系」からちょっと離れてたから、僕は。よく知らないんですよ。
野田:ちょうどね、1980年代末から1990年代頭って、細野さんがアンビエントを…
H:そう。こもってたんですよ、ひとりで。
野田:ちょっとね、音楽性でいうとアレですけど…だから、下の世代からCorneliusが出てきて、どういう風に思われてたのかな、っていうのはすごく気になるところだったんですけど。
H:そんなに下とは思ってなかったけどね(笑)なんかわりと、同世代に近いのかな、と。
C:いやいやいや!(笑)
H:勘違いしてるかも(笑)
C:時空がちょっと歪んでそう(笑)なんか、細野さんがエイプリル・フール(Apryl Fool)でデビューした年が1969年なんですけど、その年に僕、生まれたんです。
H:あらー…だいぶ違うわ(笑)
C:それで、今年は細野さんが音楽活動50周年。僕は30周年。だから、ちょうど20コ違う。
H:そうなんだね。こないだ誕生日のときに…(笑)
C:そうそう(笑)僕がこないだ、もうすぐ50歳になるっていう話を細野さんの横で、違う人と話してたんですよ。それで、細野さんは誕生日が近い、みたいなのを小耳にはさんだのか、「あ、そういえば小山田くん、還暦なの?」って言われて(笑)
H:(笑)
野田:でも、細野さん…たとえば小山田圭吾という人はかつての細野さんみたいに、あらゆる音楽を貪り聴いて…海外の音楽を聴いて、それを独自のセンスで以てまとめ上げる、っていうところはちょっと近いところはあるんじゃないかな、って思うんですけど。
H:いや、実はね、小山田くんが何を聴いてるか知らないんだよね(笑)
C:(笑)
H:というか、僕とは違うタイプだと思ってる。そういう意味では。なんか、才能があるからやってるんだろう、と思って(笑)
C:え!
H:僕なんかはね、いろんなものを聴いて、自分の中で熟成して編集したりしてるから。
C:いや、僕もまったく一緒です。
H:あ、同じなの?(笑)
野田:同じだと思いますよ、そこ(笑)
C:細野さんの聴いてる音楽、ぜんぶはわからないですけど、何聴いてるんだろう、っていうのはすごい気にしてるから…やっぱり、細野さんが聴いてる音楽は聴きますよ。
H:そっかそっか。
野田:逆に、小山田くんの中で、細野さんの音楽・作品についてどう思ってるのか、お伺いしたいんですけど。やはり、レンジが広いじゃないですか、細野さんは。
C:ほんっとに広い。
野田:アシッドロックやフォークからエキゾチカから…
H:アシッドロックなんてやったことあったっけ?
野田:いや、わからないですけど、初期の…
C:エイプリル・フールとかは、ちょっとその辺の…
H:なるほどね。
野田:アンビエントから、実はヒップホップみたいなことも早くからやってるし。
C:いやホント、広くて深いんですよね。
H:広すぎて自分でも…申し訳ないぐらい。
C:だから、世界的に見てもいないですよ、こういう人。
野田:いないですね。
H:んー、いないだろうね。
C:それを最近、やっと海外の人がわかってきた感じがしますよね。
H:普通だったらわかんないよね。この、インターネットが無ければね。いまだに孤独に生きてると思うんだけど。
C:まあ、そういうネットの影響ももちろんあるでしょうし、やっとみんなに届いた感じがするっていうか。
H:数十年かかったね。
C:(笑)まあ、もちろんYMOとかはね、海外の人も…
H:数年前までは…たとえば、ヨーコさん(オノ・ヨーコ)のオノバンドに参加したじゃない?そういうときに、ちらちら出待ちのオジサンたちがいたの。みんな、ああいう人たちはYMOなんだよね。
C:んー。
H:数年前まではそうだったんだよ。日本の…いわゆるオタクって言われるようなタイプの。手ぇ震えながらサインペン出して…
C:いましたね。たくさんいましたね(笑)YMOシャツを自分で作ったりとかね(笑)
H:そうそうそう(笑)そういう人ばっかりだったんだけど、そこがいま、違うのかな。
C:そうですね。細野さんのあらゆる時代が、やっと…
野田:ホントその通りで…僕のすごく仲の良い、その筋では有名なフランス人のディガーがいるんですけど、「細野さんの『フィルハーモニー』を聴いて本当にビックリした」、と。"Funiculi Funicura"とか"Platonic"みたいな曲って、ものすごく早くプレ・ハウス、プレ・テクノみたいなことをやりながら、音階は東洋じゃないですか。だから、あれは他にはない、と。
H:なるほどね。
C:でもほら、すごくレンジが広いから、あらゆる時代じゃないですか。はっぴいえんどから、アンビエント期から、『COCHIN MOON』みたいなのもあるし。
野田:小山田くん的には、特に思い入れのある作品というか。ありますか?
C:んー、難しいですね。
野田:3枚選ぶとしたら?(笑)
C:んー、無いですね(笑)
野田:(笑)
C:[細野さんのベスト盤のために]選曲したんですよ、今回。で、やっぱ50年で、しかも長大な量だし…
野田:それは、いつの時期を選んでもいい?
C:もちろん。そういうことだったんで…
H:だから余計難しいよね。
C:いや、ホントに大変でしたね。んー。
松村:それは[CD]1枚?
C:僕が1枚と、星野源くんが1枚選んでくれて。
野田:それぞれのセレクターがいて…
H:[選曲は]カブってないんだよね、それでね。
C:そう。僕は星野くんが選んだやつの曲目をもらってたんで、そこからカブらないように選んだんです。それでもやっぱり、ぜんぜん足りなくて。
H:んー。
C:特に80年代半ば以降のちょっとアンビエントっぽい時期の曲とか、すごい好きな曲たくさんあるんですけど、曲自体がけっこう長いものが多いんで。
H:そうなんだよ。
C:1コ入れると、2コ諦めなきゃいけない、みたいな(笑)
H:いま、ああいうのを聴くと編集したくなるんだよね。長いから。当時は長いのが流行ってた。
C:でも、長いのがやっぱり良いんですけど、長くないと、ああいうのって楽しめないというか…あの時間、音楽の中にいないと、というのがあるかな。
野田:そういう感じで、聴く人もいろいろなタイプの聴き方ができる、と。
C:できますよね。細野さんのソロもあるし、ユニットとかもたくさんあるんで。
H:んー。いちばん、小山田くんとやってたのはSketch Showだね。
C:そうですね。まあ、どれも思い入れありますけど、やっぱりSketch Showが思い入れありますね。
松山:あー、自分が参加してたから?
野田:2000年代前半ですね。
C:そうですね。
Turn Turn - Sketch Show
(from 『Audio Sponge』)
野田:アーティストとして…もちろん、リスペクトしてるというのは大前提で、特にこの部分に共感してる、っていうのはありますか?
H:…ふふ、難しい質問だね(笑)
C:んー…なんでしょうね。
野田:小山田くんの思う「細野さんらしさ」というか。
C:んー…
H:無理して言わなくていいよ(笑)
C:いやいや、いろいろあるんですけど、上手く言葉にできないんですけど…まあ、東京出身というところは共感というか、ベースとしてやっぱり近いというか。YMOは3人ともそうなんですけど、なんか、テンションというか…
H:テンションは近いかもね。そういえば。
C:あと、話し方がよく似てるとか言われますね。話声が、とか。話すときのテンションが近い、って言われます。
松山:でも、私は沖縄…っていうか、奄美のほうの出身なんですけど。
H:あ、ホントに?
松山:細野さんは、なんか…『Paradise View』とか…
野田:『Paradise View』とか観てたから、空気感としては共感できる、という…(笑)
松山:『Paradise View』がいちばん好きなんです。
H:えー、そう。
松山:だから、東京出身じゃない人も共感できる、っていうか…
H:あんまり、「シティ・ポップ」っていう感じじゃないもんね、僕(笑)
C:でも、そこのいちばん重要なところにも[細野さんは]いるんですよね(笑)
H:別に自分から行ったんじゃない、呼ばれて行くだけだから(笑)
C:でもやっぱり呼ばれちゃうんですよね(笑)
野田:そうなんですよね。でもいま、逆に海外でシティ・ポップ、すごいじゃないですか。達郎さん(山下達郎)から吉田美奈子さんとか大貫妙子さんとか有名になって、「次」になにが来るのかっていうときに、「J・アンビエント」って言われてるんですよ。で、J・アンビエントっていう言葉がひとり歩きしてるような状況があって。
H:あ、知らなかった。
C:コンピ、出ましたよね。
野田:『Kankyō Ongaku』っていう…あれの最後の曲も細野さんなんだよね(笑)
松村:で、吉村弘さんとか高田みどりさんとかが再評価されて。
H:清水靖晃とかね。
松村:その中で、やっぱり細野さんがいるんですよね(笑)
C:辿ってくと、やっぱりぜったい出てきちゃうんですよ(笑)
松村:出てくるんですよ(笑)ホントにあのシリーズ再発してください(笑)
Normandia - 細野晴臣
(from 『Coincidental Music』)
野田:お2人に共通してるのはやっぱり、日本もそうですけど、海外…コスモポリタンとして活動してると思うんですね。海外ツアーっていうのはどうですか?大変だとは思うんですけど。
H:そういう意味では先輩なんだよね、小山田くんが。
C:いやいやいやいや…なに言ってるんですか(笑)
H:ホントだよ(笑)
C:YMOで、ぜんぜん…
H:あ、YMOはそうだ。でもなんか、時代があのときと…80年代といまと違うじゃない。すごい「違和感」の中に入っていったからね、YMOは。SONY、HONDAと比べられたりしてて。けっこう、プレッシャー強かった。でも、小山田くんの場合はすごくすんなりと、自然に行ってるじゃない。そこら辺がぜんぜん違うし。小山田くんは[世界中の]ミュージシャンたちにも人気あるじゃない。そういう繋がりっていうのがとても、うらやましいな、とは思ってたよ、僕は。
C:いやいやいや…(笑)細野さんだってミュージシャンに…みんなYMO大好きですよ(笑)
H:だから、先輩ですよ。だって、ツアーをやるでしょ?アメリカなんかのツアー。
C:はい。
H:それってバスで移動したりするわけ?
C:バスのときもありますね。
H:それがすごい、あこがれなんだよね。
C:いや、大変ですよ(笑)1日、2日はまあ楽しめるんですけど、1ヶ月とかずっと…大陸横断とかしたとき…もう、いまは無理ですけど、20代のときは西から東までずっとバスで。
H:それは僕、できないよ。
C:いや、それはたぶん無理だと思います。僕もいま、この歳でも無理ですから。
H:無理か。んー、あこがれるけどね。
C:一応、その頃はまだ20代だったんで。
H:そんな若かったんだ。
C:そうですね。
H:ずいぶん前からやってたわけだね。
C:んー、もう20年ぐらい。
H:僕がソロでやりだしたのは数年前からだから。外国はね。だから本当に、ずいぶん前からやってる先輩ですよ。
C:いやいやいや…(笑)ほぼ、[日本人としては]最初のワールドツアーぐらいじゃないですか、YMO。あ、でもミカ・バンド(サディスティック・ミカ・バンド)とかはあったのか。もう、最初の人ですからね。初めて日本のバンドが海外に出ていくっていうプレゼンテーションを…日本としてもがんばろう、っていうのがきっとあったと思いますし。
H:そうだね。バックアップがあったから出来たんだけど。
C:でも、そういう経験ができる人はもう二度と出てこないような気がしますけどね。
H:もう、あの時代とは違うからね。いまは違う形だね。
C:まあ90年代、「オルタナティヴ」みたいな時代だったんで、もうちょっとカジュアルっていうか。
H:そうそう、カジュアル。
C:カジュアルでDIYな感じになってきましたけどね。
H:自然に出来てる感じがいいな、と思ってたの。
松山:とはいえね、Corneliusもこれだけ海外に出て行ってるんで、やっぱり矢面に立って…日本の文化の…ハロー・キティやドラえもんとか。あるいは村上隆さんの「スーパーフラット」とか。ああいうのと比較されたりとか。
H:そうだろうね。たしかにCorneliusは他ではあんまりやって無いことをやってた、っていう印象があるね。だから、どうだったの?プレッシャーはあったの?
C:いや…
H:無いんだね(笑)
C:あんまり考えないようにはしてましたけど…でも、やっぱり海外に行くと、日本っていうものを意識させられるじゃないですか。そういうのは感じてましたけど。取材だったり…「日本人はどうなの?」みたいな訊き方されるじゃないですか。「日本ではどうなの?」みたいな。そこで初めて、やっぱり、そういうことを意識しましたよね。
野田:細野さんもやはり、YMOで行かれたとき「海外から見た日本」みたいなのは…
H:それはね、取材でそういうことばっかり訊かれるから、もうイヤになっちゃったんですよね。音楽のことはあんまり訊かないんだよ(笑)
C:そうですね。
H:だから、取材がいちばんイヤだったね。好きじゃなかった(笑)ライヴやると…例えばロンドンでやって、終わって楽屋から出てくと、若い女の子たちが追っかけてきたりして。そういうのは、実感が持てたね。
松山:でもまた、ソロになってからの海外ツアーはぜんぜん違った…
H:ぜんぜん違いますね。
松山:やっぱり楽しいですか?
H:んー、まあ、楽チンですね。なんか、自然発生的に動いてるんで。戦略ではないんで(笑)
松山:あと、YMOが活動した時代に比べると、ポップ・ミュージックのヒエラルキーっていうか、「英米中心」みたいなものがちょっと崩れてる感じがあるじゃないですか。
H:そうですね。たしかに、いままでの何十年間の日本の音楽っていうのはあんまり出てなかったけどね。その蓋が開いたっていうことで…西洋にとっては新鮮なのかもしれないですね。
野田:まあね、ようやく正当な評価を受けつつあるという感じでありますけど。
(from 『Point』)
2019.07.21 Inter FM「Daisy Holiday!」より
H:こんばんは、細野晴臣です。えー、今回も先週に引き続いて…「恐るべし10代」という…(笑)ゲストが、Little Glee Monsterのmanakaちゃん。
ma:はい、manakaです。
H:そして、小山田マイロくん。
Mi:マイロです。
H:(笑)
Mi:よろしくお願いします。
ma:よろしくお願いします。
H:えーと、今回はどうしようかね。んー。
Mi:(笑)
H:ホントはね、若者同士でしゃべってくれるといいんだけどね。実はね、孫の悠太がそこにいるんだけどね。
(悠太:きょうはちょっと、やめときます。)
ma:(笑)
H:まあ、みんな10代だよ。いまんところ。
ma:そうですよね。
H:どういうこと?これ。
Mi:(笑)
ma:すごい。
H:みんなミュージシャンだよ。音楽以外の人は知らないんだよ、僕、そういえば。もうひとりヘンな人がいるの。
Mi:はい、なんか…聞きました。
H:19歳で。悠太の…
Mi:同級生?
(悠太:いや…友達。)
H:最初にね、ここにひとりで来たんだよ。
Mi:えー!
ma:すごいおもしろいですよね、それ。
H:僕を訪ねてきたわけ。
Mi:訪ねて?いきなり?(笑)
H:いきなり。
Mi:んー、すごい。
H:ブギウギに関してすごい詳しい19歳。そんなヤツがいるんだ、と思って(笑)
ma:すごい…
H:それで悠太に紹介して、仲良くなって。おもしろいんだよね?
(Yu:めちゃくちゃおもしろい。頭のねじが1本はずれてる…)
ma:気になる…
H:じゃあ今度はその人も呼ぶ、と。で…きょうはどうしよう。じゃあね…この間の続きで、ちょっとアンビエントっぽい話だったんで…ヴァンパイア(Vampire Weekend)を聴いてみようかな。ここでまだかけてないもんね。ヴァンパイア・ウィークエンドで…"2021"っていうタイトルか。
2021 - Vampire Weekend
(from 『Father of the Bride』)
H:短いんだよね(笑)
ma:いいですね。
Mi:新しいやつですよね?
H:そう。えーと、いつだったかな…ずいぶん前に打診が来て。「"Watering a Flower(花に水)"っていうのを使っていいか」っていうね。「いいんじゃないの?」と思って。
2人:(笑)
H:そしたらこんなのができあがって来て。おもしれぇ、と思って。
Mi:ヴァンパイア自体も…相当ひさびさのアルバムですよね。
H:そうなんだよね。いくつの人たちなんだろうね、これは。わかんないな、僕には。
Mi:30代…?
H:30代かな?けっこう前から聞いてはいたけどね。ぜんぜん、こういうのをやる人たちだとは思ってなかったから(笑)びっくりだよ。
H:さて、manakaちゃんは…
ma:はい。
H:Little Glee Monsterは…アイドル活動、なのかな?
ma:そうですね…ボーカル・グループ、という感じで。アカペラとかを主にやったりしてるので…はい。
H:大人のファンも多いよね、だから。
ma:そうですね。と、並行して、けっこう同い年ぐらいの子とかもすごい多くて。それはうれしいですね。うん。
H:えっと…これ、ライヴがけっこう多いんだっけね。
ma:はい。
H:近々は…いつどこで、なにやる?
ma:えっと、8月から11月まで全国ツアーが始まるんですけど。初日が8月3日から…11月には代々木の第1体育館のこけら落としをやらして頂くんですよ。
H:ホント?すごい。あそこで?
ma:はい。
H:えー!びっくりだね。
ma:びっくりです(笑)めちゃくちゃ光栄です。
H:それは誰でも入れるのかな?(笑)抽選かな?
2人:(笑)
ma:そうですね(笑)3日間あるので、ぜひみなさんに来て頂きたいです。
H:あー、それはそれはね、記念すべき…選ばれたね。なにか聴かせてもらおうかな。
ma:はい。リト…私たちの曲ですよね?
H:うんうん。
ma:じゃあ、私たちの新曲の中の、カップリングで…"Baby Baby"という曲があるんですけど、それにしたいと思います。
H:あ、わかりました。
Baby Baby - Little Glee Monster
(from 『君に届くまで』)
ma:ありがとうございます…!
H:良いよ。
ma:めっちゃ恥ずかしいです…(笑)
H:なんでなんで(笑)これはすごい…伝統的なファンクだよね。
ma:はい(笑)
H:曲、誰?これ。
ma:これは、初期…デビュー曲からやってくださってるKENさんという方がいらっしゃって。
H:へぇ。なかなかいいですね。んー。
ma:ありがとうございます(笑)
H:いろんな音楽を聴くと刺激されて、なんかこう、希望が持ててくる。
ma:(笑)
H:さて、マイロくんの曲…ね。もう1曲聴こうよ。
Mi:え!
H:せっかくだから。
ma:(笑)
Mi:そんな…いいんですか?
H:いいんだよ、もちろん。せっかく来てくれたんだから。
Mi:いやぁ…恐縮です…
H:マイロくんは、歌わないの?
Mi:歌わないですね。歌ったこともないです。
H:ホント?小山田くん(小山田圭吾)もそうだったけど、最近歌うようになったよね。
Mi:そうですね(笑)
H:うん。いいよ。なかなかいいと思うんだけど…
Mi:恥ずかしくって…
H:最初は誰でもそうだね(笑)
Mi:(笑)
H:やっぱり、やってみたほうがいいと思うよ。んー。
Mi:僕、でも、マイク持ってないんですよ(笑)
H:ホント?買ったほうがいいね(笑)…これ?タイトルあるの?
Mi:これは"DUNE"という曲です。
H:"DUNE"。
DUNE - Milo
H:えーと、あれだね…19歳の音じゃないね、これ。
Mi:(笑)そうですか?
H:大人だよね。
Mi:なんか、でも、これは…僕、SF、っていうか映画が好きで。そう…サントラとかもすごい好きで、聴いてて…これは…あ、この曲の話になるんですけど。
H:いいよ。"DUNE"だよね。
Mi:そう、ホドロフスキー(Alexandro Jodorowsky)が撮り損ねた…
H:あ、『DUNE』…あったね。
Mi:今度、公開するみたいなんですけど…ホドロフスキーじゃないんですけど。
H:あ、そうなの?ちょっと癖のある人だからね。
Mi:そう…ボツになっちゃった映画があって。それを…あったらいいな、っていう(笑)
H:そうか。それはおもしろい。でも、SF好きってことはすごいうれしいね。
ma:なんか、すごい詳しいんですよね。
H:あ、ホント?その話、したいな。最近、いいSFが無いじゃない。
Mi:ああ…そうですね…
H:しょっちゅう観てるんだけど、新作。B級でもなんでも。
Mi:あ…それこそ一度、映画館で…(笑)
H:あったね(笑)あったあった(笑)
ma:すごいですよね、その状況…(笑)
H:エレベーターから降りてきたんだよね(笑)
Mi:ヒューマントラストシネマで…(笑)
H:渋谷のね(笑)あれなんだっけな、映画…
Mi:『パターソン(Paterson)』です!
H:あ、『パターソン』だ!シブい映画観に来たね(笑)
ma:(笑)
Mi:エレベーター乗ってて、[扉が]開いたらいちばん前に細野さんが立ってて…うわー!と思って(笑)
H:最初は気がつかなくて…そしたら声かけてきてくれてね。よかったよ。
Mi:びっくりしました…(笑)
ma:そんな状況、人生で一回あったら奇跡、ぐらいの状況ですよね(笑)エレベーター開いて細野さんがいらっしゃる…
Mi:そうだね(笑)
H:そうね(笑)でも、お父さんともそうやって会ったんだよね。
Mi:あ、そうなんですか?
H:PARCOの本屋さんで(笑)
ma:えー!
Mi:(笑)
H:そういう関係なのかな。小山田家とはね。んー。
Mi:バッタリ(笑)
H:そうか、SF…
Mi:なに観ました?最近。
H:最近はね、なんだっけな…ぜんぶ忘れちゃうんだよね(笑)
2人:(笑)
Mi:なんか印象に…
H:印象に残ったのは…わりと良かったなと思ったのは『ファースト・コンタクト(The Beyond)』っていう…
Mi:あー!はいはい…
H:知ってるんだ。あの…最近観た中でいちばん好きだったのはあれだよ、『メッセージ(Arrival)』。
Mi:はい!僕も!
H:おんなじだ!(笑)
Mi:最高ですね、あれ…
H:あれはすばらしい。ね。ああいうのがあるから見過ごせないっていうかね。
Mi:んー…
H:みんな、SF好きじゃないみたいよ、今の人(笑)
Mi:そうなんですか?おもしろくないんですかね…
H:いやー、すごい現実的じゃない?AIの話よりぜんぜんおもしろいよね。
Mi:そうですね(笑)なんか、けっこうみんな…僕の友達でもSF好きだと、『エクス・マキナ(Ex Machina)』とか。
H:あ!いい。観た。んー。
Mi:僕も好きで、何回か観たんですけど…『メッセージ』は…
H:特別だね。音楽もすごかったし。
Mi:うんうん。
H:ヨハン・ヨハンソン(Jóhann Jóhannsson)っていう…亡くなっちゃったんだよね。
ma:…帰宅したらぜったいすぐチェックします。『メッセージ』…
Mi:(笑)
H:それは観て、うん。
Mi:なんか、普通のSFみたいな感じでもないんですよね。言語…言葉の…
H:ふしぎな映画だよ。
ma:へぇ…
Mi:宇宙人と、言語学者がコミュニケーションをとる、っていう…
ma:えー、おもしろそうですね。
H:うん、おもしろかった…
ma:観てみよう…
ma:なんか、前に会ったときゾンビ映画にめっちゃハマってたよね。
Mi:あー、ゾンビは大好き(笑)まだ今でもぜんぶ観てる。
H:(笑)
Mi:この前…それこそ『パターソン』の監督のジム・ジャームッシュ(Jim Jarmusch)の新しいやつ…(笑)
H:それ観てないんだよ…
Mi:アメリカ公開だったんで、こっち来る前に観たんですけど…非常におもしろかったですね(笑)
ma:えー。
H:それは観なきゃな、って思ってて…
Mi:ゾンビ映画って基本、低予算で作るから、キャストがぜんぜん有名じゃない、とか。ショボい俳優…ショボい俳優って言ったらアレだけど…
H:それがいいんだけどね。
Mi:まあ、そう…でも、そのジム・ジャームッシュのやつはティルダ・スウィントン(Tilda Swinton)とか、ビル・マーレイ(Bill Murray)とか…
H:おお、大物が出てるんだ。んー。
Mi:大物ばっかで…すごい、味濃いゾンビ映画だった(笑)
ma:んー。
H:楽しみだね、それは。ジム・ジャームッシュがゾンビ撮るとは思わなかったよね。
Mi:いやー…
H:映画好きなんだね、じゃあ。マイロくん。
Mi:好きですね。
H:『アンダー・ザ・シルバーレイク(Under the Silver Lake)』っていう映画観たんだけど、あれはね、結末、好きじゃないね。
Mi:ちょっとね(笑)
H:「アセンション(Ascension)」っていうニュー・エイジの…ちょっと宗教がかっちゃって。
ma:んー。
H:でも、その間はけっこうダラダラ…ヘンな話だけどね。
Mi:謎解きみたいな…オタクくんが…(笑)
H:そう、なんかかぶるところがあるよ。「ゼルダの伝説」とかね。
Mi:「マリオ」とか「ファミコン」とか。「アメリカ人のオタク文化」がすごい…ファンジン(Fanzine)が出てきたりとか。
H:でも…こないだロサンゼルス行ったときに、シルバーレイクって街に行ったんだよね。
Mi:はい…
H:なんか、若者が集まってて…わりと頭の良さそうな人たちが多かったよ(笑)
Mi:そうですね。ちょっとおしゃれタウンに…ミュージシャンが多いですね。
H:そうみたいね。最近のスポットみたいね。あー、だからそういう映画ができるのかなぁ、とか思って。
H:えー、じゃあね、僕かけようかな。なんていう人かな、これ。ロシアなんだよね。女性なの。で、前、Redbullのインタビューっていうか…そこに出たときに来てたんだよね。
ma:んー。
H:で…なんか、ひと言ふた言、話したような気がするんだよね。
Mi:(笑)
H:で、聴いてみたら…あ、なんか共通点があるな、と思って。聴いてみましょう。
ma:気になります。
H:"You"っていう曲…ケイトNV(Kate NV)だ。
Mi:あっ…なるほど。
H:ケイトNVの『FOR』っていうアルバムです。
вас YOU - Kate NV
(from 『для FOR』)
H:というわけで…ケイトNV。
ma:おもしろいですね。
Mi:去年、来日してたの僕、観に行きました。
H:あ、そうなんだ!その頃はまだ日本にいたんだね。
Mi:あ、夏休みで…
H:夏休みか(笑)いやー、こういう人、増えてるね。なんかね。派手なばっかりの人が一時期、いっぱいいたけど。こういうシンプルな人が増えてるな…頼もしいな。
H:では…最後の曲になるね。
Mi:あ、そうですか…
H:じゃあ…お2人に来て頂いて2週やりましたけど。「これから」に注目してるんで。これで…ラジオに出てそれで終わり、っていうわけじゃなくてね。
ma:(笑)
Mi:そうですね(笑)
H:今後、数年の間にどうなっていくか、っていう。見てますから。
ma:はい…記念すべき第1回目に呼んで頂けてうれしかったです。
Mi:光栄です、がんばります…
ma:がんばります。
H:楽しみなんで…じゃあ最後に、マイロくんが推薦するような曲を聴かせてもらおうかな。
Mi:ハッ…なんか、ラジオっぽく、じゃあ…
H:いいですよ。遠慮深いね(笑)
ma:(笑)
Mi:なんだっけ…ジェフ・フェルプス(Jeff Phelps)で、"Hear My Heart"。いやー…
H:よかったよかった。
Mi:ありがとうございました…
ma:ありがとうございました。
H:こちらこそ。
ma:緊張した…
Mi:いやー…(笑)
Hear My Heart (ft. Antoinette Marie Pugh) - Jeff Phelps
(from 『Magnetic Eyes』)
2019.07.14 Inter FM「Daisy Holiday!」より
H:こんばんは、細野晴臣です。さて…きょうはですね、「恐るべき10代」というシリーズがあるんですけどね(笑)第1回目に来て頂いたお2人を紹介します。自己紹介をどうぞ!
ma:Little Glee Monsterのmanakaです!
Mi:小山田マイロです。
2人:よろしくお願いします。
H:名字、ついてんだね(笑)
Mi:あー…うん、どっちでも…(笑)
ma:(笑)
H:マイロくん、マイロくんって、呼ばれてて。
Mi:そうですね(笑)
H:さて…2人は知り合いなんだね。
2人:そうなんです。
ma:はい。
H:いつから知ってるんだっけ?
Mi:たぶん、中学…
ma:中学校の頃から…
H:え、中学生?どうやって知り合ったわけ?
Mi:なんだっけ…
ma:あれは…その当時、聴いてる音楽が同じだったのがきっかけで、そういう話を通して、お友達に…
Mi:そうですね。
H:あ、そう。すばらしい。音楽の仲介っていうか、音楽で知り合った。
ma:はい。
H:で、なんか…どんな音楽が…その当時、みんなで話してたわけ?
Mi:あー…ぜんぜん憶えてねぇ…(笑)
H:憶えてないか(笑)
Mi:でも、僕、レコード屋で働いてて。
ma:うん。
H:あ、そっか。
Mi:中学…高校に入ってからかな?中3とか中2の終わりぐらいによく通ってたレコード屋があって。
H:その頃からやってたんだね、バイト。
Mi:そう…バイト始めたのは高1かな。そこは輸入盤の新譜屋なんですけど。レコードばっかりの。そこの…奥底ですね。よくわかんない(笑)なんだったかは憶えてないけど…
ma:それが、でも、きっかけでしたね。はい。
H:とにかく、マイロくんはラジオ初めてね?
Mi:はい。
H:ちゃんと言うと、小山田くん(小山田圭吾)の息子だよ。ね(笑)
ma:(笑)
Mi:はい…
H:で、ずっとアメリカにいま…留学なの?
Mi:留学…ですね。ロサンゼルスの学校に。
H:で、僕もこないだロサンゼルスでやったときに観に来てくれて。
Mi:はい。観に行かせてもらいました。
H:で、ぜんぜん、お話したことがないんだよね。
Mi:そうですね。
H:いるのは知ってるんだけど(笑)ちょっと離れたところにいるから。
ma:(笑)
H:初めてだね。
Mi:そうですね、ちゃんと…
H:あのね、お父さん…「お父さん」っていうの似合わないな(笑)
2人:(笑)
H:小山田くんね、とはよく…話題に出るよ。マイロくん。
Mi:あ、そうですか(笑)
H:何聴いてるか…マイロくんから情報を得る、とか言ってたよ。
ma:えー!
Mi:でも、そうですね。話すことないから…音楽の話ぐらいしか…(笑)
H:じゃあみんなそうだよ、僕たちもそうだよ(笑)
ma:(笑)
H:えー…それで、manakaちゃんはマイロくんとなんかいっしょにやろう、と思ったことはないわけね?じゃあ。
ma:いっしょに…いや、なんやろ…いっしょにやろうとかの話はないよね。
Mi:まったくない。
H:その頃はもう、Little Glee Monsterは始まってたの?
ma:そうですね、始まってました。
H:あ、もう始まってたんだ。
ma:で、上京して1、2年だったんですけど、[いっしょに]遊んだりもしたりして。そのときも音楽とか教えてもらったり…してましたね。
Mi:そんなに、別に…よく会うほうではなかった(笑)
ma:そうですね。
Mi:たまに…どっかで会ったり。
H:まあ、知り合いだってことは…そういう縁があるとはね。
Mi:そうですね。
H:最初ね、manakaちゃんと悠太*とかね。いろいろ…10代の人たちがいま、おもしろいから。みんな呼んで、なんかしゃべらせようと思ったの。僕なしで。
[*期待の若手ベースプレイヤー。というか細野さんのお孫さん。]
Mi:んー…
ma:ふふっ。
H:でも、まあ…座れないから、ここ(笑)とりあえず、お2人を選んだんだよ。
ma:光栄です!
Mi:光栄です…
H:で、知り合いだっていうから…
ma:はい。で、2、3年ぶりなんですけど、きょう会うのも。まさかここでお会いすると思ってなかったから…びっくりです。
Mi:ホントに…
H:みんな10代なの?まだ。
ma:はい!
Mi:18歳です。
H:おあぁ…やっぱり10代だ…
2人:(笑)
H:さっきテレビで、16歳の天才ミュージシャンみたいのが出てたけどね(笑)
ma:へー。
H:あれは誰だ?(笑)「SASUKE」とか言ってた…
ma:あー!はいはいはい、SASUKEくん。
H:あ、知ってるんだ(笑)最近10代…だから、アスリートみたいね。オリンピックみたいな。
ma:そうですね。
H:マイロくんはバンドはもうやってないの?いま。
Mi:バンド…人とはやってないですね。
H:前やってたよね。
Mi:そう、中学の…部活みたいな(笑)軽音部(笑)
ma:でも、それがきっかけやったんですよね。それのインタビューみたいなのを読んで…知りましたね。マイロくんを。
Mi:あ、そうだ。 でも、そうですね…ひとりで。最近…
H:楽器はやっぱりギター?
Mi:ギター…弾きますね。
H:ベースもやってたでしょ。
Mi:そうですね。なんか、いろんな楽器に手を出して…(笑)
H:で、いまはどんな状態なの?アメリカで。
Mi:アメリカで…学校、高校を卒業して、次は大学っていうか…日本で言う短大みたいな、2年…なんかよくわかんないです。
H:ロサンゼルスの?
Mi:そうですね。L.A.の学校に行くことになって…
H:そうかそうか。
Mi:で、音楽、始めようと。
H:音楽の道、行くわけだよね。もちろんね。
Mi:そう。たぶん…たぶんっていうか…(笑)
ma:(笑)
H:それしかないだろう(笑)
Mi:他にできることない(笑)
H:いやー、それはちょっと楽しみだ。これからだね。ちゃんと聴けるのはね。
Mi:はい。
H:いまなんか聴けるものはあるの?自分ちでなんかやってるの?
Mi:そうですね、Soundcloudっていうアプリ…アプリじゃないな。ありますよね。
H:うん。あれで聴けるんだ。
Mi:あれに…こっそり…
H:これいま言っちゃっていいの?マイロくん名義でやってるんでしょ?
Mi:あ、はい、一応…
H:じゃあ、みんな聴くね(笑)
Mi:お願いします…(笑)
ma:殺到ですね(笑)
H:じゃあ、なんか音楽…manakaちゃん、なんか持ってきてくれてるんでしょ?
ma:はい。えーと…ローレン・デスバーグ(Lauren Desberg)という、アーティストの曲をかけたいと思います。
H:はい、ぜひぜひ。
ma:はい。"Alone in Love"。
Alone in Love - Lauren Desberg
(from 『Out for Delivery』)
H:おお、終わった…これはどんな人なの?ぜんぜん、僕知らないんだよ(笑)
ma:たぶん、L.A.出身…だったと思うんですけど。いま、ちょうどライヴを日本で…
H:あ、来てる?時々来るよね、そういう人がね。
ma:そうですよね(笑)
H:Blue Noteだっけ?そこの前を通るといつも、ウワッ!っていう人がいるから(笑)
H:で、マイロくんはいま…夏休み?
Mi:そうですね。夏休み…学校(高校)と学校(大学)の間だから、夏休みっていうとアレですけど…まあ、何もないから。
H:帰ってきたわけね。
Mi:そうですね。
H:1ヶ月ぐらいいるの?
Mi:2ヶ月ぐらいいるかな?あっち、学校終わるの6月で、学校始まるの9月だから。
H:あ、そうかそうか。
ma:長い!
H:長いな。いいなぁ。うらやましいよ。
Mi:いや…学生の、特権で…(笑)
H:こっちはおじいちゃんの特権があるから。
2人:(笑)
ma:いいなぁ…(笑)
H:すごい、歳の差があるんだけど…(笑)
Mi:そうですね(笑)
H:違和感がある?
Mi:いや…
H:ないか(笑)
ma:ある?
Mi:いや?そんなに…(笑)
H:いいよ(笑)言って、なんでも。参考にするから。これからの人生、どうやって生きていこうかと思ってるから。
ma:それで言うと、何年代がいちばん楽しかったかな、って。すごいそれが訊きたくて。30代とか40代とか。
H:あー…
ma:戻れるなら何十代がいいですか?
H:やっぱりね、そうだな…20代が仕事、おもしろかったかな。仕事っていうか…いろんなことを思いつく。これからだよ、だから。お2人は。
ma:そうですね。いちばん間近な世代ですね。20代…もうちょっと。
H:これからだもんね。
ma:あと2年ですね。2020年…
H:いいなぁ…ほんっとにうらやましいわ(笑)
2人:(笑)
H:だからね、この「恐るべき10代」っていう特集をなんで考えたかっていうと、もう、君たちに任せるよ、っていうね。気持ちがあるわけ。
Mi:えぇ…
H:それまでね、けっこう絶望してたんだよ。若い世代に。
Mi:それ…そんなこと言っていいんですか?(笑)
H:いいんだよ(笑)いいの。でも、いろんな10代の人たちに最近知り合って、おもしろいなぁ、と思って。なんかね、音楽の話がすごく合ったりするわけだ。
Mi:へぇ…
H:まあでも…あ、じゃあ、ちょっと訊きたいんだけど、ロサンゼルスのライヴ観たでしょ?マイロくん。
Mi:はい。
H:いや、言いづらいだろうけど、感想を聞きたいんだよ(笑)
ma:観に行きたかった…
Mi:いや、めちゃめちゃよかったですよ。ホントに。
H:あ、よかった?
Mi:でも、細野さんの音楽を聴き出したのはここ1年ぐらい…L.A.に行ってからいま1年半になるんですけど。
H:聴いてくれてるんだね。
Mi:そう、聴き始めまして。
H:へぇ。どこら辺が好みなんだろうね。いろんなことやってるじゃん、僕。
Mi:いや、そうなんですよ。大変で。聴くのが(笑)
H:そうか(笑)
Mi:そう。でも、はっぴいえんどから聴いて、YMO、Tin Pan…細野さんのソロもぜんぶ…一応、僕の知る限りでは聴いて。
H:それは、まあ、ご苦労様。
Mi:中学だったかな…日比谷公会堂かなんかで1回観させてもらったんですけど。
H:あ、来てくれたんだね。
Mi:そのときぜんぜん…
H:まだ子どもだったでしょ(笑)
Mi:ぜんぜん興味もないし(笑)
H:ガーン(笑)
ma:ああ…(笑)
H:そりゃそうだよな(笑)
Mi:正直な話…めちゃめちゃ爆睡してて…でも、まあ、気持ち良く寝れたなぁ、っていう(笑)でも今回は、すっげぇ…めちゃめちゃ盛り上がってたじゃないですか。すごい…熱くなっちゃって。
H:あ、そう。
Mi:ひさびさにこんな…僕、よくパンクのバンドとかL.A.で観に行ったりするんですけど。[逆に]こっちが冷めちゃう、みたいなことがよくあるんですけど、細野さんはすごいストイックに、クールにステージをやっているのに、こっちはどんどんどんどん熱が…(笑)
H:ホント?寝なかったんだ(笑)
ma:(笑)
Mi:盛り上がっちゃって…
H:で、ブギウギとか、僕、やってますけど、そういう音楽はどう思うの?
Mi:ブギウギ…
H:そういうのを聞きたいんだよね。や、manakaちゃんがそういうの好きなのは知ってるよ。んー。
ma:はい。
Mi:僕は…そうですね、あんまり。
H:知らないよね。
Mi:はい。
H:初めて聴くようなことでしょ。
Mi:そうですね。細野さん以外ではそういうの、聴いたりしないかも。
H:うんうん、そうだよな。
Mi:なんだろう…
H:もうちょっと、30代、40代のアメリカ人がどう思ってるのかも聞きそびれてるんだよね。
Mi:あー…でも、僕の友達っていうか、いっしょに行ってたんですけど。アメリカ人で、N.Y.から来てて。たぶんお会いされて…スカイラーっていう…
H:そうだっけ?(笑)
Mi:(笑)もう、すごいファン…細野さんファンのスカイラー*っていうやつがいて。その人…すっっごい感動してましたよ。
H:本当?(笑)
Mi:N.Y.に住んでて、N.Y.でも2回とも観て。で、L.A.まで来て、もう1回観て…(笑)
H:大ファンだね(笑)
ma:すごい!
Mi:だから、やっぱり…アメリカでも再発されて…
[*Fleet FoxesのメンバーであるSkyler Skjelset氏である説が濃厚…というかほぼ確定。]
昨夜のDaisy Holidayで小山田圭吾の息子の米呂くんが「スカイラーっていう人と一緒に細野さんのライブに行った」と話していましたが、これってもしかして、いやもしかしなくてもFleet FoxesのSkyler Skjelsetなのでは…? #daisyholiday https://t.co/EMdvmnJBFy
— monchicon (@monchicon) July 15, 2019
.@rentakada ああ、この歌を知っていた!とてもきれいな歌ですねえ。
— sᴋʏʟᴇʀ sᴋᴊᴇʟsᴇᴛ (@skjelset) June 3, 2019
WATARU TAKADA 生活の柄 - 生活の柄 https://t.co/FxU4wnLNnv
スカイラー!昨日はありがとう。
— 高田漣 (@rentakada) June 3, 2019
今日も楽しんで!
H:じゃあ…なんだろうね。いまだにわかんないわけ。長い間ずっとやってて、おんなじことを。おんなじっていうか、ヘンなことをね。なんで今、みんな聴いてくれるんだろう、と思ってね(笑)
Mi:あー…
H:すごい不思議な気持ちで…その人いくつ?
Mi:スカイラーはたぶん…20代後半~30手前ぐらいですね。あ、でも30代かもしれない。
H:やっぱ僕からするとそれも若い。んー。だいたいね、YMOのファンは40代過ぎなんだよ。
Mi:あー。
ma:はいはいはい。
H:で、オノ・ヨーコさんのツアーに参加したときに、サインください、って言ってくるのはだいたい40過ぎのね、なんかこう…ヘンテコリンのオタクの人なんだよね(笑)
ma:(笑)
Mi:僕、ひとつ思ったのは、マックとか…
H:マック・デマルコ(Mac DeMarco)?
Mi:マック・デマルコ。マックさんはすごい…ね。L.A.でのインタビューとか、ステージにも出てて…L.A.でも[細野さんのことを]言ってるし。それこそ、日本の音楽が大好きで。
H:うん。
Mi:この前マックのおうちに遊びに行かせてもらって…もう、すごい…「ナウシカ」が飾ってあったり(笑)
H:(笑)
Mi:もう、日本人の家、っていうか、日本オタクの家みたいになっちゃってて…(笑)
H:ホントだよね(笑)
Mi:細野さんの本がバーってあって。『録音術』とかが…(笑)
H:ホント?『録音術』持ってるんだ。
Mi:日本語だからぜったい読めないのに(笑)どうしたんだろう。
H:日本が好きなんだね。
Mi:そうですね。でも、それこそ…マックのいちばん売れた曲、っていうのかな。それとかは…なんだったっけな、日本のシンセの教本に付いてくる音楽みたいな…
H:へぇ。テクノ系?
Mi:テクノ系の音楽のやつのカヴァー、っていうか。曲名も書いてあって。これどうなんだろう、って一瞬思ったんだけど(笑)
H:(笑)
Mi:でも、そういう日本の古い音楽を探し始めてたんですよね、たぶん。マックの周りも含めて。いろんな人が…
H:似たような人が東京にもいるんだけど、シカゴから来たジム・オルーク(Jim O'Rourke)っていう。あの人が最初の人だね。そういうの。
Mi:あー…なるほど、そうですね。
H:いやいや…そっかそっか。ちょっとじゃあ、マック・デマルコを聴いてみようかな。新作が出てるんでね。じゃあね、マック・デマルコの新作で…"Choo Choo"っていう曲をやってるんだよね。これちょっと聴いてみよう。
Choo Choo - Mac DeMarco
(from 『Here Comes the Cowboy』)
H:マック・デマルコの"Choo Choo"。これ、ぜんぜん[曲が]進展していかない…(笑)
2人:(笑)
H:あのスタジオで…庭にあるスタジオでね、やってたんだね。んー。
ma:庭にあるんですか?
H:そうなの。いいよー。
Mi:庭に…ガレージが改装されて。
H:そう。プールがあって、掘立小屋みたいなところに…納屋みたいなとこに。気持ちいいだろうなぁ、ああいうところで…
ma:すごいですね。解放感ありそう。
H:うん。外でドラム録るとか言ってたね。
ma:えー、すごい…
H:…あ、それは違う人だ(笑)もう一人いるんだ。
Mi:(笑)
ma:もう1人いるんですか?(笑)
H:みんなね、そうやってレコーディングしてるから…自分ちで。
H:あ、じゃあね…マイロくんの音が聴けるんで…
Mi:あ、いいんですか?
H:ちょっと紹介してもらおうかな。聴いていいの?
Mi:あ…ぜひ、お願いします…
ma:わーい。
Mi:恐縮です。じゃあ、上のほうを…
H:「上のほう」っていう曲じゃない(笑)
Mi:いやいやいや…(笑)
Filifjorkan - Milo
H:いいじゃん。好きだよ、これ。
Mi:うわー…うれしい…
ma:時間的にもすごい、ピッタリですね(笑)
H:ピッタリだね(笑)ちょうどいい。
Mi:(笑)
H:長過ぎず、短過ぎず。
ma:心地いい。
Mi:よかった…
H:思うに、アンビエントとかミニマルの感じが多いよね、今のこういう、若い世代って。
Mi:そうですね…
H:そういうの聴いてるの?
Mi:はい。けっこう好きで…
H:んー。やっぱり。
Mi:細野さんのアンビエントもけっこう、聴いてます。
ma:わたしも大好きです。
H:あ、ホント?
ma:もう、夏とかピッタシですよね。夏にいちばん聴くと思います。細野さんの。
H:えー…聴いてみようかな(笑)
2人:(笑)
ma:大好きです(笑)
H:そうか…まあね、まだ夏の暑さが来ないんだけどね…
ma:はい…
Mi:んー…
H:えーと…manakaちゃんの、なにか曲…もう1曲ぐらいかかるかな?なんかある?
ma:わたし…
H:自分のでもいいんだよ、もちろん。
ma:えー!それは…
H:(笑)
Mi:(笑)
ma:お恥ずかしいです、めっちゃ(笑)どうしよう、なににしようかな…
(D:細野さんのアンビエントでなにか…)
ma:あ、それ…そうします。ちょっと待ってくださいね…
H:なんだろう。
ma:"Retort"にします。
Mi:出た…
H:おお。どっちの"Retort"だろう?インストのほうだね。
ma:はい。そっちにします。
H:じゃあ、これを聴きながら…また来週、があるかな?これは。ね。はい(笑)
Retort - 細野晴臣
(from 『omni Sight Seeing』)
2019.07.07 Inter FM「Daisy Holiday!」より
H:こんばんは。細野晴臣です。えー、きょうは…この番組では初めてですね。ハナレグミの永積タカシさん。
ハ:はい…
H:よろしくお願いします。
ハ:うわー、もう…よろしくお願いします!呼んでもらえてホントに光栄です。
H:いやいや…なんか明るいね(笑)
ハ:(笑)大丈夫ですか、僕、この感じで…
H:大丈夫(笑)いま、時差ボケがまだ治んなくて…
ハ:あ、ツアーの帰りですか?
H:そうそうそうそう。
ハ:あの、YouTubeで…ロサンゼルスかな?での公演が上がっていて。あれを見せてもらって…
H:あー、上がってますね。
ハ:あんなに緊張しているマック・デマルコ(Mac DeMarco)見るの初めてで…(笑)
H:たしかに、少年のような…
ハ:そうでしたね(笑)「いっしょに演奏できてうれしい~」っていう気持ちと、なんか、入り混じってて…
H:いやいや…もう、あれから10日以上経っちゃったけど…時差ボケが治んないっていう(笑)
ハ:(笑)
H:歳とるとこうなんだよな…
ハ:YMOのときとかも[海外に]行ってたりするじゃないですか。その頃とはステージに立つ気分はやっぱり違うんですか?
H:ぜんぜん違うね!あのときは3人いて、その中の1人だから、気楽って言えば気楽だけど…なんて言うんだろう、もう自動的に音が出たりね、するじゃない?テクノって(笑)
ハ:(笑)
H:こっち[本体]が調子悪くても関係ないんだよね(笑)でも生は、調子悪いとホントにひどいことになるじゃない。
ハ:うんうん…
H:声が出なかったりとかね。[今回は]幸い、ドリンク剤飲んで元気になって…(笑)
ハ:(笑)
H:自分はどうなんですか?ハナレグミの場合は。いつもひとり…元々ひとりなの?
ハ:元々はSUPER BUTTER DOGっていうバンドをやっていたんですよ。いまレキシっていうのをやってる池田くん(池田貴史)と、あと他3人で始めたんですけど…
H:うん。
ハ:そうですね、その当時はたしかに…自分が調子悪くても他のメンバーに頼れるところはありましたね。
H:そうだよね。いまは1人だもんね。U-zhaanとやってるんだっけ?
ハ:そうですね。いまちょうど、ホントに、U-zhaanとツアーやってる途中で。あと、U-zhaanはホントに…2人なんですけど、1人でも完成しちゃうじゃないですか。タブラだけでも。
H:はい。
ハ:だから…ある意味バンドのように委ねられるから、なかなか、そういうメンバーが1人いるとすごい…
H:U-zhaanはいいよね。ツッコミがいいなぁ、と思って。
ハ:ツッコミがいいですね…(笑)
H:早いよね。
ハ:早いんですよね(笑)
H:ああいう人はなかなかいないんだよね。ミュージシャンで。
ハ:そう。あとすごくアイディアが豊富なんで、「もっとこういう風にしたらいいんじゃない?」とか。
H:いいね。2人って自由だね。
ハ:自由ですね。
H:バンドだと、そこはちょっと自由ではないけどね。
ハ:んー。
H:じゃあ、挨拶代わりに、1曲聴かせてください。
ハ:あ、いいですか?じゃあ、自分の曲でいいですか?
H:もちろん。
ハ:じゃあ、『SHINJITERU』っていういちばん新しいアルバムなんですけど、そこから"深呼吸"って曲なんですけど…これ、是枝監督(是枝裕和)の
H:あっ。
ハ:細野さんの一つ前にやった『海よりもまだ深く』っていう映画のために書き下ろした曲なんですけど。"深呼吸"。それを聴いてください。
H:ぜひ。
深呼吸 - ハナレグミ
(from 『SHINJITERU』)
H:おお…良い曲だ。
ハ:ありがとうございます…
H:声が出るなぁ。
ハ:いやー…(笑)
H:えーと、いくつぐらいから歌い始めてるの?
ハ:歌は、もう…子どものときから親が車の中でかけてるカセットがすごく好きだったんですよ。
H:あー。
ハ:そのカセットに合わせて歌ったりしてるのが…もうホントに、小学校低学年とか、それぐらいからの記憶がありますね。
H:元々歌が好きなんだね。
ハ:そうですね。やっぱり…友達とか親が喜んでくれたのがうれしかったんだと思うんですよね。あとは…部屋でひとりで遊んでることも多くて。
H:うん。
ハ:そういうときにずっとカセットをかけてて。そのときに編みだした自分のひとり遊びが1個あって。
H:なんだろう。
ハ:好き過ぎて…なんの曲だったか忘れた…井上陽水さんかなんかの曲が好きで。それをカシャッとかけるんですよ。で、一回それをかけたまま、歌いながらその場所を離れて、町内会を1周して来て、戻ってきたときに同じタイミングで帰ってこれるゲームっていうのを…
H:すげぇな。そんなの聞いたことない(笑)
ハ:それでなんかグルーヴ…テンポ感を養ってたのかもしれないですね(笑)
H:「絶対テンポ感」みたいのがあるんじゃないの?(笑)
ハ:あるんですかね?(笑)
H:そうか、じゃあ、テンポ感はすごいんだね。
ハ:そうなんですかね…?
H:ひとりでやっててもテンポ感はバッチリってことだよね。
ハ:そうですね…でも、やっぱりリズムとかは好きですね。なので、小っちゃいときも…自分なんかの世代では多いと思うんですけど、マイケル・ジャクソン(Michael Jackson)とかの影響が大きくて。
H:あー、そう。
ハ:なんでこの人の音楽はこんなに身体が動くんだろう、と思って。
H:なるほどね。そっちのほうに…リズム&ブルース系のほうに行く可能性もあったわけね。
ハ:そうですね。ただ…なんか、そこまで深く、ひとつの音楽に入りこむっていうほどの集中力がなかったんで…(笑)
H:あ、そうなの?意外だな(笑)テンポには集中してたのに…
ハ:集中したんですけど、なんか…そうですね…
H:やっぱり、じゃあ、自分で[音楽を]作り始めたのは早いでしょ?
ハ:うーん…始めたのは、でも、いつからだろう…20代になってからですかね。
H:あ、そう。じゃあまあ、自分もそうだしな。
ハ:なんか…とにかく人の曲を口真似、ものまねみたいな感じでずっと歌って…
H:誰の真似が得意なのかね。
ハ:誰の真似かな…でも、とにかくマイケルとかは真似してましたね(笑)
H:ホント?(笑)
ハ:ムーン・ウォークとかやったりしてましたけどね(笑)
H:えー!(笑)ちょっと聴いてみたいですよ。
ハ:(笑)マイケル…「ポゥ!」とか言ってましたけどね(笑)でも、やっぱりマイケルってすごくハイトーンじゃないですか。
H:すごい高い。うん。
ハ:高いですよね!で、いま思うと、僕、自分がバンドやってたときに…なんとなく目指してたのは、ハイトーンというか、女性の声になりたいな、というあこがれがずーっとあったんですよね。
H:へぇ。
ハ:だから、レコーディングを自分が初めてやったときに、もっと女の人みたいな声で歌いたいのにな、っていう…
H:それもなんか、特徴があるな。それも。
ハ:あ、ホントですか?
H:僕は考えもつかないよ、こんな声だから(笑)
ハ:いやいやいや(笑)僕、前に[中野]サンプラザでクラムボンと細野さんといっしょにやらせてもらったときに…
H:あ、いっしょにやったね。
ハ:アンコールでクリスマスソング、やったじゃないですか?
H:やったね。
ハ:あのとき初めて横で細野さんが歌っている声を聴いて…ちょっと鳥肌立ちましたもんね。
H:えぇ…(笑)
ハ:なんかやっぱり、ステージをいっしょにするとその人がどういう音を出してるかって…
H:あー、生だもんね。
ハ:はい。なんか…言葉以上に伝わってくるじゃないですか。だから、細野さんがどういう反響を身体の中でさせてるのかな、っていうのが…
H:見られてたんだね、隣で(笑)
ハ:そう、あのとき細野さんのマネージャーさんにもすぐメールしたけど…昔のブルースマンの人とかって譜面じゃなくて、いっしょにステージに立ったりとかして身体で学んでいる感じがあると思うんですけど…振動を身体に浴びると、振動で憶えている熱量っていうんですかね?メッセージ?
H:うんうん。
ハ:メッセージするまなざしみたいなものを感じるなぁ、と思って。こういうことなんだなぁ、って思った記憶がありますね。
H:そうかそうか。繊細だね(笑)
ハ:(笑)
H:あんまり考えたことなかった(笑)
H:最近、人の曲を聴いたりして「あっ」とか思ったりすることはあるんですか?
ハ:…これは細野さんを前にして言うアレじゃないんですけど、こないだの『HOCHONO HOUSE』を聴いて…
H:あ、『HOCHONO HOUSE』。
ハ:1曲目のイントロがかかってすぐに、ちょっとやべぇ!と思ってストップボタン押しましたよね(笑)
H:(笑)
ハ:ドキドキして…(笑)
H:あ、そう(笑)
ハ:で、なんか…この5,6年ぐらいなんですけど、「音楽不感症」みたいのに段々なってきちゃってて。
H:あー、職業病だね(笑)
ハ:そうなんですよ(笑)で、ひさしぶりにイントロ聴いて、あ、これすごいこと始まるんだろうな!って、いったんストップして、聴き直したっていう…ホントにすごいひさしぶりで。
H:あ、そう。
ハ:そうなれた自分がすごくうれしかったんですけど。
H:そうなんだ。1曲目って、だから…アルバムの1曲目?
ハ:1曲目ですね。あのラジオの…
H:あー、ラジオのやつね。
ハ:ラジオの音から今の音に戻ったときに、うぉぉ!って思って(笑)
H:また止めたの?(笑)
ハ:止めて(笑)もう1回ちゃんと聴き直そう、みたいな。まだイントロすぐなんですけど(笑)
H:そうなんだ。そうやって聴いてくれる人もなかなかいないよね。
ハ:なんでしょう、僕、ホントに『HOSONO HOUSE』ばっかり聴いてたときがあって…
H:あ、あったんだ。
ハ:ありましたね(笑)やっぱりハナレグミやってて、影響されてる部分も絶対的にあって…
H:あ、そうなんだ。
ハ:僕も米軍ハウス住んでたんですよ。
H:え!どこの?
ハ:僕は立川のほうだったんですけど。
H:本格的なほうだ(笑)
ハ:そうですか?(笑)いやいや、たぶん細野さんが住んでた時代のあそこら辺(狭山)もかなり本格的だったと思うんですけど。
H:(笑)
ハ:それもあって僕は…それこそ鈴木惣一朗さんと、自分の家でレコーディングをしたんですけど…
H:レコーディングしたんだね。そうかそうか…
ハ:やっぱり、ああいう細野さんの音みたいにはぜんぜんなれないし、なれなかったし…あとは、それを入り口にジェームス・テイラー(James Taylor)とか聴いたりもしてたから…
H:そうなんだ。そこから聴き始めたんだね。んー。
ハ:はい。そういう時間とか…いろいろやっぱり、不思議ですよね。記憶の栞みたいに…オリジナルの『HOSONO HOUSE』はあって。
H:栞?んー。
ハ:その栞のはずなんだけど、また今回のやつは未来っていうか…不思議なところが過去の記憶と繋がっているんだけど、ある部分では未来からお便りが来ている…(笑)
H:(笑)
ハ:不思議な感覚で。
H:それは、なんとなくわかるわ。自分でもへんてこりんな気持ちだったからね。
ハ:やっぱり、でも、自分のアルバムを…リミックスって言うんですか?
H:なんて言うんだろうね?なんて言っていいかわかんなくてね。
ハ:すごいハードルじゃないかなぁ、と…(笑)
H:いやー、もうね…大変難しかったねぇ。
ハ:ぜったいそうですよね!
H:やる前はね、なんか、気楽だったの。やり始めて、しまった!って思ったね。
ハ:(笑)
H:やっぱり、自分に向き合わなきゃいけないっていうのがけっこうツラい。
ハ:んー、そうですよね。
H:しかも、今の自分が表現できるように変えていかなきゃいけないし。昔のまんまコピーしてもしょうがないしね。
ハ:うんうん。
H:ひとりでここでね、このスタジオでやってて。七転八倒やってたね(笑)
ハ:そう…だからライナーノーツ見て、これぜんぶひとりなんだな、と思って。
H:そうなんだよ。
ハ:ただでさえひとりって、集中力とかエネルギー要るのに、それをまた…リアレンジって、一回完成したものをもう一回完成に持っていく…
H:そうそうそう(笑)
ハ:これはすごいハードルだなぁ、と思って…(笑)
H:これ、みんなやってもらいたい、こういうことは(笑)
ハ:(笑)
H:ホントに…やるべきだと思う(笑)ある時間、経ったらね。僕はもう、だって…46年ぐらい経ってたわけだから。
ハ:んー。
H:それぐらい経つと、やっぱり、やってみる価値もあるね。んー。
ハ:その…今だったから再現できた、みたいなこともあるんですか?
H:あるんですよ。
ハ:何かで読んだやつで…リズム楽器が、ヤオヤ(Roland TR-808)とか昔のやつを使ったけど今に合わなくて、新しくリズムの音源を導入した、っていうのは…
H:そうそう、そうなんだよ。だから途中でね、やめて、それに詳しい人を呼んで、いろいろシステムを変えてったの。
ハ:んー。
H:でも全部変えると、なにからなにまで変えなきゃならない。それはちょっと難しいんで途中でやめて、新旧織り交ぜて…だから、すごい半端な感じでやったんだよね。どんなシステム持ってんの?
ハ:いや、僕はホントに…ギターしかほぼ弾けないんで(笑)
H:(笑)
ハ:打ち込んだりとかもぜんぜん出来ないんですよ。
H:あ、ホント?いいね、そのほうが(笑)思い切りがよくて。
ハ:ホントに、ギターを弾いて机の前でうう…って作ってるだけなんですけど…(笑)
H:いいじゃん、それがいちばんだよ。
ハ:でも、あこがれて買うんですけどね。リズムマシンとか。買うんですけど、ちょっと触ると、あ、やっぱり違うなぁ…
H:向いてないんだ(笑)
ハ:そう、向いてないのかなぁと思って…だから、ついつい途中で頓挫しちゃって。あとはマニピュレーターみたいな人に入ってもらってお願いしたりとか。
H:それでいいんじゃないの?僕も最近めんどくさくて。入りこむのがイヤなんだね。マニュアル読まないしね。
ハ:(笑)
H:大っ嫌いなんだよね(笑)さっぱりわからない。
ハ:でも、きっとYMOとかその頃に、とことんやりきったんですよね。きっと。
H:やりきっちゃったな。なんでもね、やりきんないと気が済まないタチだから(笑)
ハ:たぶん、すごい音を精査して、精査して…
H:そうそう、使い果たしたね。Prophet-5、隅から隅まで使い果たしたね。
ハ:カッケェ…
H:いやいやいや…(笑)
ハ:やっぱり、ひとりで完結できるっていうのがおもしろかったんですか?
H:そうだね。バンドの良さはもちろん…その前はずっとそうだったけど。ひとりでこういう、脳内の音を…イマジネーションそのまんま、音が出せるんだ、と思ってね。
ハ:んー。
H:没頭しちゃうんだよね。そういうことにね。脳内音楽っていうかな。
ハ:じゃあ、細野さんが曲をひらめくときっていうのは、まず頭に鳴ってる音から始めるんですか?
H:そういうときもあるし、いろんな場合があるけど…先に鍵盤弾いちゃったりとか、ギター弾いたりとかね。まあ、いちばん自分に合ってるのは…ギターで曲作るのがいちばん好きだよ。
ハ:あ、そうなんですか!
H:だから、おんなじだと思うよ(笑)ギターがいちばん好きな楽器だから。だから、ライヴでもいつもギターしかやってないんだよね。
ハ:[細野さんの]ギター、めちゃくちゃ良い音ですよね。あのアコギの…
H:古いアコギのね…やっと自分の好みのギターに出会った、っていう感じで。昔からね…フォークやってたから、僕も。
ハ:うんうん。
H:で、みんなマーティン(Martin)使ってるのね。まあ、高い、アメリカのギターですけど。シャランシャラン、派手な音がするでしょ?
ハ:(笑)
H:なんか違うんだよね(笑)で、ギブソン(Gibson)系の音って、なんかね、地味なんだよね(笑)
ハ:(笑)
H:それが好きで好きで。はっぴいえんどの頃…それが終わった頃に、小坂忠からギブソンのJ-45っていうのを借りて、ずーっと使ってたら、もう自分のものみたいになっちゃって。ある日「返してくれ」って言われて(笑)
ハ:(笑)
H:えー!返すのか!って思って(笑)自分の息吹が、もう乗り移ってるんだよ。ギターに。で、お別れしなきゃいけない。
ハ:それツラいですね(笑)
H:ツラかった!だからもう、必死にJ-45を探したんだけど、なかなか出会わなくて。
ハ:んー…
H:で、ある日、ニック・ルーカス(Nick Lucas)タイプの、もっと古い、いま使ってるやつ。
ハ:はいはい。
H:あれが1936年製かな。
ハ:はー…
H:自分より年寄りだから(笑)おじいちゃんギター(笑)
ハ:(笑)
H:その地味さがもう、ウワッ!と思って(笑)
ハ:あれってロバート・ジョンソン(Robert Johnson)とかも使ってる…?
H:使ってるかなぁ…
ハ:なんか似てて、いっしょなのかなぁ、と思って。
H:時々使ってる人いるね。ボブ・ディラン(Bob Dylan)が使ってたりとか。
ハ:あ!そうなんですか。
H:でも、ずーっと使ってる人はいないね、あんまりね。僕ぐらいで。
ハ:日本で使ってる人見たことないですね…
H:あ、そっか。
ハ:黒色っていうのもめずらしくないんですか?
H:いや、だいたい黒みたい…よくわかんないんだよね。ちゃんと調べたことないんだけど(笑)
ハ:あ、そうなんだ。
H:で、あのホールの中の奥にラベルが貼ってあって「Nick Lucas」って書いてあるんだよ。
ハ:えー…それはバッと弾いて、これだ!みたいな…
H:そうそう、御茶ノ水辺りの楽器屋で…(笑)
ハ:やっぱ細野さんも御茶ノ水で楽器屋めぐるんですか?
H:そういうときもあるよ、もちろん(笑)そうしないと手に入んない…
ハ:そうですよね(笑)[周りの人が]みんな持ってきて、「どうですかこれ!」みたいのは…
H:そんなのは…まあ、ベースはね。よく持ってきてくれるんだけど。ベーシストだとみんな思ってるみたい、僕のことを(笑)
ハ:いや、だいぶそういう印象ですよ(笑)
H:そうだよね(笑)だからギタリストとは誰も思ってくれないんで…(笑)
ハ:でも、それこそロサンゼルスのアンコールでベース弾いたらオーディエンスがウォォ!みたいになってましたよね。
H:弾いちゃった。まあ、日本とおんなじだね、これは(笑)
ハ:すごい…そっか…
H:なんかかけようかね。1曲ではアレなんで…もう1曲、きょうはハナレグミ特集なんで。
ハ:いや、うれしいですね。ただ…じゃあ…ちょっと今かけられないんですけど、レコードでしかなくて…ただ、大好きで…ジュリー・ロンドン(Julie London)っていう人の…
H:お。
ハ:"I Left My Heart in San Francisco"って曲が…おじいちゃんがレコードが好きで、そのおじいちゃんがくれたレコードで。
H:あ、おじいちゃんのレコードだ。いい趣味だな。
ハ:この人の声が、もうホント、子どものときから…高校生ぐらいのときから好きで。
H:僕も好きだな。
ハ:あ、ホントですか?なんか、こういう声に…さっきの、女性の声にあこがれた、っていう意味では、この人の声がすごいあこがれではありますね。
H:んー。おもしろい話だな。女性の声にあこがれる男の人…んー、おもしろいな、これは。
ハ:(笑)あこがれですね。
H:いや、わかるような気がしてきたな。女声ボーカル、僕、大好きだから。[自分が]女だったら歌ってるだろうね、そういうの。もっと高い声だったら。いいなぁ。
ハ:んー。
H:昔ね、ビーチ・ボーイズ(The Beach Boys)が好きだったから、ああいう声出したくてしょうがなくて。どうしても出ないんだよね(笑)
ハ:(笑)
H:でも、大瀧詠一に歌って聴かせたら、すごい笑ってたね。低いビーチ・ボーイズ。♪If everybody had an ocean~とか。
ハ:カッコいいですけどね(笑)
H:いやいや(笑)カッコいいっていう話でもないんですけど…(笑)
H:じゃあちょっとそのジュリー・ロンドン、ここにあったので。"I Left My Heart in san Francisco"?これ。
ハ:はい。
H:あ、[声が]似てるね。
ハ:あ、ホントですか?
H:なんか似てるわ。ジュリー・ロンドンなんだ!(笑)
ハ:(笑)ジュリー・ロンドンになりたい!いつかは…
H:へぇ…新発見だな。
I Left My Heart in San Francisco - Julie London
H:というわけで、30分経ってしまいました。
ハ:あっという間で…
H:あっという間でしょ?ホントに、いつもそうなんだよね(笑)
ハ:楽しかったです(笑)
H:また来てください。
ハ:ありがとうございます。ぜひ…
H:ハナレグミの永積さんでした。
ハ:ありがとうございました。