2019.03.24 Inter FM「Daisy Holiday!」より
♪~
時刻は午前1時です。ここで、Daisy Holiday!を始める前に、お知らせがあります。来週、3月31日のDaisy Holiday!は、都合により、放送時間が変わります。放送開始時間は23時半、夜11時半となります。いつもより1時間半、早い時間です。お間違えの無いよう、お願い致します。では今宵も、Daisy Holiday!をお楽しみください。
H:こんばんは。細野晴臣です。えー、今週も先週に引き続きnever young beachの安部くん(安部勇磨)、来てますよ~。
安部:よろしくお願いします。
H:よろしく。きょうは…never young beachの新作についてね。
安部:あ、はい。ハァー、緊張します…
H:楽しみだよね。いつ出るんでしたっけね?
安部:5/8に、新しいアルバムが出ます。
H:えー、タイトルが『STORY』。いいタイトルだね。
安部:あ、ホントですか!僕、この前もアルバムのタイトルをほめて頂いて、細野さんに…
H:なんだっけな?(笑)
安部:(笑)『A GOOD TIME』っていうアルバムなんですけど…
H:ああ、そうだそうだ。
安部:「いいタイトルだね」って言ってくれて、すごい…もう、一個一個うれしくて…よかったです、今回も。
H:いやー、タイトル大事だもんね。
安部:大事ですよね。すっごい考えちゃいます。ありがとうございます。
H:じゃあね…どういう話をしようかね。先週話してたのは…そうそうそう、僕がなんか余計なこと言ったっていう。
安部:そんなことないです(笑)スタジオを…前回のアルバムからの曲を細野さんに聴いて頂いたときに、2年前…「スタジオを変えてみたら?」とか…
H:それスタジオの人、怒るんじゃないの?そんなこと言ったら(笑)
安部:(笑)で、もう僕は、あーそういうことかー!とか、じゃあチャレンジしてみよう!っていう、いろんなきっかけができまして。
H:チャレンジだからね。何事もね。
安部:僕らなりにチャレンジしてみよう、と。いろいろ試行錯誤したり…
H:おんなじだよ。僕もこの、『HOCHONO HOUSE』はチャレンジだからね。変えたかったんだ。
安部:えー!
H:前の音じゃダメ、と思って。
安部:もう、すごいですね…ホントにすごいですね…
H:それって…なんて言うの、止むに止まれぬ気持ちじゃない?誰も止められない。それは。
安部:そうですね。で、作ってて楽しいのに、完成した頃にはもう次の…こうしておけばよかったかな、とか。
H:落ち込むんだよ。
安部:落ち込みます、僕…
H:いま落ち込んでるでしょ?
安部:落ち込んでます(笑)わかります…
H:[作品が]できて、リリースまでの間って落ち込むんだよ(笑)
安部:すごい落ち込みます!そうです!いま、まったくおんなじで…できたのにまだ人には聴いてもらえないし。で、時間もあるし、なんだかそわそわしちゃって…
H:そうなんだよね。けっこう、時間が長いよな。
安部:そうなんです。もう、はやく忙しくしてくださいって言ってます(笑)
H:できたらすぐ出したいよね。んー。
安部:すぐ出したいです…はい。
H:もう、聴いちゃおうかな、じゃあ。さっそく。
安部:よろしくお願いします。
H:おすすめを、ちょっと…選んでもらえる?
安部:えー、どうしよう…じゃあ、えっと…これはもう、僕、作るきっかけは本当、まさに細野さんで…
H:うん。
安部:おととしの1月に大雪が降ったんですよね、東京で。
H:あー、あったね。
安部:電車が止まったりとか。で、もう本当に"しんしんしん"のような気持ちになりまして。
H:んー。
安部:で、それを僕…ホント、まんまじゃねぇか、あんな曲が作りたい、っていう思いから作ったような曲で。"うつらない"という曲があるので…
H:ちょっと聴かせてください。
安部:お願いします。
うつらない - never young beach
(from 『STORY』)
H:おもしろい。"しんしんしん"だね(笑)
安部:(笑)そうです、すっごい、もう…1月にそういう気持ちになりまして。
H:はっぴいえんどみたい。
安部:あんまり、こういうことを歌ってる人って今の時代、いないな、と思って。
H:そういえばそうだよな。んー。
安部:で、だったら…こんなに恋の歌とかいっぱいあるんだったら、こういう歌も、別に僕ぐらいは歌ってもいいんじゃないかな、と思って。
H:いいねぇ。
安部:で、そういう曲を作りました。ハァー、緊張しました…(笑)
H:音もね、変わってるよね。
安部:あ、ホントですか!うれしいです!
H:バンドっぽくないっていうか…どうして?これ。
安部:これは…細野さんの作品や、僕の最近好きな人とかの作品をたくさん聴いて、音数だったりとか、音の余白がすごく大事だな、ということを考え始めて。
H:うん。
安部:ライドだったり、シンバルにすぐに行かない、とか。ハイハットでなるべくなんとかする、とか。スネアだけで、キックだけで…あとはコーラスとかギター、あとはグルーヴ感とか…そういうもので抑揚をつけれたらいいな、っていうので…ちょっと、今までの僕らから音数を減らしてみたいな、っていうのをテーマでやってみました。
H:おお。じゃあこれ、ドラムスは…
安部:あ、生でちゃんと叩いてるんですけど、もうずっと…[ドラマーに]つまんないと思うけど、もしかしたら楽しくないかもだけど、ずっとそれで…って(笑)
H:そうなんだ(笑)
安部:ベースとかも、ぜんぜん動かなくていい、そのままやってほしい、って言って…はい。やりました。
H:ほうほうほう…いやいや、すごい的確なダイレクションだよ、それ。
安部:あー、うれしいです!
H:いや、知らないけど(笑)
安部:(笑)
H:その[ディレクションの]通りになってるから。うん。
安部:ありがとうございます。うれしいです。よかった…
H:なんか…成長した感じがあるよね。ただの若者じゃなくなってきたね。
安部:あー!うれしいです!
H:いくつ?いま。
安部:今年で29になります。
H:あー…微妙な、ね(笑)
安部:(笑)
H:だって、デビューした頃って21歳ぐらい?
安部:そうですね、22とか23ぐらいですね。
H:そのくらいはね…勢いでいっちゃうからね。
安部:そうなんですよ。ちょっともう、勢いだけでは、やっぱ、いけないな、とか。
H:うん。いけなくはないけど(笑)
安部:(笑)なんか、音楽…音楽ってなんだ?とか、常に悩む中で、1回ちょっと、こういうことにチャレンジしないと、この先に何もない気がする、みたいな…考えが出てきて。
H:んー。
安部:でも、これをやったことによってすごい楽しくて。
H:なるほど。
安部:こういうことができてたらこういうことができてるんだな、とか。いろんな気付くことがあって。やってよかったな、って今は思います。
H:よかったよ。うん。
安部:うれしいです、ありがとうございます。…
H:他の曲は、でも、勢いがあるんでしょ?
安部:いや、全体的に…(笑)
H:全体的にこうなの?(笑)
安部:BPMは前後はするんですけど…
H:内省的になってきたね。へぇ。
安部:わりとぜんぶ…ドラムとかも、バーン!とかいかない、とか。ギターもコードでジャカ~ン、といかない、とか。そういうのをしなくても、そういう色が付いてたらいいね、っていう。
H:僕たちも若い頃…1970年代の前後ね。アメリカのバンドがそういう感じになってきたから。
安部:うんうん。
H:それを巷では「アートロック」とか「ニューロック」とか言い出して。それまではね、ゴーゴーダンサーがいて踊ったりするタイプの音楽ばっかりだったから。そのバンドが出てきた頃は…もちろん、サイケもあったけど、バンド(The Band)とかバッファロー(Buffalo Springfield)とかは、女の子がキャーキャー言わないんだよね。
安部:へぇ…
H:男ばっかり聴いてる、っていうか…(笑)しかも、みんな座って聴いてるっていう噂が立ってて。踊らないんだ、と。
安部:え、座って聴いてたんですか…音楽を…(笑)
H:(笑)だから、なんだ…時代がその頃変わっちゃったんだよね。それに影響されてはっぴいえんどみたいな、そういう音楽になってきたんだよね。
安部:へぇー。でもなんか、今の世の中もそういう…
H:そんな感じなのかな?いま。んー。
安部:細野さんのこと大好きなマック・デマルコ(Mac DeMarco)さんとかも、やっぱ、音数がすごく少なくて。
H:そういえばそうだよね。
安部:シンセの音とか、アコギの音がポロポロって鳴ってたりとか。
H:うんうん。
安部:やっぱり…そういう時代があるのかな、と。
H:あるみたいね。
安部:だから最近、海外の音楽を聴くとそういう流れが…音数が減って…僕も2000年代とか2010年代の頭ぐらいはわりと「ガレージロック」みたいな。ロックスターみたいな人たちがいっぱいいたんですけど。
H:はいはい。
安部:そういうロックスターみたいな人がいなくなって…ちょっと変わってきてるんだな、っていう…感じますね。
H:そうかそうか。例えば僕が1980年代に作った環境音楽みたいなね、『花に水』っていうのを…ウィークエンド・ヴァンパイア*がやってたりするんだよ。なにがいいんだろう、と思って(笑)
安部:(笑)
[*ヴァンパイア・ウィークエンド(Vampire Weekend)のこと。]
H:たぶん、そうなんだろうな、そういう…「違う視点」をみんな持ちだしてるんだろうね。環境音楽なんて…今頃みんな聴くっていうのは予想してなかったから、僕。
安部:そうっすよね。いやー、どこから知るんでしょうね?でもすごいですよね、細野さんの…海外のいまの若い世代に…
H:いやー、わかんないんだよな…
安部:だって…ヴァンパイア・ウィークエンドなんて、僕は中学校・高校から聴いてましたけど…そこが細野晴臣さんと繋がるのか!みたいな(笑)
H:ふつう繋がんないよね(笑)
安部:でも、あの人たちも最初はわりとバンドっぽい感じだったのに、いまはまた変化していって…そういう流れになってってるんだなぁ、とか。最終的に全員、細野さんのところに向かっていくんじゃないかなぁ、と…(笑)
H:やめてくれよ(笑)
安部:でも、今をときめく…というか、僕の大好きな人がみんなぜったい、細野さんを…デヴェンドラさん(Devendra Banhart)だったりとか。みんなそこに繋がるのがすごく不思議で…でも、まあ、必然でもあるのかな、とか…
H:いやー、わかんなくてね。マック・デマルコがこのスタジオに…去年かな?去年来たんだ。
安部:来日されてましたもんね。はいはい。
H:そのときに、僕がその頃やってたブギウギとか…「OKだ」ってひとこと言うんだよね。あ、その前にデヴェンドラも来たんだ、ここに。デヴェンドラにもおんなじこと訊いたら、「パンクだから」って言うんだよ。
安部:(笑)
H:パンクなんだ、と思って…
安部:パンクなんですね、もう、いま。ブギウギっていうのは…あ、でも、デマルコは「OKだ」って言ってたんですね。
H:「OK.」って言ってた。
安部:あ、そういえばカヴァーされてましたねデマルコさん。"Honey Moon"。
H:そうなんだよ。日本語でね。
安部:日本語でやられてましたね!あれも素敵でしたね…
H:なんかね、不思議な気持ちだったね、あれ。
安部:やっぱ…海外公演もされてたじゃないですか。
H:僕?
安部:はい。細野さん。どうでしたか?ウワァー!って感じなんですか?みなさん。
H:なんかね…大阪でやってるような感じ(笑)
安部:(笑)あ、そんな「海外の感じ」じゃないんですか?
H:すごい緊張したんだけど、[始まってみると]すごいリラックスしてて。もう日本語でいいやと思ってしゃべったら、ウケるんだよね。
安部:あ、[意味が]わかってらっしゃるんですかね?みなさんは…
H:なんかね…ニュアンスが伝わるみたいね。
安部:へぇ…
H:姿かたちがおかしいのかもしれないけどね(笑)
安部:(笑)日本のお客さんと海外のお客さんってぜんぜん違ったりするんですか?
H:昔は違ってたけどね。
安部:あ、いまはそうでもないんですか?
H:なんかね…変わったね。みんな日本人みたいになってきてるよ。
安部:あ、じゃあもっとリアクションしてくれるっていうか…
H:そう。自然な感じ?ぜんぜん構えてない。だから、こっちも構えなくなって…昔はね、行く前はもちろん緊張して、[ステージに]出る時はもっと緊張してたんだけど、そういうことが無くなったんで…
安部:へぇ…
H:たとえば…スケッチ・ショウ(SKETCH SHOW)とかやってたときもスペイン行ったりしてたんだけど…時々、来るんだよ。ファンがね。現地の人が。そうすると、CDとペンを持ってずけずけと楽屋に入ってくるんだけど…
安部:あ、楽屋にまで来るんですね…
H:ホントは入ってきちゃいけないはずなんだけど…(笑)
安部:そうですよね(笑)
H:そこら辺はすごい図々しいのに、「サインくれ」って言うときにペンがすごい震えてるのね。
安部:(笑)
H:で、日本語で言うと「ッs、さいん、くださぁい…」みたいなね(笑)
安部:(笑)あ、そこは緊張されてるんですねみなさん、やっぱり。万国共通で…
H:でもなんか、日本の人とおんなじなんだよ。それが。
安部:熱意の出し方がちょっと違うんですね。
H:なんか、こう…いまは「オタク」とは言わないんだろうけど…「そちら」って言うのかな?いま(笑)
安部:(笑)
H:そういう人が蔓延しててさ。
安部:へぇ…
H:最初にジム・オルーク(Jim O'Rourke)が東京に来て会ったときもおんなじ気持ちだった。あ、この人日本人みたい、と思って。なんか、態度というか、仕草というかね。謙虚さというかね。不思議だよね。みんな日本人みたいになってんだよね。
安部:あー、そういう風に感じるんですね。
H:感じましたよ。
安部:昔ほどそういう、テンションの差が無くなってきてる…
H:無くなってるね。
安部:へぇ…
H:ただ、今度、次に行くニュー・ヨークはどうだか知らないよ。
安部:あー…
H:すげぇ緊張してる(笑)
安部:緊張されるんですね…
H:気が重い…
安部:気が重い…(笑)
H:そういえば、never young beachは中国行くんだって?
安部:あ、そうですね。僕ら、毎年わりとアジアは行かせて頂いてて…そうですね、今年も行かせて頂きます。
H:中国のどこに行くんですかね。
安部:台北…上海です。
H:上海ね。台北は台湾だよ(笑)
安部:(笑)上海に…フェスに出させて頂きます…
H:あ、そう。何度か行ってるんだね、じゃあ。
安部:何度か行ってますね。
H:どうなの、それこそ[お客さんの反応は]。
安部:韓国とかにも行くんですけど…逆に、日本の若者よりも元気があるな、っていう風に感じました。
H:あ、ホント?
安部:あと、音楽に対するものが日本の人たちよりもっと積極的というか、ノり方も…横にノってたりとか。だけど、キャー!とかワー!とかも言うし、日本のお客さんにはなかなか無いものだな、っていう…
H:なるほど。んー。
安部:だから、今アジアの…韓国とか台湾とかそういう国に、ヨーロッパに行くバンドが増えてきてるんですけど。
H:うんうん。
安部:あ、すごいな、っていうか、日本ももっと若い人たちが…僕も含め、もっともっとがんばって、楽しくやってかなきゃな、と思いましたね。
H:なるほどね。
H:で、ツアーもあるんだよね。
安部:ツアーあります。
H:ちょっと発表してもらおうかね。
安部:そうですね…僕たちは4枚目のアルバムが5/8に出るので、それを大事に持ちながら…6か所の、初めての、never young beachホールツアーっていうのをすることになりまして。
H:はいはい。
安部:えー、最終日は5/28の…東京のNHKホールになります…
H:間違ってると思うな。29日だよ。
安部:(笑)29日です…5/29のNHKホールがツアーファイナルとなりまして。そちらが…もうすぐ始まりますので…はい。
H:なるほど。僕から言うとね、10日に北海道・札幌道新ホール…
安部:あー!ありがとうございます、すみません…(笑)
H:12日大阪・グランキューブ大阪、15日新潟・新潟市音楽文化会館、17日…ぜんぶ5月ね。愛知・名古屋市公会堂、24日に福岡・福岡国際会議場メインホール、で、29日にNHKホール。すごいね!
安部:ありがとうございます…
H:ビッグイベントですね。
安部:もう、やるぞ!っていう気合の表れです(笑)
H:楽しみ。
安部:うれしいです、ありがとうございます。
H:じゃあ、もう1曲聴かせて。
安部:あアぁ~そうですね…緊張します…
H:(笑)
安部:じゃあ、あの…きょう流して頂く2曲っていうのはですね、去年のシングルになってたものなんですけど。
H:あ、ホント?うん。
安部:このときはですね、ちょっと…僕の心が非常に怒りにわいていたときでして…
H:どしたの?(笑)
安部:いや、こう…渋谷の東横のビルが取り壊されるとか、オリンピックに向けて…下北沢とか僕、よく行ってたんですけど…
H:無くなっちゃったでしょ。
安部:そうなんですよ。で、これってどうなんだろうな、っていうので…ホントに、さっき言ったように、最近そういうこと歌ってる人いないし、僕ぐらいが歌ってもいいんじゃないか、っていう気持ちで…
H:さっきと同じだね(笑)
安部:"歩いてみたら"っていう曲なんですけど、オリンピックとかに対しての歌ですね。
H:ああ、じゃあ聴かせてください。
歩いてみたら - never young beach
(from 『STORY』)
H:んー…すごいシンプルだね。
安部:もう、このときはシンプルに、シンプルに…(笑)やってました。
H:いや、でも、この歌詞は…自分と同じだ、これ。渋谷だよね?
安部:渋谷です!渋谷ですっごい、こういうことを思ってて…
H:ね、思うよね。
安部:どこいっちゃうんだろうなぁ、とか。だから…"風をあつめて"の「翔けたいんです / 蒼空を」のところとか…
H:うん。
安部:そういう「風街」というものがあって。僕はもう、それをリアルタイムで見たことがないし…でもこの後の、僕の20,30,40とか下の人たちは、さらに僕の見た景色を見れないんだなぁ、とか思うと、どうなんだろうなぁ、みたいなことを…
H:そうだよ。あ、わかった。はっぴいえんどをやってた頃といまが似てるんだね。変わり方がね。
安部:あー…たしかにそうですね。
H:ちょっとレベルが違うけど…次元が違うけど。でも、あの頃はまだ残ってたから。まだ自分たちの中にまぼろしっていうのはちゃんとあって。いい風が吹くときもあったわけだよ。街にね。東京は。いま無くなっちゃったかな、っていうね。
安部:僕はもう、それがわからなくて。だから図書館とかに行って、60年代、70年代の本を読んで。あ、こんな景色があったんだな、とか。
H:うわー、なんか、すごい…ディストピアの世界だな。
安部:(笑)細野さんが20代、30代のときってこういう景色が広がってたのかぁ、とか。渋谷って50年でこんなに変わっちゃったんだ…
H:そう、おんなじだね。僕も60年代の写真見ると、こんなだったんだ!と思うわけ。びっくりしちゃう。
安部:だって、なにも無いような状態じゃないですか。
H:無いんだよ。空、広いしね。
安部:それが50年…たかが50年でこんな高いビルが建って、人がこんなんになってて…
H:[僕は]その当時生まれたんだけどね(笑)
安部:(笑)でも、けっこう…[自分にとっては]当たり前だったんですけど、細野さんたちの時代について調べるにつれて、当たり前じゃなかったんだ、とか。
H:たしかに。
安部:60年代のオリンピックがある前は下水とかももっと無くて、においとかも無かったのかな、とか。
H:んー、無かったよ。
安部:だからそれは僕はショックで…
H:昔はね、夏はね、におうときもあったよ。でも、冬はにおわなかった。いま冬でも…
安部:くさいですよね…
H:くさいでしょ?オシャレな街ほどくさいんだよね(笑)
安部:そうですね(笑)僕はこのときはそういうことを調べてたときで、あー、そういうことをちゃんと歌わないと、みんな…見て見ぬふりではないけど、こわいな、とは思いました。
H:いや、ホントだよね。僕もいつも、ひとりでブツブツ言ってんだけど…
安部:(笑)
H:そうか、歌にしたらいいんだ。教わったわ(笑)
安部:いやいやいや(笑)僕もブツブツ言っちゃうな、と思ったんですよ。これ歌にしないとな、と思って。こういう風にチャレンジして、やってみました。
H:エラい!
安部:(笑)うれしいです!
H:いや、だってもうね…耐えられないんだよね。
安部:わかります…すごいわかります…
H:だから、どの都市行っても、そんなにくさくないよ?実は。アジア行ったってね。まあ、食べ物のにおいとかはすごいけど。
安部:あー、そうですね。
H:でも、下水から温泉たまごみたいなにおいは…あんまりしないよ。東京は、すごいね。
安部:それでも、何も気にせず、冬とかにイルミネーションとかを写真で撮ってるところを見ると…スマートフォンとかで。
H:そうなんだよ、写真はにおいはね、写んないんだよ(笑)
安部:だから僕は…どこまで人間って、そういうものに慣れてしまって…こういうにおいとか、すごく豊かなものがあるのに、それを失くしてくのかな、この先、って…なるべく僕はそれに抗いたいな、とか。細野さんたちがこういうものを残してくれて、そこに僕は魅力を感じるので…
H:うん。
安部:僕はそういうのを、僕より下の[世代の]人たちに少しでも伝えられたらいいな、っていうので、これは書きました。
H:すごい。なんかこう、感慨深いっていうか…若いのに…
安部:(笑)ありがとうございます…
H:いやいや、おもしろかった。[ツアーを]どっかで観に行けたらいいんだけどね…
安部:あ、ぜひ、よろしくお願いします。
H:じゃあ…アルバムじっくり聴かせてもらいます。
安部:ありがとうございます!
H:はい、『STORY』、5/8に出ます。みなさんよろしく。
安部:よろしくお願いします。
H:never young beachの安部くんでした。
安部:はい、ありがとうございました!
2019.03.17 Inter FM「Daisy Holiday!」より
↓see also…
H:こんばんは。細野晴臣です。えーとね…(笑)来ましたね。きょうはnever young beachの安部くん(安部勇磨)が来てます。
安部:はい、よろしくお願いします。
H:よろしく~…「張本人」だからね(笑)
安部:(笑)
H:なんか、あの…ブログかな、インスタかな。写真見たんだけど。
安部:あ、僕、はい…上げました(笑)
H:(笑)
安部:大丈夫でしたか?
H:大丈夫だよ。うん。
安部:あ、よかったです…僕、この前、星野源さんと細野さんのラジオをお聴きして…
H:あ、聴いてたの?
安部:僕は、あの…いろんなところで…ホント違うかもしれないんですけど、[『HOCHONO HOUSE』制作の動機について]細野さんが「安部くんきっかけ、あるよ」みたいなことを言ってくれたんです、っていうので…もちろん、いろんなことがあったと思うんですけど、僕からかもしれないですよ、っていうのをよろこんで言ってしまったんですけど…
H:いいんだよ(笑)
安部:そしたら、[そのことについて細野さんが]「10年ぐらい前からそういう話があったんだ」、って言って…「そういうことになってるけどね」って、ああ、僕はなんて恥ずかしいことを……
H:いやいやいや(笑)直接のきっかけはホントにそうだから。
安部:あ、ホントですか?ありがとうございます…
H:僕、ぜんぶね、自分が言ったこと忘れてて…直近のことだけ憶えてるから(笑)
安部:(笑)
細野晴臣、新作制作のきっかけはネバヤン安部? その真相は…(J-WAVE NEWS) - Yahoo!ニュース https://t.co/ndyTfXNq52 @YahooNewsTopics
— 細野晴臣_info (@hosonoharuomi_) 2019年2月14日
安部:僕、これ聴いてホントに感動して…
H:どうだったんだろう?それいちばん聴きたいんだよね、感想をね。
安部:いや、もう、僕は感動っていうか、感謝しかなくてですね…
H:ホントに?(笑)
安部:なんていうか、細野さんほどの方で、たくさんの作品を…すばらしい作品を残してくれたのに、まだ!まだこんなものを聴かせてくれるのか!みたいなことを僕は…しかも、こんなに新しくて…細野さんのライヴで、この前のサンプラザの公演に僕、行かせて頂いたんですけど。
H:ああ、来てましたよね。うん。
安部:細野さんが「僕が録っても、やっぱり昔の音みたいになっちゃうんだよね」って言ってて。
H:うん。
安部:それ、僕は「そんなことない!!」って大きい声で言いたいぐらい、「めちゃめちゃ新しくてめちゃめちゃカッコよかった!!」ってすごい…心の中で叫んでまして…
H:ホント?(笑)よかった。
安部:ぜんぶ…あの、僕ら先にサンプルを頂いて。僕らもレコーディング中で…
H:そうだよね。
安部:帰りに車で聴いたんですけど…それまでバンドメンバーでふざけてたんですけど、もう、聴いた瞬間にみんな黙っちゃって。
H:(笑)
安部:すげー…って言って。カッコいい…って言って。みんな言葉を失いました。
H:いやー、よかったです、それは。うれしいですけどね。だから…裏切られた、とか思わないの?
安部:え?(笑)あ、でも、いい意味で…
H:いい意味で(笑)
安部:いい意味で、「うわ、なんだこれは、こんな風なことが起きるのか」みたいな。
H:あー、そっかそっか。
安部:だから、"恋は桃色"とか、3曲目で…あ、もちろん、ぜんぶそうだったんですけど。この曲こんな風になってるんだ、とか、こういう音なんだ、とか。音がカッコよくて。だけど、細野さんの空気感というかがすごいリアルで…うわー、なにがどうなってんだろこれ?みたいな…宝箱を開けたみたいな感覚でした。はい。
H:よかった…(笑)
安部:(笑)
H:いや、なにしろ、作ってる間…たとえば"恋は桃色"とかね。ピコピコいってるじゃん。
安部:はい(笑)
H:これ聴いたら安部くんはどうなんだろうな、とかね。やっぱり思ってたんだよ。
安部:いやいや…あー、うれしいです。そんな考えて頂いてて…
H:驚かしたくて。
安部:(笑)
H:驚いてもらえれば、まあ、成功かな、みたいな。
安部:いや、もう、イントロが始まったとき、なんの曲か最初わからなくて。
H:あー、そっか。
安部:歌が入って、ああ、"恋は桃色"なんだ、って言って。でもいろんな…ドラムの音だったりとか、いろんなところに…でも、ライヴのときに細野さんが、これを作るときはすごい煮詰まったっていうか、すごい考えて、けっこう大変だった、っていうお話を…
H:そうなんだよ。
安部:それを聞いて僕はびっくりしたというか…なんか、僕は、細野さんが遊んでいるような…ユーモアというか、それをサラッとやっているような印象しか僕はなくて…
H:結果はね、そう聞こえるかもしれない(笑)
安部:でも、細野さんもこういう音にする過程で、そうやって悩んだりとか、細野さんでもあるんだな、って…
H:毎回そうだよ。
安部:へえぇぇぇぇ…
H:へぇぇ、って(笑)
安部:(笑)いや、なんかもう、ぜんぶの作品に…細野さんが遊んでいるというか、ユーモアを感じちゃうんですけど、やっぱりそういう…これでいいのかな、とか、これやり過ぎかな、とか考えるんですか?
H:あー…いや、考えるよ。
安部:へえぇぇぇ…
H:まあ、なんだろう、作ってる最中はわりと遊んでいるようなもんだけど、やっぱりその前後がね、ツラいんだよね(笑)
安部:へー…
H:こんなの作っちゃったけどいいのかな?とかね(笑)
安部:(笑)
H:これ、もうちょっとうまくできたかな、とかね。いろいろあるんですよ。誰だってそうだよ、きっと。
安部:あー…いまだにやっぱり、そういうのがある…
H:ありますよ。昔っからおんなじだ。
安部:へぇー…なんか、すごいんですね。僕はなんか…もう、一生終わらないんだな、と思って…僕は細野さんがそういう気持ちでやってるのに、僕らもこれはちゃんとやんなきゃいけないぞ、みたいな…
H:いや、ちゃんとやってると思うけど(笑)
安部:なんか…ちゃんとやってるつもりになってるだけかもしれないし、いろんな方向からもっと悩むこととか、もっと真剣にやろうなみんな、みたいな。そうだな、みたいな…
H:いやいや…(笑)
安部:やっぱり、音を聴いただけで僕らは…ダメだよこれ、もう、みたいな。細野さんはこんなことしてくれて、こんな風なのやってるのに、僕らはこんな、なんか…ダメだこれじゃ!みたいな。みんながんばるぞ、みたいな話が…
H:(笑)それは、じゃあ、良い刺激になってるってことだよな。
安部:いや、すっごいなりました。誰よりもなりました。
H:よかったよかった。
安部:ホントに感謝しかありません。ありがとうございます。
H:いやいや(笑)曲かけなきゃね。じゃあその、いま言った"恋は桃色"を聴いてみましょうかね。
安部:はい。
恋は桃色 - 細野晴臣
(from 『HOCHONO HOUSE』)
H:で、聞きたかったんだけど。
安部:はい。
H:きっかけになったのが、『HOSONO HOUSE』のオリジナルのアナログ盤を手に入れて、いいシステムで聴いたんでしょ?
安部:はい、聴きました。はい。
H:で、そのときの話が印象的で、「すごくいい音だった」って。
安部:はい、はい。
H:どこがいいの?(笑)
安部:(笑)あ、でも、細野さんのインタビューとか読ませて頂くと、『HOSONO HOUSE』の音に対して「僕はどこがいいのかわかんないんだよな」って細野さんがよく、仰ってるのを見るんですけど…
H:うんうん。そうなんだよ。
安部:僕は、やっぱ…なんですかね、小さい頃からなんとなく、生活の中で音楽を聴いてて、中学生・高校生までに聴いてきた音楽には無い…なんだろう、音の良い悪いっていうものに対してのすべてが覆されたと言いますか…
H:ほう…?
安部:キレイに鳴ってることだけが良いとか、悪いとか。いろんな…そういう環境で、流れでやった空気感とか、物語があったりとか。その過程がその音に出てたりとか。なにか魔力みたいなものがあるんだな、っていう
H:ああ…
安部:そこになんか…あんまり考えたことがなかったんですね。その17,18歳ぐらいまで。
H:その頃まではなにを聴いてたの?
安部:えー、なんて言うんですかね…(笑)けっこう、その…日本の方と言いますか、いまの日本の30代とか40代の方の音楽を聴いてたんですけど…
H:そっかそっか。
安部:そこの方とはまったく違う音が出されてて、それを細野さんが25歳とかのときにやってたっていう…で、そこからいろんな音楽を掘り出すことによって、細野さんと似たような空気感が…海外にも日本にもたくさん、すばらしい音を出してる方がいたんだっていうのを知りました。
H:そうだよ。
安部:そして、いろんな方のきっかけになって…やっぱり、言葉では表せない何かがある、っていうのが僕は衝撃でした。
H:そっかそっか。うん。あの…「こうなんだ」、ってハッキリわかっちゃわないことがおもしろいんだよね。
安部:あ、ホントそうだと思います。そうですね。
H:だから、1970年代の音楽って、僕にとってはぜんぶそうだったから。
安部:はー…
H:アメリカのザ・バンド(The Band)とかね。まあ、バッファロー・スプリングフィールド(Buffalo Springfield)とかね。みんな良いんだけど、なにが良いのかわかんないっていう。
安部:(笑)
H:分析ができない。
安部:はいはいはい…あ、それ僕、同じようなことを…
H:同じだね、じゃあ。
安部:だから、『HOSONO HOUSE』のここのフレーズはどうやって入れたんだろうなぁ、とか。その分の余白というか…細野さんの作品にはぜんぶ余白があって、なんでこれがこうなんだろう、とか…
H:余白なの?それは…(笑)
安部:なんか、すごいイメージを掻き立てて頂けるんですよね。
H:そっかそっか。
安部:だから、けっこう、もっと説明できそうなものが多い中、細野さんの音楽はそういうのが説明できなかったり…
H:あー、あれは無理だ。僕もわかんないもん。説明できない、自分で。
安部:(笑)ただ、それが僕にはすごい魅力的で…当時のバックバンドのみなさんとのコミュニケーションの中だったりとか、ふとしたときにできたフレーズなのかな、とか…
H:まあ、そうなんだよ。たぶん。
安部:それが残ってるっていうのが…いい意味で作りこまれ過ぎてなくて、みなさんの人間味がたくさんあふれてる音楽っていうのが…
H:あー、特に『HOSONO HOUSE』ってそうだよね。セッションで作ったから。
安部:はー…
H:だから、オリジナルと違うんだよ。オリジナルっていうか、デモを作ってたから。[デモには]自分なりのアイディアがあるんだけど、バンドにそれを持ちこむと…んー、なんかその感じにならないわけね。バンドのアレンジになるから。
安部:はいはい。
H:でも、それもおもしろかったし。ただそれ…自分で作ったやつ、忘れてたわけ。オリジナルのデモを。で、今回それを聴いて…あ、こうだったのか、とか思ってね。
安部:へぇ…
H:いちばんそれがわかったのが"住所不定無職"。
安部:あー、はいはいはい…書いてありますね、この[ライナーノーツに]…
H:ホントはそのデモテープ、聴かせたいんだけど…
安部:あ、聴きたい!聴きたいなって思ってました!(笑)
H:いやいやいや…じゃあ、こっそりね(笑)
安部:やったー!ホントですか!え、じゃあ当時のものがいまも残ってる…?
H:残ってる残ってる。
安部:…へー!!
H:カセットもね。
安部:え、"住所不定無職"以外のやつもカセットに入ってるんですか?
H:何曲かあるね。
安部:っ…えー!聴けるんですか?
H:まあ、聴けるよ。
安部:ウエー!聴いていいんですか?!
H:ラジオではちょっと流せないけど…
安部:あー、ぜんぜん…もしよければ後で聴かせて頂きたいです…へー!うれしい…
H:どうせ死んだらああいうの出しちゃうんだろうけどね(笑)
安部:(笑)
H:まだ出して欲しくない。早く死ね、なんて思ってないでね(笑)
安部:(笑)
H:もうちょっと生きる。ね。んー。あとちょっとで…(笑)
安部:今回ホントに…この『HOCHONO HOUSE』も、またぜんぜん違う…だって、こんなことしてるの細野さんしかいないじゃないですか、きっと。
H:おじいちゃんだからね(笑)
安部:50年経って、またいま新しく録り直したっていう…
H:きっかけはね、安部くんで…あー、やってみようか、なんて気軽にやっちゃったのがいけない…
安部:(笑)
H:やってみたら難しくて…
安部:だって、やったことある人が他にいないから、これ難しいよね、ってわかってあげられる人もなかなかいないと思うので…
H:いないね~
安部:ホントに難しいことなんだろうな、って…でも、やっぱり楽しいな、っていうのもあるんですよね?途中で。
H:もちろん、それはあるよ。楽しくなきゃやってらんないよね。なんでも。音楽は特に。
安部:僕、泣いちゃったんですよ。1曲…
H:え?
安部:"僕は一寸"の…
H:あら!あれ泣く人いるね。星野くんも…(笑)
安部:歌詞を聴いて、涙が、もう…
H:それがよくわからない(笑)
安部:いや、もう、こんな…歌詞をご本人を目の前にして言うのはホントアレなのかもしれないんですけど…ぜんぶに感動するんですけど、僕は細野さんが歌う「嵐の中歩くのが好き / 坂を登れば きっと景色が変わる」っていう歌詞に…
H:ああ、そこね。
安部:僕はいろんなことを考えてしまい…
H:若いのにねぇ…(笑)
安部:もう、細野さんじゃなきゃ歌えない言葉で、これを歌ってくれるっていうのがどれだけ僕にとって前向きに背中を押してくれることなんだろう、とか。
H:そう。
安部:あと、「白い家に住んで 彼女と二人で」の部分がまた違う言い方になってたりとか…
H:そうだよね。
安部:そこの、時間が経ってのなにかがあったんだろうな、細野さんの中で…みたいな。なんか、映画のようで、僕はもう、泣いちゃったんですよ。もう、ホントに素敵な歌詞で…
H:いや、そんなこと思って作ってないからね。いやー、信じらんない。
安部:「ここに生まれ幾年月 / 枝が分かれて / 無限の道が見える」とか、もう、僕…えー!って思って、もう…
H:(笑)
安部:このことをこんなにやさしく歌ってくれる方って誰もいないじゃないか、と思って…
H:おじいちゃんが孫に説教してるみたいなもんだよ(笑)
安部:(笑)でも、僕はすごい感動して…前向きに、すごいポジティブになれたというか。
H:あ、そう。
安部:なんか、いろんなことを楽しんでいこう、とか。すごい前向きになれて…すごく感動しました。
H:えー、そうなんだ。
安部:星野さんもそう仰ってました?
H:そう、なんか、おんなじようなこと言ってたよ。星野くんはお風呂場でそれを聞いてて泣いちゃったんだって(笑)
安部:(笑)
H:やっぱりおんなじところかもしれない。「嵐の中歩くのが好き」とかね。
安部:僕、だからバンドメンバーとかに、お前わかるかこれ!みたいな。
H:(笑)
安部:お前、言ってくれてんだぞ細野さんが、こんな素敵な言葉を、って…
H:わかんないだろう、それは(笑)
安部:いや、「嵐の中歩くのが好き」って…
H:いやいや(笑)誰だってそうなんじゃないの?(笑)
安部:でも、それを、すごく素敵な言葉、簡単な言葉で…あとは声とアレンジで、そのいろんな意味を伝えてくれてるっていうのが…
H:だんだん恥ずかしくなってきた(笑)
安部:僕、もう、今年いちばん…1月の頭に聴かせてもらったんですけど、ああ、こういう詞を書ける細野さんってホントにすごいな、と。だってもう、いろんな…音楽の知識があって、いろんなアレンジがあって、このアルバムもホントにすごいな、っていう…細野さんの歴史を辿ってくかのようなアルバムだな、とか思ったんですけど。やっぱり、それだけじゃなくて、言葉とかも…ホントにすごい方なんだな、って。ぜんぶすごいなって改めて思いました。
H:いやいやいや…恥ずかしいなぁ(笑)
安部:(笑)僕はだから、これに感謝を言いたくて…ホントにもう、この歌詞ヤバすぎちゃうな、っと思って。だから自分のラジオでも言いたくてしょうがなかったんですけど、まだ発表前だったんで…頼むから聴いてください、と。
H:なるほど。
安部:で、他の…いろんなところが[『HOSONO HOUSE』から]変わってたりするじゃないですか。そこの変わったところも、細野さんの中でなにかあったんだろうな、と思って…
H:なにかあった、っていうか…別になにもないけど…(笑)
安部:でもなんか、重みが…言わずとも…
H:あの、46年前の自分が作ったわけじゃない?まだ24,25かな?そんな奴の考えてることはわかんないんだよ、僕。
安部:(笑)
H:自分でもね。なに考えてたんだろう、と思うわけ。で、歌えないな、と思ったの。
安部:あ、いまだとこの言葉はもう…
H:歌えない言葉がいっぱいあったんだよね。うん。
安部:そこでやっぱり、変えようって思うのもけっこうな決断じゃないですか?そこはあっさり変えたり…?
H:あっさりあっさり。うん。
安部:へぇ…
H:自分のことだから。他人の歌詞だったら、ちょっとね(笑)
安部:そう、僕、「鬼は内」の変わった理由とかもこれで初めて…ああ、日本にそういう場所があってそういう歴史があるんだ、とか。
[*再構築に際し、"福は内 鬼は外"の歌詞の一部が変更されている。]
H:あるある。
安部:それなんか社会の授業とか…
H:授業じゃないよ(笑)
安部:やっぱり、すばらしい音楽っていうのはこうやって歴史も教えてくれるんだな、とか。
H:大げさになってきたね、だんだん(笑)
安部:いやいや…大げさじゃないですよ細野さん!俺、ホントに…勉強だなって思っちゃいますもん。楽しく勉強できちゃうっていう…
H:あ、そう。
安部:音楽ってすごいな、っていう…僕、あんまり勉強とか好きじゃないんですけど、細野さんの音楽を聴くとそういうところも自然と…そういう歴史があって、文化があるから、細野さんの言葉とか音楽があるんだな、っていうところで…やっぱ、文化とかそういうものを抜きにして音楽っていうのは成り立たないな、とか思っちゃいましたね。
H:だんだん論文みたいになってきたんじゃない?(笑)
安部:(笑)そういうところまで考えさせてくれるんですよね。
H:あ、そう。役に立ってるんだ、じゃあ。
安部:いや、もう…立ちまくりですよ細野さん…ありがとうございます。ホントに…
H:いやいや…よかったよかった。作ってよかったわ。じゃあね、"僕は一寸"聴きますか。その。
安部:あ、よろしくお願いします。
H:どこが泣けるのかね。自分では泣かないですけど(笑)
安部:(笑)
僕は一寸・夏編 - 細野晴臣
(from 『HOCHONO HOUSE』)
H:ちょうど夏に作ってたからね。
安部:へぇ…それでタイトルが「夏編」っていうのも、すごい素敵なんですよね。
H:もう、暑かったから…
安部:(笑)
H:ホントに…参っちゃった。
安部:でも、僕、この…[ライナーの]説明のところも、この歌詞に対してはそんなに触れないんだ、っていうところがまた…
H:んー?どういうこと?
安部:僕の中では…アレンジもなんですけど、この歌詞に対してもっと触れるのかな、ってあったんですけど。
H:あ、そうか。ぜんぜん触れてないよ。
安部:そうなんです。だから、細野さんの中ではそんなになのかなぁ、みたいな。
H:(笑)
安部:僕けっこう、歌詞すげー!って思ってたんで…
H:あんまりね、歌詞について…いままで言われたことないし、自分でも触れないようにしてるんだよね。
安部:へぇー…なんで触れないようにするんですか?やっぱ、恥ずかしい、みたいな?
H:恥ずかしいよね(笑)
安部:(笑)あ、そういうのもあるんですね…
H:だってほら、はっぴいえんどで大作詞家がいたからね、隣に。
安部:あー…でも、いやー…そういう意識っていうか、あるんですね。
H:というか、なるべく詞に関しては触れないように生きてきたからね。
安部:へぇー…
H:でも、密かにね…自分なりに、自分の詞は…捨てたもんじゃあないとは思ってる(笑)
安部:(笑)ホントにそうです、僕…いまだに、歌詞とか書くときに、行き詰ってどうしよう、とか思うと、細野さんのDVDボックスみたいな…
H:ほうほう。
安部:横浜のライヴ映像とかが入ってる、3部作とかが入ってるやつを…僕、ビクターの豊島さん(豊島直己)から借りたまま返さないでいるんですけど…(笑)
H:買ってよ…(笑)
安部:(笑)でも、売ってなくて、ぜんぜん。
H:売ってないよね、確かに。
[*2007年の『ハリー細野 クラウン・イヤーズ 1974-1977』のこと。ほしい…]
安部:で、あれを読んだりして。あ、こういう言葉をこういうメロディーと合わせるとこんな風に聞こえて、こういう意味合いがきっと細野さんの中にはあるのに、それをこうやって、押しつけがましくなく言えるんだな、とか。
H:すごい…勉強家だね。
安部:(笑)そういうところから、すごい…あ、じゃあ僕もこういうのでいいかも、とか。こうしてみよう、とか。すごい考えます。そういうことを。
H:あ、ホント。じゃあそういう…なんだろう、生徒みたいなもんだな。
安部:(笑)
H:その生徒の作品を、次週聴くけどね。新作。
安部:あ、すいません…あー!緊張しますね…(笑)ちょっと今回は…音のこととか、すごい…
H:うん。
安部:2年前に細野さんに聴いて頂いたときに、なんかもうちょっと音がこうなったらこうかもね、みたいなことを言って頂いて…
H:言った?そんなこと…(笑)
安部:「スタジオ変えてみたらもっといいかもね」とか。
H:あらら。
安部:なので、ちょっと僕らもいろいろ、チャレンジしてみようと思って。
H:あ、ホント?楽しみだね。
安部:ちょっと緊張しますけど…たぶんちょっと変わったと思います。
H:あー、うれしいね。いまはそういう時期なんだ、みんな。ね。
安部:ちょっと聴いてほしいです…
H:じゃあ、次週を楽しみに…きょうはこれぐらいで。また来週。安部くんでした。
安部:あ、ありがとうございます…
★2019.03.15 α-STATION FM KYOTO「NICE POP RADIO」より
最高
金曜20時からはNICE POP RADIO!
— α-STATION FM KYOTO (@fmkyoto) 2019年3月15日
今回も澤部氏の心の師匠、
臼山田オーケストラさんが登場!
渋谷系の文脈以外の人が作った
90年代の渋谷系っぽい音楽
をたっぷり選んでいただきました🔎✨
今週も濃厚な夜になる!!#ナイポレ#スカート#澤部渡#FM京都#文脈外 pic.twitter.com/ZsFqBN6Ls8
72回目の放送でございます。先週に続いて臼山田洋オーケストラこと、音楽ライターの臼杵さん(臼杵成晃)をゲストにお迎えしております!
臼杵:はーい。
澤部:どうもどうもどうも…先週はお互いに聴かせたい曲を選ぶ、みたいな感じで…
臼杵:はい。ちょっとだけ歴史を…うっすら辿りつつ。
澤部:そうですね。なので…今週はですね、やっぱりわたくしの心の師匠である臼杵さんに教えを乞う…という感じで(笑)最近臼杵さんがよく仰ってる、渋谷系の文脈以外の人が作った、90年代の渋谷系っぽい音楽…まあ、よく「文脈外」って言い方をね、されてますけど。その辺の音楽をたっぷり聴いていきたいと思っております。よろしくお願いします~
臼杵:はい。
澤部:番組ではみなさんからのメッセージをお待ちしております。α-STATIONのホームページにあります"メッセージ"から、番組「NICE POP RADIO」をセレクトしてお送りください。FAXは京都075-344-8940です。Twitterアカウントをお持ちの方はハッシュタグ、カタカナで「#ナイポレ」を付けてつぶやいてください。
また、この番組はパソコンやスマートフォンでラジオが聴けるIPサイマルラジオRadikoでもお聴き頂けます。スマートフォンからはGoogle PlayやAppStoreからRadikoアプリをダウンロードしてお楽しみください。有料サービスのRadikoプレミアムを利用しますと全国どこでもα-STATIONをお楽しみ頂けます。詳しくはα-STATIONのホームページ、またはRadikoのホームページをご覧ください。
そして、京都のレコードショップJET SET KYOTOのお店にNICE POP RADIOのコーナーも作って頂いております。番組で紹介したレコードも展開されておりますので、ぜひチェックしてみてください。
じゃあ僕もね、文脈外の曲を1曲…持って参りました。
臼杵:はいはいはい。
澤部:すごい迷ったんすけど、PRINCESS PRINCESSの奥居香さん(現・岸谷香)のソロを持ってきました。これも僕、臼杵さんに教えてもらって…元々PRINCESS PRINCESS、すごい好きで。奥居さんの曲ってプリプリでもすげぇいい曲あったんすよ。
臼杵:うん。
澤部:で、もう、ソロデビューの1994年のアルバムで…ほとんどバカラック(Burt Bacharach)になるという…(笑)
臼杵:そうですね(笑)
澤部:生きながらにしてバカラックになる瞬間があったんで…(笑)それを聴いてもらいましょう。奥居香で"帰り道"。
[CM]
澤部:京都α-STATIONからお送りしておりますNICE POP RADIO。今週もゲストはこの方でございます。
臼杵:はい、えー、臼山田洋オーケストラ…です(笑)はーい。
澤部:(笑)はい、よろしくお願いします!まあ、改めて…先週も来て頂いた臼杵さんは、さっきも話しましたけど、僕の心の師匠、という感じでございまして(笑)
臼杵:はい。
澤部:中学・高校とよく行っていたイベントのオーガナイザーというか、主催であり。で、そこでわたくしが山のように音楽を浴び、ここまで育った…という解釈でいいと思います(笑)
臼杵:すくすく育ちましたね(笑)
澤部:(笑)で、まあ、そんな感じで…臼杵さんに来て頂いております。今週は、臼杵さんが最近気になっている、渋谷系の文脈以外の人が作った、90年代の渋谷系っぽい音楽を特集…ということなんですけど、まあ、どういう感じなんですかね?
臼杵:なんか、「渋谷系」みたいなのって度々特集されたりとか、評論家の人がなんか言ったりするけど、そういうのって大体、フリッパーズ・ギターだったりオリジナル・ラヴだったり…まあ、当事者の人たちのお話だったりするから、「本当のピークは1992年で終わってる」みたいな、そういう話とかになるけど。
澤部:うんうん。
臼杵:実際はそっから漏れ出てるもの?というか。そういう人たち大量にいたのに、その辺の話が無かったことになっている…気がしていて。
澤部:はいはいはいはい。
臼杵:僕なんかはその辺のものが大好きだったので…(笑)そういうのを評論家に任せてると、この歴史が無かったことになっちゃう…みたいのがあって。
澤部:たしかにね。んー。
臼杵:まあ、それをいちいち形にするつもりはないが、ひたすら「そういう音楽はあるんだぞ」というのが…まあ、みんな聴いてくれるといいな、という気持ちがあるんですよね。
澤部:たしかに、その10年前もニュー・ウェーヴに中てられてあがた森魚がニュー・ウェーヴやっちゃう、みたいなね。そういうのってあったじゃないですか。マジカル・パワー・マコがテクノやる、みたいな。
臼杵:うんうん。
澤部:なんか、そういうものが渋谷系にもあったんだな、というのをね、感じてもらえれば、と思います。
臼杵:はい。
澤部:じゃあ、ちょっとずつ聴いていきましょうか。
臼杵:はい。まあその、急に音楽変わっちゃったりの代表例というか、有頂天のケラさんが…
澤部:あー!はいはい。
臼杵:LONG VACATIONというのを90年代頭から半ばくらいまでやってたんですけど、その短い3,4年ぐらいの間にむちゃくちゃ盤を出していた人たちで。その中でもとりわけ、いかにもそれっぽい音楽をやってたアルバム…『SUMMER LOVERS』というアルバムの中から…これはシングルにもなってますが、"Sunday Love"という曲を聴いて頂きましょう。
澤部:はい。
臼杵:はい。これがLONG VACATIONの"Sunday Love"でした。
澤部:このアルバムは聴いてなかったんで初めて聴いたんすけど、ほんとにもう、めちゃくちゃ…トレースしたかのようなオシャレさと…(笑)
臼杵:うん(笑)
澤部:ジャズっぽい…エアーっぽい、アンビエントのたくさん鳴ってるドラムの感じと、このシンセの密室感の…この、なんていうか、アンバランスがたまんないっす。なんか、真っ当に…「真正面から渋谷系をやってみよう」とはなんか少し、切り口が違う…
臼杵:まあ、ケラさんですからね…っていう(笑)
澤部:ね(笑)
臼杵:まあ、わかりやすく…いろんなレコード屋さんにこういうことが起こっていた時代だったわけですよ。まあ、ロンバケが聴きたくて僕は東京に来て、今に至るという…
澤部:そうかそうか…そうでしたね。
臼杵:そんな感じですね。
澤部:そう。最近、文脈外のお話をされてますけど、そこに至ったのってなにかきっかけとか…?
臼杵:いや、まあ元々聴いちゃあいたので…そもそも、いわゆる「渋谷系」の…あ、そうだ。ちょうど澤部くん、先々週の放送で90年代の話してましたけど、1987年生まれの人が考える90年代…(笑)
澤部:そうそうそう(笑)
臼杵:僕の場合は、16歳から26歳が90年代なんです。
澤部:はー…
臼杵:で、まあド真ん中を見てきたし、HMVにも通っていましたし、センター街の。
澤部:いいなぁ…
臼杵:なんだけど、明らかに僕は側道を歩いていたので(笑)当時からそういうものは聴いてたし、クラブでもそういうものをかけたくてDJを始めた、みたいなところがあって。
澤部:あー。
臼杵:「加藤いづみ、大きい音で聴きたいじゃん」っていうところが、そもそものきっかけだったりするので…
澤部:そうかそうか、なるほどね。
臼杵:そこを改めて考えてて、当時聴いてなかったCDもいっぱいあるな、と思って。なんとなく探しはじめたら、まだ山ほどあった、っていうのがひとつの…
澤部:きっかけなんですね。
臼杵:そうですね。
澤部:じゃあちょっと、このまま続けて聴いていきますか。
臼杵:そうですね、この辺も…当時から好きだし、ずーっとかけ続けているもの。で、わかりやすく…「ロジャニコ歌謡」って呼ばれてるんですけど(笑)
澤部:はいはいはいはい。
臼杵:完全なロジャー・ニコルス(Roger Nichols)をやっているものを2つ続けて…まあ、いけたら3つ、続けて聴いて頂きたいものなんですけど。とりあえず1曲、濱田マリさん。モダンチョキチョキズの濱田マリさんですね。"フツーで行こう"という曲を…お願いします。
臼杵:はい。という…完全に"Love So Fine"だ、っていう(笑)感じのもので…
澤部:ねー!
臼杵:まあ、モダチョキはそもそもオシャレなものをやってる人たちなので、実は。
澤部:そうですよね。
臼杵:作曲が遠藤京子さんで、当時聴いた時に、ちょうどロジャニコの再発とかがあった時期の1年後とか2年後で…
澤部:はいはいはい。
臼杵:で、とにかくビックリして、なんなんだこれは、と思ってすごい慌てた曲ですね。当時、普通に…NHKの番組とかでも歌ってたけど…
澤部:ふーん。
臼杵:そうなんですよ。すばらしい、アレンジが…まあ、こういう、いかにも小山田さん(小山田圭吾)たちがやっていたロジャニコの…まあ、パクリですか。そういうのをやってる人たちは他にもぜんぜんいた、っていうので…
澤部:うんうん。
臼杵:同じように、そういうロジャニコ路線みたいなもので、もう1個…これはホントに、なんでみんな聴かないんだろう、ぐらいの、ちょっと穴…なんていうんですかね。
澤部:うん、僕もね、これね、次かかるやつ…ずーっと探してはいるんですけど…探そうと思うと、無いんですよね。ずっと聴きたいのに聴けてないっす。
臼杵:Corneliusの"The Love Parade"だったり、"Don't Take Your Time"…ロジャー・ニコルスの。それをやってる曲っていうのが何曲もあって。ロンバケにもあるんですけど。まあ、それの代表的かつ、いちばんカッコいいと思うんじゃないか、というやつを聴いてもらいましょうか。
澤部:はい。
臼杵:じゃあ、次がですね、加藤いづみの"オンナトモダチ"という曲です。
臼杵:はい。つーことで…(笑)
澤部:パーフェクト、ホントに最高。
臼杵:この時期の加藤さんは上田ケンジさんとタッグを組んでいた時代で。
澤部:はいはい。
臼杵:カーネーションの直枝さん(直枝政広)も参加しているアルバムなんですけど。『SAD BEAUTY』というアルバムに入ってる曲で。
澤部:めちゃくちゃ良い…
臼杵:すんばらしいんですよ。これ、いわゆる渋谷系的なものを追ってるディガーの人たちはここに手を付けることはあんまりないと思うんで…(笑)
澤部:んー、かもしれない…
臼杵:加藤いづみさんはそもそもソフトロックっぽいものを…本人が意図してるわけじゃないと思うんですけど、村井邦彦的な音楽が実は山ほどある
澤部:えー!めちゃくちゃ興味出てきた…
臼杵:で、こういうノリの曲っていうのがいくつもあって…斉藤和義さん。完全に意外な方向ですけど(笑)
澤部:ね。
臼杵:…が、"歌うたいのバラッド"出した時のアルバムの中にも入ってる…これもシングルになってはいるんですが。
澤部:へー。
臼杵:これ、明らかにそれをやろうとしてるでしょ、っていうアレンジの曲が…当時シングルで出てまして。斉藤和義さんで"Hey! Mr.Angryman"という曲です。
臼杵:はい。斉藤和義さんの"Hey! Mr.Angryman"という曲でしたが…(笑)
澤部:やっぱ、あの間奏聴くと…(笑)
臼杵:そうでしょ?ぜったいそうでしょ?って、本人に確認したい、いつか(笑)
澤部:あとやっぱり、「Hey! Hey!」とかそういう感じも、なんていうか…ビートもの感があるし。
臼杵:だから、こういう人までそういうことをやってたっていうことが…実はあったんだけど、あんまりいま語られることもないな、と思うわけですよ。
澤部:たしかにね。普通に、こう…「硬派なシンガー・ソング・ライター」みたいな見方ですもんね。…というわけで、文脈外の渋谷系、ということでお送りしているNICE POP RADIOなんですけども、CMの後もまだまだ続きます。
[CM]
澤部:京都α-STATIONからスカートの澤部渡がお送りしておりますNICE POP RADIO。今夜のゲストは先週に引き続き、臼山田洋オーケストラさんでございます。
臼杵:はい。
澤部:どうもどうも、よろしくお願いします。今週のナイポレは…渋谷系の文脈外ということでお送りしているんですけれども、僕も1曲選んできました。チェッカーズの曲を持って来たんですけど。チェッカーズって…「渋谷系」の認識として有名なところだと、『学校へ行こう!』っていうドラマがあって。
臼杵:はいはい。
澤部:で、劇中の音楽をピチカート・ファイヴがやって、それのオープニングをチェッカーズがやってたんですよね。で、[チェッカーズは]表であり、裏がピチカートだったんですけど…チェッカーズはわりと、晩年は初期にあった不良っぽい感じが無くなり…無くなり、っていうか、モードが変わっていって。ちょっとスムースな音楽をやるようになっていくんですよ。で、解散ギリギリに出たシングルだったと思うんですけど、"Blue Moon Stone"という曲を聴いてみましょうか。
澤部:というわけで、聴いてもらっていますのはザ・チェッカーズで"Blue Moon Stone"という曲なんですけれども…
臼杵:シティポップ…
澤部:そうそうそうそう(笑)ただ、どうしてチェッカーズがこの流れにたどりついたのかっていうのが、ちょっとまだわかってないんですよね。なんか、もしかしたらアシッド・ジャズのほうからこういう風になったのかな…
臼杵:まあ、でも、あの夜遊びの人たちだし、年齢的にもちょっと大人になって…そういう音楽を取り入れたんじゃないですかね(笑)
澤部:(笑)そうなんですよね、こういう感じの…これが1991年だったかな?とかなんですよね。
[*正確には1992年。]
臼杵:はいはい。
澤部:というわけで、チェッカーズの"Blue Moon Stone"という曲を聴いてもらいました。
じゃあちょっとまた、再び臼杵さんの選曲に戻りましょう。
臼杵:はい。
澤部:先ほどはバカラック系をバーッと聴いた感じでしたけど。
臼杵:そうですね。今度はここ最近の…もう一回掘り起こしてみようと思って、とりあえず女性シンガーだったりとか、女優さんが出したレコードとか、そういうところにお宝がけっこう潜んでいることがわかってきたんで。
澤部:そうですよね。
臼杵:そこを改めて…これ聴いてない、みたいなやつを片っ端から買う、みたいな状態で掘り進めていて。その中から出てきたものをいくつか…ここからはかけてみようかなと思います。
澤部:ほうほう。
臼杵:ひとつがですね…miyukiさんという、ピアニストらしいんですけど、何枚かだけ出して、いまも…うーん、活動的にはそんなに、いろいろやってる方ではないんですが。このCDが…どこの中古CDの「ま行」にも必ずあったんですけど、ずーっとなぜかスル―し続けていて。
澤部:へー…はいはいはい。
臼杵:そういえばこれ聴いてなかったな、と思って聴いてみたらむちゃくちゃ最高だったという…(笑)
澤部:ふーん。
臼杵:miyukiさんというシンガーさんの、『ぜんぶ言ってしまおう』というアルバムなんですけど、その中から"かわいいKISSをあげる"という曲を。お願いします。
澤部:おお…もう、イントロから良いですね。
臼杵:という感じで…どの曲かけようかなって迷うぐらい、すばらしい曲が…わりとヴァリエーションに富んだ曲がいっぱいあって。で、まあ…ちょっとこんなロリ声でっていう感じで…(笑)これはすばらしい、いわゆるすばらしいガールズ・ポップですよね。
澤部:んー、めちゃくちゃ良い…編曲もすげぇ凝ってますね。やっぱり時代が…お金があったのか、なんなのか…(笑)
臼杵:そうですね(笑)お金があったんだろうな、っていうのは、やっぱこの辺の時期の音楽聴いてるとすごく思います。
澤部:あー…
臼杵:で、さらに同じような時期で…女優さんが出してるレコードというのはいっぱいあって。それこそ小西さん(小西康陽)が書いてるものとか、けっこういっぱいあるんですけど。たとえば松雪泰子さんとかね。
澤部:ね。
[*95年のデビューシングル『ESP』は小西康陽プロデュース。]
臼杵:そういうオシャレな曲…文脈「内」の人たちもいっぱい参加してる曲もあって。で、これは文脈外の中からひとつ…奥菜恵さんが実はめちゃくちゃ良い曲が何曲も潜んでいることが…
澤部:へー!
臼杵:ここ最近の調査で判明しまして(笑)
澤部:(笑)
臼杵:その中でもこれは…フリーソウル奥菜恵(笑)ちょっと聴いてみましょうか。奥菜恵さんでですね、"とってもゴメンネ"。
澤部:すげぇタイトル…
臼杵:最高でしょ?(笑)
澤部:最高…
臼杵:こういう風な、ちょっとソウルミュージックみたいのを取り入れたものっていうのが90年代にはいくつもあって。それを…その後、MISIAさんが出てきたことによって本格化して、ちょっとまた別物になっていくけど…ちょっとソウルっぽい音楽を女性が歌う、みたいなのっていうのは山ほどあって、奥菜さんもそれをやっていた、と。
澤部:すげぇ…1997年なんですね、この曲。
臼杵:97年頃っていうのはそういうのがあるんだよね。まあ、あとは…すごいスウェディッシュっぽい曲をやってるんだけど、ぜんぜんスウェーデン関係無い、みたいな曲があったりもして(笑)
澤部:(笑)
臼杵:すばらしいんですよ。そういう時代。
澤部:時代だったんですね…
臼杵:こういう、いわゆる渋谷系文脈じゃない人がやってるんだけど…まあ、「超・渋谷系文脈内」?いわゆる、すばらしい、センスのいい作家さんが寄ってたかって作るアルバムみたいな。
澤部:はいはい。
臼杵:今で言うNegiccoだったりとか、声優さんの花澤香菜さんとか、ああいう感じの…その寄ってたかっての源流とも言えるのが、市井由理さんの『JOYHOLIC』というアルバム…
澤部:名盤ですね…
臼杵:これはホントに最高のアルバムなんですけど…朝本浩文さんが中心になって、菊地成孔さんだったり、ヒックスヴィルの皆さんが参加してたりする最高のアルバムがあって。これはいわゆるその「寄ってたかって」の元祖だと思うんですけどね、わりと。
澤部:たしかに…
臼杵:その中から1曲。まあ文脈「内」ですが、「超・文脈内」の代表として…いくつも良い曲あるんですが、"優しいトーン"という曲を。
臼杵:はい。市井由理さん…これは明け方ぐらいのクラブで爆音で聴いてるとめっちゃ泣けるっていう…(笑)
澤部:うんうん…すげぇ…なんかこう、ホントに…さっきの奥菜恵さんのやつとか聴くと、センスが違うっていう感じが…(笑)
臼杵:センスと良さが違う(笑)そんな感じがしますね。
澤部:すげぇな…やっぱり、さっき話してたんですけど、奥菜恵さんが97年で、市井由理さんが96年なんですね。で、その1年の差でここまで…音色とか所作にこうも違いが…(笑)でも、さすがに20年経つとフラットに見れるというか。たぶん当時だったら、うわダサッみたいな感じに思っちゃったんだろうな、って。
臼杵:なんかね、ちょっとこれ…時間がないな(笑)ローファイみたいなものが95年とかに…ハードディスク・レコーダー、テレコのハードディスク版が出るのが95年ぐらいなので、Corneliusがそれでアルバム作ったり…とかいうこともあったりして…とかいう話をしだすと止まらなくなる(笑)ちょっと、いろんなことが起こった…
澤部:ね、90年代といえばね。
臼杵:で、ヘンなエラーみたいなものもいっぱい出ている時代だったんだよなぁ、というのが…もう、これは説明できないですな(笑)1時間では。
澤部:というわけで…最後にもう1曲聴いて今回の特集は終了となるんですが…
臼杵:はいはい。
澤部:どうでした?やってみて。
臼杵:んーとですね…ちょっと、これは本当にほんの一部だったんでいろいろ足りないな、と。作風をいきなり変えちゃった人の中でピロウズだったりとか…
澤部:あー!
臼杵:そういう代表的な部分がいくつかあって…あとはホコ天バンドだったのに急にイギリスっぽい音楽をSpiral Lifeとしてやり始めた車谷さん(車谷浩司)だったりとか…
澤部:ああ…
臼杵:他にもいっぱい…ちょっとね、筋を違えちゃった人がいっぱいいたんですよ。
澤部:たしかに、詩人の血とかもそうですもんね。
臼杵:そうそうそう。その辺のことって、わりと…もっと表沙汰になってない人たちもいっぱいいたりして、調べ出すとおもしろいんですけど。
澤部:うんうん…めちゃくちゃおもしろかったっす。
臼杵:まあ、その辺の流れとはまったく関係無い部分で、最後の曲を選んでみました(笑)ちょうど先々週の放送で弾き語りでやってましたけど…
澤部:あ、そうですね(笑)
臼杵:[井上陽水&忌野清志郎の]"帰れない二人"。この曲、オリジナルももちろん大好きなんですけど、僕は『東京上空いらっしゃいませ』という、相米監督(相米慎二)の映画の中で使われている…映画の中では牧瀬さん(牧瀬里穂)が口パクで歌っている曲なんですが、小笠原みゆきという方が歌っているジャズアレンジのカヴァーがありまして…それを最後にしたいな、と思います。これ、ギリギリ90年っていう感じなんですけど…映画自体は89年か。まあ、90年代ではないですが…単純に良い曲なんで(笑)最後に聴いてみましょう。小笠原みゆきさんで"帰れない二人"。
澤部:はいはい。
臼杵:最高過ぎて、VTRからラインで引っ張ってカセットに録音して、すごい、ずーっと聴いてた(笑)高3の時かな。
澤部:えー!これ、映画、僕、まだ観れてないんですよ。ぜんぜん観れなくて…
臼杵:最高なんだけどね。
澤部:そう、スカートのMV撮ってくれてるゼキさん…大関さん(大関泰幸)という人もすごい好きで。いつか観なきゃなぁ、と…
臼杵:リリスク(lyrical school)のプロデューサーのキムさん(キムヤスヒロ)も大好きで。
澤部:へぇ…
臼杵:何人かね、熱狂的なファンがいる。すっごいヘンな映画なんだけど…
澤部:タイトルがもう、良いっすもんね。
帰れない二人 東京上空〜: http://t.co/1gCPMXzH2L
— うすやま (@usuqui) 2014年5月8日
歌ってるのは牧瀬さんではなく小笠原みゆき。このアルバムに入ってます。 http://t.co/ZgcVvwKxFs
澤部:京都α-STATIONからスカートの澤部渡がお送りして参りましたNICE POP RADIO。番組はそろそろお別れのお時間となってしまいました。というわけで、たくさん文脈外の音楽を…改めて浴びましたけど。とにかく僕は「加藤いづみのアルバムを買う」という使命ができました。
臼杵:はい(笑)
澤部:最高…すごい、めちゃくちゃ勉強になりました。えー、というわけで…またぜひ、ちょっと…ホント臼杵さん、いろんな音楽聴かれてて。それこそさっき言ってたイージーリスニング特集とかもね、やってみたいです。ぜひまた来てください。
臼杵:はーい。
澤部:よろしくお願いします。じゃあ一回、スカート通信挟ませてください。
ニューシングル『君がいるなら』、アナログ『20/20』好評発売中。アルバム『CALL』以降の作品のサブスク配信も始まってます。ぜひどちらもよろしくお願いします。
春のライヴはですね…えー、東京以外です。3/21(木・祝)、神戸の蘇州園で開催のイベント「御影ロマンス 2019」に出演します。3/22(金)は沖縄那覇Outputでアナログフィッシュの20周年を祝うイベントに出演です。これはどちらも弾き語りですね。3/31(日)大阪味園ユニバースで開催のイベント「CHOICE VOl.18」にはバンドで出演します。よろしくお願いします。あとFUJI ROCKも決まりましたので、そちらもよろしくお願いします。
NICE POP RADIOではメッセージをお待ちしております。α-STATIONのホームページにあります"メッセージ"のほうから、番組「NICE POP RADIO」をセレクトしてお送りください。FAXは京都075-344-8940です。Twitterアカウントをお持ちの方はハッシュタグ、カタカナで「#ナイポレ」を付けてつぶやいてください。番組の感想やわたくしへのメッセージ、選曲テーマやカヴァーのリクエストなどもお待ちしております。
というわけでですね、臼杵さんに2週連続で来てもらいました。
臼杵:はい。ちょっとこれ、足りないから…
澤部:そうですね。
臼杵:これ、いくらでも…2,3時間ぜんぜんやれるんで、聴きたい人はDJで呼んでください(笑)ぜんぜんやりますんで。
澤部:あと、普通にイベントまたやってください。臼杵さんのイベント…なにが良いかって、むりやり踊ったりしなくていいところだと思うんで(笑)
臼杵:みんなスマホを見てるっていう(笑)ジッと座ってスマホを見ることが許されるイベントをやってるんで…
澤部:そうですね(笑)あと、何年か前に…明け方4時半から5時くらいの電車が走り始めるぐらいまでの間に、エンケン(遠藤賢司)シバりとかあがた森魚シバりで、しめやかに朝を迎えるっていうのがあって…(笑)
臼杵:それをかけてたのは僕のお師匠さんである中嶋勇二さん…東京タワーズのドラマーの方ですね(笑)
澤部:そうですね。あれ最高でしたわ…そういう、ちょっと、なんというか…音楽の見方が少し変わるようなイベントをされております…(笑)
臼杵:今のところちょっと予定ないんで、告知は出来ないですけれども…
澤部:またぜひやってください。
臼杵:はい。
澤部:というわけで、今週最後にお送りしますのは…こちらも臼杵さんの選曲でお別れでございます。
臼杵:はい。まあちょっとですね、さっきお話もしましたが、ピロウズがオシャレなことやってた時期の音楽が僕大好きで…
澤部:うんうん。
臼杵:いろんな…94,95年とかその辺りなんですけど、本人たち的には納得いってない部分もあるかもしれないんですけど、音楽的には最高のものをいくつも作っている時期で…
澤部:はいはい。
臼杵:まあ、その後の活躍がもちろんすばらしいんで、これもぜんぜん、アレなんですけど…この時期のピロウズもすばらしかったんだよ、ってことで。これは映画の主題歌にもなってた曲なんですけど、"ガールフレンド"という曲がありまして。
澤部:ほうほう。
臼杵:超バカラックなんで、それを最後に聴いて終わりましょう。
澤部:はい、というわけでNICE POP RADIO、この時間のお相手はスカートの澤部渡と…
臼杵:臼山田洋オーケストラでした。
澤部:また来週。
「Sunday Love」les long vacation
— うすやま (@usuqui) 2019年3月16日
「フツーで行こう」濱田マリ
「オンナトモダチ」加藤いづみ
「Hey! Mr. Angryman」斉藤和義
「かわいいKISSをあげる」miyuki
「とってもゴメンネ」奥菜恵
「優しいトーン」市井由理
「帰れない二人」小笠原みゆき
「ガールフレンド」the pillows
#ナイポレ pic.twitter.com/E4S0y6HlBK
2019.03.10 Inter FM「Daisy Holiday!」より
↓岡田さんの補足解説は要checkです…
デイジーホリデーのプレイリストを更新しました。選曲や関連動画のほかに、今回は補足解説を少し書きましたので、お時間ある時にぜひチェックしてみて下さい。写真はエノケン双六とゴメンナサイと「唄の世の中」収録のCDです。https://t.co/aB1ovNAGtw #daisyholiday pic.twitter.com/R49VJROhx8
— 岡田崇 (@_okadatakashi) 2019年3月10日
H:こんばんは。細野晴臣です。いやいや、久しぶりですね。
O:ご無沙汰s…しております。噛んじゃった(笑)岡田崇です。
H:ちょっと待って…(くしゃみ)
O:ひさしぶり、すぎて…
H:ね。なんかあの、風邪もらっちゃったみたいだ。
O:あら…気をつけないと。
H:あの、[日本]アカデミー賞の円卓の辺りで咳してる人がいたんで、もらっちゃったみたい(笑)あのテーブルの人たちみんな、いま頃、喉痛いんじゃないかな。
O:大丈夫ですか?
H:ちょっと熱っぽいの。だから、お願いね。
O:…あれ?(笑)
H:ちょっと、目つぶってやるから…
O:(笑)
H:じゃあ、しゃべりながらやって。
O:(笑)
H:…えーと、なに?きょうは。
O:きょうはですね、最近手に入れたものを、まあ…相変わらずですが…かけていこうと思いますが。
H:でしょうね。
O:まず最初に、江利チエミさんをかけようと…心に決めてきました。
H:いいね。
O:1953年の録音なんですけど、江利さんってその前年、15歳で…
H:15歳でデビューしてるのね。早熟だね。
O:"テネシー・ワルツ"と"カモナ・マイハウス"。で、翌年、アメリカに招待されて。L.A.のほうで。ナイトクラブで歌ったりとか…したらしいんですけど。
H:あー…あんまりそういうニュース、無いよね。こっちには。
O:その中で、Capitolレコードのスタジオでレコーディングをしたという話があって。
H:それはすばらしい。
O:当時の新聞だと、「それがCaptolから出てチャートにも入った」…みたいな話になってるんですけど、Capitolから出たっていうことは無くて。Federalっていうレーベルから出てます。
H:あ、そうなんだ。
O:「Capitolから」っていうのは、「Capitolレコードで録音した」っていうのがちょっと…「[Capitolの]スタジオで」、っていうのとレコード会社とを混同してるんだと思うんですけど。
H:そうかそうか。
O:で、バッキングがチャック・ミラー・トリオ(Chuck Miller Trio)だという噂がありまして…
H:やった!大好きだな。"House Of Blue Lights"歌ってんだよね。
O:いいですよね、あのヴァージョン。
H:影響されてます。はい。
O:じゃあ、まずは江利チエミの"Pretty-Eyed Baby"を。
Pretty-Eyed Baby - CHIEMI ERI
H:いいねぇ。江利チエミとは思えないね(笑)なんか、いいよ。チャック・ミラーのピアノ、いいねぇ。
O:うーん、そうですね。
H:音が良い。
O:音良いですよね。当時の…この頃の江利さんの[他の]SP盤聴いても、こういう音は絶対出てないんで…
H:そうだろうね。あの頃の差はすごいよね。
O:んー。
H:いやー、いいな。これ、なんか…ユーナ・メイ・カーライル(Una Mae Carlisle)っていう人にそっくり。声がね。
O:おお…
H:初々しいっすよ。16歳?
O:16歳(笑)当時…2枚目なのかな、レコーディングしたのは。向こうで50回ぐらいテストをされて、ようやく録音出来たみたいなんですけど。
H:あ、そうなんだ。いや、いいですよ。このままやればよかったね(笑)
O:日本に帰ってきちゃいますからね、当然。
H:まあ、それで有名になったんですけどね。
O:(笑)
H:もう1曲聴きたいな。"ゴメンナサイ"やってるんでしょ?
O:そうなんです。そもそもはこの"Gomenasai"をやってるというので、探して買ったんですね。
H:SP盤しか出てない、と。
O:そうです。日本でも当時出なかったですし、今でも出てないと思います。
H:レアですね。
O:で、B面の"Gomenasai"が「エリチエミ&G.I.ジョー」という名義で…(笑)
H:G.I.ジョー、どうしたの?
O:まあ、進駐軍で流行った曲なんで…
H:あー、そうだそうだ…んー。
O:進駐軍の将校さんのベネディクト・メイヤーズ(Benedict Mayers)っていう人が作詞をして、レイモンド服部(Raimond Hattori)が書いた曲ですね。で、その人の勧めかなんかで、Disneyに売ったんですよ。この曲の権利を。
H:ホントに?
O:だからクレジットにDisneyの出版社が書いてあるという、ふしぎな…(笑)じゃあ、"Gomenasai"を。
H:はい。
Gomenasai (Gomen Nasai) - CHIEMI ERI And G.I.JOE
H:なるほどね…アメリカンですね(笑)いやー、歌ってる人は誰だかわかんない、G.I.ジョーっていう人(笑)
O:G.I.ジョー、誰でしょうね。
H:うまいよね、みんな。いや、すばらしい。江利チエミさん。
O:ね。16歳ですよ(笑)
H:あのね、この世代…年代ってすごいんだよね。雪村いづみさんもすごかった。
O:すごいですよね。
H:カヴァーをやると、アメリカのシンガーみたいだった(笑)
O:英語とかね…
H:英語、よかったんだよね。
O:進駐軍のキャンプを回って…12歳の頃から回ってたみたいですね、江利さんは。
H:ね。いやいや、だいぶ今とは違う時代ですけどね。
O:はい。
H:時代と言えばですね、3/6に…『HOCHONO HOUSE』が出まして。
O:わーい。
H:長く待ったんだよ…作ってから2カ月ぐらい待って、やっと出るんで(笑)
O:(笑)
H:まあ、その間落ち込む…
O:落ち込むんですか。
H:落ち込むんだよ。「もうダメだ!」。「ダメなもの作っちゃった!」とかね。
O:いやいや…すばらしいじゃないですか。
H:みんなの声を聞くと安心するんですけどね。よかった…
O:もう、みんな聴いた頃ですね。このラジオの[放送される]時は。
H:もう聴いてるんでしょうね。あの、この場を借りて…なんて言ったらいいのかわかんないけど(笑)そんなことはいいか(笑)
O:(笑)
H:慣れないことはやめて…しかも、明日(3/11)は震災の記念日…記念日っていうとヘンですけどね。震災の日だったんで。『HoSoNoVa』が出た頃を思い出しますよ。ちょうど、やっぱり、いま頃…
O:そうですね。ホントに僕、『HoSoNoVa』のジャケットの入稿をしてる最中、ビクターの方と電話してたところです…
H:揺れた時ね。すごいことやってたね(笑)
O:「とりあえずちょっと、電話切ってみますか?」って言ったらもう、どこともつながらなくなっちゃって(笑)
H:あー…よく、まあ、入稿できたよね。
O:翌日入稿しましたけどね。
H:そうだよね。すごいよ。
O:で、印刷屋さんが不安になっちゃって、なんかもう、動いてないと…みたいな感じで。
H:あ、わかるわかる。
O:仕事をすごいしてましたよ。
H:わかるよ。なんかやってないと不安だよね。
O:んー。
H:まあ、大変な時期に出たんで…うん。思い出しますね。
H:さて、本題に戻りますとですね。
O:本題…?
H:本題っていうかなんというか…(笑)本題なのかな?これ…
O:(笑)
H:えー、日本のね。1950年代当時の人たちがいかに、アメリカの音楽のマニアックな部分に影響されてるか、っていうね。
O:そうですね。
H:予想以上ですよね。
O:予想以上ですね。
H:たとえば…レイモンド・スコット(Raymond Scott)ね。みんなよく聴いてたんだね。
O:レイモンド・スコットだと50年代というか、30年代末から40年代ですね。
H:そうだ、そうだ。
O:まあ、戦争が始まるともう…
H:途切れちゃうね。
O:途切れちゃうんですけど、その前はホントに…日本でもヒットしていたし、舞台で…吉本新喜劇だとか。松竹少女歌劇でもたしか、服部良一のアレンジで"18世紀のサロンにて(In An 18th Century Room)"とかやってた…"Toy Trumpet"だったっけな?
H:そうかそうか。かなり、ポピュラーだったっていうことだよね。
O:そうです。映画にも出てたんで、それで有名にもなっていたはずです。
O:はい。あの…1月の末ぐらいに、早稲田の演劇博物館のイベント…イベントというか…
H:そういうのがあったわけね。
O:はい、集まりがあって。その中で、栗原重一さんというですね…あまり知られていない方がいるんですけど。
H:うん。
O:エノケンさんの映画の舞台音楽のほとんどをやってた方…
H:重要人物だ。
O:重要人物がいるんですよ。で、その方の残した楽譜が早稲田で…去年、研究が始まって。
H:あ、そうなの。
O:それの途中経過発表みたいなシンポジウムが…
H:その方はいま…
O:もちろん亡くなってます。
H:そうですよね(笑)
O:1983年に亡くなってますね。1897年生まれですもん。
H:じゃあ、再発見されたわけですね。うわー…
O:で、その発表会があったんで…ちょっとおもしろそうだな、と思って何気なく遊びに行ったんですね。
H:においを感じて…
O:そうなんですよ(笑)で、行ったら、第2部が、当時のスコアを使って再演するという…セクステッド(6重奏)ぐらいの楽団がいて。
H:あ、そうなの?
O:で、その楽団のリーダーの人も知り合いだったので…
H:あ、若い人たち?
O:渡邊恭一くんっていう、サックスの…去年の漣くん(高田漣)のライヴでも出てたはずです。で、彼はボー・ハンクス(The Beau Hunks)のメンバーと接触したこともあったり、そういう人なんで…
H:あ、そうなんだ。
O:けっこう、おもしろいところにいる人で。彼がリーダーでその楽団を率いてやってるんですけど、その中で"18世紀のサロンにて"を再演したんですね。それがすばらしくって。他にも"ボレロ(Boléro)"だとか、いろいろやったんですけど。
H:演奏だけをやったってこと?
O:演奏だけです。あの、"ボレロ"はエノケンの映画をバックに、実演で…BGM付ける感じでやったんですけど。
H:なるほど。
O:で、その時の話を聞いたら、その栗原さんの楽譜の中に"Powerhouse"もあった、と。
H:名曲…
O:"Twilight In Turkey"もあった…
H:あー、もう、しょうちゅうかけてるね。
O:おそらく"Toy Trumpet"もあるだろう、と。
H:そう。
O:だからおそらく、エノケンの舞台でやってたわけですよね。"Powerhouse"とかを。
H:…信じらんないね。
O:(笑)
H:見たかったね。
O:見たかったですね…そういう事実が。
H:まあ、それで、エノケンさんが歌ってるのがあるんでしょ?
O:そうなんですよ。その栗原さんが音楽を担当しているエノケンの映画をYouTubeとかでバーッと見てって。
H:うん。
O:そしたらですね…
H:見つけたんだね。
O:『孫悟空』という、1940年の映画の中で…
H:有名な映画だよね、うん。
O:「砂漠よいとこ」というタイトルが一応ついてるんですけど。それを…(笑)"Twilight In Turkey"をエノケンと岸井明が歌っている、というのを見つけましたんで…
H:すごいめずらしいな。
O:それをちょっと…
H:はい。
砂漠よいとこ - 榎本健一・岸井明
H:あれ、これは…"Twilight In Turkey"のメロディは出てこないじゃん(笑)
O:Bメロですよ。Bメロをずっと繰り返してるんですよ。
H:ああ、あそこのね、アラブっぽいとこね。なんだか…ふざけてるね(笑)
O:(笑)砂漠の中で、美女がたくさんいるオアシスを見つけて。
H:なるほどね。
O:お酒を飲んで、歌い踊るシーンですね。
H:榎本健一は僕が小学校の時はまだ人気があったよ。「エノモトケンイチです!」って真似してた、みんな(笑)
O:(笑)
H:これ鳳啓助かな?「ええ、オオトリケイスケでございますけど」。
O:ほぼおんなじ(笑)
H:おんなじだね(笑)
H:さて、この続きの流れでいっていいのかな?
O:いいですよ、はい。
H:こないだ週刊誌見てたら、往年のスターの付き人をやってた人たちの証言、っていう特集があって。まあ、いろんな人が出てくるんだけど、中に森繁さん(森繁久彌)も出てくる。
O:はいはい。
H:で、森繁さんの付き人やってたのがなべおさみさんだ。で、付き人から離れるときに、「お前にはぜんぶ種を植えつけておいた。それが実るのは自分がいなくなってからだろう」って。いま咲いてるのかもね(笑)
O:(笑)
H:いや、いろんなスターの…昔の人たちはおもしろい。んー。杉村春子さんとかね。なんか、みんな背筋がピーンとしてるからね。で、その森繁さんの歌が聴けるんですよね。
O:そうなんです。シンポジウムのときに…当時の日本映画って、著作権に関することがすごい甘かったんで…
H:まあ、そうだろうな。
O:この『孫悟空』の中でも"星に願いを"とかね、使っちゃってるんですよ。メロディをやんわり変えて。だからちょっと、なかなか…今リリースするのは難しいような話があって。で、森繁さんの…1950年のものでですね、『腰抜け二刀流』という…
H:…気になるタイトル(笑)『腰抜け二挺拳銃(The Paleface)』だよね。
O:まんま、隠す気なし、っていう感じですよね。
H:ボブ・ホープ(Bob Hope)、んー。へぇ、それは…ひょっとすると"ボタンとリボン(Buttons and Bows)"なわけ?
O:そう…だと思いますよ?
H:わかんない?
O:いや、聴いてわかると思います(笑)
H:歌ってるだけね?日本語でね。
O:歌ってます。
H:それは聴きたいですよ。
O:じゃあ、聴いてみましょう。
H:森繁久彌さん。
H:これは"ボタンとリボン"に…似てるけど違う曲だね(笑)
O:似た感じですよね(笑)
H:ちょっと変えてるんだね(笑)やっぱり遠慮してるんだ。
O:50年になると、ちょっとそういう意識が…
H:芽生えてくると…ゆるい時代ですよね。ええ。今、大変ですよ。
O:んー…
O:そうですね。
H:さて…きょうはなんか、ヘンな世界にさまよいましたけど。
O:(笑)
H:まだあるの?こういうの。
O:いや、さすがに(笑)
H:じゃあ…なんか、きょうの締めを。なにがいいですか?
O:締めですか…じゃあ、もう、日本語のでいいですかね。岸井明の"唄の世の中"って1936年の録音なんですけど。
H:うん。
O:あの、"Music Goes Round and Round"。
H:あー!
O:…を、日本語でやってるんですけど。これもなかなか、良い、ですよ。
H:よかった。
O:ぜんぶ同じなんですけど…鈴木静一さんという方が、さっきの「悟空」も…編曲がそうなのかな。
H:凝ってたよね。うん。
O:で、いまの森繁さんは、作曲が鈴木静一さん。
H:なるほど…
O:で、今回の"唄の世の中"は編曲が鈴木静一さんです。
H:なるほど。では、それを最後にですね…また来週!
唄の世の中 - 岸井明
★2019.03.08 α-STATION FM KYOTO「NICE POP RADIO」より
情報量…thanks…
祝!#フジロック 出演決定🙌
— α-STATION FM KYOTO (@fmkyoto) 2019年3月8日
金曜20時からはNICE POP RADIO!
今週は澤部氏心の師匠!
知る人ぞ知るライターの
臼山田オーケストラさんと
番組恒例の選曲対決!
濃厚な解説と共にお楽しみください◎#ナイポレ#スカート#澤部渡#FM京都#男性です pic.twitter.com/s7IBFETd2s
71回目の放送でございます。というわけでね、今回はいきなりトークからスタートしましたけれども。今週はゲストに、番組でも時々名前を出しています、臼山田洋オーケストラでおなじみの…音楽ライターの臼杵さん(臼杵成晃)にお越し頂いております。
臼杵:はい、はい。よろしくお願いしまーす。
澤部:(笑)どうもどうもどうも…よろしくお願いします。僕の…多感な十代の頃の師匠が3人いまして。まあ、表の師匠が金剛地武志だとして、裏の師匠がパラダイス・ガラージ、豊田道倫だとしたら、心の師匠として臼杵さんがいらっしゃいます(笑)
臼杵:心の中にだけ実在する人間…はい。
澤部:まさかの、実体がなかった…(笑)
臼杵:そうですね(笑)
澤部:そんな臼杵さん…なんだかんだと、ずっと、僕が中学生の頃からDJを拝見していて。
臼杵:はい。
澤部:で、まあ…並々ならぬ影響を受けたという感じでございます(笑)
臼杵:はい(笑)
澤部:で、台本に「臼山田洋オーケストラとは?」と書いてあるんですけど…(笑)
臼杵:「とは?」って書いてありますけどね、俺もたぶん、自分で…いま初めて発音するかもしれないぐらいの…「臼山田洋オーケストラ」って、自分で発音する前提で作ってない名前なんで、アレなんですけれども…
澤部:そうっすよね(笑)
臼杵:単に、イベントとかやる時に名前をテキストで入れなきゃいけないから、まあ…なんでもよかったんですよ(笑)
澤部:はいはいはい…
臼杵:で、まあ、「オーケストラ」…イージーリスニングみたいな曲をいっぱいかけることが多かったんで、まあいい名前かな、と思って(笑)オーケストラ付けてみた、っていう、それだけの話ですね。
澤部:なるほどなるほど、そういうことだったんですね。臼杵さんは本業がライターということもあって、出会った頃は「COOKIE SCENE」という雑誌で書いていたりされてましたけど。
臼杵:そうですね。
澤部:今回は『遠い春』というシングルの時にインタビューでもお世話になりました。その節はどうも…
臼杵:その節は…非常にやりにくいんですよね(笑)
澤部:ね、そうそう(笑)
臼杵:ホントにだから…中学の頃の姿を知ってるから…
澤部:(笑)
臼杵:「こんなに大きくなりました」っていう感じでね…非常にやりにくいです。
澤部:初めて…初めてでしたね、後で調べたら。あの取材が。
臼杵:そうそう。ま、なんか立ち会って、様子見て、みたいのはあったけど…やりづらいんですよ。
澤部:(笑)そう、いや、初めてだったんですごいうれしかったっす。
臼杵:いやいや…
澤部:というわけで今週のNICE POP RADIOは番組恒例企画、僕と臼杵さんが聴きたい音楽を交互に選曲するという音楽談義…ですかね?
臼杵:はい。
澤部:で、いまのところ我々、お互いの選曲は知らない状態ということにはなっております。それぞれがお互いに聴かせたい曲を4曲ずつ持ってきております。どんな1時間になるのか、みなさんといっしょに楽しんでいければ、と思っております。
臼杵:はい。
澤部:どんな感じで選んできました?
臼杵:えっとね…とりあえず、いつもDJの時もそうだけど、1時間の出番で8時間ぐらいはやれる、ぐらいの分量を持ってくるわけですよ。
澤部:そうですね(笑)
臼杵:きょうもお構いなしに持ってきちゃって、ついさっき決めた、っていう感じなんで…ちょっとわかんないすね、どうなるもんか。
澤部:ちなみに僕はけっこう、臼杵さんから教えてもらった、ぐらいのものも混ざったりしてます。
臼杵:はい。
澤部:というわけでお互い選んできましたのでお楽しみに~
番組ではみなさんからのメッセージをお待ちしております。α-STATIONのホームページにある"メッセージ"から、番組「NICE POP RADIO」をセレクトしてお送りください。FAXは京都075-344-8940です。Twitterアカウントをお持ちの方はハッシュタグ、カタカナで「#ナイポレ」を付けてつぶやいてください。
また、この番組はパソコンやスマートフォンでラジオが聴けるIPサイマルラジオRadikoでもお聴き頂けます。スマートフォンからはGoogle PlayやAppStoreからRadikoアプリをダウンロードしてお楽しみください。有料サービスのRadikoプレミアムを利用しますと全国どこでもα-STATIONをお楽しみ頂けます。詳しくはα-STATIONのホームページ、またはRadikoのホームページをご覧ください。
そして、京都のレコードショップJET SET KYOTOのお店にNICE POP RADIOのコーナーも作って頂いています。番組で紹介したレコードも展開されていますので、ぜひチェックしてみてください。
それでは早速1曲目、をお送りしたいんですけども…こちらも恒例、先攻後攻をジャンケンで決めようと思います。
臼杵:はいはい。
澤部:というわけで、早速…最初はグー、ジャンケンポイ。
(SE:勝者、澤部渡!)
澤部:はい。僕は…後攻でいいでしょうか?
臼杵:おお…じゃあ先攻ですね(笑)これはラップバトル的に…先攻後攻あるのかしら。
澤部:どっちが有利か、ちょっとまだわからないんですけども…(笑)
臼杵:わかんないけど、じゃあ先攻でいきます。
澤部:はい。
臼杵:とりあえず、1曲目に関してはですね、澤部くんが中学生、高校生の頃に通っていたイベントが…yes,mama ok?の金剛地さんといっしょにやっていたイベントがありまして。青い部屋で。そのときに…金剛地さんともうひとり、シトロバル(CITROBAL)というシンガーが…この番組でもかけたことありますよね。
澤部:そうですね、ありますあります!
臼杵:シトロバルという女性シンガーがいまして…おそろしく才能のあるシンガーなんですが、いまは素潜りのほうの才能を発揮していて…
澤部:そうそう(笑)
臼杵:音楽活動をほとんどやってないんですけれども…
澤部:ね、もったいないっすよね。
臼杵:そう…ホント、この人がいたら、いまシティ・ポップみたいなこと言ってる人たち、みんな田舎に帰んなきゃいけないぐらい、本当にすばらしい才能の持ち主なんで…もったいないと思うんですけども。
澤部:(笑)そうですね。
臼杵:まあ、そういう、ちょっと関係性的なことを考えて選んだやつですね。シトロバルというアーティストの1stアルバムの1曲目の曲を、かけて頂きたいなと思います。シトロバルで"Youth (警戒線突破)"。
[CM]
澤部:京都α-STATIONからお送りしておりますNICE POP RADIO。お相手はスカートの澤部渡と…
臼杵:はい、臼山田洋オーケストラ…(笑)
澤部:(笑)
臼杵:はい(笑)
澤部:すごいっすね(笑)まさか、一日に何度も…
臼杵:こんなに言う日が来るとは思いませんでしたけど。
澤部:まあ、というわけで、臼杵さんと2人でお送りしております。今週のナイポレは我々が持ってきた音楽を交互にお届けしながら、いろんな話をしていきたいと思っております。CMの前にお送りしましたのは…シトロバルで"Youth"ですよね。
臼杵:はい。
澤部:『MY CAUTION LINE』というね、1stの1曲目でございました。
臼杵:すばらしいですね。やっぱりいいですね。で、ベースは誰が聴いても沖井礼二(笑)
澤部:ね、そうそうそう…(笑)ギターはジェットラグ(JET LAG)の人でしたね。そうだそうだ…いや、すごい。なんていうか、いい曲がちょっとビザールな音像で残るっていうのはやっぱ最高ですよね。
臼杵:そうですね。
澤部:シュガーベイブ(SUGAR BABE)とかもそうですけど、それを改めて実感しますね…最高でした。
臼杵:これはどんどん、次々いく感じなんですかね?
澤部:次いきます?
臼杵:後攻の人…
澤部:じゃあ次いきますか。僕、どうしようかな、と思って…レコードいろいろ買って…メル・トーメ(Mel Torme)すごい好きで。
臼杵:はいはいはい。
澤部:で、きょう臼杵さん来るからこのアルバムからちょっと1曲かけられたら、と思って。"The Music Goes Round and Round"という曲を。まあ、まずは1曲聴いてもらいましょうか。メル・トーメで"The Music Goes Round and Round"。
澤部:聴いてもらいましたのはメル・トーメで"The Music Goes Round and Round"という曲でございました。
臼杵:最高。
澤部:ホントに最高。
臼杵:これまさに…澤部くんが中学生の時に通ってた青い部屋のイベントで僕、かけてたやつですね。で、レコードをかけてて、「これなんですか?」ってブースのとこに訊きに来る人たちっていうのがいるわけですよ。まあ、その内の一人が澤部くんで。
澤部:(笑)
臼杵:ちょいちょい、この辺おもしろいんだよな、と思って自分で思ってかけてるやつに必ず食いついてくる太った青年がいるっていう(笑)
澤部:そうそうそう(笑)なんかね、やっぱこう、なんだろう…聴いたことがない音楽が次々かかるんですよ。で、それがホントに楽しくて…多感な時期ですから、14、15、16歳の頃だったんで。とにかく毎回楽しみでしたね。で、けっこうこの番組でも、臼杵さんに教えてもらった曲ってめちゃくちゃかけてて。
臼杵:はいはい。
澤部:"カリキュラマシーンのテーマ"とかもかけましたし…そう、なんかいろいろね、あるんですよ。まあ、これもその内の一つなんですけど。当時、これがメル・トーメだってことを聞いて、すっかり忘れたまま大人になってるんですよ。で、ある時レコ屋で…もともとメル・トーメは好きだったんで…
臼杵:そうっすよね、集めてた。
澤部:で、ばったり出会って、戻ってきた、みたいな…(笑)
臼杵:いわゆる、他の普通のジャズアルバムとはちょっと違うノリの…
澤部:ちょっとね、ロック…とまではいかないんだけれども、なんかそういうノリがあって。
臼杵:そうっすね。
澤部:やっぱり、60年代末期ってそういう人多いじゃないですか。50年代がんばったけど、ビートルズの人たちに…あの辺の波にさらわれちゃって…そうならざるを得なかった、みたいな。その辺の音像、すっごい好きなんですよ。
臼杵:うんうん、わかります。
澤部:たぶん、その…その頃の音像が好きだ、っつうのも僕の15歳前後で培われたものなんだろうな、と思っております(笑)
臼杵:なるほど。
澤部:はい、じゃあ次、どうでしょう。
臼杵:じゃあ次、先攻2番目ですね。えーと…僕、レコード買うけど、なんせ知識で集めてるわけではない…よくわかんねぇレコードを買う、っていう姿勢でいるので、読めないレコードが多いんですよ(笑)
澤部:はい。
臼杵:で、これも…正式な読み方がよくわからないです(笑)えーとね、ボビー・ばい…Byrneと書いてなんて読むのかわからないですけど…(笑)
澤部:なんだろう…
臼杵:なんか、まあ、イージーリスニングのレコードなんですけど…いろんな、当時人気のある曲をイージーリスニングでカヴァーしてるというやつで。その中の1曲をかけて頂きましょう。えーと、ボビー・べ…(笑)で、"Barbarella"。
澤部:はい…
臼杵:ってことで…これデヴィッド・バーン(David Byrne)のByrneじゃないか、というお話があり、ボビー・バーン(Bobby Byrne)なんではないか、という…いつも「金色のやつ」くらいにしか思ってないので(笑)
澤部:そうですね(笑)
臼杵:「金色のやつ」の"Barbarella"と思ってたので…ボビー・バーンと読むっぽいですね、どうやら。
澤部:の、"Barbarella"を。いや、最高ですよ。
臼杵:まあ、イージーリスニングも1968、69年ぐらいになるとビートルズ以降の…ドラムが派手になるイージーリスニングっていうのがどっと増えてきて、ぜんぜん「イージー」じゃない(笑)
澤部:そうですね。
臼杵:そういうのがイージーリスニングで出てくるのがおもしろくて、その辺のレコードをいっぱい買っている、という感じで…あとは、「バカラック(Burt Bacharach)のこの曲があったら買う」とか。そういう…曲で買えばだいたい合ってる。「"Up Up And Away"が入ってるとだいたいこういうレコードだろう」、みたいな。あたりをつけて買う、という中の一つですね。
澤部:なるほどね…そう、僕たぶん、これとかも高校生の時とかに聴いてて、アナログシンセってこんなに良いんだ、って思った憶えがあります。そこでなんか、また一つ性癖が…(笑)できた気がしますね。これ、探して買いましたもん、やっぱり。最高な1枚ですよね。
金色のやつ #ナイポレ pic.twitter.com/bazBDUYYLe
— うすやま (@usuqui) 2019年3月8日
臼杵:そして、後攻…
澤部:後攻、そうですね…僕、これは絶対、当時聴いてぶち上がって買ったやつなんですけど。ゴールデン・ハーフの"マンボ・バカン"(笑)
臼杵:キラーチューンですね(笑)
澤部:もう、最っ高で…いま聴いてもテンション上がりますね。まあちょっと1回聴いてもらいましょうか。ゴールデン・ハーフで"マンボ・バカン"。
臼杵:(笑)まあね…和モノみたいなものが90年代流行ってて。高いレコードがいっぱいある中で、この辺なんて100円とか。高くても500円とかそのぐらいのやつで。まあ、ね…ゴキゲンな…(笑)
澤部:そうそうそうそう。ゴキゲンだし、もうホンっトに…終始なに言ってるかわからないし…とにかく陽気だってことだけが伝わってくる、っていうのがね、やっぱりいい…最高。
臼杵:そうね。うんうん。
澤部:でもなんか、こう、マンボマンボマンボマンボ…みたいな上がり方もするし。かなりね、この曲大好きなんです。
臼杵:はい、最高でした(笑)
澤部:(笑)というわけで、今週のナイポレはこのまま引き続き、臼山田洋オーケストラこと臼杵さんとお送りしていきます。ここでいったんコマーシャル。
[CM]
澤部:京都α-STATIONからスカートの澤部渡がお送りしておりますNICE POP RADIO。引き続き、今夜のゲストは臼山田洋オーケストラさんでございます。
臼杵:はい、よろしくお願いします。
澤部:はい。今週は僕たち2人の選曲でお送りしておりますが。ま、ここで小休止を挟みまして…臼杵さんがいったいなんなのか(笑)どういうことをやられているのか、というのを簡単にご紹介しようかと思っております。
臼杵:はい。
澤部:さっきも…時々話に出てる、イベントをちょいちょいやってらして。で、僕が中高の時は「セミフォーマル・ステークス」というイベントを、渋谷にあった青い部屋でやってらして。
臼杵:はい。
澤部:で、それ以降も「涙」っていうイベントだったり、「午前3時のあなた」っていうイベントだったり。あとは「MUSIC IS ENOUGH」、かな?というイベントを手がけてらっしゃいます。
臼杵:そうですね。まあ、なんか、夜中に…僕らは別にクラブで踊りたいわけじゃないから…良い音で良い曲聴きたいだけなんで、「普通にクラブで泣いていいんじゃない?」っていう感じのしみったれた曲をかけられるイベントっていうのを、自分でやればやれるんだ、と思って。自分がそこにいたいからやり始めた、みたいのが…2000年代、2003、04、05年あたりとか。それぐらいですか。あの辺の時期にやってて。
澤部:そうですね…星野源さんも輩出した名門イベントですからね(笑)
臼杵:こないだmixi掘り起こしてみたら、当時の写真出てきてビックリしましたね。星野くん…(笑)
澤部:モナレコードでギター抱えて…(笑)
臼杵:そうそうそう…
澤部:「まさか星野さんが歌うとは!」みたいな感じの時期でしたよね、あの頃は。そう、臼杵さんは音楽ライターとしてもいろいろな仕事があるんですけど、やっぱり表立って言うべきなのはSAKEROCKの『YUTA』の再発のライナーを書かれてる…
臼杵:そうっすね…なんか、たまたまモナ、じゃない…青い部屋でいろいろやってた時に、戸川さん(戸川昌子)…「越路吹雪ナイト」っていうのがあって、それにSAKEROCKが戸川さんのバックで出てて…
[*江戸川乱歩賞作家でありシャンソン歌手であり、青い部屋のオーナー]
澤部:はー…
臼杵:それは別の…ソワレ(Soirée)さんというシャンソンシンガーの…あの方のアレンジをやったんですよ。宅録で。
澤部:えー!すげぇ…
臼杵:そう。それでたまたまいて…で、観てたらSAKEROCKの、戸川さんのバックをやってた演奏がすばらしくて。「なんか音源ない?」ってその場で訊いて(笑)で、それがいちばん最初に作ったCD-Rだったんですよね。『YUTA』以前の。そういうので、気が合って…で、たまたま近所に住んでたんで…みたいな。そんなことがありましたね。
澤部:すごい…そう。だから、臼杵さん自身も前に「「バカに見つかる」の対義語は「松永良平に見つかる」」って言ってらっしゃいましたけど。
臼杵:(笑)
澤部:臼杵さんもわりとそういうところがあるというか…やっぱり、アンテナの角度が他の人とは違うんだろうなぁ、と思って…見てます(笑)
臼杵:そ、そうですか…(笑)
「バカに見つかる」の真裏が「松永良平に見つかる」だと思っています
— うすやま (@usuqui) 2012年9月18日
澤部:じゃあ…それでは、選曲のほうに戻りましょうか。次は臼杵さんの番ですね。
臼杵:僕ですね。えーと、またちょっと読めないタイプのやつなんですけど(笑)ここ最近、ここ1,2年ぐらい自分の中でブームになってた…僕らの中では「クリュッグおじさん」と呼んでるんですけど。
澤部:そうですね。
臼杵:これ、マンフレッド・クリューグと読むのかクリュッグと読むのか…ドイツ人のおじさんですね。まあ、レコードマニアみたいな人たちの中でも人気のあるレコードだったみたいなんですけど、僕はよく知らなくて。
澤部:うん、僕も臼杵さんから知って、こんなに良いんだって思いましたね。
臼杵:1曲だけコンピに入ってたんですよね。当時、90年代に出たドイツ人の音楽を集めたコンピみたいなやつ。それがすばらしく良くって。で、その曲が入っているアルバムだった、というので聴いてみたら全曲最高だったということで…
澤部:はー…
臼杵:で、その人の…まあ、そのコンピにも入ってた曲を、キャッチーなので選びました。えーとですね…これは、曲名がドイツ語なので読み方わかんないです(笑)マンフレッド・クリュッグの…なんだかちょっとわからないです。
澤部:(笑)調べても出てこなそうですもんね~
臼杵:まあ、えーと…マンフレッド・クリュッグさんの曲を聴いてください(笑)
臼杵:これ、すばらしい音像…
澤部:ねー。
臼杵:これあの、1976年ぐらいだと思うんですけど、日本だと"パタパタママ"とか"ホネホネロック"とか、あの辺の時期の音とすごいシンクロしてる…
澤部:あー!そうですね。
臼杵:非常に近い音。
澤部:最高。マジで良い…
臼杵:最高なんですよ。これ、ただ、いっしょにDJとかもやってる音楽家の吉田哲人さんがドイツでかけたら、このおじさん…向こうでは有名なタレントさんらしいんだけど、歌詞はものすごい…えげつないぐらいエロいことを歌ってるらしいっていう…(笑)この人のレコードは。
澤部:へー!そうなんだ…
臼杵:ドイツ人が聴くと笑っちゃうレコードらしいです。
澤部:そういう時、やっぱ、こう…言語の壁があってよかったな、ってちょっと思いますよね(笑)
臼杵:ちょっと、かけちゃいけないぐらいのことをよく歌ってるおじさんらしいです。
澤部:へー!すげぇな…こんな、めちゃくちゃ良いのにね(笑)
臼杵:はい、という感じでした。
クリュッグおじさん #ナイポレ pic.twitter.com/yTNXKaUrda
— うすやま (@usuqui) 2019年3月8日
澤部:じゃあ、次わたくしなんですけど…
臼杵:はい。
澤部:ちょっと1曲…まあ、変化球、でもないんですけど。僕、何年か前にすごいCHAGE and ASKAにハマっちゃって。
臼杵:はいはい。
澤部:で、本格的にハマるきっかけになった1曲っつうのがあるんで、それを聴いてほしいっす。2007年に出た、チャゲアス名義では最後のアルバムなんですけど、今のところは。それの1曲目の"パパラッチはどっち"って曲を。
臼杵:これはすぐに買います。
澤部:(笑)
臼杵:完全にソフトロックというか…ビートルズというか、ニルソン(Harry Nilsson)というか…すばらしいですね。
澤部:ね。めちゃくちゃ良い…ただアルバム全部がこの音像っていうわけじゃないんですけど、ちょっとこの曲は異常ですね…
臼杵:異常に良いですね。これはくやしい(笑)
澤部:(笑)いやー、うれしいなぁ。よかった…キンモクセイのプロデュースとかもやってた澤近さん(澤近泰輔)っていう人がアレンジをやってて。まあでも、[チャゲアスが]いちばん売れてる頃のアレンジとかもこの人やってるんですけど、なんか、急にこっちに振るんですよ。それがめちゃくちゃおもしろくって。
臼杵:こういうのを見つけた時の感動がたまらない(笑)
澤部:そうそうそう(笑)「こんなところにいたのか!」みたいなね。
臼杵:そうね。んー。
澤部:なんかやっぱり、この瞬間のために音楽聴いてる、みたいな感じありますよね。
臼杵:なるほど…
澤部:じゃあ次いきましょうか。
臼杵:はいはいはい。これがまあ、対決的には最後な感じですか?
澤部:そうですね。
臼杵:これも、まあ、せっかく…「臼山田洋オーケストラ」なんで、イージーリスニングの中の一つを選ぼうかと思います。
澤部:はい。
臼杵:えーと…バカラックの曲って山ほど、イージーリスニングではカヴァーされてるんですけど、その中でも「この曲とこの曲が入ってたらとりあえず買う」みたいなのがあって。僕はその中でも"Close To You"が入ってる盤は必ず買う。
澤部:あー、はいはいはい。
臼杵:基本的にはバラードだから、バラードが多いんですけど、たまにぜんぜん違うアレンジになってるものとかあって。「ヘンなアレンジのバカラック」みたいのを探しだすと止まらなくなる、みたいのがあって。これもちょっとですね…スカイメーカーズという、グループなのかなんなのか、このレコードもよくわからないんですけれども。その中の…ごめんなさい、スカイマスターズ(The Skymasters)ですね。スカイマスターズという…これはバンドなんでしょうか。よくわかりません(笑)その中の"Close To You"を最後に…
澤部:すげぇ…めちゃくちゃいいですね、これ。
澤部:すご…え、なんでしょうね、これ。最初はわりとドスの効いた感じじゃないすか。そこからまさか、あんなワルツの軽やかな感じになるとは。えー、めちゃくちゃ良い…
臼杵:まあ、単純に"Close To You"が好きなので、はずれてもうれしい…なんでもいいから聴きたい、みたいな。
澤部:すごいっすね…え、これ、ある程度値段のするものだったりするんですか?
臼杵:いや、そんなに高いもの買わないので、これは…ボロボロだし、いくらだったんだろう。まあ、1,000円ぐらいのやつですよ。
#ナイポレ pic.twitter.com/f2AWWQVVde
— うすやま (@usuqui) 2019年3月8日
澤部:すげぇ…めちゃくちゃ良かったっすね。
臼杵:はい、という感じでした。じゃあ、最後…
澤部:そうっすね。ぼく、最後、ホントは…うーん、どうしようと思ったんすけど、臼杵さんが当時DJでサディスティック・ミカ・バンドかけてて。
臼杵:はいはい。
澤部:それもけっこう、自分の中ではデカかったんですよ。で、その時聴いた"塀までひとっとび"は、もうかけちゃったんで…(笑)
臼杵:はいはいはいはい。
澤部:ちょっときょうは"どんたく"を聴いてもらおうかな、と…
臼杵:おー、はいはいはい。
澤部:こっちもすっごい好きなんで…はい、じゃあ聴いてもらいましょう。サディスティック・ミカ・バンドで"どんたく"という曲です。
臼杵:はい、ありがとうございます。
澤部:いや、めちゃくちゃ楽しかったっす。やっぱりなんていうか、こう…音楽を聴くのは楽しいな、っつうので…(笑)
臼杵:(笑)いや、ホントにちょっとね、さっきのチャゲアスがもう…今すぐレコ屋に行きたいぐらいの衝撃を受けているので…
澤部:(笑)そう、けっこういいんすよ。2000年以降のチャゲアス、わりとああいうコテコテの音じゃ無くなってくんですよ。それがね、良いっすよ。
臼杵:いやー、あれはちょっとそわそわしますね。
澤部:(笑)うわー、やったー。めっちゃうれしい。ありがとうございます。ま、というわけで臼杵さん、来週もね、来て頂いて、いろいろお話を…
臼杵:はい。
澤部:またこういう感じで、音楽聴きながら、という感じでやらしてもらいます。
じゃあ、スカートからいくつかお知らせでございます。ニューシングル『君がいるなら』、アナログ『20/20』好評発売中でございます。アルバム『CALL』以降の作品のサブスク配信も始まっておりますので、そちらもよろしくお願いします。
ライヴがいくつか。3/21(木・祝)、神戸の蘇州園で開催のイベント「御影ロマンス 2019」に出演。3/22(金)は沖縄那覇Outputでアナログフィッシュの20周年のイベントに出演します。3/31(日)は大阪味園ユニバースで開催のイベント「CHOICE VOl.18」にバンドで出演します。よろしくお願いします。
そして、7/26・27・28と開催されるFUJI ROCK FESTIVALにですね、スカート、出演することが決まりました。
臼杵:なんとまあ。
澤部:ね。なんとまあですよね(笑)
臼杵:うん。
澤部:うれしいっす。ぜひ遊びに来てください。詳しくはスカートのWebサイトをチェックしてください。
NICE POP RADIOではメッセージをお待ちしております。α-STATIONのホームページにある"メッセージ"から番組「NICE POP RADIO」をセレクトしてお送りください。FAXは京都075-344-8940です。Twitterアカウントをお持ちの方はハッシュタグ、カタカナで「#ナイポレ」を付けてつぶやいてください。番組の感想やわたくしへのメッセージ、選曲テーマやカヴァーのリクエストなどもお待ちしております。
えー、そして、先ほど言いましたけれども来週も臼杵さんに来てもらいまして…
臼杵:はい。
澤部:「渋谷系の文脈以外の人が作った、90年代の渋谷系っぽい音楽」を、特集で聴いていく、と…(笑)
臼杵:そうっすね。まあ、これがやりたくて来たようなもんなんで(笑)
澤部:うれしいっすね…さっき、いろいろ選盤してるとこ見てたんすけど、もういまから楽しみでしょうがないっす(笑)
臼杵:(笑)
澤部:まあ、そういう…音楽を聴きながら話しつつ、みたいにやれたらと思いますんで来週もよろしくお願いします。
臼杵:お願いします。
澤部:えー、ということで今週最後はですね、臼杵さんにスカートの曲を選んでもらいました。どの曲になるんでしょうか。ちょっと、恥ずかしいんですけれども…(笑)
臼杵:(笑)えーと、一応説明をした方がいいですかね。まあ、澤部青年がイベントに来てたことがあって、その後、「スカート」として動き出す前の学生時代にmixiの様子を見てて、こじらせちゃってんなー、と思って。
澤部:そうですねー…
臼杵:コイツはもうダメだ、と思って見てたんですよ(笑)で、見てる中で…宅録でやったやつをたまに上げたりしてるのをたまたま聴いたら、「あれ?才能ある?」ってちょっとビックリした曲があって(笑)
澤部:(笑)
臼杵:それまで、だから俺、どっちかって言うと「もう、この子はいいや」って思ってたぐらい、こじれまくっちゃってたから…そう思ってたんだけど、ビックリして。これすごい良いな、ってレスを返した憶えがある…そんな曲を選びました。
澤部:ありがとうございます…
臼杵:"百万年のピクニック"。
澤部:あー、うれしい…NICE POP RADIO、この時間のお相手はスカートの澤部渡と…
臼杵:臼山田洋オーケストラ…(笑)
澤部:の、2人でお送りしました。また来週~
☆2019.03.05 ニッポン放送「星野源のオールナイトニッポン」より(抜粋)
細野さん出演部分(00:13:20~01:20:25)より抜粋…怒られたら消します………怒らないで………
今夜の #星野源ANN は、ゲストに細野晴臣さんをお迎えし、本日発売の新作『HOCHONO HOUSE』について、貴重なお話しをたっぷりお聞きしました。
— 星野源 official (@gen_senden) 2019年3月5日
そして、ドームツアー札幌公演と東京公演の皆様からの沢山の感想ありがとうございました!また来週!
↓今夜の放送はこちらhttps://t.co/B4XYXY7nZG pic.twitter.com/6L8TCbGyPt
・・・
星野:さあ、星野源のオールナイトニッポンをお送りしております。それではここで、スペシャルゲストをご紹介しましょう。細野晴臣さんです!
細野:はい、こんにちは。
星野:こんにちは、よろしくお願いします~すみません、お疲れのところを…いろいろとね、ライヴもあると思いますし。
細野:いやいやいや、大丈夫です。
星野:ちょうど、日が明けて…放送される頃にはアルバムもリリースされているということですよね。
細野:出ちゃうね、そうなんだよ。持ってきましたよ。
星野:ありがとうございます、やったー!
細野:アナログとCDだよ。ホヤホヤ。
星野:うれしい~ホヤホヤですね。
細野:僕もきょう初めて見て。
星野:え、ホントですか(笑)
細野:うん、そうなのよ。
星野:そうですよね、ビクターってそういうところありますよね(笑)
細野:そうそう(笑)
星野:僕もそうなんですけど…当日に[初めて]見るみたいなのはけっこう僕もね、体験しております。
細野:誰か知らない人が持ってたりするんだけどね。先に。
星野:そうなんですよね。まあ、お客様優先というのはあるかもしれないんですけど。
細野:そうそう。うん。
星野:いやー、うれしいっす。アナログ…僕もアナログは注文したんですけど。
細野:本当?ありがとう。
星野:既にちょっと、プレミア価格になってしまっている感じが…たぶん、明日ぐらいには届いていると思います。
細野:そうらしいね。なんでそんなことになっちゃうのかね。
星野:しょうがないですよね、でも。あ、ちょっと開けていいですか?
細野:いいよ。
星野:すみません…僕も完成品は、いま初めて…
細野:僕も開けてない、見てないんだよね。
星野:あ、いいんですかそれ?(笑)
細野:いいよいいよ(笑)人さま優先で。
星野:ありがとうございます…そうなんですよね、本日、ソロデビューアルバムを新構築した『HOCHONO HOUSE』というアルバムが発売になりました。おめでとうございます!
細野:ホチョノハウス…(笑)ありがとうございます。
星野:えーとですね…ああ、素敵、素敵ですねぇ…ラジオで、素敵ですねとしか言えてないですけど…(笑)
細野:伝わんないよね(笑)
星野:とにかくすばらしい…あ、解説も書かれてるんですね、1曲1曲に。
細野:そうなんです。もう、毎回。
星野:すばらしい…ぜひみなさん、盤を買った方はお楽しみにしていてください。
細野:ぜひぜひ。はい。
星野:そんなわけで…このアルバムを改めて…僕はTVBros.という雑誌で毎月連載をさせて頂いておりますが…
細野:やってますよね。ついこないだも。うん。
[*2007年から続く細野x星野の連載対談「地平線の相談」。]
星野:そこでもお話して、ちょっと重複するところがあるかもしれませんが…
細野:もちろん、大丈夫です。
星野:お願いします。このアルバム、『HOCHONO HOUSE』。改めまして、本当にすばらしいアルバムでした。大好きです。
細野:ありがとう。そう言ってくれるのがいちばんうれしいよ。
星野:最高です。本当に最高…メールでも書かせて頂きましたけれども。
細野:あのね、感動的なメールでした。
星野:あ、そうですか。ありがとうございます。
細野:ちゃんと聴いてくれてるな、っていう。
星野:いや、もう…僕の周りも、いわゆるマツゲンさん(松元直樹)というね、ビクターの会社の…同じ担当の方とか。僕の周りのミュージシャンも含め、たいへん盛り上がっておりまして。すごい作品だ、と…
細野:ホント?あんまりそういう…知らなかったな。
星野:僕は…メールでも送らせて頂いたのは、ずっと細野さんは年代を遡って…昔の音楽のスタイルとか、細野さんが小さい頃に聴かれていたような音楽だったり。
細野:そうそう。最近ね、ずっとそういうことをやってた。
星野:ずっと遡っていかれている印象があって。その、古いものの中に新しいものとか、音楽の輝きみたいなものを見出しているような感じがしたんですけども。
細野:うん。そうなんです。
星野:このアルバムを聴いて…1stアルバムの『HOSONO HOUSE』っていうものを全曲、おひとりで録り直すという企画だったと思うんですけど。
細野:はい。
星野:昔のアルバムを再構築しているのに、しかも、ここのところ細野さんはずっと年代を遡っていかれてたのに、急に未来にポンッと出てしまったような。
細野:未来に(笑)
星野:タイムスリップして過去に戻っていったら、いつの間にか未来に出てた、みたいな。そんな感じがしてて。
細野:あー、それはなんとなくわかるわ。んー。自分でもね、曲順を[オリジナルと]正反対にしたりね。
星野:あ、そうなんですよね。曲順がいちばん後ろから遡っていく構成になっていて。
細野:だからね、[自分自身が]逆転しているんじゃないか、って。だんだん、赤ちゃんになっちゃう(笑)
星野:なるほど(笑)なんか、『2001年宇宙の旅(2001: A Space Odyssey)』をなんとなく彷彿とさせるような…
細野:なるほど、ちょっと言い過ぎだけどね(笑)
星野:でも、それぐらい、なんて言うんですかね…「今の音楽のトレンド」みたいなものもあるとは思うんですけど、それの先にポンッと、細野さんが出ていかれたような感じがして。
細野:だとしたら…いやー、うれしいですけどね。
星野:本当にすばらしいアルバムだったと思います。
細野:悩んで作ったんですけどね。んー。
星野:でも、なんだか…途中経過というか、僕は"CHOO CHOO ガタゴト"を…
細野:そう、聴かせて…1曲聴いてもらって。
星野:まだ完成前のを取材のときに…去年の夏頃だったような気がする、9月ぐらいでしたっけ。に、聴かせて頂いて。
細野:わりと早くできてたからね。んー。
星野:それですごい興奮して(笑)
細野:興奮してた、あの日。
星野:それの時点で、これはちょっとおもしろい、っていうか、すごいことになりそうだな、と思った予想をまた、さらに超えて…しかもずっとおひとりで作業されてるって聞いたので。
細野:あれから大変だったんだよ…
星野:大変だったんだろうな、と(笑)追い込まれたんだろうなぁ、と。
細野:うん、追い込まれた…はい。
星野:で、僕もアルバムを作っていたので…
細野:そうだよ、同時期にね。やってたよね。
星野:同時期に追い込んでいたけど、おひとりで作られたっていうのが尚更、大変だったのだろうなぁ、と。
細野:まあね。バンドでやろうかな、とも思ったけど、あまりにもラク過ぎるんで(笑)
星野:(笑)
細野:すぐできちゃうからね(笑)
星野:もう熟練というか、いつもいっしょにやられているバンドですもんね。なので、アプローチも違くて。それがまた、聴いたことのないサウンドになっていて。
細野:あー、そうですか…うれしいです。
星野:まずじゃあ1曲、聴かせて頂いてもよろしいでしょうか?
細野:ぜひぜひ。
星野:じゃあなんとなく…僕言っちゃっても大丈夫ですか?
細野:いいよ~
星野:やさしい(笑)
細野:(笑)
星野:それでは本日発売になりました細野晴臣さんのニューアルバム『HOCHONO HOUSE』から、細野晴臣さんで"住所不定無職低収入"。
星野:お送りしたのは細野晴臣さんで"住所不定無職低収入"でした。
細野:はい。
星野:いまちょっと2人で、新しい『HOCHONO HOUSE』のアナログ盤のにおいを嗅いでいました。
細野:ジャケットのね(笑)
星野:あんまりしないですね、におい。
細野:そう、最近の紙はにおわないんだね。昔、すごいにおったんだよ。いい香りがしたの。
星野:実はきょう、僕が20歳のときに中野の中古レコード屋さんで買った…
細野:あれ?
星野:オリジナルの『HOSONO HOUSE』のアナログ盤を持ってきましたよ。
細野:すごい。20歳のとき?
星野:だから…19年ぐらい前ですかね。これ、においするかな…
細野:(笑)
星野:古いので、するかもしれない…
細野:ちょっと嗅がせて頂きます…
星野:嗅いでます、細野さんが…(笑)
細野:あー、なんか、するね(笑)
星野:します?(笑)よかった。僕これ当時、めちゃくちゃバイトして買いました。もうプレミア価格だったんで。オリジナルのなんでちゃんとケースも…ベルウッドの紙の[スリーブ]。
細野:いいね。オリジナルだよ。
星野:で、冊子も…歌詞カードも小っちゃいやつで。擦り切れるほど聴かせて頂きました。
細野:そうですか。
星野:なので、僕もすごく大好きなアルバムなんですけど…で、さらにそれを再構築するということで、どんなものになるんだろう、と、すごくワクワクしてたんですけど。
細野:ね。自分でも、どんなものになるのかわかんないまま作ってましたよ。
星野:これ、キッカケってなんだったんですか?って、僕ちょっと知ってるんですけど(笑)
細野:知ってるでしょ?(笑)
星野:改めて説明をしてもらってもいいですか?
細野:最近、なんか、出回ってる話は、never young beachの安部くん(安部勇磨)…(笑)
星野:安部ちゃん。
細野:彼が、僕にそういうことを言った、と。ま、たしかにそういうことはあったんだよね。だから、彼の所為にしてるんだけど(笑)
星野:(笑)
細野:自分でも自覚してるみたいで…そういう写真が、撮られてたけどね。
星野:あー、なんか、持ち比べてる、みたいな。両方の作品を。
星野:安部ちゃん…僕がJ-WAVEでラジオをやったときに、僕の入り待ちをしてくれてて。
細野:あ、そう。
星野:彼も収録があったらしくて。で、行ったら、胸にCDを当てて待ってて(笑)
細野:わー、ファンだね(笑)
星野:で、「ファンです!すごい好きです!」って言ってくれて、そっから友達になったんですけど。
細野:それはいい出会いだね。
星野:そうなんです。それでごはんに行ったりとかして。で、細野さんの話とかして。[安部は]ホントに細野さんのことが大好きで。で、僕も大好きで…っていうところで盛り上がって。で、「そういうお話をしたんです」みたいなことを言ってました。
細野:なるほどね。たしかにそうなんだけど。でも実際は…実際はっていうとアレだけど。忘れてることもあって。
星野:うんうん。
細野:10年ぐらい前に…なんかの取材で僕、しゃべってるんだよね。そう言われたの。
星野:「やりませんか?」って言われたんですか?
細野:じゃなくて自分で、「作り直すかもしれない」って。
星野:へー!
細野:なにを…なんでそんなこと言ったのか知らないけど(笑)あと、このオリジナルのアルバム作った時のエンジニアの吉野金次さん。
星野:はい。
細野:吉野さんからも言われてるのを思い出したんだよ。「作ったらいいんじゃないですか」って…「作ってください」って言われたんだ。ずいぶん前ね。
星野:リメイクっていうことを?
細野:そう。だから、そういうことをぜんぶ忘れてて。いま憶えてるのは安部くんの…(笑)
星野:(笑)じゃあちょっと、無意識的に蓄積はされてたのかもしれないですね。トリガーになったのが安部ちゃんだったのかもしれないですね。
細野:[取材を受けた当時]なんでそう思ってのか、自分でもわからないんだけど…思い残すことがあったのかな。わかんないけど。
星野:なるほど。じゃあ、そんな『HOCHONO HOUSE』のお話と曲を、きょうはたくさんかけていきたいと思います。
細野:はい。ぜひぜひ。
星野:いったんCMにさせて頂きます。
(JX金属のCM)
星野:星野源のオールナイトニッポン、今夜のゲストは細野晴臣さんです。よろしくお願いします。
細野:はい、お邪魔してます。
星野:えー、明けてきょう発売、細野晴臣さんの最新アルバム『HOCHONO HOUSE』のお話を伺っていこうと思いますが…改めて、このアルバムはですね、1973年にリリースされたソロ・デビューアルバム『HOSONO HOUSE』を新構築した作品、と。
細野:もう半世紀前ですね。
星野:すごいっすね…おいくつですか?このときって。20代?
細野:20代前半…まあ24,25かな。
星野:そのときの作品をいま…おいくつでしたっけ?
細野:71。今年で72になるよ。
星野:おめでとうございます。
細野:でも加山雄三さんには負ける。
星野:負けるって、なにがですか?(笑)
細野:いやー、もう、勝ち負けだから…(笑)
星野:まあでもパワフルですよね、加山さんって。
細野:すごい。んー。
星野:そんな『HOSONO HOUSE』と収録曲順が真逆となっておりまして、全曲歌唱・演奏・プログラミング・エンジニアリング、すべて細野さんが手がけているという。
細野:まあ、ぜんぶひとりでやってるから、しょうがない(笑)
星野:すごいなぁ…メール来ております。20歳・男性・大阪・ラジオネーム:茹でた孫。「細野さんの新作『HOCHONO HOUSE』は『HOSONO HOUSE』と曲順が真逆になっていますが、どうしてこの順になったのでしょうか。」
細野:どうして、か。んー…おんなじでもよかったんだけど。オリジナルの1曲目は"ろっかばいまいべいびい"っていう曲で始まってるんですけど。
星野:はい。
細野:どうしてもそこから始めたくなかったんだよね。なんでだかね。理由はあんまりないんだけど。いちばん最後にそれを持っていきたかったんで、必然的に…それを最後にする場合、逆になればいいな、と。思いついただけなの。
星野:いちばん合理的な、気持ちのいいアイディアというか。
細野:そうだね。しかも、オリジナルの最後の"相合傘"は何小節しかやってないじゃない。
星野:そうですね。
細野:なんで?と、思うわけ(笑)
星野:自分でやったのに(笑)「なんで?」って思うんですね、『HOSONO HOUSE』を聴いて。
細野:あのね、当時の若者の考えがわからない(笑)
星野:(笑)
細野:まあ、だから、入れないわけにもいかないだろうしね。
星野:あれですよね、はっぴいえんどの『HAPPY END』というアルバムの中に…
細野:そっちのほうに持ってっちゃったの。うん。
星野:元々ソロ用に作られた"相合傘"という曲が。
細野:で、くやしいからちょっと入れたんだろうね(笑)
星野:それを1曲目に。
細野:だから、その続きから始めれば、これはまたいいんじゃないの、と。
星野:たしかに、つながっている感じがありますよね。『HOSONO HOUSE』のいちばん最後もラジオの…Top20でしたっけ?
細野:そうです。
星野:Top20の発表の中に"相合傘"が入ってる、っていう。
細野:憧れだったからね。んー。実際そんなことあるわけないんだけど(笑)
星野:その、ラジオでつながって…半世紀がラジオでつながって1曲目が始まるという、すごく素敵な…
細野:そうだね、逆転してますよね。
星野:『HOCHONO HOUSE』って…僕が[事前に]聴かせて頂いたとき、タイトルもまだ考え中だったじゃないですか。
細野:うん。
星野:「ホチョノハウス」に至った変遷はあるんですか?
細野:あの…言いにくいでしょ?(笑)
星野:(笑)
細野:まあ星野くんは大丈夫か。
星野:ホチョノハウス、はい。
細野:時々恥ずかしがる人がいるんだよね。ホチョノハウスって言えない…さっき、外国の雑誌みたいなのの取材で、「HOCHONO HOUSE」っていうのは、たとえばアメリカではどう思われるんだろう、と思ったら。
星野:うん。
細野:発音できないらしい(笑)そういう音が無いんだ。「ホショノ」なのかな。
星野:そっか、「ショ」になっちゃうんですね。
細野:まあ、だからと言っていまさら変えるわけにもいかない…あまりにもね、疲れて深刻になっちゃった。制作が。
星野:あ、制作が大変だったんですね。
細野:大変だった。で、それを…なんて言うんだろう、緩和させる感じなんですよね。自分を嘲笑うっていうこともあるかも。「なに深刻ぶってんだよ」、みたいなね。
星野:うんうんうん。
細野:だから、自分に向けて付けたんです。
星野:へー。
細野:あとね、女子アナがどうやって発表するのかな、って。
星野:なるほど。ちょっと、「ホチョノ」って言ってほしいですよね。
細野:言ってほしいでしょ?(笑)
星野:(笑)
細野:絶対ためらうと思うんだよね。
星野:一瞬、あれ?ってなりますよね。いいですね…
細野:いやいや、すみません。
星野:そういう細野さんが大好きです。
細野:いやー、ありがとうございます。
星野:ちょっとメールがたくさん来てるので紹介します。ラジオネーム:ともつぃー「本日は細野さんがゲスト出演されるということですので質問させて頂きます。某・星野源さんの特典映像に出演されているウソノ晴臣さんについてご存知でいらっしゃいますでしょうか。」と。
細野:もうね、実は見てないんです。噂だけは…
星野:(笑)
細野:すごく見たいんですけど。
星野:すみません、大丈夫ですか?一応あの…撮影前には正式にお願いさせて頂いたんですけど…
細野:もちろん、ぜんぜんオッケーですけど。
星野:あ、よかったです。ありがとうございます。
細野:どっかのライヴでやった?
星野:一応、全会場でやらせて頂きました(笑)
細野:全会場でやったんだ(笑)そっか。
星野:そうなんです。
細野:いやいや…どんな感じ?(笑)
星野:(笑)あとでちょっと、映像をぜひ…ご覧頂いて。たぶん大丈夫だと思います。
細野:見ます。
星野:失礼なことは何一つしておりませんので…
細野:いいよ、したって。
星野:この『HOSONO HOUSE』の頃の細野さんにそっくりになってます。
細野:あ、そうなんだ。ロングヘアーでヒゲ生えてるんだ。
星野:そうなんです。よかった…
星野:大阪府・里芋コロコロ「アルバム『HOCHONO HOUSE』完成おめでとうございます。完成されてからいちばんにやりたい!と思ったことはなんでしょうか?」。完成されて、達成感の中…達成感ありましたか?
細野:いや、作っちゃうとね、落ち込むんですよね。で、発売日まで2,3カ月くらいあるでしょ?
星野:そうですよね。プレスをする時間がけっこう長いですよね。
細野:その間がいちばん、落ち込むの。これ、世に出していいのかな?とかね。みんなそうなんじゃないの?
星野:僕もそうです。やっぱり、出来上がってからリリースまでって…なんでしょうね、あの感じ。
細野:空白の時間っていうか、なんていうかね。試験の前みたいな。
星野:そうですよね(笑)発表を待ってるみたいな感じですもんね。
細野:そうなんだよ。なんか、評価されるわけじゃない?点数付けられたりね。昔は。そういう…試験の前に落ち込むようなもんですよね。でも、いちばんやりたかったことは、休みたかった、っていう(笑)
星野:(笑)休めましたか?
細野:いや…
星野:宣伝もありますもんね。
細野:1日ね、温泉は行ってきましたけど。
星野:あ、そうですか。よかったです。
細野:雪の中。んー。
星野:そうか…ちょっと、じゃあ…もうちょっと経ったらお休みできそうですか?
細野:もうすぐ、うん。4月ぐらいにちょっと休もうかな、と。
星野:ぜひゆっくりしてください.
細野:はい。ありがとうございます。
(中略)
星野:じゃあもう1曲、紹介させて頂いてもよろしいですか?
細野:うん。
星野:えーと…これもちょっとTVBros.のときにお話ししたことでもあるんですけど、"僕は一寸"という曲。
細野:そうそう、その話は印象的でしたけど。
星野:「夏編」ということで、ちょっと歌詞が変わってるんですよね。
細野:そうなんです。
星野:その歌詞が変わっていることに…僕が音源を頂いたときが、まだ盤が出来る前で。宣伝用の白盤もできる前で、ディレクターの方から「これすごいんで聴いてください…」ってメールで送って頂いて。
細野:へえ。
星野:なので、曲順が反対だってことも…なんとなく、あれ、これもしかして反対なんじゃないの?って思いながら、新鮮な気持ちで、それぞれ聴かせて頂いたんですけど。
細野:なるほど。
星野:歌詞カードもなかったので、あれ?歌詞変わってる?っていうことで、気付くことができたんです。で、"僕は一寸"という曲も歌詞が変えられてて。
細野:そうなんです。
星野:で、その話もちょっとしちゃったんですけど、どうして変えられたんでしょうか?
細野:あのね…46,7年前の自分の環境っていうのはいまとぜんぜん違うから、その当時の環境で作った詞なんだよね。
星野:狭山に住まれてたんですよね。
細野:そうそう。だから、森があったりね。カントリーですよ、いわゆる。
星野:米軍ハウスというか…
細野:そうそう。ハウスの跡に住んでて。特殊な生活を送ってて。だから、曲もカントリーだったしね。だから、いまとぜんぜん心情が違うから、歌えなかったの。
星野:あー…
細野:やっぱり…作詞家じゃないから、そのときの気分とか、感情で作るからね。そしたら、いまの気分で作ろうかな、と思って。
星野:当時も家の中で…バンドで録音されて。本当に家の中で作られたと。で、今回もご自身ひとりで、部屋の中で作られたということで…「今の細野さん」が歌ってるな、と。さっき言った…未来にポンッと出たんですけど。
細野:うん。
星野:出たっていうか、みんなの一歩先を出た感じがすごくカッコよくて。でも、その中で「今を生きてる細野さん」っていうのがすごく、その歌詞の中から感じられて…
細野:それだったらうれしいよ。よかった。
星野:それにすごく感動して…
細野:なんか、怒られるかと思った。「昔と違うじゃねぇか」って。
星野:(笑)
細野:「勝手に変えるな」みたいな。
星野:でも、昔と変わることを嫌がる人って多いじゃないですか。リスナーとかの中にも。
細野:ああ、いるよね。
星野:それとはまったく別というか、ホントにその…音楽というものの在り方というのを、改めてハッとさせられるというか。「今の細野さん」が歌うことの意味とか。歌詞のやさしさみたいなものに…僕はそれをお風呂で聴いてたんですけど、聴いててちょっと泣くっていう…(笑)
細野:それがね…印象的だった。泣いちゃったか。
星野:涙が出ちゃって、もう…なんてやさしいんだろう、と思って。
細野:そうか…それはありがたいっていうかなんというか…
星野:苦しいじゃないですか、なんか。いまの世の中って。本当に息苦しいので。
細野:そうだよね。我慢してるよね、みんな。
星野:はい。我慢してるし、イライラしてるし。でも、その中で暮らしている細野さんの目線がすごくやさしくて。
細野:僕もおんなじようにね、苦しく暮らしてるんですけどね。
星野:ですよね。だから、その苦しい中でこの視点っていうのが、すごく愛があって素敵だな、と。
細野:だったらよかった。
星野:じゃあちょっと、聴かせて頂いてもよろしいでしょうか?
細野:はい。
星野:それでは細野晴臣さんで、"僕は一寸・夏編"。
星野:お送りしたのは細野晴臣さんで"僕は一寸・夏編"でした。
細野:はい。
星野:元々の『HOSONO HOUSE』ヴァージョンの"僕は一寸"はカントリ-ミュージックでしたけど。
細野:そうなんですよ。
星野:今回はワルツのソウルというか。
細野:ちょっとソウルっぽく、うん。
星野:で、僕、学校が飯能というところで。
細野:近いんだよね。
星野:そうなんです。
細野:この曲作った「細野ハウス」があった頃、そこら辺にいたわけ?
星野:作った頃は…僕はまだ生まれてないんですけど(笑)
細野:あ、そっか(笑)そらそうだ。
星野:なんですけど、僕が『HOSONO HOUSE』を知ったのが高校1年生のときで。
細野:飯能で知ったの?
星野:はい。で、その頃教えてもらって、毎日聴きながら西武池袋線に乗って、池袋から飯能というところに…
細野:なんか、近くにいたね。
星野:そうなんですよ。見てた景色がホント、狭山の…
細野:じゃあ、"僕は一寸"のオリジナルはそういう風景だけど、見えたわけだね。そういうのがね。
星野:そうなんです。ちょっと時期は違うんですけど、自分の心情とすごくシンクロしてて。当時も"僕は一寸"という曲にすごく救われる気持ちが…
細野:いくつだったの?
星野:えっと、15歳です。
細野:(笑)
星野:当時もちょっと息苦しかったんで(笑)音楽の中に…なんて言うんですかね、安らぎじゃないですけど、ほっとする場所みたいなものを…
細野:なるほどね。
星野:あとはその中で、たとえば"薔薇と野獣"のリズムのカッコよさとか。
細野:あれも狭山っぽい景色なんですよ。
星野:カッコよくて、大好きで。"恋は桃色"の歌詞の素敵さとか。
細野:あれもね、狭山の景色が出てくる…
星野:ですよね(笑)そうなんですよ…あ、ちょっとごめんさい、ホントにいま唐突に、そういえば…ちょっとお聞きしたいんですけど。
細野:なんだろう?
星野:あの…これ、ご本人に訊くと思ってなかったんで、アッ、と思ったんですけど…「君の中で雨が降れば 僕は傘を閉じて 濡れていけるかな」っていう歌詞があるじゃないですか。
[*"恋は桃色"の一節。「お前の中に雨が降れば 僕は傘を閉じて 濡れていけるかな」]
細野:うん。
星野:僕、本ッ当に大好きで、あの歌詞。好きで好きで…
細野:あら。
星野:ちゃんと恋をしていない時期に…高校生の時期にその歌詞を聴いて、「愛とはこういうことだ」と思って(笑)すごい!と思って…
細野:作ってる本人も若造だから、ただの(笑)
星野:いやいや(笑)でも、そうか、20代の前半だったんですもんね。
細野:そうなんですよ。
星野:あれはどんな気持ちで…どんな気持ちで書かれたんですか、っていうのもアレですけど(笑)
細野:気持ちは別に…いちばん気になるのは「かな」っていう…
星野:(笑)語尾が気になるっていうのは前もおっしゃられてましたよね。
細野:そうなんだよ。その後ね、「かな」っていう歌詞を作って歌ってる人が増えてきてて…
星野:それまではいなかったんですかね。そういう…日常語っていうとアレですけど。
細野:いなかったよ。なんかこう、自問自答みたいなね。ちょっと恥ずかしいんだよ。
星野:でも、音楽史を塗り替えたんだと思うんですけど…
細野:そこまでじゃないとは思うけど。
星野:みんなが使うようになってちょっと恥ずかしくなっちゃった、みたいなところはあるんですかね?
細野:恥ずかしい…だから今回もね、歌わなきゃいけなくて(笑)
星野:そうですよね(笑)
細野:「かな」をなんか変えられないかなと思ったんだけど、変えられなかったね。
星野:けっこう大事な部分ですもんね、音楽の…
細野:そうなんです、肝なんだよ。だから、傘とか雨とか、好きだったんだよ。それに喩えたんでしょうね。
星野:なるほど…ありがとうございます。うれしいお話を…なのでこの「夏編」を聴いたときも…いま、僕は自分の大好きなブラック・ミュージックっていうのをやっていて。
細野:やってるよね。
星野:で、この家の中で…っていうので勝手にシンクロしまして。すごく好きな曲になりました。
細野:いやいや…がんばってるな、って、いっつも思ってますよ(笑)
星野:すみません、ありがとうございます(笑)それでは、いったんCMでございます。
(CM)
(中略)
星野:埼玉県・ラジオネーム:リミさん「お正月にNHK BSプレミアムにて放送された「イエロー・マジック・ショー2」を拝見しました。」
細野:あー、見てくださったんですね。
星野:「ゆるいコントに素敵な音楽、ギャップがたまらなくおもしろくて楽しかったです。源さんとの音楽での共演は鳥肌が立ちました。"ライディーン"のときは私もノリノリでした。そしてYMOとのセッション、"Firecracker"最高でした。体中がゾクゾクしました。細野さんが印象に残っていることがあれば教えてください。」あれでも、コントもたくさん撮られてましたもんね。
細野:いやー、もうね…その後、ライヴにナイツのお二人と清水さん(清水ミチコ)と弟さん(清水イチロウ)と…東京03の中のお二人が来てくれてね。そういう方が観てるわけじゃない。
星野:あー、お客さんで来られたんですね。
細野:なんか、すごいね、申し訳なくなっちゃって。「お笑い好きのミュージシャンっていうのがいるんですよ、すいません」って謝っちゃった(笑)
星野:(笑)いいのに…でも、ナイツの塙さん(塙宣之)も細野さんのこと大好きですもんね。テレビでもよく…しゃべってるのを見ました。
細野:僕もそれで知ったんですけど。ナイツの「間」はそういうところから来てる、とかね。それでラジオ番組に呼ばれたりして。ちょっと交流できてんのかな、と思って図々しく声かけちゃった(笑)
星野:いやー、でもすごくうれしかったんじゃないですかね。
細野:だったらいいんだけどね。んー。
星野:あと清水ミチコさんと…弟さんが細野さんの声にそっくりという…
細野:僕よりいい声だよ。ホントに。
星野:いやいや…(笑)どちらもいい声でしたけども。で、清水ミチコさんが矢野顕子さんをやって…という。
細野:そうそう。へんな姉弟…(笑)
星野:"相合傘"でしたっけ?
細野:そう、"相合傘"やるね。
星野:僕は…あれってNHKの「トップランナー」という番組で、当時髙野寛さんが司会をやられているときにゲストで[細野さんが]出られたときにあの曲をやってた気がするんです、たしか。
細野:そうだよね。
星野:で、それのまんまだったような気がします。僕、高校生の時にそれを観てました。
[*正確には「トップランナー」の前身番組である「土曜ソリトン SIDE-B」(1995年4月~1996年3月)。司会は高野寛と緒川たまき。]
細野:最近、矢野顕子も"相合傘"歌ってるんだけど、そう言うとみんな清水ミチコの歌を思い出すみたいで…(笑)
星野:(笑)そうですよね、影響力、すごいですよね。
細野:なにしろ似てる。すごい。あの人はすごい。
星野:すごいですね。最近、僕の曲もやってくださっていて。
細野:あ、ホント?
星野:なんか、真似ではないらしく、僕の作曲ものまねをして下さってるらしくて。
細野:作曲ものまねって…(笑)
星野:なんか、僕が作曲しそうなメロディとコードと、あと歌詞を工夫してくださって。
細野:そういうの得意なんだよね。清水さん。
星野:わざわざ僕にメールで直接、「こういうのをやってるんですが、大丈夫でしょうか?」って言ってくださって。もうやった後だったんですけど(笑)「事後報告ですみません」って来て(笑)いや、もちろん大丈夫です、みたいな。
細野:いや、それはいいよ。うん。
星野:楽しかったです。あの"Firecracker"も楽しかったです。ちょっと緊張しましたけど…
細野:生だからね。
星野:ね、ホントに生ですもんね。リハーサル日とかも特になく。
細野:ないね。本番ちょっと前に1回だけ合わせて…いや、だから、よっぽど上手いんだよ、星野くんのマリンバ。
星野:いえいえ…ありがとうございます。もう…一生の記念になりました。もしまたイエロー・マジック・ショーがあったら…
細野:またやると思うよ。
星野:マジすか!いいですね!ぜひまた、呼んでください。
細野:ぜひ、呼ばせて頂きます。
星野:それでは、楽しい時間もあっという間なんですけども、お別れの時間でございます。えー、改めまして…細野さんのニューアルバム『HOCHONO HOUSE』。本日、明けてきょう、発売中でございます。配信とかもされてるので気になる方はぜひ聴いてみてください。なんかお知らせなど、あります?
細野:いやー…なんにもないね、僕は(笑)
星野:(笑)一応、ライヴとかもね…あれ、でも東京はしばらく無い?
細野:東京はしばらく無くて、福岡で5月にやったら…その先がちょっと思いやられるアメリカが。
星野:アメリカのライヴがあるんですね。いいですね…
細野:ニューヨークとロサンジェルス、気が重い。
星野:(笑)楽しんできてください、ぜひ。
細野:わかりました。
星野:きょうは本当にありがとうございました。
細野:どうもありがとう。
星野:じゃあ、最後に、アルバムの中から1曲、お聴き頂きましょう。じゃあちょっと、最後に曲紹介をして頂いてもよろしいでしょうか?
細野:ではですね…最初に、去年の夏に聴かせた…
星野:僕がひと足先に聴かせて頂いた…
細野:"CHOO CHOO ガタゴト"です。
星野:はい。本日のゲストは細野晴臣さんでした!
細野:どうも~
星野:ありがとうございました!
星野:いやー、細野さん、ありがとうございました。もう…すみません、サインを頂いてしまいました。オリジナルの『HOSONO HOUSE』のアナログ、そして新しい『HOCHONO HOUSE』のアナログ盤、両方にですね…「星野くんへ」と、サイン頂きました。僕がサインを頂いたのは、あれ以来ですね。ハイドパーク・フェスという、僕が24,25歳ぐらいのときに行われた…細野さんが本当にひさしぶりに人前で歌うというイベントというか、フェスがありまして。いろんなバンドが出てて、その中に僕らSAKEROCKも出てまして。その場が…楽屋が全員いっしょというですね、奇跡の楽屋でですね。そこで僕が持っていった細野さんの著書、『地平線の階段』という本がありまして。それにサインをして頂いて、と。その本のタイトルが元となって、いまの僕らの連載の「地平線の相談」というものがある、という…それ以来にサインを頂いてしまいました。うれしかった。ありがとうございました、ホントに。
2019.03.04 Inter FM「Daisy Holiday!」より
H:こんばんは。細野晴臣です。えー、先週に引き続いて、今回も…水原姉妹。
希子:こんばんは、水原希子です。
佑果:佑果です。
H:はい、ありがとう。
希子:また来ちゃいました。
H:なんかニコニコしちゃうんだよな。
希子:うれしい…細野さんをニコニコさせることができて(笑)
H:あー、もう、ホント…ありがたいですよ。
佑果:こちらこそ(笑)
H:ニコニコしてるかな?ニヤニヤしてない?大丈夫?
希子:大丈夫です、ニコニコしてます!
H:あ、よかった(笑)
希子:晴れやかな…
佑果:(笑)
H:あのね、話はちょっと唐突だけど、そこにマンガがあるでしょ。
希子:あります。
H:それ、台湾の人が…22歳の女子が描いてくれて。こないだ初めて読んで…先週ね、読んでたら、そこにお二人が来たんだけど。
希子:あ、そうですね。
H:そこに描かれてるのが、ふしぎな物語じゃん。
希子:はい。
H:呼んだよね?
希子:私、読みました。
H:なんか、最初にはっぴいえんどの『風街ろまん』を聴いて…台湾でね。で、"風をあつめて"がすごい好きになったと。
希子:はい。
H:で、東京に来たときにレコード屋さんに行って、いろいろ探して、気に入った曲が"恋は桃色"だった。そしたら、おなじ歌手が歌ってた、っていう…で、その話の中に『ノルウェイの森』が出てきたのね、映画の。で、その役名がなんでしたっけね?
希子:緑です。
H:緑さん。その話が出てきて、そこ読んでたら希子ちゃんがやってきたから…
希子:すごい…
H:緑さんやってたんだよね。
希子:はい。そのタイトルがなんでしたっけ?
H:『緑の歌』。えーと…GaoYanさん。すごい初々しい、短い、小さなマンガの本なんですけどね。今度、台湾公演があるんで、彼女が来てくれるらしいんだけど。
希子:あ、ホントですか?
H:楽しみ、っていうかね、ドキドキしちゃうけどね。
希子:ね。「私は東京で絶対に細野さんのコンサートを観ると決めてたら、細野さんが台湾に来てくれた」っていう(笑)なんか、いろんな人にとって…台湾とか、来てくれたことが喜ばしかったんですね。初めてのことでしたもんね。
細野さんに対して、敬慕の気持ちは一言で表せないほど強くて、色々考えを巡らして、最後「緑の歌」という作品になりました。
— Gao Yan (@_gao_yan) 2019年2月24日
技術も、表し方も、とても未熟でしたが、このような作品、なんと松本隆さんの元に届き、さらにそのおかげで、細野さんに会うことができ、本当に夢にも思わなかったことです。 pic.twitter.com/TRzgrGEqAH
H:そうだね。なんか、ブギウギとかやってていいのかな、とか…
希子:もう、細野さんがやりたいことをやってください。
H:ありがたい。
希子:今までもそうしてきたように…
H:ずっとそうしてきたね(笑)あんまり人のこと考えてなかった。
希子:(笑)
H:最近、考えるようになってきた。
希子:ホントですか?たとえば?
H:たとえば…海外でも、いろんな人が聴いてるんだってだんだんわかってきた。それまでそんなの知らなかった。
希子:あ、だって、ニューヨーク公演は飛ぶように売れた、と。
H:そうなんですよ。Sold Outしちゃって…
佑果:すごいです!
H:なんでだろ、と思っちゃうね。
佑果:いやいやいや…
希子:やっぱりみんな、細野さんの存在はもちろん存じ上げていて、みんな待ってる…というか、なかなかライヴとかなさらない…
H:まあ、めずらしい…なんかね、パンダが来たみたいな感じだよね。
希子:違いますよ!(笑)パンダといっしょにしたらダメですよ。
H:いや、そっか、パンダに失礼だ。
佑果:(笑)
希子:たしかにパンダに失礼だ(笑)難しい話になってきちゃった。
佑果:いや、みなさんでも、[細野さんのことを]神だと思ってます。ぜったい。
H:いやいやいや…ホントにもう、わけわかんないっすね。はい。
希子:L.A.もすごく楽しみ…
H:L.A.緊張するんだよね。僕の師匠みたいな人が…ヴァン・ダイク・パークス(Van Dyke Parks)が観に来たり。
希子:あ!
佑果:わー!すごい!
H:あと、YMOのプロデューサーだった村井邦彦さんが来たりね。L.A.に住んでるんで。
希子:あ、そうなんですね。
H:で、こないだその息子さんのヒロ・ムライっていう人がグラミー賞の映像部門で獲っちゃったね。
希子:あ、そうなんですね!
H:そうなの。
希子:へー、すごい…
H:すごいなぁ、と思って。有名になっちゃったの、その人。
H:そんなことがあったんですけど、とりあえず、曲。希子ちゃん。
希子:あ、私が先ですか?『HOCHONO HOUSE』から聴かなくていいですか?
H:あ、そうか。それが先か。
希子:はい、もう、待ちに待った『HOCHONO HOUSE』を聴きたくて聴きたくてうずうずしてるんですよ?
H:「ホチョノハウス」って言ってくれてうれしい(笑)
希子:(笑)
佑果:ホチョノハウス!
希子:ホチョノハウス、ホチョノハウス、ホチョノハウス。早口言葉(笑)
H:じゃあ、なんにしようかな…もう。えーとね…こないだ、節分は過ぎちゃったけど、"福は内 鬼は外"を。
希子:いいですね。
佑果:聴きたいです。
福は内 鬼は外 - 細野晴臣
(from 『HOCHONO HOUSE』)
H:ってな感じで…
希子:わお!
佑果:あー…
希子:最初の入りからすごい…カッコいい。
H:最後、「鬼は外」って言ってないんだよ。「鬼も内」って言ってんの。
佑果:あ!
H:なんか、「鬼は外」って言いたくなくて。
希子:たしかに。
H:鬼も来なさい、って。
希子:みんなおいで、って。
佑果:深いですね。なんか、神聖な場所にいるような感覚でした(笑)
H:(笑)
希子:鐘の音がすごい…
H:いやいやいや…じっくり聴いて、後で。ヘッドフォンで。
姉妹:はい。
希子:でも、そういうメッセージがあったんですね。鬼も…
H:まあね、あの…50年ぐらい前に作った曲だから、まだ若いから。物事を知らないんだよね。
希子:んー。
H:その後、いろいろ勉強してきたから。「鬼は外じゃない」と、習ってきたんで。歌詞いっぱい変えちゃったよ、だから、今回。歌えなくて。
佑果:はー…
希子:鬼も受け入れて。みんないっしょに。
H:そうそうそう。
希子:愛ですね(笑)
H:そうなんだよ(笑)わかってくれたか…
希子:すごい。カッコいい…
佑果:そっか…
H:はい。
希子:えー?
佑果:(笑)
H:えー、じゃないよ(笑)
希子:なんかきょうは紹介したくないなぁ…これをひと通り聴くという回で…たぶんいいと思いますよ?
H:ダメだよ(笑)
希子:たぶん聴いてる人も、私とか佑果ちゃんとかも、『HOCHONO HOUSE』を待ってますから、みなさん。
H:いいのいいのいいの。それはね…CDを買ってください(笑)
希子:あ、すみません、そうでした(笑)え、じゃあ私ですか?
H:もちろん。
希子:うわー…この後に、なんか、かけたくないなぁ…
H:いやいやいや…
希子:ではですね、ジャン・ジャック・ペリー(Jean Jacques Perrey)という方と…
H:いいねぇ。
希子:ルーク・ヴァイバート(Luke Vibert)という方の…たぶん、いっしょに作った曲だと思うんですけど。2007年に出したアルバムなのかな?
H:ついこないだだね。
佑果:Moogの機材を使った…
H:そうだね。
希子:『Moog Acid』というアルバムから…読み方がわからないんですけど、"Schwing"。
Schwing - Jean Jacques Perrey & Luke Vibert
(from 『Moog Acid』)
H:んー、いいね。
希子:"シュウィング"という曲みたいですね。ドイツ語らしいんですけど。
H:あ、ホント?
希子:最近、高速に乗る時にこの曲を聴いていると気持ちいいなぁ、と…
H:いいね。
希子:ジャン・ジャック・ペリーっていう方は、昔からすごく、エレクトリックミュージックの…
H:そうそう、そうなの。この番組のレギュラーの岡田くん(岡田崇)っていう人も、ものすごい親交が深いわけ。
希子:あ、そうなんですか!
H:お宅に訪ねてったり…残念ながら亡くなってしまいましたけど。
希子:そうですね。
H:でも、その晩年の頃、ずっと通ってて。レコーディングにもなんかいろいろ…関係したりして。
希子:えー、そうなんだ。すごい…
H:だから、歴史的な存在なんだよね。ジャン・ジャック・ペリーは。
希子:彼の存在を知ったのは私、最近だったんですけど。すごい興味深くて。たくさん、いま…もっともっと知りたいな、と思ってるミュージシャンの一人です。
H:あ、ホント?すばらしい。いい趣味だ…(笑)
希子:やったー(笑)細野さんのお墨付き…
佑果:私も大好きなので!(笑)ラジオで演奏したりして…
H:すごいね、それもね(笑)やってるんだ?
佑果:ジャン・ジャック、大好きなので…
希子:ちょっと宇宙っぽいというか…
佑果:♪タララララララ、タララララララ…忘れちゃった、ちょっといまメロディーが出ない…(笑)
H:いや、出ないよ普通(笑)
希子:再現できない音だね。
佑果:ちょっと難しい。声だと。
H:うん、声でやんなくていい(笑)
佑果:(笑)
H:いや、二人は頼もしいわ。うん。ホントに。
佑果:細野さんはMoogのシンセサイザーにいちばん最初に触れた瞬間、どういう感じでした?
H:あのね…Moogっていうのは…触ってたけど、単音しか出ないから…で、チューニングは難しいし、電圧が変わると音程が変わっちゃうしね。すごい難しい楽器だったね。
佑果:なるほど…
希子:では、あまり…?
H:いやいや、なんだろう、すごい…もっとやってみたかったな。またやろうかな。
佑果:いまでも、できますよね…?
H:うん。持ってるの、そういうの?佑果ちゃん。
佑果:いや、楽器屋さんでこないだ見つけたんですよ。
H:お、買ったの?
佑果:そこで見つけて…でも30万円ぐらいだったので…
H:高いよね。
佑果:買えなくて…買いたいんですけど…
希子:あ、いま、目ですごい、横から見られてたんですけど(笑)
佑果:違う(笑)私が、仕事でお金入ったら買おうかな、と思ってます。
希子:いますごい目線が来るんですけど、さっきから。
H:(笑)
佑果:お父さんなんで(笑)
希子:私お父さんなの?男だったんだ(笑)
佑果:支えてもらってね…
H:みんなで協力するから、ね。
佑果:いやー…まあ、でも、気になりますね。
H:気になるよね。うん。
希子:じゃあ、佑果ちゃん。紹介しますか?
H:曲を。
佑果:じゃあ、聖子ちゃん(松田聖子)…
H:お?いろんなものが出てくるね(笑)
佑果:…の、細野さんが作られた"わがままな片想い"を聴きたいと思います。
H:あー、うれしいよ、それは。
佑果:はい(笑)
H:うんうん
佑果:聖子ちゃん声きれいですね!
希子:(笑)
H:歌うまい…
佑果:ホンットに上手だなと思って…あと歌詞も大好きです。
H:これね、息継ぎがすんごい大変だと思うんだよね。
希子:あ、そうですよね。
H:[録音は]一発ぐらいでオッケーだよ。
佑果:そうだったんですか!
H:この歌入れ、僕いたの。
希子:はい。
H:で、なんかね…♪しばしも休まず~みたいだった、ってブツブツ文句言ってた(笑)そういう童謡があるわけ。
佑果:へー!おもしろい…
H:なんかそれは憶えてるわ…んー。
希子:カラオケで歌うのは大変そうだな。
佑果:え、私カラオケで…
H:歌ってるんだ?今度聴きたいな…
佑果:大好きです。この曲、いつも…
希子:え、歌ってみて、いま。
佑果:♪わ・がまま・な/か・たおも・い/あ・いして・る/は・ほんと・よ…
希子:(笑)
H:かわいい(笑)
佑果:大好きで!このリピートがもう、ずっと…きょうシャワー入ってる時に、ちょっとエコーが…(笑)ずっと歌ってます。ホントに大好きです。
H:なんか、幸せだわ、僕。
佑果:(笑)
希子:えー、やっぱ、聖子ちゃんは流石なんですね。
H:すごいね。
佑果:声が…美しい…
H:うん、本当に歌が上手い人。
希子:はー、そうなんだ。
佑果:明菜ちゃん(中森明菜)はどうでした?
H:明菜ちゃんもね、おもしろかったね。
希子:へー。
佑果:明菜ちゃんもカッコいいですね…!
H:あのね…まあ、『禁区』っていうのをやったんだけど、その後に、「明るい曲」って頼まれたの。
希子:はー。
H:で、シングルで出す、って言うんで、力入れて書いたんだよね。で、歌入れに立ち会ったんだよね。
佑果:はい…
H:そしたら、「聖子ちゃんの曲みたい…」って言われたんだよね(笑)
佑果:!(笑)
希子:ギャギャギャギャギャ…(笑)
H:きょう初めて言う(笑)で、あまりにも明る過ぎて…シングルになんなかったの(笑)
希子:あ、そうだったんだ…
H:アルバムには入ったけどね。
佑果:えー、聴きたい…
H:やっぱり暗い路線じゃないと似合わなかったんだね。大冒険過ぎたんだね。
佑果:明菜ちゃん…なるほど…
H:でも、その曲気に入ってたんで、今度かけるけどね。
姉妹:聴きたいです!
H:いまあるかな…ちょっと待って。
希子:わー!うれしい…
佑果:明菜ちゃん…
(♪CUT)
H:あった。
希子:お…
H:これです…"100℃バカンス".
佑果:おお…
H:えー、いま見つけたんで、かけますね。中森明菜さんで"100℃バカンス"。聴いてください。
佑果:バカンス…
希子:でもなんか…ドラマチックな感じですね。ドンドンドンドンドン…
H:そうだね。その前に、"赤道小町"っていうのが流行ったんで…僕の曲だけど。それにちょっと似てる。
[*山下久美子のシングル"赤道小町ドキッ"。作詞はやっぱり松本隆。]
佑果:んー…
H:でもやっぱり、中森明菜さんには合わなかったのかな。
希子:そっか…
佑果:好きですけど、個人的には…
H:あ、ホント?うれしい(笑)
佑果:声もきれい…トータル、パーフェクト(笑)カッコよ過ぎて…
H:めったにこれは聴けないんで…かけるチャンスが無くて、今まで。よかった。
佑果:いやー、うれしいです。こんな機会頂いて…
希子:でも、そっか、やっぱり…さわやかなのは彼女はアレだったのかな…
H:かな?んー。…あと何分?もう終わってるの?
佑果:終わっちゃってたんだ(笑)どうしましょう。
H:終わっても話し続けるというね。いやー、まだまだかけたい曲もいっぱい…出てきちゃうけどね。こうやってると。また来てくださいね。
希子:わかりました。では、また。待ってます。
H:こちらこそ。お願いします。えー、水原希子さん、佑果さんでした。ありがとう。
佑果:ありがとうございました、
希子:ではまた。