2019.03.10 Inter FM「Daisy Holiday!」より

↓岡田さんの補足解説は要checkです…

daisy-holiday.sblo.jp

 

H:こんばんは。細野晴臣です。いやいや、久しぶりですね。

O:ご無沙汰s…しております。噛んじゃった(笑)岡田崇です。

H:ちょっと待って…(くしゃみ)

O:ひさしぶり、すぎて…

H:ね。なんかあの、風邪もらっちゃったみたいだ。

O:あら…気をつけないと。

H:あの、[日本]アカデミー賞の円卓の辺りで咳してる人がいたんで、もらっちゃったみたい(笑)あのテーブルの人たちみんな、いま頃、喉痛いんじゃないかな。

O:大丈夫ですか?

H:ちょっと熱っぽいの。だから、お願いね。

O:…あれ?(笑)

H:ちょっと、目つぶってやるから…

O:(笑)

H:じゃあ、しゃべりながらやって。

O:(笑)

natalie.mu

 

H:…えーと、なに?きょうは。

O:きょうはですね、最近手に入れたものを、まあ…相変わらずですが…かけていこうと思いますが。

H:でしょうね。

O:まず最初に、江利チエミさんをかけようと…心に決めてきました。

H:いいね。

O:1953年の録音なんですけど、江利さんってその前年、15歳で…

H:15歳でデビューしてるのね。早熟だね。

O:"テネシー・ワルツ"と"カモナ・マイハウス"。で、翌年、アメリカに招待されて。L.A.のほうで。ナイトクラブで歌ったりとか…したらしいんですけど。

H:あー…あんまりそういうニュース、無いよね。こっちには。

O:その中で、Capitolレコードのスタジオでレコーディングをしたという話があって。

H:それはすばらしい。

O:当時の新聞だと、「それがCaptolから出てチャートにも入った」…みたいな話になってるんですけど、Capitolから出たっていうことは無くて。Federalっていうレーベルから出てます。

H:あ、そうなんだ。

O:「Capitolから」っていうのは、「Capitolレコードで録音した」っていうのがちょっと…「[Capitolの]スタジオで」、っていうのとレコード会社とを混同してるんだと思うんですけど。

H:そうかそうか。

O:で、バッキングがチャック・ミラー・トリオ(Chuck Miller Trio)だという噂がありまして…

H:やった!大好きだな。"House Of Blue Lights"歌ってんだよね。

O:いいですよね、あのヴァージョン。

H:影響されてます。はい。

O:じゃあ、まずは江利チエミの"Pretty-Eyed Baby"を。

 

 

Pretty-Eyed Baby - CHIEMI ERI

 

 

H:いいねぇ。江利チエミとは思えないね(笑)なんか、いいよ。チャック・ミラーのピアノ、いいねぇ。

O:うーん、そうですね。

H:音が良い。

O:音良いですよね。当時の…この頃の江利さんの[他の]SP盤聴いても、こういう音は絶対出てないんで…

H:そうだろうね。あの頃の差はすごいよね。

O:んー。

H:いやー、いいな。これ、なんか…ユーナ・メイ・カーライル(Una Mae Carlisle)っていう人にそっくり。声がね。

O:おお…

H:初々しいっすよ。16歳?

O:16歳(笑)当時…2枚目なのかな、レコーディングしたのは。向こうで50回ぐらいテストをされて、ようやく録音出来たみたいなんですけど。

H:あ、そうなんだ。いや、いいですよ。このままやればよかったね(笑)

O:日本に帰ってきちゃいますからね、当然。

H:まあ、それで有名になったんですけどね。

O:(笑)

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H:もう1曲聴きたいな。"ゴメンナサイ"やってるんでしょ?

O:そうなんです。そもそもはこの"Gomenasai"をやってるというので、探して買ったんですね。

H:SP盤しか出てない、と。

O:そうです。日本でも当時出なかったですし、今でも出てないと思います。

H:レアですね。

O:で、B面の"Gomenasai"が「エリチエミ&G.I.ジョー」という名義で…(笑)

H:G.I.ジョー、どうしたの?

O:まあ、進駐軍で流行った曲なんで…

H:あー、そうだそうだ…んー。

O:進駐軍の将校さんのベネディクト・メイヤーズ(Benedict Mayers)っていう人が作詞をして、レイモンド服部(Raimond Hattori)が書いた曲ですね。で、その人の勧めかなんかで、Disneyに売ったんですよ。この曲の権利を。

H:ホントに?

O:だからクレジットにDisneyの出版社が書いてあるという、ふしぎな…(笑)じゃあ、"Gomenasai"を。

H:はい。

 

 

Gomenasai (Gomen Nasai) - CHIEMI ERI And G.I.JOE 

 

  

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H:なるほどね…アメリカンですね(笑)いやー、歌ってる人は誰だかわかんない、G.I.ジョーっていう人(笑)

O:G.I.ジョー、誰でしょうね。

H:うまいよね、みんな。いや、すばらしい。江利チエミさん。

O:ね。16歳ですよ(笑)

H:あのね、この世代…年代ってすごいんだよね。雪村いづみさんもすごかった。

O:すごいですよね。

H:カヴァーをやると、アメリカのシンガーみたいだった(笑)

O:英語とかね…

H:英語、よかったんだよね。

O:進駐軍のキャンプを回って…12歳の頃から回ってたみたいですね、江利さんは。

H:ね。いやいや、だいぶ今とは違う時代ですけどね。

O:はい。

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H:時代と言えばですね、3/6に…『HOCHONO HOUSE』が出まして。

O:わーい。

H:長く待ったんだよ…作ってから2カ月ぐらい待って、やっと出るんで(笑)

O:(笑)

H:まあ、その間落ち込む…

O:落ち込むんですか。

H:落ち込むんだよ。「もうダメだ!」。「ダメなもの作っちゃった!」とかね。

O:いやいや…すばらしいじゃないですか。

H:みんなの声を聞くと安心するんですけどね。よかった…

O:もう、みんな聴いた頃ですね。このラジオの[放送される]時は。

H:もう聴いてるんでしょうね。あの、この場を借りて…なんて言ったらいいのかわかんないけど(笑)そんなことはいいか(笑)

O:(笑)

H:慣れないことはやめて…しかも、明日(3/11)は震災の記念日…記念日っていうとヘンですけどね。震災の日だったんで。『HoSoNoVa』が出た頃を思い出しますよ。ちょうど、やっぱり、いま頃…

O:そうですね。ホントに僕、『HoSoNoVa』のジャケットの入稿をしてる最中、ビクターの方と電話してたところです…

H:揺れた時ね。すごいことやってたね(笑)

O:「とりあえずちょっと、電話切ってみますか?」って言ったらもう、どこともつながらなくなっちゃって(笑)

H:あー…よく、まあ、入稿できたよね。

O:翌日入稿しましたけどね。

H:そうだよね。すごいよ。

O:で、印刷屋さんが不安になっちゃって、なんかもう、動いてないと…みたいな感じで。

H:あ、わかるわかる。

O:仕事をすごいしてましたよ。

H:わかるよ。なんかやってないと不安だよね。

O:んー。

H:まあ、大変な時期に出たんで…うん。思い出しますね。

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H:さて、本題に戻りますとですね。

O:本題…?

H:本題っていうかなんというか…(笑)本題なのかな?これ…

O:(笑)

H:えー、日本のね。1950年代当時の人たちがいかに、アメリカの音楽のマニアックな部分に影響されてるか、っていうね。

O:そうですね。

H:予想以上ですよね。

O:予想以上ですね。

H:たとえば…レイモンド・スコット(Raymond Scott)ね。みんなよく聴いてたんだね。

O:レイモンド・スコットだと50年代というか、30年代末から40年代ですね。

H:そうだ、そうだ。

O:まあ、戦争が始まるともう…

H:途切れちゃうね。

O:途切れちゃうんですけど、その前はホントに…日本でもヒットしていたし、舞台で…吉本新喜劇だとか。松竹少女歌劇でもたしか、服部良一のアレンジで"18世紀のサロンにて(In An 18th Century Room)"とかやってた…"Toy Trumpet"だったっけな?

H:そうかそうか。かなり、ポピュラーだったっていうことだよね。

O:そうです。映画にも出てたんで、それで有名にもなっていたはずです。

 

H:それでさ…エノケンさんね。榎本健一さん。

O:はい。あの…1月の末ぐらいに、早稲田の演劇博物館のイベント…イベントというか…

H:そういうのがあったわけね。

O:はい、集まりがあって。その中で、栗原重一さんというですね…あまり知られていない方がいるんですけど。

H:うん。

O:エノケンさんの映画の舞台音楽のほとんどをやってた方…

H:重要人物だ。

O:重要人物がいるんですよ。で、その方の残した楽譜が早稲田で…去年、研究が始まって。

H:あ、そうなの。

O:それの途中経過発表みたいなシンポジウムが…

H:その方はいま…

O:もちろん亡くなってます。

H:そうですよね(笑)

O:1983年に亡くなってますね。1897年生まれですもん。

H:じゃあ、再発見されたわけですね。うわー…

O:で、その発表会があったんで…ちょっとおもしろそうだな、と思って何気なく遊びに行ったんですね。

H:においを感じて…

O:そうなんですよ(笑)で、行ったら、第2部が、当時のスコアを使って再演するという…セクステッド(6重奏)ぐらいの楽団がいて。

H:あ、そうなの?

O:で、その楽団のリーダーの人も知り合いだったので…

H:あ、若い人たち

O:渡邊恭一くんっていう、サックスの…去年の漣くん(高田漣)のライヴでも出てたはずです。で、彼はボー・ハンクス(The Beau Hunks)のメンバーと接触したこともあったり、そういう人なんで…

H:あ、そうなんだ。

O:けっこう、おもしろいところにいる人で。彼がリーダーでその楽団を率いてやってるんですけど、その中で"18世紀のサロンにて"を再演したんですね。それがすばらしくって。他にも"ボレロ(Boléro)"だとか、いろいろやったんですけど。

H:演奏だけをやったってこと?

O:演奏だけです。あの、"ボレロ"はエノケンの映画をバックに、実演で…BGM付ける感じでやったんですけど。

H:なるほど。

O:で、その時の話を聞いたら、その栗原さんの楽譜の中に"Powerhouse"もあった、と。

H:名曲…

O:"Twilight In Turkey"もあった…

H:あー、もう、しょうちゅうかけてるね。

O:おそらく"Toy Trumpet"もあるだろう、と。

H:そう。

O:だからおそらく、エノケンの舞台でやってたわけですよね。"Powerhouse"とかを。

H:…信じらんないね。

O:(笑)

H:見たかったね。

O:見たかったですね…そういう事実が。

 

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H:まあ、それで、エノケンさんが歌ってるのがあるんでしょ?

O:そうなんですよ。その栗原さんが音楽を担当しているエノケンの映画をYouTubeとかでバーッと見てって。

H:うん。

O:そしたらですね…

H:見つけたんだね。

O:『孫悟空』という、1940年の映画の中で…

H:有名な映画だよね、うん。

O:「砂漠よいとこ」というタイトルが一応ついてるんですけど。それを…(笑)"Twilight In Turkey"をエノケンと岸井明が歌っている、というのを見つけましたんで…

H:すごいめずらしいな。

O:それをちょっと…

H:はい。

 

 

砂漠よいとこ - 榎本健一・岸井明 

 

  

H:あれ、これは…"Twilight In Turkey"のメロディは出てこないじゃん(笑)

O:Bメロですよ。Bメロをずっと繰り返してるんですよ。

H:ああ、あそこのね、アラブっぽいとこね。なんだか…ふざけてるね(笑)

O:(笑)砂漠の中で、美女がたくさんいるオアシスを見つけて。

H:なるほどね。

O:お酒を飲んで、歌い踊るシーンですね。

H:榎本健一は僕が小学校の時はまだ人気があったよ。「エノモトケンイチです!」って真似してた、みんな(笑)

O:(笑)

H:これ鳳啓助かな?「ええ、オオトリケイスケでございますけど」。

O:ほぼおんなじ(笑)

H:おんなじだね(笑)

youtu.be

 

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H:さて、この続きの流れでいっていいのかな?

O:いいですよ、はい。

H:こないだ週刊誌見てたら、往年のスターの付き人をやってた人たちの証言、っていう特集があって。まあ、いろんな人が出てくるんだけど、中に森繁さん(森繁久彌)も出てくる。

O:はいはい。

H:で、森繁さんの付き人やってたのがなべおさみさんだ。で、付き人から離れるときに、「お前にはぜんぶ種を植えつけておいた。それが実るのは自分がいなくなってからだろう」って。いま咲いてるのかもね(笑)

O:(笑)

H:いや、いろんなスターの…昔の人たちはおもしろい。んー。杉村春子さんとかね。なんか、みんな背筋がピーンとしてるからね。で、その森繁さんの歌が聴けるんですよね。

O:そうなんです。シンポジウムのときに…当時の日本映画って、著作権に関することがすごい甘かったんで…

H:まあ、そうだろうな。

O:この『孫悟空』の中でも"星に願いを"とかね、使っちゃってるんですよ。メロディをやんわり変えて。だからちょっと、なかなか…今リリースするのは難しいような話があって。で、森繁さんの…1950年のものでですね、『腰抜け二刀流』という…

H:…気になるタイトル(笑)『腰抜け二挺拳銃(The Paleface)』だよね。

O:まんま、隠す気なし、っていう感じですよね。

H:ボブ・ホープ(Bob Hope)、んー。へぇ、それは…ひょっとすると"ボタンとリボン(Buttons and Bows)"なわけ?

O:そう…だと思いますよ?

H:わかんない?

O:いや、聴いてわかると思います(笑)

H:歌ってるだけね?日本語でね。

O:歌ってます。

H:それは聴きたいですよ。

O:じゃあ、聴いてみましょう。

H:森繁久彌さん。

 

 

腰抜け二刀流 -  森繁久彌轟夕起子

 

 

H:これは"ボタンとリボン"に…似てるけど違う曲だね(笑)

O:似た感じですよね(笑)

H:ちょっと変えてるんだね(笑)やっぱり遠慮してるんだ。

O:50年になると、ちょっとそういう意識が…

H:芽生えてくると…ゆるい時代ですよね。ええ。今、大変ですよ。

O:んー…

H:アメリカは知的所有権、すごいですからね。

O:そうですね。

 

H:さて…きょうはなんか、ヘンな世界にさまよいましたけど。

O:(笑)

H:まだあるの?こういうの。

O:いや、さすがに(笑)

H:じゃあ…なんか、きょうの締めを。なにがいいですか?

O:締めですか…じゃあ、もう、日本語のでいいですかね。岸井明の"唄の世の中"って1936年の録音なんですけど。

H:うん。

O:あの、"Music Goes Round and Round"。

H:あー!

O:…を、日本語でやってるんですけど。これもなかなか、良い、ですよ。

H:よかった。

O:ぜんぶ同じなんですけど…鈴木静一さんという方が、さっきの「悟空」も…編曲がそうなのかな。

H:凝ってたよね。うん。

O:で、いまの森繁さんは、作曲が鈴木静一さん。

H:なるほど…

O:で、今回の"唄の世の中"は編曲が鈴木静一さんです。

H:なるほど。では、それを最後にですね…また来週!

 

 

 

唄の世の中 - 岸井明