2019.03.24 Inter FM「Daisy Holiday!」より

 

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 ♪~

時刻は午前1時です。ここで、Daisy Holiday!を始める前に、お知らせがあります。来週、3月31日のDaisy Holiday!は、都合により、放送時間が変わります。放送開始時間は23時半、夜11時半となります。いつもより1時間半、早い時間です。お間違えの無いよう、お願い致します。では今宵も、Daisy Holiday!をお楽しみください。

 

H:こんばんは。細野晴臣です。えー、今週も先週に引き続きnever young beachの安部くん(安部勇磨)、来てますよ~。

安部:よろしくお願いします。

H:よろしく。きょうは…never young beachの新作についてね。

安部:あ、はい。ハァー、緊張します…

H:楽しみだよね。いつ出るんでしたっけね?

安部:5/8に、新しいアルバムが出ます。

H:えー、タイトルが『STORY』。いいタイトルだね。

安部:あ、ホントですか!僕、この前もアルバムのタイトルをほめて頂いて、細野さんに…

H:なんだっけな?(笑)

安部:(笑)『A GOOD TIME』っていうアルバムなんですけど…

H:ああ、そうだそうだ。

安部:「いいタイトルだね」って言ってくれて、すごい…もう、一個一個うれしくて…よかったです、今回も。

H:いやー、タイトル大事だもんね。

安部:大事ですよね。すっごい考えちゃいます。ありがとうございます。

 

H:じゃあね…どういう話をしようかね。先週話してたのは…そうそうそう、僕がなんか余計なこと言ったっていう。

安部:そんなことないです(笑)スタジオを…前回のアルバムからの曲を細野さんに聴いて頂いたときに、2年前…「スタジオを変えてみたら?」とか…

H:それスタジオの人、怒るんじゃないの?そんなこと言ったら(笑)

安部:(笑)で、もう僕は、あーそういうことかー!とか、じゃあチャレンジしてみよう!っていう、いろんなきっかけができまして。

H:チャレンジだからね。何事もね。

安部:僕らなりにチャレンジしてみよう、と。いろいろ試行錯誤したり…

H:おんなじだよ。僕もこの、『HOCHONO HOUSE』はチャレンジだからね。変えたかったんだ。

安部:えー!

H:前の音じゃダメ、と思って。

安部:もう、すごいですね…ホントにすごいですね…

H:それって…なんて言うの、止むに止まれぬ気持ちじゃない?誰も止められない。それは。

安部:そうですね。で、作ってて楽しいのに、完成した頃にはもう次の…こうしておけばよかったかな、とか。

H:落ち込むんだよ。

安部:落ち込みます、僕…

H:いま落ち込んでるでしょ?

安部:落ち込んでます(笑)わかります…

H:[作品が]できて、リリースまでの間って落ち込むんだよ(笑)

安部:すごい落ち込みます!そうです!いま、まったくおんなじで…できたのにまだ人には聴いてもらえないし。で、時間もあるし、なんだかそわそわしちゃって…

H:そうなんだよね。けっこう、時間が長いよな。

安部:そうなんです。もう、はやく忙しくしてくださいって言ってます(笑)

H:できたらすぐ出したいよね。んー。

安部:すぐ出したいです…はい。

 

H:もう、聴いちゃおうかな、じゃあ。さっそく。

安部:よろしくお願いします。

H:おすすめを、ちょっと…選んでもらえる?

安部:えー、どうしよう…じゃあ、えっと…これはもう、僕、作るきっかけは本当、まさに細野さんで…

H:うん。

安部:おととしの1月に大雪が降ったんですよね、東京で。

H:あー、あったね。

安部:電車が止まったりとか。で、もう本当に"しんしんしん"のような気持ちになりまして。

H:んー。

安部:で、それを僕…ホント、まんまじゃねぇか、あんな曲が作りたい、っていう思いから作ったような曲で。"うつらない"という曲があるので…

H:ちょっと聴かせてください。

安部:お願いします。

 

 

うつらない - never young beach

(from 『STORY』) 

 

  

H:おもしろい。"しんしんしん"だね(笑)

安部:(笑)そうです、すっごい、もう…1月にそういう気持ちになりまして。

H:はっぴいえんどみたい。

安部:あんまり、こういうことを歌ってる人って今の時代、いないな、と思って。

H:そういえばそうだよな。んー。

安部:で、だったら…こんなに恋の歌とかいっぱいあるんだったら、こういう歌も、別に僕ぐらいは歌ってもいいんじゃないかな、と思って。

H:いいねぇ。

安部:で、そういう曲を作りました。ハァー、緊張しました…(笑)

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H:音もね、変わってるよね。

安部:あ、ホントですか!うれしいです!

H:バンドっぽくないっていうか…どうして?これ。

安部:これは…細野さんの作品や、僕の最近好きな人とかの作品をたくさん聴いて、音数だったりとか、音の余白がすごく大事だな、ということを考え始めて。

H:うん。

安部:ライドだったり、シンバルにすぐに行かない、とか。ハイハットでなるべくなんとかする、とか。スネアだけで、キックだけで…あとはコーラスとかギター、あとはグルーヴ感とか…そういうもので抑揚をつけれたらいいな、っていうので…ちょっと、今までの僕らから音数を減らしてみたいな、っていうのをテーマでやってみました。

H:おお。じゃあこれ、ドラムスは…

安部:あ、生でちゃんと叩いてるんですけど、もうずっと…[ドラマーに]つまんないと思うけど、もしかしたら楽しくないかもだけど、ずっとそれで…って(笑)

H:そうなんだ(笑)

安部:ベースとかも、ぜんぜん動かなくていい、そのままやってほしい、って言って…はい。やりました。

H:ほうほうほう…いやいや、すごい的確なダイレクションだよ、それ。

安部:あー、うれしいです!

H:いや、知らないけど(笑)

安部:(笑)

H:その[ディレクションの]通りになってるから。うん。

安部:ありがとうございます。うれしいです。よかった…

 

H:なんか…成長した感じがあるよね。ただの若者じゃなくなってきたね。

安部:あー!うれしいです!

H:いくつ?いま。

安部:今年で29になります。

H:あー…微妙な、ね(笑)

安部:(笑)

H:だって、デビューした頃って21歳ぐらい?

安部:そうですね、22とか23ぐらいですね。

H:そのくらいはね…勢いでいっちゃうからね。

安部:そうなんですよ。ちょっともう、勢いだけでは、やっぱ、いけないな、とか。

H:うん。いけなくはないけど(笑)

安部:(笑)なんか、音楽…音楽ってなんだ?とか、常に悩む中で、1回ちょっと、こういうことにチャレンジしないと、この先に何もない気がする、みたいな…考えが出てきて。

H:んー。

安部:でも、これをやったことによってすごい楽しくて。

H:なるほど。

安部:こういうことができてたらこういうことができてるんだな、とか。いろんな気付くことがあって。やってよかったな、って今は思います。

H:よかったよ。うん。

安部:うれしいです、ありがとうございます。…

 

H:他の曲は、でも、勢いがあるんでしょ?

安部:いや、全体的に…(笑)

H:全体的にこうなの?(笑)

安部:BPMは前後はするんですけど…

H:内省的になってきたね。へぇ。

安部:わりとぜんぶ…ドラムとかも、バーン!とかいかない、とか。ギターもコードでジャカ~ン、といかない、とか。そういうのをしなくても、そういう色が付いてたらいいね、っていう。

H:僕たちも若い頃…1970年代の前後ね。アメリカのバンドがそういう感じになってきたから。

安部:うんうん。

H:それを巷では「アートロック」とか「ニューロック」とか言い出して。それまではね、ゴーゴーダンサーがいて踊ったりするタイプの音楽ばっかりだったから。そのバンドが出てきた頃は…もちろん、サイケもあったけど、バンド(The Band)とかバッファローBuffalo Springfield)とかは、女の子がキャーキャー言わないんだよね。

安部:へぇ…

H:男ばっかり聴いてる、っていうか…(笑)しかも、みんな座って聴いてるっていう噂が立ってて。踊らないんだ、と。

安部:え、座って聴いてたんですか…音楽を…(笑)

H:(笑)だから、なんだ…時代がその頃変わっちゃったんだよね。それに影響されてはっぴいえんどみたいな、そういう音楽になってきたんだよね。

安部:へぇー。でもなんか、今の世の中もそういう…

H:そんな感じなのかな?いま。んー。

安部:細野さんのこと大好きなマック・デマルコ(Mac DeMarco)さんとかも、やっぱ、音数がすごく少なくて。

H:そういえばそうだよね。

安部:シンセの音とか、アコギの音がポロポロって鳴ってたりとか。

H:うんうん。

安部:やっぱり…そういう時代があるのかな、と。

H:あるみたいね。

安部:だから最近、海外の音楽を聴くとそういう流れが…音数が減って…僕も2000年代とか2010年代の頭ぐらいはわりと「ガレージロック」みたいな。ロックスターみたいな人たちがいっぱいいたんですけど。

H:はいはい。

安部:そういうロックスターみたいな人がいなくなって…ちょっと変わってきてるんだな、っていう…感じますね。

H:そうかそうか。例えば僕が1980年代に作った環境音楽みたいなね、『花に水』っていうのを…ウィークエンド・ヴァンパイア*がやってたりするんだよ。なにがいいんだろう、と思って(笑)

安部:(笑)

[*ヴァンパイア・ウィークエンド(Vampire Weekend)のこと。]

H:たぶん、そうなんだろうな、そういう…「違う視点」をみんな持ちだしてるんだろうね。環境音楽なんて…今頃みんな聴くっていうのは予想してなかったから、僕。

安部:そうっすよね。いやー、どこから知るんでしょうね?でもすごいですよね、細野さんの…海外のいまの若い世代に…

H:いやー、わかんないんだよな…

安部:だって…ヴァンパイア・ウィークエンドなんて、僕は中学校・高校から聴いてましたけど…そこが細野晴臣さんと繋がるのか!みたいな(笑)

H:ふつう繋がんないよね(笑)

安部:でも、あの人たちも最初はわりとバンドっぽい感じだったのに、いまはまた変化していって…そういう流れになってってるんだなぁ、とか。最終的に全員、細野さんのところに向かっていくんじゃないかなぁ、と…(笑)

H:やめてくれよ(笑)

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安部:でも、今をときめく…というか、僕の大好きな人がみんなぜったい、細野さんを…デヴェンドラさん(Devendra Banhart)だったりとか。みんなそこに繋がるのがすごく不思議で…でも、まあ、必然でもあるのかな、とか…

H:いやー、わかんなくてね。マック・デマルコがこのスタジオに…去年かな?去年来たんだ。

安部:来日されてましたもんね。はいはい。

H:そのときに、僕がその頃やってたブギウギとか…「OKだ」ってひとこと言うんだよね。あ、その前にデヴェンドラも来たんだ、ここに。デヴェンドラにもおんなじこと訊いたら、「パンクだから」って言うんだよ。

安部:(笑)

H:パンクなんだ、と思って…

安部:パンクなんですね、もう、いま。ブギウギっていうのは…あ、でも、デマルコは「OKだ」って言ってたんですね。

H:「OK.」って言ってた。

安部:あ、そういえばカヴァーされてましたねデマルコさん。"Honey Moon"。

H:そうなんだよ。日本語でね。

安部:日本語でやられてましたね!あれも素敵でしたね…

H:なんかね、不思議な気持ちだったね、あれ。

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安部:やっぱ…海外公演もされてたじゃないですか。

H:僕?

安部:はい。細野さん。どうでしたか?ウワァー!って感じなんですか?みなさん。

H:なんかね…大阪でやってるような感じ(笑)

安部:(笑)あ、そんな「海外の感じ」じゃないんですか?

H:すごい緊張したんだけど、[始まってみると]すごいリラックスしてて。もう日本語でいいやと思ってしゃべったら、ウケるんだよね。

安部:あ、[意味が]わかってらっしゃるんですかね?みなさんは…

H:なんかね…ニュアンスが伝わるみたいね。

安部:へぇ…

H:姿かたちがおかしいのかもしれないけどね(笑)

安部:(笑)日本のお客さんと海外のお客さんってぜんぜん違ったりするんですか?

H:昔は違ってたけどね。

安部:あ、いまはそうでもないんですか?

H:なんかね…変わったね。みんな日本人みたいになってきてるよ。

安部:あ、じゃあもっとリアクションしてくれるっていうか…

H:そう。自然な感じ?ぜんぜん構えてない。だから、こっちも構えなくなって…昔はね、行く前はもちろん緊張して、[ステージに]出る時はもっと緊張してたんだけど、そういうことが無くなったんで…

安部:へぇ…

H:たとえば…スケッチ・ショウ(SKETCH SHOW)とかやってたときもスペイン行ったりしてたんだけど…時々、来るんだよ。ファンがね。現地の人が。そうすると、CDとペンを持ってずけずけと楽屋に入ってくるんだけど…

安部:あ、楽屋にまで来るんですね…

H:ホントは入ってきちゃいけないはずなんだけど…(笑)

安部:そうですよね(笑)

H:そこら辺はすごい図々しいのに、「サインくれ」って言うときにペンがすごい震えてるのね。

安部:(笑)

H:で、日本語で言うと「ッs、さいん、くださぁい…」みたいなね(笑)

安部:(笑)あ、そこは緊張されてるんですねみなさん、やっぱり。万国共通で…

H:でもなんか、日本の人とおんなじなんだよ。それが。

安部:熱意の出し方がちょっと違うんですね。

H:なんか、こう…いまは「オタク」とは言わないんだろうけど…「そちら」って言うのかな?いま(笑)

安部:(笑)

H:そういう人が蔓延しててさ。

安部:へぇ…

H:最初にジム・オルーク(Jim O'Rourke)が東京に来て会ったときもおんなじ気持ちだった。あ、この人日本人みたい、と思って。なんか、態度というか、仕草というかね。謙虚さというかね。不思議だよね。みんな日本人みたいになってんだよね。

安部:あー、そういう風に感じるんですね。

H:感じましたよ。

安部:昔ほどそういう、テンションの差が無くなってきてる…

H:無くなってるね。

安部:へぇ…

H:ただ、今度、次に行くニュー・ヨークはどうだか知らないよ。

安部:あー…

H:すげぇ緊張してる(笑)

安部:緊張されるんですね…

H:気が重い…

安部:気が重い…(笑)

 

H:そういえば、never young beachは中国行くんだって?

安部:あ、そうですね。僕ら、毎年わりとアジアは行かせて頂いてて…そうですね、今年も行かせて頂きます。

H:中国のどこに行くんですかね。

安部:台北…上海です。

H:上海ね。台北は台湾だよ(笑)

安部:(笑)上海に…フェスに出させて頂きます…

H:あ、そう。何度か行ってるんだね、じゃあ。

安部:何度か行ってますね。

H:どうなの、それこそ[お客さんの反応は]。

安部:韓国とかにも行くんですけど…逆に、日本の若者よりも元気があるな、っていう風に感じました。

H:あ、ホント?

安部:あと、音楽に対するものが日本の人たちよりもっと積極的というか、ノり方も…横にノってたりとか。だけど、キャー!とかワー!とかも言うし、日本のお客さんにはなかなか無いものだな、っていう…

H:なるほど。んー。

安部:だから、今アジアの…韓国とか台湾とかそういう国に、ヨーロッパに行くバンドが増えてきてるんですけど。

H:うんうん。

安部:あ、すごいな、っていうか、日本ももっと若い人たちが…僕も含め、もっともっとがんばって、楽しくやってかなきゃな、と思いましたね。

H:なるほどね。

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H:で、ツアーもあるんだよね。

安部:ツアーあります。

H:ちょっと発表してもらおうかね。

安部:そうですね…僕たちは4枚目のアルバムが5/8に出るので、それを大事に持ちながら…6か所の、初めての、never young beachホールツアーっていうのをすることになりまして。

H:はいはい。

安部:えー、最終日は5/28の…東京のNHKホールになります…

H:間違ってると思うな。29日だよ。

安部:(笑)29日です…5/29のNHKホールがツアーファイナルとなりまして。そちらが…もうすぐ始まりますので…はい。

H:なるほど。僕から言うとね、10日に北海道・札幌道新ホール…

安部:あー!ありがとうございます、すみません…(笑)

H:12日大阪・グランキューブ大阪、15日新潟・新潟市音楽文化会館、17日…ぜんぶ5月ね。愛知・名古屋市公会堂、24日に福岡・福岡国際会議場メインホール、で、29日にNHKホール。すごいね!

安部:ありがとうございます…

H:ビッグイベントですね。

安部:もう、やるぞ!っていう気合の表れです(笑)

H:楽しみ。

安部:うれしいです、ありがとうございます。

 

H:じゃあ、もう1曲聴かせて。

安部:あアぁ~そうですね…緊張します…

H:(笑)

安部:じゃあ、あの…きょう流して頂く2曲っていうのはですね、去年のシングルになってたものなんですけど。

H:あ、ホント?うん。

安部:このときはですね、ちょっと…僕の心が非常に怒りにわいていたときでして…

H:どしたの?(笑)

安部:いや、こう…渋谷の東横のビルが取り壊されるとか、オリンピックに向けて…下北沢とか僕、よく行ってたんですけど…

H:無くなっちゃったでしょ。

安部:そうなんですよ。で、これってどうなんだろうな、っていうので…ホントに、さっき言ったように、最近そういうこと歌ってる人いないし、僕ぐらいが歌ってもいいんじゃないか、っていう気持ちで…

H:さっきと同じだね(笑)

安部:"歩いてみたら"っていう曲なんですけど、オリンピックとかに対しての歌ですね。

H:ああ、じゃあ聴かせてください。

 

 

歩いてみたら - never young beach

(from 『STORY』) 

 

  

H:んー…すごいシンプルだね。

安部:もう、このときはシンプルに、シンプルに…(笑)やってました。

H:いや、でも、この歌詞は…自分と同じだ、これ。渋谷だよね?

安部:渋谷です!渋谷ですっごい、こういうことを思ってて…

H:ね、思うよね。

安部:どこいっちゃうんだろうなぁ、とか。だから…"風をあつめて"の「翔けたいんです / 蒼空を」のところとか…

H:うん。

安部:そういう「風街」というものがあって。僕はもう、それをリアルタイムで見たことがないし…でもこの後の、僕の20,30,40とか下の人たちは、さらに僕の見た景色を見れないんだなぁ、とか思うと、どうなんだろうなぁ、みたいなことを…

H:そうだよ。あ、わかった。はっぴいえんどをやってた頃といまが似てるんだね。変わり方がね。

安部:あー…たしかにそうですね。

H:ちょっとレベルが違うけど…次元が違うけど。でも、あの頃はまだ残ってたから。まだ自分たちの中にまぼろしっていうのはちゃんとあって。いい風が吹くときもあったわけだよ。街にね。東京は。いま無くなっちゃったかな、っていうね。

安部:僕はもう、それがわからなくて。だから図書館とかに行って、60年代、70年代の本を読んで。あ、こんな景色があったんだな、とか。

H:うわー、なんか、すごい…ディストピアの世界だな。

安部:(笑)細野さんが20代、30代のときってこういう景色が広がってたのかぁ、とか。渋谷って50年でこんなに変わっちゃったんだ…

H:そう、おんなじだね。僕も60年代の写真見ると、こんなだったんだ!と思うわけ。びっくりしちゃう。

安部:だって、なにも無いような状態じゃないですか。

H:無いんだよ。空、広いしね。

安部:それが50年…たかが50年でこんな高いビルが建って、人がこんなんになってて…

H:[僕は]その当時生まれたんだけどね(笑)

安部:(笑)でも、けっこう…[自分にとっては]当たり前だったんですけど、細野さんたちの時代について調べるにつれて、当たり前じゃなかったんだ、とか。

H:たしかに。

安部:60年代のオリンピックがある前は下水とかももっと無くて、においとかも無かったのかな、とか。

H:んー、無かったよ。

安部:だからそれは僕はショックで…

H:昔はね、夏はね、におうときもあったよ。でも、冬はにおわなかった。いま冬でも…

安部:くさいですよね…

H:くさいでしょ?オシャレな街ほどくさいんだよね(笑)

安部:そうですね(笑)僕はこのときはそういうことを調べてたときで、あー、そういうことをちゃんと歌わないと、みんな…見て見ぬふりではないけど、こわいな、とは思いました。

H:いや、ホントだよね。僕もいつも、ひとりでブツブツ言ってんだけど…

安部:(笑)

H:そうか、歌にしたらいいんだ。教わったわ(笑)

安部:いやいやいや(笑)僕もブツブツ言っちゃうな、と思ったんですよ。これ歌にしないとな、と思って。こういう風にチャレンジして、やってみました。

H:エラい!

安部:(笑)うれしいです!

H:いや、だってもうね…耐えられないんだよね。

安部:わかります…すごいわかります…

H:だから、どの都市行っても、そんなにくさくないよ?実は。アジア行ったってね。まあ、食べ物のにおいとかはすごいけど。

安部:あー、そうですね。

H:でも、下水から温泉たまごみたいなにおいは…あんまりしないよ。東京は、すごいね。

安部:それでも、何も気にせず、冬とかにイルミネーションとかを写真で撮ってるところを見ると…スマートフォンとかで。

H:そうなんだよ、写真はにおいはね、写んないんだよ(笑)

安部:だから僕は…どこまで人間って、そういうものに慣れてしまって…こういうにおいとか、すごく豊かなものがあるのに、それを失くしてくのかな、この先、って…なるべく僕はそれに抗いたいな、とか。細野さんたちがこういうものを残してくれて、そこに僕は魅力を感じるので…

H:うん。

安部:僕はそういうのを、僕より下の[世代の]人たちに少しでも伝えられたらいいな、っていうので、これは書きました。

H:すごい。なんかこう、感慨深いっていうか…若いのに…

安部:(笑)ありがとうございます…

 

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H:いやいや、おもしろかった。[ツアーを]どっかで観に行けたらいいんだけどね…

安部:あ、ぜひ、よろしくお願いします。

H:じゃあ…アルバムじっくり聴かせてもらいます。

安部:ありがとうございます!

H:はい、『STORY』、5/8に出ます。みなさんよろしく。

安部:よろしくお願いします。

H:never young beachの安部くんでした。

安部:はい、ありがとうございました!