2020.04.05 Inter FM「Daisy Holiday!」より
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林:あの…家に帰って来ていきなりうがいは気を付けたほうがいいってよ?
H:なんで?(笑)
林:うがいをしてる間に中に入っちゃうんだって。
H:(笑)
林:だから、まず…うがいをする前に[水を]口に入れたら「ペッ!」ってやるの。
H:あ、それはやってる。
林:やってる?
H:口の中をまず掃除して…
林:それからうがいなんだって。
H:それはやってるやってる。うん。で、塩水でうがいすっとね、気持ちが良いんだよ。喉の奥に塩の感触が…あ、しょっぱい、と思うわけ。
林:甘いもん食べたくなんない?
H:いや…(笑)
林:(笑)
H:飲まないからね(笑)
林:あ、そっか(笑)
H:で、[水が]喉のどこまで来てるかわかるわけ。塩のおかげで。
林:うんうん。
H:あ、ずいぶん奥まで来てる、と思って。
林:体感するんだ。
H:うん。
林:へぇ~。
H:で、ちょっと飲んじゃったりする(笑)
林:それ、溺れたときとおんなじじゃない(笑)
H:そうそう(笑)海水は0.9%なんだよね。塩の割合が。
林:へぇ。
H:それに合わせて作るんだよ、塩水。
林:そんなことまでやってんですか!(笑)
H:いや、「そのつもり」でやってるだけで、別に厳密に量ってない(笑)コップに9回だけシャッシャッシャッシャッ…て入れて。これで0.9、って(笑)
林:料理作るわけでもないのにね(笑)
H:まぁ、目分量だから。うん。
H:いやー、もう…YouTubeばっかり見てて。今はいろんな人がいろんなことを言ってるのをぜんぶ見てるの。
林:あ、そっちを探ってるわけね。あんまり見ないほうがいいですよ?
H:…最近そう思い始めて(笑)
林:見過ぎは良くないんじゃない?
H:たしかに。見過ぎちゃってるんだよね。
林:ついつい、ね。そういう風になるよね。
H:なんか、いろんな情報が頭の中に入っちゃって。イヤな話とかいっぱいあるんだよね。まぁ、それは言わないよ。人には言わない。
林:あの「専門家」っていうのがどこまで信じられるのかね。
H:専門家がさ…「防御法は?」っていうと「よく手を洗え」って言うだけだから(笑)
林:それ専門家じゃなくても言うでしょ(笑)
H:言うよ(笑)でも、それしかないんだね。
林:その「専門家」っていうのが…本当にその人が「専門家」なのか、どう確かめるんだろう、っていう感じがする。
H:ホントにね。で、ニーム(Neem)っていうお茶を飲んでるんだけど、僕。
林:あ、そう。
H:めっちゃくちゃ苦い。この世でいちばん苦い。
林:へぇ~。それはでも、いかにも体に良さそう。
H:うん。でも、毒性も強い。気を付けないといけない。
林:あ、じゃあ量が大切だね。
H:まぁ、お茶で飲んでるんだけどね。これはでも、インドでは古代から使われてる、アーユルヴェーダ(Ayurveda/आयुर्वेद)の一種だから。
[*インドの伝統医学の総称。]
林:なるほど。ただそのほら…使われているときの頻度とか量とか。
H:それがわかんないね。
林:そこをちゃんと知っとかないとさ。ああいうものはね…一見穏やかだけど実はすごいからね。自然のものとか。
H:強い。植物ってすごい。
林:すごいですよ、そりゃあ。
H:植物はさ、人間が出現する前からいるじゃん。
林:うん。たしかに。
H:で、整えてくれてるんだよ。酸素を出して。
林:はい。
H:そこに人間が来て…植物のおかげで暮らせてるわけじゃん。薬もそうだし。
林:いや、ホントそう。
H:抗生物質も。ぜんぶそう。植物がぜんぶやってくれてる。
林:ほら、シャーマン(shaman)とかってよくいるじゃない。
H:うん。
林:ああいう人たちって、どの草がなにに効くかっていうことを知ってる家系なんでしょ?
H:そう。薬草の専門家。
林:でも、一般人にはそれぜんぶ雑草にしか見えないからね(笑)
H:そうそう(笑)彼らはすごいよ。知ってるから、そういう薬草の効果を。いかに強いものか。
林:そうそうそう。
H:だから、それを採取するときにお祈りして…「きょうはこれくらいにしておきます」とかね、宣言するんだよね。その薬草の中のでっかいやつに挨拶するわけ(笑)
林:ほうほうほう…
H:で、宣言して、お供え物をしてから…
林:感謝だね。ある種のね。
H:そうそう。そのぐらいの、謙虚な感じじゃないと扱えないものなんだよ。ホントは。
林:それは代々、その家系だけでずっと踏襲されるんですか?
H:まぁ、そうなんだろうね。
林:ね。一般にはその…いわゆる知恵みたいなものは出ていかないわけですよ。
H:そうなんだよね。やっぱり「専門家」だから(笑)
林:(笑)
H:本当の「専門家」だよね。彼らはみんなね、煙草を吸うんだよ。
林:あ、そう?
H:煙幕を張るわけ。
林:へぇ。
H:で、煙草こそ、祖先との交信に使うわけ。煙をね。
林:それなんか、細野さんに都合の良いように言ってない?いま。
H:言ってないよ!(笑)
林:そんなことない?(笑)
H:だって僕、アメリカのネイティブに会って、連れてかれて…アナサジ(Anasazi)っていう遺跡を見ながら煙草を吸え、って言われて。
林:うん。
H:この煙によって交信するんだ、と。でも肺に入れなくていい、とかね。言うんだけど。
林:あ、じゃあふかすだけでいいわけね。
H:そうそう。
林:煙がポイントだってことね。
H:煙が大事なの。で、彼らにはパイプっていうのはすごく聖なる儀式だから。パイプを回すのね。煙草の葉だけどね、もちろん。
林:はいはいはい。あの、死んじゃったギタリストのジャケットの…なんだっけ、あの人。
H:誰だ。
(D:ジェシ・デイヴィス(Jesse Ed Davis)。)
林:そう、ジェシ・デイヴィスのジャケットがそうだよね。
H:あ、そうだ。あの人はネイティブ系なの。うん。
林:その煙草の葉っぱも農薬とかかかってない、ナチュラルなもので…
H:そうそうそう。あの…売ってるスピリッツ(アメリカン・スピリッツ)なんかもね、そんなつもりで作ってるみたいだけど。
林:で、紙にも巻かない。
H:パイプで。うん。
林:そういうことか。
H:どうですか、一服?
林:煙ね。
H:ちょっと失礼…フゥー…
林:いま煙に巻いたんでしょ(笑)
H:そうそうそう(笑)シャーマンはみんな煙に巻くんだよ。けむにまく、っていう。
林:けむね。
H:そうやって視覚を鋭敏にさせたりするんだよ。
林:んー、まぁ、意味はぜったいあるわね。
H:あるんだよね。それで、ああやって煙草を制限してるのは、ネイティブに対する怨念というかね。アメリカ。なんだろう。まぁいいや、この話は(笑)
林:(笑)
You Belladonna You - Jesse Ed Davis
(from『Jesse Davis!』)
H:本筋からそれた(笑)本筋に行こう。
林:…戻れる?(笑)
H:戻れるかな…巻き戻そう(笑)えーと…大学のときに音楽部に入ってたでしょ?
林:うん。高校のときにね。
H:あ、高校のときか。
林:軽音楽部に入ってた。
H:それの後輩に矢野顕子がいたりね。
林:そうね。鈴木顕子ね。
H:あ、鈴木顕子。すごいな、その…坩堝だな
林:そうね…
H:その頃はアッコちゃんとなんかやったりはしてないの?
林:いや、ぜんぜんやってない。もう[自分が]卒業して…それこそキャラメル・ママで…南佳孝くんだっけな。で、「矢野誠さんがいて。
H:はいはい。
林:なんか、あのぐらいのときに「青学の高等部にすごいピアニストがいる」みたいな話を…
H:あ、その頃?
林:うん。聞いた記憶がある。
H:じゃあその直後…わりとすぐにアッコちゃん、来たじゃない。
林:そうそうそう。「ああ、君ね。君だったのね」みたいな。
H:そうかそうか。だから、僕の知らないところでいろんな交流があるんだな、と思ってね。交流っていうか…例えば…誰だっけな。本に出てたけど忘れちゃった、もう(笑)
林:まぁね(笑)
林:ユーミンは、だって…いちばん最初は新宿のスタジオみたいな不思議なところで、ユーミンの曲を聴かせてもらったじゃないですか。
H:うんうん。
林:あれが最初。
H:あ、そう?じゃあ、おんなじなんだね。
林:僕らの周りで言うと…小原(小原礼)と幸宏(高橋幸宏)がユーミンのことをその前から知ってた。ムッシュ(ムッシュかまやつ)とかね。
H:あ、そうだ。そうだよね。ユーミンのデモを作ってた。
林:そうそう。シングルも作ってたって聞いたよ?
H:そう。それがね、"返事はいらない"なのよ。
林:あー、そうか。
H:で、アルファの村井さん(村井邦彦)から「"返事はいらない"の違うヴァージョンを作ってみてくれ」っていうから、電話がかかってきた。
林:うん。
H:それで、始めたんだよね。
林:最初はそこだったの?
H:うんうんうん。だから、最初にやったのは"返事はいらない"でしょ?
林:え、そうだった?
H:そうなんだよ。
林:レコーディング?
H:うん。
林:僕、もっとずーっと後だったような気がする。
H:いや、1枚目だよね?
林:いちばん最初にセッションでやった?
H:うん。
林:あー、そうだったっけ…"ひこうき雲"をいちばん最初にやったのかと思ってた。そうじゃなかったんだ。
H:そう、かもしれない(笑)
林:すごい、簡単に無くなったね話が、いま(笑)
H:(笑)
(from『ひこうき雲』)
林:まぁね、歴史ってこんなもんですよね(笑)
H:そうそうそう。当時はマッスル・ショールズ(Muscle Shoals)をいっぱい聴いてたじゃない。
林:聴いてましたねぇ…
H:ね。
林:でもね…細野さんに言うのは初めてなんだけどね。
H:うん。
林:細野さんがいろんなアルバムを僕らに聴かせたじゃない。その中でいちばん…脳天逆落としはマーティン・デニー(Martin Denny)なのね。
H:そうだったのか(笑)
林:僕以上に脳天逆落としは鈴木茂だよ(笑)だって、聴いてて「これ、ギター入ってないよ?」って言ってたから。
H:たしかにね…(笑)
林:でもね、あのマーティン・デニーを聴いて…最初は僕もなんだかどうすればいいんだろう、とか思ってたんだけど。だって、"お富さん"なんか入っちゃうんだもん(笑)どうなってるんだよ、これ、みたいな。
H:ちょっと待って、あれはアーサー・ライマン(Arthur Lyman)。
林:あれアーサー・ライマンか。そうか。マーティン・デニーじゃなかったっけ。
H:まぁ似たような…(笑)
林:あの世界だね(笑)そうか。僕、それ一緒になってた。
林:でも、あの辺のを聴いて…その後ね、ドラムを叩くときに一切の制約が…あれを通過したことで一切なくなった。
H:うんうん。
林:それはね、ホント感謝。
H:僕もそうなんだよ。
林:あれでぜんぶがね…いい意味でブチ壊れた(笑)
H:そうでしょう?(笑)あー、やっぱりそういう…だから、プレイヤーじゃないね。そういう音楽の聴き方っていうのは。
林:そうかな?完全にあれはひとつのターニングポイントっていうかね。
H:だって、ドラマーとしてもし聴いたら、なんにも無いじゃん、別に(笑)
林:まぁ、たしかにね(笑)でもサウンドとしてはめっちゃくちゃおもしろい。
H:でしょ?サウンドで聴いてるんだね。うん。いや、僕もそうだよ。マーティン・デニーのおかげでその後10年ぐらい生きられた、っていうか
林:マーティン・デニーで?ちょっと、きょう家帰ったらアーサー・ライマン聴いてみよう。もっと。
H:聴いてみてよ。"お富さん"。♪タタンタタンタタンタタンタタン…(笑)
林:どこまで行くんだ!みたいなね(笑)あー、そうなんだ。じゃあけっこう僕、違うところで間違ったこと言ってたね。マーティン・デニーって言っちゃった。そうなんだね。
H:まぁ、親戚だからな。親戚っていうか、弟子みたいなもんか。
林:え、どっちが先なの?
H:マーティン・デニー。
林:が先?あー、そうなんだ。
H:まぁ、ハワイでやってるんだよね。みんな。
林:そうなんですよ。あれがね…いつか細野さんに、なにか機会があったら言おうと思ってて。
H:そうか(笑)そうだったんだね。もう、それでぜんぶ納得したわ。なるほど。
林:自分がそれまで…ジャズも聴いたし、いろんなハワイアンだのカントリーだの聴いて。
H:いっぱい聴いてるよね。んー。
林:別にのめり込んでるわけじゃないんだけど、なんとなく入ってきてる、みたいなのが…マーティン・デニーという駅を通過したら…(笑)
H:(笑)
林:ぜんぶ、なに入れてもいいんだ!みたいな(笑)
H:おんなじだよ。まったく僕もそうだったから。"Sake Rock"っていうのを聴いてね。なんだ、こんなんでいいんだ、と思ってね(笑)
林:"Sake Rock"、あったね(笑)
Sake Rock - Martin Denny
H:それで…先週かけた"七夕の夜"がきっかけでTin Panが再結成っていうね、流れがあったじゃん。
林:うん。
H:それまで僕はアンビエントをやってて、ここのスタジオにひとりで籠ってたわけ。
林:はいはい。
H:誰ともやんなかった。生なんてぜんぜんやんなかった。
林:へぇ。
H:で、ひさしぶりにやったら楽しくて。"七夕の夜"で。それで、その直後に林くんと茂が来てくれて。ここに。
林:そうね。いっしょになんかやろうよ、って。
H:やろうって言われて、すぐやりたくて、乗っちゃったの。
林:うんうん。
H:ただ、難しかったね(笑)
林:いろいろね(笑)ホントだね。
H:でも、今聴くとなかなかおもしろいけどね。どう思う?
林:僕は、なんかこう…模索っていうかね、決まってなかったからこその魅力はあるな、っていう。逆にね。
H:そうだよね。
林:やってる最中は大変だったけど。
H:うんうん。意欲的だったような気がするよ。例えば…なんか聴こう。えー…なにがいい?
林:タイトルがいま出てこないんだよね…
H:"Queer Notions"とか…"Travellin' Mood"。"Flowers"。
林:"Flowers"は?
H:"Flowers"にしよっか。じゃあ、"Flowers"を聴きます。Tin Panです。
Flowers - Tin Pan
(from『Tin Pan』)
H:というわけだね。
林:おもしろい…なにを考えてたんだろうね(笑)
H:これ、よくライヴでやってたよな(笑)
林:ホントだね(笑)
H:今できないな…これ、3人だけだからね。なかなかだよね。
林:こういう…なんというか、ジャンルもへったくれもないよね(笑)
H:うん。わかんない、いまだに(笑)
林:でも、おもしろい。
H:おもしろいよね。これ出た当時…音楽誌から取材が来て、音楽好きの評論家みたいな人、誰だっけな…に、すごい辛辣なこと言われちゃった。
林:あ、そう。
H:地味だからね(笑)
林:(笑)
H:なんか、もっと期待してたのかな。TIn Panっていうとね。
林:どういうのを期待してたんだろうね。
H:わかんないけど…んー。
林:「お構いなく」って言っちゃえばよかったのに(笑)
H:そうだね(笑)まだ若かったから(笑)
林:(笑)
H:若かないか(笑)2000年だよな。20年前か。んー。それで、Tin Panはライヴもやったしね。
林:ツアーもチラッとやりましたね。
H:やったね。で、また…しばらくなんにもなかったね。
林:そうだね。
H:で、僕が自分でライヴをやり始めたときに、時々参加してくれたよね。
林:そうですね。
H:で、そのとき話したのが…ブラシが好きだと(笑)
林:いやー、ブラシっていうのはおもしろいよ。
H:で、カホン専門家になってたよね、当時(笑)
林:あれはあれで、自分の中では新鮮だったんですよね(笑)
H:そう(笑)
林:ブラシって、ドラムの中で唯一…いわゆる白玉っていうか、2分音符だの全音符だのができるでしょ?コントロールできるし。
H:そうだね。
林:そういうおもしろさがありますよね。だから、「歌える」っていうか。
H:そう、あのね…林くんはね、ドラム叩きながら歌ってるんだよね。関係ないメロディー(笑)
林:あれね、ミックスのときホントにイヤなんだよ(笑)
H:聞こえてくるんだよね(笑)
林:で、自分がいるときだったらまだいいんだけど、いないときにこれ、みんな聞いてるんだよなって…それがイヤでイヤでしょうがなくて(笑)
H:そっか(笑)あれは止められないんだろうね。
林:どうしようもない(笑)
H:やっぱりメロディーが聞こえてないとダメなんだね。
林:ダメなの。ぜったいダメなの。
H:あれは自分で作ってるの?メロディー(笑)
林:そんなことはないけど…(笑)まぁ、なんかね、自分で…そうですね。違う曲歌ってたりしますね。
H:そうでしょ?あれはね、ユニークだよね。あれで、あのまんまソロを作ったら?(笑)
林:2枚ぐらい売れるかな?(笑)
H:いやいや、時間がいくらあってもこれは足りないんで…また続きは…ちょっと時間を置いた後にね。また来てもらおうかな。
林:はい。
H:えー、きょうはじゃあこれくらいで…締めましょう。じゃあ、最後に僕のソロの『HoSoNoVa』から…ちょうどそういう話を…ブラシの話をしてたときのレコーディングね。"ウォーカーズ・ブルース"。ピアノは佐藤博で…どうもありがとうございました(笑)
林:ありがとうございました(笑)楽しかったです。
ウォーカーズ・ブルース - 細野晴臣
(from『HoSoNoVa』)