2019.06.16 Inter FM「Daisy Holiday!」より
H:こんばんは、細野晴臣です。えー、先週に引き続いて、2人のDJの音楽をずっと聴いていきたいと思いますが…お願いしますね。どうぞ。
テイ:テイ・トウワです。
佑果:Yukaです。
H:はい。「ハーモニーYuka」ちゃん。
佑果:ハーモニーYukaです(笑)
H:じゃあ、きょうは佑果ちゃんからちょっと…紹介してもらおうかな。
佑果:はい、お願いします。えーと、まず、マーティン・デニー(Martin Denny)の…
H:出ました。
佑果:"Caravan"。聴きたいです。
Caravan - Martin Denny
(from 『Exotica Vol.III』)
H: 出ましたね、マーティン・デニー。
テイ:ホントに、ね。YMOのおかげで知った音楽ですけど。
佑果:はい、私もです。このエキゾチックな世界観が…もう、最高です。
H:僕も…なんだろう、人に教わったんだけどね、マーティン・デニー。あ、でも小っちゃい頃聴いてたんだよ、ラジオで。
テイ:あー。
H:「ジャングル・サウンド」。
テイ:そうですね。んー。
H:でね、"Firecracker"がヒットしたとき…ちょっとヒットしたね、アメリカのソウル・ミュージックチャートで。
テイ:え?マーティン・デニーのですか?
H:じゃなくて、YMOの"Firecracker"。
テイ:そうですよね(笑)
H:そしたら、マーティン・デニーから電報が来たんだよね。
佑果:えー!
テイ:電報…
H:「取り上げてくれてありがとう」みたいなね。
佑果:お会いされたことは?
H:その後、会ったの。来日して…ホテルのラウンジでやってくれたんだよ。演奏。
佑果:えー!
テイ:すばらしい…
H:そのとき観に行って、話して。で、「ハワイに来たら絶対[うちに]寄れ」と。住所をもらったのかな。行かなかったけど(笑)
テイ:(笑)
H:なんで行かなかったかっていうと…近所に山があるんだって。ハワイって山が多いじゃん。で、[彼は]毎日登ってるんですって。
佑果:そうなんですか!
H:「いっしょに登ろう」って言われて…その頃僕、心臓弱くて(笑)息切れちゃうから、行くと登んのか…って(笑)
佑果:プレッシャーが…(笑)
H:うん。ちょっと行きそびれちゃった。行きゃあよかったかな…と思って(笑)
佑果:へぇ…
H:まあ、そういうような思い出がよみがえりましたが…では。
テイ:はい。じゃあ、あの…こないだ細野さんにご紹介した五木田くん(五木田智央)がチック・フロイド(Chick Floyd)っていう人を見つけてきて…ぜんぜん、僕知らなかったんですけど、おもしろかったんで他のアルバムを探して買ってみたんですね。
H:あ、ホント?
テイ:そしたら、すごいマーティン・デニーっぽいな、と思って。
H:へぇ。
テイ:そしたら、「マーティン・デニー・プロデュース」って書いてあって…(笑)
H:そうなんだ。それ知らなかったな、僕は。
テイ:それ聴いてみましょうか。
H:はい、ぜひぜひ。聴きたい。
テイ:"Moon Of..."
H:マナクラーチャイ?マナクーラ。
テイ:そうですね。
Moon Of Manakoora - Chick Floyd & His Orchestra
(from 『Hula-La』)
H:ぜんぜんマーティン・デニーだ、こりゃ…(笑)
テイ:ちょっとマーティン・デニーより粗いなぁ、と思って聴いてたんですよ。そしたらプロデューサーがマーティン・デニーさんだから…もうちょっとパワーがあるのかもしれないですね。
H:なるほど。
佑果:ちょっとアラビアン…
テイ:うん。有名な曲ですね。
H:ちょっと、アラブづいてるな、2曲。
テイ:うん。まあこんな感じで…ホントに普通のラウンジ・ミュージックというか…「普通」なんですかね?
H:うん、今となっては普通かもな。んー。
H:そうか。エキゾチックが続いちゃったか。
テイ:そうですね(笑)
H:アラブ系だよね。"Caravan"もこれも。
テイ:「水が無い系」というか。
H:だったらね、ちょっとヘンなのかけていいかな。
佑果:はい。お願いします。
H:あの…ダニエル・シュミット(Daniel Schmid)っていう監督が『ヘカテ(Hécate, maîtresse de la nuit)』っていう映画を昔作って。それの冒頭の音楽にすんごい惹かれたんだけど、ぜんぜん探せなかった。
テイ:うん。
H:で、ダニエル・シュミットさんが日本に来たときに、誰かに訊いてもらったの。「あの音楽は何だ?」って。そしたら「知らない」って言われて。
テイ:(笑)
H:だれかに任してて…(笑)で、仲間の岡田くん(岡田崇)が見つけてきてくれて。
テイ:あー…
H:すごいリサーチ力。で、それがね、ヘンな音楽なんだ。ちょっと聴いてもらおう。モハメッド…ってちょっと最近危ないけどね、そういう名前は…(笑)アブドゥルさんの、"Gafnouhou"。ヘンな名前の音楽です。
Gafnouhou - Mohammed Abdel Wahab
H:…っていうような感じがずっと続くんで…(笑)
テイ:カッコいい。
佑果:カッコいいです。
H:変拍子でね、数えられないんだよ(笑)これね、僕が80年代初期に『omni Sight Seeing』っていうアルバムを作ったときに聴いてて。こういう曲をやろうと思って、1回ちょっとレコーディングしたんだけど、ぜんぜん出来なかった(笑)で、ボツにしちゃった。
テイ:あら…
H:オケは残ってるんだけどね(笑)
佑果:えー、聴きたいです…
テイ:おお、すごい…カレー食べるときとかに聴きたいですね。
H:(笑)
佑果:でも、こういう…声が難しいですよね。私、こういう風に歌えるかなと思って、トライしようとしたんですけど…
H:ホント?
佑果:なんか難しくて…(笑)
H:やってみてよ~
テイ:十二音階じゃないやつ。
佑果:なんか、こう…曲がり方というか…それが独特というか。
H:そうなんだよ。僕もモロッコの音楽とか大好きで。リズムとかね。やりたいんだけど、歌えないんだよね。
佑果:んー…
テイ:で、あのとき細野さん、たぶん…"Esashi"とかやられてたじゃないですか。
H:うん。コブシにすごい惹かれてた。
テイ:そのコブシに近いっていうことですか?
H:そうそうそう。でも、この…あっちのほうの人たちって「塩声」っていうかね…塩のような声。
テイ:塩?saltですか?
H:そう。「塩顔」って言うじゃん(笑)
テイ:「塩顔」って言いますっけ…(笑)
H:なんかほら、砂漠の声だよね。乾燥してる。
佑果:なるほど。
H:ぜったい、[日本人には]無理だよ。そういう声ができないとこういう音楽できないもん。残念ながらね。
佑果:んー…
テイ:で、"Esashi"の方とか、コブシを歌われる坂本冬美さんとやったやつとか。
H:うん。やってるな。やったやった。もう、憧れてたからね。いっしょにやってて興奮したけどね。パープル・ヘイズ("パ-プル・ヘイズ音頭")はすばらしかったよね。
佑果:最高な音楽ですね…冬美さんもすごい綺麗なお声で。
H:そうなんだよね。んー。いまはもう、大ベテランで、大御所でね。HISみたいなことはもうできない…かな。残念だな。
H:じゃあ、アラブ関係はここまでだな。
テイ:はい、チェンジ・ザ・ムード。
佑果:チェンジ・ザ・ムード…どうしましょう(笑)
H:どうしようか。なんか、流れ変えてもらっていいよ。うん。佑果ちゃん。
佑果:はい。えーと、そうですね…ジョン・キャメロン(John Cameron)の"Half-Forgotten Daydreams"という曲が最近…イージー・リスニングなんですけど、すごく綺麗な、美しい声。
H:へぇ。知らないかも。
Half-Forgotten Daydreams - John Cameron
テイ:ずいぶん音がクリーンだから…もしかしたら1990年代のイージー・リスニングブームのときに作られたやつかな?ぜんぜんわかんないんだけど…
H:わかんないね、これは。
佑果:えーと、ジョン・キャメロンっていう人はロンドンの…
テイ:まだ生きてる?
佑果:えっと、40年生まれ…
テイ:40年…昭和?
H:昭和じゃないだろう(笑)
テイ:そっか、イギリス人は昭和じゃないですよね(笑)
H:僕より7歳年上。
テイ:あ、細野さんより年上だから1970年かな。
佑果:そうかもしれない…
H:そうだよ。
テイ:じゃあ、ちゃんとクリーンにマスタリングされたやつですね、いまのね。
佑果:…70年代、そうみたいです。
テイ:じゃあ、70年代の音楽ですね。ダバダバ…
[*オリジナルは1973年の『Voices In Harmony』(KPM 1125)…とても手が出せません。]
テイ:結局古いのばっかしかけちゃってるっていう…(笑)
佑果:(笑)
H:そうだよな(笑)ないの?新しいの。
佑果:新しいのもありますけど、後ほど、もし時間があれば…
テイ:ちょっと、僕も、もう1曲ぐらい古いのを…聴きたいです。
H:いいよ。かけて。
テイ:いっぱいあるんですけど…これもまあ、たぶん、曲はご存知だと思うんですけど…聴いてみますか。先に。
H:うん。
Corazon De Melon - The Tommy Dorsey Orchestra
(from 『Tea For Two Cha Chas』)
テイ:やっぱフルートが好き、っていう…
H:なんか馴染みがあるなぁ、こういう音楽。
佑果:気持ちいい…
H:"Corazon De Melon"だ。
佑果:あー!めっちゃ最高です…
H:楽団は誰だろうな…エドムンド・ロス(Edmundo Ros)、じゃないな。
テイ:トランペットの人…の楽団なんです。
H:あ、ホント。
テイ:ザ・トミー・ドロシー…ドーシー・オーケストラ(The Tommy Dorsey Orchestra)。
H:トミードーシー。白人バンドだ。
テイ:そうですそうです。すごいいっぱい[音盤が]出てるんですね。
H:うん。
テイ:陽気な…こういう、チャチャとか。ラテン系のイージー・リスニング。買っちゃいますね。これ実は僕、大学生ぐらいのときに買って持ってて、最近買い直したんです。
佑果:そうなんですね。
テイ:あ、このフルートが好き…
H:そうなんだ(笑)意外な面が出てきたね(笑)
佑果:(笑)
テイ:なんでこんな能天気な音色でメロディー作れるんだろうな、っていうところに惹かれちゃうんですよね(笑)
H:そうか、おもしれぇなぁ。DJの裏側だな(笑)
佑果:意外でしたね、フルート(笑)
テイ:曲は知ってたでしょ?
佑果:はい。
H:知ってんだ。
佑果:あの、歌声が入ってるヴァージョン…は聴いたことある…
テイ:誰が、歌ったんでしたっけ…
H:これは…フランスなんじゃないかな。
テイ:元々は。
H:んー。
テイ:日本人のグループで歌ってますよね。"メロンの気持ち"って。
H:そうそうそう。あった。日本でもヒットしたっていう。
テイ:そうですね…あ、"メロンの気持ち"、一瞬だけ聴きます?ゴールデン・ハーフ。
H:あ、ゴールデン・ハーフ。うん。
テイ:で、細野さんもご存知のMELONっていう…トシさんとチカさん(中西俊夫・佐藤チカ)のいたグループもカヴァーしてますね。
H:あ、やってるね。
テイ:ちょっと、MELONのほう聴いていいですか?
H:どうぞ(笑)
佑果:(笑)
H:頭こんがらがっちゃう…(笑)
Corazon De Melon - MELON
H:チカちゃん。
テイ:プラスチックス。元。
佑果:あ、そうなんですか。
H:なるほど。
テイ:はい。
佑果:はやい!(笑)
H:こんがらがってくるな…なんだこれ(笑)
佑果:どうしましょう(笑)
H:いいよー。
佑果:楽しいですね(笑)
テイ:DJ切り(笑)
佑果:この後は私、スーザン(SUSAN)とか聴きたくなっちゃいますね。
テイ:あー、これ聴くと?"恋せよおとめ"とかそういうやつ?
佑果:はい。
H:あー…もう任せるわ、2人に(笑)
佑果:(笑)どうしましょう。
テイ:あ、でも僕も最近サンセッツとか聴いてましたね。
H:あっ…
テイ:カッコいいな、と思って。
H:それじゃあちょっと、聴いていい?自分のプロデュースしたサンディーの曲。
テイ:あ、はい。
佑果:お願いします。
H:"Zoot Kook"聴いていいかな?
テイ:いいですね。
Zoot Kook - Sandii
(from『Eating Pleasure』)
H:まあ、こんな感じで…
テイ:これは、アレですか?ドラムも打ち込みですか?めずらしく…
H:うん、打ち込み。
テイ:けっこう…「ドラムはユキヒロさん(高橋幸宏)」っていうパターンが多いじゃないですか。
H:多かったよね。
テイ:はい。そこがクラフトワーク(Kraftwerk)といちばん…[違うところ]。
H:なんかクラフトワークっぽかったね(笑)
テイ:タッタタ…とか。すごいですね。え、ギターと歌[コーラス]は久保田さん(久保田麻琴)ですか?
H:ギター誰だっけかな…?
テイ:あ、でもこれソロですもんね。サンセッツじゃない。
H:そう。違うの。
テイ:男の人の声は細野さんですか?
H:そう…
テイ:あ、そうなんですね。ちょっと違う…細野さんっぽくないのかなぁ、と思ったんですけど。
H:わかんない。もう忘れた、そこら辺は(笑)
テイ:でも、たぶんギター以外はほとんどほちょ…細野さんなんですね。
H:ホチョノ(笑)
2人:(笑)
H:いいよ?(笑)
テイ:いやー、このアルバムカッコいいですよね。
佑果:カッコいいですね…
H:これね、なんかね、サンディーがロンドンに行ったときに、このアルバムをデヴィッド・ボウイ(David Bowie)に渡して…それを聴いて、その感想を言われたんだって。
佑果:はい。
H:「これはちゃんとビジネスやったほうがいいよ」と。「すぐパクられるよ」って言われたっていう…(笑)
2人:へぇ…
H:でも、そんなことなかったよ、大丈夫。んー。いろんなことがあったな、当時…
佑果:聞きたいですね…
H:ちょっとね、言いにくいこともいっぱいあったな…
佑果:(笑)
テイ:すごい爆乳ですよね、ジャケット。
佑果:バービー人形みたいですよね。
テイ:ジャケ変わったの憶えてますもん。
H:変わったね、んー。
テイ:キャベツのブラみたいな…
H:そうそうそう。
佑果:えー!キャベツですか(笑)
H:なんかね…かけたくなっちゃった。サンディーじゃないんですけど、これ聴いてほしいな。山田邦子。
テイ:あー…細野さんですか?
H:そうなの。"哲学しよう"っていうね。聴いてほしいんだよ。
佑果:聴きます。
哲学しよう - 山田邦子
H:まあ、こんな感じなんですけどね。
テイ:いやいやいや…
佑果:いやー、もう最高です!私大好きです、大好きになっちゃいました。
H:あ、ホント?(笑)当時ね、ロンドンでヘヴン・セヴンティーン(Heaven 17)っていうバンドがね、流行ってたんだけど。
テイ:はいはい。
H:[彼らに]影響されてね、これね。かなり。
テイ:あの、727(TR-727)っぽい…ラテンっぽいパーカスが入ってるような感じですかね。
H:うん、そう。この頃はドラムスはリンドラム(LinnDrum)使ってる。
テイ:そうですよね。
佑果:んー…
テイ:ちょっと、細野さんにもう1曲…聴かせていいですか、っていうか、細野さんの曲ですけど。
H:いいよ。
テイ:佑果ちゃん知ってるかもしれない。これ聴いたら聴きたくなっちゃった。
佑果:なるほど(笑)
H:なんだこれ…わからない…(笑)あー!"ハイスクール・ララバイ"(笑)
ハイスクール・ララバイ - Little Creatures
(from『細野晴臣トリビュート・アルバム Tribute To Haruomi Hosono』)
テイ:はい。
H:これは…青柳くん(青柳拓次)?
テイ:そうですね。Little Creatures。
H:Little Creaturesだ。うん。
テイ:Little Creaturesでいちばん好きかな、この曲。
H:ホント?ちょっとちょっと…(笑)
テイ:いいのかな?(笑)
H:わかんないけど…(笑)
佑果:(笑)
H:えー…DJの素顔をお送りしてきました(笑)
佑果:(笑)
H:なかなか無いよ?こういう…不思議だよ。大丈夫?
テイ:あ、大丈夫です。ありがとうございます。
佑果:大丈夫ですか?(笑)
テイ:よろしくです、ホントに…
H:もうこんがらがっちゃった、僕(笑)
2人:(笑)
H:これ、編集大変だよ?(笑)また来てね、って言っていいのかな。いい?あ、じゃあ、また来てね。
2人:(笑)
H:テイくんと、佑果ちゃんでした。
佑果:ありがとうございました!
H:どうもありがとう。
テイ:ありがとうございます。