2019.02.03 Inter FM「Daisy Holiday!」より
Dan Hicksの来日は観に行きたかった…
♪~
時刻は午前1時です。ここで、Daisy Holiday!を始める前に、お知らせがあります。来週、2月10日のDaisy Holiday!は、都合により、放送時間が変わります。放送開始時間は23時半、夜11時半となります。いつもより1時間半、早い時間です。お間違えの無いよう、お願い致します。また、2月24日、3月31日も、同様の時間となります。では今宵も、Daisy Holiday!をお楽しみください。
H:こんばんは。細野晴臣です。さあ、きょうも、先週の続きを…麻田浩さんを迎えてですね。お願いします。
麻田:はい、こんばんは。
H:…で、実は先週もいたんだけど。
O:(笑)
H:ひと言もしゃべんなかった岡田くん、よろしくね。
O:よろしくお願いします。
H:きょうはなんか、じゃあ…仕切ってくれるかな?
O:…え?(笑)
H:あ、急に言うとダメだね(笑)えーと…ずっと聞いてて、どうだった?
O:いやー、トムス・キャビンの仕事、すっごいですよね。僕もいま、ちょうど本読んでるところなんですけど。
H:そうなんだ。ライ・クーダー(Ry Cooder)呼んだりね。
O:僕は(トムス・キャビンが)再活動を始めてからの公演しか観てないんですね。
麻田:あ、そうですか。最初がダン・ペン(Dan Penn)とスプーナー(Spooner Oldham)で、その次はジミー・ウェッブ(Jimmy Webb)…
O:マーク・リボー(Marc Ribot)とか、ダン・ヒックス(Dan Hicks)とか。ジェフ・マルダー(Geoff Muldaur)だとか…
H:これはもう、採算無視っていうか…音楽好きな人が呼んでるんだろうな、っていうことだよね(笑)
麻田:いや、でもちゃんと採算が取れるはず…でやってるんだけど(笑)
H:(笑)
麻田:なかなか、全部がぜんぶ上手くはいかない。
H:いやー、でも…あれ、トム・ウェイツ(Tom Waits)もそうだっけ?
麻田:トム・ウェイツ、そうですね。
H:重要なところはぜんぶそうだね、じゃあ。ライ・クーダー観れるっていうのは麻田さんのおかげだよね。
H:ほとんど観てるでしょ、岡田くんもね。
O:…え?(笑)
H:あ、そっか(笑)
O:昔のはさすがに観れてないですね。
麻田:再開した後、ですか。
O:はい。
麻田:じゃあ、そうですね。世代的には。
H:先週話してた、小学校の時に…小学校だよね?あれは。
麻田:そうです。小学校、あれは。
H:ラジオ聴いてたりして…その時いたの?
麻田:いないよね、まだ(笑)
O:まだ生まれてないです(笑)
H:いないんだ!
O:1969年生まれですからね。
H:そうか(笑)
麻田:そうだよ(笑)
O:鉱石ラジオ、聴いてないです(笑)
H:聴いてないか。いないんだ、この世に。
O:残念ながら…
麻田:69年でしょ?生まれたのが。
O:はい。
麻田:そうですよね…だって、僕が大学入ったのが1963年だもんね。
H:そうか(笑)そこらへんも違うな、僕とな。中学だもん、僕。
O:やっぱり、そこはずいぶん違いますよね。細野さんと麻田さんでも。
麻田:そうか、あの頃って1年、2年の差ってけっこう大きいよね。前、ピーター(ピーター・バラカン)がそういう風に言ってたけど。
H:大きいですよ。
O:いま、麻田さんは74歳?
麻田:僕は74ですよ。
H:そう。1年でね、なんか様変わりしちゃう。
麻田:そうだね。
H:でも、不思議なことに…ピーター・バラカンとは話が合うんだよ。なんでだろう(笑)
麻田:そうそうそうそう。
H:聴いてるものがおんなじなんだよ(笑)ロンドンで聴いてたんでしょ、彼は。
麻田:そう(笑)
H:不思議なことがいっぱいある…音楽っておもしろいよね、そういう意味では。
麻田:そうですね。
H:たとえば、スピルバーグ(Steven Spielberg)が聴いてた音楽と、僕たち同じだよ、たぶん。
麻田:あー、たぶんそうだね。
H:同い年だし。
麻田:うん。
H:で、こないだちょっと(ピーター・バラカンと)話したら、ジョニー・ホートン(Johnny Horton)の話になって。
麻田:あー、そう。
H:好きなんですか?
麻田:僕も大好きだった、ジョニー・ホートン。
H:ジョニー・ホートン好きってめずらしい。
麻田:そう?
H:ホントに。初めて。
麻田:ホントに?
H:うん。僕はひとりで聴いてたんだけど…
麻田:僕好きだった、すごく。で、シングルも昔持ってた。
H:あー。まあ、ヒット性のある曲でラジオを賑わせてましたけど。
麻田:そうそう。"The Battle Of New Orleans"だとか"North To Alaska"とか。あれは映画の主題歌になったのかな。
H:そう。ジョン・ウェイン(John Wayne)の映画。観に行きましたね。
麻田:うん。
H:その…「アラスカ魂」っていう曲だったんだけど、それがヒットしてる後に亡くなっちゃったんだよね。自動車事故で。
麻田:そうだね。
H:ショックだったな。
麻田:うん。たしかね、奥さんはハンク・ウィリアムス(Hank Williams)の奥さんで…だから彼女は、ハンク・ウィリアムスも亡くしてるし、ジョニー・ホートンも亡くしてるっていう(笑)
H:そうか(笑)
麻田:不運の人ですよね。
H:じゃあ、ジョニー・ホートンの"The Battle Of New Orleans"、「ニュー・オーリンズの戦い」。ちょっと聴いてください。
The Battle Of New Orleans - Johnny Horton
H:この曲は中学の時、僕聴いてたな。なんか、すごい好きになっちゃって(笑)
麻田:ね。ちょっとこう、なんていうの…「ンーッ」って、こう、絞り出すような感じが。
H:そうそう。なんかね、影響されてるところがあるね。「ホース・ヴォイス(horse voice)」って言うんです。「馬声」(笑)
麻田:ホース・ヴォイスって言ってたね。
H:で、この後はビスマルク号の話とかね。歴史ものが得意。
麻田:得意だったね。
H:「レキシ」っていうバンドいるよね、いま。
麻田:あ、そうなの?(笑)
O:(笑)
H:えー…けっこう影響されてるのかな、僕は。
麻田:カントリーが、やっぱり、あの頃は盛んだったから。
H:そうだよね。
麻田:黒人の音楽って…ブルースなんかはほとんどラジオでかかんなかったね。
H:無いね、ブルースは。
麻田:だからあの頃は…ブルースなんかはレース・ミュージック(Race Music)みたいに言って、ほとんどラジオではかからなかった。
H:そうそう。あの…ニュー・オーリンズのヒット曲はかかるんだよね。
麻田:うん、そうそう。ファッツ・ドミノ(Fats Domino)とかね。ああいう人たちは…アーニー・K・ドー(Ernie K-Doe)もそうだけども、「ポピュラー」のジャンルに入ってたからね。
H:そう。だから、ヒット曲がぜんぶニュー・オーリンズだったりしてね(笑)後でうわー、と思うんですけど。
麻田:うん。
H:そうだよな。だから…白人が元気だった頃の音楽なんだよね(笑)
麻田:そう。日本にもカントリーのバンドたくさんあったから。
H:そう!先輩・後輩で言うと、ミッキーさんとかね。ミッキー・カーチス(Mickey Curtis)。
麻田:そうそうそう。
H:かまやつひろし(釜萢弘)とかね。
麻田:そうそう。釜萢さんもそうだし。
H:みんな、あのね、レフティ・フリーゼル(Lefty Frizzell)が好きだった。
麻田:レフティ好きだね、みんな。ウェッブ・ピアース(Webb Pierce)もそうだし。
H:そうそうそう。
麻田:僕は、でもね、ジミー時田とマウンテン・プレイ・ボーイズが好きで。昔、有楽町にビデオホール(東京ヴィデオ・ホール)っていうのがあって、そこでカントリーのフェスみたいのが月1くらいであって。
H:そうなんだ、知らなかった。
麻田:そう?あー、そうか。そこら辺って世代かな、やっぱり。
H:うん。
麻田:で、行くと…ジミーさんのバンドが出てると、その頃ね、いかりやチョーさん(いかりや長介)がベースで…あと、ジャイアント吉田とか、飯塚さん(飯塚文雄)とか…
H:みんなお笑いの人だ(笑)
麻田:そうそう、みんなお笑いの…すっごくおもしろいんだよね、みんな。ジミーさんの歌っていうのはけっこう本格派で、ちゃんと歌うんだけども。
H:ハンク・ウィリアムスみたいなね。
麻田:そうそう。で、曲が終わると、そういう…まさにドリフターズだったよ。
H:イロモノだ(笑)
麻田:そう、イロモノ(笑)で、僕はそれにすっごく感動して、こういう風に…エンターテイナーっていうのかな。歌と笑いみたいのを入れなきゃと思って。
H:やったの?
麻田:そう。それで、最初のころは台本書いてさ…(笑)
H:えー!そうだったんだ(笑)
麻田:でもそのうちね、重見(重見康一)っていうのはすごく司会が上手くなってね。
H:あー、おもしろかった。
麻田:彼に任せるようになっちゃったんだけど、いちばん最初はホントに…
H:ギャグやってたんですか?
麻田:そうそう、ギャグやって…
H:ぜんぜん憶えてないな…
麻田:あとは…ヘンな小噺みたいのを作ったりとかさ。
H:それを麻田さんがしゃべったりするの?
麻田:ひとりずつ…ナントカシリーズとか。「花シリーズ」とかね。「うちの妹はこの花が好きでね、うちのアネモネ」とかね。
H:あー(笑)
麻田:そういうバカな…(笑)
H:いや、バカというかね…品がいいというかね…(笑)
麻田:「冷蔵庫に花が入ってるよ。それヒヤシンス」とかね。
H:あー…はいはい、おやじギャグだね。
麻田:親父ギャグ、いまで言うね。そういうのやってましたね。
H:なるほどね。
麻田:だから、そういう風に笑いとミックスさせたいってずっと思ってた。
H:そうか、そうか。
麻田:それが、ジミーさんのバンド。
H:そうだったんだ。
麻田:あの頃、ジミーさんのバンドが出るとね、落語家で…立川談志が、まだ小ゑん(柳家小ゑん)って名乗ってた頃で…
H:え、談志さん…そんなの観てるの?
麻田:細いマンボズボン穿いてさ(笑)
H:(笑)
麻田:隣のおじさんといっしょに観てるとね、「おい、またアイツ来てるよ。落語家の小ゑんだろ?」って言ってさ。
H:へぇ…観に来てるんだね。
麻田:あのね、好きだったの。ジミーさんのファンだったの。
H:おもしろい話だ…
麻田:談志さんはさ、ディキシーランドがすごく好きで…ディキシーとカントリーが好きで。
H:その話はあんまり聴いたことないね。初めて聴くかもしれない。
麻田:しょっちゅう来てたね。
H:あー、談志さんもおもしろい人だよね。
麻田:ね。
H:そっか…でもまあ、そっちの、ギャグバンドに行かなくてよかったですね。
麻田:いやー、僕らは半分ギャグバンドだったよ(笑)
H:そうかな?(笑)んー、なんかね、カレッジフォークって関西から見ると…彼らは「坊っちゃんフォーク」って呼ぶんだよね。
麻田:そうそうそう。でもまあ、僕らはね…僕らの特徴っていうと、なんて言うのかな、他のバンドはみんな…たとえば小室くん(小室等)がね、ピーター・ポール・アンド・マリー・フォロワーズっていうのとか。
H:あー、森山良子さんとね。
麻田:あと、ブロードサイド・フォーって黒澤(黒澤久雄)がやってたのは…
H:黒澤さん(黒澤明)の息子さんね。
麻田:あれはブラザーズ・フォア(The Brothers Four)のコピーとか。
H:観てましたよー、うん。
麻田:僕ら(Modern Folk Quartet)はね、あんまりそういう…他人のやってるバンドのはやってなかったね。
H:そうですね。
麻田:ヘタだったから…
H:いやいや…(笑)
麻田:やっぱりね、人のやらない曲やったほうがいいじゃないですか。僕はもうその頃、かなりレコード集めてたから、曲を見つけてきてやってましたね。
H:そうか。まあ、ぜんぶは観てないんでね、モダン・フォーク・カルテットは。僕が印象深いのは、麻田さんがベース弾きながら"San Fransisco Bay Blues"歌ってる…っていうのはよく憶えてますよ。
麻田:あとは"Green Green"もやってましたね。
H:やってましたね。うん。その頃の録音物ってあるんでしょ?
麻田:無いでしょ。
H:無いの?
麻田:僕らはレコーディングする前に止めちゃったし…
H:そうか、無いんだ…
麻田:ほら、眞木(眞木壮一郎)だけ浪人してたから、眞木はソロになって、「マイク眞木」という名前で…
H:ヒットしたね。
麻田:あれも…たぶん、デモテープを作りに行って、眞木に「歌ってくれ」って言ってレコーディングしたら、「もうこれでいいんじゃないの?」って、そのまま出したら売れちゃったっていう(笑)
H:そうなんだ。"バラが咲いた"。んー。
麻田:そう。おそろしいね、あれ。
H:浜口さんだよね?浜口庫之助さん作詞作曲で。
麻田:そうそうそう。
H:そういうことがいろいろあった、この…40年、50年ぐらいかね、んー。
麻田:そうですね。
H:もう、疲れましたよ。疲れた。大丈夫?
麻田:(笑)でもね、僕は毎年SXSW(South by Southwest)に行ってるから、新人バンドとかたくさん見るのよ。
H:あー、そう。刺激されるわけだ。
麻田:そう。すごく。
H:最近は、どうですか?
麻田:最近もおもしろいのあるし…いちばん印象深かったのはね、ノラ・ジョーンズ(Norah Jones)が最初にレコードを出して、まだそんなに有名じゃなくて。SXSWでライヴをやったんですよ。
H:ああ、そこで出てきたんだ。
麻田:それがすっごい評判になって、あの頃…外人が言う「buzz」っていうか、噂?になって。で、グラミーにノミネートされて。その次の年かな、もうグラミーを獲って。あんなシンデレラ・スト―リーを見たのは初めてだったから。
H:んー、目撃してるわけですね。そうだったんだ。あのね、あれをやってるんだよ。僕もやってるやつ。なんだっけ…♪treat me like a fool~…
麻田:あー、やってるやってる。
H:タイトル忘れちゃった…(笑)
麻田:プレスリー(Elvis Presley)。
H:そうそうそう…あ、"Love Me"だ。おんなじ頃やってたんだよ。ちょっと、ノラ・ジョーンズのほうが後で出した…では、ノラ・ジョーンズが歌ってる"Love Me"を…リトル・ウィリーズ(The Little Willies)というユニットでやってます。それを聴いてください。
Love Me - The Little Willies
(from 『The Little Willies』)
H:ノラ・ジョーンズで"Love Me"。僕もやってるんですけどね。やっぱり歌うまいな(笑)
麻田:(笑)
H:ところで、SXSWって年に一度やってるんでしたっけ?
麻田:そうですね、3月にやってます。
H:3月。もうすぐ?
麻田:もうすぐですね。
H:また行くんですね。
麻田:また行きます。ほぼひと月くらい、僕は行ってるんですけど。
H:誰か連れてくんですか?
麻田:日本のバンドを…だいたい日本からはね、毎年10バンドぐらい出るんですよ。
H:10バンドも出るの?
麻田:うん。それは応募して、向こうの審査を通ったバンドが行けるんですよ。
H:それ、ぜんぶコーディネートするんですか?
麻田:そうですね。
H:あー、大変だね、10バンドも。
麻田:そうそう。で、その内の6バンドで僕はずっと「Japan Nite」というのをやってて。去年あたり、CHAIというバンドが出たらすごく売れて。
H;あ、ホント?
麻田:アメリカツアー、ヨーロッパツアーがもう終わったのかな?
H:え、すごいね。今年はどなたが?
麻田:えっとね、今年はスーパーガール[*おそらくSTEREOGIRLのこと]とかね…パーフェクト・ミー(the perfect me)という福岡のバンドとかね。おもしろいバンドがいますよ。
H:へー。ちょっと観てみたい感じがしますね。
麻田:今度…アメリカって行ったんだったっけ、最近?
H:これからなんですよ。5月、6月に行くことになっちゃってるんですよ。
麻田:へー。どこでやるのかな?
H:ニューヨークとロサンゼルス…
麻田:あー。でも、すごく受けると思うなぁ。
H:なんかねぇ、不安ですよ。
麻田:あ、ホント?
H:でも、ロンドンとかね、あっちの…イギリスではよかったんで。大丈夫かな、と。
麻田:大丈夫ですよ。
H:なんか、時代が変わってね。
麻田:そうそうそう。で、僕、こないだ…(細野さんが)台湾でやったじゃないですか。あれのすぐ後に行って、台湾の子たちに…僕はだいたい、YMOを聴いて、それからだんだん遡っていって『HOSONO HOUSE』に行き着いたんだと思ってたの。
H:あー。
麻田:そうじゃなくて…
H:違うんだね。最初から…
麻田:最初から『HOSONO HOUSE』って言ってた。
H:そういう…そうそうそう。辿んないんだよね、いま(笑)
麻田:僕はもう、てっきりYMOから、と思ってたの。
H:今の若い人の特徴かもね。
麻田:いやー、中国でもすごくお客さん入ってたじゃないですか。
H:入ってましたね。
麻田:台湾はまた行くんでしょ?
H:また行きますよ、2月…
麻田:僕もこないだ行ってきましたよ、台湾と…深圳っていうところがすごく良くて。
H:あ、それは中国のハイテクの都市ね。
麻田:そうそう。まあ、ハイテクの都市なんだけども、その中にちょっとした芸術村みたいのがあって。そこにホールがあって、そこはすごく良いアーティストがやってる。
H:へー!
麻田:僕もそこのキュレーションみたいのも年に1回やってるんですけど、去年の5月はね…金曜日がクラフトワーク(Kraftwerk)。
H:ええ?(笑)
麻田:土曜日がジェームズ・ブラッド・ウルマー(James Blood Ulmer)。で、日曜日が戸川純。
H:えー!ビックリだね(笑)
麻田:すごいでしょ、そのメンツ(笑)
H:すごいね(笑)関連がないね。
麻田:戸川純ってさ、5分で売り切れたんだよ、1000枚。
H:へー!みんな聴いてるんだろうね。
麻田:でね、僕行って観てたら、みんな歌ってるんだよね、いっしょに。
H:すごいね、それは。
麻田:すごいでしょ、これ。
H:どうなってんだよ…
麻田:で、そんなに年寄りだけじゃないんだよ。
H:若い人もね。ヘンな時代だね。
O:(笑)
H:そうなんだ。
麻田:そこは絶対受けると思う、深圳は。
H:そうか。中国からも声かかってるんだけど、どこだかわかんないんだよね。
麻田:深圳のね、そのホールを運営してるのは本屋さんで…ヘンな本屋さんで、昔の、それこそ三上寛のカセットとか売ってんだ。
O:(笑)
H:えー!(笑)不思議だなぁ…
麻田:すごいでしょ(笑)そこで…「きょうセミナーをやるから麻田さん、ちょっと見てってくださいよ」っていうんで行ったら、「1970年代のドイツのアヴァンギャルド・ミュージックについて」みたいな講義をやってるわけ(笑)
H:マニアだね…
麻田:そこいる人は…50人も入んないかな?4分の1ぐらい女の子で、みんなノート取ってるんだよね。
H:熱心…すごいな。
麻田:もう驚いたね、それは。だって、そういう音楽を聴いたことがなかったわけでしょ。日本の子どもたちみたいに。
H:うん。
麻田:まあ、日本だってそんなに、今は洋楽が聴ける状況じゃないけども。それにしたって、まったく無いところに…
H:おもしろい現象だね。
麻田:おもしろいよね。
H:熱心だね。
麻田:熱心、もうホントに熱心。
H:音楽が好きなんだね、ホントにね。んー。それはなんか、心強い話だな。それなら行っても大丈夫かもな(笑)
麻田:もう、絶対大丈夫だよ。
H:そうかそうか(笑)いやー、不安だったんだけどね。大丈夫だった。
麻田:僕は、こないだはね、深圳と順徳というところと、上海と台北に…女の人の…なんだっけ…自分でやったのに名前忘れちゃった(笑)
H:歳だからね、僕たち(笑)
麻田:あの、女性で、1920年代の音楽をやってる…
H:日本の人?
麻田:いやいや、アメリカ人…
O:ジャネット・クライン(Janet Klein)とか?
麻田:ジャネット・クライン。ごめんごめん、それです。ジャネット・クラインやったらすごく受けて。
H:んー。
麻田:上海だとね、昔風なドレス着て、ステージの前にちょっとしたスペースがあって踊るんだよね、みんな。
H:いいじゃん。上海行きたい(笑)
麻田:上海もいいと思うよ、すごく。
H:ジャズの街だもんね、昔から。
麻田:そうそう、昔はね。驚いちゃった。
H:なんかちょっと、気持ちが動いてるよ、すごい。中国、迷ってたんだけど行こうかな。
麻田:行ったほうがいいと思うよ。
H:そっか。いっしょに来てくださいよ(笑)
O:(笑)
麻田:あ、いいですよ、行きますよ(笑)
H:まあこれからも…ちょっと時間がね、もう、そろそろ無いんですけど。ウェスタン・スウィングのイベントやるんでしょ?
麻田:やります。イベント…うん、やりたいですね。
H:やりたいよね。
麻田:いっしょにね。
H:絶対、その時僕も参加させてもらっていいですか。
麻田:もちろん、いいですよ。
H:よかったぁ…いやー、なんか楽しいね(笑)じゃあ、ウェスタン・スウィング、ちょっと勉強してね。岡田くんは、どうですかね?そういう…観に来てくれますかね?
O:もちろんです。楽しみにしてます。
H:そういうわけで、麻田浩さんをお招きして2週間やりました。また、お願いしますね。
麻田:はい。
H:はい。どうもありがとう。
麻田:ありがとうございます。
Milk Cow Blues - Johnnie Lee Wills
★2019.02.01 α-STATION FM KYOTO「NICE POP RADIO」より
今夜8時からは【NICE POP RADIO】!今週はアルバム『20/20』のアナログ盤発売記念SP!オールレコード音源でおおくりします!スタジオにはプレイヤーを設置✨澤部氏自ら針を落とします!ぜんぶ!アナログ!ぜんぶ!名盤!#ナイポレ #スカート #澤部渡 #FM京都 pic.twitter.com/rFxssI6o0n
— α-STATION FM KYOTO (@fmkyoto) 2019年2月1日
2019.01.27 Inter FM「Daisy Holiday!」より
情報量…
H:こんばんは。細野晴臣です。きょうはですね…ずーっと、つきあいの長い先輩がいるんですけど(笑)麻田浩さんです。
麻田:麻田です、よろしく。
H:いらっしゃい。
麻田:どうも。
H:ひさしぶりですよね。
麻田:そうですね。ひさしぶりです。
H:なんかね、事あるごとにお世話になってるんだよね(笑)
麻田:いやー、そうでもないですよ。こちらこそお世話になってますよ。
H:いや、ね…最初は、ともかくね、学生時代のアイドルでしたからね。
麻田:いやいやいや…
H:モダン・フォーク・カルテット(Modern Folk Quartet)、ですよ。ホントにそうだよね。カッコよかったし。どうだったの?人気あったでしょ。
麻田:どうなんでしょうね。自分たちではあんまりよくわからないですね…でもまあ、いろんなところ出てましたから、それなりには。
H:ですよ。オシャレだったしね。
麻田:まあ、そうですね。あの頃ってアイヴィーのちょっと前ぐらいかな。ただ、僕らは…キングストン・トリオ(The Kingston Trio)のジャケットのね…七分袖くらいなのかな、あれは。ボタンダウンの…
H:ストライプでね。
麻田:そう、ストライプでボタンダウンのシャツを。
H:で、ポイントはね、襟首にTシャツが見えてるの。あれはヘインズ(Hanes)かな(笑)
麻田:そうそう。僕らはあの頃(既製品が)なくて、ヴァンヂャケット(VAN Jacket)にも売ってなかったから…
H:そう。
麻田:下北(下北沢)のね…あの頃まだ、下北ってさ、戦後のヤミ市みたいな感じ…
H:生地屋とか多かったからね。
麻田:そこ行ってストライプの生地買って。
H:あ、作ったんだ!(笑)
麻田:そうそう。ちょうどいまの外苑前の駅前くらいにあった「タジマヤ」さんっていうね…あそこら辺ってね、まだあの頃進駐軍がいたから外人がオーダーしに行って…
H:まだ進駐軍がいた時代なんだね(笑)
麻田:そうそう。だってあそこ、容易に入れなかったから、僕らは。で、そこ行ってキングストン・トリオのジャケット見せて、「これと同じように作ってくれ」って言って。
H:それは初耳だ。そうだよな、売ってないもんな。
麻田:まだVANでも七分袖でストライプ、ってのは無かったね。
H:無かったね。七分袖っていうところがね、ポイントなんですね。
麻田:はい。
H:そのメンバーが…「MFQ.」ってみんな呼んでたけど。まあ、アメリカにもいるんだけどね(笑)
麻田:そうなんですよね、これはもう、ホントに…
H:偶然なのね?
麻田:偶然なの。
H:あ、そうなんだ、やっぱり。
麻田:僕らも名前付けようと思って、いろんな名前が出たんだけれども。やっぱり、アメリカにモダン・ジャズ・カルテット(Modern Jazz Quartet)、「MJQ」っていうのがあるから、「じゃあMFQにするか」って名前付けて…
H:そうなんだね。
麻田:半年ぐらいしたら、アメリカにも同じ名前があるよって言うんで…あわててレコードを取り寄せたら、すごく上手いの(笑)
H:(笑)
麻田:名前変えようかっていう話になったんだけど…あの頃はほら、(バンド活動は)学生の時代で終わるから、もうあと1年とかそんなもんだから、もうそのままでいっちゃおうよ、っていう話になった。
H:なるほどね。クラブ活動っていうわけじゃないですよね、でも。
麻田:でも一応ね、大学の軽音楽部にも入ってた。
H:メンバーの人、それぞれ違う学校でしょ?でも。
麻田:最初は僕らの学校3人と、マイク眞木って…あの頃は眞木壮一郎。眞木壮一郎は日大だったから。
H:あ、そうだ。あとは重見(重見康一)さん…
麻田:重見、あとは吉田(吉田勝宣)っていうので…あとは、その吉田が病気になって、渡辺っていう…
H:そうだ、渡辺薫さん。ベースね。そうですよ。思い出すね…僕は高校生でステューデント・フェスティバル(STUDENTS' FESTIVAL)っていうね、学生のフォーク・コンサートに憧れてたんですよ。で…(笑)いろいろあって、そのオーディションを受けた時に、審査する側の人が麻田さんたちだった。
麻田:そうなんだよね。なんで俺たちがやったの?っていう。
H:いやいやいや…(笑)やっぱりね、カリスマですよ、当時。で、その前で僕が演奏したのがキングストン・トリオの"Ann"っていう曲なの。それをちょっと聴いてください。
Ann - The Kingston Trio
H:で、この歌、"Ann"を演奏して…僕たち4人のメンバーでやって。高校生で生意気な感じだったと思うんだけど(笑)
麻田:そう?あんまりそんな、生意気な感じはなかった。
H:あ、そう?よかった(笑)すごいなんか、印象深いんだよね、自分では。ギターを僕、やってて。生意気そうに弾いてたのをなんか言われるんじゃないかって思ったんだけど。大丈夫だった(笑)
麻田:シブい曲を選曲してましたね。
H:それで…STUDENTS' FESTIVALって僕の姉の友達が主催してたんですよね。短大生。
麻田:あ、そうなんだ。
H:そういう素人の人がみんなやってたんだね、当時ね。
麻田:お客も入ってたんだよね、けっこう。今みたいにネットもない…なんにもないのにさ。
H:みんな聴いてたね。
麻田:よくあんなに人が集まったと思って。それも大学生とかさ、高校生とかさ。
H:当時はやっぱり、大学生の主催する会だから、僕たち高校生はドヨドヨ、ってしたね。高3だったかな。次は大学生になる…手前で出ちゃって。で、姉もその友達も、やっぱり麻田さんファンだよ(笑)
麻田:いやいや…(笑)
H:いちばんカッコいいんだよ。ベース弾きながら歌うでしょ?時々。
麻田:そうですね。
H:そうするとみんなね、目がハートになってましたから。ホントに。
麻田:いやいや…
H:で、それがきっかけで…まあ、親しい、わけじゃないけど、先輩だからね。
麻田:(笑)
H:先輩意識が強いんだよ、僕。いまだに…(笑)
麻田:めずらしいでしょ、この業界にも。先輩っていう人。
H:いないよ、他に。
麻田:ね。
H:審査された側だから…頭が上がんない(笑)でもその後、2000年代に狭山でやったハイドパークフェス(HYDE PARK MUSIC FESTIVAL)。これも主催が麻田さんでしたもんね。
麻田:そうですね。
H:思い出深いでしょ、あれは。
麻田:あれは思い出深い。で、すごい雨だったじゃないですか。
H:もう、すごいどころじゃない…
麻田:細野くんはさ、「麻田さん、もうこれは止めた方がいいんじゃない?」なんて言うわけ。
H:いや、みんなそう思ってたよ(笑)
麻田:うそ?(笑)
H:お酒飲んでるからわからない(笑)
麻田:でもね、なんだろうな、あれ…佐野くん(佐野元春)のあたりからだんだん雨が弱くなってきて、細野くんになったらホントに雨止んだもんね。驚いた。
H:止んだねー。ありがたいことにね。
麻田:で、最初は4000人くらいいたんだけど、たぶん、半分くらいは帰ってるんだけど…
H:そりゃ帰るよ、あれは。
麻田:もうホントに、膝下ぐらいまで水来てたから。
H:そう、洪水ですよ。
麻田:でもその、残ってた人がさ、細野くんが出てきたらウワーッってみんな立ち上がってさ。
H:あー、もうね、感動しました、僕も。
麻田:ね。僕も感動したよ、あれ。
H:いやー、あんなことはあんまり無いね。うん。すごい印象深いところに…
麻田:あれは印象深いですよ。
H:それで、麻田さんとの関係っていうのはその前…フォークのフェスティバル、ハイドパークの前に。
麻田:はい。
H:ローリング・ココナツ・レビュー。
麻田:1977年、あれは。
H:ローリング・ココナツ・レビュー1977、っていう。これはクジラ…捕鯨反対、みたいなね。
麻田:そうですね。
H:なにもわからずに参加したんですけど(笑)
麻田:いや、でも僕らはね、そんな…クジラばっかり保護しちゃったら生態系変わっちゃうからということで。「Sea Must Live」っていうのかな。「海は生きなきゃいけない」みたいなことに…日本側はね、そういう意識だったんですよ。
H:あ、そうなんだ。でも、なんか、すごいいっぱい来ましたよね。
麻田:来ましたね。
H:だから、赤字っていうのはすごいんだろうけど…(笑)あんなにいっぱい来たのって他にないんじゃないかな。
麻田:ないかもわかんない。それこそスタッフ(Stuff)からジャクソン・ブラウン(Jackson Browne)から…
H:ジャクソン・ブラウン来た、ジョン・セバスチャン(John Sebastian)来た。
麻田:あとはブルーグラスの連中も来たし…
H:あと…もう忘れちゃったな。当時ヒットしてたシンガーも来ちゃったんだよね。忘れちゃった(笑)
麻田:あと、それこそデヴィッド・リンドレー(David Lindley)とか、バックのミュージシャンも来たし。
H:すごいね。
麻田:J.D.サウザー(J.D.Souther)も来てたし。
H:あれを呼ぶ交渉とかぜんぶ麻田さんがやったんですか?
麻田:向こうのスタッフといっしょにやりましたね。もっとホントはね…ジョニ・ミッチェル(Joni Mitchell)が出れるとか出れないとか。それは彼らの、自分のコンサートのスケジュールが優先だから。
H:それはそうだね。みんなボランティアですもんね。
麻田:そうそうそう。
H:いやー、すごい印象深いね。混乱してる感じが(笑)
麻田:あー、そうそう…
H:んー。でも楽しかったけど。
麻田:そうですね。
H:僕はステージで久保田麻琴と…それからジョン・セバスチャンが入ってきてくれた。それがうれしかったんですよ。「♪Ain' got no home~」という曲を歌ったのを憶えていますね。
麻田:やりましたね。
H:麻田さんの音楽の背景っていうのはどんな…?
麻田:僕はまあ、言ってみれば「FENおたく」みたいな。
H:じゃあおんなじだ(笑)
麻田:同じでしょ?(笑)で、僕は…その頃ってラジオは一家に一台っていう世界でしょ。そんなにたくさんないから、自分で(局を)選んでは聴けないから…僕は親戚の家が横浜の山手のほうにあって、そこ行くと手回しの蓄音器があって、レコードもいっぱいあって。その中で僕がすごく好きだったのは"Seven Lonely Days"という曲で。ジョージア・ギブス(Georgia Gibbs)。それを毎回かけて…
H:あー、なんか似たような経験してるなぁ…
麻田:あとはそれこそ、あの頃だからペレス・プラード(Pérez Prado)だとか、そういう音楽とか。あとね、"Sixteen Tons"もありました。
H:ありましたね。ヒットしてた…
麻田:そういうレコードがいっぱいあって、それを手回しので回して聴いた(笑)
H:僕と違うのは、僕はもう電気だった(笑)
麻田:あ、ホント?そうか。
H:ちょっとした時代の差なんだよね。
麻田:そうなんだよね、あの頃って。
H:そう。SP盤の時代が終わって、LPが出始めたりね。
麻田:そうですね。
H:で、みんな子どもたちはSPを放って、割ってたんだよね。
麻田:そうそう。投げたりしてね。
H:そうそう。で、聴いてた人たちは僕とか麻田さんとかね。音楽好きは聴いてた(笑)
麻田:そうですね。でもまあ、FENがいちばん、僕にとっては音楽の先生みたいな…
H:ですね。おんなじだね。うん。じゃあその、ジョージア・ギブスの"Seven Lonely Days"を聴きたいと思います。
Seven Lonely Days - Georigia Gibbs
H:なるほど。いいなぁ。こういう…同世代ですから、ほとんどね、麻田さんと僕はね。
麻田:そうですね。
H:そういう時代の音楽を語る人が最近いないでしょ、周りに。
麻田:あー、そうだね。
H:まあ、もちろんみんな知識として知ってるし、マニアもいるし。そういうのはあるけど、「当時聴いてた」っていう人はあんまりいないでしょ。
麻田:そうですね。だから、ラジオから流れてくる音楽?今って、けっこう情報が先っていう部分があるじゃないですか。あの頃はラジオを聴いて、必ずノートをとってたの。
H:それはおんなじです(笑)
麻田:おんなじでしょ?(笑)で、書けないところは日本語で書いて。そうするとひと月後ぐらいに、「ミュージック・ライフ」かな?ちゃんとしたビルボードのチャートが…見ると、あ、違うなこれは、とか。
H:あー(笑)
麻田:学校の英語の勉強とか一切しなかったけども、それだけは一生懸命やったな。
H:そう。FEN聴いてるし、英語には馴染んでるんだけどね。
麻田:そうなんだよね。だからホントに…アーニー・K・ドー(Ernie K-Doe)っていう人の"Mother In Law"っていうのがあってさ。
H:あったね。
麻田:あれ、どうしても"Mother In Law"っていうのが書けなくて、「マザインロー」とかカタカナで書いておくわけですよ。
H:水戸黄門になっちゃう(笑)
麻田:そうするとその何か月後かに(チャートが)出てきて、"Mother In Law"と。辞書を調べると「継母」みたいのが出てくる。
H:勉強になってるよね。
麻田:そうそう。それだけ、英語で勉強したのは。
H:おんなじだ(笑)"Mother In Law"なんて、ああいう曲、僕の周りでは大瀧詠一ぐらいだったね、聴いてたのは。で、彼もいなくなっちゃったんで。語る人がいないよ、うん。
麻田:あと、僕はガールズバンドがすごく好きで。シュレルズ(The Shirells)だとかマーサとヴァンデラス(Martha Reeves & the Vandellas)とか。
H:あー、大好きだよ僕…なんだ…どうしよう(笑)
麻田:(笑)
H:そういう人とバンド組まないといけないね(笑)
麻田:ま、でも、カントリーも好きだったし。ほら、FENだと土曜日になると必ず…
H:Top 20?
麻田:それの前にね…いちばん最初に「グランド・オール・オプリー(Grand Ole Opry)」やって、あと「ハワイ・コールズ(Hawaii Calls)」っていうのがあって、それからTop 20かな。だから僕は土曜日は必ずうちに帰って聴いてた。
H:そうだね。なんか…おんなじようなことなんだろうな、自分と。早朝は6時か6時半からカントリーばっかりやってたよね。
麻田:そう。あれもだから、僕は…最初ね、うちに普通の大きいラジオしかなかったから、自分で聴くっていうことができなくて。トランジスタでもない、鉱石ラジオっていうのを使ってた。
H:鉱石ラジオ…音小っちゃい(笑)
麻田:小っちゃいよ(笑)片耳のイヤフォンで…そう、それを布団の中で耳にしてノートをとるというね。
H:あのね、僕もトランジスタラジオ…父親が買ってくれて、それはもう普通の…SONYのね、新発売!みたいな。あの時代のお父さんたちってみんなそういうの買うんだよね。で、本人は野球とかそういうのしか聴かない(笑)
麻田:はいはい(笑)
H:で、夜中僕はそれをヘッドフォン…Monoだけど2つジャックがついてるから、2個右と左に差し込んで。
麻田:あ、そういうこともできたんだ。
H:できたの。音が良いんだ、これが。でもおんなじなのは、布団の中で聴いてた(笑)
麻田:(笑)
H:ちょっと時間がずれてるのかね。
麻田:昔は、トランジスタが出る前は鉱石ラジオの作るキットみたいのがあって。
H:あったあった。ブームだった。
麻田:それを、僕は小さかったから、いとこに作ってもらって。
H:へぇ。鉱石ラジオの時代か…いやいや。
ちょっと、前に遡って…ローリング・ココナツ・レビューの話だけど。あれは音源が出たんだね。
麻田:出ました。
H:ええー、僕まだそれを聴いてない…(笑)
麻田:はい、言っときます。レコード会社に。
H:お願いします(笑)だから、ジョン・セバスチャンと僕たちのも入ってるんでしょ?
麻田:そうそうそう。入ってる。
H:すばらしい。ぜんぶ、ほとんど、レコーディングしてたんですか?
麻田:でもね、アサイラム(Asylum Records)というか、ウエストコースト系だけは「No」という。向こうから言われて。
H:厳しいね。
麻田:でも、あれは残念でね。ウォーレン・ツィヴォン(Warren Zevon)というすごくいいシンガー・ソングライターが来てて。彼も歌ってたんだけれども。
H:ああ、そう。録れてないんだね。
H:その頃の話もそうだし、ずーっと麻田さんがトムス・キャビン(Tom's Cabin)で招聘してたり。いろんな…長い時間をかけてそういう活動をしてらっしゃって。その本が出ましたよね。
麻田:そうですね、はい。出ました。
H:ちょっと、あの、告知してください(笑)
麻田:はい。リットー・ミュージックというところから出たんですけども。『聴かずに死ねるか』というタイトルで。僕の人生の中で、上から下まで、いろんなことありましたから。それが書いてあります。それと同時に、(公演の)プログラムだとかTシャツのデザインなんかもWORKSHOP MU!!というところでやってもらった…
H:ムーだ、おんなじだな。我々と。
麻田:うん。そこでやってもらったTシャツとかプログラムも載ってますし。
H:貴重な体験の記録ですね。
麻田:そうですね。
H:いま僕、読んでる最中なんで…ちょっと持ってこなかったけど(笑)部屋に置きっぱなしだった。それはじゃあ、いつからいつまでの話が出てるんでしたっけね。
麻田:まあ基本的にはトムス・キャビンをやってるところが中心なんですけども、さっき話したような小さい頃の話もあって。まあその後…いま僕はサウス・バイ・サウスウエスト(SXSW)というアメリカのコンヴェンションの仕事を20何年やってて。その話まで出てますね。
H:なるほど。
麻田:あとはあれですよ。最初…僕は独立した時にSMASHという会社をね、立ち上げて。
H:そうだ、SMASHだ。
麻田:で…ただ僕はその前に、ジョニー野村というね。ゴダイゴをやってたヘンなマネージャー…社長がいて(笑)彼に「麻田くん、呼び屋さんなんて儲からないからね、音楽ビジネスはね、権利を持たなきゃダメなんだよ」とさんざん言われたわけ。
H:なるほどね。
麻田:だから、そうかやっぱり…と思ってずっとアーティストを探して、自分でマネージングをするか、プロデュースをするか…それで、SIONというのを見つけて。その時に事務所がなかったんで、ミディアムに居候させてもらって。
H:そんなことがあったね!
麻田:あったよ!(笑)で、僕はその見返り…というとおかしいけども、ミハルちゃん(越美晴)のマネージングをやって、代官山。
H:そうだった…SION、いたなぁ…彼はどうしてるかな。
麻田:まだやってますよね。
H:でも、麻田さん自身、ミュージシャンじゃないですか。
麻田:元はね。
H:元っていうか、根っこがそうですよ。で、カントリー…ウェスタン・スウィングやろうよなんて、前ね。声かけてもらったりして。やりたいですよ。
麻田:やりましょう。今年は。
H:なんかやりましょう。
麻田:ね。なんかやりましょう。
H:うれしいね。じゃあ、ウェスタン・スウィングの曲、なんかかけようかな。なんかリクエストありますかね?
麻田:いや、なんでも。
H:前、麻田さんからね、テックス・ウィリアムス(Tex Williams)だったかな、の"Smoke Smoke Smoke"やったら?とか言われて、やりたいな、とは思うんだけど、難しいんだよね。
麻田:ホント?
H:あれって、タバコを賛成なの、反対なの、どっち?(笑)
麻田:賛成なんじゃないの?
H:賛成だよね(笑)そこら辺がちょっとよくわかんなくてね。じゃあそれ聴いてみたいと思います。テックス・ウィリアムスで"Smoke Smoke Smoke"。
Smoke Smoke Smoke - Tex Williams
H:えー、テックス・ウィリアムスで"Smoke Smoke Smoke"。ま、タバコをね、吸うんで、僕は。麻田さんは、やめちゃった?
麻田:僕は吸わないけども。
H:あれ、大学は…ここら辺だよね?
麻田:そうですね、明治学院ですから。
H:そうなんだよね。
麻田:だから、ここら辺はもうホントに…何年通ったのかな、15年ぐらい?
H:あ、そうなんだ。
麻田:目黒駅から。
H:15年も大学行ってたの?そんなことはないか(笑)
麻田:(笑)僕、中学からだから。中、高、大。
H:あ、じゃあもう、すごい近くにいたんだね。
麻田:そうそうそう。だから僕、ここら辺に友達何人もいましたよ。あそこの脇入った魚屋さんとかね。ヒラサワくんっていう友達がいたし。あと、もうちょっと先の花屋のオオツカとか。
H:あー、なんか、僕の知らない世界…(笑)
麻田:(笑)
H:いま、なんにも無いからね、商店は。
麻田:ね。ホントになくなったね。
H:残念ながらね。
麻田:都電がね、だって、通ってたんだから。
H:都電が良かったし。花電車とかね、あったし。
麻田:ここの都電はどこまで?中目黒まで行ってたのかな?
H:いやいや、目黒駅が終点で…
麻田:目黒駅終点…あそこに車庫があったか、じゃあ。
H:そうですそうです。で、もう、なにかっていうと都電乗って銀座行ったりね。日比谷行ったりしてましたけど。
話は尽きませんが、この続きはまた来週に持っていきたいと思います。どうも、また来週お願いします。
麻田:はい、こちらこそ。
2019.01.20 Inter FM「Daisy Holiday!」より
(以下、すべてH:)
こんばんは。細野晴臣です。えーと、1月も…半ばを過ぎて。2019年、どんな年になるんでしょうかね。きょうはひとりで…まあ、ぼちぼちやっていきたいと思いますが。ずっと紹介したくてできなかった音楽を聴きながらですね…話していきたいと思います。
どんな音楽かっていうと…日本のバンドがいま、とてもおもしろくて。それもロック系ではなくてね。なんか、地方にいっぱい、そういうおもしろいグループがいるんですよね。その話をしながら…最初になにをかけるか。じゃあ、ジプシー・ヴァイブス(GPSY VIBS)というグループを紹介しますね。それでは、タワーという…『Tower -誕生-』というアルバムですね。それの中からGPSY VIBSで"花の野"。
花の野 - GPSY VIBS
GPSY VIBSで"花の野"。「花」と、それから野原の「野」ですね。GPSY VIBSは4人組で、浜松…だったと思うんですよね。静岡県を中心に活動しているという話で。ヴィブラフォンは女性なんですけど…ま、詳しいことはまだわかってないですね、僕は。印象的なこのメロディがとても気になったんで、ずっと…いつかかけようと思ってたんですけど。
そもそも、こういう音楽をなんで知ったかというと、テレビ欄のいちばん端っこにある…東京のローカルなテレビ局、ありますよね。それの「ヒーリングタイム」という…ヒーリングタイム・ミュージック、かな?時々見ちゃうんですよ。街の風景とか猫とか、いろんな静かな画面…動画のところにニュースのテロップがダーッと流れてて、音楽がずーっと鳴ってて。その番組の選曲の人が、なかなかすごいんじゃないかと思うんですけど。それを聞いていつも聞き流す…聞き流してるはずが、「あれ?これ誰だろう?」って思うような音楽がかかるんですよ。で、このGPSY VIBSもそこで知ったんです。そしたら、おんなじようなことを星野源くんが言ってましたね。おんなじ…やっぱりGPSY VIBSだったか…そういうものをそこで聴いて、としゃべってました。あー、おんなじ感覚してるなぁ、と。あの番組はちょっと聴き逃せない、っていう感じになってきますね。
で、その番組で知ったのが…京都のCloseness Ensemble Of Kyotoという。実は、残念ながらこの人たちの音源、手元にないんですね。配信がなかったっていうのもありますし。まあ、まだ詳しくはわからないんですけど。このグループはジャズ系なんですけど、とってもユニークなサウンドなんですね。非常にノーマルな編成ですけど、やってることがすごくおもしろい。そのうちまた、探してきてかけたいと思います。話だけになっちゃいましたけどね。
えー…他にですね、ショーロ・クラブ(Choro Club)がかかって、これがまたよかったですね。画面にピッタリ…「環境」的な画面にかかるにはそういう音楽がピッタリっていう…思うに、東京にしろ地方にしろ、そういうインスト系のグループが実に地道に、しっかりと、おもしろい音楽を作り始めてる感じがありますね。次にかけるChoro Clubはもう20年以上のベテラン、ということなんですけど。これはですね…『ARIA The NATURAL』という、アニメなのかな。それのサウンドトラックの中の一つです。Choro Clubが参加してて…"夏の妖精"という音楽を聴いてください。
夏の妖精 - Choro Club feat. Senoo
(from 『ARIA The NATURAL Original Soundtrack due』)
Choro Clubで"夏の妖精"という曲。「ショロ」というのは、C・H・O・R・Oで「チョロ」と書いて「ショロ」ですけど。ブラジルの伝統的な音楽の一つで、ショーロというのは複弦楽器、ギターのようなマンドリンのような、いま聴いてたような音色がショーロ…で、それ以上のことは僕、知らないんですけどね。すごく憧れる音楽の一つですね。その楽器をあんまり、見たことがないんですけど。わりとこういう、ブラジル系の、アコースティックなサウンドのグループとか、生ギター…アコースティックギターがフィーチャリングのバンドも多いわけですね。
で、ちなみに先ほどのGPSY VIBSっていうのはスペルがまた変わってまして。G・P・S・Y・V・I・B・S、ですね。一つずつ欠けてるんですね、母音が。元々はマヌーシュ的なバンドだったと思うんですけどね。ジャズの要素が強く入ってきたりして。大体そうですね。多くのそういう新しいグループも…いまのChoro Clubもそうですけど、ジャズとかブラジル音楽とか。そんなような影響が強いかもしれないですね。
えーと、そういうわけで…もうこれでネタ切れなんですよ(笑)残念ながら。そのうちまた集めて、特集したいなと思います。とにかく、忘れないうちに知らせておきたかった、ということで。これは去年の9月くらいに聴いてた音楽ですね、いままでのは。
その後、僕はソロアルバムの制作に没頭し始めて、ついこないだ完成しまして。まあいま、まだマスタリングのプロセスの段階なんですけどね。3月に出るということで…僕はヘトヘトなんです。こんなに没頭して、苦労したアルバムは初めてですから…(笑)この歳になってですね。この歳というのはつまり71歳、今年72になるんですね。おじいちゃんですね。それでアルバムタイトル、自分のソロですけど、『ホチョノ・ハウス(HOCHONO HOUSE)』ですよ。なんでこうなったかというと、あまりにも深刻に作り過ぎて。深刻っていうか、難しかったんでね。没頭し過ぎて。緊張感が強かったんですよね。それの反動ですね。「ホチョノ・ハウス、できたよ!」っていう感じです(笑)んー…緊張がほぐれるんですよ。これ、もしラジオかなんかで女子アナの方々がですよね、僕のアルバムを紹介してくれるとなるとですね、「ホチョノ・ハウスから…」っていうことになるわけですよね。それが楽しみだな。申し訳ないとは思うんですけど。
では、ここでまたちょっと違うムードの音楽をかけたいと思います。これもずっと、去年からかけようかなと思ってたんですけどかからなかった、ケイト NV(Kate NV)という。これはモスクワに住んでる…ルックスがニュー・ウェイヴっぽい、綺麗なお姉さんですね。名前はケイト・シロノソヴァ(Kate Shilonosova)という。なかなか、モスクワ発の音楽っていうのは…聴くのが珍しいですけど。実は実験音楽とかテクノが盛んな街、らしいんですね。そのKate NVも、まあテクノ系というのかな。そういう音楽なんです。彼女と僕は一回すれ違ってるんですね、東京で。Red Bullかなんかのコンヴェンションに僕は出向いたんですけど、その聴衆のひとりだったということを後で聞きました。僕の『フィルハーモニー』とかを聴いてるっていうようなことを…記憶があるんですけどね。その彼女、Kate NVのソロが去年出て。『FOR』というアルバムですね。その中から1曲、"YOU"という曲ですね。
вас YOU - Kate NV
(from 『для FOR』)
まあ、こんな感じの曲が全体に散りばめられていますが。Kate NV、"YOU"という曲でした。
モスクワの音楽を紹介したからにはですね、是非ともセルゲイ・クリョーヒン(Sergey Kuryokhin, Серге́й Курёхин)という、とてもユニークな音楽家のことを紹介…しないわけにはいかないですね。去年の初めごろ、僕は『Vu Jà Dé』というアルバムの中で、"Retort"という、まあセルフカヴァーをやっていたんですけど。その歌詞の中に「メハニカ」というような言葉が出てきて、そうだったなぁ、と。「ビオメハニカ(biomekhanika)」という言葉にすごく僕は…1980年代に影響されてたなぁ、と、思い出してたんですが。それを紐解いていくと、ロシアのセルゲイ・クリョーヒンという人物にぶち当たったわけですね。
で、「ビオメハニカ」っていうのは1920年代に考案された演劇的な理論のひとつで。モダニズムの中で…メカニックと生体、っていうのかな。「有機的な機械」というか。そんな動きの、新しい演劇論が沸き起こったわけですね。その流れが1980年代の旧ソ連で「ポップ・メハニカ(Pop Mekhanika)」という流れになって、その中心にいたのがこのセルゲイ・クリョーヒン、だったというわけですね。あらゆるジャンルの音楽を融合したような、とても実験的な音楽をいっぱい作ってて。自分もそうなんでしょうけど、掴みどころのない音楽家…ですが、とてもユニークで、存在感のある人ですね。全貌が掴めてないですけど。「ポップ・メハニカ」というのが今だに続いているのかどうか。まあ、いろんなジャンルの…音楽に限らない、演劇、映像、そういったアーティストが集まったムーヴメントのようですね。
では、セルゲイ・クリョーヒンのアルバム、何枚か出てます。ほとんどロシア語表記なんですけど、読めないけど…あ、これは英語表記もついてて、『Mr. Designer』というアルバムかな、これは。その中から"Casket"という曲を、聴いてください。
Casket - Sergey Kuryokhin
(from 『Mr. Designer』)
というような、短い楽曲ですけど。"Casket"という、セルゲイ・クリョーヒンの作品です。この方はですね、1996年に亡くなっていまして、その前に2度ほど来日しているんですね。1996年には実は、日本の現代音楽作家の高橋悠治さんが主宰するアヴァンギャルドなコンサートに出る予定だった、らしいですね。ですから、そういう前衛的な舞台というか、ジャンルでは非常に注目を浴びていた音楽家なんですね。
えー、それではここで息抜きに、軽い…軽いというのかな(笑)聴き馴染んだ音楽をかけてお別れしたいと思いますけど。これは車でラジオを聴いてたら突然かかって、なんだ、いいな、と思って調べて手に入れたものなんですが…"枯葉(Autumn Leaves)"という、まあ有名なスタンダードですね。"Autumn Leaves"をキャノンボール・アダレイ(Cannonball Adderley)、サックスですね。が、演奏しています。では、それを聴きながら…これ長いんですね。11分ぐらいあるんで、かかるところまで聴いてください。お願いします。では、また来週。
Autumn Leaves - Cannonball Adderley
2019.01.13 Inter FM「Daisy Holiday!」より
H:こんばんは、細野晴臣です。きょうも引き続いて…先週の話の続きをしましょうね。
希子:しましょう!
佑果:はい。
H:水原姉妹。希子さん、佑果さん。
希子:希子です。
佑果:佑果です。
希子:では早速…細野さん、1970年代の汚い話を教えてください。
H:あのね、なんだろうな…例えば、女の子の周りに何者かわからない人がいたりして。でも、大体みんな汚いの。
希子:(笑)
佑果:汚いというのは…
H:家出してきたりして…
佑果:あー…
希子:カッコいいなぁ。
H:まあ、育ちはいいんだろうけど、家出してきてお風呂入んなかったり、友達の家を渡り歩いてたりね。
希子:すごい。
H:そんなような人の中から、素晴らしいミュージシャンが出てきたりしてたんだよ。
希子:例えば?
H:例えばって…汚いって言っちゃうとアレだから言えない(笑)
佑果:(笑)
希子:そうですね…こちらも挙げづらいです(笑)
H:あとは…僕はエイプリル・フールっていうサイケデリックなバンドやってて。別珍って知ってる?ベルボトムで、ビロード…なんていうの、あれ?
希子:あの、ベルボトムパンツってことですか?
H:そうそう。で、「ラッパズボン」って言ってたんだけど。もう、異常なほど太い。で、異常なほど長い。袴みたいなね。
希子:(笑)
H:で、引きずって歩いてたから、裾が汚いんだよね(笑)で、六本木を集団で歩いてると、すごい怖いんだよ、見た目が。ものすごいロングヘアーで。ヒゲだらけで、ダンガリー穿いて歩いてたわけ。バンドの演奏の帰りに六本木のハンバーガー・イン(The Hamburger Inn)に行くのがけっこう楽しみで。
希子:へー。
H:よかったんだよ、ハンバーガー・インって。おいしい。おいしいし、24時間営業で。朝行くんだよ。5時か6時ごろ行くんだよね。で、その頃六本木ってやさぐれた人がいっぱい歩いてて。普通の人じゃないの。
希子:みんな。
H:うん。おっさんとかね。なんだろう…その筋の人たち、っていうか。
希子:あー。
H:で、僕たちが歩いてると、寄ってくるんだよ。
佑果:えー!
H:おもしろがって。怖いんだよ。怖がってるの。
希子:向こうが?
H:うん。怖いから揶揄うっていうか。「スゲェな、お前ら!」とか言う…
希子:(笑)
佑果:えー!
希子:やっぱり、でも…その当時の大人も、1970年代の若者たちを見てショックっていうか…
H:断絶してるからね。
希子:そうですよね。ぜんぜん…だって、カルチャーがあまりにも違い過ぎて…
H:だから話が通じないっていうか、向こうがもう、話しかけてこないっていうか…(笑)
佑果:んー。
H:何者かわからない人たちが出てきた、っていう感じだろうね。
希子:宇宙人みたいな。
H:そうそう。だから僕も祖母に「髪の毛切って…」とか言われてたけど(笑)
希子:(笑)
H:全く無視してたね。んー。
希子:突然ラヴ&ピースをね…謳う若者たちが。
H:そうなんだよ。だから、日本はヒッピーもいたけど、フーテンと呼ばれる人たちもいたし。
希子:はい。フーテンはまたちょっと…
H:「新宿系」っていうかね。
佑果:あー…
H:フーテナニー(hootenanny)から来てるのか、わからないけど。フーテンの寅さんってなんだろう、あれ(笑)まあ、放浪、みたいな。
希子:はいはい。わかります。
H:駅の西口にたむろしてたり…まあいろんなジャンルがあって。歌声喫茶があったりね。
希子:歌声喫茶ってなんですか?
H:なんか、みんなで…なんて言うんだろう、共産的な…ロシアの歌を歌ったりするんじゃないかな(笑)
希子:えー!すごい。
佑果:ロシアなんだ…
H:そこは行ったことないけどね(笑)
佑果:おもしろい。
H:ちょっと上の世代がそういうことやってて、フーテンが出てきて。うちらは…ミュージシャンたちはヒッピー系のね。けっこうオシャレに気を遣うタイプの…(笑)
希子:汚いなりに…スタイルをね(笑)
H:そうそうそう(笑)
希子:わかる。若者の微妙な、その…
H:いろんなジャンルがあったの。そういう、新しい世代でも。で、音楽も…いちばんはブルースが多かった。
佑果:へー。
H:クリーム(Cream)の影響かな。エリック・クラプトンとか。
佑果:そっか…
H:けっこうみんなカヴァーばっかりやってたから、オリジナルやってる人はひとりもいなかったね。
希子:みなさん、もちろん英語で歌われるんですか?
H:そうそうそう。
希子:だから、そこに日本語を載せるっていう発想は、その当時は…
H:まだ無かったね。カッコ悪いと思われてたしね。日本語が。
希子:そっか…じゃあ、細野さんすごいですね(笑)そこに歌詞を…最初に載せて…
H:いやー、やっぱり…(笑)そうね、まあやってみるか、みたいな。実験的な気持ちだから。
希子:すごい…
H:話してるとぜんぜん音楽かからないから…
希子:そうですね、ずっとお話しちゃいます。
H:順番…希子さん。
希子:えーとですね…私これ、佑果ちゃんに教えてもらったんですけど、"Firecracker"…マーティン・デニー(Martin Denny)の"Firecracker"を、トッド・テリエ(Todd Terje)さんっていう…彼はどこのミュージシャンなのかな?
佑果:フランスかな?
希子:そうだ、フランス*だ。[*ノルウェーです]
H:やってんだ。
佑果:カヴァーをしていて…
H:へー!知らないよ、僕(笑)
希子:ホントですか!すごい良いカヴァーで…彼はよく日本に来たりとかするんですけど。
H:ホント?ぜんぜん知らなかった…
希子:他の曲も好きなんですけど、私たちが好きな"Firecracker"をね…
H:聴きたい…
姉妹:はい、ぜひ。
Firecracker - Todd Terje & The Olsens
(from 『The Big Cover-Up』)
H:へー、初めて聴いた。
希子:はい。トッド・テリエさんは…さっきフランスの方って言っちゃったんですけど、ノルウェーの方…
希子:あ、そうなんですね。
H:北欧は多いよね。
希子:めちゃくちゃカッコよくて。私、1回パリのクラブに行ったときに彼の曲を聴いて、すごい衝撃を受けて。そこから彼のファンで。日本にも何度か来てるんですけど、遊びに行ったこともあります。
H:んー…"Firecracker"っていうと、ジェニファー・ロペス(Jennifer Lopez)って人がYMOのオケをそのまんま、ループにして使ってて…
希子:ホントですか!
佑果:聴いたことあったかなぁ…
希子:え、聴きたい…(笑)
H:持ってないんだけど、誰もクレーム付けなかったね、あれ。出版社とか。
希子:ジェニファー・ロペスって、あのジェニファー・ロペスですか?あの有名な。
H:そう。10年以上前だけど。
希子:えー…
佑果:帰って聴いてみます。
H:なんて曲か知らない…
希子:なんて曲だろう?聴きました?
H:聴いた聴いた。
希子:どうでしたか?
H:うん。いいじゃん、って思って(笑)
希子:(笑)それはでも、何もなく使うんですか?
H:なんにも、断りなく。
希子:それって…大丈夫なのかな…
H:本当は礼儀違反だよね。
希子:そうですよね…
H:昔、外国映画の…西部劇のね、『荒野の七人(The Magnificent Seven)』っていうのがあって。テーマ曲が大好きで。「♪ダッツダッダダン、ダッタタタタン」っていう…
希子:あっ、うんうん。
佑果:「♪テテッテー、テテッテー」(笑)
希子:(笑)
H:それをね、YMOでスカをやった時(="Multiplies")、イントロにそれを使ったら…レコーディングしたんだよね。そしたら作曲者から…アメリカのね。エルマー・バーンステイン(Elmer Bernstein)っていう人。もういないけど。事務所から高額の請求書が来た
希子:えー!
佑果:ガビーン…
H:すごいよ、リサーチ力っていうか。普通、アメリカではああなのかな。
佑果:簡単にカヴァーできないっていうか…
H:サンプリングブームだったんだけど、そういうことがあったんで一気に下火になっちゃったね。
希子:なるほど…でも、(YMOは)優しいですね。なにも言わなかったんですね(笑)
H:うん、楽しんだだけ。どんどんやって、っていう感じ。
佑果:そうですよね、楽しいですよね。いろんな方向から聴くっていうのも…
I'm Real - Jennifer Lopez
(from 『J.Lo』)
希子:あ、これか!
佑果:あー、いいですね!楽しい!
希子:ちょっと待って…楽しいけど衝撃的だよ…(笑)これ許可なく使ったのは…
佑果:そうだね。
希子:だってもう…すげー。
佑果:ホントだ、ループですね。あ、ちょっと「和」っぽいのも…琴…
希子:これちょっと、今から言っても行けるかもしれない…
H:んー、時効だね(笑)
希子:時効か(笑)YMOはみんな…器が広すぎて誰も何も言わないっていう…(笑)
H:ホントに…めんどくさい(笑)
希子:そうですよね。
佑果:たしかに…
H:だって、マイケル・ジャクソンがYMOの曲カヴァーしてるくらいだからね。
佑果:ホントですねー!もう、すごいですよね(笑)King of Popが…
H:ホントだよね(笑)
佑果:すごいな…80年代。
H:80年代の話。80年代は70年代に比べると、すごいオシャレな時代(笑)
希子:そうですよね。
H:東京だって、すごいオシャレな人いっぱいいたね。
希子:突然ファッショナブルに。
H:そう。目を見張るくらいオシャレな女の子が多かったよ。
希子:へー。
H:いまはなんか、みんな違うな、やっぱり。
希子:たしかに。(80年代は)オシャレだったけど、個性豊かでもありましたか?
H:個性的だった。んー。
希子:だから、単純に…やっぱり、ファッションもすごく良い時代でしたもんね。
H:そうだったよ。花開いてね。
佑果:たしかに…
H:で、ロンドンに行くとすごいオシャレだったな。最近はロンドン行ってもそう感じないけど。おもしろい人いっぱいいたね。
希子:その当時のファッション…ハイ・ファッションみたいなのと、今のハイ・ファッションっていうのもまた…今はハイ・ファッション着てると「みんなが知ってるものを着てる」という認識になるから、ちょっとやっぱり…そういう意味で「個性が無い」、と(みなされる…)
H:ハイ・ブランドって高いし…
希子:そうなんです。高いし、環境にも悪いし。あんまりいい事ないんですけど。
H:昔は、ほら、こまめに作ってたじゃない。オリジナルのね、服を。
希子:そうですね。手間暇かけて、1点もの。
佑果:たしかに。クチュールとかも…
H:だから、幸宏(高橋幸宏)とね…幸宏、ホンっト買い物好きだから。
希子:いまも?(笑)
H:いまもね(笑)で、ロンドン行くとキングス・ロード辺りをずーっと歩くんだけど…ものすごい、ゆっくり見るからこっちはもうダメ、ついてけない(笑)
佑果:えー(笑)
H:店の外でタバコ吸って待ってたりして。
希子:なんか想像がつくところがかわいらしいです(笑)
H:でも、その代わりキングス・ロードなんて…最近は知らないけど、おもしろい店がいっぱいあったな。やっぱり僕も、つい買っちゃったね。幸宏に「これいいよ!」って言われて…(笑)
希子:へー。
佑果:そうなんだ…
H:ヘンなブランドがいっぱいあった…フランソワ・ジルボー(François Girbaud)って、ヘンテコなジーンズをいっぱい作ってて。先が窄まってるダンガリーみたいな。いまもあるけど、ぜんぜんつまんない。
希子:つまんないですか。やっぱ…そうなんです、だから私たちの世代とか…まあ、私たちは過去のものに…
佑果:インスピレーションをもらうというか。
希子:オリジナリティを感じるし、なんだろう…「意思がある」感じがするんですよ、洋服に。だからやっぱり、ネットで検索して、そういうものを見つけて買ったりとか。そのエネルギーに触れてたい、というか。そういう感じはあるかもね。
佑果:んー、もうネットでショッピングできちゃうっていう…
H:そうだよな、そこが違う。
佑果:そうですね。友達が持ってる服のコレクションが見れる、みたいな。そういう楽しみがある。
H:そういうのは全くなかったから…70年代にダンガリーのベルボトムがアメリカで生まれて。日本にはまだ入ってきてないんだけど、京都の寺町で売ってる、っていうのを聞いて買いに行ったもん(笑)
希子:わざわざ京都まで!?(笑)
H:そうそう(笑)まあ、京都でライヴがあった時に…
希子:あー、そうかそうか…
H:寺町に行って、あった!と思って。
希子:なんで京都の寺町にあったんだろう?
H:わからない…ジーンズショップがあったんだよね、そこに。ビッグ・ジョン(BIG JOHN)*だったけどね…[*国産ブランド]
希子:(笑)
H:当時はそれはすごい、レア・アイテムだった…
希子:そっか…私が子どもの時は90年代なので、また70s'のトレンドがぶり返して…ベルボトムよく穿いてました。
H:あ、そう。
希子:まあ、テキサスで育ったので…その時とはちょっと違うかもしれないけど。
H:いつもぶり返してくるよね。
希子:はい。トレンドは。いまはファッションも音楽もやっぱり、つまんないですね…
H:そうかもしれない。よくわかんないけど。
希子:なんか、でも…不思議なのは、こんなにテクノロジーもたくさんあって、使えるものもたくさんあって、いろんな方法があって。誰でも簡単に音楽とか作れちゃう時代なのに、そういう時にさらに新しいものっていうのは、なかなか生まれないんだなぁ、と。
H:そうなんだよ。みんなありものをアレンジして、くっつけて、デザインして。「デザインの時代」っていうかな。
希子:たしかに。デザインの時代ですね。みんな楽しようとしてる。
佑果:まあ、便利な世の中だから、それに自然と頼っちゃうっていう。
希子:甘えちゃってるのかな?
H:っていうか、なにも考えてないよね。そこまで。「普通に使ってる」(笑)
佑果:そうですね。
H:それで、自分で寄せ集めて…まあ、そこが一つのオリジナリティの見せ場だろうけど。集め具合がね。
希子:んー…これから音楽はどうなっていくと思いますか?
H:それ考えてるんだけど、わかんない(笑)
希子:わかんないですよね。
H:で、いま…こないだ、まりん(砂原良徳)とテイくん(テイ・トウワ)と話した時にそういう専門的な話をして。音の話をして。
希子:はい。
H:音の時代なんだよ、いま。だから、つい10年ぐらいの間に…2010年から2020年ね。いまその間にいるけど。音の時代に生きてるわけ。
希子:「音の時代に生きてる」っていうのは?
H:音が変わった、っていうかね。1950年代は想像できるじゃない。50年代の音楽って。Big Mama Thortonみたいな。60年代はガール・ポップみたいのが出てきて。で、音も変わってきて。エコーがついたり。70年代は…それ以降は知ってるでしょ?
希子:はい。
H:年代…10年毎に変わるじゃない、必ず。必ず変わってくんだよ。ファッションも。
佑果:はい。
H:で、いまどうなのって言うと、誰もわかんないの。本当は。僕もわかんないけど、確実に音が変わった、っていうのはわかるの。音だけ変わったんだよ(笑)音が良くなった。
希子:音が良くなった?
H:テクノロジー。んー。この先、知らない。飽きると思うんだよ(笑)
希子:音が良くなった、っていうのは良過ぎるっていうことですか?クリアー、っていうこと?
H:いや、なんて言ったらいいかな…ヴァーチャルなんだよ。
佑果:んー。
H:音圧の話をこないだしたけど…
希子:軽いんですかね?
H:音圧が無くなったの。音圧っていうのは例えば…キックドラムが「ドン、ドン」っていうと身体に響いたりするじゃん。
希子:はい。
H:それはフィジカルなの。でもいまの音はフィジカルじゃないの。脳内…脳内音圧っていうか。
希子:あー…すごいわかるかもしれない!なんか、感覚的にわかります。
H:そうなの。それを誰か…誰かは知らないけど、映画の世界でそういう音作りが発明されたんだと思う。最近のハリウッド映画もすごい音じゃん。
希子:はい。
H:でも、すごい音のわりに重低域が出てないんだよ。ヴァーチャルなの。球体の中に入ってる音楽、みたいな。
佑果:んー…
H:それに僕、すごい憧れて。遅ればせながらね、研究してるんだけど…わかんないんだよね。
佑果:そうなんだ…
H:いま制作してるのもそれにちょっと近づきたいんだけど、それやり過ぎるとグローバル過ぎちゃうの。みんな同じになっちゃう。
希子:たしかに。
H:で、作家性を持ってないとつまんないじゃん。そうするとなんか、デコボコしてくるっていうか…次の世界っていうのはそれのせめぎ合いになるよ。
希子:でも、こないだの"薔薇と野獣"にもその感じが出てますね…
H:ちょっと入ってるんだよね。ちょうど変わり目で、プロセスで。古い機材で作ってるんだけど、マスタリングっていうか、ミックスは新しい機材でやってるっていう…へんてこりんな、不思議な気持ちでやってる…
希子:おもしろい!だからやっぱり、聴いたことが無い音なんですね。なんか初めて聴いた時に…
H:あ、そう?
希子:なんか…こういうのって口で説明するの難しいんですけど、聴いたことが無い感覚というか…新しく感じました。
H:そう。それはうれしいわ。
希子:細野さんはすごい。
H:いや、でも20年ぶりにこんな気持ちになった。
希子:えー、いいことですね、でも。
H:この歳になってこんな気持ちになるんだってことに呆れてるんだよ。昔っからそうだよ。はっぴいえんどの頃からそう。なんでアメリカの音はあんなに良いの?、と思ってたわけ。レコード。で、アメリカにレコーディングに行って。音の作り方が違うな、と思ってね。ヴァン・ダイク・パークスという人と一緒にやって。なんて言うんだろう…重ねていく感じが、奥行きがあるわけ。
希子:なるほど。
H:日本って絵巻物みたいに作っていくから。奥行き…日本の人ってあんまり…無いんだよな。
希子:すごい意外ですね。奥行きがある感じがすごいするんですけど。
H:あ、そう?
希子:でもそう言われると、アメリカの音は…
H:奥行きにすごい気を遣ってる。
希子:たしかに…ドーン、と。引っ張られる感じがありますね。
H:昔からそうだよ。絵画の世界もそうだった。西洋はパースペクティヴで描いていくじゃん。
希子:はい。
H:日本はぜんぶ…遠近法が無いから。浮世絵とかね。それがおもしろいんだけどね。
希子:おもしろい話をしましたね。
佑果:深いですね…
H:ずっとこの話、続けちゃうかもしれない(笑)
希子:音楽が流れなくなっちゃう(笑)
H:時間が来ちゃったね。
希子:あと1曲?1曲かかる?
H:どっちかな。
希子:じゃあ佑果ちゃん。
佑果:じゃあ、YMOの…
希子:お。
H:YMO?
佑果:この"Pocketful of Rainbows"を…『テクノドン』の。
H:んー。
佑果:聴きたいなぁ、と…(笑)
H:プレスリー(Elvis Presley)だよ。
佑果:プレスリー!
H:うん。オリジナル。
佑果:そうだったんですか…!
H:そう。
佑果:きょう知りました(笑)
H:(先週聴いた)"Hound Dog"もプレスリーでヒットした。じゃあ、その"Pocketful of Rainbows"を。作詞は湯川れい子さんにお願いしたの。
希子:へー。
H:では、時間が来たので…きりが無い(笑)お話にきりが無いので…また来てね、だから。
希子:はい。また呼んでください。
佑果:お願いします。
H:お願いします。じゃあまた…
希子:さよなら~
2019.01.06 Inter FM「Daisy Holiday!」より
H:はい、細野晴臣です。新年…2019年。また、かわいらしいお二人を招いてます。水原姉妹。
姉妹:イエーイ!あけましておめでとうございます!
希子:水原希子です。
佑果:佑果です。
H:はい。なんかもう、恒例になってきたね。
佑果:うれしいです!
希子:光栄です、本当に。こんな楽しい時間を…
佑果:過ごせるなんて…
希子:音楽共有して…
H:今年は、何年?亥年?
佑果:そうなりますね。
希子:亥です。
H:お二人は何?何年生まれ?
佑果:私、戌です。
H:あ、年女だったんだ。
佑果:ミラクルな1年でした。細野さんにも出会えたし…
希子:あ、そうだ!そうだね。
佑果:ロンドンにも…
H:来たね。
佑果:はい。コンサート観に行かせてもらったり…出させてもらったり。
H:出たね。
希子:ホントだ。
佑果:ホントに楽しい1年だったなぁ、と思います。
希子:福岡も出たもんね。
佑果:はい!
H:そうだそうだ、お二人だったね。
希子:盛りだくさんだったね。
佑果:はい。
H:希子ちゃんは何年?
希子:私は午です。
H:えー…いつだかわかんないけど…(笑)
佑果:午は…
H:数年前そうだったね。
希子:数年前です。馬は働きものなので…
H:働いてるよね。
希子:働いてます、本当に。よく働いてます…
H:僕は今年、年男だ。亥だ。
希子:あ、そうなんですか!
佑果:えー!知らなかったです。
H:僕は母親も亥年の蟹座で、そのお母さん…僕のおばあちゃんね。亥年で蟹座なの。3代続いて…(笑)
希子:えー、すごい。
佑果:そんなことがあるんだ…
希子:ちなみに、うちのおじいちゃんも亥です。母方の。
H:あ、ホント?ちょい待ち…同い年ってこと?(笑)
希子:いや、同い年じゃないかも…さらに(一回り)上ですね。
H:よかった(笑)んー。今年も忙しいんだろうね。
希子:今年は…
H:希子ちゃんはテレビドラマ出てるよね。
希子:そうです。いま、テレビドラマ絶賛撮影してて。2月までなんですけど。1月の後半から放映されるので…
H:そうかそっか。
希子:まあ、ちょっと…久しぶりのテレビドラマなので…弁護士のお話で、『グッドワイフ』っていうタイトルなんですけど。
H:うん。
希子:主演の常盤貴子さんが…16年ぶりに弁護士に復帰するというお話で、その旦那さんも弁護士なんですけど、旦那の汚職と浮気が原因で旦那さんが捕まっちゃうので…私が彼女を支えるパラリーガルの役で。女性が強く戦っていく、みたいな。すごくいいですよ。常盤さん、とても素敵な方なので。楽しくやってます。
H:でも、弁護士役って大変だろうね。専門用語とか。
希子:大変です!そう、普段私もう…ボーっとしてるんで…
佑果:(笑)
希子:もう専門用語の連発だし…まあ、すごく勉強にはなりますけど。
H:良い経験だよ。
希子:はい。これをふんばって…乗り越えようと思ってます。
H:佑果ちゃんも、忙しい?
佑果:私はそんなに忙しくないです(笑)でも、好きな音を集めて組み立てたり…そういうのにフォーカスできるようにしていきたいなぁ、って。来年の…目標はたくさんあります。
H:「今年」、ね。
希子:でも、DJ忙しくなったもんね。
佑果:DJ…2年前に始めて、たくさん…いろんな場所でDJするのを通して、音楽の良さみたいなものを毎回知って勉強する、みたいな…けっこう楽しくて。
H:じゃあ、早速…
佑果:あ、そうですね!(笑)
H:聴かせて。
佑果:じゃあ、まずは…何からかけようかな…
H:さっき話してた、ビッグ・ママ・ソーントン(Big Mama Thornton)…
佑果:あ!ビッグ・ママ・ソーントンの"Hound Dog"を聴きたいです。
H:あー、こういうのを聴いてるんだね。おもしろいなぁ…
希子:(笑)
佑果:カッコいい…!
Hound Dog - Big Mama Thornton
佑果:いや、こういう声が出せたらね!
希子:(笑)
佑果:どれだけカッコいいかって…思いながら聴いてます(笑)
H:ホントだよね。
希子:もうなんか…強いですね。パワー。
佑果:図太い声と、シブい…
H:「Big Mama」だから。
佑果:憧れますねぇ…
希子:私、昔エタ・ジェイムズ(Etta James)のライヴに行ったことがあって。彼女が亡くなる前に。
H:え、すごい!それは貴重だ。
希子:そう。お父さんに…16歳の時、テキサスに会いに行って。で、お父さんが「エタ・ジェイムズ、絶対に連れていきたい」って言って。で、私知らなくて。なんなのそれ、とか言って。生意気に。
H:(笑)
希子:で、連れていかれたら、あまりの…
H:ビックリしちゃった?
希子:もう、とにかくパワー。車椅子で出てきたんですけど。
H:あ、そうだったんだ。弱ってるはずなのに…
希子:弱ってないですよ、一切。ぜんぜん。ステージ立ったら強くて。めちゃくちゃ…ジーンときた瞬間でしたね。
佑果:うらやましい…
希子:やっぱり、女って強いんだな、って。
H:うんうん、強いよ(笑)
希子:彼女は愛をすごい歌うから、いっぱい傷付いてきたんだろうな、と思って。
H:そうそう、ビヨンセ(Beyoncé)がその役やってる映画あったね。
希子:ありましたね。
H:ビッグ・ママ・ソーントンの"Hound Dog"って…プレスリー(Elvis Presley)の"Hound Dog"が大ヒットして、それを子どもの頃聴いてたんだよ。で、大きくなってからこれ聴いたのね。で、ぜんぜん(こっちの方が)良いから…(笑)
佑果:(笑)
H:こりゃなんだろう?と思って。ノリがおもしろいじゃない。こういうのやりたい、って思ったのが30歳ぐらいの頃。
希子:えー。そうだったんですね。
H:まだやってないけどね、これ。
希子:あれ?(笑)いつかやりますか?ここまで来たら…
H:やりたい、やりたい。
希子:ソウルフルな…
H:や、でも歌がね…歌えないよ、こんな風には(笑)
佑果:そうなんですよ!だから憧れるなぁ…っていう。
H:憧れる。最近の日本の若い人、みんな同じ声してる…
希子:わかります。
佑果:個性、っていうのがね…
H:なんかみんな田原俊彦みたいな…あ、こんなこと言っちゃうと怒られちゃう(笑)
佑果:(笑)
希子:やっぱり、でも…ある程度自分の人生を本気で生きてないと、ここまでの声、っていうかパワーが…宿らないですよね。
佑果:ソウルがこもっている…
H:ソウルっていう音楽はそういうもんだからね。
佑果:魂…
H:だから、音楽ってほら…僕も歳とったけど、年寄りもいい味を出せるわけじゃない。年輪、とか。枯れてる、っていう。
希子:はい。
H:まだ日本のロックはそこまで行ってないじゃない。ブルース…演歌はね、あると思うけど。
希子:たしかに。
佑果:そうですね。
H:演歌はすごい強い声の人、いっぱいいるじゃない?
希子:そう。紅白歌合戦とか観てると、やっぱり演歌いいな、って思いますもんね(笑)
H:そうそう!思うよ。
希子:際立つんですよね、やっぱり…ソウルが出てるっていうか。
佑果:坂本冬美さんもね…
H:そうね。
佑果:HISの…
H:あ、HIS?
佑果:大好き…”日本の人”とか。
H:いい思い出だ、あれ。
希子:(笑)
佑果:いやー、あのアルバムはホントに大好きです。
H:いや、僕も好きなんだよ。
佑果:いつも聴いちゃいます。
H:あのね、パープル・ヘイズ("パープル・ヘイズ音頭")は清志郎(忌野清志郎)がアレンジしたんだけど、あんなの無いよ、世界に(笑)
希子:そうですよね。
H:ジミ・ヘンドリックスに聴かせたかった(笑)
佑果:ホントですよね!
希子:ワンアンドオンリーな。
佑果:すごくカッコいい…
H:では…希子ちゃん。
希子: はい。私はちょっと、最近忙しいので、自分のテンションを上げるために速いビートのを聴いてるんですけど。アゼリア・バンクス(Azealia Banks)という女性ラッパーがいまして。彼女自身はハードコアなタイプの女性なんですけど…彼女の曲を紹介したいと思います。
H:ぜひぜひ。
希子:"The Big Big Beat"です。
H:おお、いい音。
The Big Big Beat - Azealia Banks
H:んー…なんか、聴いちゃうよな、こういうの。心地よく。
希子:そうなんですよね。
H:リズムっておもしろい。
佑果:ね。楽しい。
希子:なんか、こういうビートに自分が乗せられて、忙しい時は…なんだろう、マシーンのようになるというか(笑)
H:(笑)
希子:よしいくぞ!みたいな。自分の中のリズムが速くなるので…こういう時は音楽に頼ろう、と思って。強制的にテンションを上げる、っていう。
H:あるよね。たしかにね、僕もこういうの聴くとテンション上がるね。
希子:ホントですか!
H:ちょっといま、声低いけど。
佑果:(笑)
希子:時にはね、テンションを強制的に上げなきゃいけない時があるから…
H:たしかにね…踊るの?
希子:踊ります!
H:どこでも踊るんだもんね。
希子:どこでも踊ります!
佑果:(笑)
希子:朝からすごい大変なシーンをいっぱいやらなきゃいけないっていう時は、ホントにテンションを上げないと乗り切れないから…
H:そりゃそうだ。
希子:現場でこれを自分のヘッドフォンで聴きながら踊ると、ホントに不思議に…それまでは、今日は大丈夫かなぁ…って思ってるムードが一瞬にして切り替わって…
H:んー。
希子:音楽ってちょっと脳みそをハッキングするというか…そういうのを最近、自分でめちゃくちゃ体感してて。
H:なるほど。
希子:やっぱり、音楽に乗っ取らせた方がいいんだな、と思って。
H:身を預けて。気持ちいいよね。
希子:たとえば、悲しい気持ちにならなきゃいけない時とかも、そういう音楽を聴いて脳みそを自らハッキングして悲しくなって…エモーションを音楽でコントロールできるというか。
H:おもしろいよなぁ。
希子:おもしろいです、すごく。音楽って。
H:なんか、最近見直されてるよ。認知症の人に音楽がすごく効果がある、とかね。
希子:あ、そうですか。絶対あると思います!
H:やっぱり、すごい存在だね。音楽ってね。
佑果:そうですね。音ってすごい、深いですよね。
H:深い。もうね、最近毎日スタジオでやってるんだけど、自分の作業を。日によってぜんぜん音が違って聞こえるし。なんかこう…つかみどころが無いんだよ。音って。
佑果:たしかに。
希子:毎日それと向き合わなきゃならないってある意味、毎日自分と向き合ってるようなものですよね(笑)すごい精神的な…
H:そう…そうなんだよ。よく言ってくれた(笑)
希子:ちょっとmeditationみたいな感じになりますよね。
H:なるねぇ。なかなか他では体験できないことを体験してるよ、今。まあでも…結局は楽しいんだよね。
希子:そうですね。佑果ちゃんもいつか音楽、がんばって作ってね。
佑果:ね!作るとしたらやっぱり、楽しいのがいいな、と思って。
H:いつでも作れるよ。今すぐ作れるんじゃない?
佑果:そうですね、パッと…形だけ…(笑)
H:あとは道具があれば。
佑果:そうですね。道具を集めよう…
H:おもちゃがいっぱいあるから。
希子:ここにおもちゃもあるし…
H:なんかね、期待しちゃうな。おもしろそう。
佑果:なんか、木琴の音とか鉄琴の音が好きで。
H:トイ・ミュージックみたいなね。
佑果:そういう音とビートを合わせたりとか…
希子:アイディア盛りだくさん。
佑果:言葉では表せないんですけど、いっぱい、ね…(笑)
希子:やっちゃおう!
佑果:あとは最近、水の音に耳をフォーカス…意識してしまって。たとえばお風呂に入ってると…水を叩くと場所によって音階があって。あ、水にもあるんだ!と思って。遅かったかもしれない…(笑)最近気づいて。
H:いや、なかなか、いい耳してるよ(笑)
佑果:あとは街で…金沢に最近行ったんですけど、街に川がたくさんあって。
H:あるね。
佑果:すっごい透き通った水が…流れてる音が、場所によってまた、ボリュームが出たり出なかったりとか。水も鳴いてる!とか思って…ヘンって言われるかもしれないけど(笑)
H:いや、でも…ホントにいい耳なんだよ。いい耳っていうか、音にすごく鋭敏だね。んー。
希子:よく街とか歩いてると、携帯で音をレコーディングとかしてるんですよ、佑果ちゃん。
佑果:そうですね。
H:なんか、タイプとしては自分にそっくり(笑)
希子:あ、そうですか?
佑果:(笑)
H:聴いてる音楽もなんか似てるし…
佑果:そうですね。
H:不思議な気持ちになっちゃうよ。
佑果:うれしいです(笑)
H;こういうのって…あんまりね、女性…女の子はそういう風に聴かないんだよね。あんまり探検していかないんだよね。
希子:あー…
H:いまある音楽をファーって聴いて…ルーツを探ったりとかしない。普通は。
希子:そうですね。私の周り…私たちの周りにはそういう…モニカ(茂木モニカ)も含め、そういう人が…(笑)
H:あー、集まってるんだね。
希子:集まってるんですね。みんなめちゃめちゃ個性強いんですけど(笑)
H:チームOK。
希子:チームOK、なかなか個性が強い…つわものたち…(笑)
佑果:それこそYMOのルーツとかも奥が深すぎる…ニュー・ウェーヴの世界とか。
H:そうそう、ニュー・ウェ-ヴ。
佑果:あんまり私、ニュー・ウェーヴを掘ってなかったんですけど、最近…
H:ニュー・ウェーヴも奥が深いよ(笑)
佑果:ディーヴォ(Devo)とか。こんなにカッコよかったんだ!と思って。最近聴いてたりとか。
H:もう聴くものいっぱいあるね、じゃあ。大変だ(笑)
佑果:足りないです!時間が…
希子:すばらしい音楽があり過ぎるんです、世の中には。
佑果:そうですね。この世に、もう…出尽くしちゃってるというか。
H:そう。だから、よりどりみどりだよ、いま。
佑果:そうですね。
H:探す人があんまりいない。自分が何が欲しいのかわかってないからね。
希子:たしかに。そこですね。選択肢はいっぱいあるのに。
H:ある。あるけど、掘り出せない、っていう。
希子:それはやっぱり、自分との…
H:そう。自分の問題だよね、やっぱり。
佑果:好きだから掘るんでしょうね。
H:好きなんだよ。
希子:みんな、でも、それぞれね。好きなものって形あるから…
H:じゃあちょっと聴かせて、好きなもの。
希子:あ、じゃあ、次の佑果ちゃんの好きなもの…
佑果:えっと…では、バーバラ&アーニー(Barbara & Ernie)っていう…
H:これは知らないな…
佑果:"Play With Fire"という音楽がありまして。1971年に出てるんですけど。これ、最近レコード屋さんに行って見つけて…とにかく、音楽がカッコいい…
Play With Fire - Barbara & Ernie
H:ふんふん。やっぱり70年代の音なんだね。おもしろいな。
佑果:70年代ってやっぱりカッコいいなぁ…タイムスリップできるとしたら私は70年代のカッコいいミュージシャンのライヴを観に行きまくりたい!って…できることなら(笑)
希子:でも、80年代も楽しそうだね(笑)
佑果:そう。でも、70年代って服もかわいい…サイケデリックなスピリットとか入ってる。なんか引き込まれる…
希子:あれ、幸宏さん(高橋幸宏)が言ってた…いや、違うよ、って。「70年代の後半から80年代に入った時がいちばん楽しかったよ」とか言ってたかな…
佑果:そうだね。
希子:言ってたような憶えが…
H:そうかもしれないけどね。なんだろう…こないだね、孫がベース弾いてるんだけど。
希子:はい。お会いしましたよね、私(笑)
H:ああ、そうだよね(笑)そのセッションがあって。浅草のライヴハウスで。いっぱいいろんな…「中南米研究会」みたいな大学生が集まって。
希子:おお、おもしろい!
H:すごいみんな上手いんだよ。ビックリしちゃって。で、集まってきた人がけっこう…なんて言うの、清潔で、オシャレで。かわいい女の子とかね。かわいい男の子とか(笑)キレイなの、みんな。で、昔のことを思い出して…昔はこうじゃなかった、汚かった、って思って…(笑)
佑果::えー!
希子:そっか…
H:みんなロングヘアーでヒゲ生やしてね。僕もそうだけど(笑)
希子:ヒッピー。
H:もうヒッピーの集会みたいな…パーティみたいのはあったけど。サイケで。
佑果:いやぁ…楽しそう…
H:不穏な感じ。危険な感じもあった(笑)それに比べてすごい今はクリーンだ。みんな…いい少年少女たちがね(笑)
希子:そっか…
佑果:なるほど。
H:だから、70年代は…けっこう汚いんだよ(笑)
希子:そうですよね(笑)
佑果:でも、ファンキーな感じがあるのって…ただgoodっていうよりかはおもしろい…
H:まあ、いろんな思い出があるよ、僕も。
佑果:あ、聞きたいです。エピソードを。
希子:「70年代汚いエピソード」を…(笑)
H:エピソード…ん?
(D:来週に回しましょうか…)
H:じゃあ…この続きは…(笑)
希子:細野さんの汚いエピソードが…(笑)
H:汚いエピソードは来週にします。
希子:楽しみ!(笑)
2018.12.30 Inter FM「Daisy Holiday!」より
時空の歪み…
H:こんばんは、細野晴臣です。さて!先週と同じメンバーです。
O:こんばんは、岡田崇です。
越:こんばんは、コシミハルです。
H:はい。先週も23日の夜中からだから…24日になってたんだよね。
O:はい。クリスマスイヴになってましたね。
H:きょうも…
O:もう、大晦日。
H:大晦日なんだね、実は。ついにね。
O:ついに…
H:どうします?
O:いや、別にどうともしないんですけど(笑)
H:平成が終わる、ってことはどうなの?
O:えー…でも、次のことが決まってないんでなんとも…
H:なんとも言えないよね(笑)未来は語れないよ、なんか。えー…平成ってどうだったの?好きなの?
O:あー…どうっすかね…30年…んー、なんとも…
H:なんだかわかんないような感じで。はい。どうですか、ミハルちゃんは。
越:うーん。でも、最近ね。
H:うん。
越:すごい、なんか…いろんなことが大きく変わってきてるな、って感じるの。
H:そうでしょう。
越:なんか、すごい波…変わるんだよね、きっとね?次元が。
H:変わる変わる。うん。
越:いろんな…音楽もそうだし、映像もぜんぶ。
H:そうだよ。その通りなの。
越:ね。暮らしも…いろんなところで変わってくものがいっぱいある。
H:すごいうねってるよね。なんだろうね…テクノロジー的には中国すごいじゃない、今。ついに日本が下降線をたどってるっていうかね。出遅れてるって言われてるでしょ。
越:うん。
H:まあね…でも、そういう技術はまだ持ってるから、中国に売ったりしてるわけでしょ。そういうこともあったりして…なんか、お金いっぱいもらってる会長がね、拘置所に入っちゃったりとか。
越:うん。
H:いろんなことがあってね。変わるんだよね。えー…じゃあ、そういう音楽をかけてください、岡田くん。
越:(笑)
O:どういう音楽をかければいいのでしょうか…(笑)
H:いいんだよ、なんでも(笑)
O:じゃあですね…先週はモンキーズ(The Monkees)かけましたけど、ブライアン・フェリー(Bryan Ferry)の新譜を。
H:新譜?
O:新譜が出てるんです。
越:おっ。
O:"Dance Away"…ロキシー・ミュージック(Roxy Music)のセルフカヴァーをやってるんですけど。
H:うん。
Dance Away - Bryan Ferry And His Orchestra
H:いやぁ、いいな。良いレコーディングだね、これ。歌ってないんだよね?
O:歌も…8曲くらい歌も入ってるんですけど。
H:いや、けっこうノスタルジックな…
O:これの前に…『The Jazz Age』ってタイトルだったかな?5年ぐらい前にこの手のアルバムを出してて、これが最近出たやつで…
H:この世代はみんなこういう感じなのかねぇ。
O:なんか、1920年代を舞台にしたベルリンの…『Babylon Berlin』っていうNetflix系のドラマがあって。
H:うん。
O:ブライアン・フェリー、出演もしてて。その中で使われた音楽を中心に作ったアルバムですね。
H:なかなかCDセット…ブックレットもいいね。これも欲しいな…モンキーズとブライアン・フェリーは買おう。
越:(笑)
O:毎度あり、ってことで…(笑)
H:(笑)
O:行商のようなことを毎回…(笑)
H:さあ、ミハルちゃんは…今年ね、プロデュースしたじゃないですか。
越:あ、バレエだ。
H:『秘密の旅』?
越:うん…そうだね、そういうタイトルだった(笑)
H:いや、けっこうよかったよ。けっこうって言っちゃうとアレだけど…
O:すごくよかったですね。
H:うん、すごくよかったね。あれ、再演するんでしょ?
越:そうですね、再演することになると思います。
H:それはよかったなぁ。一回じゃもったいないと思ってたの。いつ?
越:まだ決まってないんだけど…
H:まあ、じゃあその時また教えてくださいね。
越:はい。
H:んー…じゃあもう、これできょうは…
O:(笑)
H:もう、ヘトヘトなの(笑)寝てないからね。
O:そういえば。
H:うん。
O:2回ぐらい前の放送でジョー・ヘンリー(Joe Henry)特集やったじゃないですか。
H:はい。
O:あの中でですね、ボニー・レイット(Bonnie Raitt)の曲をかけたんですけど。
H:僕?
O:はい。あれ、ジョー・ヘンリーのプロデュースじゃなかったですよ。
H:ええー?
越:(笑)
O:(笑)
H:怒られちゃった(笑)
O:いやいや(笑)エンジニアは同じなんです。
H…でしょ?(笑)
O:あのアルバム、4曲ジョー・ヘンリーがやってて、他はボニー・レイット本人がやってるんですよ。
H:はぁ…いいよ、それで(笑)
O:で、レコーディングは同じ方なんで。ライアン・フリーランド(Ryan Freeland)って人が、ジョー・ヘンリーのあの一連のをぜんぶやってる…
H:あのエンジニアがすごいから…実はエンジニア特集だったんだよ。
O:エンジニア特集…「ライアン・フリーランド特集」だったってことですね?
H:だったの、ホントは。裏テーマがね。
O:スタジオもぜんぶ同じなんじゃないですかね。ガーフィールド・ハウス(The Garfield House)。
H:そうなんだよ。興味があるなぁ。そこで僕、レコーディングしたいな。
O:でも、ジョー・ヘンリー、そこをもう離れちゃったんですよ。
H:ホント?それは知らなかったな。
O:2015年かなんかに。引っ越しちゃったんですよ。9年ぐらい住んだのかな。いいところみたいですけどね。
H:もう…ミハルちゃんの言ったことだけど、音がまず、変わってきてるでしょ?いま聴いても…ブライアン・フェリーのも。
越:うん。音がすごい変わったね。
H:変わった。
越:でも、ずっと…あんまり、ほら、新しいのは聴かなかったじゃない?
H:うん。聴かなかったね。
越:すごい長かったよね、その時期がね。もう何十年…
H:そうそう…(笑)
越:で、聴いてもラジオとか、あとはおそうじタイムとかそういう感じだから…
H:遠くで聴くとね…ヘッドフォンで聴くと違うんだよ。
越:毎年毎年…すごく変化してるんだよね。
H:すごい変化だよ。
越:1年前でもだいぶ違うって、すごい流行が…洋服みたい。
H:これがやっぱり、2010年代の変化ですよね。で、2020年代はどうなるのかね…
越:で、なんでも…どっちにでも行けるよね。ほんとに、いろんな方向が…
H:今、それぞれ…音楽作ってる人はみんな考えてると思うよ。音のこと。「音楽」というよりも。「音」を考えてるよね(笑)
越:いま、すごい拡がって…大きいじゃない?音が。
H:そう。音像がね。変わってきたんだよ。さっきのブライアン・フェリーのも、Monoに近いじゃない。でも、適度に空間があるじゃない。
越:そうなんだよね。
H:すごい興味があるよね。どうなってくんだろう、っていう。いま僕が作ってるのもね…
越:どうなってるの?
H:どうなってるんだろう?(笑)
O:(笑)
越:どこへ向かってるの?(笑)
H:わからないんだ、これが…(笑)わからない、テイラー・スウィフトに向かってないことは確かだけど。
O:(笑)
H:ジョー・ヘンリーもね、興味があるし。いやぁ、ブライアン・フェリーもよかったなぁ。モンキーズもよかったし。んー…どうしよう。どうすんの?じゃあ今後の話する?
越:今後はどうするの?来年はどうなる?(笑)
H:つい1カ月ぐらい前、「グローバル」「グローバル」って言ってた時期があったでしょ?(笑)
越:なにもかも…
H:世の中の音楽はぜんぶグローバル…画一化されてるじゃない。音もね。
越:もう、ネットがあるから、なんでもそうなってきてるよね。
H:で、ミハルちゃんもそれに目覚めたみたいで…
越:そう。
H:「グローバル・ファッションだ」って騒いでたね。
越:そう。もう、ファッションもグローバルにしようみたいな…(笑)
H:(笑)どういうのをグローバル・ファッションって言うわけ?
越:なんか、トーンが似てる。コーディネートのトーンが似てる。
H:それも音楽に近いんだね、じゃあ。
越:そう。
H:なるほど…いやぁ…ホンっトにすごい変化だなぁと思って。ドキドキしちゃうんだよ、実は。
越:うん。
H:ね。なんだろう、これは。
越:岡田くんは、新しいのは聴かない…?(笑)
H:いや、いま聴いてるのはぜんぶ新しいよ(笑)
越:あ、これはそっか…(笑)
O:新しいのばっかかけてますから…(笑)
H:(笑)
O:大阪で買ってきたのはぜんぶ10inchとか、古いのばっかですけど…
H:そこら辺のね、変化が訪れてるっていうことだよね。きっと。
O:まあおもしろいですよね、聴いてて。
H:えー…じゃあさ、なんか聴こうか。はい。
越:新しいの聴きますか?
H:あ。新しいの聴かせて。
越:フランスの人で…フレーロ・ドゥラヴェガ(Fréro Delavega)って言うのかな。"Ton Visage"っていう曲です。
Ton Visage - Fréro Delavega
H:軽くていいね。
越:うん、すごい軽いよね。
H:最近、軽いの多いね。こういう。
越:うん。軽いのがいっぱい出てきてますね。
H:なんか、聴きやすいよね。フランスも揺れ動いてるでしょ、今。ルノー関係のことでも。政権が揺らいでるしね。なんだろうね、この騒ぎは。
越:うん。
H:あの、スウェーデンっていう国はグローバル国家なんだよね。キャッシュレスで、マイクロチップを手に埋め込んだりしてる人がだんだん出てきて…(笑)なに買うにもキャッシュレスだよ。中国もそうだけどね。
越:うん。
H:日本人はそれできないでしょ。やってる人いるけど。都市伝説の人とか…(笑)
O:埋めてますね(笑)
H:壊れたらどうすんの?あれ。ほじくるの?(笑)
越:こわい。
H:なんだかね、そういうことが…で、スウェーデンは外資系が多くなっちゃって、フランスもそうだったんだけど、民族主義が蠢いてたりね。「自分たちの文化が無くなる」って。だから、グローバリズムの反対語にはいろんな言葉があるんだよね。ナショナリズムとか。ポピュリズムとか。いろいろあるけど。んー。なにが正解かわからない、僕には。うん。そんな時代ですよ、いま。動いてる。
越:うん。
H:そんな音楽かけてください。
越:(笑)
O:えー…(笑)
H:(笑)
O:じゃあ、もう1曲新しいので…The Milk Carton Kidsでですね。
H:はい。
O:"Nothing Is Real"っていう曲を。
H:へえ…知らないなぁ。
Nothing Is Real - The Milk Carton Kids
(from 『All The Things That I Did And All The Things That I Didn't Do』)
H:ジョー・ヘンリーですね、これ。プロデュース。
O:そうです。
H:拡がってるもん。
O:「拡がってるもん」(笑)
H:こういう音楽って…ジョー・ヘンリーのソロもそうだけど、ヘッドフォンで聴くのと遠くで聴くのとでぜんぜん違うでしょ。
O:ぜんぜん違いますよね。
H:遠くで聴くと普通…っていうか、特に特徴が無い。
O:ライヴとかも普通ですよね。
H:でもヘッドフォンで聴くとね、すげぇと思うんだよね。なんだろう、これ?
O:このアルバムはすごいよかったですよ。全体が。
H:なんかそういう…テクノロジーの変化っていうのはあるけど、最近のニュースですごい記事を見たんですけど。
O:なんですか。
H:どこの国の…フランスだったかな?物質を縮める技術が出来た。『ミクロの決死圏』みたいな。
O:えー。
H:それはSFじゃないんだよ。なんかね、吸着ジェルっていうのを使って構造を作って、そこに分子を埋め込むとその物質が出来て、そのままそれを凝縮すると小っちゃくなる。恐ろしい技術だよ、これ。
O:どうなっちゃうんだろう。
H:いろんなことに応用できるわけ。癌細胞だけを攻撃する非常に小っちゃなロボットを作ったりとか。ビックリだね。ちょっと前までは3Dプリンターでいろんなものが出来るってビックリしてたけど。
O:そうですね。ずいぶんなんか…かわいい話になっちゃいますね、3Dプリンターの話がね。
H:もう、恐ろしいわ…なにが起こるかわからないよ。そんなようなニュースとかね。ビックリしました。
こういう感じで年は過ぎていくんですね。はい。
越:(笑)
O:取って付けたような…(笑)
H:とにかくね、1/8が締切なの…きょうも、大晦日も、正月も、返上しますよ。
O:お。
H:ま、お雑煮は食べるけどね。
O:楽しみですねぇ。
H:おもちはだいすきだからね!
O:んー、早速いまここに海苔が…
H:海苔もらったんだよ、きょう。みんなに配ったの、海苔。名刺みたいな形じゃない。
O:名刺代わりにさっき、海苔を…(笑)
越:(笑)
H:わたくし、こういう者です、っていう。…そういうわけで、最後に1曲、ミハルちゃんお願いしますね。きょうは僕、パソコン壊れてなにも…
越:はい。
O:海苔みたいな曲を…
越:海苔みたいな…(笑)ウィントン・マルサリス(Wynton Marsalis)の演奏で…
H:めずらしい。
越:"Everything Happens To Me"です。
H:どんな音かな。では、それを聴きながらですね…みなさん、また来年もよろしくね。
O:よろしくお願いします。
H:よいお年を。
O・越:よいお年を。
Everything Happens To Me - Wynton Marsalis