2018.09.30 Inter FM「Daisy Holiday!」より

 

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H:こんばんは細野晴臣です。さあ、きょうも、先週に引き続いて…小坂忠さん。
 
忠:どうも、小坂忠です。
 
H:よろしく。えー…先週話してたんだけど、ライヴのCD化が。これは…いつ出るんだ?
 
忠:いや、もう出てる出てる。8月。
 
H:これは『ほうろう』のリメイクっていうか…ライヴ・ヴァージョンね。
 
忠:あのね、去年入院してたじゃない。で、ずーっと考えてたわけよ。元気になったら歌いたい、と思ってて。
 
H:うんうん。
 
忠:で、どういうライヴやろうかなって思ったんだけども、その時にね、改めて『ほうろう』のことを考えてたわけ。
 
H:あー。
 
忠:ああやっぱり、ここからいまの俺の歌の…これがね、原点だと。
 
H:先週話してたね。
 
忠:それで、『ほうろう』全曲っていうライヴやってないな、と思ってさ。
 
H:あー、そっか。
 
忠:じゃあ、そういうのをやってみよう、と。
 
H:なるほど。これはいつやったんだっけ?僕は観に行ったんだけど(笑)
 
忠:3月かな。
 
H:3月か。
 
忠:そう、1部来てくれてね。2部はお帰りになっちゃったけど。
 
H:そらそうだけどね(笑)ダメだったかな?
 
忠:いやいや(笑)
 
H:でも、素晴らしいライヴだったね。よかった、演奏。
 
忠:んー。
 
 
H:じゃあ、これをちょっと聴いていいかな。
 
忠:はいはい。
 
H:なにがいいかな?
 
忠:なににしますかね……
 
H:また(笑)先週も…
 
忠:じゃあ"ほうろう"にしましょうか。
 
H:あ、”ほうろう”かけようか。じゃあ、”ほうろう”。
 
 
ほうろう - 小坂忠
(from 『HORO 2018 Special Live』)
 
 
 
 
 
H:んー。大っきなホールみたいな感じ…ビルボードだよね?
 
 
H:いやぁ、なかなかいい…演奏だな。これドラムスが…林くん(林立夫)じゃないもんね?
 
忠:そうなんだよね。屋敷豪太
 
H:めずらしいね。
 
忠:でも、屋敷と小原(小原礼)がいま、2人でよくやってるみたい。
 
H:やってるんだね。なるほどなるほど。この…この流れで、っていうか、今年もライブ、やるでしょ?
 
忠:そうなんですよ。11月にね、ちょっと…大きいライヴを。
 
H:ちょっと大きい?(笑)
 
忠:ちょっとっていうかね、だいぶ大きいんだけども。
 
H:ちょっと発表しますね。
 
忠:はい。
 
H:11月26日 18:00開場 19:00開演。場所が東京国際フォーラム ホールA。
 
忠:うん。あの、マンタ(松任谷正隆)が音楽監督かな?演出か。
 
H:あ、そう?へぇ…意外。
 
忠:うん。なんかね、すごく…いろいろ考えてくれてて。武部くん(武部聡志)が、もうひとつ、音楽監督になってて…
 
H:あ、なんだ。ユーミン(荒井/松任谷由実)の時とかと…
 
忠:あ、だからユーミンの時もやったじゃない、なんか。それの2弾目みたいな。そういう感じの。
 
H:あー、そっかそっか。そういうシリーズっぽいやつ。
 
忠:そう。ま、ベース…ぜひね、細野くん…空いてるの知ってるんだけどさ(笑)
 
H:いやいやいや(笑)
 
忠:(笑)
 
H:あの…小原がいるからと思って…
 
忠:いやいやいや(笑)やっぱりね、僕の節目にはね、いてほしいんだよね。
 
H:いやいや…空いてるんだ?空いてんなら行くよ。観に行く。
 
忠:いや、観に行く、じゃなくて…
 
H:じゃあ1,2曲…
 
忠:うん、ぜひ、お願いしたいと思います。
 
H:はい。
 
忠:よかった~
 
H:ラジオで言うとね、必ずこれはね、やんなきゃいけない…(笑)
 
忠:いやー、きょうは来た甲斐があったな。うん。
 
H:えっと、他には誰が出るだろう。お、幸宏(高橋幸宏)も出るね。
 
忠:お、そうなのよ。
 
H:あとアッコちゃん(矢野顕子)とね。
 
忠:そうそうそう。
 
H:茂(鈴木茂)、林。
 
忠:まあ、だから、ティン・パンの再演っていう感じもあるし。
 
H:なるほど。そうかそうか。僕は前後がツアーでライヴ中なんだよね。それで体力に自信が無いっていうだけで…
 
忠:うーん。
 
H:まあ、元気だったら行くよ。
 
忠:いや、大丈夫だよ、元気だよ!
 
H:(笑)
 
忠:まだそんな…来年のことはわかんないかもしれないけど。
 
H:まあね。いや、今年はもうね、バテたんだ。暑くて。
 
忠:あー、暑いからね。
 
H:んー。
 
忠:この時はもう、涼しいよ(笑)
 
H:涼しいよね。11月だからね。
 
忠:暑いとは言えない。
 
H:なんか、夏生まれじゃない?お互いに。
 
忠:そうそうそう。
 
H:どうなの?夏、ぜんぜんダメだよ、僕。
 
忠:あ、そう?いや、けっこう俺は大丈夫だと思う。
 
H:あ、ホント?
 
忠:俺は冬の方がヤだね。寒いのが。
 
H:あ、そう。冷えるからね。どっちもヤだな。
 
忠:なんなんだよ(笑)
 
H:夏はね、冬に憧れるの。冬には夏に憧れるっていう。ないものねだりね。
 
忠:まあね。
 
 
 
H:さあ。もう1曲ぐらいこっからかけたいな。
 
忠:あ…
 
H:なんか、紹介して。
 
忠:あのね、実はね。『ほうろう』の全曲をやったんだけども、アンコールでさ。その中に1曲、アンコールに残した曲があるんだけども。
 
H:あー。
 
忠:これさ、憶えてる?僕がこの『ほうろう』の後に作った『モーニング』っていうアルバムがあるんだけど。
 
H:憶えてるよ。あのー、市ヶ谷のほうで録った。
 
忠:市ヶ谷のね。うちのスタジオで。その時に、細野くんがこれをアレンジしてくれたの。
 
H:…それはちょっと憶えてないな(笑)
 
忠:僕がすごいこのアレンジが好きで、それで…どうしてもね、このライヴの時にアンコールでこれを歌いたいなと思って。
 
H:そうだったんだ。
 
忠:うん。
 
H:いや、憶えてないっていうのは嘘で、少しは憶えてるんだけど(笑)
 
忠:でしょ?(笑)
 
H:聴こう!
 
忠:はい。"上を向いて歩こう"。
 
 
(from 『HORO 2018 Special Live』)
 
 
 
H:うんうん…思い出したよ。
 
忠:思い出した?(笑)このライヴの後ね、アメリカ行ったんですよ。メンフィス行ってきたの。
 
H:ホントに?!なにしに?レコーディング?
 
忠:いやいやいや、遊びに。
 
H:いいなあ。
 
忠:あのね、Staxのスタジオとかさ。
 
H:あるんだよね!行ってみてぇな…
 
忠:よかったよ、すごい。
 
H:いやー…なんか、ライヴとか観た?そういうのはないのか。
 
忠:いや、ライヴとかも観たけれども、あんまり知ってる人っていうか…B.B.キングのお店があってさ、毎晩やってるんだよね。
 
H:あ、そうなんだ。いいなぁ…
 
忠:Sunスタジオとか。
 
H:Sunもあるんだよね。観光地だね、もうね。
 
忠:そう。もう、そういう観光地ね。グレイスランド(Graceland)があって…
 
H:グレイスランドって言えば…プレスリーElvis Presley)か。
 
忠:うんうん。で、おもしろかったのが…そのStaxのスタジオで、いろんなメンフィスの音楽のストーリーとか。
 
H:へー。
 
忠:そういうミュージアムみたいになっててね。もう、メンフィスではR&BもJazzもGospelもCountryもみんな親戚なんだ、って言ってるわけ。
 
H:いいねえ、その考え。
 
忠:そうなの。いいね、落ち着くね、あそこは。
 
H:なんかこう、音楽の町だからな。そういう町って無いもんな、あんまり。日本にも。
 
忠:あの頃は、昔はさ…Staxとかが全盛期の頃ってあそこから発信してたじゃない、世界中に。
 
H:そうだね。
 
忠:あんな小さな…アメリカでもさ、ホントに小さな町なのに。
 
H:そうだよね。
 
忠:あの後…キング牧師Martin Luther King (Jr.)があの町で射殺されたわけ。
 
H:そこだったんだ。
 
忠:それで、すごい黒人の暴動が起きて…だからStaxでね、レコーディングしてる中には白人のミュージシャンがいるじゃん。
 
H:うん。
 
忠:で、彼らが帰る時は…1人で帰ると襲われるんで、黒人のミュージシャンがいっしょについていって、「オレ達の友達だから襲うなよ」っていう感じ。そういうのがあったんだよね。
 
H:いやー、いろいろあったね。
 
忠:そこでね、いま音楽学校みたいのが出来て、Staxの。
 
H:ホント?学校入りたいな、僕。教わりたいわ。
 
忠:[町として]もう一度ね、あの頃の勢いを取り戻そうっていう。そういう感じでやってるみたい。
 
H:まあね、時代が大きく変わっちゃったからね。アレサ・フランクリンAretha Franklin)も亡くなって。
 
忠:そうだよね。
 
H:やっぱり、バッキングも、さっきも話したマッスル・ショールズとか…白人たちだからね。まあ、ミュージシャンにはそういう垣根が無い。
 
忠:そういうわけだよね。Booker T. & the MG's、とかね。
 
H:いいね。
 
忠:最初は「白人のバンドか黒人のバンドかわからない」って言われてた(笑)
 
H:そうだよね(笑)混合だよね。
 
忠:うん。
 
H:そうだよな…メンフィスってのはそういうバンドが多かったのかもしれないね。
 
忠:そういう意味ではね。やっぱりね、そうやってミックスするのがいいよね。
 
H:ミックスだからおもしろいものが出来てくるっていうね。まあ、日本は日本人しかいないけどね(笑)
 
忠:んー。
 
H:まあでも、最近はすごいよね。大坂なおみだっけ、すごい人が出てきたよね。
 
忠:テニスのね。あと、陸上のさ…
 
H:そうそうそう。名前はちょっと憶えられないんだけど…
 
忠:とかね。
 
H:不思議な…なんていうの、日本人なんだけど…ハイブリッドですよね。
 
忠:うちの孫もそうなんですけどね。
 
H:そうなんだよ。テニスやってないの?
 
忠:やってない(笑)
 
H:じゃあなに、ラップやってるの?
 
忠:いやいや。うちの子はトランペット吹いてる。
 
H:あ、そう。男の子?
 
忠:いや、女の子。ジャズバンドで吹いてるよ。
 
H:これはちょっと、将来楽しみじゃない?
 
忠:うん、すごいね、楽しみ。
 
H:んー。
 
忠:孫とさ、同じ音楽の話ができるってね、信じられなかった。昔は想像できなかった。
 
H:孫いくつ?いま。
 
忠:いま、もうすぐ15歳かな。
 
H:あ、そっか。うちも孫がベース弾いてるから…(笑)
 
忠:ねぇ。
 
H:ライバルだよ。
 
忠:ライバルって(笑)
 
H:忙しいんだもん、僕より。ライヴで。まだ学生だけどね。
 
忠:ああ、そう。音楽の話したりするの?
 
H:なっかなかしないんだよね。お互いに遠慮してて。でもこないだ「ベース教えてくれ」なんて、このスタジオに来たんだけど。
 
忠:へー!
 
H:とりあえず、好きなベースのレコードかけて「これ聴いてくれ」って言っただけだけどね(笑)聴くのがいちばんだから。
 
忠:でも、そんなこと言われるとちょっとうれしいでしょ?
 
H:まあ、どうかな…
 
忠:ちょっとはうれしいでしょ(笑)
 
H:うれしいのかなぁ…恥ずかしい。
 
忠:恥ずかしい?
 
H:恥ずかしいよ。
 
忠:んー。で、この夏さ、日本に帰ってきてて、いっしょにね僕のライヴで歌わせたりして。
 
H:孫が?
 
忠:うん。
 
H:すっばらしいことだよ。
 
忠:楽しかったよ。
 
H:いいねぇ…楽しみだね。なんかになるね、それ。
 
忠:かもね。でも、こういう時代になったんだね。
 
H:なったね。ホントに。
 
忠:僕らがやり始めた頃ってさ、自分の1世代・2世代前の大人とさ、同じ音楽の共通の話ができるって想像つかなかったでしょ?
 
H:断絶してたよね。
 
忠:だよね。
 
H:で、[自分より]下[の世代]もあんまりいなかったし、とりあえず自分たち周辺の人たちとやってただけだからね。
 
忠:だからね、ホント変わったなぁ、と思って。
 
H:ホントに、あの…日本もポップスができてもう半世紀ぐらい経つからね。だから外国でもアーカイヴとして検索して、いろいろ詳しい人がいっぱい出てきてるわけだよね。
 
忠:うん。
 
H:それでいろいろ呼ばれて行ったりすることが、ぼちぼち…こんな時期になってね、この歳になってね。だから、もっと早く呼んでくれよ、って思ったんだけどね(笑)
 
忠:(笑)
 
H:もう、こっちは年だから…
 
忠:まあでも、この歳もけっこう楽しいんじゃないですか?
 
H:まあ、気楽になってきてるね。若いとシリアスになっちゃうからね。
 
忠:けっこう力抜けてできるでしょ。
 
H:抜けてるね。入んないだよ、入れたくても(笑)
 
忠:(笑)そっちか。
 
H:筋肉がもう、衰えてて。
 
忠:僕ね、いまね、夜、毎晩歩いてるんだよ。30分は。
 
H:部屋の中?
 
忠:いやいや(笑)部屋の中30分歩くのは大変だよ(笑)外。
 
H:いや、僕も歩いてるんだよ。
 
忠:あそう。どこを?
 
H:部屋の中じゃないよ、外、外。
 
忠:(笑)え、ホントに?
 
H:最近、スマホで歩数が出るじゃん。あれが習慣になってるんだよ。
 
忠:あ、そう。
 
H:でもね、制作してる時とかはぜんぜんダメだよ、動かない。
 
忠:そっか。
 
H:あのね、ロンドン行った時に1万歩以上歩いてたよ、毎日。歩くとおもしろいじゃない、あの街。
 
忠:うんうん。
 
H:で、香港も1万歩歩いてるんだよね、1日。だから、歩くとおもしろい街はどんどん歩いちゃうんだよ。すんごい疲れるけど。
 
忠:いやでもね、やっぱり良いみたいだよ。
 
H:歩くの良いみたいね。
 
忠:いちばん身体に良いみたい。
 
H:そうそう。激しいスポーツはやめたほうがいいよね。
 
忠:そうだよね。もう、この歳になったらできないけどね(笑)
 
H:そうかそっか。じゃあ、今度歩こうか?ね。
 
忠:いいね。
 
H:部屋ん中?
 
二人:(笑)
 
忠:火星…
 
H:火星歩行ね。古い!っていうか、その頃からやってるんだアレね。
 
忠:そうだよ(笑)
 
H:そういえば最近、手品どうしてる?(笑)
 
忠:手品ね、けっこう新しいネタ…わ、きょう持ってくればよかったな。楽屋でね、よくやってたんだ。
 
H:そうなんだよ。病室でもやってたんだって?看護師さんに。
 
忠:誰に聞いたの?(笑)
 
H:いや、もう…聞いたよ。
 
忠:そうそうそう。これがね、楽しみでさ。やっぱり人を楽しませるのが最近好きでね。
 
H:いいよね。でも、わりと女性ってそういうの、クールに見てない?
 
忠:そうなのかな(笑)
 
H:んー、そうなんじゃねぇかなと思うんだけどね。
 
忠:俺が気がついてないだけかもしれない…(笑)けっこう喜んでたような気がするんだけどね。
 
H:ま、手先の手品が多いからね。目の前でやるとおもしろいよね。後で見してね。
 
忠:(笑)
 
 
H:というわけで、また時間が無くなってきたんで…11月26日、よろしくね、と。
 
忠:うん。
 
H:それから、いま出てます『HORO 2018』のCDを探してください。
 
忠:ぜひ聴いてください。
 
H:ぜひね。
 
忠:僕のね、2枚目のライヴ・アルバムなの
 
H:そうだっけね。うん。
 
忠:うん。ソロになって2枚目がライヴ・アルバムだったじゃない。
 
H:あ、そうだそうだ。フォージョー・ハーフ。
 
忠:そうそうそう。あ、それでさ、その11月のコンサートで、マンタがねフォージョー・ハーフも再現しよう、ってことで。
 
H:そうだ。松任谷くんはフォージョー・ハーフにいたんだもんね。
 
忠:そうそうそう(笑)だからツグトシとコマコも来てくれる。
 
H:そんな、みんな愛称で呼んでもわかんない(笑)
 
忠:あ、そうか。
 
H:駒沢裕城というスティールギターね。
 
忠:と、ベースの後藤次利
 
H:あ、来てくれるの?
 
忠:うん。来てくれることになった。
 
H:すごいね。
 
忠:うん。懐かしいな、って思った。で、あと…ね。ティンパン・アレー。
 
H:ティンパンね。はい。ああ…やるよ。1曲,2曲。ね。
 
忠:ま、無理しないぐらい。
 
H:うん、無理しない。できない。
 
忠:うん(笑)
 
H:そういうわけで、では、またその頃に…もうすぐ…11月なんてすぐだからね。
 
忠:そうだね。
 
H:最後に1曲。なにがいいかな。なんか、リクエスト、っていうか…(笑)
 
忠:あのさ、"しらけちまうぜ"を。
 
H:おお!
 
忠:これ、アレでしょ、細野くん。最初は「ビビディ・バビディ・ブー」だったんでしょ?
 
H:そうなんだよ。♪ビビディ・バビディ・ブー、っていう歌詞だったの(笑)
 
忠:(笑)
 
H:会社からそれはダメだ、って言われて。シングルに切るから松本隆に頼む、って言われて。
 
忠:まあ、でも、さすがの松本だよね。
 
H:やっぱりちゃんと…ちゃんとシングルっぽいなぁ、と。
 
忠:ね。じゃあ最後はそれを聴いて頂きましょう。
 
H:どっちから?ライヴ盤かこっちか、オリジナル盤か。
 
忠:そうですね…まあ、せっかくだからライヴ盤でいきましょうか。
 
H:それでは、これを聴きながら…どうも、ありがとうございました。
 
忠:ありがとうございました。
 
 
 
しらけちまうぜ - 小坂忠
(from 『HORO 2018 Special Live』)
 
 
 
 
 

2018.09.23 Inter FM「Daisy Holiday!」より

"I Believe In You"のアレンジがカッコよすぎて泣いてしまった。

 

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H:こんばんは。細野晴臣です。えー、きょうはですね…いままでなんで来なかったんだろう、っていう人ですね。小坂忠
 
忠:どうも、小坂忠です。
 
H:初めて?
 
忠:初めて。
 
H:だよね。
 
忠:いやいやいや…
 
H:昔はよく遊んだよね(笑)
 
忠:そうね。なんか、こうやって会うと照れくさい感じがする。
 
H:照れくさいよね。なに話そうかな(笑)近況でも聞きたいな。
 
忠:近況ね…去年ね、ガンで大手術をして。
 
H:あ。ガンか…
 
忠:まあでも、すごく元気になって。
 
H:元気そうだよ。
 
忠:けっこう精力的にライブ活動やってて。
 
H:こないだも僕、観に行ったからね。ビルボード
 
忠:そうだよね。来てくれたじゃない(笑)それで、あの時のライヴがライヴ・レコーディングされてて、出たんですよ。
 
H:ここにあるよ。CD化されたものが。
 
忠:そうなんですよ。
 
H:うれしいね。すごいよかったよ。なんかこう…ベースが、ハマちゃん…
 
忠:…ハマちゃん?
 
H:…違ったな(笑)
 
忠:小原(礼)だと思う。
 
H:小原だ(笑)
 
忠:(笑)
 
H:なんか、ごっちゃ混ぜになってるな。そうかそうか、小原だったな。
 
忠:うん。
 
 

H:とりあえずね。なにから話そうかな…
 
忠:なにから話す…細野くんいま、レコーディングしてるんでしょ?
 
H:そうなんですよ。これがね、言っていいのかな?もういいや、ここだから(笑)
 
忠:あ、いいの?ダメなの?
 
H:ダメか。でも、作ってることは確か。
 
忠:あ、そうなんだ。
 
H:これが難しい…
 
忠:あ、そう。
 
H:まだね、解禁されてないの。情報がね。ひそかにやってる。
 
忠:あ、ひそかにね。楽しみだな。
 
H:一人でやってるのよ、今回。ずっといままで…15年ぐらい、バンドでやってたでしょ。生で。
 
忠:うん。
 
H:また元に戻りつつあるっていうか。いや、バンドもやるんだけど。一人でコツコツやるのも好きだからね。
 
忠:んー、まあ好きだよね。
 
H:そうなの。孤独なの。誰も来ないの。
 
忠:(笑)でも、それやってるとさ、終わらないんじゃないの?
 
H:いやー、終わらないんだよね、これが。
 
忠:でしょう。
 
H:終わらないよ、だから。ずっとやってる。
 
忠:いやいやいや、どうなんだろう…(笑)
 
H:でも、いままでも終わらしてきたからね。
 
忠:まあね。でも、一人でやってたわけじゃないじゃない。
 
H:まあね。みんなでやってると、特にね。社会性があるからね。
 
忠:一人でやってると危ないんじゃない?
 
H:一人でやってる時も終わってる。いつか終わるんだよ。
 
忠:うん。
 
 
H:じゃあね、昔のから聴こうかね。あいさつ代わりにね。なにがいいかな?アルバム、『ほうろう』から。
 
忠:『ほうろう』から?
 
H:うん。
 
忠:『ほうろう』からだとなにがいいかな…
 
H:選んでよ。
 
忠:なんだろう。えー…なにがいいかなぁ…
 
H:なにがいいかなぁ…
 
ふたり:(笑)
 
忠:あの…アッコちゃん(矢野顕子)の曲とか…最近ね、この前のライヴでもやってさ。
 
H:ああ、そっか。"つるべ糸"ってやつかな。
 
忠:もう、すっごいひさしぶりに歌ったのよ。すごくね、懐かしくて。
 
H:懐かしいね。
 
忠:うん。あの、憶えてます?ほら、あれは矢野さんがさ、ホーン・アレンジとかストリングス・アレンジとかしてくれたじゃない。
 
H:矢野誠さんね。んー。
 
忠:(当時)矢野さんに挨拶に行ったんですよね。
 
H:おうちまで?行ったんだっけ?
 
忠:行った。
 
H:いっしょに行った?僕も。
 
忠:どうだったかな…いや、いっしょだったんじゃない?
 
H:それで?
 
忠:そしたら、アッコちゃんに会ってさ。
 
H:あ、そこにいたの(笑)それで「矢野」っていう名前に…
 
忠:だから、レコ―ディング・クレジットは、1975年の『ほうろう』のアルバムでは「SUZUKI」になってるよね。
 
H:まだ、独り身だったんだね。そうかそっか。歴史だね。
 
忠:ピアノも…アッコちゃん弾いたんだよね?
 
H:弾いてた弾いてた。
 
忠:だよね。
 
H:それがいいんだ、なかなかね。
 
忠:そうなんですよ。だから、いまのアッコちゃんのピアノを聴いたりなんかするとね、(『ほうろう』は)それの原点だから。ほぼ最初の頃のレコーディングでしょ?彼女の。
 
H:まだホント若いよ。だから、僕たちだって若いんだよ。
 
忠:まあそうだけどね(笑)
 
H:20代でしょ?
 
忠:そうだよね。
 
H:20代っていったら、子どもだよ?
 
忠:まあね。ま、つい最近じゃないですか。
 
H:最近かなぁ…(笑)いや、よくやったよね。
 
忠:あの時のみんなの演奏は、ホントにノってたね。
 
 
H:じゃあね…僕が好きなのかけていい?
 
忠:ああ、いいよいいよ。
 
H:"ゆうがたラブ"が好き。
 
忠:はい。
 
H:演奏も好きなんだよ。
 
忠:あっ、これのね、細野くんのベース。僕大好き。
 
H:ああ、うれしいね。僕はアッコちゃんのウーリッツァーみたいな音、あれ好き。おもしろくて。
 
 
 
ゆうがたラブ - 小坂忠
 
 
H:はい。"ゆうがたラブ"でしたが…これは忠の作詞・作曲だよね?
 
忠:いや、えーとね…
 
H:違ったっけ。
 
忠:Pen(※小坂の妻・高叡華)が曲は…詞は。曲は俺だけど(笑)
 
H:あー。おもしろいよね。このタイプの曲、忠はよく作るんだけど、おもしろいんだよね。
 
忠:あ、そう?
 
H:演奏がおもしろくなってくるというか。
 
忠:あー。まあ、シンプルだからね。
 
H:そこがいいんだよ。けっこう名曲書いてるよね。"機関車"とかね。
 
忠:でもね、アレンジですよ、やっぱり。
 
H:まあ、どうにでもなるけどね。アレンジは。
 
忠:いやぁ、そこが…でも、ベースのフレージングとかさ、どういうところから生まれるのかなと思うよ。
 
H:いや、真似、真似だよ。
 
忠:そんな…(笑)
 
H:ほんとほんと(笑)あの…最近思い出すのはね、ベーシストの先生にあたる人だよ。直接習ったことはないよ?レコードで聴いてたの。
 
忠:うんうん。
 
 
忠:あー!
 
H:その人がね、11月に(日本に)来るんだよね。
 
忠:来るね。
 
H:なんか、会いに行こうかな、とかね。
 
忠:なんかね、俺頼まれたよ。歌って、とか言われて。
 
H:あ、ホント?え?すごいじゃん。それ何?観に行こうかな。
 
忠:いや、まだハッキリと決まってるわけじゃないんだけど。
 
H:そうか…
 
忠:そういえばさ、こないださ、ダニー・コーチマー(Danny Kortchmar)が来て…
 
H:そうそうそう!
 
忠:リーランド・スクラー(Leland Sklar)とラス・カンケル(Russ Kunkel)と。
 
H:僕行かなかったけどね、行けなかった。
 
忠:それでも歌ったのよ。
 
H:え?!いやー…すごいじゃん。
 
忠:うん。気持ちよかった。
 
H:なんの曲歌ったの?
 
忠:えーとね、"ほうろう"もやったんだけども…
 
H:彼らが演奏したの?"ほうろう"を?
 
忠:そうそうそう。
 
H:それ聴きてぇなあ。
 
忠:もう、気持ちよかったよ。
 
H:どこで聴けるの、それ?
 
忠:いや…(笑)残ってるのかな?
 
H:いやぁ、それは聴きたいよ…
 
忠:1曲、なんかジェームス・テイラーJames Taylor)の曲やってくれって頼まれて、これは彼の(自作)曲じゃないけど、"How Sweet It Is"をやって…これもね、気持ちよかった。
 
H:…いい仕事してるね。
 
忠:なんかね。うん。
 
 
 
H:いまの『ほうろう』の…マッシュルーム・レコードってところから、1975年だったんだね。
 
忠:ああ、そうだよね。
 
H:まあ、ついこないだだね。
 
忠:まあね(笑)このアルバムはね、僕にとってはホントに大事な…まあ、ひとつひとつ大事だけども。特にね、思い入れがあるアルバムで。
 
H:これソロの…2枚目、だったかな?
 
忠:いや、これはソロになって…4枚目。
 
H:そんなに出してたっけね、当時(笑)
 
忠:それでさ、ソロになる前、いっしょにバンドやってたりしてたじゃないですか。
 
H:いっしょのバンドだったんだからね。エイプリル・フールで。
 
忠:その頃ってさ、人のコピーだったじゃない。主に。
 
H:それがまた、おもしろいぐらい上手かったね(笑)
 
忠:それで、ソロになった時に、人のコピーでは歌ってきたけども、自分の歌のスタイルってどうしていいかわかんなかったのよ。
 
H:いやー、僕もそうだったよ。おんなじ。
 
忠:わかる?それで、まあ『ありがとう』っていうアルバムは作ったんだけどさ、それから…まあ、あれはああいう感じでね、なったけども。自分の中では「これが自分の歌のスタイルなのかな?」という…
 
H:わかんないんだね。
 
忠:そう。で、それをずっと思いながら来て、その4枚目でこの『ほうろう』ができたんだけども。これを細野くんがプロデュースしてくれたんで。このアルバムでね、ようやく自分の歌のスタイルが決まったな、という感じが…
 
H:いま聴くと、いまに至るもんね、このスタイルはね。
 
忠:そうそうそう。
 
H:その前はやっぱりちょっと…
 
忠:ちょっと違うでしょ?
 
H:違うもんね。フォーキーだったりね。
 
忠:そうそう。
 
H:僕もそうだよ、おんなじ。ジェームス・テイラーの影響が強かったり。模索してた時代だから。いくつだった?24・25歳?あっ、24・25歳だよ。
 
忠:うん。…若かったね(笑)
 
H:若いね。このまんま行けば僕も、ファンキーなベーシストをずっとやっててもよかったんだけどね。なんでこんなになっちゃったんだろう(笑)
 
忠:いやいや…(笑)いまでもファンキーじゃないですか。
 
H:いや、なかなかね、そんなチャンス無いんですよ。
 
忠:そうなんですか。
 
H:だからあの…はっぴいえんどをやる前に、エイプリル・フールが解散して。なんていうの…演奏力はバッチリ。場数踏んでたしね、僕たちね。
 
忠:そうだよね。
 
H:で、次をどうするかっていうんで…もうコピーはイヤだと。で、忠がやるって言うから。ね?
 
忠:「言うから」って…(笑)そうだったのかな?
 
H:そうだよ(笑)
 
忠:いや、よくさ、仕事が終わってから松本(隆)の…麻布の家に3人で行ってね。よくレコード聴いてたじゃない。
 
H:そうそうそうそう。
 
忠:その時いろんなレコードを聴きながらいろんな話をしてたのは憶えてるんだけども。「やろうよ」って言われたかな?
 
H:言ってるよ。だって、自然にそんな話になってるんだよ。だってもうエイプリル・フールはなくて、みんなわりと路頭に迷ってる頃でしょ?
 
忠:うん。いや、でもエイプリル・フールの時だよ、まだ。
 
H:…あ、そうかね?
 
忠:うん。辞めてなかったんだよ?
 
H:まあでも、先が見えてたんだよ。
 
忠:まあね。んー…(笑)
 
H:それで、松本隆と僕と忠でなんかやる…つもりでいたんだよ?僕はね。
 
忠:んー…
 
H:それがまあ、紆余曲折してはっぴいえんどになっちゃった。
 
忠:でも、僕が『ヘアー』のオーディションを受けに行く時にさ…
 
H:それ(笑)
 
忠:細野くん、バックでギター弾いてくれたんだよ?(笑)
 
H:そうそうそう(笑)人がいいっていうかなんというか…
 
忠:(笑)
 
H:怒られちゃったよ、松本に(笑)
 
忠:ああ、そうなんだ(笑)
 
H:『ヘアー』受かっちゃったからね。忠が。
 
忠:そうなんだよね。
 
H:それで、バンドの話は無くなっちゃったんで。
 
忠:まあ、でも、それではっぴいえんどができたんだから、ね?
 
H:ま、結局はそういうことなんだけどね。んー、まあ、困った時になんか、始まるんだね。
 
忠:んー。
 
H:でも、忠のボーカルっていうのは、ホントは「基本」だったんだよね。バンドの。
 
忠:そうだったの?
 
H:それまでボーカルが不在だったんだから。世の中。歌える人がいなかったんだから。
 
忠:んー。
 
H:初めてだよ、エイプリル・フールで、「うわ、すっげーうめぇ」と思って。
 
忠:いや、だからね、そういう風に…僕の歌を評価してくれる、細野くんがいてさ。で、『ほうろう』のアルバムで僕は思ったんだけれども、細野くんがプロデュースでさ、あのアルバムはできたんだけども。僕としては、自分の歌のスタイルを探してずっとやってきて、やっぱりそれを一番わかっててくれたのが細野くんだったんだな、っていうことを改めて思った。
 
H:そうかね。わかってたかな…(笑)
 
忠:まあだから、そのフォーキーな歌になる前の僕の歌声を知ってるしさ。
 
H:だって、エイプリル・フールの時にシャウトしてるのを知ってるからね。ツェッペリンLed Zeppelin)なんか歌ってたんだから。
 
忠:そうだよね!"Good times,bad times..."ってやってたね(笑)
 
H:そう。それから急にほら、フォークの世界に引っ張られたっていうか、まあ当時の時代はそうだったけど。
 
忠:んー。
 
H:そういう感じで歌うこともできるし、またシャウトするだろうしと、思ったんだよ。
 
忠:だからね、いちばん僕の歌を理解してくれる存在だなっていうのは、あのアルバムで思いましたよ。
 
H:いやいや。だから、(忠は)ボーカリストよ。ほんっといなかったから。まあ、女性はけっこういたよね。(吉田)美奈子、アッコちゃん…男の人ってあんまりいなかったんだよ。みんなミュージシャンばっかり、周り。
 
忠:そうだよね。
 
H:演奏は良いんだけど、歌う人がいない(笑)
 
忠:うん。
 
H:自分でもそうだったから。自分でも歌うなんて考えてなかったんで…とにかくバンドを組む時は小坂忠ありきで考えてた。
 
忠:うーん…
 
H:それが…あれ?いなくなっちゃった(笑)
 
忠:(笑)"ふうらい坊"だから。
 
H:ああ風来坊ね…それは僕の曲だけどね(笑)自分のことだから。
 
忠:(笑)
 
 
H:まあ当時は隣に住んだりね、本当、よく遊んだよね。
 
忠:よく遊んだ。隣同士でね、糸電話で話したりね。
 
H:くだらない…(笑)
 
忠:温泉なんか行ったもんね。
 
H:行ったね~。熱海の、ローマ風呂(笑)
 
忠:(笑)
 
H:湯気で見えないから、裸が。
 
忠:で、向こうから女の人が近づいてくる気配があってさ。
 
H:そうだね。
 
忠:中でいっしょになってたりとかしてね。
 
H:あれ、混浴だったんだよ。すごいね…あるのかな?まだ(笑)
 
忠:いやいや…(笑)どうなんだろう。
 
H:おっきなローマ風呂だよ。行きたいなぁ…
 
忠:あれは大野雄二さんのとこ(※ホテル大野屋)だよ。
 
H:そうそうそうそう。あることを祈るけどね。まあいろいろ行ったよ。釣り堀行ったりね。
 
忠:釣りしたっけ?
 
H:釣り堀。
 
忠:釣り堀?
 
H:御茶ノ水の。
 
忠:御茶ノ水にあったっけ?
 
H:あるじゃん。あの…
 
忠:市ヶ谷でしょ。
 
H:市ヶ谷、市ヶ谷。
 
忠:ああ、そうかそうか。
 
H:つまんなかったなぁ(笑)
 
忠:(笑)いやいやいや…
 
 
H:まあ、音楽かけようよ。あのね、"ゆうがたラブ"に準ずる、小坂忠の曲で好きな曲。これも演奏が好きなんだよ。
 
忠:うんうん。
 
H:それは、後の2001年に出した『People』。
 
忠:あ、これもねぇ、やっぱり細野くんプロデュースですからね。
 
H:このアルバムねぇ、愛着あるんだよ、実は。
 
忠:僕もね、あるんですよ。実はね。でもねぇ、エピックが廃盤にしちゃったんだよね、これ。
 
H:…もう許せないね。
 
忠:許せない。もう是非ね…これLPで出してほしいよね。
 
H:もうちょっと考えてほしいね。中身を。
 
忠:考えてほしい。
 
H:これ絶対、そのうちどっかから引合があるよ。外国。いま1970年代ブームなんでしょ?
 
忠:まあ、2000年だけどね、これ。
 
H:…あ、そっか(笑)
 
忠:(笑)
 
H:それ、聴いていいかな。"I Believe In You"という曲。演奏がね、マッスル・ショールズ…みたいなの(笑)
 
 
 
 
 
 
H:良かった…
 
忠:ここ(収録スタジオ)でね、僕歌ったと思うんですよ。コーラスも。
 
H:おお。ここ、けっこう使ってたんだね。このスタジオで。
 
忠:ね。気持ちいいね。(キーボードの)佐藤(博)くんがね…いなくなったのは残念だね。
 
H:残念…困っちゃうよ。
 
忠:ねえ。
 
H:ホント困ってしょうがない…自分でやってるんだけど、いま(笑)騙しだまし。
 
忠:んー。
 
H:もう、ほんっとに困るよなぁ、いないと。誰でもいいってわけじゃないからね。
 
忠:そうなんだよね。
 
H:みんなそれぞれそうだよ。お互いにね。いなくなんないでもらいたい(笑)
 
忠:(笑)
 
H:自分がいなくなっちゃったら、それはそれでいいけどね。
 
忠:まあね(笑)「1消えた~」みたいなね。
 
H:まあでも、この『People』、2001年の頃いくつだったか忘れちゃったけど、いちばん良い状態だよ。ミュージシャンとして。みんな良いよ、ドラムも…林立夫も良いし。鈴木茂も。
 
忠:そうね。なんか、すごい落ち着いてるよね。
 
H:落ち着いてるよね。若いと落ち着きがないじゃん。
 
忠:まあね。勢いはあるけども。
 
H:勢いだけでやってるじゃん。こういう、なんか、老練な演奏っていうのはなかなかね、聴けないんだよ。日本では。
 
忠:そうかもね。
 
H:だから、我々が年取ってきた所為でね、やっとそういうことができるようになったじゃん。
 
忠:んー。まあね。
 
H:いまだってできることもあるわけじゃない。いくつになったの?70歳?
 
忠:71歳。
 
H:たいして変わんないじゃん(笑)
 
忠:昔からそうじゃない(笑)
 
H: そうか(笑)
 
忠:(笑)
 
H:そうだよな、昔から1歳違いか。
 
忠:そうなんだよ。誕生日が一日…
 
H:そうだ、ぜんぶ一日違いだな。
 
忠:で、僕が誕生日来ると同い年になるじゃない。
 
H:そうだった(笑)で、タメ口きく…
 
忠:その時だけね。
 
H:いまだって別にタメ口だけどね…(笑)
 
忠:(笑)懐かしい。
 
H:懐かしいね。いろんな…歴史を感じるな、いまとなっては。
 
忠:うん。まあだけどね、僕のそういう節目節目にね、やっぱり細野くんがいないと、生まれなかったんですよ。
 
H:お母さんだね(笑)
 
忠:それはね、ホントに感謝してる。
 
H:生まれたのか…(笑)
 
忠:生まれちゃった…(笑)
 
H:(笑)まあ、この続きはまた来週、お願いします。
 
忠:はいはい。
 
H:小坂忠さんでした。
 
忠:はい、どうも。
 

2018.09.16 Inter FM「Daisy Holiday!」より

今回の選曲の流れ、イイですね…

 

daisy-holiday.sblo.jp

 
 
H:こんばんは。細野晴臣です。さあ!きょうも…先週…かけられなかったから(笑)もうずっと続いてますよ。
 
姉妹:はい(笑)
 
H:で…サイモンとガーファンクルの話で終わっちゃったんだっけ?
 
希子:そうです。

佑果:はい。
 
希子:ちょっと世代のギャップが…
 
H:曲は知ってるはずだからね。
 
希子:曲は知ってます!
 
H:"(The) Sound of Silence"、"Bridge Over Troubled Water"、それから"Mrs. Robinson"とかね。
 
希子:はい。
 
H:で、僕がかけたいのは…誰も知らないと思うんだけど、僕は好きな曲をかけます。サイモンとガーファンクルで"Fakin' It"。
 
 
Fakin' It - Simon & Garfunkel
 
 
H:"Fakin' It"っていう曲。いま聴くと、自分ではあんまり…
 
希子:カッコよかったです!
 
H:あ、ホント?よかった。
 
佑果:すごく新鮮…
 
H:イントロとエンディングはビートルズの影響だよね。おんなじようなのあるよね。
 
佑果:いやー、よかったです(拍手)
 
H:僕が当時聴いてたのは24、25歳かな。たぶん。はっぴいえんどっていうのをやる頃、こういうのを聴いてた。あ、だからもっと前だ。21、22歳だ。
 
佑果:そうか…いまの私たちに近い…
 
希子:やっぱり、めちゃくちゃ影響を受けちゃいそうですよね。直に。
 
H:そうだよ。当時新譜出てこういうのが入ってて、うわっ!と思うの。途中でセリフが入ってたり、新しかったりする。いま聴くとそんなに、普通なんだけど…当時はすごかった。
 
希子:そうですよね。やっぱりビートルズとかもかなり…(曲の)途中でキューって、ぜんぜん違う世界に連れてかれちゃうというか。
 
H:連れてかれちゃうんだよ。
 
希子:そういう感覚は、けっこう70s'のサイケデリックな…
 
H:そう。サイケデリックからそういうのが始まって。どっぷりサイケになってたから…
 
希子:なんか、想像力が一気に拡がるって言うか。
 
佑果:やっぱり、そういう音楽いいですよね。連れてってくれるって言うか。
 
H:特に昔…若い頃はロック一辺倒だったからね。もう、こういうのばっかり。他の音楽はあんまり聴かなかった。
 
姉妹:へー。
 
H:いまになって、いろいろ聴くようになった(笑)
 
希子:いまになってですか?(笑)
 
H:いや、子どもの頃も聴いてたけど。うん。特殊な時代だよ、1970年代は。
 
佑果:たしかに…
 
 
H:さあ。
 
希子:はい。じゃあ、前回に…
 
H:うん。なんかチラッと言ってたよね。ヘンリー・マンシーニ(Henry Mancini)って言ってたっけ。
 
希子:はい。前回に引き続いて…「(本編は)観たことが無いけどサントラが好き」っていうシリーズに乗っかってですね、これはヘンリー・マンシーニの"Lujon"という曲なんですけど。
 
H:ほう…
 
希子:いま調べたところによるとですね、1959年の『Mr. Lucky』っていう…ドラマがあったみたいで、そのサウンドトラック…らしいのですが(笑)実は観たことはありません。
 
H:僕も観てないね。
 
希子:でもこの曲は本当に好きで。けっこう大切にしてる曲です。
 
H:ぜひ聴かせてください。
 
 
Lujon - Henry Mancini
 
 
H:美しいね。
 
希子:はい…
 
H:これはエキゾチック・サウンドだね。
 
希子:そうですね。きっと、すごいインスパイアされたと思うんですけど。なんか…アメリカの方じゃないですか、ヘンリー・マンシーニって。
 
H:うん。
 
希子:違う国の人が違う国の音楽に影響されて作る音楽って、すごいいいですよね。
 
H:それそれ…それは僕、40年以上前にそのこと考えてたから…(笑)おんなじこと考えてるな。ふしぎ。そうか…なんかいろいろこう…感じるな。
 
希子:感じますか?
 
H:いろんな歴史を感じるしね、自分の。(2人は)若いから、「いま」聴いて、いいと思ってかけてるわけじゃない?
 
希子:はい。
 
佑果:そうです。
 
H:こっちはさ、いろんな事を思い出すんだよね(笑)
 
希子:そうですよね。
 
佑果:たしかに…
 
希子:いまはやっぱり情報がすごく多いので、ホントに、常にいろんな音楽がブワッ、てある状態で好きなものを選べるけど、昔にそういう音楽を聴いた時に感じる…圧倒される感じっていうのは、きっとすごいんだろうなあと思って。
 
H:そうそう。で、手に入らないから、聴いたら覚えてくんだよ。その感覚をずっと忘れないようにするわけ。そうすると自分の中で大きくなっていくわけ。幻想が。
 
希子:たしかに。
 
H:で、実際聴くと、あれ、そうでもないな、って…(笑)自分の頭の中でのほうがすごいと思って。
 
希子:そうですね。細野さんが前に…ワールド・ミュージックって後々言われるようないろんな国の音楽を聴いて影響を受けたって言ってたんですけど、私は細野さんはもう、音の神様だと思うので、音を通じてその土地のことがわかっちゃうくらいの…そういう感覚を持ってるんじゃないかな、って。
 
H:あるよ。あるある、そういうの。
 
希子:ハワイに行ったときに山に行ったんですよ。その時、細野さんのことを思い出して。きっと細野さんは、この山を…この土地を絶対見てないけど、音楽を通してそういうものを感じてたんじゃないかな、っていうか。
 
H:僕はハワイで山に登ったことはないけど…(笑)あのね、僕も先生みたいな人がいて、ハワイに。マーティン・デニー(Martin Denny)ってアメリカ人がね。エキゾチック・サウンドの大御所ですよ。
 
希子:はい。知ってます。
 
H:彼が来日した時に会って話したの。そしたらすごくこう、親しくされて、「ハワイ行ったら絶対寄ってくれ」と。「いっしょに山に登ろう」って言われて。その頃すごい弱ってたから、山か…と思って(笑)
 
希子:え、山は行かなかったんですか?
 
H:うん、行かなかった。行こうかな、と思ってたらもうマーティン・デニーが亡くなっちゃって。いまはいないの。
 
姉妹:あー…
 
希子:それは、すごく残念ですね。
 
H:そんなこと話してたら、マーティン・デニーかけよっかな。
 
希子:あ、かけてください!聴きたいです。
 
(H:なにがいいかな…)
 
希子:イエーイ。
 
H:えーとね、マーティン・デニーの…タイプがちょっと違う、情景描写みたいな。オリジナルじゃないんだけど。現代音楽の人が書いたような。ところが、こないだ行ってきた香港。
 
希子:はい!
 
H:"Rush Hour In Hong Kong"っていう曲があるの。聴いて。マーティン・デニー
 
姉妹:おー!
 
 
Rush Hour In Hong Kong - Martin Denny
 
 
H:っていう感じ。
 
佑果:ウワー、おもしろいですね。
 
H:香港っぽいよね(笑)
 
希子:香港っぽいし、完全に物語が、もう…まるで映画か、絵本を読んでいるような。
 
佑果:ね。そういう感じがしますね。
 
H:この並びで"Fire Cracker"っていうのも…YMOがカヴァーしたのはね、それなんです。それをカヴァーして、ちょっとヒットしたらマーティン・デニーから電報が届いて、「ありがとう!」って。
 
佑果:すごーい…
 
H:その電報、どっか行っちゃった…(笑)
 
希子:あー…どこ行ったんだ…
 
H:どっかにあるとは思うんだけど。
 
希子:電報っていうのがすごい…
 
H:電報だったよ。当時はまだ電報があったんだよな。まあ、いまもあるんだけどね。
 
希子:あ、そうなんだ。
 
H:たぶんね。知らない…見たことない(笑)
 
希子:電報って映画でしか見たことないです。
 
 
H:さあ!佑果ちゃん、お待たせしました。
 
希子:じゃあ2人から?
 
佑果:次は2人から!
 
H:あ、いいよ。なんだろう。
 
希子:最近ですね、ちょっと気になってるバンドがいまして。クルアンビン(Khruangbin)っていう、3人組のテキサスをベースに活動しているトリオ…注目のトリオ、らしいんですが。
 
H:クルアンビン。変わってる名前だね。
 
希子:そうなんですよ。『Con Todo El Mundo』っていう2ndアルバムを最近リリースされて…
 
H:ラテン系だね。
 
希子:そのアルバムがすごく良くて。けっこう、ね。ずっと聴いてるね?
 
佑果:いつもいっしょに聴いてて…あと、YMOの"Fire Cracker"。まさにさっき細野さんが話していた…そのカヴァーも。
 
H:誰がやってるの?
 
佑果:この人たちが。
 
H:えー!そう…信じられない…
 
佑果:YouTubeで調べるとたぶん出てきます。
 
H:本当?調べるわ、あとで。
 
佑果:すごいカッコいいバンドで…
 
希子:きっと彼らも細野さんに影響されているはずです。
 
H:えー、ちょっと聴いてみたいな。
 
希子:はい。では、"Lady and Men"です。
 
 
Lady and Men - Khruangbin
 
 
H:おお、なんか…"Fire Cracker"やってるの?この人たち。
 
希子:やってるんですよ。
 
佑果:カヴァーを。
 
H:えー…想像できない(笑)このメンバーで。
 
希子:でもよかったですよ。ぜひチェックしてみてください。
 
H:チェックしてみるよ。謎のグループだ…
 
希子:ホントに謎のグループ。みんなおかっぱの…
 
H:インディオかな?ラテン語が多いよね。
 
佑果:そうですね。でもテキサスをベースに活動している…
 
H:ふしぎだ…
 
希子:不思議なミクスチャーですよね。
 
H:むこうもこっちを不思議だと思ってるんだろうけどね。
 
 
 
H:だいたい持ってきてるやつはみんな聴いたのかな。
 
希子:聴きました。まだまだありますが…
 
H:まだまだ、もちろんあるだろうけどね。
 
希子:ひと通り聴きましたね。
 
H:ええとね…僕もかけようかな。
 
希子:お。
 
H:あの…希子ちゃんのほうかな、インスタグラムでスライ(Sly & The Family Stone)の曲がかかってたんで。
 
希子:はいはいはい!
 
H:あー、いちばん好きな曲かけるな~、と思ってて。
 
希子:おー。
 
H:"Frisky"っていう曲。
 
希子:はい。
 
H:すげぇ影響されてるんだ。かけちゃおうかな。
 
希子:かけちゃいましょう!
 
H:じゃあちょっと…(どこ行っちゃったかな…)。
 
佑果:きょうはすごい…ホントに「合戦」だったね。
 
希子:「合戦」だった(笑)
 
H:また今度やろうね。
 
佑果:足りない…(笑)
 
H:楽しいたのしい。
 
希子:いつでも呼んでください!
 
佑果:はい、いつでも!
 
H:じゃあ、最後にかける曲がSly & The Family Stoneで"Frisky"。これのオルタネイティヴ・ミックスです。
 
 
 
 
希子:セクシーですね!やっぱね。たまらないですね。
 
H:あのね、数年前にスライ(Sly Stone)が来たのね。で、有楽町の(東京国際)フォーラムでジャズフェスの中の一つのグループで出てきたの。それ観に行ったの。めったに見れないから。
 
姉妹:うん。
 
H:そしたらスライの御大がね、もう御年召してるんだけど、途中から出てきたの。ゆっくり。歩いて。で、キーボードに座って、"It's a Family Affair~"って、大好きな曲を歌いだして。なんかね、ライヴ観て僕、涙出そうになったの初めてかな。もう、感動しちゃって。
 
姉妹:わー…
 
H:もう、見れてよかった…
 
佑果:うらやましいです…
 
希子:いやー、それはでも感動すると思いますね。彼らがライヴしてるのとか本当に…めったに見れないですよね。
 
H:んー。特に最近はもう、無理だね。メンバーもみんな若いんだけど、一人だけ御大が出てきて、歌ってた。
 
姉妹:うわー…
 
 
 
H:それで、もう時間ないけど。
 
希子:え…あ…告知。
 
H:告知。なんかある?
 
希子:告知…まあ告知っていう告知ではないんですけど、「OK」というブランドをやっています。
 
H:2人でやってるの?
 
佑果:私も携わってます。
 
希子:まあでも、けっこうチームでやっていて…OFFICE KIKOっていう会社を去年立ち上げて、自分の誕生日に。
 
H:あ、そっか。
 
希子:で、それをきっかけになんか、プロジェクトを立ち上げようって言って。で、OFFICE KIKOの頭文字をとって「OK」で。
 
H:「OK」か。
 
希子:OKってみんな知ってる言葉だし、この地球上の誰しもが。
 
H:どこでも通じるね。
 
希子:すごいポジティヴっていうか、前に進んでいく言葉だなって思って「OK」にして。で、佑果ちゃんとか、こないだ紹介したフォトグラファーの(茂木)モニカちゃんだったりとか。
 
H:あー。
 
希子:あとは酒井いぶきちゃんっていう女の子がいて。弱冠20歳でステッカーのアーティストをやっていたりするんですけど。そういうクリエイティヴな発想を持った…いまのところは女の子ばっかりなんですけど、そういう人たちとチームで…
 
H:いろんなもの作るわけ?
 
希子:そうです。これから、10/1に出るのは…この告知…いいんですかね?(笑)
 
H:いいよいいよ。
 
希子:ESPERANZAっていう靴屋さんがありまして。それは1990年代とか2000年初頭にコギャルブームがあったと思うんですけど、手頃に厚底ブーツを買えるようなお店だったんですよ。
 
H:ああ、そう。
 
希子:で、いまでも全国にあって、「安くいい靴を買える」っていうチェーン店なんですけど。そことコラボして、ギャルスピリットを復活させようという思いで。
 
H:いいね。
 
希子:そういう企画をしまして。やっぱり、女の子が元気だと明るくなるし…
 
H:ホントそう…頼みますよ。
 
希子:みんな平等に、「自分がサイコー!」みたいに思ってほしいんですよね。ギャルってそういうのあんまり関係なく、あの当時だと好きな格好して、肌も焼いて。
 
H:マイペースにやってたね。
 
希子:そう、マイペースに。周りの目なんて気にせずに、自分が好きなことやってた。そういうスピリットって…バカにされがちなんですけど、ギャルとかのカルチャーって。でもすごいすばらしいし、いま私がすごく求めているエナジーだなと思って。
 
H:たしかに。
 
希子:そういうことをやっていこうと思って。「OK」はコラボしたり商品も作るけど「場」でもあるので。
 
H:なるほど。
 
希子:パーティーもこないだやったりして。民謡クルセイダースっていう、日本のいろんな土地の民謡とレゲエみたいなのを混ぜたり、サルサみたいなのを混ぜたりするバンドがいて。彼らを呼んだりして。
 
H:自由だね。おもしろいね。
 
佑果:もし今後、もっと「OK」がイイ感じになってきたら、ぜひ細野さんにも…パーティーで歌って頂けたらうれしいな!
 
H:ぜひぜひ…やらしてもらおう。
 
姉妹:えー!
 
H:うん、元気出てきた(笑)
 
希子:ホントですか?あの…みんな求めてるので、そういうエネルギーを。ぜひ…
 
H:もう…じゃあ、おじいちゃん参加するわ。
 
姉妹:(笑)
 
佑果:楽しみです…!
 
H:楽しみだね。またじゃあ、来てください。
 
希子:いつでも!来たいです。
 
H:ありがとうございました。水原姉妹~
 
姉妹:さよなら~
 

2018.09.09 Inter FM「Daisy Holiday!」より

 Vashti Bunyanは知ってるけどSimon&Garfunkelは知らない」という感覚、めちゃくちゃわかりますね…

 

daisy-holiday.sblo.jp

 
 
H:こんばんは、細野晴臣です。えー、きょうは…華やかな2人が来てますよ。水原姉妹。お姉さんの?
 
希子:希子です。

H:妹さんの?
 
佑果:佑果です!
 
H:最近ね、ちょっとプレッシャーがいっぱいあって落ち込んでたんだけど、目の前に…華やかな感じで…ちょっと元気になるね。
 
希子:ホントですか?わあ…もう、私たちは細野さんに元気を与えに来ました(笑)
 
H:うれしいな。
 
希子:パワーを送ります。
 
H:きょうはね、不思議な取り合わせだけど、DJ合戦だよね。久しぶり。昔よくね、いろんな人が来てDJ合戦っていうのをやってたわけ。
 
希子:あ、ホントですか。
 
 
姉妹:あー。
 
H:初めてかな、最近…女性陣が来てDJ合戦っていうのは初めてかも。新鮮。
 
佑果:あんまりないですか?
 
H:うん。で、佑果ちゃんはすごいもんね。DJとしてユニークだよね。どうなの?最近、どうしてる?
 
佑果:最近はひたすらレコードショップに行って…やっぱり「掘る」ことがすごく好きで。それで自分が気になった音を集めることがすごく好きで…
 
H:楽しいよね。わかるわ。
 
佑果:それにひたすら夢中になってる感じです。
 
H:お姉さんはどうかな。
 
希子:あ、私ですか。
 
H:こないだテレビコマーシャルで観たばっかりだ(笑)パナソニック。宣伝していいよ。
 
希子:ありがとうございます(笑)すごく、すばらしい商品なので、ぜひ…
 
佑果:(笑)
 
希子:いや、私は最近はもっぱら旅行ばっかり。
 
H:また、旅行行ってるんだね。
 
希子:そうですね。仕事でも行くんですけど、プライヴェートでも行くのが好きで。
 
H:ああそう。最近どこ行ったの?
 
希子:最近はですね、フィンランドと…
 
佑果:いいなぁ、うらやましい…
 
希子:あとはパリと、南仏と…行ったりとか。あとはつい最近は佑果ちゃんと一緒に香港にも行きましたね。
 
佑果:はい。
 
H:あ、また香港行ったの?いいなあ、香港。
 
希子:香港いいですよ。
 
佑果:ごはんがもう、すっごくおいしかったです。
 
希子:ね。佑果ちゃんが初めて、すごく酔っぱらう姿が…見ましたね。
 
佑果:(笑)
 
希子:初めてのことだったので。
 
H:あんまりお酒飲まないの?そういうわけではないか。
 
佑果:あんまり、お姉ちゃんの前では…たっくさん飲んでファー!ってなることはないんだけど、ちょっと久しぶりに紹興酒を…あったかい紹興酒をたくさん飲んでしまって…
 
希子:おいしかったもんね。
 
佑果:迷惑かけてしまいました…(笑)
 
希子:ちょっとそういう…成長も見れて、まあ成長というか…
 
佑果:お酒…むずかしい…戦い方が…(笑)
 
希子:楽しかったね、でも。
 
佑果:うん、楽しかったです。
 
H:香港は暑かったんじゃない?そうでもないの?
 
佑果:雨がすごい降ってて。嵐みたいな、ね?
 
希子:そう。
 
H:もういま、世界中がすごいよね。
 
希子:もうなんか、すごい天気が…夏はめちゃくちゃ暑かったし、いまは雨もすごくなっちゃったりとか。
 
H:外国はどうだった?
 
希子:今年の夏はどこに行っても暑いって感じて、ロンドンに行った時もめちゃくちゃ暑かったじゃないですか?
 
H:そうそうそう。
 
希子:あとは世界中、いままで感じたことがないくらい…
 
H:みんなそうなんだね。んー。相変わらずこっちもすごいけどね、東京、日本も。
 
希子:そうですね。
 
佑果:こないだ雷を何十回も見る機会が…なんじゃこりゃあ、と思って。
 
H:自然現象はすごいよね。
 
希子:パワフルですね。
 
 
H:…というような話をしたところで、誰から行こうかな…DJ合戦。まあやっぱりね、最近digして来た佑果ちゃん。
 
佑果:私から。
 
希子:Go Go。
 
佑果:では、私は…えーと、なにからかけましょう。
 
希子:なんだったっけ。あ、それからいきましょう。
 
佑果:Dr.バザーズのオリジナル・サヴァンナ・バンド(Dr. Buzzard's Original Savannah Band)の"Soraya"という曲を、最近すごくいいなあと思って聴いていて。
 
H:これは1970年代の終わりごろよく聴いてたんだよ、ティン・パン・アレーで、みんなで。すごい影響されて。いま聴いてもぜんぜん…新鮮。音が。音楽もいいし。
 
佑果:うんうん。
 
H:この人たちその後どうしてるんだろう、っていうぐらい。すごい存在。聴いちゃいましょうか。
 
佑果:はい。
 
H:じゃあ、オリジナル・サヴァンナ・バンドで"Soraya"。
 
 
 
Soraya / March Of The Nignies - Dr. Buzzard's Original Savannah Band
 
 
H:いい!(笑)
 
佑果:細野さんと一緒に聴けてうれしいです(笑)
 
希子:(笑)
 
H:いやー、僕もだよ(笑)不思議な気持ち。この世代間の違いが。共通の音楽で盛り上がるという。
 
佑果:すばらしい。
 
H:これはだって、そっくりな曲作ったことあるね。自分のじゃなく、人に(提供する曲として)ね。
 
希子:あ、ホントですか。
 
H:このリズムに、なんかとり憑かれちゃって。ヘンな音だしね、おもしろい。
 
佑果:たしかに。
 
H:なんでこれを見つけたの?
 
佑果:えーと、たまたま…
 
H:たまたまなんだ。すごい。
 
佑果:Apple Musicで…
 
H:聴き漁ってたんだ。
 
佑果:聴き漁ってて、あ、細野さんのスピリット入ってるな、と思って。
 
H:すごい、カンがいい。バレバレだ(笑)
 
佑果:これだ!と思って買いに行きました。
 
H:いやあ、不思議な…なんか、おんなじテイスト持ってるんで、バンド組めるよね(笑)
 
希子:おー。
 
佑果:なにか、できたらいいですね…!
 
H:僕も同い年くらいだったらきっとバンド組んでたね。ティン・パン・アレーみたいな。
 
希子:すごい。
 
H:だって、ティン・パンの仲間たちってみんなこういうのを聴いてて。
 
姉妹:えー!
 
H:盛り上がってた。いまみたいにね。
 
希子:吉田美奈子さん…
 
H:美奈子も聴いてたと思う。みんな聴いてた、これは。
 
佑果:スピリットが、ファミリーに…
 
H:うん。
 
佑果:ああ、そんな…タイムスリップできたらいいのに(笑)
 
H:ホントだよね。本当に大事な音楽だった。
 
佑果:すばらしい。
 
 
H:この路線で行くか、じゃあ…あ、でもやっぱり、次はお姉さん、希子さん。
 
佑果:お願いします。
 
希子:ちょっと落ち着いちゃうかもしれないんですけど…
 
H:いいよ、落ち着いて。もう、どんどん変わっていこうよ。
 
希子:いいんですか?ヴァシュティ・バニヤンVashti Bunyan)さんという方がいらっしゃいまして…
 
H:知らない…
 
希子:彼女の話けっこうおもしろくて。1960年代にいろいろ、曲作ってたんですけど、1970年代に出したアルバムが全然売れなくて、それで本人音楽やらなくなっちゃったんですけど。
 
H:あ、ホント。
 
希子:でも実はそのアルバム、マニアがけっこう多くて。
 
H:へぇ。あ、それ聴きたくなっちゃったな。
 
希子:で、1990年代に若者が彼女の曲を支持しているっていうことを彼女が知って、それでそこからまた音楽をやり始めたって言う話があるんですけど。
 
H:なんかそれは他人事じゃないな(笑)
 
希子:でも、(1970年代当時は)全然注目されてなかったらしいんですけど、そのアルバムがすごい…あまりにもすばらしくて…あと、歌詞がすごく素敵で。恋のお話なんですけど。そのタイトルがすごくて。
 
H:うん。
 
希子:"I'd Like To Walk Around In Your Mind"っていう。「君の頭の中を歩きまわりたい」、という…
 
佑果:マインドねー…
 
希子:(笑) 
 
佑果:むずかしいね。
 
希子:なんかロマンチックだし、すごくそういうの良いなあと思って。
 
佑果:たしかに。ロマンチック。
 
希子:ぜひ、聴いてみてください。
 
 
I'd Like To Walk Around In Your Mind  - Vashti Bunyan
 
  
H:いいね。
 
希子:いいですか。
 
H:ピュアで。イギリス?
 
希子:イギリスの…はい。ヴァシュティ・バニヤンさん。私も最近この曲知って、この歌詞があまりにもまっすぐで…
 
H:声もいいね、この人。まっすぐな。
 
希子:そう。すごいこう、強いですよね。
 
佑果:なんかとても、quietな感じなんだけど。
 
希子:全部のアルバム通してこのトーンです。
 
H:いい。そうか、そうきたか…困ったな、どうしようかな…
 
希子:すみません(笑)ちょっとしっとりしちゃいましたね。
 
H:いいよ。じゃあまた、違う方向に行くよ。
 
希子:はい、行きましょう。
 
H:インストゥルメンタルで…僕が中学生のころにラジオで聴いてた音楽で、『階段の上の暗闇(The Dark at the Top of the Stairs)』っていう映画があったの。
 
佑果:へー。
 
H:で、どんな映画かは全然知らない。ハリウッド映画なんだけど。でもその音楽がヒットして、ずうっと憶えてたわけ、もう何十年も。いまだに。で、やっと手に入れたんで。「階段の上の暗闇」、デヴィッド・キャロル・オーケストラ。
 
 
 
 
The Dark At the Top of the Stairs - David Carroll and His Orchestra
 
 
H:てな感じで…
 
希子:すごーい。
 
H:ホント?
 
希子:なんかでも、聴いたことある気がしましたね。
 
H:ほとんど、でも、知られてないはず…
 
希子:知られてないんですか?でもなんでだろ、そういう懐かしい気持ちにさせられる。
 
H:名曲なんだよね。でも全然知られてなくて。で、『階段の上の暗闇』って僕、中学生の時に、どんな階段なんだろう、って…ちょっとドキドキするタイトル。
 
希子:でも映画は観たことない(笑)
 
H:うん(笑)だからそういう、映画音楽でいいテーマがいっぱいあって、観てないんだけど音楽だけ知ってるんだよね(笑)
 
希子:わかります。サウンドトラック、私すごく好きで、けっこうレコード屋とか…まああんまり、佑果ちゃん みたいには行かないんですけど、たまに佑果ちゃんに連れてってもらって一緒に行くと、サントラのところをずっと見てたりして…
 
H:いいよね。
 
希子:ヘンリー・マンシーニ(Henry Mancini)さんはすごく好きで。『チャーリーズ・エンジェル』とか、いいですよね。
 
H:なんかきょうは明るくなる曲が多いね。なんだろう、次は。佑果ちゃん。
 
佑果:まさにそのサウンドトラック、私が持ってきたレコードの…アウガスト・マルテッリ(Augusto Martelli)。
 
H:さっき見してもらった。
 
佑果:イタリアの方の、"Yamma Yamma"っていう曲を聴いt…みなさんで聴けたらな、と思います。
 
H:わかりました(笑)
 
希子:でも映画は、観たこと…?
 
姉妹:ないです(笑)
 
H:ないよね(笑)
 
 
Yamma Yamma - Augusto Martelli
  
 
H:へへ。ヘンなの(笑)
 
佑果:なんか、リズムが好きで。なんか乗っちゃう…ポン、ポン、ってしたくなっちゃう…(笑)あとはピアノの演奏だったり…
 
H:こういうリズムは1970年代、シェイクとかいう名前。「ズッ・タン・ツカツカ・ズッ・タン」とかね。そういうのがいま新鮮なのかな。
 
佑果:70'sのスピリットがすごく好きなので。ビートルズとか…(?)
 
H:ビートルズね(笑)どっぷり聴いてたからね、そういうものはね。
 
佑果:大好きです。カッコいい…いつ聴いても。
 
希子:ビートルズですか?
 
H:ビートルズ…聴いてたよ、んー。
 
希子:うちの父がビートルズすごく好きだったので、よく幼稚園に送り迎えしてもらう時にビートルズが流れてたりとかして。子供の時から…
 
佑果:そうだね。
 
H:聴いてるんだ。
 
希子:いつも聴いてました。
 
H:よかった…最近知らない人が多いからさ。
 
希子:最近ビートルズを知らない人が多い?
 
H:知らないよ。
 
佑果:えー!ホントですか。
 
希子:でも私、小学校の時とかに習いましたけどね。
 
佑果:んー、教科書に。
 
H:え、どこの学校?
 
希子:え、普通の…
 
佑果:神戸の…
 
H:えー、教科書に出てるんだ。
 
希子:はい。
 
佑果:"Hey Jude"とかかな。歌った気がします。
 
H:"Hey Jude"は…まあ、知らない人はいないかもしれないけどね。
 
希子:"Yesterday"とか。
 
佑果:ね、"Yesterday"とか。その辺り。
 
H:でも知らない人もいるんだよ、最近。
 
希子:おー、そうなんですね。ちょっとかなしい。
 
H:なんか…例えばね。サイモンとガーファンクルって、知ってるでしょ?…知らないか(笑)
 
佑果:知らないです、すみません…
 
H:ほら、これだよ(笑)おんなじおんなじ。サイモンとガーファンクル知らない世代なんだよ。
 
希子:んー。
 
H:こないだテレビ見てたらクイズ番組で彼らのヒット曲がかかって、これは誰ですか、って訊いたら回答者は誰も知らないから、あっ、時代が変わっちゃったんだ、と思って。
 
希子:ヤバい、追いつかなきゃ。
 
佑果:レコード掘ってるのになんで知らないの、って…(笑)
 
希子:聴いたらわかんないかな…
 
H:すごく正統派の…すごく影響力のあった。僕もいっぱい影響されてる。
 
希子:聴いてみます。いますぐ聴きます。
 
 
 
(スタッフ:1週目、時間です。)
 
(H:え、もう時間?)
 
希子:はやい!(笑)
 
(スタッフ:来週に回します。)
 
H:お、じゃあもう時間来ちゃったんで…
 
希子:あっという間な…
 
佑果:あっという間に過ぎちゃった。
 
H:あんまり曲かかんなかったなあ。
 
希子:ホントですね。
 
H:じゃあ、この続きはもう、また来週で。お願いします。
 
希子:また来週~さよなら!
 
佑果:さよなら!
 

2018.09.02 Inter FM「Daisy Holiday!」より

 オレンジ・クレイト・アートになりたいですね。

 

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H:こんばんは、細野晴臣です。先週に引き続いて、岡田崇くん。いらっしゃい。
 
O:こんばんは。
 
H:よろしくね。えーと…もう9月ですよ。
 
O:ねぇ。もうすぐ…
 
H:もうすぐクリスマス、って言うんでしょ?(笑)それ、みんななんか言い出してるね、最近。テレビ見てるとそう言ってる人がいるよ。
 
O:そうですか。
 
H:うん。みんなおんなじこと考えてるのかな(笑)早いからね。
 
O:早いですもんね。
 
H:だって、こないだ正月だったよね。
 
O:んー、お餅食べてた…
 
H:毎日お雑煮食べたい、なんて思ってるうちにこんなになっちゃって。んー…こたつとか懐かしいな。
 
O:(もう)すぐですよ(笑)
 
H:すぐか。んー。お正月?クリスマス?どっち?
 
O:お正月が。
 
H:先に正月が来て、その次クリスマスか、来年。
 
O:(笑)
 
H:えー、来年は2019年か。
 
O:ですね。
 
H:んー…じゃ、去年が2017年…?
 
O:はい(笑)
 
H:えー。じゃあ一昨年は…
 
O:その話で30分…(笑)
 
H:ふふ…えーとね、悪夢の話の途中だったけど、忘れちゃった。
 
O:あの、(話し終えるのに)30分かかるという超大作が…
 
H:そうそう(笑)今度ね…いや、メモに全部書いてあるんで。夢日記
 
O:すばらしい。
 
H:それをもとに30分の番組を作ろうかと。
 
O:作りこむ、と。
 
H:うん。いつになるかな…
 
O:それ、アルバムでいいんじゃないですか?(笑)
 
H:アルバムね…あ、いいねぇ(笑)
 
O:おや?(笑)
 
H:…っていうこと自体がぜんぶ悪夢だったりしてね。
 
O:(笑)
 
 
H:曲、かけようか。いい音楽。
 
O:あ、アタシが。
 
H:うん。
 
O:じゃあですね…ジャック・ティーガーデン(Jack Teagarden)というトロンボーン奏者が。まあ、歌もうたうんですが。ウィラード・ロビソン(Willard Robison)の曲をやっております。
 
H:お、ウィラード・ロビソン。
 
O:"Guess I'll Go Back Home This Summer "という曲でございます。
 
 
 
Guess I'll Go Back Home This Summer - Jack Teagarden
 
 
H:なかなかね、味のあるボーカルですよね。
 
O:そうですね。
 
H:岡田くんは歌わないの?
 
O:歌わないですね。
 
H:歌わないんだ。お風呂入りながら歌わないの?鼻唄。
 
O:歌わないですね(笑)
 
H:歌わないんだ!カラオケは?
 
O:全っ然行かないですね。
 
H:僕も。
 
O:1回ぐらい…入ったことありますよ、カラオケ。
 
H:あ、おんなじだよ。どこで?
 
O:下北…
 
H:あー、すごいとこだね。なに歌ったの?
 
O:いやいや、(歌わずに)見てました(笑)
 
H:なんだ、見てたんだ(笑)。僕はね、2回行ったね。強制的に。
 
O:なに歌ったんですか?
 
H:いやいやいや、歌わないよ(笑)
 
O:強制的に(笑)
 
H:1回はね、ロンドン…昔だよ、ロンドンにカラオケって言う名前で、なんかクラブみたいのがあって。連れてかれたの。
 
O:ええ…
 
H:そしたらなんか、気持ち良さそうにイギリス人が"霧のサンフランシスコ(I Left My Heart in San Francisco)"かなんか歌ってたよね。
 
O:うん。
 
H:まあ、それ以外はないよ。なんかカラオケって…楽しいんだろうね、きっと。
 
O:うーん、わかんないですねぇ…(笑)
 
H:とにかくね、歌うたうの好きじゃないよ、僕。
 
O:…え?(笑)
 
H:あれね、一生懸命歌ってるんだよね。ライヴは。
 
O:(笑)
 
 
H:まあ…(笑)えーとね、次の曲は僕がかけますが…スタンダードという繋がりでかけますが、歌っているのは今の人で、スーシー・フルゴール(Susi Hyldgaard)っていう。
 
O:フルゴール…
 
H:「ヒルデガルド」って書いて「フルゴール」と読む…デンマーク読みなのかね?
 
O:んー。
 
H:ニューヨーク生まれでデンマーク人という。いまデンマークスウェーデン辺りでやってるジャズシンガーなんだけど、なんかすごい音響的で暗ーいアルバムをいっぱい作ってたんだけど、これはちょっと明るめで"Baby It's Cold Outside"というスタンダード歌ってます。
 
 
 
Baby It's Cold Outside - Susi Hyldgaard & Aldo Romano
 
  
H:えー、スーシー・フルゴール。彼女は1963年生まれですね。このスタンダードを歌ってるのは聴きやすいけど、実は侮れないシンガーなんです。なかなか手ごわい人なんですよね(笑)
 
O:そうなんですか。
 
H:ええ…もう、本当は低い声なの。なんか、(この曲では)かわいぶって歌ってるけど、こわいんだよ(笑)
 
O:そういう感じには聞こえなかったですけどね。
 
H:この曲だけがこういう感じで、あとはすごいよ。音響的だし。ワケわかんないっていうか、惹き込まれるよ。おもしろい。そういうシンガー…女性シンガーいっぱい出てきてますけどね、出て来たと思ったら、静かになっちゃったり(笑)2018年。もうすぐ2019年。音楽はどうなっていくんだろう、という。
 
O:はい。
 
H:いっぱいいろんな人が出てて…例えばあの人はどうしたんだろう、という。フアナ・モリーナ(Juana Molina)という人が、去年かな、来日して。
 
O:はい。
 
H:なんかね、ちょっとチラッとコンタクトされたんですよ。でも、僕ぜんぜん時間ないんで、まったく接触しなかったんですけど。ちょっと観たかったなぁ、と思って。なんて言うんだろう、「オルタナ系」って、呼ぶのはあんまり好きじゃないけど、そういう女性シンガー多いんですよね。男より多いんだよね。
 
O:そうかもしれないですね。
 
H:だからおもしろいのは特に、女性シンガーが多いんですよね。…ということの流れで、どうぞ。
 
O:(笑)その流れに、僕が持ってきたものには全くない…
 
H:だろうね(笑)いいよ、流れ変えて。
 
 
O:さっきはジャック・ティーガーデンだったので、作曲者本人、ウィラード・ロビソンの歌で、"Heard A Mocking Bird Singing (in California)"という曲を。
 
 
 
Heard A Mocking Bird Singing (in California) - Willard Robison & His Deep River Music
 
 
H:これはね…ヴァン・ダイク・パークスVan Dyke Parks)が歌ってるとしか思えない(笑)
 
O:そっくりですよね、声。
 
H:おんなじ声だよ!で、曲も…ヴァン・ダイク・パークスが作ったみたいな曲もあるしね。不思議な関係だ…とにかく、このウィラード・ロビソンという人は…なんだろうね、隠れた天才ですよね。
 
O:んー、ほんと知られてないですよね。
 
H:ヴァン・ダイク・パークスがこのスタジオに来て、ピアノを弾いて、「これがウィラード・ロビソンという人の曲だ」って言って歌ったんだよね。そしたら、ヴァン・ダイク・パークスの曲にしか聞こえない…(笑)
 
O:(笑)
 
H:やっぱりじゃあ、ヴァン・ダイク・パークス聴きましょうよ。
 
O:はい。じゃあですね、次…これ去年出たオムニバスに入っているヴァン・ダイク・パークスの曲で、"Sun's Always Shining (in Roma)"という曲です。
 
H:一番新しいやつですね、ヴァン・ダイク・パークスの中で。
 
 
 
Sun's Always Shining (in Roma) - Van Dyke Parks
 (from "Unsung Heroes: Songs of Eleni Mandell")
 
 
 
H:すっばらしい…こういう音楽がまだあるんだね。
 
O:今のは…僕もよくわからないんですけど、エレニ・マンデル(Eleni Mandell)という…イナラ・ジョージ(Inara George)といっしょにリヴィング・シスターズ(The Living Sisters)というのをやっている女性の曲で…
 
H:あ、そうなんだ。
 
O:彼女の曲ばっかりを集めた…いろんな人がカヴァーしたアルバムが去年出たみたいですね。
 
H:それは初耳だ…
 
O:ベネフィットコンサートをイナラの(呼びかけで)やって…だから、ライヴ音源なのかもしれないですけど。
※引用者註:時系列的にはアルバムのリリースが先(2017.01.20)。同1.25に行われたコンサートには残念ながらVan Dyke Parksは不参加。
 
H:その作曲者の女性、もう1回言ってくれる?
 
O:エレニ・マンデル。
 
H:今度ちょっと詳しく聴かせてね。
 
 
H:まあ、あの…元気でよかったな、ヴァン・ダイク・パークスがね。
 
O:そうですね。
 
H:(ヴァン・ダイク・パークスが)ブライアン・ウィルソンBrian Wilson)を復帰させた時にね…一緒に作りましたよね。
 
O:『Orange Crate Art』ですか。
 
H:そうです。
 
O:すばらしいアルバムですね…
 
H:ねえ。すごい初々しい。もう、なんか…キュンとするような。あれでブライアン・ウィルソンってポップスの歴史を生きてきたというね。生き証人というかね。ビジネス以外のところがおもしろいというか…おもしろいっていうよりも、感動するよね。じゃあその"Orange Crate Art"。ヴァン・ダイク・パークスブライアン・ウィルソンです。では、この曲を聴いてきょうはおしまいにします。また来週。
 
 
 
Orange Crate Art - Brian Wilson & Van Dyke Parks
 
 

2018.08.26 Inter FM「Daisy Holiday!」より

 ぐうたらバンザイ!

 

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H:こんばんは。…(咳払い)こんばんは。細野晴臣です。ちょっと喉が…おかしいんで。岡田くんどうも~
 
O:こんばんは、岡田崇です。
 
H:いやー、やっと涼しくなったね。
 
O:ようやくですね…なんだったんでしょう、7月、8月。
 
H:世界中がね、すごかったんだよね。目を見張る、出来事がいっぱいあったよね。世界では。洪水とかね。がけ崩れ、山火事、噴火。
 
O:橋が落ちたり。
 
H:うん、そうそうそう。こないだはフィジーですごい地震があったけど、(日本は)あんまり揺れなかったね。硫黄島が、揺れてるけどね。
 
O:そうですね。
 
H:んー。まあ、無事でいられてるよね、いまのところ。
 
O:なんとか…
 
H:えー、それで…やっと涼しくなったんで、自分の作業を始め…遅れてるんだよ、すごい(笑)あの暑さではできないよ。
 
O:ですよね(笑)
 
H:できない。やってる人、いるんだろうけど(笑)なんかやってた?
 
O:いや。ぐうたらしてました。
 
H:やってないんだ。まあね、それが自然だよ。じゃあ、なんか、かけてくださいよ。
 
O:お。
 
H:古い音楽担当。僕はきょう、ちょっと新しい音楽担当で。
 
O:じゃあですね、"Home Cookin'"って曲があるじゃないですか。
 
H:もう、いつかやりたい曲なんだけどね。なかなかできない。
 
O:その作曲家、でいいのかな…ジェイ・リヴィングストン(Jay Livingston)という方が。レイ・エヴァンズ(Ray Evans)とジェイ・リヴィングストンの共作ですけど。
 
H:うん。
 
O:ホームページ(http://livingstonandevans.com/home-cookin/)がありまして、そこになんと、デモというのが…
 
H:デモ?そんなのがあるの…
 
O:こっそり(笑)
 
H:こっそりね。
 
O:かけまーす。
 
 
Home Cookin' (DEMO) - Jay Livingston
 
 
H:いやー、完成されてるね。いやいや…いい曲だ。
 
O:ぜひ(笑)
 
H:歌ってる人は誰?これ。 本人か。
 
O:本人…なのかな、とは思ってるんですけどね。
 
H:なかなかいい、味ですよね。
 
O:作曲家の歌っていいですよね。
 
H:いいね。もう完全になんか…原型が出来てるもんね。んー、いい曲だ…これはなんでいい曲だと思うんだろう(笑)
 
O:(笑)
 
H:うーん、なんだろうね。違うんだよ、他の曲と。んー、不思議…
 
 
 じゃあね…新しいのかけにくいなあ、なんか(笑)
 
O:いやいやいや(笑)
 
H:つながるかな…じゃあね、言い訳をしながら聴こうかな。この暑い夏は…なんだか知らないけど、僕は黒澤明の映画を部屋で観てたの。
 
O:うんうん。
 
H:前にもいっぱい観てるんだけど、また観なおして。やっぱりすごいなあ、とかね。『七人の侍』とか観てたら…あの音楽とかは最近なんかで使われたよね。あっ、『犬ヶ島(Isle of Dogs)』だ。アニメの。
 
O:あー。
 
H:あれに使われてたんで、それでちょっと聴きたくなったっていうんで探してたら…日本のスカバンドというか、ロックステディ・スタイルなんだけど。
 
O:はいはい。
 
H:Matt Soundsっていうグループがね、「七人の侍」やってるんで、聴いてください。
 
 
七人の侍のテーマ(Theme Of Seven Samurai) - Matt Sounds
 
  
H:ジャマイカのバンドみたいだよね(笑)えー、日本のバンドでMatt Soundsといいます。…つながる?これで。
  
 
O:(笑)どうしよう。じゃあですね…
 
H:つなげて。
 
O:ディミトリ・ティオムキン(Dimitri Tiomkin)のサントラから。
 
H:つなぐねぇ。
 
O:じゃあですね、これは『北京の55日(55 Days at Peking)』という映画のタイトルなんですけど、"So Little Time"という曲を。
 
 
So Little Time - Dimitri Tiomkin
 
 
H:あの、このギターのチャカッていうのがリズムと合ってないのがすごい気になるんだけど(笑)
 
O:(笑)
 
H:テープエコーかな、あれは。
 
O:ですかね。1963年の録音ですね。これは。
 
H:スピードがね、合わないんだよね。なかなか(笑)
 
 えー…これはつながるかな…つなげらんないかもなあ。ちょっと待ってね。えーとね…映画続きだな、これは。ちょっと古くなりますけど、『Shape of Water』、あの中で結構いい音楽がかかってたんだけど。前かけたかな?これ。マデリン・ペルー(Madeleine Peyroux)のちょっとシャンソンっぽいフランス語の曲で、"La Javanaise"。
  
 
La Javanaise - Madeleine Peyroux
 
 
H:どうでしょう。
 
O:いいですね。
 
H:…落ち着いてるね(笑)出掛けに最近の新譜をいっぱい聴いてきたんですけど、国内外問わず。
 
O:どうでした?
 
H:落ち着いたものが一個もないんだよ(笑)年寄りにはちょっとね…ムリがあるっていうかね。自分には関係ねぇかな、っていう(笑)
 
O:(笑)
 
H:あらゆることが関係無いんだけどね。向こうから関係無いって言われてるんだけどね、こっちじゃなくて。「アンタ関係無いよ」って言われてる(笑)居場所が無くて…なんかかけて。
 
O:お、じゃあですね…また、サントラで。
 
H:映画続きだね。
 
O:ウラジミール・コスマVladimir Cosma)という人で『ぐうたらバンザイ(Alexandre le bienheureux)』という映画の…
 
H:ヒエー。
  
 
Thème du Chien (from "Alexandre le bienheureux") - Vladimir Cosma
 
 
H:なるほどね…のんびりしちゃうね(笑)「こんな曲ができました」って言って(僕が)これを発表したらどう思うんだろう、みんな(笑)
 
O:(笑)
 
H:さて、どうしようかな…(笑)映画から離れていいかな。
 
O:もちろんです。
 
H:すごい感慨深かった出来事っていうのが、やっぱりアレサ・フランクリンAretha Franklin)が…
 
O:あー、亡くなりましたね…
 
H:78歳で。お世話になりました。本当に。20代の頃ね。もう、すべてのヒット曲が素晴らしかった。じゃあね…絶対これは(他では)かからないような…アレサ・フランクリンの初期の…たぶんCBSというかColumbiaかな。Atlanticの前に作っていたような。ちょっと変わってる、まだ本領発揮してない時代の…『Essential Classic』というアルバムに入ってるんですけど、"Won't Be Long"。
 
  
Won't Be Long - Aretha Franklin
 
 
H:いやー、このアレンジというか、バッキングがAtlanticとは全然違う(笑)
 
O:んー、20歳か…
 
H:えーっと…これにつなげてなにか(笑)
 
O:お、お、お…最後ですね。
 
H:最後の曲だよ。
 
O:じゃあですね、ケニー・ランキン(Kenny Rankin)かけていいですか?
 
H:好きだねえ、いいよ(笑)
 
O:最近ですね、ようやくCDが出たんですよ。去年LPだけ出て。海外、ヨーロッパで各国版…フランス語で歌ったりとか、いろいろあったんで、その辺も入れてCDを出そうっていう話をしてて。
 
H:あ、そうか。
 
O:それがようやく、先月かな。
 
H:日本盤で?
 
O:日本盤で。長門(芳郎)さんの監修で出ましたので。
 
H:素晴らしい。
 
O:その中から、"In The Name Of Love"を。
 
H:では、これを聴きながら…また来週。
 
 
In The Name Of Love - Kenny Rankin
 
 
 
 

2018.08.19 Inter FM「Daisy Holiday!」より

 真夏の夜のホニャララ…

 

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H:こんばんは。細野晴臣です。えーっと、久しぶりですね、岡田くん。
 
O:こんばんは、岡田崇です。
 
H:はい。よろしく。
 
O:よろしくお願いします。
 
H:新入荷、持ってきてくれましたよね。
 
O:新入荷…(笑)
 
H:新入荷っていうか、入荷…なんていうの?新しい音楽を…(笑)
 
O:いやいやいや…(笑)
 
H:この夏は大丈夫?暑さ。
 
O:いやー、もう、ダメ…ダメです。もう、どうしようっていうぐらい。
 
H:でも、街出るとみんな平気で歩いてるじゃない。
 
O:信じられない…
 
H:なんか暑そうにみえないんだよね、人がね。平気で歩いてるんで。まあ、でも、これからずっと夏はこうなるのかなと思うとね。
 
O:うんざりしますね。
 
H:だから、悪夢ばっかり見てるんだよね、僕。
 
O:あ、そうですか。
 
H:あとで話すよ。
 
O:はい(笑)
 
H:音楽ひとつ、ちょっと…入荷したやつを。
 
O:入荷…まあ、家から持ってきたものですが。じゃあ"Very Nice Is Bali Bali"というですね…
 
H:んー?
 
O:これはPatience & Prudenceが1957年に出したものです。
 
 
 
Very Nice Is Bali Bali - Patience & Prudence
 
 
H:なるほどね。あのー、ワンコードだ(笑)めずらしいよね、画期的だな。
 
O:短いし。
 
H:うん。ポップミュージックでワンコードって、この当時は考えられない…(笑)まあ、展開はしてるんだけどね。ルーツ音がずっと同じ…ミニマルになってますよね。すごい。新鮮でした。
 
 
 で、まあ今の音楽も、ちょっと悪夢っぽいけど…(笑)3つぐらい憶えてんの。1つ目はすごい短いんですけど。
 
O:ええ。
 
H:エレベーターに乗ってたんですよ。気が付くとエレベーターに乗ってて、そのエレベーターが延々と落下し続けるっていう…おそろしい夢を見ました。いつか底にぶつかるんだろう、という恐怖のまんまね。ずーっと落ちていくんだ。地獄だね(笑)で、目が覚めて。落ちる前にね。
 昔はね、エレベーターがどんどん上がっていって、天井突き抜けて空に飛んでく、っていう夢は見たんだけど。落ちてく夢っていうのはなかなかイヤだね(笑)岡田くんはどうですかね。夢、見るでしょう。
 
O:夢…でも最近見ないですね。
 
H:見てるんだけど憶えてないんだよ。
 
O:昔はよく見てましたけど…
 
H:どんな夢を見るの?岡田くんって。夢見るおじさん(笑)
 
O:なんか、松坂慶子に…
 
H:えー?(笑)
 
O:すごい昔ですよ。20年ぐらい前かな…
 
H:いいよいいよ、言い訳はいいから(笑)
 
O:松坂慶子に…『ど根性ガエル』のカエルの刺青を彫る夢を…
 
H:ばっかばかしい…(笑)
 
O:そういう感じの夢を見てる時期が…
 
H:それはどう言ったらいいんだろう…幼児的な…性的願望みたいな…(笑)ど根性ガエル松坂慶子ね。やー、岡田くん、やっぱりヘンだわ。
 
O:それはよく憶えてます。
 
H:ああそう。そういうの、絵にした方がおもしろいんじゃないかね。
 
 
 はい、まあ音楽…合間に音楽をかけながら夢の話をしましょう、じゃあ。はい。
 
O:じゃあですね…"Rococo"っていう曲、ですね。これは、こないだコシミハルさんの公演で…
 
H:そう!使ってましたね。すごく印象的なダンスシーンでしたよ。
 
O:水着を着た女の子ふたりが。
 
H:素晴らしかったね。あれ。
 
O:レイモンド・スコットのあんまり知られてない曲ですね。
 
H:あの舞台の音楽がすごい印象深いから、もう1回聴いてみたいな、と思ってたんですよ。
 
O:お、では…
 
 
 
Rococo - Raymond Scott
  *Performed by Metropole Orchestra
 
 
 
H:ああ、いいな。やっぱりなんか…独特ですね。
 
O:今のは1942年に書かれた曲ですけど、録音が残ってなくて。盤では出てないんですよね。
 
H:そうだったの?
 
O:で、ボー・ハンクスとメトロノーム・オーケストラで、再現盤っていうのが2000年代に出て、その中の…
※引用者註:おそらくメトロポール・オーケストラ(Metropole Orchestra)の言い間違い。2002年の『Kodachrome』か?(未確認)
 
H:つまりこれは、ボー・ハンクスがやってるってことね。
 
O:そうです。
 
H:…全然わかんなかった(笑)音は良かったけど。
 
O:1942年とかなんで、レコーディング・ストとか。まあ戦争中ですけど、あったんで。
 
H:あー…
 
O:この頃の音源ってけっこう、録音されてないのが多くて…
 
H:無いんだね。そうかそうか…
 
O:ラジオとかが普及してきたんで、実演家団体が…レコードとかラジオをかけると(自分たちの)仕事が無くなる、と。
 
H:なるほどね。
 
O:レコーディング・ストを…2年ぐらい、たしかやったんですよね。
 
H:そんなに長かったんだ。それはちょっと痛手ですね。なるほど…
 
 
 はい。えー、2つ目の悪夢。これはね、ちょっと強烈だったんだよな…でもいますっかり忘れちゃったな(笑)
 
O:(笑)
 
H:なんだっけな…死んじゃうんだ、そうそうそう。車に乗ってて…車から出て、誰かと話してるんですよ。街で、日本の街ね。東京かな…どこかわかんないけど。そしたら車に誰かが乗って、ワーって行っちゃうんだよ。で、追っかけたの。そしたら、廃車工場に入ってっちゃうのね、車が。で、探しに行くと…車があったんだけど、それは廃車にされてて、もう何年も経ってる古い車だったわけ。自分が乗ってた車が。「あれ?もう、ずいぶん時間が経ってるな」と思いつつ。ふと見ると、そこに大瀧詠一くんが、ニコニコして立ってるんだよ。で、なんか僕は「ああ、もう、自分はこの世にはいないんだ」と思ってね、車に…なんか、いつのまにか新しい車になってて。乗ってくと、街を走ってるつもりが、どんどん空に上がってっちゃう…っていう夢です。はい。
 
O:………
 
H:あれ?静かになっちゃった(笑)まあ、笑えないですよね。だからそういう…なんだろうな、死んじゃうこととか、けっこう…子供の頃はよく見てたんだよね。で、30代、40代の頃は見ないんだよね、そういうの。で、また子供心に戻ってきちゃってね。
 
O:んー。
 
H:子供の頃って、ガバッ、って起きて、死んじゃうんだ…って思ったね。
 
O:そうですか。
 
H:なかった?そういうの。ないか(笑)
 
O:いやー…
 
H:ま、人それぞれで…じゃあ、音楽ひとつよろしく。
 
O:はい。えーっと…じゃあ、Baby Dodds Trioというですね、ドラマーの方なんですが…その人の"Tootie Ma Is a Big Fine Thing"という曲を。
 
H:まったく知らないですね。
 
O:ニュー・オーリンズの方ですね。
  
 
Tootie Ma Is a Big Fine Thing - Baby Dodds Trio
 
 
H:いやー、聴くとすぐニュー・オーリンズだ、っていうのがわかるね(笑)
 
O:(笑)
 
H:民俗音楽だよね。ルンバ・ブギといったらもう、ね、ニュー・オーリンズの十八番ですよね。この人は知らなかったですけどね、Baby Dodds。
 
O:Baby Dodds。
 
H:ニュー・オーリンズのドラマーっていうと、アール・パーマー(Earl Palmer)がすごい有名ですよね。
 
O:この人はもっと、ぜんぜん前の人ですね。1890何年生まれ…
 
H:えー、すごい…なるほど。
 
 では、えー…悪夢。
 
O:悪夢…(笑)何があるかな…トイレの夢はよく見ますね。
 
H:あ、聞きたいな。漏らしちゃうやつ?違うか(笑)
 
O:いや…なんて言うんですかね…個室に入りたいんですけど、すごい幾何学的な形のトイレで、どっから見ても外から見えちゃうじゃん、っていうような個室ばっかで、ここじゃできねぇな、と思って別のフロアのトイレに行って、そこもちょっと、ああ…みたいな(笑)
 
H:(笑)
 
O:そういう、ずっとトイレに行きたいんだけど入れない、って言う夢はよく見ます。
 
H:起きるとそれ、おしっこしたいんじゃないの?そういうわけでもないの?
 
O:いや、あの…トイレ行こう、って言う感じではありますけど、もちろん。
 
H:でしょ?だいたいそうなんじゃないのかな。んー。
 
O:そういう、個室に入れない夢は見ますね…
 
H:あ、ホント。まあ、異次元の世界だね。なるほどね…
 
O:おしっこしようとしてなんか、こう…小便の…
 
H:小便(笑)
 
O:おしっこの…(笑)
 
H:小便という言葉を久しぶりに聞いたような気がする(笑)
 
O:なんか、東急文化会館かなんかのトイレに入るんですけど。おしっこしようとすると、壁が無いんですよ。無くって、崖っぷちになってて…
 
H:あー、なんかいいね、夢っぽくて。
 
O:下は川が流れてるんですよ。
 
H:あー、いいねいいね!(笑)
 
O:で、おしっこすると、なんか…おしっこしてるんだけど、おしっこと一緒に自分が…
 
H:おしっこって何回言った?(笑)
 
O:(笑)トイレの中に入ってっちゃって、下の川に…まあ下水だったのか。
 
H:ちょっとねえ、すごいわ。負けるわ。
 
O:流れていくんだけど、その川べりに死体がいっぱい積んであって…っていう、そういう夢を昔見ましたよ。
 
H:地獄のようだ…いやー、おもしろい。
 
O:それ、その頃ですよ。松坂慶子に刺青…彫った頃に見た夢ですね(笑)
 
H:そうか…(笑)いや、おもしろいよ。
 
O:ホントにそういう夢ばっかを、見てる時期が…
 
H:そうか、ライバルがここにいたか…誰にも負けないと思ってたんだけど(笑)
 
O:でも、文化会館のトイレっていうのはたぶん…実際に個室に入った時に、隣の個室から本を差し出されたことがあって…
 
H:それは夢じゃなくて?(笑)夢より怖いね。
 
O:夢じゃなくって、その…ゲイ雑誌っていうんですかね。
 
H:ゲイ?アッー…そういう経験があるわけね。
 
O:差し出されたんですけど、足でそーっと押し戻した経験があるんですけど。
 
H:映画っぽいな、それ、なんか…おもしろい経験いっぱいしてますね。
 
O:でも、そのテーマでもう一個あって。それは現実ですけど。シードホール(SEED HALL)で、ルビッチ(Ernst Lubitsch)の『天国は待ってくれる(Heaven Can Wait)』を観に行ったんですよ。
 
H:うんうん。
 
O:で、座ってたら、隣の男の人の方からピチャピチャ音がし出して…香水の匂いもし初めて、首周りに香水を付け始めて…映画中ですよ?で、なんかイヤだなぁ、と思ってたら、そっと手の上に手を乗っけてきて…
 
H:男性にモテるね。うらやましいね。
 
O:いやー……
 
H:それが女性だったらね。
 
O:握り返すところですけど…いや、わかんないけど…(笑)
 
H:そうなんだ(笑)
 
O:焦りましたよ。でも、映画終わるまで(席を)立たずに、身体を真横に向けて…映画終わって即行帰った…
 
H:手はずっと握られてたの?
 
O:いやいやいや、振りほどいて…
 
H:コミュニケーションはないわけね、会話とか。
 
O:ないですよ!
 
H:…自分のを話す気力が無くなっちゃった、もう。
 
O:いやいや(笑)もう1個あるじゃないですか。
 
H:音楽聴いたらね、じゃあ。
 
O:じゃあですね…これも絶対に知らないと思うんですけど、Dr.ペドロ・ホセ・ロボ(Dr. Pedro Jose Lobo)というですね…
 
H:紛らわしい名前だ。
 
O:この人よくわかんないんですけど、マカオの実業家…
 
H:マカオ!アジアだ。
 
O:アジアですね。で、マカオを牛耳ってた人らしくて、金の密輸とかを戦争中にやってて…
 
H:悪いやつだ。マカオのマフィアみたいな。
 
O:イアン・フレミング(Ian Fleming)が、ある時マカオまで来て、この人に取材をして…
 
H:おお!(『007』の)ゴールドフィンガー
 
O:ゴールドフィンガーに出てくる、オッド…なんて言うんだっけ?オッドジョブ(Oddjob)だったかな、その辺の金の密輸の話とかを参考にしたという…そういう、ホセ・ロボっていう人がいて。その人が音楽も作ってるんですね。
 
H:やってるんだ。参っちゃうなあ。
 
O:その人のですね、"Jumpa Rhumba"という曲を。
 
 
Jumpa Rhumba - Dr. Pedro Jose Lobo / Alvy West & His Orchestra
 
 
H:いや、なかなか…おもしろいよね(笑)
 
O:演奏はニューヨークのアルヴィ・ウェスト(Alvy West)っていう楽団が…あの、(フランク・)シナトラとかのバックとかもやっていた楽団が。
 
H:で、歌ってる人がトビーなんとか(Tobi Michaels)っていう人、女性がいて…じゃあ、そのペドロさんはなにやってるの?
 
O:さあ…曲を書いたのか…
 
H:んー…ま、当時のそういう人たちって陽気だね。
 
O:そうですね。
 
 
H:あのね…時間が無くなったんで、悪夢みたいな話は今度また、ね。
 
O:えー?(笑)
 
H:長いんだもん。
 
O:長いんだ…(笑)
 
H:長いんだよ。最初から最後まで話すと30分くらいかかる…(笑)
 
O:じゃあ、特集ですね(笑)
 
H:そういえば昔、「夢、それはドリーム」っていうのをやってたじゃない。
 
O:はい。
 
H:それでちょっと、作ってみようかね。久しぶりに。
 
O:ぜひ、お願いします(笑)
 
H:SE込みでね。まあ、じゃあ、きょうはそういうことで。最後の曲、になるかな。うん。お願いしますね。
 
O:はい。じゃあ、先週がジャンゴ(・ラインハルト)だったので…ガロート(Garoto)という、ブラジルの、同じ時期のギタリストで…
 
H:ほほう。
 
O:"Tristezas De Um Violao"、「ギターのかなしみ」という…
 
H:ちょっと期待しちゃうな。では、これを聴きながら、また来週。
 
 
Tristezas De Um Violao - Garoto