2022.03.13 Inter FM「Daisy Holiday!」より

 

daisy-holiday.sblo.jp

 

H:細野晴臣です。きょうは初めてお会いする…カクバリズムさんから紹介されたVIDEOTAPEMUSICのおひとりです(笑)

V:どうも、VIDEOTAPEMUSICです(笑)よろしくお願いします。

H:[名前が]長いよね(笑)「VIDEOさん」って呼ばれてるの?

V:VIDEOさん、VIDEOくん…やっぱりそうなっちゃいますね。

H:あ、VIDEOくん、いいかもね。今まで僕はぜんぜん知らなかったんですけど、デビューしたのは最近なんですか?それとも随分長くやってるの?

V:音楽自体は細々とずっとやってたんですけど、カクバリズムからCDをリリースしたのは2015年。そこからアルバムを3枚出して…という感じですね。

H:2015年か。けっこうひと昔前な感じがするね。

V:そうですね、今となっては。

H:で、また今…新作が出てるんですかね。

V:特に新作みたいのは出ていないんですけど、去年は色々とシングルをいっぱい出したりとか…

H:えーと…じゃあ、ご挨拶代わりに1曲聴かせてもらおうかしら。

V:どうしましょう。じゃあ、去年作った新しめのにしましょうか。

H:うん、そうしよう。

V:VIDEOTAPEMUSICの"嬉野チャチャチャ"。

 

 

嬉野チャチャチャ (feat.mei ehara) - VIDEOTAPEMUSIC

 

 

H:これはなんか、嬉野が喜んでる感じでいいね(笑)

V:嬉野温泉に滞在して…

H:滞在中に作ったの?

V:滞在中、そこにいる人たちに楽器を弾いてもらったり。温泉があるので、お風呂で風呂桶を録音したり。宿の番頭さんにカスタネット叩いてもらったり。

H:その宿屋で録ったの?そんなの聞いたことないよ(笑)

V:はい、もう全部現地で…

H:えー!じゃあバンドじゃなくて打ち込みが多いのかな。

V:そうですね。音としてはそういう生楽器…お祭りで使うような太鼓だったり、町にあった楽器とかをいろいろ、レコーダーで録音させてもらって。それを打ち込みで編集して。

H:へぇ…それは音を録りに嬉野温泉に行ったの?それとも嬉野温泉にいて作りたくなったの?

V:もう、嬉野温泉で作ってくれ、という依頼を受けて…もともと何回かライヴで行ったつながりがあって仲良かったので。

H:いいなぁ…

V:もしよかったらしばらく…1週間滞在して嬉野の曲を作ってくれ、と言われて。

H:いい仕事だね。

V:いい仕事でした(笑)温泉に浸かって…

H:温泉と仲良くなりたいよね(笑)

V:そうですね、毎日温泉に浸かってましたから…(笑)

 

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H:そうやって、あちこちでフィールドワークっぽく作ってるんでしょう?

V:そうですね。まぁ結果的にそうなった、という感じですけど。このコロナ以降の2年間はそういう各地での滞在、フィールドワーク…楽曲制作みたいなのがけっこう多くなってて。

H:東京の人ですよね。

V:もうずっと東京ですね、僕は。東京の西の方です。福生とか立川とか、狭山とか。

H:へぇ。狭山は埼玉だけどね。

V:そうですね。埼玉との境目ぐらいですね。

H:いいね。境目大好き。音楽も境目っぽいよね(笑)

V:そうですか(笑)もともと僕は映像をやってたんで。その流れで、遊びで作っていた音楽がこういう風に形になってきたというか。

H:そっちがおもしろくなっちゃったんだ。でも、映像作家としては色々やってるわけですか?

V:そうですね。例えば細野さんが参加、というかミックスされてたnever young beachの安部くん(安部勇磨)のミュージックビデオを作ったり。

H:あ、すごい近いんだ。

V:あとはceroの映像はずっとやっていたりして。

H:それも近いな。

V:そうやって遊んでいるうちに、いつの間にかミュージシャンになっちゃいました。

H:なるほど。じゃあ、自分のも作ったら映像化してるわけですか。

V:そうですね。自分のは自分でミュージックビデオを作ったり。

H:じゃあYouTubeとかで見られるってこと?

V:そうですね。

H:ぜひぜひみなさん…ちょっと見てもらいたいな。

 

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H:えーと…お名前はマナベさんね。

V:そうです。本名は普段言わないから馴染みがないかもしれないです(笑)

H:じゃあVIDEOくん、でいいかな?(笑)

V:はい、どちらでも…(笑)

H:なんでVIDEOTAPEMUSICという名前なの?

V:本当に元々を言うと…音楽を宅録で始めようとしたときに、音楽の機材をなにも持ってなくて。でもビデオカメラだけ持ってたんですよ。だからビデオカメラで全部の楽器を録音して音楽を作り始めて。

H:それはめずらしい(笑)

V:でも、そこからさらに発展して…ちょうど音楽を始めた時期がVHSからDVDに移り変わる時期だったので、近所のレンタルビデオ屋とかに行くと古いVHSがすごく安い値段で叩き売りされていて。

H:はいはい…そういうときがあったね。

V:たぶん2004年から2005年くらい?それをたくさん買い集めて、ヒップホップの人がレコードでやるみたいにVHSをコラージュして音楽を作れないかな、みたいになって…そうやって作り始めて。

H:なるほど…そのVHSの元ネタは音楽モノだけじゃなくて、なんでもいいわけね。

V:なんでもですね。これまでやってきたものだとホームビデオとかも、最近は。いろんな街に行って、その街の人からホームビデオを集めて…家族旅行とか運動会とか(笑)

H:なんか楽しそうだよね(笑)

V:嬉野に行ったときも嬉野に住んでる人のホームビデオをもらって。子どもの発表会で…幼稚園とかで子どもが"おもちゃのチャチャチャ"を歌ってるところとかもさっきの曲で使ったり。

H:入ってたね。それで「チャチャチャ」なのか。へぇ…おいくつなの?

V:38歳ですね。30代後半です。

H:そうですか。じゃあやっぱりビデオの時代、VHSの時代はけっこう…

V:そうですね。幼少期はもう、レンタルビデオ屋全盛期みたいな感じで。近所にいっぱい…

H:僕もよく通ったな。そのVHSも自分で所蔵してたりするんですか?

V:いっぱいありますね。今は家に置ききれなくて…カクバリズムの事務所に全部並べてあります。

H:それはすごく貴重だね。例えばテレビ番組も録画したり。

V:したのもあって…そうですね。けっこう、みんながくれるんですよ。こういうことをやってると言うと。

H:「VIDEOくん、これあるよ」って。さすがVIDEOくんだ。

V:そうそう(笑)家にある要らない、テレビ番組を録画したものとか。そういうのが自然と集まってくるから。それを使って色々やったり。

H:そうか。じゃあ、いまだに再生装置は大事だね。

V:そうですね。もう生産は終了されてるから…中古であるやつを買っておかないと。

H:まだ手に入るんだね。

V:まぁ、辛うじてという感じですね。

H:いやー、僕もそれがすごく気になってて。けっこう僕も持ってたんで。

V:やっぱり再生機が壊れて、もう再生できないという人が多いですね。テープはあるけど再生できないからもらってくれ、みたいな。

H:そうだよね。そうか、じゃあ僕もあげればいいのか(笑)

V:本当ですか?(笑)ぜひぜひ…

H:それが役に立つかな。

V:もう、めちゃくちゃありがたいです…

H:まだ捨ててないんで、あるんだよね。いっぱい。保管が大変だもんね、あれ。大っきいから。嵩張って。

V:それがどんどん…気が付くと家に集まってきて。

H:なるほど。それはVHSもそうだけど、ベータになったり、次は8mmビデオになったり。それも全部あるわけね。

V:そうですね…ベータは再生機器がないんですけど。

H:そうなんだ。

V:ベータでもらったときは業者にデータ化をお願いしたりとか。

H:へぇ!そこまでやるんだ(笑)

V:おもしろそうなビデオさえあればなんでもやりますけど(笑)

H:やっぱり、「VIDEOくん」だな。

V:(笑)

 

H:じゃあ、もう1曲聴かせて頂いていいですかね。

V:どうしましょう…じゃあ『世界各国の夜』という、カクバリズムから最初に出したアルバムから。

H:いいタイトル。

V:"Hong Kong Night View"。

H:いいタイトル。

 

 

Hong Kong Night View (feat.山田参助) - VIDEOTAPEMUSIC

(from『世界各国の夜』)

 

 

H:へぇ…これは、歌ってる人はどなた?

V:歌っているのは山田参助さんという…今は漫画家として活躍されてる人なんですけど。『あれよ星屑』という、戦中から戦後を舞台にした…

H:すごいね。

V:彼が…その山田参助さんが音楽もやられてて。「泊」というグループで。

H:みんな器用だよね(笑)

V:こういう歌唱ができる方なので。お願いして。

H:独特ですよね。これは…香港に行ったんですか?

V:いや、これは行ったことない時期に全部想像で作ってて(笑)そういう香港を舞台にした映画とかの音素材をいろいろ切り貼りしたり。

H:あー、そういう音入ってるよね。そうかそうか。

V:生楽器だったりも、完全に想像の香港です(笑)

H:なるほど。いや、そのほうが想像が膨らむよね。でも行くとね、やっぱりこんな感じですよね(笑)

V:(笑)

H:いい街なんだけど、なかなか今は行きづらくなっちゃったね。

V:そうですね。アジアの各地、いろいろ行きたいところはいっぱいあるけど行けないですね。

 

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H:あの…VIDEOTAPEMUSICという名前を最初に聞いたときに、すごくアヴァンギャルドな人だと思ったんだよね。テープミュージック…スティーヴ・ライヒSteve Reich)みたいな。

V:でも、最初はアヴァンギャルドな感じの…もうメロディーとかリズムとか無いような。ほんとにサウンドコラージュみたいな感じだったんですけど。

H:それも聴いてみたいですよね。

V:それはでも、ひどいもので…(笑)それが徐々に音楽というか、ポップスの形というか。歌が乗ってきたり。

H:いま聴いた限りではすごくエキゾチックなムードだよね。根っこにそういうものがあるんですか?

V:そうですね。好きですね。もともと…子どもの頃にVHSで観た特撮映画みたいな。「モスラ」とか。そういう世界観から来てるのかな、という自己分析をしてますけど。

H:なるほどね。外国ものではなくて日本の感じがあるよね、たしかに。

V:あとは日本の昔の邦画の中のダンスホールで演奏してるバンド、みたいな。そういうイメージだったり。

H:そういうシーンあるよね。日活映画とかね。アクションもので。ああいうのすごく好きなんだよね(笑)クラブが出てくると。

V:そういうシーンが出るとすごく嬉しくなっちゃって。その瞬間ばかりをループした…みたいな気持ちの曲を作ってる感じですね。

H:いや、僕もかつてそういう趣味だったな、と。いま思い出してるところで…(笑)だいぶ歳を食って変わってきましたけどね、僕も。

 

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H:ライヴも…近いんでしょう?

V:一応、3月18日にワンマンライヴを予定しております。

H:まぁ、ひとりのグループだからワンマンだろうけど(笑)

V:でも半分はバンド編成で…打ち込みも流しつつ、生楽器のメンバーもいて。

H:へぇ!ちょっと見てみたいね。

V:総勢何人だろう?1,2,3,4,5…8人かな。

H:あ、すごいね。バンドを組んじゃってもいいくらいだね。

V:そうですね。それこそ一度、ceroに生バンドで演奏してもらったりもしましたけど。

H:へぇ。どこでやるんですか?

V:これは日本橋の三井ホールという。

H:お!いいところでやるね。

V:そうですね。ライヴでも映像を使ってやったりするので、ホールだと映像を映せたり…劇場っぽく座って映画を観る、みたいな感じで。もちろん、ごちゃっとしたところでスタンディングで踊る感じも好きですけど。今回はそういう、椅子のある場所でやろうかな、と。

H:いや、いい劇場だからね、クラシックで。じゃあもう1曲、お願いします。

V:では去年出したシングルの曲を行きましょうか。"Funny Meal"。

 

 

Funny Meal - VIDEOTAPEMUSIC

 

 

H:"Funny Meal"って…奇妙な料理?これはたぶん映像がそんな感じなんだろうね。

V:そうですね。そういうセリフ…「Funny meal」と言ってるセリフを使ってて。

H:これは映像が見たいね。どんな奇妙な料理なの?

V:まぁ、いろんな…でも、自分が食べてるものも他の国の人から見たら奇妙な料理だったりする、みたいな。

H:へぇ。なにが好きなの?

V:僕ですか?なんだろう…なんですかね?(笑)

H:まぁ普通なんだろうけどね(笑)

V:でも中国の火鍋とか好きですよ。アジア食材屋とかによく行って、本気の火鍋とかを家で作ったりしてます(笑)

H:あ、なんだ。やっぱりちょっと変わってるかもしれない(笑)この録音は…ここに書いてあるけど、青梅の「スナック 夢」というのは?

V:あ、ミュージックビデオを撮ったのが青梅にあるカラオケスナック。国道沿いにいきなりある…

H:なんでそこに行くことになったの?

V:ミュージックビデオのロケーションをそういうカラオケスナックでやりたいと思ってて。

H:そっか。探したんだね。

V:そう、探して…青梅のほうは僕も東京の西のほうだから馴染みがあるというか。あの辺の周りの茶畑を含めて…土地勘がある場所だから、そっちで選びましたね。

H:これはなに?クレイジーケンバンドが関わって…どうなったの?

V:この曲のミュージックビデオを撮ったのと同じ場所でクレイジーケンバンドのミュージックビデオを…

H:あ、作ったんだ。へぇ。

V:この場所が好きすぎて…気に入りすぎて使いまわしちゃったんですけど(笑)

H:そういう動画の依頼はけっこうあるんですか?

V:そうですね、ミュージックビデオも色々やってて…ロケハンが大好きですね(笑)撮影場所を探しに行くのとか。

H:楽しそうだね。この2年間は楽しく生きてたんだね、じゃあ(笑)

V:いや、そんなことはないですけどね…(笑)その中で一人で出かけたりはしてました。おとなしく…

H:そうか。じゃあこれからも続くね、これは。

V:まぁ、細々と続けていきます…(笑)

H:今どきこういうエキゾチックな音楽ってそんなに多くないから…僕にとっては新鮮でしたね。

V:ありがとうございます。

H:みんな深刻になってるしね。

V:そうですね。気持ちは深刻ですけどね(笑)

H:あ、そうなの?それはわからなかった(笑)気持ちが深刻でも、音楽を作るとこうなるというね。見習わなきゃいけないね。

V:いやいや…まぁ根がそんなに明るい人間ではないので。

H:まぁ、そうだろうね(笑)

V:いろんなところに旅行に行ってもだいたい一人で過ごしちゃうので…

H:あ、ほんとに?まぁそのほうが…想像力が豊かなんでしょうね。

V:そうだといいですね…

H:そうだと思いますよ(笑)

 

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H:じゃあ、今月の18日ね。三井ホール。ぜひ、みなさん。僕はちょっと行けないかもしれないけど…映像のほうを見てみますので。また来てください。

V:はい、ありがとうございます。

H:VIDEOくんでした。

V:ありがとうございました(笑)