2021.12.12 Inter FM「Daisy Holiday!」より
H:こんばんは。細野晴臣です。きょうは…1年ぶりですね。今頃の時期に来て頂いていた、くく?ここ?くくだね(笑)
2人:(笑)
原田:くくくです。
H:くくくだね(笑)原田郁子さん、角銅真実さん。いらっしゃいー。
2人:おじゃまします。
H:だいたい2年前もこの時期に…年に一度来てくれるね(笑)恒例になってきたね。
原田:今年が終わるなぁ、と思うと…
H:そうすると思い出すのかね(笑)最近はどうですか?一人ひとり近況報告をお願いします。
角銅:どうですか?
H:じゃあ、郁子ちゃんからですね。
原田:えーと…クラムボンというバンドをやってるんですけど、そのライヴが…今年のいつぐらいからかな?だんだん少しずつできるようになってきて。3本だけツアーをやることが…
H:これから?
原田:ううん、もう秋に終わって。去年延期していたものを…
H:あ、もう終わったんだね。延期して今年になった…みんなそうやってるなぁ、最近。ライヴ活動がだんだん増えてきていい傾向ですよね。
原田:このまま続いてくれたらなぁ、と思うんですけど。
H:そうなんだよなぁ。いま日本はすごく安全じゃない?でもなんか、世界では変なことが起こってるよね。なんかイヤな感じだよね。
原田:どうなるんだろう…
H:それでは角銅さん。
角銅:私も旅してライヴをする機会が増えて…新幹線とか飛行機とか。
H:お、乗ってる?
角銅:乗ってどこかへ出かけて。
H:それはグループで?
角銅:はい。サポートしているバンドだったりとか、ソロでとか。
H:どういう場所に行ってますか?
角銅:最近は大分の中津というところに…
H:温泉?
角銅:温泉入りました。
H:温泉行きたい…行ってないんだよね。
原田:行ってないですね…行きたいなぁ。
H:温泉が日本の中でいちばん好きかもなぁ。僕はこないだ大阪に2回ほど行ってて…11月になったら急に忙しくて。大阪に1週間いたのね。
原田:へぇ!
H:そのときにチンチン電車に乗ったり。大阪っていいねぇ、と思って。はてしなく続いてる商店街があって…ブラブラ歩いてると8000歩ぐらいになっちゃう(笑)歩ける街だなぁと思って。
原田:そんなに長く滞在するのってひさしぶりですか?
H:外国みたいだよね、1週間ひとつの街にいるって。2年前はニューヨークとかにそのくらい行ってたけど、国内は…例えばライヴで行くと1泊とかで移動しちゃうでしょう?だから1週間なんて初めてで。街って1週間ぐらいいるとおもしろい。発見があって。
原田:ようやく馴染んでくるものがありますね。
H:そうそう。だからついお客さんの前で「住みたい」なんて言っちゃって…
角銅:(笑)
原田:それはうれしいだろうなぁ。
H:んー、なんか喜ばれたけど、どこ行っても「住みたい」って言ってるから(笑)
2人:(笑)
原田:そう、少し前に…実家が福岡なんですけど、やっと、2年半ぶりぐらいに帰れました。
H:みんなそうだよね。みんな帰れない感じが続いてたよね。
原田:ちょっと帰れる兆しがあるかなと思うと、もうちょっと待とうかな、みたいな。短くて、お墓参りに行ったり親戚のあいさつに行ったら終わっちゃったんだけど…(笑)でも嬉しかったですね。
H:ご両親は?
原田:うん、元気です。
H:あー、よかったね。角銅さんは東京でしたっけ?あれ?
角銅:私は長崎です。
H:そうだ!いいところだよな、皆さん。九州人だね。
原田:帰れてる?
角銅:帰れてないんですよ。もう、しばらく帰ってない…ですね。
H:そういう人多いね。僕は東京だから、いつでも帰ってる状態なんだけど(笑)
原田:住んでいた家というか場所はここ!っていうのがあるんですか?
H:うん、ここだよ。
角銅:!
原田:ここ?!
H:うん。このスタジオじゃないけどね(笑)この場所に古い家があって、その地下を掘ってスタジオにしてるけどね。ここで育ったんですよね。
原田:へぇー!
角銅:きょう、このスタジオに来る前に2人で周りをずーっと散歩してて。
原田:そうそうそう。
角銅:細野さんって小さなとき、この辺で遊んでたのかな?とか…
H:遊んでたよ(笑)いまイチョウ並木がすごく…ちょうど盛りなのかな?
角銅:うん、きれいでした。
H:僕が子どもの頃はあの道がなくて、イチョウもなかったの。わりと長屋っぽい家が並んでて情緒があったんだけど。
原田:なんか、坂が多くておもしろいですね。
H:まぁ、東京は坂が多いよね。大阪は真っ平だね(笑)
角銅:あー、たしかにそうかもしれない!
H:京都もそうだし、ニューヨークとかもね。真っ平なところにみんな街を作るんだね。東京ってめずらしい。
原田:あの映画をね、それぞれ観てきました。昨日。
H:あ!観てくれたんだ!
角銅:まだ余韻の中に…
H:いやー、なんか…どうでしたかね。
角銅:なんて言っていいかわからないんですけど…ライヴで曲が終わるたびにこうやって拍手してました(笑)
H:ほんと?うれしい(笑)観てる感じになるもんね。
原田:不思議な気持ち。
H:なんとなくわかる。僕もそうだよ。すごく不思議。
原田:細野さんもですか?ご自身で?
H:なんか現実感がないんだよね、あのライヴ映像とかね。やったことは確かだけど(笑)その後、2年間モードが変わっちゃったから。遠い存在になっちゃって、あの時期が。夢を見たみたいだね。たぶんそうなんじゃないかな?夢なのかもしれない(笑)
角銅:(笑)
H:現実でやったという実感がないんだよね。
原田:お客さんの表情とか歓声とか、それを見てるだけで胸がいっぱいになってしまって。
角銅:ライヴを待ってる人とかね。
H:それは僕もちょっと感激しましたけどね。初めて知った気がする。彼らがなにを考えてるか。
原田:そっか。今はきっとSpotifyとかで…細野さんの音楽を何かのきっかけで知ったときに、これまでのアルバムとか音がぜんぶそこには広がってるという…お客さんたちの表情を見て自分もその感覚になってみて。ああ、いっぱい入口にがある、楽しいだろうなぁ、と思いました。
H:でっかい遊園地みたいなもんだね(笑)
原田:え!これも細野さん?これも細野さん?という。
H:自分ではよくわからないんですけど。ひとつ言えるのは、もう50年もやってるとそうなっちゃうっていうことだね(笑)当時はインターネットもないし、誰も聴いてくれていないと思ってやってたわけだから。ありがたいよね、今の時代はね。
原田:音楽って出会うタイミングはそれぞれなんだけど、いつもそこには入り口があって…時間とかを超えて出会えるのかな、と思って。うれしかったです。
H:それはもう、僕もうれしいです。だから、皆さんも聴かれてるからね。
2人:!
H:気を付けないとね(笑)ぜったい聴いてるから、世界中で。だから手を抜いちゃダメっていうこと(笑)
原田:聴いてくれていた人の存在が初めてわかった、という感じですか?あの映画は。
H:そう。ほんとにそうです。漠然としてたからね。なんとなく、日本のシティ・ポップが人気あるというのは知ってたし、その中で僕は色々やってたから皆さんも名前を見つけるだろうし。そういうことは知ってたけど、具体的には…最初はね、ヴァンパイア・ウィークエンド(Vampire Weekend)が"花に水"っていう僕が忘れていた曲を使ってくれたりしたのが2018年ぐらいだったかな。そこら辺から具体的になってきた。で、ロンドンにある放送をやってる組織があるんだけど、このラジオも時々そこでかかったりするっていう。
2人:へぇ…
原田:おーい(笑)
角銅:おーい(笑)
H:(笑)
2人:(笑)
H:日本語だけなのによくやってくれてるなぁ、と思うけどね。でもすごく興味を持たれてる。だから、なんだろう…うかうかしてられないっていう感じ(笑)
H:…あ、静かになっちゃった(笑)
2人:(笑)
H:なんか曲、聴かせて。
原田:ありますか? 角銅さん。
角銅:ありますか?
H:譲り合い(笑)日本の文化ですね。
原田:じゃあ、今年作った曲を聴いてもらってもいいですか?
H:聴きたいです。
原田:寺尾紗穂さん。
H:うんうん、寺尾くん(寺尾次郎)の娘さんね。
原田:音楽家で、ピアノと歌の方ですけど…ライヴでは時々いままでも対バンしたり、一緒に連弾したことはあったんですけど。初めて曲を一緒に作って。
H:へぇ。
原田:寺尾さんと原田郁子の連名で…え、聴いてもらっていいですか?
H:聴きたいから(笑)
角銅:(笑)
原田:1曲あると思いますが…これは傘を全部手作りで作っている人たちがいて。雨傘も日傘も…
H:傘?へぇ!浪人みたいだね。
原田:そのイイダ傘店という傘屋さんがなかなか…今までは展示会をしてたのがコロナの所為でできなくて。で、映像で自分たちの新作を発表して受注するという初めての試みで、それに併せて傘の曲を作ったんですけども。それぞれの家で往復書簡みたいに…歌詞はぜんぶ寺尾さんが書いてくれて、それにちょっとずつお互いがメロディーと曲を…
H:楽しそう。いい方法だね。
原田:じゃあここまでやったから続きをどうぞ、という風に。なのでずーっと完成させないまま…何日かパパパッと往復してできた曲です。
H:それはどこで完成した、って決めたの?
原田:できたかな?ってメールしたら「できたね」って(笑)
角銅:(笑)
H:いいよね。理想的。
原田:じゃあ、聴いてみてください。
H:お願いします。
H:いやいやいや…なんともやさしい歌です。
原田:"傘の向こう"という曲でした。
H:いいね。傘が好きになるね。
原田:曲作りはそれぞれの家だったんですけど、スタジオに行って作ったパートは…ピアノを弾いたり。で、家の音を使うパートもあったり。
H:いろんなモードが重なっておもしろいな。
原田:寺尾さんの声は本当にファルセットできれいに…空が高いようなイメージがわく声で。自分はとってもくぐもってるんですけど、その2人が声を出したときにちょっと陰影が出てくるというか…天気みたいに、急に曇ってきたなぁ、と。
H:なるほどね。変化があって…次どうしようか、って作った感じがすごくいいよね。
角銅:刺繡みたい。
H:そうそう。
原田:去年、自分のおうちでやってるときに…ミュートピアノ?アップライトとかで音を少し消音にする。あの音がすごくちょうどよくて。最初といちばん最後のアルペジオとか…
H:不思議な響きがしていたところだね。
原田:丸みのある…たぶんフェルトがハンマーの間に来るから、ちょっと丸くなるんだと思う。
角銅:なんかコショコショって音が…(笑)
原田:ありがとうございます。
H:どうもありがとう。
H:じゃあ次はね、角銅さんの番です。
角銅:はい。私自身の曲じゃないんですけど、ラッパーの環ROYさんという方の曲をリミックスしてください、と言われて。したことなかったんですけど、声だけ残して…"憧れ"という曲が…
H:それはちょっと楽しみだね。
憧れ (角銅真実 Remix) - 環ROY
H:…おもしれぇ(笑)こういうラップ聴いたのは初めてかも。
角銅:環さんは…このリミックスをしてくれませんか?というお便りをくれるまではあんまりお話したことなくて。でもライヴはすごく好きで、何回か話したぐらいで。
H:環さんが頼むということはこういう感じを欲してたってことかな?
角銅:どういう感じにしたかったのかわからないんですけど、環さんが聴いたときに驚くか笑ったらいいな、っと思いながら…
H:どうだった?
角銅:なんか、笑ってました(笑)楽しい感じ!
H:笑ってた?新鮮だよ。
原田:おもしろい。
角銅:これも家でマイク1本で…ピアノとかは録って。
H:あ、ほんと?弦の音は?
角銅:これはチェロで、チェロは家に来てもらって、それもマイク1本で…
H:なんか、風の音みたいのが入ってたね。
角銅:~~~…息の音(笑)
原田:すごい、耳のそばでしたよね(笑)
H:そうそうそう(笑)
角銅:たまにボッ!とか鳴ってるかも(笑)
H:いやー…斬新ですね、皆さん。
2人:(笑)
H:年末だけど、もう来年の話になっちゃうよね。どうしてるのかね、来年。
角銅:どこか…遠くの国に行ったりもしたいですね。
H:そうだよね。なんか、今のナントカって変異株でまた行けなくなりそうで。なんなんだろう、これ。まぁでも日本はなんとなく安定して…国内は大丈夫なのかね?
角銅:祈ります。
H:ね。お祈りしよう。では、時間が来ちゃったね。
角銅:あっというま…
H:また来年の今頃…とは言わず(笑)何度も来てください。
原田:ありがとうございます。
H:原田郁子さん、角銅真実さんでした。どうもありがとうー。
2人:ありがとうございました。