2021.08.08 Inter FM「Daisy Holiday!」より
H:はい、こんばんは。細野晴臣です。えーとですね…ホントに久しぶりなんですが、ゲストに…久保田麻琴くん。いらっしゃい!
久保田:こんばんは…というか、おはようございます。
H:どっちとも言えないね。時々、街で会うんだよね(笑)
久保田:会いますね(笑)
H:けっこういろんな人に会ってるんじゃない?
久保田:いやいや、細野さんくらいですよ。なんか年に1,2回ね。
H:会うね、突然。
久保田:駐車場とかね。
H:あとカフェね。
久保田:カフェの入り口とかね。隣に座ってることとかもありますもんね。
H:あるね。なにしろお互いにお酒を飲まないもんで。
久保田:飲めないですね。
H:だからカフェなんだよね。コーヒー好きだから。
久保田:コーヒーですね。
H:まぁそういうことで。6月にHarry & Macが…久保田くんがマスタリングしてくれたんですよね。
久保田:ありがとうございます。
H:元はバーニー・グランドマン(Bernie Grundman)という…元々良い音だったというか。
久保田:大変でした(笑)ハードル高かったですね。
Night Shade - Harry & Mac
(from『Road To Louisiana』)
H:それから…いろいろ出るよね。夕焼け楽団も。
久保田:去年は昔のトリオ(トリオ・レコード)で出てた初期の3枚がまとまって出て。その前のデビューアルバムも去年出たのかな?今年か。
H:うん。
久保田:とにかく、去年から今年にかけてどどーって出て。で、1977~1979年の最後のほうの夕焼け楽団がコロムビアなんですけど、これもマスタリングが終わって。8月ですね。もうすぐ出る…
H:もうすぐだね。いやー、アナログ盤がいっぱい出るね。
久保田:ですね。レコード屋行ってないですけど、ヴィニール専門の店とかある…おもしろい。
H:あるみたいね。みんなよくプレーヤー持ってるなね(笑)
久保田:プレーヤーも持ってるし、[レコードの]値段もね。昔の…下手したら倍ぐらい(笑)
H:そう、高いよな。
久保田:なかなかね…まぁでも珍しいものなので、ぜひ。少ない数ですから。
H:そうね。不思議な時代だよ、今は。
久保田:ですね。いろいろ不思議ですよね。
H:ホント不思議な時代だ。いやいや…
久保田:本当はもっと時間が欲しいんですよね、私。色んなことがあるので…制作の機材も一変わりしてますし。その勉強、というかチェックするだけでもう…
H:そうなんですよ。もうね、僕は出来ないよ。なにがなんだかわからないもん。
久保田:たしかに(笑)
H:だから情報をもらうとうれしいんだよね。
久保田:よく人に言うんですけど…昔、30年ぐらい前からMPCというドラムマシーンありますよね。ヒップホップの。
H:使ってましたね、皆さん。
久保田:あれ好きだったんだけど、さすがに時代が変わって。ちょうど20年ぐらい前…ハリーとマックの時ですよ。アナログからProToolsになったのが。
H:あれは何年だったかな。
久保田:2000年前後なんですけど…1999年かな。それまでのデジタルレコーダーというのは16bitだったんですね。それが24bitになって、ああ、それならいいか、と思って。
H:うん。
久保田:ちょうどハリーとマックがProToolsというコンピューターシステムの導入の年だったんですね。
H:そうかそうか。つい最近という感じもあるけどね(笑)
久保田:(笑)そこからもう、つい最近ですよね。もう20年経ちましたから。
H:まだProToolsだもんね。現役だよ。エンジニアもみんな使ってるよ。
久保田:そうですよね。で、そのProToolsを追いかけるようにもっと安くて効率のいいものがどんどん出てきて。
H:若者はAbletonというものを使ってたりね。
久保田:そうですね。でもそうこうしてるうちに、昔使っていたMPCが新しくなって。
H:新しくなったんだね?
久保田:なりましたね。ここ10年か5年のドラムマシン…というよりはサンプラーというんですかね?その進歩は…操作するのが昔は4輪車に乗っていたのが今はヘリコプターくらいの…(笑)
H:飛んじゃうんだ(笑)
久保田:飛びますね(笑)ただ、ここまでやれることが多いかぁ、と。もう音楽を作ってるのか複雑なプラモデルをやってるのか、ちょっとわからなくなってくる。
H:そうそう。音楽を作ろうと思ってそういうのをいじくり出すと、何作っていいんだかわからなくなっちゃう(笑)
久保田:なりますなります(笑)今は私、それのいちばんドツボで…
H:でも楽しいでしょ?
久保田:まぁそうですね。その迷いはとても楽しい。でも1年ぐらい前から、自分の[新作]アルバムをやるってある人に約束してて…1年経ちました(笑)
H:そうだよね。アルバム作るときに機材を更新したくなるよね。今はちょうどそういう時期。
久保田:なるんですよね。たぶんProToolsが20年で一回りして…飽きたというか、やり口が決まってきた、みたいなところがあるじゃないですか。それを壊したいんですよね、きっと。
H:わかるよ。ガラッとね、壊したいというか。
久保田:それで今、次々と機材を買っては…子どもみたいに(笑)
H:大変だね、それ(笑)お金かかるね。
久保田:あ、お金はね、昔に比べると全部安い。10分の1ぐらいになってる(笑)
H:そっか。ずいぶん安くなったね。
久保田:だからAmazonとかでポンポン買っちゃうんですよね。でも、やれることは10倍ぐらいすごいんで…
H:忙しいね。勉強する時間が。
久保田:楽しすぎてね。本当に。
H:うらやましい…というか、まぁ自分もそうなんですよね。
久保田:細野さんもけっこうリマスターとかやってますよね。
H:やってるねぇ。
久保田:こないだアメリカのライヴの…『あめりか』ってアルバムでしたっけ?
H:そうそうそう。
久保田:あれはツアーのときのミックス?
H:そう、そうなんです。あれは主にロサンジェルスのアルバムで…ここにあるんで持ってってください。
久保田:CDにもなった?
H:なった。
久保田:あー、両方なんだね。あ、ありがとうございます。
H:じゃあね、なんか聴かせてもらおうかな。持ってきてくれたんですよね。
久保田:どうしましょう。『ラッキー・オールド・サン』か『セカンド・ライン』という2枚のアルバムが70年代後半に出たコロムビアのアルバムなんですけど、どっちかですね…一つは細野さんの曲なんですよね。
H:なんだっけ?(笑)
久保田:"Roochoo Gumbo"(笑)
H:あー!
久保田:私が生涯憑りつかれているような曲…やってもやっても飽きない(笑)やっぱり『泰安洋行』のときの"Roochoo Gumbo"が本当にすごすぎて。
H:あれね、再現できないんだよね(笑)
久保田:レヴォン・ヘルム(Levon Helm)とかも参加したヴァージョンなんで、記念ヴァージョンですから…
H:そうなんですよ。それ聴こうかな…
久保田:これもね、なんか上手くいかなかったな…とずっと思ってて。だからあの頃のアルバムは30年ぐらい聴いてなかったんですね。でも、こないだリマスターするときに、まぁやるか…と思ってマスタリングしてたら、あ、なかなかいいじゃん、って(笑)
H:(笑)
久保田:と思うこともちょっとあったので。
H:時間によって聴き方が変わるからね。
久保田:そうですね。それは『泰安洋行』のマジックは当然ないわけですけど。
H:まぁ楽しかったよ、あれは。僕もいたよね?
久保田:そうだ、細野さん遅刻して…(笑)プロデュースの予定だったんだけど。
H:このいきさつをちゃんと説明しないとわからないでしょ?
久保田:そうだね。
H:レヴォン・ヘルムはザ・バンド(The Band)のドラマーで…もう伝説ですけど。もう亡くなってしまいました。それで…レヴォン・ヘルムがザ・バンドじゃなくて彼の…なんて言うんだろ?
久保田:えーと、なんとかオールスターズですね(笑)
H:そうそう(笑)
久保田:だからスティーヴ・クロッパー(Steve Cropper)とかね。MG'sのメンバー。
H:ボビー・チャールズ(Bobby Charles)もいたね。
久保田:そうボビー・チャールズも…あれは遊びに来てたのかな?
H:そうね、遊びに来てたんだろうね。ただの酔っぱらいだから(笑)
久保田:ブッカーT(Booker T. Jones)がいたりとか…ドクター・ジョン(Dr. John)はあのとき欠席でしたね。
H:そうだったね。
久保田:まだちょっと不良状態だったか…
H:弱ってたんだよ。メンタルが。
久保田:そうですね。
H:それで…あれは誰が声かけたんだろう。
久保田:あれはね…麻田さん、麻田浩さんがだいたい呼んでくれるわけですよ。で、夕焼け楽団が前座でした。
H:あ、そうだったんだね。
久保田:それで沖縄っぽい曲をやったらメインの人たちが「なにこれ?」って飛んで来るわけですよ。
H:うんうん。
久保田:「これは"ハイサイおじさん"という曲で…」って説明して。それでどっかのお店に繰り出して…なにかをかけたんですよね。『泰安洋行』かけたんじゃないかな?(笑)そしたらこれで行こう!みたいな話になって。そのままコロムビアの担当ディレクターに電話して、夜中にスタジオを押さえて…
H:そのときに僕のところにかかってきたんだよ。
久保田:そう。「細野さんプロデュースして!」。
H:突然だよ。寝ようと思ってたんじゃなかったかな(笑)
久保田:たぶん、もうYMOが始まってたんですよ。
H:そうだね。
久保田:だからアルファでなんかやってたか…だからそれはもう、遅れてもね。遅れてもというか勝手な無茶ぶりですけど。来て頂いて。
H:いやー、すごいメンバーだしね。ビックリしたよ。
久保田:そうだね。代わりにスティーヴ・クロッパーがその場を仕切ってましたけどね、さすがに(笑)
H:そうそう、リーダー(笑)
久保田:でもレヴォンが楽しく叩いてくれて。
H:で、"Roochoo Gumbo"をやったと。
久保田:そうですね。その後ね、喜納さん(喜納昌吉)たちとツアーをすることがあって。
H:うん。
久保田:ちょうどその録音をしてるちょっと後ぐらいかな。で、喜納シスターズですよね。スタジオに来てもらって。沖縄風のコーラスをダビングしてくれたんですよね。
H:そうだったんだね。
久保田:まぁちょっと、ずーっと恥ずかしかったけど。
H:うん。聴いてみたい。
久保田:久しぶりに聴いてみましょう。
H:ぜひ。
Roochoo Gumbo~Hoodoo Chunko - 久保田麻琴と夕焼け楽団
(from『セカンド・ライン』)
H:いやー、懐かしいというか…ボビー・チャールズの声がすごい印象的で(笑)
久保田:(笑)
H:なんかお酒飲みながらやってたよね。
久保田:たぶん(笑)「フィレー(file)」ってガンボに入れるスパイスなんですよね。それで「フィレー、フィレー」って…
H:そう言ってたんだ!今初めて知った(笑)
久保田:で、言い過ぎたんでスティーヴ・クロッパーが「そんなに入れたら不味くなるよ」って言ってた…(笑)そういうしょうもない記憶がありますね。
H:そうなんだ(笑)おもしろい…
久保田:おもしろい人たちだったね。レヴォンもいい人だった。
H:いい人だったね。Harry & Macでニュー・オーリンズに行ったとき、レヴォン・ヘルムとすれ違ったね。
久保田:そうだっけ!?
H:「ちょうどニュー・オーリンズに来てるから会おうよ」と。メッセージが入って…ところがそれが中止になっちゃったのかな。来れなくなって。
久保田:ちょっと病気が始まってたもんね、少し。
H:うん。治療してたね。そういえば。
久保田:次の年にウッドストックまで私、行ったんですよ。『ON THE BORDER』というアルバムで…そのときは叩いてもらった。
H:あ、そうだったんだ。すごいね、そんなことやってたんだ。
久保田:でも、やっぱりちょっと病み上がりっぽいというか…で、「ギャラは要らねぇ」みたいな(笑)
H:(笑)
久保田:いやいやそうはいかないでしょ?みたいなノリでしたね。
久保田:そのときはガース(Garth Hudson)にも久しぶりに会って…というときがありましたね。
H:2,3年前だったかな?ガース・ハドソンが自分のバンドで来て。ビルボードで。
久保田:そうだ!3年ぐらい前ですね。あれ、一緒に行かなかったっけ?
H:一緒だったっけ?(笑)
久保田:一緒だったような気がするけど、違ったかな…
H:楽屋で話したりしたのも…
久保田:あー、ありましたね。違うときだったかもしれない。まぁでも、同じビルボードで。奥さんとね。
H:そうそう。ガースがね…おもしろい人だなぁ、と思って。
[*ガース・ハドソンの来日公演は2013年8月。]
H:Harry & Macのときに…あれはどこでレコーディングしたんだろう。サンフランシスコ?
久保田:あれはね…ロサンジェルスのスタジオ。ウェストレイクみたいなところだったかな。あれですよね、ジム・ケルトナー(Jim Keltner)。
H:そうそう。すごいな。
久保田:それだけ先に決まってたんですよね。「なんかやろうね」って。内容が決まる前にドラムだけ決めるという(笑)
H:うん(笑)いやー、ケルトナーとできたのはいい体験だよ。
久保田:そうですね。
H:今やできないかもしれないしね。
久保田:まぁでも元気っぽいけど…
H:元気だけどね。ジム・ケルトナーは僕のことを「サムライ」って…(笑)
久保田:(笑)
H:ぶっきらぼうだしね、僕。無表情だし。で、「自分のドラムスはポルカ」だと言ってたのがすごく印象的で。ルーツがね。2ステップというか。
久保田:はいはい…そういう系の国だもんね。たしかにストレートのロックドラムというよりはちょっとロールが入ってるというか。
H:そうなんだよ。ライ・クーダー(Ry Cooder)の『Into The Purple Valley』とか、ああいうところを見るとね。
久保田:そうそう。ライとは相性が良かったですよね。なんかサーカスっぽいというか、揺れのあるところが好きだったんですよね。私も細野さんもね。まぁ日本では伊藤大地っていうのがいますけど(笑)
H:いるね(笑)ライ・クーダーの息子(Joachim Cooder)もなかなかね。
久保田:そうですね。さすがにお父さんとずっとやってるから…あのスタイルは彼、上手だよね。
H:来日して息子がドラムをやったセッション、すごい良かったんだよな。
久保田:あ、サム・ゲンデル(Sam Gendel)の時ですか?あ、違う違う!ニック・ロウ(Nick Lowe)と一緒に来た時…良かったよかった!良かったけど、ニック・ロウのバックの時はちょっとヘタでしたよ(笑)
H:(笑)
久保田:お父さんのときはめっちゃ上手かったけど、ストレートなロックを叩くと急にアマチュアみたいに…
H:忘れられないよ、"Jesus On the Mainline"。良かったなぁ…
久保田:あの独特な入り…マーチっぽいね。
H:なかなかあれ、あの後で聞けないんだけど。あのセッションでしかないんだよね。
久保田:あの後にヨアキムから連絡があって。「演奏に行くから観に来て」って。行ったらね、トリオで。サム・ゲンデルというサックスの男だった。
H:今ね、大流行り。大人気。
久保田:そうだよね。で、ビックリして…グルーヴもすごく良かったし、音がすごく小さくて(笑)
H:(笑)
久保田:ドラムが入っててこれだけ小さい音のコンサートは初めて観た(笑)
H:そっか(笑)
久保田:でもここのところね、そういう小さい音のロックがすごくいい。
H:やった!
久保田:いいのがあります。
H:勝った!(笑)
久保田:それなら任しとけって?(笑)
H:もうね、コンセプト。小っちゃい音にみんな耳を傾ける。なんでそう思ったかというと、ザ・フー(The Who)のピート・タウンゼント(Pete Townshend)が「大きな音じゃないと人に伝わらない」と。ウソだろう、と。
久保田:はいはいはい、イギリススタイルね(笑)デカいですよね。電気めっちゃ使いますよね。
H:そうなんですよ。まぁそういう時代もあったけど、今はちょっと時代が変わっちゃった。
久保田:そのサム・ゲンデルのときはショールームみたいなところで、メインのギグじゃなくて東京でもちょっとやるよ、みたいな。パーティーっぽい…で、音が小さくてものすごく良くて。そのときにサムとも話して。
H:そうだったんだ。
久保田:でもね、細野さんのことは口にしてたよ。
H:え!なんで!
久保田:そのうち細野さんのなんかのレコードをサンプリングして…なんかありましたよ(笑)
H:え?知らないよそんなの(笑)
久保田:年に何十曲もリリースしてるんですよね。
H:いっぱい出てるね。いや、今はホントにみんな聴いてるんだよ。若いのが。
久保田:ジャズ的なところもあるし、ヒップホップの要素もあるし。
H:そうだね。
久保田:亡くなりましたけど、昔のジョン・ハッセル(Jon Hassell)みたいなね。
H:そうなんですよ。それはこないだも言ったけど…
久保田:ちょっと似てるんですよね。ニヤッとしてましたけど、それを言ったら。
H:やっぱりね。
久保田:今日持ってきたかな…あのね、こっちのほうがいい曲があるかもしれない。
H:じゃあ、最後になっちゃうけど…最後の曲を紹介してもらおうかな。
久保田:じゃあサム・ゲンデルで行きましょうか。
H:またかかるんだ、サム・ゲンデルが(笑)
久保田:あ、ここのところかかりすぎ?
H:いいよいいよ(笑)
久保田:じゃあ止めて…Jディラ(J Dilla)にしましょうか(笑)
H:なんだって?
久保田:MPCの…若くして亡くなった黒人でJディラという人がいて。その人がやっぱり、今のドラムマシンというか打ち込みのシーンにものすごい影響を与えていて。
H:お、聴きたいね。
久保田:たぶん細野さん大好きだと思うよ。これの何曲目かな…『Dillatronic』という実験アルバムで、インストの短い曲ばっかり入ってる。その14曲目だから…タイトルあったかな。『Dillatronic』の14曲目、みたいな感じでいいかな。
H:それでいいよ。
久保田:ドラムマシンの達人で、今のグルーヴを作ったパイオニアみたいな人なんですけど。残念ながらだいぶ前に亡くなって。
H:そうか。亡くなる人多いね。
久保田:そのJディラという人の実験作のような、デモのような『Dillatronic』というアルバムがあって。これはその14曲目だったと思います。タイトルは忘れました。
H:うん。
久保田:じゃあお別れに…これを聴きながら。
H:ありがとう。久保田麻琴くんでした。
久保田:ありがとうございます。
Dillatronic 14 - J Dilla
(from『Dillatronic』)
久保田:昔のMPCなんだけど、この人はクオンタイズさせないで…
H:あー。
久保田:自分の好きなところまでやって、それが「おっちゃんのリズム」なんです。
H:へぇ(笑)
久保田:「アラヨット!」みたいな。それが…今は拡大解釈で、ヨレたのがヒップになってる(笑)
H:なるほどね(笑)ちょっと流行ってるよね。ズレてる。
久保田:それの先駆者ですね。思い切ってそれをやって…たぶん出したときは何こいつ?って言う風に…20年前は言われたんじゃないかな。
H:あー、20年前か…
久保田:2000年代初頭だったはずですよ、この人。
H:ディ・アンジェロ(D'Angelo)がそれを大々的にやって…それを今、ブレイク・ミルズ(Blake Mills)とかサム・ゲンデルと一緒にやってたりするベーシストがいて。パラディーノ(Pino Palladino)という。
久保田:あ!はいはい。イギリス人ね。
H:うん。
久保田:彼は古いよね。もう60代だよね。もっと行ってるかな?たぶんあの人はイギリスのジャコ(Jaco Pastorius)みたいな人で…すごい元気で、サムと仲いいんですよ。たしか。
H:そうそう。最前線に立っちゃってる。
H:ズレが意識的になってきたね。
久保田:かなりデフォルメというか…そこまでやらなくても、という人は多いですよ。けっこう。ものすごいファッションだよね。まぁ世の中ね、だいぶ無茶苦茶なんで。
H:(笑)
久保田:リズムくらいは緩くしていって…対抗していかないと。
H:そうだね。そのせいで今流行ってるのかな。
久保田:それもあると思いますよ。ここまでヨレていいんだ、と。
H:うん。
Dillatronic 15 - J Dilla
(from『Dillatronic』)