2020.02.09 Inter FM「Daisy Holiday!」より

 

daisy-holiday.sblo.jp

 

H:こんばんは、細野晴臣です。先週から始まったハマ・オカモトくんとの対談。結果、1時間を超えるお話となったので、今週・来週と引き続いてお聴き頂きたいと思います。では、2週目のお話、どうぞ。

 

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ハマ:そうなんですよね。そう…この間、いまの話もそうですけど。

H:うん。

ハマ:なかなか近年、細野さんとそういう話をしてる人は僕、見ないし。こないだも楽器の話をすごい、して頂いて…

H:そうね、ベースの話ってなかなか訊かれないし。

ハマ:訊かれないですか?

H:最近、ベース弾いてない所為か、ベーシストっていうイメージがないのかな(笑)

ハマ:そうですかね?(笑)そんな…まぁでも、たしかに、それこそ僕より下の世代とか。イベントで…こないだで言うmanakaとか?リトグリLittle Glee Monster)とかは、やっぱり僕が知ってる細野さんとは違う見え方で細野さんを見てるはずじゃないですか。

H:だろうね。うん。

ハマ:たしかに、そういう世代からすると…[細野さんと言えば]やっぱり「歌う」人とか。「ギターを弾いてる」っていうイメージのほうが先かもしれないですね。

H:たぶん、そうなんだろうね。うん。

ハマ:ただ…それこそ『HOCHONO HOUSE』もそうですし、作業をするときって…もはやフラットなんですか?それともやっぱり、「ベーシストをやってた」っていうのはもちろんあるわけじゃないですか。きっと。

H:うん。

ハマ:なんかちょっと、そういう脳になったりするんですか?

H:んーとね、数年前まではなってたかもしれないんだけど(笑)

ハマ:へぇ。でも、数年前までは[わりと最近まで]そうだったんですか?

H:うん。そうだね。

ハマ:へぇ。いまや、でも、もう?

H:なんかいまは、考えなくなってきちゃったね(笑)

ハマ:もう、そこは自然と…というか?

H:うん、なんか、あ、これは入れたいな、って思うとやるくらいで。

ハマ:だから細野さんのベース仕事を…僕もその一人ですけど、見て・聴いてきたファンからすると、最近は[ベースについて]どういう目線で考えてるのかな、っていうのは疑問だったんで。

H:そっかそっか。それはこっちが聴きたい、っていうか…(笑)

ハマ:(笑)

H:やっぱり、[ハマくん自身は]ベースが中心でしょ?

ハマ:そうですね。やっぱり、どうしても職業耳みたいにはなっちゃいますよね。全体を見たい、とは思ってますけど。

H:僕もスタジオでやってる頃はそうだったしね。んー。まぁ、ミュージシャンだったんだよね、僕もね。プレイヤー。

ハマ:はいはいはい、もちろん(笑)

H:最近はそのプレイヤー気質が薄くなっちゃってるね。

ハマ:たしかに、もうちょっと広い目線ですもんね。きっと。いま作られている音楽を聴くと。

H:で、アコースティックベースがすごい好きなのに、自分じゃ弾けないから。

ハマ:はい。

H:伊賀くん(伊賀航)がいてくれて助かってるわけね(笑)

ハマ:そのウッドベースとかは、「やってみよう」みたいなことはあったんですか?

H:一度ね、YMOの頃は何曲かやったことはあるの。"Wild Ambitions"っていう曲とか。

ハマ:はい。

H:でもね、腕が、指が、疲れる(笑)

ハマ:(笑)いやー、でも、ぜんぜん違いますもんね。

H:まったく違う楽器じゃない?(笑)

ハマ:はい。僕も去年から練習してるんですけど。

H:あ、ホント?

ハマ:もう、使うところも違うし。力のかけ方もぜんぜん違うし。

H:違うよね。

ハマ:じゃあ、そういう録音とかでトライはしたけど、弾きこなせる、みたいにはならなかったんですね。

H:そこまではね、考えなかったね。自分には向いてないと思って。

ハマ:でもやっぱり、いま細野さんがライヴでギター弾きながらやられる音楽性にはもう、絶対に欠かせないものじゃないですか。

H:欠かせないんだよ。

ハマ:特に伊賀さんはすばらしいから…エレキもすばらしいですけど。

H:そうそう。ホントに。

ハマ:それはもう、運命的なんですね(笑)きっと。

H:ウッドベースを弾きながら歌うのは大変じゃない。

ハマ:そうですね。

H:そういう人もいるけどね、世の中には。どっちかって言うと、ギターで歌うほうが楽しいから。

ハマ:はいはいはい。ストロークのほうが。

H:そうそう。

 

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ハマ:細野さんって…さっきご自身で「プレイヤーだった」って仰ってましたけど。

H:うんうん。

ハマ:いちばん、なんていうか…ものすごい数こなしてたのって、おいくつぐらいのときなんですか?だいたい。

H:いくつぐらいだろう…30歳ぐらいがピークかな。んー。

ハマ:それは、ティンパン(Tin Pan Alley)としての仕事というか…

H:ティンパンがもう終わって、その後だね。

ハマ:その後か。

H:だから、スタジオにいっぱい呼ばれるようになっちゃって。たとえば大貫妙子のソロだと全曲弾いたりとか。

ハマ:はい。

H:まったく知らない人のセッションに行ったりね(笑)

ハマ:(笑)それはもう、もともと縁がなくて、呼ばれたから行って…

H:行ったりね。うん。

ハマ:そのときは[周りの]ミュージシャンもみんな知らないんですか?

H:いや、なんとなく知ってるけど…たとえば村上ポンタ(村上秀一)とかね。

ハマ:あー、はいはい。ポンタさん。

H:いっしょにやるとは思わなかったんだけど、1,2回やったことがあって(笑)

ハマ:たしかに、なかなかめずらしい…(笑)そうですよね。それはなんの曲だったかも憶えてないんですか?

H:憶えてないんだよなぁ…山下達郎かな?

ハマ:あ、達郎さんの…そうですよね。2枚目(『SPACY』)とかって…あ、でも、細野さんとポンタさんなのかな…

H:そういう取り合わせは憶えてないんだけどね。まぁ、やったことは確かなんだけど。

ハマ:そうですよね。

[*『SPACY』の場合、"翼に乗せて"・"アンブレラ"・"Solid Slider"を除く7曲で共演している。]

H:で、僕がスタジオで胡坐をかいて弾いてたっていうんで、すごい、なんか、それが気に障ったのか…(笑)

ハマ:(笑)

H:ずっとその話をしてるね。

ハマ:ポンタさんがですか?

H:うん。

ハマ:そのとき胡坐かいてて態度悪かった、みたいな?

H:「態度悪い!」みたいなね(笑)

ハマ:(笑)

  

 

素敵な午後は - 山下達郎

(from 『SPACY』)

 

 

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ハマ:その頃って、ワーッといろんな現場をやったりとか。いま仰ったように、あんまり憶えてないようなレベルでめまぐるしくやってたわけじゃないですか。

H:そうなんだよ。

ハマ:だから、事前に練って用意して行くようなものでもきっとなかったと思いますし。

H:ぜんぜん。

ハマ:で、前に細野さんとお話しさせて頂いたときに…まぁ、いまは違うと思いますけど、いわゆるおたまじゃくしを追って弾けるようなタイプではなかった、っていう話を聞いてたので。

H:ぜんぜん。んー。

ハマ:それこそ、コード進行でやっていくわけじゃないですか。

H:うんうん。

ハマ:そのときって…漠然としちゃいますけど、どういう思考でこなしてたんですか?

H:どうかな…

ハマ:もうホント、赴くままだったんですか?

H:赴くままなことは赴くままだけど、もちろん、曲の成り立ちがあるわけだから。その中でリズムと…まぁ、ドラムの人と考えるんだよね。パターンをね。リズムパターンから入って行って。

ハマ:なるほど。

H:まぁ、そんな、打ち合わせはしないんだよ(笑)音を出してみるっていうだけで。

ハマ:サウンドチェックしながら、ああ、こういう風にやりたいんだな、みたいな。

H:そうそう。で、自分なりにベースでリズムを弾き出したりすると、ドラムスが追いかけてきたりして。なんとなくそうやって出来てくる、っていう。

ハマ:またその逆もあるというか。ドラムの人の…

H:そうそうそう。「あ、それいいね!」とか言いながら作っていく感じね。

ハマ:あー…今って、デモとかが事前にあって…僕もそうやってお呼ばれすることが多いんですけど。

H:うん。

ハマ:まぁ、送られてくるじゃないですか。だから、だいたいのパターンみたいなのはある程度提示された上で…

H:今はそうだよね。うん。

ハマ:その上で「自由にやってください」とか言われるんで、それもそれでちょっと困るんですけど。もうスケッチがあるから。

H:自由じゃないよね(笑)

ハマ:ある意味そうなんですよね(笑)でも、細野さんの時代は、もう…

H:ホントに自由。

ハマ:「1回デモ聴いてみよう」みたいなことすらないんですよね?

H:ないの。いきなり始まるから。

ハマ:それは、歌い手とか作った方もいて、ホントにみんなでやっていく感じなんですか?その場で、1回で。

H:いない場合もあるけどね。アレンジャーはいるね。

ハマ:メロディーはどうしてたんですか?

H:どうしてたかな…(笑)

ハマ:ないときも…ホントにインストを考える、みたいなときもあったんですか?

H:そういうときもあるよ。

ハマ:あー、まぁそうですよね。

H:たとえば…当時は「インペグ屋さん」っていうのがいてね。

ハマ:はい。

H:ミュージシャンを電話で雇うわけだ。「何月何日、1曲だけど」とか言われたりね。2曲とか。あるいはアルバムとかね。

ハマ:うんうん。

H:そういうときに…ぜんぶ受けるわけだ。

ハマ:なるほど、やりますやります!って(笑)

H:芸人みたいに(笑)断らない。

ハマ:(笑)

H:で、行ってみると…ビックリするようなことがいっぱいあったわけ(笑)

ハマ:あー、なるほど。もう、蓋を開いたら…

H:そうそうそう。ビックリして…怯えたりね。

ハマ:それはもう、想定外の楽曲であるとか…っていうことですか?

H:想定外。そうそう。たとえば…あれは誰だったんだろう?んー、誰だっけな。野口五郎なのかな。

ハマ:おお…(笑)

H:そういうこともよくわかんないまま…

ハマ:あ、なるほど!そういう想定外ですね。

H:そうそうそう。

ハマ:楽曲がトンデモっていうことじゃ…そういうのもあるかもしれないですけど。「この人のだったんだ!」っていうビックリ。

H:要するに、歌謡曲だから。で、オーケストラも同時に録るんだよ。

ハマ:ほう…

H:たぶんね、ニューハードオーケストラのメンバーだったと思う。で、僕、あろうことか遅刻してって…(笑)

ハマ:(笑)

H:みんなスタンバってて…(笑)で、前の席が空いてて、そこなんだよ、僕はね。

ハマ:もう、みんなの前に…

H:腰低くして、すみません、って言って。で、もう、すぐ始まるから。

ハマ:そうですよね。

H:ベースのチューニングをしながら1回リハーサルをやったりして。

ハマ:流れを聴いて。

H:で、目の前にある譜面にはおたまじゃくしが書いてある。んー、ドレミファソラシド…とか思いながらいろいろ…(笑)

ハマ:(笑)そう、ね、さっき仰ってたみたいに、パッと弾けるわけではじゃないですか。

H:初見はできない。

ハマ:ですよね。

H:まぁ、なんとなくはわかるから。で、聴くと…なんてことはないわけだ。

ハマ:なるほど。この景色に惑わされてるだけで。

H:そうそうそう。だから、だいたいのおたまじゃくし通りに弾いて。だんだん自分なりにやって。それでも別にアレンジャーは怒らないし。そういうのを望んでいるんだろうし。

ハマ:へぇ。なるほど。

H:で、テイク2とか3で終わっちゃうんだよね。

ハマ:んー。いや、でもそれもすごいですけどね。その緊張感はやっぱり…

H:緊張した…

ハマ:ですよね。計り知れない…今やもう、やっぱり…ヘンな話、何回もできるわけじゃないですか。コンピューターもあるし。当時はね…

H:そうなんだよ。いちばん緊張したのは、前田憲男さんのセッションだね。

ハマ:へぇ…

H:それはね、ティンパン…林立夫鈴木茂、僕の3人で。前田さんはエレクトリックピアノフェンダーローズを弾いて…いきなり、譜面がバンッて渡されて、ぜんぶ書き込んであるわけね。これは緊張したね(笑)

ハマ:(笑)え、どうしたんですか?

H:で、なんにもしゃべってくれないんだよ。

ハマ:へぇ…

H:怖いの。ぜんぜんコミュニケーション取ろうとしてくれないの。

ハマ:はいはい。

H:とにかく、やんなきゃダメなの。

ハマ:もう、ウワーッと…フルで使い切って、読解して…(笑)

H:でも、なんとなくできたんで(笑)それは録音物、残ってるけどね。

ハマ:うん。それはもう、ハッキリ憶えてるんですね、細野さん(笑)

H:憶えてる…いちばん緊張したの、それ。怖かった。

 

 

デサフィナード (Desafinado) - 前田憲男 meets Tin Pan Alley

(from 『Soul Samba: Holiday In Brazil』)

 

 

ハマ:立夫さんも茂さんも、そういうのは当時、あんまり強くなかったんですか?細野さんと同じく…初見でドーンみたいのは。

H:おんなじだと思うよ。

ハマ:あー。じゃあ、まぁ、同じくでしょうね、お2人も…

H:みんな緊張してたと思う。うん。あとはやっぱり…僕より上の世代の作曲家たちは書き込んで、きっちり作るわけだ。アレンジもするから。

ハマ:はい。

H:たとえば、筒美京平さんに呼ばれて…あれはなんだっけな、南沙織だったかな?もちろん本人はいないんだよ。シンガーはいない。で、それもぜんぶ書き込んである。

ハマ:へぇ…

H:スタジオで譜面見ながらうーん…とか言いながら。どうしよう、と思ってるうちに先生が入ってきて。筒美さん。

ハマ:筒美先生。

H:いきなりね、指揮を始めるの(笑)で、えー!と思って…(笑)

ハマ:(笑)

H:これが、それまでの業界のシステムなんだろうね。

ハマ:うんうん。

H:で、我々はそんなの初めてだから。昔の…僕より上の先輩たちはそうやってやってたわけだから。

ハマ:そうですよね。やっぱりジャズとかですもんね、ルーツが。

H:そう。だから、僕の上の世代のスタジオミュージシャンのベーシストって言うと、江藤勲さんっていう人がいたわけ。

ハマ:はいはいはい…

H:その人はそういうプロ、ですよね。んー。

ハマ:そんな中で細野さんとか…いまお名前が挙がりましたけど、立夫さんとか茂さんとか。松任谷さん(松任谷正隆)とか。

H:うん。

ハマ:もうちょっと、こう、ヘッドアレンジというか。

H:そう。なんかもう、仲間内のセッションだから、すごい気が楽だし。楽しいわけだ。

ハマ:そうですよね。でも、それこそ細野さんがいま仰ったように、そこまでは…まぁ切り替わりはどこかっていう話ですけど、ずーっとそういうおたまじゃくしが当たり前のルールで。

H:そういう時代があったんだね。うん。

ハマ:その最中というか、まだその名残がある中で細野さんたちが始めるわけじゃないですか、ヘッドアレンジを…

H:そうそう。

ハマ:まぁ、後から付いた名前かもしれないですけど…そういう、コード進行でいいねいいね、って言いながらやって行くっていう。

H:これはね、はっぴいえんどロサンジェルスに行った影響なんだよね。

ハマ:へぇ。

H:レコーディングしたときに…カーヴィー・ジョンソン(Kirby Johnson)っていうアレンジャーが附いて、ブラスを入れたりしてたんだけど。

ハマ:うんうん。

H:そのときの譜面を見ると、やっぱり…まぁ、ブラスは書き込んであるけど。リズム隊の譜面っていうのはコードとリズムの…セクションごとに、リズムが必要なところだけ書いてあるとかね。

ハマ:へぇ。

H:それの影響がすごい強いね。

ハマ:それはけっこう、ウキウキしたんですか?行ったときに。ここはもうお任せ、っていうか。

H:まぁ、自分たちの曲だからね。知ってるんで。

ハマ:あ、そうか。そうでした。

H:ああ、こういう風に書くんだ、っていう。ノーテーション(notation)っていうんだけど、筆記法。日本はカチンカチンで、クラシックみたいな…(笑)

ハマ:たしかに。

H:でも、ロサンジェルスのセッションではコードネームだけだ、ってことはそこで初めて知って。

ハマ:はい。

H:なんか、譜面用のペンで書かれてて…カッコいい!って思って(笑)

ハマ:へぇ。じゃあその感覚を持って帰って、自分たちのセッション仕事に反映していった、ってことですよね。

H:そうそう。だってそれまでは…ノートとか藁半紙にコードネームと小節を書いて…五線紙じゃなくて(笑)

ハマ:ノートとかに…(笑)

H:そういう時代が長かったから。

ハマ:そうか…いま、全員じゃないかもしれないですけど、僕ら…僕がやってるバンドもそうですし。

H:どういう風にやってんだろ?

ハマ:僕らも…もちろん、デモみたいなものは作った人から送られては来ますけど。ただやっぱり、特にリズム隊とかに関してはフリーですし。バンド以外のときもそうですけど、僕が録音するときに置くのはコードの進行表くらいなので。

H:それは、五線紙で?

ハマ:五線紙じゃないときもありますね。

H:あ、やっぱり?(笑)

ハマ:自分のメモのときとかもあります。なので今回…それこそ「細野観光」を拝見して、細野さんのノートとかメモとか残ってたじゃないですか。

H:はいはい。

ハマ:うわ、すごいな、物持ちいいな、とか…(笑)

H:(笑)

ハマ:いやホント、究極の「物持ちいい」じゃないですか。細野さんの場合は。

H:物持ちがいいっていうよりも、捨てない、っていうだけなんで…(笑)

ハマ:でも、あれがああいう形で残ってて、うわー、なんてことを思ってたんですけど。

H:うん。

ハマ:僕も今回、自分の本でこうやってやるってなったら…僕、呼ばれたセッションで頂いたコード進行表、ぜんぶファイリングしてて。

H:おお。やっぱり捨てないよね、あれは。

ハマ:捨てないですね。で、いろいろ段ボールを漁ったら、僕も残してて。

H:みんなそうなんだよ(笑)

ハマ:はい、僕もけっこう出てきて、ノートが。で、いまの話を聴いてやっぱり細野さんもそうなんだな、と思ったのと。

H:うん。

ハマ:それこそ、ヘッドアレンジの手法が…ロサンゼルスから持って帰って来た、みたいなお話もありましたけど。

H:うん。

ハマ:やっぱり細野さんたちが…やってくれたっていうか、あの時代にそういう風に進めた、広めたおかげがあるから、僕らのいまのやり方もあるな、ってすごい思いますね。

H:んー。

ハマ:そういうものが広まらなくて、引き続き譜面の世界だったら…それはそれで音楽でしょうけど、作られる物のニュアンスがぜんぜん変わりそうだな、と思って。

H:ある程度、ミュージシャンに与えられた自由があるほうが…なんて言うんだろう、おもしろいものができるよね。

ハマ:そうですね。やっぱり、極端に言うとその日の体調とか。

H:体調は関係あるね(笑)

ハマ:そうですよね(笑)あとはそのときに聴いてる音楽とか。自分の中の流行りとか。

H:そうそう。それは大事よ。

ハマ:ああいうものが…指定され過ぎると反映させる隙間がないですけど。ヘッドアレンジ方式でやれるんだったら、そこはふんだんに出そうと思ったら出せるじゃないですか。もちろん、細野さんが言ってたように曲の成り立ちとかは大事ですけど。

H:うん。

ハマ:僕は幸い、自分のバンドもそうですし。それこそ星野さん(星野源)も基本、そういうやり方で進められる方なんで。

H:はいはい。

ハマ:初めて会ったときに、お互い楽譜がちゃんと読み書きできないって…「僕もなんです」なんて言って。それで録音が始まったので。やっぱりそういうほうが楽しいなと思うし。

H:うんうん。

ハマ:僕が携わらせてもらう現場はほとんどそういう空気のとこが…ありがたい話、多いんですけど。

H:うんうんうん。

ハマ:だから、そんな中でのびのびやる、っていうか。やれるのは、元を辿ればホント…いまの話を聴いてると、細野さんたちの経験から基づいた「輸入」っていうか(笑)

H:そうね。輸入した。

ハマ:方式を輸入したのはすごく大きかったんだなぁ、と。改めて思いますね。

H:そうかそうか。

ハマ:おかげさま、というとアレですけど(笑)

H:たしかに、それまでとは違うことを「輸入」したね。たしかに(笑)

ハマ:いやー、ぜったいそうですよね!まぁ、細野さんは自分の話ですしね。きっと、なんかの策略があってやったわけではないと思いますけど。「自分に向いてたから」っていう。

H:そうね。そういうのって、楽しいことの一つだからね。

ハマ:うん。でもそのおかげで…そういう遺伝子っていうか。めちゃくちゃ受け継がれてるんだろうな、っていうのはすごい思いました。

H:だとしたら、それはおもしろいな。誰かが受け継いでる、とはぜんぜん思ったことはないんだけど。

ハマ:うーん。

 

 

風来坊 - はっぴいえんど

(from 『HAPPY END』)

 

 

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