2019.09.29 Inter FM「Daisy Holiday!」より
H:こんばんは、細野晴臣です。さぁて、今週もですね…先週に引き続き、岡田くん、よろしくね。
O:こんばんは、岡田崇です。
H:…もう、のっけからいるから、今回は。19歳の福原音くん。
音:はい、よろしくお願いします。
H:よろしく。えー…不思議なメンバーになってきたね(笑)
O:(笑)
H:年齢差がすごいよね。
O:ねぇ(笑)
H:なんか、中抜けっていうか…今までいなかったよね(笑)
O:20代、30代、40代がいないっていう…(笑)
H:なんで?(笑)そういう人がいてもおかしくないのに、いなかったね。いままで。
O:そうですね。
H:なんだろう、この現象は。んー、おもしろいよね。
O:(笑)
H:さて、きょうはどうしよう。ハル・ハーゾン(Hal Herzon)は先週いっぱい、やりましたよね。3曲かけちゃったけど。
O:かけましたね。
H:エアチェック防止用にね、いろいろ…
O:(笑)
H:誰かが先にCD作っちゃう、なんてね。
O:ハル・ハーゾンはエラ・メイ・モース(Ella Mae Morse)とかといっしょにやってましたね。
H:ホントに?!それは知らない。
O:1945年ぐらいに、ハリウッドで。
H:じゃあ、レコーディングに入ってるんだ。
O:レコーディングにも入ってるかもしれない…ステージでの写真は確認しました。
H:あ、ホント?
O:エラ・メイ・モースのステージで、サックスを吹いてる。
H:なんか、いろいろつながってるんですね。じゃあ、きょうはそのつながりで…なんかあるんでしょ?
O:じゃあですね…まあ、音くんがいるからではないんですけど、最近買ったSP盤で…ソニー・バーク・オーケストラ(Sonny Burke And His Orchestra)で、"The Sidewalk Shufflers"。ヴォーカルをドン・レイ(Don Raye)とジーン・デ・ポール(Gene De Paul)が、やってます。
H:めずらしいね。ドン・レイが出てきたね。
The Sidewalk Shufflers - Sonny Burke And His Orchestra
H:お、この時期にフェードアウトはめずらしいね(笑)
O:たしかに(笑)
H:まぁ、なんか楽しい曲ですよね。先週も感じたけど、ハル・ハーゾンのレコーディングもこれも、音が良いね。
O:お…
H:なんか、レコーディングが良い。
O:ハル・ハーゾン、前に聴いてたのはトランスクリプションで、33回転のビニライト[塩化ビニル]だったんですけど。
H:そうだね。
O:やっぱり、SP盤・78回転のほうがレンジがちょっと広いですね。
H:SP盤のほうが音が良いって、初めての発見だね。それは。
O:ノイズ成分はやっぱりあるんですけど、音自体は…情報量が多いんだと思いますね。
H:回転数が早いしな。
O:78ですからね(笑)
H:おもしろい。なるほど。いやー、音良いよ。
H:んー…ということで。いきなり眠くなっちゃった(笑)
O:(笑)どうでした?ドン・レイの。
音:あれはタップしてたんですか?ドン・レイのヴォードヴィル魂が出てた、みたいなことなんですか…?(笑)
O:(笑)
H:え、音くん、ドン・レイってどういう人なの?(笑)
音:ドン・レイは…ブギウギに関わる人を生み出した人なんですけど、元々はハリウッドのミュージカルとかヴォードヴィルのコメディアンを目指して…ペンシルヴェニアかなんかのコンクールで、ヒューイ・プリンス(Hughie Prince)といっしょに優勝…ヒューイ・プリンスが伴奏をして。ヒューイ・プリンスっていうのはブギウギを作曲してる人なんですけど。
H:そうね。
O:ヴァージニア州かな。
音:あ、ヴァージニア州…
H:訂正が入りました、先生から(笑)
O:(笑)
音:ありがとうございます(笑)
O:チャールストン・ダンスのコンテストね。
H:これはなにかのセミナーなの?(笑)
音・O:(笑)
H:それで…こないだ悠太…孫のね、悠太(細野悠太)。ベース弾いてますけど。きょうは来てないんですけど。合宿かなんか…練習かな?わかんないけど。で、2人でここのスタジオに来てなんかやってたんでしょ?
音:そうですね、ちょっと…
H:なにやってたんだっけ?ジェリー・ルイス(Jerry Lewis)を見てたんだっけ?
音:ジェリー・ルイスを見て、これ[パントマイム]のものまねを…(笑)
H:あの、指揮するやつ…"Typewriter"とか?へぇ。これは見てみたいね。
音:ディーン・マーティン(Dean Martin)との掛け合いのやつとかを…
H:そんなの見てる人、他に知らないぞ(笑)
O:(笑)
H:いや、でも僕も中学のときにジェリー・ルイス見て真似してたんだよね。座り方とかあるんだよ。あと顔ね。顔芸っていうか。
音:顔…(笑)
H:それ以来だね、若いのが真似してるって聞いたのは。
音:真似したくなる…
H:真似したくなるよね。んー。
O:僕も好きで見てましたけど、真似はしてないですからね。
H:(笑)
O:難しそうだもん、あの動き…(笑)
H:いや、天才だよ、ジェリー・ルイスは。すばらしい…タップをやらせると上手く見えるんだよね(笑)
O:(笑)
H:どのくらいできるのか知らないけど、すごい上手く見える。
H:ジェリー・ルイス[の音源]ある?なんか。
O:ジェリー・ルイスですか。あるかな…
H:ちょっと待って…(笑)こっちにはないんだ。けっこう買い溜めたんだけど、ここに無いや。参っちゃったな。
O:(ガサガサ)
H:無いか。
音:岡田さんと、ジェリー・ルイスについていろいろやりとりをさせてもらってて…
H:あ、そうなんだ(笑)
O:LINEでね。夜な夜なLINEで…ジェリー・ルイスの話とかをしてて(笑)
H:へぇ。
音:こんな夜中にいいのかな、とか思いながら…楽しくて(笑)
H:そうかそうか。
O:ちょうど僕もジェリー・ルイスを最初に見たのが高校後半ぐらい…ですかね。テレビで昔はよくやってたじゃないですか。
H:あ、やってたね。わりと深夜に。吹き替え版ね。
O:また見たいな、あれ。吹替えが秀逸ですよ。
H:そう、僕も見てたね、それ。
O:…ジェリ・ールイスの音源は無いですね。
H:無いね。
H:じゃあ、コメディの話、しようかな。えーと、コメディ好きなの?音くんは。
音:もう、大好きですね。
H:あ、そう。その辺もなんか、おんなじだよな…
音:ウッディ・アレン(Woody Allen)とか、すごいあこがれてました。
H:おお。ウッディ・アレンね。んー。
O:だって、落語もやってたんでしょ?
H:あ、そっか。
音:そうです。落語…老人ホームを慰問したりとか。
H:え!そこまでやってたんだ。
音:独演会みたいのを、地域で開かせてもらったりとか…落語も好きです。
O:(笑)
H:すげぇな(笑)ネタはなにをやってたの?
音:ネタは「粗忽の釘」と、志ん生(5代目古今亭志ん生)の…圓生(6代目三遊亭圓生)とかもやってる「八五郎出世」。
H:あー…渋いね。
https://www.youtube.com/watch?v=BkbUZd9wQB4
音:本当はちょっと長いんですけど、「八五郎出世」のところだけ*…
[*「妾馬」の前段部分だけを抜粋して「八五郎出世」として演じられることが多い。]
H:ぜんぶ、覚えるわけね。
音:そうですね。
H:そんなことやったことないよ、僕。好きだけど、落語は…(笑)
音:まぁ、最初はほぼものまねというか…
H:誰のものまね?圓生?
音:僕は…最初は枝雀(2代目桂枝雀)から入って…
H:あ、枝雀?関西弁じゃん。
音:関西だったんで…小学生のときだったので、いちばんわかりやすかった。
H:小学生で枝雀って、あるかな?(笑)
O:(笑)
H:普通無いよな。マニアックだよ、枝雀は。
音:そこから、枝雀のレパートリーをやってみたりして…「代書屋」とか。
H:ほぉ…
音:それで、段々江戸落語のほうに。
H:あ、よかった、江戸に来てくれて。
O:(笑)
H:そう。なんかこう…なんだろうな、追求心が違うのかな、僕とは。そういうの好きだったけど、小学生の時とか。さわりだけ真似するぐらいだよね。圓生とか。できるわけないんだけどね。
H:三平(初代林家三平)だって、「だぁ、ほんっと、たいっへんですから…」しかできないしね(笑)
音:(笑)三平さんのサインがあってビックリしました。
H:あるよ、ここに(笑)いやいやいや…ビックリってのはこっちだよな、もう…
O:(笑)
H:なんかかけよう(笑)
O:(笑)
H:なんか、お願いしますよ。
O:じゃあ、さっきのドン・レイ、裏面も歌ってるんでそっちもかけましょうか。
H:はい、ぜひぜひ。
O:"That The One For Me"、ソニー・バーク・オーケストラ。1951年です。
That The One For Me - Sonny Burke And His Orchestra
H:これはなんか、舞台の音楽なのかな?
O:かもしれないですね。
H:こないだ僕、上野のホールで『オン・ザ・タウン』っていうミュージカル観に行ったんだよね。
O:へぇ。
H:1ヶ月ぐらい前かな?2か月前かな?レナード・バーンスタイン(Leonard Bernstein)の音楽なんですよ。で、日本の指揮者の佐渡さん(佐渡裕)っていう方が全部プロデュースして。イギリスのチームを呼んで、やったんだよね。で、あれは何年だっけな…50年代だったかな。『オン・ザ・タウン(On the Town)』って映画になってるんだけどね。シナトラ(Frank Sinatra)とジーン・ケリー(Gene Kelly)と…水兵さんみたいな人たちが、ニュー・ヨークで遊ぶっていう。休暇で。
O:1950年ですね、たぶん。
H:そうか。ただ、音楽がやっぱり、バーンスタインの次の作品には至らないっていうか。地味過ぎて映画で使われなかったんだよね。
O:(笑)
H:かわいそうに(笑)そういうことがいっぱいあるんだろうな、たぶん。でも、次の『ウエスト・サイド(West Side Story)』でブレイクしたけどね。すごい才能がある人なんだな、と思って。ただ、振り付けがおもしろくなかったな…(笑)
O:(笑)
H:ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー(Royal Shakespeare Company)の人とか、バレエ系の人とか、クラシックっぽかったのかな。タップやらなかったし。タップ習いたい…!音くん、やったほうがいいよ。
音:はい…!
H:できる?
音:いや、そんな…運動神経が…
O:「[タップ]やってました」とかね、言いそうだし。
音:いやいや…(笑)
H:なんか…身体的なアレがぜんぜん無いよな。動きがどんなだか、今度チェックしようかな。動き大事だからね。
音:動き…
O:ステップ練習してるんだもんね。
音:そうですね。
H:そっか。
H:最近、探してる映画があるんだけど。『プロデューサーズ(The Producers)』っていう。メル・ブルックス(Mel Brooks)の作品で。ジーン・ワイルダー(Gene Wilder)とかいろいろ、ヘンな…おもしろい人が出てる。で、ぜんぜん見つかんないんだ、これ(笑)リメイク版が2000年代にあったんだよ。
O:ありましたね。
H:そっちのほうが有名で、それしかないんだよね(笑)オリジナルが無くなっちゃった。
O:オリジナルは何年なんですか?
H:いや…1900年代だよ(笑)
O:でしょうね(笑)
H:何年だっけな…けっこう古いよ。んー。
O:(笑)
[*1968年公開。日本でもBD/DVD化はされているようです。]
H:かろうじてメル・ブルックスさんは健在、だけど作品は作ってないね。みんないなくなっちゃったから。ジーン・ワイルダーとか。だからコメディは…僕の好きな世界はもう…まぁ、音楽もそうだけど。消えちゃったかな、っていうね。なんか作りたいですよね。なんか作る?みんなで(笑)
O:なにかを…(笑)
音:なにかを…
H:学生の映画…(笑)
O:サークルみたいな…(笑)
H:えー、僕からはなんにも、紹介するものが無いんですけど。なんかある?
O:なんかある?
音:え?
O:他人に振る…(笑)
音:紹介っていうのは、話?
H:いや、音楽。リクエストに応えて…
音:えー…じゃあ、ぜんぜん、あの…行きに、来るときに聴いてたアレなんですけど…
H:うん。
音:エヴァリー・ブラザーズ(The Everly Brothers)を…(笑)
H:お、急に…(笑)
O:(笑)
音:好きなアルバムを…涼しいんで…
H:ほほう、エヴァリー・ブラザーズが出てきたか、急に。あの、エヴァリー・ブラザーズのひとりは「ドン」って名前だね(笑)
音:そうですね(笑)
H:ドン・エヴァリー(Don Everly)。フィル・エヴァリー(Phill Everly)と。
音:えーと、"Always It's You"とかが入ってるやつなんです。"Always It's You"で[ここに]着いたんですよね。
H:ちなみに、エヴァリーの中でも好きな曲だよ。"Always It's You"は。
Always It's You - The Everly Brothers
(from 『A Date With The Everly Brothers』)
H:うーん…中学時代に聴いてたやつだよ(笑)ぜんぶラジオで聴いてたね。
音:おお…
H:いやー、なんか…眠くなっちゃった(笑)
O:(笑)
音:ちょっと、そういう感じで…(笑)
H:えーとね。僕が最近何を聴いてるのか、っていうのをちょっと発表すると…
O:はい。
H:あのね、ドキュメンタリーを上映してたの。なにかっていうと、『ジョアン・ジルベルトを探して(Where Are You, Joao Gilberto?)』っていう映画。
O:うんうん。
H:まぁ、単館上映なんだけど、小っちゃなところで。けっこうヘンな映画だったんだよね。ジョアン・ジルベルト(João Gilberto)に会いたくて、ドイツのボサ・ノヴァマニアの青年が会いに行くんだけど、ぜんぜん会えないんだよ。で、[ジョアンが]謎の人物、みたいな、神格化されちゃうんだよね。関係者にはみんな会うんだよ。でも、誰も会わせてくれない(笑)
音:(笑)
H:なんだ、そんな人なの?と思ってね。まぁ、ちょっと癖のある人なんだろうけど。で、前の奥さんと話してたらそこにジョアンから電話がかかってくるんだけど、声は聞こえるんだよね。でも、奥さんは取り次いでくれないわけ(笑)
O:(笑)
H:で、結局最後は、やっとコンタクトが取れて、「じゃあ聴きに来い」と。音楽やるから。リオのホテルにいるんで、部屋を訪ねて行くんだよ。でも扉を開けちゃいけないっていう条件で…(笑)
音:わぁ…(笑)
O:(笑)
H:廊下で聴くことになるわけ(笑)で、部屋の中から音が聞こえてくる…っていうところで終わる(笑)ジョアン・ジルベルトは亡くなっちゃったけどね、やっぱりすごい。亡くなってから神様になっちゃったね(笑)それでまた聴き直しちゃったんだよな。すごい音程の良い人で。楽器みたいな声の人で。特に…ニュー・ヨークの地下で録音したっていうアルバム(『João Gilberto』(1973、邦題:『三月の水』)がすごい…「ホワイト・アルバム」って言われてるんだけどね。すばらしいね。その中で1曲、かけていい?"Águas de Março"。じゃあ、これを聴きながら…今度はまた、ジョアン・ジルベルトの特集でもしようと思います。じゃあみんな、ありがとう。
Águas de Março - João Gilberto
(from 『João Gilberto』)