2019.06.30 Inter FM「Daisy Holiday!」より
H:こんばんは。細野晴臣です。えーとですね、先週は…寝過ごしちゃいまして。時差ボケがホントにひどくて。お願いしますね、お2人ともね。
O:こんばんは、岡田崇です。
佑果:こんばんは、水原佑果です。
H:先週、ごめんね。
O:いえいえ…(笑)
佑果:楽しかったです(笑)
O:まさかの…(笑)
H:まあ、時々あるよね、こういうことはね。でも、2人だけで十分じゃん。
2人:いやいやいやいや…(笑)
O:お願いしますよ…(笑)
佑果:お願いします…(笑)
H:音楽の趣味、合うんじゃない?ジャン・ジャック・ペリー(Jean-Jacques Perrey)とかね。
O:うん。
佑果:ジャン・ジャック・ペリー!ドンピシャですね、私…はい。
H:じゃあね、きょうはね…ずーっと、この1週間以上考えてたんだけど、やっぱりドクター・ジョン(Dr. John)の話でもしようかな。亡くなってしまいまして。
佑果:残念ですね…
H:ちょうど、アメリカから帰る飛行機の中は6月6日だったんだよね。
O:おお…
H:だから、6日は飛行機の時間で、何もなかったの、こっちは。失っちゃった時間か。その間にドクター・ジョンが亡くなっちゃったんだな。6日。
佑果:タイミングが…
O:知ったのはどこだったんですか?アメリカで知ったんですか?
H:いやいや、[日本に]帰ってきて、すぐ。うん。で…5日にロサンゼルスにいたじゃない?まだね。
佑果:はい。
H:そのときに、ロサンゼルスにいる鹿野洋平くんっていう人と…ダイナーに連れてってもらったりしてね。車で音楽をいっぱいかけてくれるんで…ドクター・ジョンがかかって。"Iko Iko"かな。
O:うん。
H:「そういえばドクター・ジョンさんはなにしてるんでしょうね?」っていう話になったんだよね。んー、最近聞かないね、って話してたの。で、帰ってきて、そういうことで。ビックリしちゃって。
佑果:んー…
H:どうなの?あのね、遺作があるらしいね。
O:ね、去年の末に出来上がってたっていう話ですよね。
H:それがこれから出るんだね。それはちょっと聴きたいな。
O:楽しみですね。
Dr. John knew the end was near. He recorded one final album with new originals, country-tinged covers and reworked classics. It highlights the deceased Hall of Famer’s final, as-yet-unreleased album featuring @WillieNelson, @AaronNeville, @RickieLeeJones https://t.co/C7Ib5UoO8N pic.twitter.com/KRas8MW8oi
— WWOZ 90.7 FM (@wwoz_neworleans) 2019年6月11日
H:岡田くんは、ドクター・ジョンといえば何でしょう。
O:ドクター・ジョンといえば。まあ、『ガンボ(Dr.John's Gumbo)』…
H:『ガンボ』だね。
O:ですね、やっぱり。でも、『グリ・グリ(Gris-Gris)』も好きですよ。
H:うん。『グリ・グリ』も良い。
佑果:チェックしなきゃ…
O:でも、今のところ最後の…『Locked Down』でしたっけ。2012年ぐらいかな。あれもけっこう…
H:うん。そっか、それちょっと聴かしてもらおうかな。
O:じゃあ…タイトル曲の"Locked Down"。
Locked Down - Dr. John
(from 『Locked Down』)
H:"Big Chief"…じゃなくて…ちょっと寝ぼけてるね、僕(笑)
O:(笑)
H:ドクター・ジョンの…なんて曲でしたっけ?(笑)
O:"Locked Down"。
H:"Locked Down"だ。
佑果:初めて聴きました。カッコいいですね…
H:いつも、ずーっとこんな感じだよね。昔からね。
O:わりとこのアルバムでニュー・オーリンズに帰ってきたっていうか…まあ、"Makin' Whoopee"とか。スタンダードのカヴァーをよくやってたりとか。
H:やってたね。
O:そういう時期があって。
H:僕が初めて会ったのは、YMOの頃にニュー・ヨーク…違うよ、ロサンゼルスだ。Greek Theaterっていうところに出たのがデビューで。そのとき、アメリカ版のミックスをした関係で、トミー・リピューマさん(Tommy Lipuma)さん…プロデューサー。その自宅に招かれて、で、パーティーをやってた。
佑果:えー。どんなパーティーだったんですか?
H:いや、静かな…(笑)ティーパーティーみたいな。そこに、同じレーベルで、ニュー・オーリンズから移動してきたドクター・ジョンも来たんだよね。
佑果:なるほど。
H:ホライゾン(Horizon Records)っていう。フュージョンのレーベルなんで、居心地がどうだったのかね(笑)
O:(笑)
佑果:フュージョンか…
O:ちょうど、なんか…[音楽性が]ちょっと変わっちゃった頃ですよね。
H:そう。なんか悩んでたんだね、実は。で、ドクター・ジョンはそのときが初めての面識だったけど、ロニー・バロン(Ronnie Barron)[のプロデュース]やってたじゃない、僕。
O:はい。そうですね。
H:で、ロニー・バロンっていう人はドクター・ジョンの弟分で…まあ、すごい声と、ピアノも上手いという。
O:もともとロニー・バロンが「Dr. John」になりそうだったんですよね。
H:そうだね(笑)すごい似てるんだよ。
O:[ロニー・バロンは]断ったっていう(笑)
佑果:なるほど…
H:ロニー・バロンのソロを僕…どういう縁かわかんないけど、東京で作ったから。
O:久保田さん(久保田麻琴)の流れじゃないですか?
H:そう、久保田くんと…まあ、いろんなことがあって。ハワイでレコーディングしたときに、ロニー・バロンを呼んだんだね。夕焼け楽団の頃かな?
O:そうです。『DIXIE FEVER』ともう1枚…『ハワイ・チャンプルー』かな?
[*ロニー・バロンは『ハワイ・チャンプルー』(1975)には不参加…おそらく『ラッキー・オールド・サン』(1977)のこと。]
H:で、僕はプロデューサーだったんで、空港に迎えに行ったんだよね。ロニー・バロンを。どんな人か知らないんだよ(笑)
O:(笑)
H:そしたら…ホノルル空港でみんな、アロハ着てたり、南国じゃない。その中にひとり、黒ずくめの人が来て…
2人:(笑)
H:黒いスーツに黒いアタッシュケース持って。で、顔がね、海賊みたいなの。カリブの海賊。独特の顔なの。すぐわかって…それでそのときに初めて会って。スタジオ行ってピアノを弾きまくるわけね。いろんなこと教えてくれて。で、そういうことがあったんで、ドクター・ジョンが「良いアルバムをありがとう」、と。
O:おお…
H:「ロニー・バロンの家族も喜んでたよ」って。そんなことを言って…で、先にドクター・ジョンは帰って。そこにロニー・バロンも来たんだよな。「Hey, Harry!」とかね、すごいなれなれしい…(笑)
O:(笑)
H:もう友達だよね(笑)その後ロニーは亡くなって、ドクター・ジョンも亡くなって…っていう。そんなことがありましたね。
佑果:私が初めてドクター・ジョンさんを聴いたのは"Right Place Wrong Time"がピンと来て…そしたら、細野さんがなんと、F.O.E.で…
H:そうそうそう…
佑果:カヴァーされているということで、聴いてみると…最高ですね…
H:うーん…打ち込みでやっちゃったのはちょっとね…
佑果:やー、でも、私は…
H:そうすか。よかった。
佑果:MIXテープに入れました、NTSの…それをかけてもいいですか?
H:あ、じゃあ……いいよ(笑)
O:(笑)
佑果:お願いします(笑)
Right Place Wrong Time - F.O.E.
(from 『Sex, Energy And Star』)
H:いやー、これは…F.O.E.っていうユニットで、ドラムスがたぶん…生音なのかな。よくわかんない、憶えてないや(笑)
O:(笑)
H:ニューヨークから来てくれたアントン・フィア(Anton Fier)っていうドラマーと…ラウンジ・リザーズ(The Lounge Lizards)っていうのをやってる人たち。
佑果:へぇ…
H:パーカッションは本物のアフリカ系の楽器使ってるアイーブ(Aiyb Dieng)っていうミュージシャン。
佑果:んー、なるほど。
H:で、一回、ジェームス・ブラウン(James Brown)が日本に来たときに、前座で出たんですよ。
佑果:えー!
H:そしたら座布団が飛んできたっていう…(笑)
O:(笑)
佑果:そんなことが!(笑)
H:座布団っていうか、すごいヤジが飛んできて、もう大変だったね(笑)
佑果:えー!(笑)
H:たぶんね、ジェームス・ブラウンのファンって矢沢永吉ファンみたいな人たちだから…(笑)
O:(笑)
佑果:そうなんですか…
H:場違いなところに出ちゃって大変な目に遭って…いろんなことがあったな。
O:(笑)
佑果:F.O.E.で"Sex Machine"も…
H:やった。やったけどね、なんだか…
佑果:私すごい好きでした。
H:ホント?今なら聴けるけどね、当時は…悩んじゃったよ(笑)
佑果:(笑)
H:ジェームス・ブラウンも弱ってる頃だったの。まだヒットする前だったんだよ。あの、再復活したじゃない?"Living in America"っていう曲で。その前だったんで、あんまりみんなが騒いでなかったの。だから出来た、みたいなね。
佑果:そうなんですか…ジェームス・ブラウンはずっとスターな存在なんだと思っていました。
H:いや、やっぱりね、ああいう人たちはみんな浮き沈みがすごい。
O:んー…
H:まあでも、ドクター・ジョンは安定してるね。
O:そうですね。
H:ずーっと…ミュージシャンがみんな尊敬してたから。
佑果:んー…
H:時々、やっぱり、日本にも…何度も来てるよね。
O:来てます。
H:だいたい行ってるんですけど。で、すごい弱ってるときがあったわけ。ドクター・ジョンも。
佑果:はい。
H:神経症になって、リハビリやってたりしてて。そういう最中に来たことがあるんだよね。1人か2人で来たの。で、陣中見舞いに楽屋に行って、セージスティックっていう…
佑果:あ、はい、セージ。お香みたいな。
H:お香ね。魔よけみたいな。それを差し入れにあげたら、めっちゃくちゃ喜んでるんだよ(笑)
O:(笑)
H:あ、こんなに好きなんだ、と思って(笑)
佑果:あー、お香…セージをあげたのはすごくいいですね。リフレッシュされたんだと…
H:そう。セージをパッと出して見せたら、「Woow!!」とか言って。「Smudge Stick」って言うんだよね、向こうでは。
佑果:ほー…初めて聞きました。
H:で…「Dr. John」ってメディスンマン(medicine man)の名前だよね。ニュー・オーリンズの。治療師。
O:うんうん。
佑果:あー!なるほど。
H:それで「ドクター」って言うの。インディアン…ネイティブ・アメリカンのカルチャーをすごい引きずってるのがニュー・オーリンズのカルチャーだから。で、メディスンマンっていうのはセージを使ったりするんだよね。お祓いで。そんなようなことがあって。
佑果:なるほど…
H:ドクター・ジョン、もっとかけようかな。きょうは。
O:はい。
H:レオン・レッドボーン(Leon Redbone)はまた今度ね(笑)
O:(笑)なんか、ちょっとかき消されちゃった感じがレオン・レッドボーン、しますよね。
H:同時期だからね。
O:ね。ほぼ同時だったんで…
佑果:そうなんですか…
H:うん。じゃあドクター・ジョンで…やっぱり"Big Chief"はかけないわけにはいかないんで。オルガンはロニー・バロンです。『ガンボ』というアルバムからです。
Big Chief - Dr. John
(from 『Dr. John's Gumbo』)
H:はい。ドクター・ジョンで"Big Chief"。岡田くん。
O:はい。
H:この「Big Chief」の由来を佑果ちゃんに説明してあげてよ。
佑果:お願いします!
O:いやいやいや…お願いしますよ(笑)
H:そっか(笑)えーとね…オリジナルはプロフェッサー・ロングヘアー(Professor Longhair)っていう、ニュー・オーリンズの…まあ、大先生だね。こういうリズムを考え出したりしてる。
佑果:あー、なるほど…
H:だから、ドクター・ジョンの先生はアラン・トゥーサン(Allen Toussaint)っていう…
佑果:アラン・トゥーサン?
H:うん。この人もすごい人気があって、数年前に亡くなってしまいました。このスタジオに来たことがある。
佑果:おお…
H:で、僕は怒られたことがある(笑)
O:(爆笑)
佑果:どうしてですか…?
H:なんだっけな…誰かがセッティングして、僕は知らない間に来るってことになってて。慌てて来たら、「曲はどれだ?」って言うんで、曲なんかないから…(笑)
O:(笑)
H:「今度来るときは曲を用意しておいてくれ」って言われて…(笑)
佑果:ドキドキしますね(笑)
H:ドキドキしちゃったよ(笑)誰があれをセッティングしたのかな…まあ、そういうアラン・トゥーサン大先生ね。ドクター・ジョンの先生がトゥーサン。で、トゥーサンの先生がプロフェッサー・ロングヘアーっていう。
佑果:つながって…
H:つながってる。だから「伝統的」なんだよね。大元はファッツ・ドミノ(Fats Domino)とかデイヴ・バーソロミュー(Dave Bartholomew)とか。そういう、なんかこう…ぜんぶ知ってくとおもしろい流れがあるわけで…で、ドクター・ジョンが亡くなって、その後はどうなってんの、っていう時代だよ。いま。
O:んー…
H:[伝統を継承している人は]誰かいるの?っていう。
O:わかんないっすね。
H:わかんないでしょ?
佑果:ちょっとdigしたいですね。
H:うん、しといて。
佑果:レコードをちょっと、見てみます。新しいものとか…ニュー・オーリンズ。
H:つなげてほしい、佑果ちゃんにね。ダーッと。こっちはもう引退だから(笑)
佑果:いやいやいや…(笑)現役ですよね。コンサートもすっごく盛り上がって。LA、ニューヨーク…
H:なんかね、現実感がないんだよな。帰ってきてみると。ずーっと時差ボケでボーッとしてるじゃない。夢だったのかな?とかね(笑)
2人:(笑)
佑果:夢じゃないです!(笑)
H:夢じゃないよね。ぜんぜん現実的な気持ちになれなくて。
佑果:いやー、夢のような時間でしたけど、それが現実だと思うと…ホントに素敵な思い出になりました。
H:そうだよね。もう、思い出だよ。
3人:(笑)
H:じゃあね、ドクター・ジョン続けて…なんかない?岡田くん。
O:じゃあ『Gris-Gris』から…
H:あー、『Gris-Gris』、良いアルバムでしたよ。
O:"Mama Roux"とかどうですか?
H:いいですね。もう時間が来ちゃってこれが最後になっちゃうけど、全部かけたいよね。
O:ね(笑)
佑果:もっと知りたい…
O:もっともっとね、うん。
H:じゃあ、また次の機会だね。
佑果:はい。
Mama Roux - Dr. John
(from 『Gris-Gris』)
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↓この世でいちばんカッコいい7インチ(個人の感想)
rest in peace....