2019.03.31 Inter FM「Daisy Holiday!」より
H:こんばんは。細野晴臣です。えー、きょうはですね、1年ぶりですね。ゲストに…ハマちゃん。
ハマ:はい、OKAMOTO'Sのハマ・オカモトです。よろしくお願い致します。
H:ハマちゃんって呼んじゃったね(笑)
ハマ:いいんですよ、細野さん。
H:いいの?(笑)
ハマ:なんでも大丈夫ですよ(笑)1年ぶりなんですね。あっという間…
H:去年の3月…いまぐらいに来て頂いたんです。あっという間だね。んー。
[*daisy holiday-radio playlist: playlist - 3.25.2018]
ハマ:その後、僕が…猪野さん(INO hidefumi / 猪野秀史)と立夫さん(林立夫)と茂さん(鈴木茂)とビルボードでやったときに細野さんに来て頂いたりとか。
H:はいはい。観に行った。
ハマ:その[ライヴの]後お会いしてますから…ラジオで言うと1年前。
H:そうかそうか。んー。
ハマ:あのライヴで…"薔薇と野獣"をやったんですよ。
H:そうそうそう!それで…自分で[再構築を]やる前だったから…(笑)
ハマ:あのときって、『HOCHONO HOUSE』の制作っていうのは…
H:やってない。
ハマ:あ、やってないんですか!やってないんだ。
H:たぶん(笑)
ハマ:あ、そうですか。いや、僕そのときに、細野さんに楽屋で「いやー、完コピだったじゃない」って言われて。
H:そうなんだよ。
ハマ:とてもうれしかったですけど…そう、あれはホントに完コピをめざそう、っていうのでやってたので。めずらしく。
H:めずらしいね。あれ、人がやってるのを初めて聴いたね(笑)
ハマ:そうですよね(笑)そう、その後に『HOCHONO HOUSE』のニュースが出て…
H:はいはい。
ハマ:で、細野さんが言うには「["薔薇と野獣"を]ひさしぶりに聴いた」ってあのときおっしゃってたんですね。あの曲、ライヴで、しかも他人がやるなんて、っていまみたいにおっしゃってたんで…
H:そうそう。
ハマ:でも、なんとなく…いや、これ細野さんは『HOCHONO HOUSE』、もう制作してたんじゃないの?と思って…
H:いやいやいや(笑)
ハマ:そしたら、まさかの…それとはぜんぜん関係無いんですね(笑)
H:関係無いって言うかね(笑)うん。
ハマ:あ、もう、じゃあホントに…逆にビックリっていう感じだったんですね。
H:いや、ビックリだったよ。特に猪野くんが歌うっていうことにビックリしたね(笑)
ハマ:あー、そうですよね。あれはキーが細野さんの…『HOSONO HOUSE』に入っている、原曲キーのままやりたい、っていう…僕がワガママを言ってですね…
H:そんなこと言ってんだ(笑)
ハマ:そう。最初はやっぱり、猪野さんが「もうちょっとだけキーを変えると歌いやすい」っていうふうに…
H:そりゃそうだろう。
ハマ:そう、そらそうなんですけど…
H:言い張ったんだ(笑)
ハマ:僕が、あのベースラインをあのキーのまま弾きたい、っていうのを言いまして…
H:あー、あのキーじゃないとね。
ハマ:そう、あのキーじゃないとあの感じが出ないというか。
H:キー変えると違っちゃうんだよなぁ。わかるわ。
ハマ:そうなんですよね。なんで、すごいワガママを言ってやらして頂いたんですけど…当日に猪野さんから「きょう細野さん来られるよ」って言われて…
H:(笑)
ハマ:ま さ かご本人の前でやるとは僕思ってなかったんで…
H:お互いにね(笑)
ハマ:(笑)そう、そんなことがありました。
H:ね。
ハマ:でも、1年前…僕、このスタジオにある電球を直した記憶がすごいありまして…
H:ホントに?(笑)
ハマ:なんか、うまく光らなくて…僕がいじって光るようになった記憶がありますけど(笑)
H:すごい。救世主だ。
ハマ:よろしくお願い致します。
H:なんでも光らせるんだね。
ハマ:そんなことは…(笑)これはホント、なんかね…その記憶がありますね。
H:じゃあ、きょうはね…お互いにね、ベーシストとしての話をしようかな、と。あんまりしてないもんね。
ハマ:光栄ですね。細野さんもそんなにたくさん…ベースに焦点を当ててお話しすることも…
H:ないない。
ハマ:専門誌とかでお話しされてるのはね。それこそ「BASS MAGAZINE」とか…
H:あー、そうそう。
ハマ:はい。ああいうものでは何度か拝見してますけど、そんなにたくさんお話しされてるイメージも…
H:だって、話すことがあんまり無いんだよね。
ハマ:そんなことは…(笑)
H:よく知らないんだよね(笑)
ハマ:(笑)
ハマ:でも、そもそも…[収録が]始まる前も話題になりましたけど、元々細野さんはギターを弾かれてたじゃないですか。
H:そうそうそう。
ハマ:でも、それはきっと…世界中にいる細野さんファンからすると「文字の情報」というか。
H:うん。
ハマ:「元々ギターだった」という文字情報でしかないわけじゃないですか。もちろん、演奏は聴いたことありますけど。
H:あー、そうかそうか。
ハマ:そこから…まあ、写真に写ってたりとかされてるはっぴいえんどとかの頃って、もうベーシストじゃないですか。
H:そうそう。
ハマ:[ベーシストになる]きっかけはなんだったんですか?
H:あのね、たぶん、ベースやる人ってみんなそうなんじゃないかと思うんだけど…いや、ハマくんは違うかもしれないけど。
ハマ:はい。
H:「ベース弾く人がいないから」。
ハマ:…僕もです(笑)
H:あ、そう!じゃあおんなじだ(笑)
ハマ:おんなじですね(笑)なるほど。
H:みんなギターやりたがるじゃん(笑)
ハマ:そうですね。
H:で、中学の頃は…同級生かな?みんな集まって、ベンチャーズ(The Ventures)ブームだったんで…
ハマ:んー、はい。
H:みんなギター買うんだよ。
ハマ:うん、やりたいですよね、ベンチャ-ズ。特にブームだったら。
H:そうね。で、僕エレキギター持ってなくて。クラシックギターしか持ってなかったんで…で、誰かが「ベース持ってる友達がいるよ」って言うんで、じゃあ借りてきて、って言って…それで僕がベースをやったのが初めてだな。
ハマ:へー…あ、じゃあ、もうホントに、もう…(笑)
H:[他にやる人が]いないから(笑)
ハマ:ポジションが埋まってて、自分も持ってなくて、そしたらたまたま…でも、そういう方ホントに多いですよね。ベースって。
H:多いんじゃないかね。
ハマ:なんでなんでしょうね?
H:ポール・マッカートニー(Paul McCartney)もそうかな?(笑)
ハマ:ね。なんでなんでしょうね?僕も、うちのバンドは中学の同級生なので、いまのギター(オカモトコウキ)がもうギターで。
H:ああ、もう、最初からね。んー。
ハマ:で、いまのボーカル(オカモトショウ)は元々ドラムをやっていて…
H:あ、そうなんだ。
ハマ:で、中学2年で始めたんですけど…
H:あー、そう。早いね、でもね。
ハマ:そうですかね?思春期というか、やっぱり、歌うのが恥ずかしかったんですよね。
H:あ、ちょっと似てるね。僕もすごい恥ずかしい…いまだに恥ずかしいけど(笑)
ハマ:あ、そうですか。やっぱ、そういう気持ちがあったんですね。
H:あったあった。
ハマ:そう、それで…消去法って言ったらアレですけど、もうベースしか残ってなくて…(笑)それででしたね。はい。
H:そうだよね。
ハマ:あ、でも[細野さんも]そういうきっかけだったんですね。
H:でも、考えてみると、当時好きだった…ビートルズだってベースでしょ?ポール・マッカートニー。
ハマ:そうですね。
H:あと、ビーチ・ボーイズもブライアン・ウィルソン(Brian Wilson)が…
ハマ:ベースですね。
H:…ベースすごいんじゃない?と。
ハマ:たしかに。ベースいいんじゃないか、と。
H:そうだよ(笑)
ハマ:(笑)
H:バンドを引っ張ってくやつがベーシストなんじゃないかな、と。
ハマ:たしかに。脈々と、そういうポジションではありますよね。
H:そう。ところが女の子は、「ベースってどの音?」みたいなね。
ハマ:わかります…ホントにそれですよね…
H:(笑)
ハマ:いま「わかります」って言いながら細野さんを指さしてしまった…(笑)失礼しました。すごい反応しちゃった、いま(笑)
H:いやいや…(笑)
ハマ:いや、僕も…忘れもしない、部活の発表会みたいな。校内の。
H:はいはい。
ハマ:1年に何回かあったんですけど…同級生が観に来るわけじゃないですか。で、演奏終わった後に、「弾いてた?」って言われたんですよ、僕。
H:(笑)
ハマ:同級生の女の子に…もう、それ忘れられなくて。だから、やっぱり「聞こえてない音」というか。簡単に言うと。
H:そうだよね。なんか、聴き取りにくいんだろうね。
ハマ:聴き取りにくい音なんだろうな、っていうのがそのときハッキリわかりまして。僕は性格がひん曲がってるので、その次のライヴにですね、半音下げで演奏しまして。バンドにはたいへん迷惑を…
H:ヒドい…(笑)
ハマ:そしたら、でも、違和感を感じるじゃないですか。お客さんも。
H:そりゃそうだ(笑)
ハマ:そしたら今度、「すごい間違えてた」って言われて。終わった後(笑)
H:(笑)あんまりいい考えじゃなかったね、それは…
ハマ:そうですね(笑)14歳の若気の至りでしたけど。わからせてやろう思ったんですよ。
H:すごいな…それは考えたことなかったな。
ハマ:そういう経験があるぐらい…たしかに聞こえずらいというか、聴き取りずらいパートではありますよね。
H:まあ、特に昔はそうだったよ。「ベースってどの音?」みたいなね。んー。
ハマ:ちょっと踏み込んだ話というか、細野さんが憶えてらっしゃらなかったらアレですけど…本当に最初の頃って、何のベースだったかとかって憶えてらっしゃいます?
H:ぜんぶ借りものだから…
ハマ:あー。他人の、っていうことですよね。
H:そう。自分で買うつもりもなかったわけ。で、人が持ってたのは…当時、日本のメーカーが続々出てきた頃で、グヤトーン(Guyatone)のベースだったかな?
ハマ:あー…
H:ギターはみんなテスコ(Teisco)だったりね。そんな時代だった。
ハマ:二大メーカーですもんね。
H:そう。で、フェンダー(Fender)…に、似たようなね、タイプの。
ハマ:そうですよね。ジャズベースみたいな形の…
H:そうそうそう。
ハマ:細野さんがエルク(ELK)を持ってらっしゃるのを僕、写真で拝見したことがあるんですけど。
H:あ!あれはもう、ずいぶん後の…もうスタジオミュージシャンになってた頃に…まあ走りだったけどね。まだ若かったけど…エルクの楽器部門に勤めてたカントリーシンガーの方がいてね。斉藤さん(斉藤任弘)という方。「日本のジョニー・キャッシュ」と言われてて。低音の人。
ハマ:へぇ…
H:その人のレコーディングを手伝ったんだよ。そしたら、「いま試作機があるから使ってみないか?」って言われて…(笑)
ハマ:えー!すごい…
H:それで持ってきてくれたのがエルクの、フェンダーみたいな…
ハマ:えー!
H:これ、タダでくれるの?って思って…(笑)
ハマ:ラッキー!って…(笑)
H:で、しばらく使ってたよ。
ハマ:あ、プロトタイプだったんですね、じゃあ。もう。
H:そう、試作品だから売ってなかったんだと思うけどね。
ハマ:わー、すごい…そうなんですね。ご自身で買われた1本目とか、憶えてらっしゃいますか?
H:えーとね…最初はグヤトーン借りたり…で、大学に入ったら「ビートルズバンドにベースで入ってくれ」って言われて、それも誰かのを借りてたんだよね。
ハマ:はいはい。
H:それ…楽器のブランドは忘れちゃったな、なんだか…なんか弾いてたんだよ(笑)
ハマ:へー。
H:で、その後に…初めてプロに参加したわけ。エイプリル・フール(Apryl Fool)っていう。それはね、元々グループ・サウンズのフローラル(ザ・フローラル)っていうバンドがエイプリル・フールになって。ドラムスとベースが変わった。
ハマ:ふんふん。
H:で、元々楽器持ってるバンドだったわけ。
ハマ:そうか、なるほど。
H:それでリッケンバッカー(Rickenbacker)のベースをあてがわれたっていうかね。
ハマ:はいはい。
H:…重くて重くて(笑)
ハマ:(笑)でも、上等な楽器ですもんね。当時からすると。
H:上等、だったけど…
ハマ:でも、すごい音ですもんね。
H:そうね。なんか、でもね、やたらネックが長くて、手で押さえてないとネックが下にダラーンって下がっちゃう(笑)
ハマ:あー、重さで…へー。あ、そのときも…それも借りた?それはもう、もらった、譲り受けたんですか?
H:いやいや、バンド解散したときに返してくれって言われた…(笑)
ハマ:あー、そうなんですね。そこまでもまだ他人の…他人に借りて…
H:そう、ずっと借りてたね。
ハマ:買おう!ってなったタイミングは…
H:ある。
ハマ:どこなんですか?
H:はっぴいえんどやってるとき。うん。でね…はっぴいえんどのエンジニアやってた吉野金次さん。
ハマ:あ、吉野さん。はい。
H:「知り合いがベース売りたがってるけど、買う?」って言うんだよね。
ハマ:おお…
H:ものはなんですか?って言ったら「フェンダーだ」と。ジャズベース。1968年ぐらいの。
ハマ:はいはい…
H:それを持ってきてくれたら、すっばらしい楽器だったわけ。
ハマ:へぇ…
H:で、元々、グループ・サウンズだったサベージ(The Savage)の人が使ってたっていうわけよ。そしたら、サベージのベースって寺尾さん(寺尾聰)、だったかな…
ハマ:調べましょうか?
H:なんかね、そんなような…僕の勘違いかもしれないけど、寺尾さんが使ってた、と。思いこんでて…4,5年前かな、寺尾さんに会ったときに…
ハマ:おお…
H:寺尾さんのベース僕、使ってますよ、って言ったら、「自分はベース売ったことない」って言うんだよね(笑)
ハマ:(笑)じゃあ、なんなんでしょうね?巡り巡って…
H:わかんない(笑)
ハマ:でも、良い楽器ってことですもんね。
H:良い楽器。あのね、ピックの痕があるわけ。グループ・サウンズの人が使ってたんだね。
ハマ:あー、そうか。
H:ピックの疵がいっぱい付いてて…疵だらけなんだけど、軽くてね。カラッカラに乾いてる。いまだにそれを使ってるっていう。
ハマ:いまだにつかってらっしゃる「あの」ジャズベースですか?
H:そう!あれ。
ハマ:あ!あれですか!
H:うん。
ハマ:あ、じゃあホントにもう、そのタイミングで、ずっと…
H:そうそう。もう良い楽器に巡り合った所為なのかね。
ハマ:あ、すごい…そうなんですね。でも、それもホント、人の縁なんですね。いまのお話を聞いてると。
H:そう。ぜんぶそうね。楽器屋で買った、っていうんじゃないんだね(笑)
ハマ:へぇ…
H:もちろん、その後ずいぶん買ったけどね。
ハマ:はいはいはい、いろいろ…なるほど。いや、すごくそれを聞いてみたくて。細野さんの楽器遍歴を。
H:そっか。
ハマ:初めてお会いしたときに、フレットレスのプレべでしたっけ?
H:そうそう、プレシジョン、持ってた。
ハマ:ですよね。プレシジョンで…それがすごく良くて…
H:大好きだったんだよ。
ハマ:好きだったのに…失くなっちゃったんでしたっけ?
H:盗まれたの。
ハマ:盗まれた…もう、いちばんヒドいやつですね…
H:ヒドい。いや、自分もいけないんだよ?車に入れっぱなしだったの。
ハマ:でも、車上荒らしってことですね?じゃあ。
H:窓を割られて…
ハマ:うわー、そっか…そう、「それが忘れられないんだ」ってお話をそのときされてたので…
H:うん。
ハマ:そう、それもね、すごく気になって…なんか、録音で…あれ、ユーミンさん(荒井/松任谷由実)とかのときに弾いてたっておっしゃってましたね。
H:そう、ユーミンと、吉田美奈子の最初のソロ[『扉の冬』]はぜんぶそれ使ってたね。
ハマ:へぇ…それが、だから、ずっと離れなくて、僕も…そういう楽器もあったんだ、っていう。
H:うん。あれ、盗まれなければたぶん、いまも使ってるんだろうけど。あまりのショックでその後、フレットレスから離れちゃったね。
ハマ:なるほど…もう忘れられなくて…(笑)
H:そうそう、すごいショックだった(笑)
ハマ:(笑)
H:一応、警察に行ったんだけどね。出てこなかった。
ハマ:まあ、でも、そうですよね。いまみたいに情報もすぐ検索で出ないですしね。売られちゃってもね。
H:監視カメラもないしね、当時。
ハマ:そうですよね。なるほどな…
H:じゃあ、ハマくんの場合は…聞きたいね。
ハマ:あ、僕ですか?きっかけですか?
H:最初、中2の頃からベースやってたって言ったじゃない?それは自分で買ったわけ?
ハマ:それは…僕が中学1年の終わりに、2年からやりたいな、部活に入りたいな、と。なんでかって言うと…さっきも僕言ったんですけど、うちのギターとボーカルが、もう既に軽音楽部が中学からあったんですよ。
H:あー。
ハマ:で、最初は普通の友達だったんですけど、途中から彼らは音楽を始めて。もう、会話が音楽のことだけになるじゃないですか。楽しくてしょうがないんで。
H:そうね(笑)本っ当、音楽好きなんだね。
ハマ:ホントにもう、変わらないんですけど…なんで、僕からすると外国語みたいな。もう、一つもわからないので。
H:ああそう(笑)
ハマ:で、これは何かしら音楽始めないと、友達がいなくなると思って。このままでは。
H:あー、なるほど。
ハマ:それで始めようと思って…なんで、最初は頼みこみましたね。僕、いままで趣味だとか習い事を持続的に、とか、まったく無い子供だったので。そのとき初めて懇願して。両親に。
H:えー…
ハマ:で、もう、なんか…中学の入学祝いとナントカとナントカとぜんぶセットで、っていうことで…誕生日と、とか。みたいな感じで、入門編みたいな…シールドと小っちゃいアンプとチューナーと、ストラップと楽器がセットになってるような。
H:そんなのがあるんだね(笑)
ハマ:最近はあるんですよ。楽器屋さんで。そういうのの、当時あったようなやつの…安めの入門セットみたいなやつですね。値段はもうわからないですけど…そういう入門セットみたいなものを、初めて買い与えられましたね。
H:ほう…それは日本製の楽器っていうこと?
ハマ:フェンダー・ジャパンですね。
H:あ、フェンダーなんだね。
ハマ:フェンダーでした。フェンダーでもそういうセットがあったので…
H:へぇ、知らなかったね。
ハマ:そこが巡り合い、でしたね。
H:で、最初は…どうやって弾いたの?(笑)
ハマ:最初は…僕はなにも知らなかったので…ギターみたいなものだ、っていうぐらいの認識しかなかったんですけど…(笑)届いてみたら、まあ大きいし重いし…
H:重いよね。んー。
ハマ:弦も太いし。「♪ジャーン」のイメージだったんですけど、「ボーン」しか出ないから…(笑)
H:そらそうだ(笑)
ハマ:ホントに、そらそうなんですけど…(笑)もう、けっこう…落ち込みましたね、早々。
H:あー、そう。
ハマ:ただ、部活が…当時の邦楽?日本の音楽を…なんか、暗黙の了解で「やらない」っていう部活だったんですよ。先輩たちが60年代、70年代の、主にイギリスのロックみたいなのをやってる、けっこうオシャレな…
H:めずらしいね。
ハマ:そうなんですよ。その先輩たちのおかげでもあるんですけど…最初の課題というか。先輩たちがやってるものを僕らもやる、みたいな形だったので。
H:ほう…
ハマ:ビートルズから入ってクリーム(Cream)とかツェッペリン(Led Zeppelin)とか。
H:すげぇ。
ハマ:その辺をとにかくやる、っていう部活だったんですよね。
H:最初からやったんだ、そういうのを。それは、じゃあ、ハードル高いね。
ハマ:ハードル高いですね。でも、ハードルが高い分…いわゆる、ボンボンボン、っていうルート弾きみたいな…いまとなってはルート弾きの大切さもわかるんですけど、当時の「あ、もしかしたら俺、つまらない楽器に当たっちゃったかも」っていうその概念を…
H:(笑)
ハマ:それこそ、ポール・マッカートニーであったり、ジャック・ブルース(Jack Bruce)であったり、ジョン・ポール・ジョーンズ(John Paul Jones)であったりのプレイで、あ、ベースもなんかすごい、おもしろい…
H:よかった(笑)
ハマ:つまらない楽器じゃないんだ、っていうのを最初に気付けたので…
H:あー、そっかそっか。
ハマ:それのおかげでのめり込んでいった感じでしたね。
H:良い出会いだったね。じゃあね。
ハマ:良い出会いでしたね。それで、もしかしたら…いわゆるルート弾きをボンボンボン、ってやってるだけだったら半年もたなかったかもしれない、っていうぐらい…
H:うんうん(笑)
ハマ:はい。そんな感じでしたね。僕は。
H:そうか。でも、始めた頃は似てる年代だね。僕も中学生からやってるからね。
ハマ:そうか、そうですね。ということは、細野さんも…
H:14,15歳?
ハマ:じゃあ、中学2,3年っていうことですもんね。
H:そうそうそう。
ハマ:そうか。そういうきっかけでしたね、僕は。
H:なるほど。
H:…えー、音楽かけたいね(笑)
ハマ:(笑)ぜひぜひ…
H:自分で最近…昔こんなベース弾いてたんだ、っつって、うめぇな、とか思ったのが…
ハマ:おお…たくさんありますよ細野さん(笑)
H:いや、自分であんまり聴いてなかったっていうか。あ、こんなことやってたんだ、と思って。
ハマ:でも、ご自身で…自分で[上手いと]思うってまた違いますもんね。人から言われるそれと。「俺はこれ、自分で良くやったと思う」っていうやつ。
H:そうなんだよ。それね、誰も言ってくれないからかけちゃうけど。
ハマ:(笑)聴きたいです。
H:どっちがいいかな。最近…聴いたほうにしようか、じゃあ。幸宏(高橋幸宏)のね。『Saravah!』のリメイク版(『Sawavah Saravah!』)の"La Rosa"という曲、聴いて。ちょっと長いかな。
ハマ:はい。
La Rosa - 高橋ユキヒロ
(from 『Saravah Saravah!』)
ハマ:すごい!
H:まあ、これくらいでいいや。
ハマ:(拍手)
H:いやいやいや(笑)ちゃんとベース聴いてくれてるのがうれしいな(笑)
ハマ:カッコいい!
H:「ベースってどれ?」っていうタイプの曲だよ、これ(笑)
ハマ:あ、そうですかね?まあ、僕は、そういう意味では、職業耳みたいなのはあるかもしれない…でも、これはたぶん一般の方も聴き取れる、ちゃんと。こんなに16[ビート]で持続…できないですもん、俺。
H:あ、そうかね?(笑)
ハマ:あんな、こう…しかも、あそこに入るまでってもっと、音符の長い…
H:そう。「白丸」ってやつ。
ハマ:そうですよね。いや、ホントに細野さんのベースは…僕たぶん、以前ご一緒したときにも言ってるかもしれないですけど、音色はもちろんですけど、「音の長さ」が、もうホントにカッコよくて…
H:なるほどね。ミュートするからね。んー。
ハマ:そう、そのミュート具合が、僕なんかが真似してもこうはならない…まあ当たり前なんですけど(笑)
H:んー。
ハマ:やっぱ、細野さんのベースのミュート具合と…僕は、遊びにいってる感覚っていうのがすごいある。聴いてると。細野さんのベースって。
H:あー、そうか。
ハマ:たぶん「ルートのここにいれば、別にベースとしては成立するけど、なんかこっちに行ってみよう」とか。「あー、なんかこっちじゃなかったなぁ」みたいな瞬間があったりとか…
H:それって間違いじゃない(笑)
ハマ:でも、それすらもフレーズになってるっていうか。細野さんのベースって。
H:なるほどね。
ハマ:それをね、それがホントに…他の人、外国のミュージシャンでも、僕の中では無い感覚というか。
H:本当?それはなんか…照れくさいわ(笑)
ハマ:(笑)でも、この曲はまさしくその「細野さん節」がすごい出てる…
H:これ、当時1978年に出たアルバムで、そのまんまの演奏なんだけど、当時はこんなミックスじゃなかったんだよ。
ハマ:へー。
H:もっと小っちゃかったの、ベースが。
ハマ:あ、もうちょっと聴き取りづらい感じだったんですか。
H:だから、当時はぜんぜんわかんなかったの。
ハマ:自分でも?(笑)
H:で、再発されて。こないだね。聴いたら、あ、ちゃんと聞こえるじゃん!と思って。
ハマ:当時って、こういうレコーディングも多かったじゃないですか、きっと、細野さん。自分の作品以外の。
H:そうね、多かったよ。ベーシストだったからね。
ハマ:そうですよね。その時って、もうコード進行表っていうか、ヘッドアレンジのスタイルで…特に、たとえば事前にすごいいっぱい、ぜんぶの曲聴いて…まあ、持ってきたフレーズみたいのはあるのかもしれないですけど。
H:それはあるよ。んー。
ハマ:現場で、っていうのがやっぱり多かったんですか?
H:もう、ぜんぶ現場だよ。
ハマ:あー、やっぱ、やってみないとわかんないっていうのもありますしね。
H:だいたいテイク1,2ぐらいで…3ぐらいかな。で、完成しちゃうっていう。
ハマ:へぇ…これも、じゃあ、ホントにたぶん、そんなに何回もやったというよりは…具合を1回やって、あー、こういう感じか、っていうのを擦り合わせて。
H:そうそう。うん。
ハマ:もっかいやって…でもまあ、1個前ぐらいがいいかな、みたいな。
H:そんな感じだよ。だから…当時の音楽的な手法とか、言語とか、パターンとか。いろんな人がいろんなことやってるのを…ひとつの流行りみたいのはあるしね。
ハマ:はいはいはい。
H:そういうのをもう、毎日聴いてるわけだから、自然と入っちゃってるんだよね。
ハマ:なるほど。
H:で、いちばん好きだったのがチャック・レイニー(Chuck Rainey)っていうベーシストで。
ハマ:はい。
H:その人の感じなんだよ。そのまんまだよね。これ聴くと。んー。
ハマ:それこそ、細野さんの音楽を聴いて育ってる僕らも…インタビュー読んで、細野さんはチャック・レイニー好きだった、っていうのを聴いて、もちろん、チャック・レイニーの作品も聴くようになるんですけど。
H:うんうん。
ハマ:やっぱ、その吸収の仕方っていうか。あ、たしかに!っていうところもあれば、これはホントにもう、細野さんしかやってない、っていうところもあって。たぶんそれはご自身には「そうか」って感じかもしれないですけど…
H:わかんないね。
ハマ:そこがね、カッコいいんだよな…
H:いやー、でも、いまの音楽と違うもんね。「ロック色」が無いんだよ、僕。
ハマ:なるほど。
H:こう、「ゴインゴイン」って、すごい音出せないんだよね(笑)
ハマ:「ゴインゴイン」…(笑)そうですね、言われてみれば…はっぴいえんどもバンド形式ですし、なんならロック調の曲もありますけど、そういうサウンドではないですもんね。
H:だからね、ホンットに…根が地味なんですよね。
ハマ:(笑)それが音にも影響が出てるという…
H:うん。
ハマ:そっか。でも、とてもソウルフル…という言葉で片付けてしまうのはアレですけど…
H:まあ、ベース持つとそうなっちゃうね。リズム&ブルースになっちゃうね、どうしても。んー。
ハマ:『HOCHONO HOUSE』でも"CHOO CHOO ガタゴト"とか、ホントにこう…ウワァ、っていう…ウワー、細野さんのベースだ…っていうやつが…そういう意味では僕、ひさしぶりに録音物では聴いて。
H:そうだよね。ひさしぶりにやったような気がするね。
ハマ:そうですよね。あの…星野源さんのアルバムのインストで細野さんがエレキベース弾かれてるじゃないですか。1作前の…
H:あー、あったあった。
[*『YELLOW DANCER』収録の"Nerd Strut(Instrumental)"。]
ハマ:あれも、とても…うわー、ひさしぶり!っていう感じだったんですけど。『HOCHONO HOUSE』の…まあ、全編わたってそうなんですけど、特に"CHOO CHOO ガタゴト"はもう、本当に…あー、もう、ホント、1音目から…と思って。
H:(笑)
ハマ:あれはアンプで出したんですか?
H:いや、ライン録りだけどね。
ハマ:あ、ラインですか。へぇ…
H:昔はね、アンプ使ってたけど、いまはもう使わなくなっちゃってるね。もう、面倒くさいんで…(笑)
ハマ:(笑)でも、もう、あの音作りですからね。そこはきっと、細野さんの魔法、っていうか。趣味もあるんでしょうけど。いやー、あれはホント、感動しました。
H:ありがとうございます。よかった。
ハマ:他の曲ももちろんですけど…そうか。
H:じゃあ、OKAMOTO'S聴こうかね。
ハマ:あ、いいですか?
(D:来週に…)
H:え?来週?2本録りね(笑)
ハマ:(笑)じゃあ、来週、ぜひ、お時間あれば…
H:じゃあ、来週ね。きょうはここまでで。また来週お願いしまーす。
ハマ:はい、よろしくお願いします。