2022.03.06 Inter FM「Daisy Holiday!」より
手作りデイジー🌼#29
(以下、すべてH:)
はい、細野晴臣です。元気があるわけではないんですが…まぁ、ラジオは元気よくやっていかないとね。この60年代特集は去年で終わらせるつもりだったんですけども、2月も過ぎ、3月になってしまいました。でも、ほとんど終盤に差し掛かってますね。なんでかと言うと、いっぱい聴いてきた中で取り残してここではかけられなかったような音楽を要約するというんですかね。ダイジェストっぽくやっていきたいと。それをやらないと気が済まないので。今回もそれで…来週、再来週、ひょっとすると続くかもしれないですね。なぜか。終わらせたいんですよね。早く終わらせたいというわけではないんですけど、あまりにも根が深くて。60年代。かけられ中った音楽というのはいっぱいあるんですけれども。聴いている方の中にはあれがかからない、これがかからない、と思う方もいらっしゃると思うんですけど。それはしょうがない…というか、はっぴいえんどの時代に仲間4人で聴いてきた音楽…影響された音楽ですね。それを中心にかけてきたんですけど、取りこぼしてるものがいっぱいあるので。それは60年代だけじゃないですね。70年代の初期にもかかってます。今回もそういう音楽がいくつかあります。それ以降はだいぶ変わってきたんですけど、60年代の勢いは70年代初期まで続くわけです。そこら辺を踏まえてランダムにかけていきたいと思います。
では最初はスティーヴ・ミラー・バンド(Steve Miller Band)です。スティーヴ・ミラーという人はポール・マッカートニーとかジョージ・ハリスンと親交があって。その2人がレコーディングに参加したりもしてました。それでは1973年のシングルヒットで"The Joker"。
The Joker - Steve Miller Band
次はメラニー・サフカ(Melanie Safka)、通称メラニーですけど。1971年の曲で日本でもヒットしました、「心の扉を開けよう」というタイトルで。"Brand New Key"。
Brand New Key - Melanie Safka
1968年にラジオでいっぱいかかってました。キャンド・ヒート(Canned Heat)で"Going Up The Country"。
Going Up The Country - Canned Heat
さて、1965年にデビューしたジ・アソシエーション(The Association)。最初のアルバムはカート・ベッチャー(Curt Boettcher)がプロデュースしました。"Never My Love"という曲、これは1967年のヒットシングルです。
Never My Love - The Association
やはり同年のヒット曲でザ・レフトバンク(The Left Banke)も印象深いです。"Walk Away Renée"。のちにフォー・トップスもカヴァーしてますね。日本でもヒットしました。「いとしのルネ」。
Walk Away Renée - The Left Banke
この時期、1967年はビートルズの『Sgt. Pepper's』が出たりピンク・フロイド(Pink Floyd)が人気あったり、そういう時代でした。それでローリング・ストーンズ(The Rolling Stones)。この番組では初のお目見えかもしれないです。この時期に出た『Their Satanic Majesties Request』というアルバム。これは賛否両論でしたね。ビートルズのようなジャケットとサウンドでした。それがよかった。"She's a Rainbow"。
She's a Rainbow - The Rolling Stones
(from『Their Satanic Majesties Request』)
1965年に出たビートルズの『Rubber Soul』。これはもう、すごい影響力がありました。その中からジョージ・ハリスンの曲で…「嘘つき女」という邦題なんですが、"Think For Yourself"。
*ここで実際に流れているのはレノン=マッカートニー作"The Word"(愛の言葉)。
The Word - The Beatles
(from『Rubber Soul』)
1964年の大ヒット曲。イギリスのグループです。ゾンビーズ(The Zombies)で"Tell Her No"。
Tell Her No - The Zombies
次の曲はアメリカでは絶対に生まれそうもない曲です。ザ・フー(The Who)で1966年の"Happy Jack"。
Happy Jack - The Who
やはりこの頃、イギリスからグループがいっぱい出てきますが、ほんとにカリフォルニアのサーフィンやホットロッドには関係なかったなかったんですね。マンフレッド・マン(Manfred Mann)もその一つ。ザ・バンド(The Band)のプロデュースも手掛けたジョン・サイモン(John Simon)の曲で"My Name Is Jack"。
My Name Is Jack - Manfred Mann
1969年に同じイギリスからとてもユニークなサウンドのグループが出てきました。ザ・フーのピート・タウンゼント(Pete Townshend)がバックアップしてます。サンダークラップ・ニューマン(Thunderclap Newman)で"Something in the Air"。
Something in the Air - Thunderclap Newman
(from『Hollywood Dream』)
『Hollywood Dream』というアルバムからですね。サンダークラップ・ニューマン、イギリス人ですけどアメリカ的なアプローチですね。
その頃、1967年…アメリカ、カリフォルニアのハリウッド近くのバーバンクから新しい音楽が出てきました。レニー・ワロンカー(Lenny Waronker)とテッド・テンプルマン(Ted Templeman)のプロデュースによるハーパーズ・ビザール(Harpers Bizarre)、"Pocketful Of Miracles"。
Pocketful Of Miracles - Harpers Bizarre
(from『Anything Goes』)
2022.02.06 Inter FM「Daisy Holiday!」より
手作りデイジー🌼#28
(以下、すべてH:)
はい、こんばんは!細野晴臣です。お久しぶりというか…毎週やってるんですけど、月初めの手作りデイジーはお正月ということで1月はお休みさせて頂きました。だいたい僕は毎年、正月というのは陰暦でやる習慣がありまして。年賀状もそのとき出すんですよね。
まぁそんなこんなで…今、世の中も騒然としてますよね。これからどこへ行くのか、ほんとに不安なんですけど。いわゆる10年間の時代というのはその前の年の末に何かが始まっていくという…今回も2019年に色んなことの種があったんですよね。それがこの10年間に動いているわけです。そういう意味でも、1960年代というのは「Rolling Sixties」といってもいいくらいですけど。そのときの種が翌10年間に花開いていくという…1970年代というのはそういう時代ですね。どこが違うというと、60年代は音楽にエネルギーがすごくあって。その音楽がビジネスを生んだんですけど、その後、70年代以降はビジネスが音楽を生んでいく…というような様相になってくるんでしょうね。
その60年代後期から70年代頃の音楽、これを聴いてはっぴいえんどを始めたわけですけど。当時、ずっと聴いていた音楽の中から…まず最初の1曲目は「King Of Swamp」、トニー・ジョー・ホワイト(Tony Joe White)です。1943年生まれ、2018年に亡くなりました。1968年当時は…プレスリーが後にカヴァーした"Polk Salad Annie"が有名になったんですね。もう1曲、"Rainy Night in Georgia"はブルック・ベントン(Brook Benton)でヒットしました。では、1970年のワーナー移籍後第1弾から"Stud Spider"。
Stud Spider - Tony Joe White
(from『Tony Joe』)
なんともセクシーで卑猥な歌詞なんですけど。ほんとに臭い立つような…トニー・ジョー・ホワイトの"Stud Spider"でした。
次はトム・ラッシュ(Tom Rush)です。シンガーソングライターが台頭してきた中でも非常にまじめな人なんですね。色んな曲をカヴァーして広めた人です。フレッド・ニール(Fred Neil)の作品で、"Wild Child"。
Wild Child (World of Trouble) - Tom Rush
(from『Tom Rush』)
このトム・ラッシュの"Wild Child"…1970年ですけど。その影響というのははっぴいえんどの1枚目を聴くとモロにわかっちゃう、かもしれません。
では次はニール・ヤング(Neil Young)のソロ第1弾。"The Loner"。
The Loner - Neil Young
(from『Neil Young』)
この弦アレンジはジャック・ニッチェ(Jack Nitzsche)です。フィル・スペクター(Phil Spector)の片腕ですね。このニール・ヤングのソロはバッファロー・スプリングフィールド(Buffalo Springfield)解散後、すぐに出たんですね。はっぴいえんどの連中はこれにビックリして…みんなすごく影響されましたね。
さて、次はザ・バンド(The Band)で"Rag Mama Rag"。
Rag Mama Rag - The Band
(from『The Band』)
ザ・バンドの"Rag Mama Rag"。これは1969年に出た2枚目のアルバム『The Band』からです。
次は…お、ジェームス・テイラー(James Taylor)ですね。"Country Road"。
Country Road - James Taylor
(from『Sweet Baby James』)
ロックバンド全盛期からシンガーソングライター時代に行くきっかけになったジェームス・テイラー。本当に影響力があったと思います。この歌声を聴いて僕は、あ、こういうやり方があるんだ、と思って自分でも歌い出す…というきっかけをくれた人です。
さて次は、ジェリー・リード(Jerry Reed)の"Amos Moses"。1970年。
Amos Moses - Jerry Reed
(from『Georgia Sunshine』)
ジェリー・リードはエンターテイナーで、映画スターでもあったわけですね。『トランザム7000(Smokey and the Bandit)』という映画を思い出します。プレスリーのサイドをやったこともあります。"Guitar Man"という曲はプレスリーもカヴァーしましたね。
次はリトル・フィート(Little Feet)です。"Two Trains"。
Two Trains - Little Feet
(from『Dixie Chicken』)
この"Two Trains"は1973年に発表した『Dixie Chicken』というアルバムの中の曲です。はっぴいえんどはこの年ロサンゼルスに行ってレコーディングをしてまして。なんと、このセッションを見てるんですよね。記念すべき曲というか…決定的な体験でした。
そのきっかけを作ってくれたのがヴァン・ダイク・パークス(Van Dyke Parks)です。最後に、ヴァン・ダイク・パークスで"Be Careful"。
Be Careful - Van Dyke Parks
(from『Discover America』)
2022.01.30 Inter FM「Daisy Holiday!」より
H:こんばんは。細野晴臣です。さぁ、きょうは久しぶりに…
O:こんばんは、岡田崇です。
コ:こんばんは、コシミハルです。
H:きょうは大っきな声で行きますよ!
コ:もう声出ない…
2人:(笑)
H:正月以来だね。
O:そうですね。
H:どうですか?その後は。
O:僕は、個人的には…1月20日にレイモンド・スコット(Raymond Scott)の『Jingle Workshop』というものを出しまして。。
H:それ。すばらしい。
O:まだまだ好評発売中ということで…
コ:映像がよかった。すごいかわいい。
O:そう、宣伝用にちょっと映像を作ってYouTubeに上げました。
H:ね。YouTubeに上がってるのをぜひご覧ください。あのコマーシャルはどこで見つけてきたわけ?
O:YouTubeに…
H:全部あるんだ。すごいね。
O:もっとね、いっぱい探したいんですけれども。なかなか…
H:うん。ミハルちゃんはどうしてました?
コ:あー、大変だった…
H:食あたりしたんだよね(笑)
コ:食あたりも、もう、いろんな…次々に…
H:ね、なんかいろんなものが玉手箱みたいに出て…
O:(笑)
コ:ほとんど寝てたんじゃないか、っていう。足腰が弱っちゃったもん。
H:じゃあきょうこの後、歩きますかね。
O:寒いからねぇ…
コ:岡田くんもあんまり歩かないでしょ?
O:僕、今年…5回ぐらいは外に出たんじゃないですかね。
H:じゃあ全部で50歩ぐらいかな。
O:そのうち3回は「とんき」に行ったという…(笑)
H:ほんと?行き過ぎだよ、それは(笑)
O:お正月から人が来ると「じゃあ、とんき行くか」。
H:じゃあきょうも行くか。
コ:え?(笑)
O:いやー、空いてて。「まん防」以降は…ちょっとビックリしましたね。
H:じゃあ、きょうはなにを食べるか考えつつ…やっていきましょうか。
O:(笑)
H:それでですね…じゃあ最初にこのレイモンド・スコットの『Jingle Workshop』を聴きたいですよね。
O:お。じゃあ1曲、レディ・ガイロード(Lady Gaylord)…ゲイロードかな。犬のおもちゃのCMですね。
Lady Gaylord (Ideal Toys) - Raymond Scott Featuring Dorothy Collins
(from『The Jingle Workshop: Midcentury Musical Miniatures 1951–1965』)
H:やっぱり短いね。
O:そうですね。1分か30秒かという感じですね、ほとんど。
H:あのYouTubeの編集を見てると、すごい…買いたくなるね(笑)
O:ぜひ(笑)
H:『Songbook』も随分前ですけどね、出てますので。
O:そうですね。
H:あれも久しぶりに聴いたらよかったね。すばらしい。
O:いま見ても…もう9年前ですけど、出したの。よくこんなの作ったな!と思いますね(笑)
H:いい出来ですよ、あれは。
O:あり得ないですよね。
H:もっともっと宣伝しないとね。お願いしますね?
O:(笑)
H:さて、ところで…ベンチャーズのドン・ウィルソン(Don Wilson)が亡くなったそうなんで。
O:そうですか。
H:「Daisy World」の時代にスタジオまで2人で来てくれたんですよね。ベンチャーズのオリジナルメンバーですよね、2人は。すごくいい人たちだった。ほんとに、なんか…心があったまるような人たち。ベンチャーズを1曲かけましょうかね。
O:はい。
H:じゃあ最初の…デビューアルバムみたいな時期のやつだよね。2人でやってる時期ですかね。"Blue Moon"。
Blue Moon - The Ventures
H:ドン・ウィルソン、88歳。1月22日に亡くなったそうですね。2人で来たもう1人はボブ・ボーグル(Bob Bogle)。スタジオで生演奏してくれたという。
O:すばらしいですね。
H:あり得ないですね、いま思うと。
H:というわけで…亡くなったといえば、瀬川さんですね。
O:そうですね。
コ:はい。
H:まぁご高齢ということはありますけど。もうちょっとね、お話を聞きたかったですよね。
O:そうですね。困ったらいつでも、電話したらいろいろ教えてくださるという。
H:ミハルちゃんも瀬川さんとは随分交流がありましたよね。
コ:そうですね。ほんとに…『フルフル(Frou-frou)』というアルバムを作ったときに、瀬川昌久さんが…
H:そう、瀬川昌久さんです。フルネームは。
コ:訪ねてきてくださって、クロード・ソーンヒル(Claude Thornhill)のお話を。
H:そうだよね、クロード・ソーンヒルを我々世代が発見して。それに一番詳しい人が瀬川昌久さんだったので教えてもらって…ということがありましたね。おいくつでしたっけ?
O:97歳です。
H:これは大往生といってもいいですよね。
O:んー…でもね?という感じですよね(笑)
H:そうだね。あの時代の音楽をリアルタイムで知っている唯一の人だったんですよね。
O:そうなんですよ。
H:もうこれでいなくなっちゃったも同然ですよね。まぁ、岡田くんが後を継ぐという…
O:いやいや!(笑)
コ:(笑)
H:瀬川さんは…ちょっと、ざっと紹介してくれますかね、岡田くん。
O:僕ですか?瀬川さん…1924年生まれだったかな。たしか3歳から5歳までイギリスにいるんですよね。お父様が東京市にお勤めで。東京市は関東大震災復興のためのお金をフランスから借りていて、その返済の話をしにフランスに行く、というのがあって。でも、フランスには滞在しないでイギリスに…
H:そうなんだ。
O:瀬川さんのお父様とお母様は仲が良かったので、単身赴任ではなく追っかけて。瀬川さんを連れていったんですよ。
H:なるほど。それが大きいね、経験として。
O:それで最初、3歳のときにリアルタイムで…1927年、28年とかにイギリスで本物のジャズを聴いてるわけですよ。お父さんが買ってきたSP盤を…お留守番のときに閉じ込められるんで(笑)
コ:すごい!
O:蓄音器で聴いていたそうです。それで最初に覚えたメロディーが"Who?"と"Ca C'est Paris"。
H:"Ca C'est Paris"。
O:ミハルさんが大好きな…
コ:大好きなミスタンゲット(Mistinguett)ですね。
H:ちょっとそれ、聴いてみよう。
O:聴いてみましょう。
Ca C'est Paris - Mistinguett
H:あの…瀬川さんは宝塚にも関係ある?
O:宝塚のコンピレーションとかは出してます。僕、デザインやりました。
H:そうだよね。この曲、子どもの頃に最初に聴いて。宝塚の人たちもやってるからね。紹介したのかもしれない。
H:その後、瀬川さんは?
O:瀬川さんは…詳細を言っていくとキリがないのであれですけど。まぁ戦争があって…1944年に海軍に入って。戦地には行かなかったんですけど、それが申し訳ないという気持ちで氷川丸に乗って。復員船ですね。
H:氷川丸はまだ横浜の港にいますからね。
O:前に氷川丸でイベントもされてましたね。そこに楽団を連れてきて引揚者の皆さんに聴かせたりとか。
H:すばらしい。
O:そういう活動をされて…たしか1946年に東京大学に復学して、卒業したのちに富士銀行に。
H:そうだ。銀行員になってニューヨークに行くんでしたっけ。
O:そうです。入って3年後くらい、30歳ぐらいのときにニューヨークに行って…チャーリー・パーカー(Charlie Parker)だとか。
H:そこでいろんなパフォーマンスを見てるわけだね。
O:1950年のジャズ真っ盛りのニューヨークを堪能するわけですね。
H:そんな人いないわ(笑)
O:もう毎日のようにクラブに行って…観まくってたらしいですよ。瀬川さんが撮ったデューク・エリントン(Duke Ellington)とかね。たくさん写真が残ってますけど。
H:いやー、うらやましい限りだよね…
O:それで定年までお勤めになって55歳の時、1979年に辞めて。そこからはジャズのいろんなことを。
H:いろんなことだよね。評論も含めて。
O:評論もだし、若者たちにいろいろ教えたり。街の市民サークルとか、いろんなところで講義をやったり。
H:活発だね。僕の中ではすごく歩き回ってる人という印象があるね。
コ:毎日のようになにかされてましたね。
O:もう午前中、10時・11時にはもういなくて。夜11時くらいに帰ってきて。
H:で、あっちこっちにチラチラっと顔を出すというね(笑)
O:昼に行って、夜もコンサートを観て帰ってきて。1時から3時くらいまで執筆活動をするというね。
H:すごいなぁ。
O:で、「1時過ぎに電話くれ」みたいなことを言われて電話すると奥さまが出るんですよ。そんな夜中に電話くれ、と言っておいて…本人出てくれよ、と思うんですけど(笑)
H:ミハルちゃんも時々、おうちに伺ってますよね。
コ:伺いました。瀬川先生はダンスもとてもお詳しいでしょう?古いミュージカルとか。
O:うん、そうですね。ミュージカル雑誌の編集長もやられてましたね。
コ:フレッド・アステア(Fred Astaire)のお話とか、よく伺いました。振付などにもすごく詳しくて。で、ご自身でもダンスしますからね。
H:そうか。観たいなぁ。観たことない。
コ:なんか、イベントで…
O:イベントで踊ったみたいですよ。
H:本当?アステアみたいに踊るわけ?
コ:奥さまがそう言ってました。この前伺ったときに。
H:そういう映像がきっと残ってるんだろうなぁ。
O:そうかもしれないですね。
コ:なんか、クルクル回すらしいですよ。昔のダンス。2人で踊る…
H:ああ、ジターバグみたいな…
コ:そう。で、「クルクル回すのよ!」って奥さまが言ってました(笑)
O:(笑)
H:そうか…なんかいろんな話があるよね。ニューヨークでは三島由紀夫を案内したり。
コ:そうそう。同級生。
H:同級生か。
O:ずーっと同級生なんですよね、たしかね。ブロードウェイミュージカルを三島さんがやりたい、という話があって。ニューヨークにずっと泊まってて。それをアテンドして、ずっと遊んでたみたいですね。
H:じゃあなんか…昔の声を聴いてみますか。
O:お、ぜひ。
H:これ流すのは何回目かな。3回目?(笑)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
コ:こんばんは、コシミハルです。今夜はゲストに音楽評論家の瀬川昌久さんをお招きしてお送りしたいと思います。あ、こんばんは。
瀬川:こんばんは。
H:いらっしゃいませ~(笑)
コ:今夜はね、なぜ瀬川さんをお招きしたかというと、実はこの前出した『Frou-frou』というアルバムを瀬川さんが…
H:ね、お聴きになって…
コ:ね。なんか、聴いてくれたという。
H:番組でもかけて頂いたり。
瀬川:ええ。実はね、朝日新聞で…コシミハルさんの新しいCDアルバムが出た、と。『Frou-frou』というね。そこではアメリカのポピュラーソングやフランスのシャンソンをフランス語できれいに歌っておられるということで。で、早速ラジオ局のディレクターにも話をして。それでこの『Frou-frou』をね、手に入れて。それで1曲ずつ聴いていったんですよ。そうしたらね、その"There's a Small Hotel"のところに来ましてね、もう、始めのね、出だしからね、あっ、どっかで聴いたことがあると。そのうちにピアノがポロポロポロと。それからボーッというテーマのサウンド。そしてその後に出てくるコーラス。もうこれがね、全くクロード・ソーンヒルのかつての"There's a Small Hotel"と…ホントに似た魅力を持ってるわけですね。それでわたくしはね、2回ばかり聴いて。クロード・ソーンヒルのレコードを持ってきまして。それでかけてみた。これはもう、間違いないと。
2人:(笑)
瀬川:それでね、まぁ、みんなおもしろかったんですが…ほんとにきょう、お目にかかれてうれしいですよ。
コ:いやー、私もなんか…そういう風に聴いて頂けたの初めてなのかも…
H:そうだね。
コ:ちょっと、すごいうれしいです、私のほうが。ほんとに…
There's a Small Hotel (C'est un nid charmant) - コシミハル
(from『Frou-frou』)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
H:これはもう随分前だな。「Daisy World」の時代。
O:2001年ですね。8月です。
H:そうか。
O:前に「デイジーワールドの集い」をCAYでやってるとき…リハーサルで準備してるときに瀬川さんが来たのを憶えてますか?
H:憶えてるおぼえてる。来たと思ったら帰っちゃったけど(笑)
O:別の会場と間違えてて…別のものを観に来たら僕と細野さんがいて、あれ?って。ここに行きたいんですけど、と…で、僕が場所を調べて。すごい勢いで向かっていきました(笑)
H:前のめりだよね。せっかちな人…(笑)
O:ビックリしましたよね、あのときね。
H:いやー…僕はあの後そんなにお会いする機会がなかったんですけど。残念ながら。すごく印象に残ってることがあって…パイド・パイパーズ(The Pied Pipers)?
O:はい。
H:その"My Happpiness"。ああいうのをやってくださいよ!なんて言われたんだよね。スウィングスローで。
コ:ええ、言ってましたね。
H:いまだにやってないんだけど…(笑)ずーっとそれがね、忘れられないんですよね。だから絶対やりたいなとは思ってるんですけど。
O:ぜひ!
H:うん。じゃあその"My Happiness"を聴きましょうか。これはどなたがやってるんだ?
O:これは当時瀬川さんが選曲されてきた、ジョン&ソンドラ・スティール(Jon And Sondra Steele)という2人組です。
H:あー、これは僕は聴いてないや。1947年の作品なんですね、これは。"My Happiness"。
My Happiness - Jon And Sondra Steele
H:ジョン&ソンドラ・スティールで"My Happiness"でした。
H:というわけで、時間がそろそろ来ましたが…どうですか?瀬川さんになにか追悼の言葉を…それはなんかおかしいな(笑)
O:まぁ、ありがとうございます、しかないかな。これから引き継げる部分は引き継いでがんばっていく、と。
H:いやー、そうだよ。その通りです。
O:まぁいろんなね、多岐にわたることをやられてたので。それぞれの分野で後を継いでいかれる方はいると思うんですけど。
コ:本もいろいろ出版されてるので。
H:もう1回読み直さないとね。
O:『ジャズで踊って』という本があるので、それは絶対読んだほうがいいですよ。
コ:ね。すごい楽しいです。
O:レイモンド・スコットのこととかも書いてありますので…
H:読みたいですね。というわけで…天国で守護霊としてがんばって頂きたいですね。どうか安らかに…ではまた来週。
2022.01.16 Inter FM「Daisy Holiday!」より
H:こんばんは、細野晴臣です。さて今週は、昨年11月に雑誌TV Bros.のために行った岡村靖幸さんとの対談をお聴きいただきます。昨年その一部をオンエアしましたけど、かなり長い時間話していて1回では収まらなかったので「また来年」と予告していました。では、その対談の続きをお聴きください。
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岡村:んー…でもさっき言った、音のイコライジングとパンニングとコンプに関しては延々悩んでいて…何歳になったら悩むのをやめるんだろう、と思うぐらい。
H:いや、ないでしょ。キリがない。
岡村:そうですか。うーん…
H:昔ね、YMOの頃に…自分が作った曲は自分が主導してミックスしたりするでしょう。でも、バンドの場合はみんなそれぞれ自分の音が大事じゃない?そうするとミックスが終わらないんだよね。
岡村:そうですよね。もっと上げたい、ってなりますよね。
H:そうするとグルグル輪廻しちゃう(笑)だからミックスもキリがないんだよね。可能性は無限なのに、一つに絞って決めなきゃいけないでしょ?それが僕にはつらいんだよね。放っておきたいんだよ、ほんとは。ミックスしたくない(笑)
岡村:そうですよね。でも細野さんは引き算のミックスで…余計なものはだんだん削っていって省いたり、要らない周波数帯を削っていたり。すごく整理されてるような。
H:そうですね、最近はそうかな。でもね、自信がないの。なんでかと言うと…歳でしょ?耳が衰えてるんじゃないか、と。例えばコンビニでピーッという高周波を出したりして撃退してるでしょ?それ聞こえたことないし(笑)
岡村:してますね(笑)僕もそうですね。
H:だから高音はどうしても…変な周波数がピンピンしちゃうんで、そこは落としちゃったりする。でもそれは人によっては甘く聞こえるんじゃないか、とかね。不安なままやってるんですよ。ぜんぜん自信がないの。だから誰かに任せた方がいいのかな、とか。時々思いますね。
岡村:僕も思います。
H:任せたことは?
岡村:ありますあります。
H:あるんだ。この際ね、日本から出てどこか外国でミックスしたいな、とかね。また違うアプローチだから。
岡村:今はネットとかで、けっこう有名なミキサーたちが「やりますよー」って。だから細野さんだったら世界中のミキサーが喜んでやりたがるから…そこからチョイスっていう世界もありますね。
H:そうだそうだ。あー、でもね…任せるというのはどうもダメかな(笑)
岡村:任せるというよりは、やりとりですね。
H:だったらできるかな。んー。でも現場を見たいんだよね。
岡村:それはいいですね。
H:その優れたエンジニアのやり方を見てみたい。
岡村:たしかに見たいですね。
H:ずーっと日本でやってたから。自分だけでやってると、まぁ狭いというか。今はすごくそれが知りたい時期になってる。
岡村:そうですよね…わかります。
H:でもやっぱり、音を追求してるのがよくわかりますよ、聴くと。なんと言ったらいいか…タイトな音ですよね。
岡村:ほんとですか!僕はやっぱり細野さんの影響下にいて…細野さんがスライ(Sly & The Family Stone)がいい、とずっと仰っていて。僕はプリンス(Prince)が好きなんですけど、プリンスはスライの影響下にあるので…だから僕の中では全部つながってるわけです。細野さんがスライがいいと言ったら、スライがいいと思った僕はだんだんプリンスを好きになっていくという…これは僕の中では物語が繋がってるんですけど。
H:なるほどね。いやー、スライは相変わらずすごく好きですね。
岡村:カッコいいですよね。
H:ああいう音が出したくてしょうがない。
岡村:そうですよね。『暴動(There's A Riot Goin' On)』もそうですけど、その次の『Fresh』。『Fresh』にはすごく細野さんを感じますね。
H:うわー、ほんと?わーい(笑)
岡村:いやいや、ほんとです(笑)
H:初めて言われたね、そんなこと。
岡村:あ、ほんとですか?めちゃめちゃ感じますけどね。
H:あんまり表立ってファンキーなことはやってないからね。最近。
岡村:ああ、最近…でもファンキーですね。日本にファンキーを広めたのは細野さんじゃないですかね。
H:え!言い過ぎでしょう(笑)
岡村:いや、言い過ぎじゃないですね。YMOの中にもたくさん滲ませてたし。やっぱりそれで少年少女たちも「あ、これがファンキーなんだ」とか。スネークマンショーの最後の曲聴いてもすごくファンキーだったし。少年少女たちはみんな細野さんでファンクを学んだような気がしますけどね。
H:そっか。そう言われてみると、いまだに忘れられないファンクな名曲というのがいくつかあるからね、
岡村:『ほうろう』とかいまだに若い子達が聴いてますけど。ああいうのを聴いて日本語とファンクの融合みたいなものを学んだような気がしますし。はっぴいえんどの頃から…例えば"相合傘"とか。ファンクでしたよね?
H:そうですね。その前から聴いてたのはそういうものばっかりでしたから。
岡村:今はないですね。今の若者たちは…
H:ないですし、[その範となるような]ファンクの名曲がないんですよ、今は。出てこないんで。流行ることもないし。深堀りしていって自分で見つけて聴くしかないから…僕はラジオをやってるんで、そういうものをこれからも流していきたいと思うんですよね。
In Time - Sly & The Family Stone
(from『Fresh』)
TV Bros.前田:岡村さんが細野さんのことを「色気がある」と仰ってるのは…さっきは音楽について色気があるとお話しされてましたけど、主に音楽だけですか?
岡村:音楽、声、もちろんそうですね。あとは香りがするような音楽というか…まぁ聴いてもらえれば一発でわかるんですけど。あとは色気があって、妖しいですね。妖しい音楽。「はいはい、こうやって作ったのね」じゃなくて、「どうやって作ったんですかね!これ!」みたいな(笑)
H:そういえばいつも、なんか新しい音楽を作るときは今までやったことは忘れないとできないな、というのはありますよね。白紙に戻って、なんにもできない自分に戻らないと。
岡村:そうですよね。当時、リアルタイムで聴いた『フィルハーモニー』はすごくビックリしました。細野さんがずっと持ってらっしゃるファンクな感じとか、非常に凝ったコード進行とかを一度白紙になさって。非常に実験的な音楽を作られて…あれはビックリしましたね。ジャケットも含めて。
H:ヘンテコリンなものを作っちゃったな、というかね。
岡村:いや、すごいですね。多岐にわたりすぎてて、細野さんはこうですね、とは言えないですけど…でもまぁ、この短い時間で僕がメッセージとして伝えたいのはやはり「色っぽい」ということですね。
H:そうか。自分でもちょっとそれを研究してみようかな(笑)
岡村:(笑)
H:その色っぽさというのがどういうことか、考えたこともなくてね。
岡村:そうですか。
H:うーん…まぁ考えないほうがいいや。妙にエッチな音楽になっちゃうから(笑)
岡村:(笑)
前田:岡村さんは自分でも色気を出したい、という節にしてるところはあるんですか?
岡村:そうですね。僕もがんばりたいですね。いい音楽は全部色っぽいと思いますしね。細野さんの音楽は色っぽいだけではなくてミステリアスなので、謎の色っぽい女みたいな感じで…ほんとにファム・ファタールの世界の感じなんだけど。
H:女なんだね(笑)
岡村:色っぽさだけで言うのであれば、音楽は全般色っぽくあるべきだし、とは思います。
H:そういう意味での色っぽさというのは大事だよね。色気ね…決してセクシーな意味だけじゃないからね。
岡村:そうですね。
前田:そういえばさっき、ここに来るまでに岡村さんと話したんですけど、細野さんはスライとかの話はよくするけれども、ビートルズの話ってあんまりしないんじゃないか、みたいな話をしてて。。
H:そうなんだよ。誰も訊いてくれないと喋らないんだよ(笑)
前田:岡村さんはすごくビートルズが好きで…
H:それはそうですよ。影響を受けてない人は稀というか…不思議な気持ちになっちゃうよね。
岡村:ビートルズとかスティーヴィー・ワンダー(Stevie Wonder)についてあんまり喋らないのは、野暮だみたいなことですか?
H:いやいや!そんなことはないですよ。他に喋ることがいっぱいあって間に合わないんですよね。あとは誰も訊いてくれない、質問してくれないというね。
岡村:んー…
H:今このDaisy Holidayで月1でね。「手作り」と言ってるんですけど…1960年代を特集してて。はっぴいえんどが出来るまでの間にどんなものを聴いてきたか、という特集をやってるんですね。そこで60年代のすごさというのを今、改めて見直してて。すごい時代なぁ、と。濃密すぎて手に負えないんですよ。幅も広いし、1年ごとに色んなことが起こっていて。それに比べて今は1年ごとに何も起こってない(笑)
岡村:そうですね(笑)
H:だから、その中にはもちろんビートルズもいるしね。あらゆる音楽がそこに詰まってるんで。
岡村:やっぱり細野さん経由で知ったんですけど、Dr. Johnの『Gumbo』とかも…なにとなにとなにをごった煮したらこんな鍋ができたよ、みたいなものはビートルズにも感じたし。インド音楽を入れたり、急にクラシカルな和音を入れたりとか。60年代はごった煮の音楽とか、これとこれを混ぜちゃったのか、みたいなものに関して…本人たちもテープループを使ったり、実験音楽の影響を受けてみたり。
H:そうそう。非常に実験的な時代だったんだな、と思って。
岡村:そうですよね。まだフランジャーをジェットマシンとか呼んでいた頃のエフェクターとか…みんな新鮮だったでしょうね。
H:なにもかも新鮮だったね。だって最初のバンド、エイプリル・フールの頃は2トラックみたいな世界でしたよ。レコーディングは。で、次に作ったときは4トラックになってたり。はっぴいえんどは8トラックか。それで次は16トラックになっていて…倍々に、1枚作るごとに変わっていって。追いつかないわけではなくて、すごくワクワクしてましたね。すげぇなぁ、と思って。
岡村:細野さんの音楽も変わっていきましたしね、その度に。
H:マルチの時代になるといっぱい音を入れちゃうという癖がついちゃったけど(笑)
岡村:そうですよね。でも、逆に削ぎ落すみたいなものもたくさん作られましたよね。
H:そうですね。音が多いのはちょっと…歳とともに疲れてきたというか。今ではギター1本でもいいくらいだな、と思って。昔は非常に音響にこだわってたけど。バランスとかね、ドラムサウンドの場合は特にそうですけど。最近はなんか…歌を前に出して楽器を引っ込めて、ギター1本でもいいという気持ちにはなってるんですよ。自分の中で変わってきてるのはそこら辺かな。昔は声をいかに引っ込めて聞こえるか、という時代があったんですよね。それをいま聴くと小っちゃすぎる…と思って。聞こえにくい(笑)
岡村:歌声が素晴らしいですからね。僕からすると…色んな時代の音楽を経られて。アンビエントの時代も経て。そういうものが全部血となり肉となって…たとえばスタンダードとかカントリーっぽいことをやっていても、音響の裏の中では実はそういうものがうごめいていたり。ミステリアスという話に戻るけど、やっぱり感じるんですよね。ギター1本でもいいんだよね、と一見聞こえていても…
H:その通り。実はこだわってたりね、するんですけど(笑)
岡村:すごくそういうものを感じます。
H:まぁ、見抜かれてるな。
岡村:だからこそ今、海外の青年たちがディスカバーしがいがあるし。おもしろいおもしろい!というのはさもありなん、という感じですけど。
H:なるほど。作った当時はなんの反応もなかったんだけどね…(笑)
岡村:ネットがないですしね。
H:そうなんです。日本で『フィルハーモニー』とか出しても、なんの反応もないですからね(笑)
岡村:そうですか?そんなことないですよ。みんな一大ショック受けてましたよ。
H:そうか。まぁ、そういう反応を知るすべがないしね。
岡村:すごいスピードで作られてましたしね、アルバムとかも。
H:そういえばそうですね。
岡村:『フィルハーモニー』なんて特にそうなんじゃないですか?YMOと同時進行ですもんね。
H:まぁそうですね。YMOはほとんど終わりかけてたので。
岡村:僕も昔、1年に1枚くらい出せた頃はよく出せてたなぁ、と思って(笑)今じゃ考えられないんですけど。
H:今はどういうペースですか?
岡村:今は3年に1枚出ればいいんじゃないですかね…細野さんはそれ以外にもYMOをやって、ソロをやって。他の人の作曲、アレンジ、プロデュースもやってたし。ご自身で振り返られるとすごいスピードで作られてたと思いますよ。
H:よくやってたね。信じられない。なんだろうなぁ…今はできないからね、そういうこと。
岡村:YENレーベルやったり、若者を発掘・応援したりとか。すごいスピードの中で
H:そんなエネルギーはないんですけどね。
岡村:周りに集まってきちゃうんじゃないですか?おもしろい人が。で、「君、いいよ」みたいな。
H:そういうことはありましたね。
岡村:そういうことがずーっとあったんじゃないですか?
H:まぁひと頃、30代・40代はそんな感じでしたけどね。やっぱりまた一人になって…アンビエントの頃から閉じこもっちゃったんでね。誰にも会わずに。それはそれですごい、違う世界が見えてきて。世界中にそういう人たちがいるというのはおもしろかったんですね。
岡村:アトム・ハート(Atom Heart)さんとかともやられてましたね。
H:そうそう。機材がグッと安くなって、みんな自分の部屋でベッドルーム・レコーディングみたいなことをやり始めて。それがとっても刺激的なんですよ。おもしろくて。
Plug-in mambo - HAT
(from『DSP Holiday』)
前田:ちょっと個人的にお聞きしたいことがあって…
H:うん。
前田:前のインタビューではっぴいえんどをやられていた時に細野さんは年長組のほうで。じゃあ年長組だからリーダーシップを発揮していたのかというと、いや、実はそうではなくて、流れのままにやっていたらああいう形になったんだ、というお話をされていて。それが記憶にあったまま、ついこないだ『Sayonara America』のインタビューかなんかで「水の流れのように自分は生きてきたんだ」というお話をされていて。で、その話つながったんですけど。そういうのは流れのままに生きてきて、紆余曲折があってやっぱりまた流れのままに戻ってきたのか、もうずっと流れのままでやってきたのか。これはどっちのほうなんだろう、と思ってたんですけど。
H:あのね…なんか流されてる感じはあんまり好きじゃなかったんだけど。たとえば計画を立てて今度はこうしよう、とすると全然うまく行かないんですよ。計画通りにいったことがない。自分に計画は向いてないんだ、と。それでまた改めて流れていくようになったんですけど(笑)それはもう生まれながらの性質なのでしょうがないな、と。で、流れていくというのは意思があるんだけど、実際は「流されている」という感じが強いですよね。昔は「流れていくんだ!」と思ってたんだけど、流されてるだけなんです。だから、なんだろうな…これもエントロピーなんですよ。川から海に向かっていく、という感じですね。
前田:では、意志の力でなにかを突破するんだ、という感覚は薄いということなんですかね。
H:それはたぶんAERAの取材だったと思うんですけど。そう言ってちょっと後悔しちゃったんですけどね。自分は意思が弱いとかね(笑)でもね僕、糖尿病の初期だったんですよ、ずいぶん前。その頃から歩き出したんですよ。医者に1日6000歩は歩け言われてその通りやってたのね。そしたら見る見るうちに血糖値が下がって。診察を受けたら「君は治ったよ」と。え!糖尿病って治るのかな?と思って。そのときに「意志が強いですね」と言われたのね(笑)
2人:(笑)
H:うーん、まぁ意志は強いけど気は弱いな、と。そんな感じです。
前田:岡村さんはどうなんですか?意志は強いとか。
岡村:意志が強いか…
H:意志は強いと思うよ、たぶん。音楽をやってるということだけでも意志が強い。
岡村:妄信はしてます。迷いがあるとやっていけない世界なので、妄信してます。妄想、妄信…妄想妄信通信でやってます(笑)あまりロジカルに考えすぎないように。
H:それは僕もおんなじかもしれない。自分でレールを敷いてそのように生きていく、というのはできないんだよね。
岡村:なんかほら、話をまとめの方向に持って行きますけど。僕が細野さんの音楽に感じたセクシーさ、ミステリアスさ。音楽にそれを感じるということは、細野さん自身も不可思議な気持ちになりたくて音楽を作ってると思うんですよ。ミステリアスな気持ちになりたくて。それが音に表れてるし。だから音楽を作ってることに飽きたくないので、常にミステリアスな感じでいたいなとは思います。細野さんの音楽を聴くとそれを一番感じます。
H:そっか。そろそろ新作を作るんだけど…できるかな(笑)
岡村:最後にお伺いしたいんですけど、そういうのって自主的に決めるんですか?そろそろ新作作るか、とか。今までの歴史でも。
H:うーん、いつも後回しで…若い頃はぜんぜん作るチャンスがなかったんですよ。YMOやってるときは作れないな、と。で、終わりの頃に『フィルハーモニー』を作って。それからは数年ごとに作ってましたけど、この10年ぐらいは毎年出したりしてたこともあったり。わりと創作意欲というものが出てきてますね。
岡村:いいですね。
H:だから…僕は7月9日生まれなんですけど、数年前のその日に…その翌日かな?7月10日にライヴがあって。9日の誕生日で僕は引退しました、引退後1回目のライヴです、と(笑)
岡村:あー、それ僕観ました。
H:観た?観てたんだ(笑)
岡村:浅草で観ました。
H:あ、そうです。浅草公会堂でね。それだ。観てたんだ。
岡村:なんかマンボチャチャみたいなので出てきました、細野さん。
H:そうそう…こんな締めでいいのかな(笑)
岡村:(笑)
2022.01.02 Inter FM「Daisy Holiday!」より
H:はい、こんばんは!細野晴臣です。新年です!元気にいきましょうね?みなさん。
O:明けましておめでとうございます!岡田崇です。
コ:明けましておめでとうございます。コシミハルです。
H:はい、おめでとうございます。えーと…そんな気分になれるの?大丈夫?
O:(笑)最初だけかな…
H:いやいやいや…っていうのは無しね(笑)
O:まぁね、新年明けましたから。気分一新。
H:2022年1月3日。なんと、お2人とも誕生日。
O:そうですね。53になったのかな。
H:あ、そうなの?
O:たぶん…だんだんわかんなくなってきちゃって(笑)
H:どうなの?そちらの方。
コ:そちらって…(笑)
H:おたくは?(笑)お嬢ちゃんいくつ?
コ:ねぇ?ほんとに。いやだなぁ(笑)
H:言わないか(笑)誕生日ってだんだん苦痛になってくるのかね?そんなことはないか。
コ:でも、小さい頃からお正月生まれって不思議な気分だよね?
O:まぁそうですね。でも、親戚から誕生日をお年玉以外にもらえたりする特権だけはあったかな。
H:稼ぎ時だ。
O:そうですね。お年玉をもらった後に父親から「お!崇、お前誕生日だったな」と言ってもらえると追加でもらえるんで(笑)
H:いくらぐらいだったんだろう。まぁいいか…ミハルちゃんはどうなんですか?誕生日になんかくれた?
コ:すごく小さいときに、父と母が着せ替え人形のお部屋を作ってくれた。
H:部屋!すごい。
コ:うん。ベッドとかいろんな、ミニチュアの。
H:今ね、ミニチュアがすごく気になるんだよね。世界にはすごくヘンテコリンなミニチュアを作ってる人がいっぱいいるんだよね。ハンブルグを再現したりしてるドイツ人とか。こないだテレビで観てたらすごかった。
コ:あ、おもしろそう!うちの父はね、なにかをいつも作ってるんですよ。作らなくてもいいものを…(笑)
H:職人肌だね。
O:手作りのミニチュアなんですね、じゃあ。
コ:そうなの。
O:すごいですね!
H:それは今ないの?
コ:実家に帰ればね。
H:今度見せてよ。
O:「ミハル観光」がある時にはね(笑)
コ:テーブルとベッドと…
H:そうか。もうその中に住んだらいいんじゃない?
2人:(笑)
H:はい。新年早々の音楽をひとつ…岡田くん。
O:はい。
H:恒例の「世界は日の出を待っている」。
O:今年はメリー・フォード(Mary Ford)のソロ、1966年の録音で…始まります。
The World Is Waiting For The Sunrise - Mary Ford
H:「世界は日の出を待っている」、メリー・フォードのソロからです。これはギターがレス・ポール(Les Paul)じゃないの?
O:じゃないんです。
H:そっくりだよね(笑)
O:1966年の録音なんですけど、1965年に離婚してるので…おそらくボブ・サマー(Bob Summers)というメリー・フォードの弟がいて。レス・ポールが残していった機材というものがあって、ボブ・サマーはそれを使ってこの手のレコーディングを残してるので、たぶんボブ・サマーとメアリー・フォードでやってるんだと思います。
H:じゃあギターをこんなに弾けるわけだね。すごいね。
O:まぁ、メリー・フォードもけっこう弾けますからね。
H:ほんと?すごいなぁ。そっくりだね。
O:たぶん、レス・ポールの機材でやってるはずです。
H:ということでですね…誕生日の話の続きを。
2人:(笑)
H:1月3日生まれというと、お2人とヴァン・ダイク・パークス(Van Dyke Parks)。ヴァン・ダイク・パークスは何年生まれでしたっけ?
O:1943年…かな?
H:ということは…
O:78、79になるのかな?
H:ひと頃ね、クリスマスカードが届いてたんだよ。でも僕は不精なんでなんにも反応してないから、来なくなっちゃった(笑)
O:(笑)
H:ダメなんだよ、ほんとダメだ僕は…で、もう一人。小堺一機さんが1月3日(笑)それだけは知ってるなぁ、なんか。じゃあヴァン・ダイク・パークスを。おめでとう!という意味でかけたいと思いますが…"Bing Crosby"をかけます。
Bing Crosby - Van Dyke Parks
(from『Discover America』)
H:"Bing Crosby"、ヴァン・ダイク・パークスでした。ところでミハルちゃん。
コ:え?
O:え?って…(笑)
コ:(笑)
H:最近、めまいはどう?
コ:え?(笑)
H:え?ダメなのこの話題?(笑)
コ:そんな話?
H:いや僕ね、めまいが続いたんだよ。 去年ね。3,4日かな。起きるとフラーっと目が回って。
コ:え?それ危ないんじゃないの…?
H:いや、治ったんだけどね。原因がわかったんだよ。
コ:なんだったんですか?
H:電気毛布を下に敷いてずっと寝てたの。電気毛布の影響で。
コ:そんなこと、ある?
H:電気毛布を止めたら治ったんだよ。
O:えー、でも寒…寒くないですか?って言っちゃった(笑)
H:いいんだよ、寒いよ(笑)
O:僕もつけてますよ。
H:あ、電磁波防止の毛布じゃないとね…それを買ったつもりなんだけど、もう古くてボロボロ。ネコの寝床みたいになってて(笑)それを切ったら治ったよ。
O:そっか…
コ:じゃあもう大丈夫なの?
H:大丈夫。耳の中に磁体があるでしょ?磁石みたいな。三半規管にね。あれが動いちゃうんだよね。
コ:そういうことが原因で?
H:うん。
O:耳石ってやつですか。
H:耳石だ。そのときはビックリしたね。あ、これはもう生活できない、と思った。
O:すごいみたいですね、あれ。トモちゃんも時々なってましたけど。
H:あ、本当?目が回るってすごいね。世界が…世界が回る。
O:(笑)
コ:ほんとにちょっと漫画みたいになるよね。
O:ぐるぐる…って?へぇ…
H:あれは治らなかったら生活できないな。んー…はい、お正月の話題でした。
O:お餅食べたい…
H:食べなよ。なに?この話(笑)
2人:(笑)
O:お正月=お餅なので…
H:お餅ってお正月に食べておいしい!と思って…
O:1年中食べたい!と思うのに、1月も半ばを過ぎるとあの熱量はどこに…(笑)
コ:(笑)
H:1年ぐらい食べなよ(笑)
コ:お雑煮がいちばんおいしいですね。
H:お雑煮いいよね。毎日食べたいと思うのにね。なんで食べないんだろう。
O:じゃあ、そんな曲を…ミハルさん。
H:はい。お雑煮。
コ:お雑煮?(笑)ディジー・ガレスピー(Dizzy Gillespie)で"Groovin' High"。
Groovin' High - Dizzy Gillespie
H:というわけでね…関係ない(笑)
2人:(笑)
H:きょうは見学者が1人いるんだよね。あそこに。音くんね。なんか声ちょうだいよ。
(音:え!)
H:はい!とか。
(音:はい!)
H:あー、いたいた。
2人:(笑)
H:音くんはバンドやってますね。ここのスタジオをずーっと使ってるんだよね。自分で使おうと思うと彼らがいるから使えない(笑)
O:(笑)
H:どんな曲やってるの?いま。
(音:えーと、オリジナルを…)
O:オリジナル!
H:オリジナルやってるんだ。期待の若者たちだね。トリオでね。そのうちデビュー、待ってるから。
(音:………)
H:はい、音くんでした。
O:(笑)
H:じゃあ、最後の曲かな?
O:…まだですよ(笑)
H:(笑)まだ長いね…じゃあ、曲かけてもらおうかな。
O:はい。ジェフ・マルダー(Geoff Muldaur)がなんと新譜を出しまして。
H:そうだよね。
O:10年越し…13年越しくらいかな?
H:オランダでやったんでしょ?
O:オランダで。アムステルダム・プロジェクトと言って…聞いた話によると、元々はボー・ハンクス(The Beau Hunks)に話が行ったらしいんですけど結局ボー・ハンクスではできなくって。ボー・ハンクスのリーダーのガート・ヤン・ブロム(Gert-Jan Blom)さんがプロデューサーで…オランダのクラシック、ジャズ畑の名うてのミュージシャンを集めてレコーディングをして。13年ぐらいかかってできあがった『His Last Letter』というアルバムが出ましたので。
H:そんなにかかったんだね。
O:その中から、"Black Horse Blues"。
Black Horse Blues - Geoff Muldaur
(from『His Last Letter (The Amsterdam Project)』)
H:声が若いね。13年前か(笑)
O:いやー、歌入れはもっと最近だと思いますよ。
H:張りがある、相変わらずの声でね。
O:この辺のアーティストって新譜を出してもレコーディングがテキトーだったりすることが多いんで…(笑)
H:なるほど。
O:まぁ、ジェフはちゃんとこういうアルバムを作れてよかったなと思います。
H:アメリカではもう、こういうのはできないのかもしれないしね。
O:そうですね。前のアルバムもドイツで出たのかな?ビックス・バイダーベック(Bix Beiderbecke)のトリビュートアルバムを作って。
H:なんか、こういうタイプの…すごく古いタイプの音楽はヨーロッパのほうが今はいいんだね。
O:アメリカにはいないのかもしれないですね(笑)
H:いなくなっちゃったね(笑)たしかにそうかもしれない。じゃあみんなもね、ミハルちゃんも今度…じゃあ、チェコ行く?
コ:行きたい!すごく行きたい…
H:しまった…余計なこと言っちゃった(笑)
2人:(笑)
H:じゃあ、行きたい気持ちで次の曲。
コ:え、次なににしようかな…
H:…止まっちゃった。
O:(笑)
コ:ちょっと待ってください(笑)ほんとに声が出ない…
O:大丈夫ですか?
コ:大丈夫です。 じゃあ新しいのにしよう。トム・ミッシュ(Tom Misch)にしようかな。
2人:…
コ:"Parabéns"。
H:知らない…知ってる?
O:知らないです(笑)
コ:マルコス・ヴァーリ(Marcos Valle)と一緒にやってる。
Parabéns (feat. Marcos Valle) - Tom Misch
(from『Quarantine Sessions』)
H:リズムボックスがいいね。こういうのを聴くと使いたくなる。
コ:なんか気持ちいいですよね。
H:さぁて…もう、なんにもないわ(笑)
2人:(笑)
O:じゃあですね…リルデイジーからレイモンド・スコット(Raymond Scott)の『The Jingle Worlshop』というCMジングル集のアナログ盤をリリースします、しましたので…
H:はいはい…あれ、すばらしいよね。
O:その中から何曲か続けて聴いて頂き…お別れとなります。
H:お願いします。
コ:(笑)
H:えー、司会は岡田崇さん。ゲストはコシミハルさんでした。
コ:ありがとうございました。
O:おやすみなさい!
H:はい、また…おやすみなさい。
O:(笑)
The Tingling Tartness Of Sprite - Raymond Scott
(from『The Jingle Workshop』)
Who Took The Beer? (Hamm’s Beer) - Raymond Scott
(from『The Jingle Workshop』)
H:いいね、これ。
O:2年前の11月のブラック・フライデーというレコード・ストア・デイにアメリカで出たんですけど、日本にはほんとに20枚弱ぐらいしか入ってこなかった…と思うんですよね。で、もったいないなんて話をしてて。
H:その時…音源もらったね。
O:1曲かけましたね。
H:これおもしろい。じゃあまた、これを特集しようね。
O:ぜひ。お願いします。
H:うん。これはいい…売れてもいいくらい。
Hangover Dirt (Instant Fels Naptha) - Raymond Scott
(from『The Jingle Workshop』)
2021.12.26 Inter FM「Daisy Holiday!」より
H:こんばんは。細野晴臣です。きょうは久しぶりにハンバートハンバートのお2人が来てくれてます。どうぞ。
遊穂:はい、こんばんは。ハンバートハンバートの佐野遊穂です。
良成:同じくハンバートハンバートの佐藤良成です。
2人:よろしくお願いします。
H:よろしくね。前来たのが2017年だったの?
良成:はい。
遊穂:そうみたいです。
H:ずいぶん時間が経ってるね。
良成:4年ぶりにおじゃまします。
H:なんか、去年も会ったような気がするけどね(笑)というか、変わってないんだね。
良成:変わってないですかね?
遊穂:そうですか?そんなことはないですよ?
H:本当?(笑)
遊穂:このテーブルがね、配置換えしてたもんね。
良成:そうだね。
H:まぁここはね、しょっちゅう変えるんですけど。人間って4,5年経ってもそんなに変わらないね。
良成:そうですね。ある程度歳を取ってくると…
H:安定してくるのかね。
良成:そうかもしれないですね。細野さんは髪の毛がだいぶ伸びましたね。
遊穂:そうですね。
H:もう、おじいちゃんで…ぜんぜん記憶力がないんだよね。衰えてて。お2人は誰だったっけな、って忘れちゃって…いやいや、そんなことはない(笑)
2人:(笑)
H:最近よくテレビに出てるよね。
遊穂:そんなことはないけど…
H:いや、よくテレビで観てたなぁ。
良成:え、そんなことないですよ。別の人ですよたぶん(笑)
遊穂:チラッと出たりはしてました。
H:なんかテレビにフィットしてたよ。何の番組かな?子ども番組じゃないか。
遊穂:子ども番組に出たりもしましたね。
H:それを見てたのかな。ぜんぜん違和感がないというかね。音楽が合ってるというか。どうなんですか?
良成:どうなんですかね?
遊穂:緊張しますけどね、テレビなんて。慣れてないので。
良成:いやー、緊張しますね。
H:そうかね。人って緊張してるかどうかわからないよ。僕もよく言われるんだけど。ぜんぜん緊張してないように見えたりするでしょう?やっぱり表情がないんだよ、僕はね。
良成:ポーカーフェイスですね(笑)
遊穂:細野さんでも緊張することはあるんですか?
H:あるよ。
良成:あるんですね!
H:たまにね。だんだん少なくなってきた。ずっとボーっとしてるから。
良成:緊張するときはどうするんですか?
H:数年前まではライヴの舞台袖でどきどきしてたのね。心臓が悪いのかと思っちゃうくらい(笑)
2人:(笑)
H:でも最近はそれがなくなったのかな。心臓病が治ったのかもしれない。あとは特にやることはないけど…なんかやってるの?
良成:なんかやってるかな、緊張…
遊穂:やってる?
良成:俺はね、出る前に舞台袖であくびをするようにしてますね。
遊穂:あー。
H:酸素不足だからね。
良成:あくびをすると強制的にリラックスになるかな、と思って。
H:なるほど。それはいいかもしれないね。
遊穂:そうですね。なんか「きょうは緊張しないでできそうだな」という日は、もう家を出るときからそういう感じで。「きょうはちょっと緊張しちゃいそうだな」というときもやっぱり、家を出るときからもう決まってるんですよね。
H:そうなんだ。予感なのかな?
遊穂:なんなんでしょうかね。
H:ステージだと会場に依るよね。その影響が強いと思う。
良成:そうですね。
遊穂:でも、おんなじ場所でも緊張しちゃう日と緊張しないでできる日もあるし…だからなんなんだろうなぁ、と。
良成:結局わからないよね。
H:なるほど。まぁ、体調かな?
2人:(笑)
H:僕はニューヨークとかロサンゼルスでライヴやったときは緊張したね、やっぱり。
良成:あ、そうでしたか。やっぱり。
H:その緊張してる姿を撮られちゃったんだけどね。
良成:はいはい…あのドキュメンタリーの。
H:観ました?(笑)
良成:観ました(笑)
H:後ろ姿が緊張してて…
遊穂:(笑)
良成:それはやっぱり自分にしかわからないんじゃないですか?自分だとわかっちゃうんですよね。あー、ガチガチだなぁ、と。
H:そう。なにしろなにがなんだか、状況がつかめないままステージに上がっていったんで。そしたら上がっちゃえばね、リラックスしたんですけど。
良成:上がってからは大丈夫なんですね。
H:大丈夫。うん。
遊穂:私、上がってからもダメだなぁ。ダメなときはダメ…
良成:なんかね、緊張してるときは緊張してるんですよね。
H:そういうのわかるんだね。
良成:やっぱりわかりますね。隣にいるから。で、緊張するとこっちにうつるから、やめてくれ!緊張しないでくれ!って思うんですよね(笑)
遊穂:(笑)
H:うつるよね、あれは(笑)
良成:あと緊張してるときって間違えるんですよね、うっかり。
H:それはやるね…
良成:出だしで間違えちゃったりすると、緊張してることで間違えて、その間違えたことの打撃が自分をよりガチガチに…見てて、あ!いまガチっとなってる!って(笑)
遊穂:(笑)
良成:がんばれ!気にすんな!と思いながら…そんなことをやってると自分もうっかり間違えちゃって、みたいな。
H:でも、見てる人は気がつかない場合が多いでしょ?
遊穂:そうですね。
良成:そうなんですよね。
H:いつだったか憶えてないけど…M-1みたいなやつで、漫才の2人がめちゃくちゃ間違えた。そのときはビックリしたね(笑)
遊穂:そういうのを見てるだけでもう、自分が緊張しちゃう(笑)
良成:つらくなっちゃいますね。
遊穂:フィギュアスケートとかも…ドキドキしすぎて見れないですね。
H:ほんとだね。
良成:転んじゃうとつらいですよね。
H:つらいね(笑)まぁ音楽はごまかせるからね。
良成:ごまかせますね。ただ、自分の気持ちがそこに引っ張られちゃうと…ライヴって「今」しかないわけだから間違えちゃっても気にしないで、「今」の音がずっと続いていくだけだから気にする必要はないのに、妙にそこで気持ちが負けちゃったりすると、その後はなんかもう…良くなくなっちゃったりして。
H:萎縮しちゃうんだね。僕はこないだ松本隆のイベントがあって。いちばん最後に"風をあつめて"という歌を歌ったら…必ず間違える曲なんだよ(笑)
2人:(笑)
H:で、間違えちゃったんだけど。もちろん間違えて。
遊穂:もちろん(笑)
良成:もちろん間違えたんですか(笑)
H:なんだろうな…甘えちゃったのかな、みんな許してくれて(笑)
遊穂:(笑)
良成:許さないとかってあるんですかね?(笑)
H:いやー、普通は許されないかもしれないけど…でもあからさまに間違えて。終わった後、松本くんに「まぁ恒例だから」と。間違えが芸の内、ということになってるね。
良成:歌詞ですか?
H:うん、歌詞。
良成:なるほど。やっぱりそうですよね。
H:歌詞の譜割りが毎回違うのね。語数が多いし。
良成:はい…コピーをしようとしたことがあって(笑)ものすごく難しいですよね。
H:そうなんだよ(笑)
良成:[別のフレーズに]置き換えられちゃうんですよね。しかも譜割りが1番、2番、3番、ぜんぶ違うし…実際にやってみたこともあって、本当にこれは覚えづらくて難しいな、と。
遊穂:そうですね。
H:難しいよね。誰が作ったんだろう。本当にもう、迷惑だよ(笑)
2人:(笑)
H:ところで…新作が出たんですね。
2人:そうなんです。
H:タイトルが?
良成:『FOLK 3』。
H:『2』『1』があるわけだ。
2人:はい。
良成:そうなんです。
H:9月8日にもう出てますね。あれ、デビュー20周年?そんなに経つんだね(笑)
良成:意外とやってるんですね、長いこと。
遊穂:ほんとですねぇ。
H:えー、初期の頃と…初期の頃は僕、知ってたかな?20年前って何年?
良成:2001年ですね。きっとご存じないと思います。
H:そうか(笑)え、なんで知り合うことになったんだっけ?(笑)
良成:なんででしたっけ?
遊穂:いちばん最初に…細野さんは憶えてないかもしれないんですけど、ハイドパークでね。
良成:うん、そうだ!
H:そこだ。
良成:ハイドパークです。2005年ですね。
遊穂:2005年だから…もうほんとに最初の頃ですね。
H:僕憶えてるよ、それ。なんかお話ししましたよね。
良成:ご挨拶させて頂きました。
H:あの時、何番目ぐらいに出てたの?豪雨の中?
良成:豪雨の前です。細野さんはちょうど雨が上がったところだったじゃないですか。俺らはまだ陽があって普通に天気が良くて、まだ雨の気配がなくてね。
H:それはよかったね。あの雨の最中に出た人、かわいそうだったね(笑)
良成:大変でしたよね。
遊穂:もう楽屋エリアがね、川みたいになっちゃって。
良成:水浸しでしたね。
H:危険を感じたぐらいだね(笑)
遊穂:そうですね(笑)
良成:ね、危なかったですね。
H:観てる人たちも避難してね。
良成:そうですね。
遊穂:それがいちばん最初にお会いした時ですね。
H:そうだったね。あの時に会った人はいっぱいいるんだ、そういえば。星野くん(星野源)とか。で、あそこから僕はライヴを始めたし。色んなことが始まった日だね。
2人:うんうん。
H:その頃もフォークだよね?
良成:そうですね。あの時は西岡恭蔵さんのトリビュート・アワーという、そういう時間があって。そこで私たちは"春一番"と"プカプカ"を。
H:あ、"プカプカ"やったんだ。
遊穂:はい。
良成:歌わせてもらったんですね。
H:そうなんだ。最近、西岡恭蔵くんの伝記本が出て。いまは脚光を浴びてるのかな。
良成:そうかもしれないですね。
H:じゃあ『FOLK 3』からなにか聴かせて頂きますかね。
良成:はい。この『FOLK』シリーズは…最初に『1』を出したのが5年前だったんですけど。あ、すぐに曲に行かなくてすみません。
H:いいよ。うん。
良成:その時に初めてここにお邪魔させてもらって。
H:そうだ。それが初めてだ。
良成:その時細野さんに「ところでなんで『FOLK』というタイトルをつけたの?」と訊かれたんですよ。それで細野さんにはその前、デイジーワールドの集いで青山のCAYに呼んで頂いたときがあって。あれがおそらく2013年とか、そのくらいだったと思うんです。で、その次の年の年賀状が…午年の年賀状。
H:あ、なんか覚えてるぞ、それ(笑)
遊穂:(笑)
H:細野さんが高校生のときに書かれた年賀状だったんですよね。それをカラーコピーして、何周り目かの午年のときに年賀状を出すと。そこに「今年もフォークソングに励もう」と書いてあったんです。
H:そうだっけ?(笑)
良成:それを見て俺らは、そのときに訊くまで勝手に…
遊穂:私たち宛に書いてくれたんだと思って。
良成:思い込んで。よくよく見たら…
H:そっか。印刷されてた…(笑)
遊穂:あれー?って(笑)
H:すみません…(笑)
良成:それでここに来て「なんで『FOLK』ってタイトルにしたの?」と言われて。いや、細野さんにフォークソングに励もうと言われたんですよ、と言ったら「いや、それは別に君たちに対してのメッセージじゃなくて…」となって。
遊穂:それがきっかけでもう3作目です。
良成:そうです!
H:いやー…いいよね。フォーク好きだよ、僕(笑)
2人:(笑)
H:原点だもんな。今ね、月1で「手作りデイジー」というのをやってて。60年代のをずーっとやってると、やっぱり最初の1963年ぐらいまではポップミュージックがいっぱいあったけど、その頃からピーター・ポール&マリーとか出てくるでしょう?まぁもちろん背後にはボブ・ディランがいたんだけど。そういう経路をたどって聴いて?ハンバートハンバートは。
良成:そうですね。またしく…まさしくそうですね。
H:またしく(笑)
遊穂:(笑)
良成:俺はそうですね。PPMとかキングストン・トリオとかブラザース・フォアとかを、うちの親父が聴いてたんですよ。その影響で出会ったんです。で、さっきから曲を全然…(笑)
H:(笑)
遊穂:いつ聴くのかなって(笑)
良成:じゃあちょっとそろそろ…3作目になって、これはフォークという曲が出来たなぁ、と。自分的に。なので、フォークの大先輩に聴いて頂きたく…『FOLK 3』から"まなざし"という曲を聴いてください。
H:はい。
まなざし - ハンバート ハンバート
(from『FOLK 3』)
H:いやー、聴いちゃった(笑)
2人:(笑)
H:昔、60年代のはっぴいえんどの頃、周りにこういう音楽がいっぱいあったなぁ、そういえば。この歌詞は?
良成:あ、わたくしが…俺が作りました。
遊穂:うん、そうです。
H:子どもの頃の記憶って…揺りかごのときからある?
良成:ないです。これはウソです(笑)
H:(笑)
良成:こういうことがあったらおもしろいな、と思いまして…あったりするんですか?
H:あのね、ハイハイしておつかまりして、うんうんした憶えはあるよ。そしたらわー!って後ろから抱き上げられた(笑)それだけは覚えてるね。
良成:ということは、0歳ですね。
遊穂:そうですね。1歳よりも前ですよね。
H:0歳か。ハイハイだもんね。
良成:まだつかまって立とうとしてるということですよね。たぶん0歳ですよね。記憶があるんですね。
H:それだけはあるけど…勘違いかな?どうなんだろう。
遊穂:私はぜんぜん憶えてないなぁ。
良成:憶えてないね。
H:そうか。憶えてなくても詩は書けるな(笑)
2人:(笑)
H:いい詩だったと思うよ。
良成:ありがとうございます。
遊穂:ありがとうございます。
H:ギターの音の録り方変えた?
良成:はい。やっぱり!(笑)そうなんですよ。
H:いいね。いい感じだね。一体どういう感じの録り方をしたの?
良成:これはマイク2本で…前は色々、『1』『2』と全部録り方を変えてて。今回はエンジニアさんの永井さん(永井はじめ)のプライベートスタジオに行って。とりあえず[歌もギターも]同時に録ってて、俺のほうはマイク2本で…コンデンサーの古いチューブマイクを、なんて言うのかな…
H:置き方も難しいよね。
良成:置き方も結構いろいろ…なんとか方式ってあるじゃないですか。
H:バイノーラルみたいな?違うか。
良成:あ、なんかそんなすごいやつじゃなくて…XY方式だとか。いくつか試してみて、いちばん自然に聞こえるやつがいいかなと思って。それでテストしていろいろやってみて。
H:なるほど。今度教えてもらいたいな。
良成:それは俺にじゃなくて…俺はまったくわからないので、エンジニアの永井さんに聞いてもらえれば(笑)
遊穂:(笑)
H:そっか(笑)なんか、良い感じの立体感という?自然な。最近はこういう音にすごく惹かれるね。
良成:あ、うれしいですね…
H:自然なんだよな。
良成:それを目指して…そう言ってもらえると永井さんも私もめちゃめちゃうれしいです(笑)
H:そっかそっか(笑)
遊穂:やっぱりギターと歌しかないので、どうやって録るかが毎回…ね。
H:そこが肝だよね。音がね。
良成:肝なんですよね。芯を録りたいとモノラルのほうがよかったりするときもあるから…前作のときはモノラルで1本置いて、その周りにステレオマイクを立てたり後ろを録ったりとかいろいろ…バランスを足したりしたんですけど。今回はそれよりももうちょっと自然な感じの広がりが欲しくて。なおかつ、かといって広がりが耳の左右から聞こえるとおかしいんですよね、やっぱり。ギターって1個のものなのに、あっちからもこっちからも聞こえてくるのっていうのがイヤだから…ヘッドフォンで聴いてもスピーカーで聴いても…
H:そう。なんか部屋があって、その真ん中で弾いてる感じがあるね。
遊穂:うんうん。
良成:そういう感じにしたいなと思って。そうなんですよ…
H:いやー、うまくいってよかったね(笑)
良成:はい(笑)
H:真似したい(笑)でも同時ってすごいね。歌はよく…緊張しないんだねそういうときは。
遊穂:そうですね。前作のときは一緒に録らなかったんだよね。
良成:そう。そうなんです。
遊穂:前作のときはギターのデモを録って、それに重ねて歌って。で、ギターを録り直して。
良成:ということもやった。先にギターを録ったときもある。
H:そのほうが今っぽいというか…今の人はみんなそうやってるけど、同時というのはわりと少ないかもしれない。
良成:そうですね。
遊穂:これもね、「同時に録ったほうがいい」と思うときと、「いや、やっぱり別々に録ったほうがいい」と思うときとあって。
H:曲に依るのかな。
良成:一長一短ですもんね。
遊穂:時期もあるね。マイブーム。
良成:時期ね。俺の流行りだね。丁寧に録ろうと思うとやっぱり歌もギターもバラバラに録りたくなるんですけど、だけどそれをやるといちばん大事な「全体でどうか」ということより、細かく全部を見て行っちゃうんですよね。チェックしていって。完璧に、完璧に、って。
H:そうすると全体がなくなっちゃうよね。わかるわかる。
良成:なので結局…初めはやっぱりバラバラに録ってみたんですけど、やっぱりなんかなぁ…と思って。それでやってみたら…まぁでも、じゃあ前から一発録りしたらよかったのか、というとできなかったと思うんですよね。
H:やっとできるようになったんだね。
良成:そうですね。
遊穂:それもあるでしょうね。
H:これはやっぱりね、今の時代がそういう時代になってきたんだね。新しいんだよ、それ。なんというか、あるところに戻ったというかな。世界中でそういうことやってるよね。繊細な音の感じ方というのはみんなやってるよね。
良成:あー、そうですか。
H:えー…じゃあ、全体がこんな感じ?
遊穂:そうです。
良成:わりとこんな感じです。
H:じゃあもう1曲だけ聴いて、ここで…もうちょっと時間がないかな?
(D:ちょうどぐらいですね。)
2人:(笑)
H:ちょうどいいところで…最後の曲を紹介してもらっていいですか?
遊穂:はい。じゃあ『FOLK 3』から"愛のさざなみ"を聴いてください。
H:じゃあこれを聴きながら…また来てくださいね。ハンバートハンバートのお2人でした。
2人:ありがとうございました。
愛のさざなみ - ハンバート ハンバート
(from『FOLK 3』)
H:歌もなんか、録り方がいいね。
良成:あ、そうですか?
H:このエンジニアの人紹介してもらおうかな(笑)
遊穂:ぜひぜひ…
良成:すっごく喜ぶと思います。
H:ほんと?
良成:壁に細野さんのレコードを飾ってるぐらいの人なんで…(笑)
H:お恥ずかしい…へぇ。
良成:でも、一度もお会いしたことはないと言っていました。
H:なんか、音が新しい。歌も含めて。
良成:いやー、うれしいなぁ…
遊穂:やったー…
H:これはやっぱり音楽が伝わってくるよね。よかった。
良成:そうですかね。なによりうれしいです(笑)
遊穂:やってることがシンプルだからね。音が新しかったらうれしいね。
良成:そうだね。
H:そこはすごい発見だね。
2021.12.19 Inter FM「Daisy Holiday!」より
H:はい、こんばんは。細野晴臣です。いやいやいや…
O:いやいやいやいや…岡田崇です(笑)
H:イヤイヤ期の人が集まって…レギュラーと言ってもほんとに少なくなったね。
O:もう、2軍落ちしましてね(笑)
H:(笑)ゲストが多いからね。
O:そうですね。
H:…あれ?そこの人は?
コ:はい、こんばんは。コシミハルです。
H:はい、どうぞ。
O:岡田崇です。2度目です(笑)
H:あ、そうか(笑)いやいやいや…
O:もうあっという間に年の瀬というか。クリスマスというかね。
H:毎年言ってる通りになるね。
O:ほんとにね…いやいやいや…
H:イヤなの?
O:いやいやいやいや…(笑)
H:ちょっと話進めるけど…(笑)近況をお知らせください。岡田くん。
O:近況はですね、仕事を一生懸命…
H:相変わらずですね。
O:来年出る大瀧さんの『NIAGARA TRIANGLE VOL.2』のボックスをいま作ってて。
H:いよいよ。ボックスなんだね。
O:あといま、レイモンド・スコット(Raymond Scott)の『Jingle Workshop』というジングルを集めたアルバムの日本盤を出すので…もう今月出ると思います。いま翻訳のブックレットと帯と解説を印刷していて。もう盤はできあがってきているので…アナログ盤2枚組です。
H:あ、ほんと?CD?
O:CDは出さないです。アナログだけ…LI'L DAISY限定プレスで作ってもらったので。
H:なるほど。レコードプレーヤー、要るよね。
O:そうですね(笑)うちは何台もありますけど…
H:1個ちょうだいね(笑)
O:大きいですよ?古いやつなんで…
H:はい、そこのお方。近況を。
コ:私は…今年はアルバムを作ったでしょ?だから来年もまたコンサートをしようと思って。いまはちょっとその時期のこととかを考えています。
H:あ、本当?それはそれで。いつ頃かね。
コ:夏ぐらいまでには…なんか声出ない(笑)
2人:(笑)
H:久しぶりにしゃべった?
コ:うんうん。そういう感じありますね。
H:枯れてるね。ロックシンガーみたいな声になってる。次はロックやるのかな。
コ:うわ、おもしろい。
H:昔やってたよね。
コ:やってたの?
H:やってないか。
O:ロックではないですね(笑)
H:ロックじゃないか。ロック経験ないもんね(笑)
H:えーと…まぁ、自分のことはさておき。
O:あれ?近況は。
H:近況?忙しかったピークが過ぎて、なんかちょっといまは力が抜けて…そろそろ引きこもってなんかやろうかな、と。
O:お。楽しみにしてます。
H:うん。そういうわけでね、もう年の瀬なんで…この番組は毎回クリスマス前後にかかるじゃん。前はよくクリスマス特集してましたよね。今回は何日?
(D:19日。)
H:今回は19日だ。微妙だよね(笑)
O:クリスマスっちゃあクリスマスですね。
H:なんか持ってきてくれたんでしょ?
O:一応まぁ、クリスマスということだったので…
H:いちばん僕ね、聴きたいんですよ。オンドレイ・ハヴェルカ(Ondřej Havelka)。
O:お!聴いちゃいますか。
H:聴いちゃいたいね。
O:オンドレイ・ハヴェルカさんの新譜が出ました。出ました?出たのかなぁ。わかんないですけど、届きました。その中で"Tutti Frutti"をやっているので。
H:それがね、参っちゃうよね(笑)
コ:すごい、素敵でした。
Tutti Frutti - Ondřej Havelka & His Melody Makers
(from『Swing nylonového věku (Swing of the Nylon Age)』)
H:すごい。すごいっていうか、そのまんまだね(笑)
O:ジーン・クルーパ(Gene Krupa)の…
H:徹底してるよね、オンドレイさん。
コ:ダンスもすごいしね…タップがいいですよね。
H:なんか、[自分と]カブるところがいっぱいあるんだよね。ブギもやっててね。なんだっけ?あの曲。
O:"Beat Me Daddy"。
H:あ、"Beat Me Daddy"だ。僕はそれレコーディングしてないけど。いやー…いやいやいや(笑)
O:25周年らしくて。それを記念して色々やろうと思っていたら、コロナで…チェコも結構ひどいので。
H:そうかそうか。
O:今回のこのアルバムはクラウドファンディングで資金を…いつもはコンサートをいっぱいやっていて、コンサートによってバンドを維持していたので。それが一切できなくなって…クラウドファンディングでお金を集めて。「いくら集まったらアルバムを作ります」「もうちょっと集まったらミュージックビデオを作ります」とか、そういう感じで。それで僕は買ってたんで…
H:なるほどね。協力者だ。レギュラーのバンドを持ってるってすごいね。ビッグバンドをね。うらやましい限りです。
O:レギュラーで持ってて、そのバンドは演劇の伴奏も定期的にやってたりするので。
H:なるほどね。チェコでは大人気でしょうね。
O:チェコではすごい人気ですね、ハヴェルカさんは。前に行ったときはチケットがホントに取れない、と地元の方が言ってました。これはミュージックビデオもあるので、チェックしてみてください。
H:うん。オンドレイ・ハヴェルカ。
O:LI'L DAISYのショップで…少数、売っております。
[*2021.12.26時点では見事SOLD OUT。]
H:それでは。
コ:はい。ジャン・サブロン(Jean Sablon)で"Tenderly"を。
Tendrement (Tenderly) - Jean Sablon
H:はい。えー…2人でなに話してたの?なんにも聞こえないんで(笑)
O:チェコの話を…
コ:チェコにね、行きたいって。ハヴェルカさんのステージをいまいちばん見たい。
O:12月に公演が予定されてたんですけど、それもコロナでまた延期になっちゃって。ねぇ…
H:まぁ、日本だとできるんじゃないかね。呼んでよ岡田くん(笑)
O:チェコ大使館とかね…
H:どこにあるんだろうね。
O:でも、Twitterとかでチェコの文化を発信してる人がハヴェルカさんのことを書いてたんだよなぁ、前。
H:あ、ほんとに?ぜひぜひ、コンタクトして。
O:可能性はゼロではないのかもしれないですね。
H:もうチェコ大使館に勤めたらいいんじゃないの?
O:なぜ?(笑)でも、見たいですよね。
H:うん。見たい。
コ:たしかに見たい。
H:いい会場がなぁ、ないんだよなぁ。
O:そうですね…すごい会場だったから、チェコで見たところも。
H:もうなんかね、カルチャーがやっぱり違うや。
O:そうですね。こういうバンドがゴロゴロいますからね、チェコ。
H:いやー、参ったなぁ…
コ:で、それをみんなで楽しむってことですよね?
O:ほんとに普通にボールルームみたいなところがちゃんとまだあって、こういう楽団が演奏している前でみんなで踊る…
コ:踊るんだよね。
O:で、女の子たちがああいうファッションをして来るんですよ。前のほうにベンチが置いてあって、ベンチに座ってると男の人が来てダンスに誘って踊る…みたいのをやってましたよ。うわー!と思って。
H:いいね。うらやましい!それがやりたくてしょうがないんだけど…まずできないね。
O:それが普通にあるんでね。すごかったなぁ…
H:まぁこれはもうしょうがないや。こっちでは無理だろうね。
H:そういうわけで…なにかけようかな、僕は。えーと…もうなんにもネタがないんで。東北とか北陸とかは雪でしょ?北海道もすごいよね。猛吹雪みたいな。その中でソリをすべらせるかどうか。
O:(笑)
H:"Sleigh Ride"です。ビング・クロスビー(Bing Crosby)です。
Sleigh Ride - Bing Crosby
H:いやいやいやいや…(笑)
O:いやいやいや…(笑)
H:イヤイヤ期が年末に…次の曲に行っちゃいますよ?
O:じゃあ次はですね、雪の話になったので雪だるまを。
H:お?
O:"Socko The Smallest Snowball"というベル・シスターズ(The Bell Sisters)の曲で、スパイク・ジョーンズ(Spike Jones)が伴奏してますけど。小っちゃすぎて子どもが遊んでくれない雪だるまの…
H:小っちゃいんだね。どのぐらい小っちゃいのかね。5mmぐらいかな。
O:すごく小っちゃいんじゃないですかね。「大きくなったら雪だるまの頭になって目を付けてもらって、みんなを笑顔にできるのに!」みたいな曲です(笑)
H:なるほどね。東京じゃ雪だるまを見たことないね。
O:しばらく見てないですね。昔はありましたね。
H:アイスクリームとかも作ったな。まぁいいや、どうぞ。
O:"Socko The Smallest Snowball"です。
Socko The Smallest Snowball - Spike Jones and his City Slickers featuring The Bell Sisters
H:ベル・シスターズで"Socko The Smallest Snowball"。なんか幸せそうだよね、この時代。アメリカはやっぱり50年代、よかったよね。
O:52年ですね、今のは。
H:今のアメリカはどうなんだろうね?こういうの聴いてるのかな?
O:聴いてないんじゃないですか?(笑)
H:聴いてないよね(笑)なんか荒んじゃったよなぁ、アメリカも…
2人:(笑)
H:サヨナラ。
O:アメリカ、と(笑)
H:えーと…クリスマスってどうなの?みんな。まぁ、毎年聞くけど(笑)
2人:(笑)
H:音楽だけだね。
O:いやー…そうですね。もうなんにもないなぁ。寝て過ごすかな(笑)
H:ね。ジーザスはどこ行った?(笑)ミハルちゃんはクリスチャンじゃ…
コ:また出た…
H:(笑)お父上はクリスチャンじゃなかったっけ?なんかしゃべって(笑)
コ:クリスマスは教会に行きます。
H:あ、今年も?
コ:予約制ね。
H:予約制?
O:コロナで?そうですよね、今はね。
H:そうなんだ。じゃあお父さんと過ごすわけだね。
コ:そうですね。いつも家族で。
H:母上はいないけど…
コ:そうですね、母はいないので…寂しいですけど。
H:チキンとか食べるの?
コ:ターキーとか焼くのが前は好きでしたけどね。
H:なんか焼いてたよね、よく。残り物を頂いたことがある(笑)
2人:(笑)
H:…はい、いやいやいや(笑)
O:(笑)
H:なんだろう、レギュラーのこのノリは(笑)
O:いやいやいや…
H:僕はほら、ずっと60年代[特集を]毎月やってて。そろそろ佳境なんだけど、もう頭の中が60年代でいっぱいになっちゃったのね(笑)抜けられなくて。すごいなぁ、と思って。あの時代。ぜんぜん50年代と違う。
O:ガラッとね。
H:大変なことになってたんだね。そんな中でやってたから、僕たち。
O:ね。あれをリアルタイムで体験してるというのはすごいですよね。
H:うん。だから全部を再現しようと思ったら50年かかるんだよね。
O:(笑)
H:だから月1回やってると120年ぐらいかな…わからないけど。それで、このレギュラーに来ると…この感じ。
2人:(笑)
H:なぁに?これは。
O:ゲストの人だとね、ゲストがいっぱいしゃべってくれるし。
H:そうなんですよ。このお2人はあんまりしゃべらないしね。
O:普段からしゃべらないですからね。もう家でずっとひとりでいて、このラジオに来て久しぶりに声を出す、みたいなときがありますからね。あれ、声はどう出すんだっけ?みたいなね(笑)参った参った…
H:でも、ラジオに来てもしゃべらない人がいるよね、1人(笑)
コ:(笑)
H:なんかペラペラしゃべって。独り言でもいいから。はい、どうぞ!
コ:え?じゃあ次の曲。
H:はい(笑)
コ:ジョセフィン・ベイカー(Josephine Baker)、"Night and Day"。
H:なんか賞をもらったよね、フランスで。
コ:え?
H:そうなの。それではこれを聴きながら…え?
コ:ホントですか?
H:ちょっと待って…(笑)
O:「ホントですか?」って…(笑)
H:終わらないじゃん(笑)
コ:亡くなって…
O:亡くなってからもらったんじゃないですか?
H:最近だよ。今年。
コ:ふーん…
O:(笑)
H:おーい!終わっていいの?(笑)締めますよ?はい、これを聴きながら…また来週。この間はなんなの?(笑)
O:賞を獲ったことへの疑いのまま終わった感じが…(笑)
H:なんで信じないんだろ?(笑)
Night and Day - Josephine Baker