2020.10.04 Inter FM「Daisy Holiday!」より
手作りデイジー🌼#12
(以下、すべてH:)
はい、細野晴臣です。もう10月になってしまいましたが…思えばですね、この1年を振り返ると、ずっとマスクをして毎日手を洗ってたような気がしますね。手の常在菌が悲鳴を上げてて。これでいいのかな、と思いますけど。まぁ、習慣になってしまいました。
そしてきょうも、また相変わらずなんですけど…ひとつのテーマではなくて、あれこれとやってみたいと思います。最初はですね、先月にかけた口笛の名手マジー・マルセリーノ(Muzzy Marcellino)の大ヒット曲というかな。クレジットされてなかったと思うんですけど。1954年の映画『紅の翼(The High and the Mighty)』という。これは僕、小学生のときに観ているんですけど。飛行機が墜落しそうになって、なんとか助かっていくというジョン・ウェイン(John Wayne)主演の映画でした。それではディミトリ・ティオムキン(Dimitri Tiomkin)作曲によるヴィクター・ヤング・オーケストラ(Victor Young and His Orchestra)で「紅の翼」、"The High and the Mighty"。
The High and the Mighty - Victor Young and His Singing Strings
Provence-The Bull Fight - Jean Prodromides
(from『Le Voyage en Ballon』)
いま流れてる音楽は1960年に制作された『素晴らしい風船旅行(Le Voyage en Ballon)』というフランス映画の音楽なんですけど。作ったのはアルベール・ラモリス(Albert Lamorisse)という…この方はですね、その前に『白い馬(Crin-Blanc)』、『赤い風船(Le Ballon Rouge)』という大変すばらしい短編を作った人で。その2本も幼稚園の頃に観てますけど。このアルベール・ラモリスさんはですね、その後…この映画の後ですね、空中撮影の事故で亡くなってしまいました。そして音楽はジャン・プロドロミデス(Jean Prodromides)という、あんまり多くは作ってない方ですけど、本当にすばらしい音楽だな、と。子供の頃から思ってました。そういえば、『銀河鉄道の夜』のアルバムを出した後にフランスから手紙が届いたんですね。妙齢の女性なんですけど、なんとこの「ジャン・プロドロミデスという作曲家を思い出させる」、と書かれてました。なんかうれしかったですね。その後、ラジオで…歌詞付きのポップミュージックとしてヒットしてたんですよね。それをやっと、最近手に入れました。レ・リフ(Les Riff)による"Le Voyage en Ballon"。
Le Voyage en Ballon - Le Riff
時代がガラッと変わりまして…かつてあった大恐慌とか、世界大戦とか。そういった不況の時代の音楽を集めてみました。最初はランブリン・ジャック・エリオット(Ramblin' Jack Elliott)が歌う、1927年にブラインド・レモン・ジェファーソン(Blind Lemon Jefferson)が歌ってました、"Rising High Water Blues"。
Rising High Water Blues - Ramblin' Jack Elliott
(from『A Stranger Here』)
次の曲はですね…ちょっと時代がまた飛んじゃいますけど、1947年にジェシ・アシュロック(Jesse Ashlock)が発表した"My Bank Account Is Gone"。僕がカヴァーしたのを聴いてください。
My Bank Account Is Gone - 細野晴臣
(from『Heavenly Music』)
次は"I Done Made Up My Mind"という曲。これも1947年、スワン・シルヴァートーンズ(Swan Silvertones)というゴスペルの…ホントに最初の輝かしいグループが歌ったものですが、ここではアーロン・ネヴィル(Aaron Neville)です。
I Done Made Up My Mind - Aaron Neville
(from『I Know I've Been Changed』)
感染が拡大しているというこの世界状況。これはどういうカラクリなんでしょうかね。そんな中で今の音楽家たちがどういう動きをしているのか。僕が思うに、彼らはとても内省的になってるし、とても静かな音楽をやり出してるように思うんですけど。まぁ、前からやってる人がだんだん脚光を浴びてるという側面もありますね。そんな中で…テイラー・スウィフト(Taylor Swift)[の新作『folklore』]に1曲参加している人物、ボン・イヴェール(Bon Iver)。これはバンド名なんですね。実際はですね、ジャスティン・ヴァーノン(Justin Vernon)という人がひとりでやっているようなところがあります。インディーズ的な動きをしてますけど、グラミー賞も獲ったり、非常に売れてる人です。それでは2016年に出た『22, A Million』というアルバムから、"45"。
45 - Bon Iver
(from『22, A Million』)
次はイギリスから、ジェイミー・ウーン(Jamie Woon)。今から5年前に出したアルバム『Making Time』から"Skin"という曲。
Skin - Jamie Woon
(from『Making Time』)
きょうの最後は…色んなアーティスト、例えばビリー・アイリッシュ(Billie Eilish)などからとても尊敬されているというブルーノ・メジャー(Bruno Major)、"Regent's Park"。
Regent's Park - Bruno Major
(from『To Let A Good Thing Die』)
2020.09.27 Inter FM「Daisy Holiday!」より
H:こんばんは。細野晴臣です。えー…きょうはホントひさしぶりですね、また。
O:こんばんは。岡田崇です。
H:あー、いらっしゃい(笑)
O:ごぶさたしております。
H:このスタジオに来るのは2月以来…あ、そんなことないな。5月だ。
O:そうですね。その後…ジャケットの打ち合わせでチラッと。
H:あ、そうだ。何度も会ってるわ(笑)
O:(笑)
H:でも、こうやって録るのはひさしぶりだよね。
O:そうですね。2月…くらいからじゃないですかね。
H:そう。うん。いやいや、どうしてたか…っていうわりには会ってるからね(笑)
O:(笑)
H:だいたいわかってるんだけど…
O:まぁ、変わらないですかね。
H:変わらないね。岡田くんは特に変わらない。
O:もともと引きこもりなんで…(笑)
H:僕は多少出るほうなんだけどね。まぁ、秋になっちゃったよね。いつの間にか。
O:ね。ホントにもう、「もうすぐクリスマス」なんてのが…
H:冗談じゃなくなっちゃったよね(笑)
O:今年はもう、なかったことにしてほしいですね。
H:そうだね。2020年ってなかった年になるのかな。
O:みんなで留年すればいいんじゃないかな、っていう…(笑)
H:留年ね。じゃあ…1歳、年取らないでいいのかね(笑)
O:ね。みんなラッキー!みたいな。
H:みんなで決めればそうなるよね。
O:うん。全世界的に…(笑)
H:そうだ。さぁ、まぁどうなるかわからないですけどね。えー…音楽、かけていきましょうかね。
O:はい。
H:岡田くんが最近、また…仕入れてるわけね。
O:こんな中でも、まぁ…(笑)
H:(笑)
O:お店には行ってないですけどね。通販というか…
H:通販ね。ネットで買い漁ってるという…もう、癖だね。
O:そうですね。でも、結構届くのに時間がかかったりしますね。
H:なるほど。このリストを見るとですね、和モノがあったり、いろいろ…
O:そうですね。
H:ちょっとじゃあ、1曲聴かせてもらおうかな。
O:じゃあ、1曲目は…ラリー・アレン(Larry Allen)という。
H:知りません。
O:インディアナ州出身のピアニストでヴォーカリストなんですけど、米軍の方ですね。
H:なるほど。
O:1942年から米軍に従事して、楽団でピアノ演奏をしながら東南アジアのほうをずーっと回ってきて、東京にやってきて。
H:うん。
O:1950年…戦後、日本に来て、赤坂のゴールデン・ゲート・クラブという…
H:そんなクラブがあったんだね。
O:わりと有名なクラブだったらしいんですけど、そこで演奏をしてた方で…実況録音盤をSP盤とEPで2種類出していて。
H:よくまぁ、そんなものを手に入れるよね。
O:(笑)その中で"Japanese Rumba"をやってるのがあったので…
H:ほほう。聴きたい。
O:1956年の録音ですね。
Japanese Rumba - Larry Allen
(from『Recorded Direct From New Golden Gate Club, Tokyo』)
H:いやいやいや…自由だな(笑)
O:(笑)
H:いま何やってるんだろうね、この人は。
O:どうしてるんでしょうね。1970年に香港で演奏してる、っていうのはYouTubeに動画が上がってましたけどね。
H:ああそう。いやー、もう、戦後だね。
O:戦後ですね。
H:いやー…まぁ、そういう歌なんですけどね。じゃあ、ラリー・アレン…もう1曲あるんでしょ?
O:あ、はい。聴いてみましょうか?せっかくなんで。
H:うん。全部かけちゃわないとね(笑)
O:"Papa Loves Mambo"。
H:"Papa Loves Mambo"ね。
Papa Loves Mambo - Larry Allen
(from『Recorded Direct From New Golden Gate Club, Tokyo』)
H:なるほど…ますます自由だね(笑)
O:(笑)
H:気楽な商売、っていう感じ(笑)この人はアフリカ系だよね?
O:そうですね。
H:ジャケットをさっき見せてもらったらすごい、おもしろいジャケットですね(笑)
O:(笑)
H:クラウン(clown, 道化)みたいな…
O:「Clown Prince」って書いてありますね。
H:ベースを弾いてるのは日本の方ね。
O:鈴木勲さんという…有名な。
H:有名ですね。
O:渡辺貞夫グループとか…まだご存命。
H:あ、そうですか。
O:当時、米軍キャンプを回り始めた頃なんだと思います。初期の。
H:なるほど。もう、日本の芸能の原点だね、ここら辺は。
O:ね。
H:いやー…これに対抗できるもの、ないなぁ…(笑)どうしよう。
O:(笑)
H:えーとね…これなに、DJ合戦なの?(笑)
O:いやいや、別にそういうわけでは…(笑)
H:まぁじゃあ、ラテンというところで、HISの…
O:おお。
H:ペレス・プラード(Pérez Prado)の曲をやってるんで、"恋のチュンガ"。自分で歌ってますが。
恋のチュンガ - HIS
(from『日本の人』)
H:いやいや…これはひさしぶりに聴いたな(笑)
O:いいですね。
H:HISね。もうちょっとやってみたかったですけどね。うん。
H:さぁて。どうしようかな…
O:(笑)
H:秋はどうやって過ごすか。どっか行くの?
O:いや?
H:(笑)
O:行かないですね(笑)
H:行かないね。
O:んー、まだまだ…
H:うん。世の中でツイン・パンデミックとか言ってる人もいるよね。
O:はいはい、インフルエンザと。
H:2つ来るってね。おどかすよね。
O:ねぇ。
H:収まりそうになるとおどかすっていう。
O:でも、すぐみんな油断するから…(笑)
H:もう全然、いま世の中油断だらけだよ(笑)
O:ね、結構混雑してましたよ、きょうも。
H:でしょ?車も人もすごい多いよ。連休…今ね、ちょうど連休中に録ってるんですけど。
O:はい。
H:連休なのに人が多い。みんな[遠くに]出ないから(笑)
O:都内で(笑)
H:そんな感じで日々を暮らしてるわけですけど…じゃあ、音楽を聴きましょうか。
O:じゃあ…続いて、柳沢真一(柳澤愼一)さんの…
H:うわー!(笑)
O:"イスタンブール"を(笑)
H:柳沢真一、知ってる人いるかな?(笑)
O:いるんじゃないですか…?
H:いや、僕ぐらいの[年代の]人は知ってるだろうけど。若い人は知らないよ。
O:今、87歳。
H:ご健在ですね。
O:ご健在で、浅草でまだ歌ってますよ。
H:ええー!よく知ってるね、そんなこと。
O:先月もやってて、10月も、たしか…浅草のHUBっていうパブで。
H:あのね、小学校のときに30分番組のコメディーがいっぱいあったのね。
O:はいはい。
H:その中によく出てたみたい。最初、コメディアンかと思って…
O:まぁ、コメディアン…そうですね。金語楼さん(柳家金語楼)とかエノケン(榎本健一)、ロッパ(古川緑波)とかから、かわいがられてて。
H:うん。そしたらあるとき歌い出して、ジャズを。良い声で。クルーナーなんだよね。
O:うんうん。柳沢さんも進駐軍のクラブを回ってて。
H:ああ、そうなんだね。そうか、ご健在なのうれしいな。ギャグを憶えてるんだよね。
O:お。
H:屋台じゃなくて…食べ物を売りに回ってるのね。
O:ええ。
H:「生あったかいゆで卵♪」とかね。
O:(笑)
H:「冷たぁいアイスクリーム」とか。食べ物の温度で声が変わるっていう(笑)
O:(笑)
H:そのギャグ憶えてるんだよなぁ(笑)
O:あれですよね、『奥さまは魔女(Bewitched)』のダーリン(Darrin Stephens)の吹き替えもそうですよね。
H:そうだそうだ。
O:それで一番知ってる人が多いかもしれないですね。聞き覚えがあるといえば。
H:そうだね。じゃあさっそく聴きましょう。なにを歌ってるんでしたっけ?
O:"イスタンブール"。
H:あ、そうだ。
イスタンブール - 柳沢真一
H:なんか、ちゃんとしてるよなぁ(笑)
O:(笑)そうそう、『メゾン・ド・ヒミコ』にも出てますね、柳沢さん。
H:…ちょっと待って(笑)あれ…?
O:老人ホームの中の…
H:そっか…なんだか、ボーッとやってたな…ちょっと気が付かなかったかな…そうだったんだ(笑)
O:そうなんですよ(笑)
H:いやぁ…現場は知らないしね。音楽はやったけど…
O:そうですよね(笑)
H:そうだったんだ…若い頃のイメージしかないんで、わかんなかったかも…ショック。なんで知ってんの?岡田くんは。
O:いやいや…(笑)
H:観てた?観てないよね?(笑)
O:当時は観てないです(笑)まぁ、戦後のこの辺のアメリカン・ポピュラーミュージックを日本語でやってるのを…
H:そうだよね。必ず出てくるよね。
O:そうですね。その辺、結構おもしろいなと思って。
H:なるほど。じゃあ、その流れでもう1曲どうぞ。そういう人いるでしょう。
O:じゃあ、池真理子さんの…
H:池真理子さんね。
O:"ボタンとリボン"を聴いてみましょう。
H:選曲がいいよね。
ボタンとリボン - 池真理子
H:いやー、おもしれぇ…なんか、エキゾチックだよね(笑)
O:(笑)
H:全然スウィングしないんだね(笑)
O:「バッテンボー(Buttons and Bows)」。
H:「バッテンボー」ですよね。これも小学校のときだからね。
O:「バッテンボーの歌」ですもんね(笑)
H:そうそうそう。なんでボタン&リボンが「バッテンボー」に聞こえるんだろうね(笑)
O:ボウ(Bow)ですからね。
H:そうだ。ボウだね。リボンじゃないんだ。小池真理子さん?
O:池真理子さんですね。
H:小池さんじゃなかった(笑)
O:(笑)
H:どんな人?ジャズ歌手じゃないでしょう、この人は。
O:僕ね、池真理子さんってあんまりよく…詳細知らずで。
H:そっか。発声がジャズじゃないもんね。
O:そうですね。
H:この頃よく…もっと前だけど、芸者さんがね。よく歌ってたよね。
O:そうですね。
H:赤坂小梅さんとかね。みんなこんな発声で。ブギウギ歌ってるんだよね、芸者さんが。
O:"三味線ブギウギ"とかね(笑)
H:そうそうそう(笑)で、「ンギウギ」って言うんだよね(笑)鼻濁音で。
O:(笑)
H:ちょっと気持ち悪い(笑)いやー、東京っぽいというかなんというかね…おもしろかった。
H:さて。これに対抗できるものはない。
O:(笑)
H:で、"Japanese Rumba"を見つけたんで。ちょっとめずらしいやつで…ん?もう時間?
(D:最後で…)
H:じゃあもう、これが最後の曲になりますが…ツイン・チューンズ(Twin Tunes)。どこの人か知りません(笑)
O:(笑)
Japanese Rumba - Twin Tunes
2020.09.20 Inter FM「Daisy Holiday!」より
H:細野晴臣です。今週も先週に引き続き、高木完くんとのお話をお送りします。
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高木:ダンスミュージックの話をずっとしちゃっててアレなんですけど。
H:うん。
高木:細野さんのソロアルバムと…はっぴいえんどからソロのやつをずっと聴いてたんですけど。
H:はい。
高木:意外と…意外とって言うとアレですけど、リズムボックスも早くから取り入れてたじゃないですか。
H:そう、かもしれないな。
高木:リズムボックスを楽曲、というかベーシック[トラック]に取り入れて作り始めたのはいつぐらいが最初だったんですか?
H:最初はいつだっけなぁ…えーとね、やっぱりスライ(Sly & The Family Stone)の影響が強いかな。
高木:あ、そっか。
H:興奮したんだよね、あれを聴いて。『Fresh』だな。うん。あれはもう…あんな音楽を作りたいと思ってリズムボックスを買ったんですよね。
高木:最初に購入されたのはどこのですか?エーストーン(ACE TONE)とかそういうのですか?
H:いや…どっかのスタジオにあったエーストーンのスピーカーがついた箱型のね、初期のやつがあって。ホントはそれがいちばん良い音だったんだけど、もう手に入らなかったんだよね、当時。買おうと思ったら無くて。で、IC化されてコンパクトなリズムボックスを買って。それを使ってたりして。
高木:それは日本製ですか?
H:日本製。ぜんぶ日本製。それは日本にしかなかったんじゃないの?ああいうの。
高木:マエストロ(Maestro)のやつを僕…後から買ったりして。
H:あー。新しいね、そりゃ。
高木:それは新しいんですかね?(笑)そっか。日本製だとドンカマティック(DONCA MATIC)とか、そういう名前のやつが…
H:あー、ドンカマっていうのはスタジオで[リズムを]キープするために使ってただけでね…ドンカマはそんなに好きじゃなかったけど(笑)使い方がね。
高木:リズムボックスはそのドンカマのものとは[違う]…?
H:うん。プリセットがいっぱいあってね。マンボ、ルンバとか。そのプリセットでやってるわけで。スライもよく聴くとそういうプリセットで使ってるよね。んー。
高木:あのリズムボックスの音をスライで最初に聴かれたときに「うおっ」っていう新鮮さがあったという感じなんですかね。
H:あったねぇ。
In Time - Sly & The Family Stone
(from『Fresh』)
H:それを聴くまで数年…1年ぐらいかな?バンド仲間の鈴木茂とレコード屋のヴィンテージコーナーに行っちゃあジョージ・ガーシュイン(George Gershwin)とか、フレッド・アステア(Fred Astaire)とか。1930年代ぐらいの音楽を集めてたんだよ。なんでだか。
高木:ほうほう。
H:打ち合わせも何もしてない、たまたま鈴木茂もそういうことをやってた。で、あるとき、1年ぐらい経ってね。2人でね、「僕たちこのまんまでいいのかな?」って鈴木茂が僕に言うわけ。「新しい音楽聴いてないけど…」って(笑)
高木:レコード選びながら…(笑)
H:そうそう(笑)そういうときに『Fresh』を聴いちゃったんだよね。新譜が出たわけだよね。それで茂もそうだし、僕も目が覚めたというかね。ビックリしちゃった。戻れたんだよね、今の時代に(笑)
高木:ジョージ・ガーシュインから。
H:そうそうそう(笑)
高木:でも、それが混ざっちゃったりしてる感じがあるじゃないですか、細野さんも。
H:混ざってるねぇ。
高木:それがおもしろいですよね。で、最近細野さんも初期のアルバムを作り直したりとか、昔やられてた曲をライヴでやられたりするじゃないですか。
H:はい。
高木:だからいま思うと、1970年代の終わりから80年代…70年代も最初のYMOのアルバムは細野さんの流れがあるんですけど。その途中のメガヒットした頃のだけがもしかしたら異色というか…細野さんがやられてきた中で、雰囲気が。
H:そうだね、異色だね。それは坂本くん(坂本龍一)にとってもそうだろうし。みんなそれぞれ異色の時代だった。特に僕はプロデュースの立場をすごく意識してたから。
高木:なるほど。
H:言い出しっぺだし、「うまくやっていかないといけない」という重圧があったわけだ。プレッシャーというかね。
高木:うーん。
H:だから自分のことをあんまり考えなかった。みんなの持ってきたものをデザインしていく過程を…まぁデザイナーチームみたいな感じだったね。そういう意味で異色だったのかも。
高木:あ、それで…いま仰ってた「デザイナーチームみたい」っていうところで最初は横尾さん(横尾忠則)もメンバーに、という話が…
H:そう。ホントに[横尾さんは]入るって言うから…あ、やるんだ、と思って(笑)記者会見があるから来てください、って言ったら…来ないんだよ(笑)
高木:(笑)
H:まぁでもぜんぜん驚かなかったけどね。
高木:あー、来ないだろうな、と思われてたんですね。
H:うん。半分来ないかな、と思ってた。
高木:その前にアルバムを作られてますもんね、おふたりの名義で。
H:そうそう。それがまぁ、初めてコンピューターを使ったアルバム。『COCHIN MOON』というやつで。
高木:あれもビックリしたなぁ、後から聴いて。こんな電子音楽なアルバムを作ってたんだ、アンビエントとかやる前に…
H:やってたんですよ、めちゃくちゃなアルバム。自分でもよくわかんないんだよ、あれ(笑)
高木:あれはどういう気持ちで…気持ちって言ったら失礼ですけど(笑)
H:(笑)
高木:どのノリで録音されてたんですか?
H:あのね…その前に1か月くらいインドに行ってたでしょ?
高木:はい、おなかを壊した事件の。
H:そう。横尾さんと一緒におなかを壊して。で、奇跡的に…ヒーラーの女性がいてね。マドラスの領事の奥さんなんだけど。
高木:え?マドラス?
H:マドラスっていう場所ね、港町。マドラスの模様っていうのはインドのマドラスの地方の模様なんだけど。その人に治してもらったりして、1か月の旅がすごく濃かったんだよね。
高木:んー。
H:それをまとめて『COCHIN MOON』というものにした。
高木:その奥さんってヒーリングというか…ハンドパワーって言うとアレですけど(笑)
H:そう。こっちは治された側だから…病気だっていうのを嗅ぎつけて領事の旦那がホテルまで来て、「あなたたち、死にますよ!」って脅かすわけだ。
高木:こわい。
H:「肝炎で死にますよ」。
高木:え。
H:ビックリしちゃって、死んじゃうんだ…と思って(笑)
高木:(笑)2人でですか?
H:そうそう、2人で。横尾さんと2人で。
高木:(笑)
H:で、帰ろうか、なんて言ってたのね。そしたら一行の仲間たちからなじられるわけだ。「弱虫!」な
てね。
高木:え、一行って他にもいたんですか?
H:いたの。5,6人いたのかな。
高木:おふたりだけじゃないんですね。
H:じゃないの。うん。
高木:じゃあ、他にカメラマンの人がいたりとかしたんですね。
H:そうそうそう。
高木:それがみんな「弱虫」とか…(笑)
H:そう(笑)
高木:他の人たちはおなか壊してないんですか?
H:元気でねぇ、あちこち飛び回ってたね。
高木:飛び回ってた…(笑)
H:で、僕と横尾さんだけホテルに閉じこもって…今とおんなじだ、Stay Home…(笑)
高木:おうち時間(笑)お水ですかね?
H:あのね、原因はわかってるんだよ。氷水を噛んじゃったんだよ、僕は。
H:そう。みんな、ウイスキーの水割りで飲んでたりする人たちは平気だったんだよ。あれはなんだろうね?
2人:アルコール消毒。
高木:ユニゾンになっちゃった(笑)
H:で、たぶん僕だけ当たっちゃった。
高木:お水と氷だけだったから。
H:そうそう。
高木:横尾さんもお水と氷だけだった?
H:たぶんそうだと思うんだけど。ちょっと原因がわからないね。僕より軽症だったんですけど。僕は重症でした。
高木:そのときの奇跡の復活が『COCHIN MOON』の音に…(笑)
H:そうそうそう。
HEPATITIS - 細野晴臣
(from『COCHIN MOON』)
高木:細野さんの作品って初期のも聴いていくと、ところどころでドラムのパターンがいろいろ出てくるな、というのがあって。
H:うん。
高木:やっぱりすごい印象的なのが…セカンドライン・ファンクっていうんですかね。ニュー・オーリンズの。
H:あー、はいはい。
高木:あれがやっぱり…こんなにいっぱい多用してたんだ、という衝撃で。あのドラムビートというのは大きかったですか?
H:すごい大きいですね。子供のころからラジオでヒットチャートを聴いてたから。民放もそうだしFENもおもしろかったんですよ。で、ヒット曲の中にすごくユニークなのがいっぱいあったんですよね、昔は。今とちょっと違うというか、「ユニークすぎる」音楽がいっぱいあった。
高木:うんうん。
H:でも、後で調べるとぜんぶそれがニュー・オーリンズだったり。
高木:あ、なるほど。細野さんの子供の頃っていうと、それはいくつぐらいですか?中学生?
H:いやいや、小学校5,6年ぐらいから…
高木:え、そんなに前?
H:父親のトランジスタラジオを奪って…奪って、というか自分専用になっちゃった。で、寝ながら聴いてたの、夜中に。
高木:はい。
H:イヤフォンが2つ挿せる…今と違ってステレオじゃないからね。
高木:モノで?
H:モノで。2本のイヤフォンを両耳に挿して。そうすると頭のド真ん中で、良い音で聞こえるわけ(笑)
高木:あ、そうなんですか(笑)それはホントですか?
H:ホントホント。モノってすばらしい。
高木:モノ&モノでバッチリ、みたいな。
H:そうそう。モノっていいよ~(笑)そう、結構その影響あるね。音楽ばっかり聴いてたから、それで。
高木:そこでもうニュー・オーリンズとか、セカンドライン・ファンクみたいなビート感というか…
H:そこまでは考えてないけど…まぁポピュラーソング、ロックミュージックの中にニュー・オーリンズ系のはいっぱいあったから。今思えば。
高木:まぁ、ブーガルーとかに反応されたということは、そういうリズムパターンがおもしろいと…
H:そう、リズムが大好きなんだね。だからパーカッションやればよかったな、と思って。ドラムとか。
高木:あ、でも…その話で訊きたいことがあるんですけど。小山田圭吾くんから聞いた話なんですけど、オノ・ヨーコさんのイベントで…
H:(笑)
高木:細野さんも参加されて、プラスティック・オノ・バンドでライヴをやったときに…どこかのライヴ会場の外でタバコを吸うところで、小山田くんと細野さんとリンゴ・スター(Ringo Starr)がタバコを吸ってて。
H:そうそう(笑)
高木:リンゴ・スターに細野さんが「ドラムやったほうがいいよ」って言われたっていう話を聞いて…(笑)
H:そうなんだよ(笑)
高木:その話がおかしくて…(笑)
H:アイスランドですね、場所は。で…いや、リンゴはね、誰にでもそう言うんだと思うよ。
高木:え、そうですか?(笑)
H:「君、ドラムやったほうがいいよ」って。
高木:なんで?(笑)
H:まぁ、僕のステージを見てたことは確かでしたけど。ドラム…パーカッションしかやってないからね。ベースとパーカッションやってたの、僕は。
高木:あ、そのオノ・バンドで?
H:そうそう。それを見てなんでドラマーになれ、と言ったのかよくわからない(笑)
高木:リズム感じゃないですか?やっぱり。
H:そうかね(笑)いやぁ、リンゴ・スターのドラムはもう、彼にしか叩けないからね。
高木:そのときってリンゴもドラム叩いてたんでしたっけ?
H:いや、見に来てただけ。なんかセレブレーション…ジョン・レノン(John Lennon)のアニヴァーサリーみたいな。
高木:あ、そうか。アイスランドで。
H:そこにみんな招待されて、来てた人たちの一人ですね。
高木:その話を小山田くん…帰ってきてから楽しそうにしてくれたから(笑)
H:(笑)
高木:「これはウケるなぁ」とか、勝手に盛り上がってました。すみません。
H:いやー、おもしろかった。
高木:細野さんもご自分のソロアルバムとかはっぴいえんどとか聴くと、ドラムの音はすごく意識されてるんじゃないかな、と。バランスとか。
H:いやー、音は大事だよ、ベースもドラムも。
高木:リズム隊の。
H:すごい敏感。うん。なんだろうな…最近はわりと好みがはっきりしてきたけど、当時はカリフォルニアのバンドの音に近づけようと思ってたからね。
高木:うんうん。
H:いろんなタイプの音があるじゃん。チューニング低め、高めとか。どっちかわかんないんで中くらいにしたり。で、ラディック(Ludwig)っていうスネアが良い音だったりとか。それは松本(松本隆)の趣味だけど。んー。でもね、思ったようには録れなかったね。
高木:そうですか!でもなんか、おんなじというか、乾いた感じというか。
H:エコーつけてないだけなんだよね(笑)
高木:あ、そっか(笑)でもその感じが他の、当時の70年代の日本の…まぁ最初にも話しちゃいましたけど、他とはちょっと違うなぁ、と。
H:ドライなところはね。で、ドライって…なんだろうな、エコーをつけるとその時代の響きになっちゃうんだよね。特に、80年代に流行ったじゃない。ゲートをかけた…
高木:そうですね。ゲートリバーブ。ゲトリバって言ってたけど(笑)
H:バァー!ってやつ(笑)
高木:(笑)
H:あれ今聴くとやっぱりうわぁ…って思うんだよね(笑)
高木:そうですね(笑)いつかはまたおもしろいって思うときが来るのかな(笑)
H:だから、ああいうのをかけなかったら時代性がなくなって普遍的になるじゃん。
高木:そっか。カッコいいかもしれない。
H:だから、エコーは善し悪しだね。
高木:エコーで時代感が…
H:出てきちゃうね。特に流行りがあったりするとね。
高木:エコーがないほうが時代感を飛び越える…
H:うん。絶対そう思ってたんで、最近はもっぱら…ステージでもエコーは使わないっていう。
高木:んー。
Quiet Village - Martin Denny
高木:そうそう…細野さんに言おうと思ってたことがあるんですけど。
H:うんうん。
高木:かまやつひろしさんがお亡くなりになってしまう直前に僕、別の媒体でインタビューで話を聞きに行ったことがあって。
H:へぇ、いいね。
高木:そのときにかまやつさんに「スパイダースでマーチン・デニー(Martin Denny)とかエキゾチック・サウンドをやってたって本当ですか?」って[訊いたら]、「やってましたね~」って。いま真似しましたけど(笑)
H:懐かしいね(笑)
高木:って言われて、それはまぁハワイアンとかの延長もあって、と言われてたんですけど。「YMOで"Firecracker"やってたのは聴かれてましたか?」、「だから僕はね、細野さんに訊きたかったんだよ」って。「え、聞いてないんですか?その話」って言ったら「うん、訊いてない」って言ってましたけど。
H:(笑)
高木:で、そういう話はされなかったんですね。
H:してないなぁ。ミッキーさん…ミッキー・カーチスさんとはしたね。エキゾチック・サウンド。やっぱりミッキーさんはやってたね。
高木:あ、ミッキー・カーチスさん、やってたんですか!
H:やってた。
高木:ミッキー・カーチスさんはなにをそのとき…?
H:わかんない。なんか、自分のバンドやってたでしょ?
高木:あ、サムライズ?
H:サムライズの前かなぁ…
高木:サムライズはニュー・ロックですもんね。
H:その前になんか、そんなことをやってた…
高木:あ、そうなんだ。知らない!その話。
H:みんなね、そこを通ってるんだよね。あの世代は。
高木:エキゾチック・サウンド?
H:そうそうそう。
高木:え、すごい!日本のバンドの人はみんな通ってる?
H:通ってる。有名だったからね。"Taboo"なんかはそういう中の一つだよ。
高木:あ、「ちょっとだけよ」…それも古いか(笑)
H:そう。ドリフターズも。
高木:そっか、その選曲もそういう…
H:たぶんそうだと思うよ。うん。みんな通ってるから。
高木:なるほどね。
H:僕の世代は、記憶の中にあったの。ジャングルサウンドはラジオでよくかかってたな、っていう。
高木:あー、やっぱり。7インチとかも出てたんですよね。
H:そうだね。そういうジャングルのサウンドってすごい印象的になるんだよ、子供にとって。
高木:うんうん、なんか、ターザンじゃないけど…密林の。
H:そうそう(笑)あれこそエキゾチック・サウンドっていうかね。で、マーティン・デニーはそれでヒットしたからね。"Quiet Village"。まぁそんなような…彼ら先輩の次の世代としては、[YMOの"Firecracker"を]やってよかった、って思いますよ。
高木:だからかまやつさんにとっては…それこそ普通に、ヒット曲みたいな感じでやってたんでしょうね。
H:だろうね。そうそう。
高木:カヴァーとして。
H:うん。かまやつさんはね、さっき言ったニュー・オーリンズのヒットを…たとえて言うならリー・ドーシー(Lee Dorsey)の"Ya Ya"っていう曲をね、かまやつさんやってたんだよね。レパートリーの中に入ってたわけ。
高木:はー。え、スパイダースで?
H:スパイダースでやってたこともある。それがね…さすが!さすがかまやつさん。僕は尊敬してるんだよ。
高木:なんか仰ってましたもんね、細野さん。かまやつさんと一緒になんかやりたいな、と。
H:そうなんですけどね…呼んでも来てくれないんだよね(笑)
高木:そんなことはないと…(笑)
H:いま来てもね、どうやってセッションしたらいいんだ(笑)
高木:たしかに(笑)
高木:あとは…ヒップホップのアーティストでパブリック・エナミー(Public Enemy)というグループがあるですけど、彼らが来日したときに「日本で知ってるバンドは?」って訊くと「Yellow Magic Orchestra」って言うんですよ。
H:あ、ホント?
高木:いちばん最初に日本に来たときに、彼らにスタジオライヴみたいなのをやってもらって。
H:すごいね。
高木:まぁ、全員がマイクの前に立ってやるだけなんですけど(笑)
H:そっか(笑)
高木:そのとき、スタジオにピアノがあったんですけど、フレイヴァー・フレイヴ(Flavor Flav)っていうメンバーがいきなりそこで"Firecracker"を弾き出したんですよね。
H:弾けるんだ(笑)
高木:弾けるんですよ。彼はね、ドラムもやるんですよ。
H:器用だ…
高木:それだけでビックリしたんですけど、これはもしかしたら…アフリカ・バンバータ(Afrika Bambaataa)とかがYMOかけてたじゃないですか。
H:そうだね。
高木:あれがきっと耳に残って…子どもの頃に遊んでて。
H:だから…そうそう、リズム&ブルース系の人たちもみんな聴いてたね。"Firecracker"ね。アメリカでは。
高木:それはやっぱりYMOですよね。
H:そう。マーティン・デニーは知らなくてもYMOの"Firecracker"は知ってるから。
高木:そうなんですよね。その経緯って当時はどう思われたんですか?黒人たちが…「Soul Train」の最初の話もそうですけど。
H:アメリカのリズム&ブルースのチャートに入ったっていうんでビックリしたね、最初。そういうことなのか、って思って。で、マーティン・デニーから電報が届いたのは憶えてる。
高木:え?どういうことですか?
H:「ありがとう」って書いてあった(笑)
高木:あ、印税が入るから?(笑)
H:そうそう(笑)「脚光を浴びてうれしい」とかね。
高木:いやー、だいぶ長々と…すみません、相当長く話してて、時間もあっという間に…
H:あっという間に。
高木:そろそろ最後の話を…ちょっとだけしたいんですけども。
H:どうぞ。
高木:今現在コロナのこんな状況で、生活スタイルとか音楽の向き合い方などでなにか変わったこととか、いま感じることとかありますでしょうか。
H:そうね…こないだね、チリの監督が撮った短編映画『Gravity』っていうのに音楽をつけてくれって言われて、エンディングのクレジットに音楽をつけたんですけど、それを見てて。
高木:うん。
H:アンデス高原を車で突っ走って来る。子供を抱えた両親がね。お父さんが運転して。その少年がコロナにかかってるんだね。咳をずーっとしてて。病院に連れていく、っていう物語なの。全部で7分しかないんだけど。
高木:今現在の映画ですね。
H:うん、今の映画。柿本さん(柿本ケンサク)っていうプロデューサーが企画してね。音楽やってるのは日本人が多いんですけどね。3本ぐらいやったのかな?その中の1本で『Gravity』っていうのをやったんです。で、どんな音楽をつけてもね、合わないんだよ。
高木:その、少年の。
H:暗い…不遇っていうか。いろんなことが起こるわけ。羊の群れにぶつかっちゃったりしてね。急いでるのに前に進めない。で、悲劇が起こったりするわけだ。そのエンディングに「救われるような音楽」って言われても、できない、と思って…(笑)
高木:んー…
H:まぁ、やったんですけど。暗くも明るくもない音楽をつけたんですけどね。
高木:え、それは観たいし聴きたい…
H:いまでも観れると思うよ。無料配信してるし。
高木:あ、それはぜひ見させてもらいます。『Gravity』…
H:で、そのときにフォルクローレっていうのを検索してたの。ボリビアとかアルゼンチンとか、あそこら辺の民族音楽。検索してたら、そこにテイラー・スウィフト(Taylor Swift)が入ってきちゃった。
高木:え、フォルクローレで?
H:おんなじなんだよ、『folklore』。フォルクローレ(folclore)っていうのはスペイン語で。
高木:あ、フォークロアが「folklore」だから…テイラー・スウィフトが(笑)
H:それちょっとビックリしたんだね。なんだろう、この人は…グローバルな世界から違うところに来てるのかな、とかね。まぁ聴いたらね、そんなに変わってはいなかったけど。
高木:んー。
H:でも、自分の原点に回帰してるな、っていうのはわかるわけ。デビューの頃のね。っていうのは、あんなに売れてる人もそういう事態になってる、と。だから、みんなそれぞれいろんなことを思ってると思うんだよね。世界中の音楽家がね。
高木:うん。
H:で、僕はなんにもできなくなっちゃって。それ以外。白紙になっちゃってるんだよ、今。いままでやってきたブギウギとか、ぜんぜん自分でできない音楽になってきちゃった(笑)
高木:あ、最近ライヴでやられてたような?
H:そうそう。なんか変わったんだね。だから今は曲がり角なんだよ。みんなで曲がり角を右折だか左折だか知らないけど、曲がってるところなの。だからその先はわからない、僕には。個人に回帰していくっていうのがもっと強くなって、みんなで騒ぐっていう感じじゃなくなってくるんじゃないかな。
高木:そうですよね…騒ぐ感じはなくなりましたね。
H:ね。ずっとこれが続くのかどうかわかんないですけど、なにか変わっちゃったな、とは思うね。うん。スタジオで音楽作るのは相変わらず、おんなじことだからね。閉じこもってやってたから、変わんないんですけど。
高木:でもその中で作風というか、出てくるものは…
H:それが変わってきてるんじゃないかね。わかんないです。
高木:まだじゃあ、発表できるものはその『Gravity』以降は…
H:ぜんぜん考えてないね。ただ、毎月月初めにラジオを作ってるんですけど、それにちょっと表れてるかもしれない。気分が。
高木:あ、なるほど。
高木:たっぷりお話しして頂いてありがとうございました。細野さん、きょうは貴重で楽しいお話、ありがとうございました。
H:こちらこそ。ありがとう。
Ya Ya - Lee Dorsey
2020.09.13 Inter FM「Daisy Holiday!」より
H:細野晴臣です。今週と来週の2週にわたっては…先日スタジオを訪れてお話ししてくれた高木完くんとのお話を編集してお送りします。
~~~~~~~~~~~~~~
H:高木くんはひさしぶりですよね。
高木:あ、高木くん…ありがとうございます(笑)おひさしぶりでございます。いつ以来だろう。WORLD HAPPINESSかなんかのイベントかな?
H:あー。そっか。うん。
高木:いや違うか。いとうせいこうフェスで勝手に…僕も出演してましたけど、細野さんが出られてるシーンを観ました(笑)
H:そっかそっか。
高木:あと…ときどきCAYにね、僕が見に行ったりとかはしてました。
H:あー、そうでしたね。そうだそうだ。最近やってないけど。
いとうせいこうフェス、細野さんのリハの様子、、、良かった〜! pic.twitter.com/XCbh58zhDZ
— yukihirotakahashi (@room66plus) October 1, 2016
高木:というわけで、今夜は細野さんとダンスミュージックの話などを…
H:ダンスか…年寄りだからなぁ。
高木:ダンスですよ。ダンスの話などを中心に話させて頂けたらと思うんですけども。僕がですね、細野さんの演奏を…
H:うん。
高木:まずテレビで意識的に見たのは…「Soul Train」が昔、JUNの提供で日曜日の深夜にやってた。そこで…
H:見ちゃったんだね。
高木:YMOが"Tighten Up"を演奏してるのを見ましてですね。
H:そうそう(笑)
高木:で、あの前までのYMOのイメージがそこでガラッと変わった。あれっ?て。
H:テクノじゃなくなった(笑)
高木:そう!あの頃はファンキーって言い方はなかったですけど、ファンキーなロックバンドだ!と思ってビックリして。そこから急にダダダっと聴くように…まずは『増殖』から入って。なんかすいません(笑)
H:いやいや、それはいいと思うよ。そういう聴き方は(笑)
高木:いいんですかね?(笑)それで、"Tighten Up"をあのとき演奏されてたのは…なんであのときそういうチョイスがあったんですか?あちこちでお話しされてるとは思うんですけど…
H:いや、ぜんぜん話したことない(笑)
高木:あ、そうですか!じゃあ、なぜ"Tighten Up"を?
H:いやいや、なんでだろう…とにかく、ニューヨークに寄って。ツアーの間ね。「Soul Train」に出るんだぞ、と言われてビックリして。じゃあやっぱりソウルっぽいやつやらなきゃな、と。思ったんですよね。
高木:なるほど。
Tighten Up (A&M Mix) - Yellow Magic Orchestra
H:基本的にそういうの好きだから。
高木:あー、ファンキーな?
H:うん。放っとくとそういうことやり出すから(笑)
高木:じゃああれですか?番組のリハとかでもそういう感じで、みんなで「じゃあ、これやろうか」みたいな。細野さんが弾き始めて誰かがついてくる、みたいな。
H:うんうん。わりと楽にできるというかね。
高木:おお…なんか、細野さんの昔の芸歴を読んでたら、エイプリル・フールのときに昔で言うところの「箱バン」をやられてた、というのを読んだんですけど。
H:うん。そうなんですよ。
高木:それは踊らす曲をやってたんですか?
H:うーん、踊りにくいだろうなと思うけど…当時はアート・ロックとか呼ばれてたジャンルがあって。
高木:はい。
H:ヴァニラ・ファッジ(Vanilla Fudge)とかドアーズ(The Doors)とかね。ときどきツェッペリン(Led Zeppein)もやったり。
高木:うんうん。
H:そういうのってみんな踊れないと思うんだけど、だんだん踊り出して。なんかサイケデリックな踊りやってたよ(笑)
高木:ゴーゴーみたいな?
H:みんなそれぞれ思い思いに動いてたね。んー。
高木:それ、エイプリル・フールではヴォーカルはそのとき細野さんが…?
H:いや、やってないやってない。僕はベースに徹してて。ヴォーカルは小坂忠で。
高木:あ、そっか。
H:で、ドアーズ好きがいっぱいいてね、メンバーに。キーボードのヒロ柳田がかなりドアーズっぽい人間なのね。
高木:なるほど。レイ・マンザレク(Ray Manzarek)ですか。
H:そうそう。で、僕と松本隆はその前まではずっとリズム&ブルースが好きだったから。
高木:あー!そうなんですね。
H:そうなの。モータウンとかよく聴いて、踊ってたりね。
高木:踊ってたんですね!踊ってましたね?(笑)
H:ブーガルー(Boogaloo)っていうのが流行ってね。
高木:ブーガルー!あ、なんか知ってる。リズムですね。
H:そう。その時代だけ踊ってたね。
高木:それは今で言うところのクラブというか、ディスコみたいなところですか?じゃなくて家?(笑)
H:いや、家では…(笑)あのね、いろんなクラブに…クラブとは言えないような秘密めいたところとかね。
高木:秘密…
H:え、こんなところに…大塚っていう駅のそばにあったりとか(笑)
高木:大塚って、大塚駅?(笑)
H:そうそう(笑)なんであんなところにあったのを見つけて行ったのか知らないけど。
高木:ほう。
H:とにかく音楽がよかったのね、そこは。
高木:DJ、レコードですか?
H:レコードがかかってて。別に誰もいないんだけどね(笑)
高木:誰もいない(笑)
H:自由に踊っていい、という。でもいちばん行ったのは新宿の…なんていうところだっけ?忘れちゃった。
高木:The Otherとかですか?
H:あ、The Other!
高木:ホントですか?何で知ってるの…(笑)
H:そう!毎週行ってたよ。大学の帰り。
高木:へぇ…毎週?学校の帰りというと、池袋?
H:池袋。うん。
高木:じゃあ早い時間ですね、ずいぶんね。
H:と言ってもね、別に下校のまま行ったわけじゃない。どっかでご飯食べたり、ウロウロしてから行ったと思うよ。友達たちとね。
高木:そっか。それがいわゆるディスコって言うんですかね?
H:あそこはなんて言うんだろうね。
高木:ディスコティック?
H:ディスコティックっていう概念はなかったね。
高木:あー。それもレコードなんですかね?
H:うん、レコード。ほとんどモータウンばっかり。シュプリームス(The Supremes)とかね。フォー・トップス(Four Tops)とか。当時の流行りの音楽を大音量でかけると、わりと満杯なんだよ。人がいっぱいいて。
高木:へぇ。
H:で、初代ソウル・ブラザースみたいな人がいて…(笑)
高木:あ、踊りがうまい人たちですか?
H:そうそう(笑)彼らが振付を教えるんだよ、みんなに。
高木:え、そんなのちゃんとやるんですか?(笑)やんなきゃいけないとか?
H:いや、なんかみんな率先して…ただ、みんなおんなじ振付だからちょっと不気味だよね(笑)
高木:そうですね(笑)でも、その名残は70年代の終わりぐらいまでずっと…
H:あったでしょ?
高木:『サタデー・ナイト・フィーバー』みたいな…あの映画もそうだけど(笑)みんなで鏡に向かって、指上げて。
H:そうそう、そんな感じだよ。
高木:あの感じをやられてたんですね。
H:やってたよ。
高木:同じ踊りをやってたんですか?みんなと。
H:あんまりね、参加したくなかったんで。
高木:ですよね。
H:ちょっと遠巻きに見てたけど。でも、自由になるとブーガルーを踊り出したりね。
高木:うんうん。
I Like It Like That - Pete Rodriguez
H:えーと、ブーガルーっていうのは…何年だ?あれ。1970年前後?
高木:60年代からありますよね、きっとね。
H:うん。で、その前はだいたい白人系のダンスが流行ったわけ。トゥイスト(Twist)。
高木:あー、なるほど。
H:まぁ、トゥイストのオリジナルはチャビー・チェッカー(Chubby Checker)とかあそこら辺だけどね。
高木:ええ。
H:その後モンキー・ダンスとかね。
高木:わかります(笑)
H:振付がわりと単純で、はっきりしてて、誰でも踊れる。でもブーガルーはね、誰でも踊れるわけじゃなくて。
高木:難しいんですね。
H:黒人しか踊れない。六本木の絨毯バーによく行ってたんだよね(笑)
高木:絨毯ってでも、踊れないですよね?あ、靴じゃないのか。
H:靴脱いで、分厚い絨毯の上で踊るんだけど。
高木:家ですよね、ほとんど。
H:(笑)まぁ、それは知り合いの人がやってたんでよく行ってたの。そしたら当時は米兵が多かったんだよ。
高木:あー、六本木のほうは。
H:そうそうそう。で、黒人もいっぱいいたの。そこの場所にもいて。最初は座ってたんだけど、音楽が刺激したのかな、踊り出してね。
高木:んー。
H:それを見てたら、カッコいい!と思って。
高木:ジェームス・ブラウン(James Brown)とかもかかっちゃうくらいですかね。
H:そんなような感じだね。んー。で、僕たち数人で行ったんだけど、その踊りを教えてくれ、と。米兵たちに。
高木:どうやってやるんだ、と。
H:そう!そしたらすげぇ丁寧に教えてくれて…(笑)
高木:親切なんですね(笑)脚の動きからですか?
H:そう。脚の動きと、腰を落としたりね。上半身を動かさない感じとか。首を落とす感じとか(笑)
高木:(笑)
H:その場でマスターしたね。
高木:あ、すぐに?
H:うん。気持ちよかった。
高木:気持ちいいんですね(笑)やれる!と。
H:そうそう。で、自慢なの(笑)
高木:ああ、やれたぜ、みたいな。
H:うん。
高木:その頃はもうあれですか?細野さんはもともとベースや楽器は弾いたりとか。バンドでやってたりとか。
H:うん、ときどきね、ベースを…大学の頃だったんで。クラブみたいのがあって。音楽活動のクラブね。そこに参加したり。ベースやってくれ、って言われて。ベース、弾いたことないのにね。
高木:あ、そうだったんですか。
H:大学の頃、初めて弾いて…ピックで弾いてた、最初。ポール・マッカートニー(Paul McCartney)みたいに(笑)
高木:ええ。
H:ところが、色んな写真を見るとね。インプレッションズ(The Impressions)とか聴いたりするとピックじゃないな、と。
高木:うん。
H:写真を見ると指で弾いてるわけだ。フェンダーをね。これだ!と思ってピックを捨てて2フィンガーで弾き出したわけ。
高木:なるほど。じゃあその頃はステップを会得したりとかして、わりとファンキーですね。
H:ファンキー。かなりファンキー。
高木:ですね(笑)ベースで2フィンガーでボン、ボボンってやって。
H:なにしろベースを弾いてると、どうしてもそっちのほうに行っちゃう。
高木:まぁリズムですもんね。
H:フォークをやろうとか、そんな気持ちはなかったね。その前まではやってたんだけどね(笑)
高木:あ、そうなんですね。最初はギター、アコギで。
H:ギター弾いてたから。うん。
高木:最初は…ギターを弾かれてたときはなにを聴いてやろうと思ったんですか?
H:えーとね…小学校5,6年の頃にクラシックギターがあって。それをなんか弾き出して。ラジオを聴いてたから、弾けそうな曲がかかるとやってみて弾けたのが…カントリーだね(笑)
高木:んー、でもすぐ耳でコードを取ってやられてたっていうことですもんね。最初にギターを持ってすぐに。それはすごいですよね。
H:そう。最初に覚えたのはEっていうコード。指3本だけで鳴るから(笑)
高木:それからAとか。
H:そうそうそう。EとAとね。Bが難しかったけどね。
高木:あー、こっちがバレーになるから…
H:で、ラジオで聴いて、これできそう、ってなったのはEマイナーだった。ということは指2本で弾ける(笑)
高木:ですよね。僕もそれしか最初はできなかったですね。"My Sweet Lord"くらいしかやったことない…(笑)
H:やっぱり入門編の音楽っていうのはあるね。んー。ちょっと失礼…(喫煙)
高木:いえいえ…それもやっぱり細野さんは耳がすごい…すごいって言ったら失礼ですけど。まぁジョージ・マーティン(Geroge Martin)も『耳こそすべて(All You Need Is Ear)』っていう本書いてましたけど。
H:そんな本があるんだ(笑)知らなかった。
高木:耳が…なんですか、すごいって言うとアレですけど。
H:いやー、耳遠いよ、今(笑)
高木:いや、今はね。今はね、って言っちゃうとアレですけど(笑)
H:(笑)
高木:だって当時はYouTubeもなんにもないわけで。ギターの弾き方とかも…今はすごいあるじゃないですか。
H:そうだよね。みんな親切にね。
高木:ゆっくり解説してくれるから…あ、そうやって弾くんだ!みたいな。
H:視覚的にね、見えるし。
高木:チューニングもそうやって変えてるんだ、って教えてくれる。
H:そうそう。昔は、だから、ラジオ、レコードだけだね。耳だけだ、たしかに。だから自分でコードを見つけてくんだよね。
高木:うんうん。
H:そうすると自分なりの押さえ方でしかないわけだ。あとで見るとぜんぜん違ったりね、するんだけど…
高木:押さえる場所が?
H:いまだに癖でやってるね、うん。
高木:あ、そうなんですか。ベースも…ベースはその後、もうだいぶギターを弾かれてから始めて。
H:うん。そうだね。だからベースも全部、耳でしか覚えられないから。
高木:そうですよね。
H:だって、テレビもそんなのやらないしね。レコードとラジオとジュークボックスだけだよね。
高木:んー。
H:よく松本隆と…これもまた六本木なんだけど(笑)
高木:ええ。
H:ジョージ(George)という、カウンターだけのね。
高木:あ、聞いたことある。ソウル・バーみたいな。
H:そうそう。そこもやっぱり米兵ばっかり…みんなオムライス食べてたりするんだけど(笑)
高木:オムライス(笑)おいしそうですね。
H:カウンターの中にいる日本人のマダムが…ママか。アレサ・フランクリン(Aretha Franklin)みたいに。
高木:日本人なのに。
H:そう。髪の毛をバーッと束ねて上にまとめて。
高木:"Respect"?(笑)
H:そうそうそう(笑)カッコいいんですよね。その人の作るオムライスがすごい美味い。で、そこにジュークボックスが置いてあって、最新のリズム&ブルースがいっぱい並んでるわけ。
高木:うんうん。
H:で、松本隆とよくそこに行って、ジュークボックスで聴きながらオムライスを食べてたわけだよ。
Respect - Aretha Franklin
高木:そこでじゃあ、この曲カッコいいな、って何度も聴いたりとか。
H:うん。そうね。
高木:ジュークボックスってお金入れなきゃ聴けなかったですよね。今の子は知らないかもしれないけど。
H:知らないだろうね(笑)
高木:あれ、当時いくらだったんですか?10円?10円なわけないか。
H:30円ぐらいだったかな。
高木:30円か(笑)1曲聴くのに30円…
H:その後、僕は自分でジュークボックス買ったけど。
高木:あ、そうですか。
H:もう、持て余しちゃって。誰かにあげちゃった(笑)
高木:どっかに行っちゃったわけですね。
H:そうそうそう(笑)
高木:家で聴くときはそんな、貯金箱になってないんですよね。
H:いや、貯金箱かな?なんて思ってね。
高木:あ、そうですか。でもいいですよね。
H:あれ、楽しいと思うけど重いんだよ、すごく。
高木:あー…
H:とても重い。
高木:で、入れ替えなきゃいけないですもんね。
H:そう、大変。で、レコードが傷む。
高木:熱くなっちゃって?
H:なんでかわかんないけど。裸で入れとくじゃない?
高木:はいはい。
H:で、何度も聴くと擦り減っちゃうしね。
高木:んー、まぁそうですよね(笑)
H:レコードは減るんだよなぁ…
高木:傷むし。いいことないですね。
H:うん。だから、これはいいや…ってやつだけ入れて聴いてた(笑)
高木:じゃあジョージのとは違う選曲になっちゃいますね(笑)
H:うん。まぁ、商売やってたら最新のものを入れるっていうのはいい方針だと思うよ。ジョージにはホントにお世話になった。
高木:じゃあ、R&Bはエイプリル・フールでは演奏してなかったって言うことですよね。
H:あんまりね。で、リズムセクションは僕と松本だから。その頃にジョージに通ってインプレッションズ聴いたりしてたんですよね。
We're Rolling On (Part 1) - The Impressions
高木:僕が細野さんの、昔のはっぴいえんどの頃の音源とかをちゃんと聴くようになったのって…
H:うん。
高木:おそらく僕がヒップホップをやるようになって、サンプリングとかにすごいハマって、昔の旧譜とか70年代の音源をやたら聴くようになったときの流れで、日本のものも聴くようになって。
H:(笑)
高木:ちょうどCDになったりとかした…それで聴いてビックリしたのは、音質が…サンプリングで70年代のドラムのスネアとかここ抜こう、とかやってて。
H:うんうん。
高木:ファンキーな…例えばなんだろう、ヘッドハンターズ(The Headhunters)にしろなんにしろ、70年代のジャズ・ファンクとか。その音質に、細野さんやはっぴいえんどの演奏が近いっていうのにビックリしたんですよ。
H:へぇ。
高木:なんていうんだろう、70年代の日本のロックとかってわりとドシバシ…ドシバシでもないけど、リバービーというか、キラキラ?歌謡曲もですけど。
H:そうだね(笑)
高木:それが、はっぴいえんどとかってドライというか。音が近くて。
H:近いね。
高木:あれってでも、あの頃の中では異端…異端っていうか、その音質で録音されてる感じというのは[他に]いなかったですよね?
H:そうかもね。エンジニアの吉野金次さんという人がすごく、まぁ、名人ですよね。自分でも音楽作ってレコーディングしてたんで。
高木:うん。
H:この人になら任せられる、って、ぜんぶ任せちゃったんですよね。
高木:録音する際の…マイキングとか?
H:そうそう。だから…当時の、ビートルズ以降のマルチ・レコーディングの第一人者ですよね。第1世代っていうか。
高木:うんうん。
H:ビートルズはそうじゃないからね。4トラックかなんかでやってたから。
高木:そうですよね。
H:だから、オンで録っていくっていう。マイクを近づけて。ドラムにも。キックにもマイクを当てると。昔はキックには当ててなかったからね。全体を録ってたから。それはでも、今はそれも好きなんだけど(笑)
高木:あ、逆に?
H:そうそうそう(笑)マルチ時代の音はちょっと飽きちゃったかな、と。
高木:んー。ただ、あの音色というのは…レアグルーヴとかそういうのを聴くようになったときに、今の若い子たちにはそれがまた普通になったんだろうけど。
H:うんうん。
高木:90年代の頭ぐらいに…それこそ小坂忠さんのやつも含めて。
H:ああ。
高木:いろいろ聴いたらビックリして。周りでもみんな聴いてなかった人が多かったんです、それまで。僕らはどっちかって言うとブリティッシュ系ばっかり聴いてたじゃないですか。
H:うん。
高木:ロックもそっち寄りで、パンクもニューウェーブもそっちから…ブリティッシュ・ロックの流れで来てたみたいなところがあったんですけど。細野さんたちがやられてたのはどちらかというとアメリカン・ロックというか…
H:僕たちもそんなのしか聴いてないしね。日本の音楽はあんまり知らない(笑)だから聴くものが偏ってるというか…カリフォルニアのロックバンドが好きだったの、最初は。はっぴいえんどの頃は。
高木:うんうん。
H:それに近づけたくてしょうがなかったから。すごい影響されてるんだよね。んー。
高木:だからあの音なんですね、やっぱり。それが…でも、近づけたくてちゃんとなってるというのがやっぱり…
H:(笑)
高木:今聴いてもビックリしますよね。自分たちでシェアしてるところで録音してたから、時間の自由さとかがあったんですかね?
H:あー…いや、レコーディングの時間は厳しいよね。3日でアルバム1枚録ったりしてたから。
高木:あ、そんなに短かったんですか?
H:お金かかるからね。
高木:あ、そうなんですか?
H:レンタルスタジオ借りて…
高木:そうか、レコーディングに関してはスタジオをレンタルしてたんですね。
H:そうだよ!だって当時、機材は一般の人は買えないから。高くて。プロ仕様は。今とそこがぜんぜん違うね。
高木:吉野さんが持ち込みをしてたとか、そういうことではなくて?
H:それは後ほどそういうことはあったけどね。
高木:あ、じゃあ細野さんのソロアルバムの頃の話か、それは。それをゴッチャにしてた。
H:そうそうそう。それでも…吉野さんそれ、1千万円以上の値段で買ってきたからね。自費で(笑)
高木:そうか、その自費で買われたやつを細野さん家に持ってきて…
H:そうだよ、僕には買えないからね。だから、いまはぜんぜんそこが違うじゃない。自分の部屋があればそこでレコーディングできるでしょ。
高木:できるし、ヘタするとコンピューターとちょっとしたインターフェースとあれば…
H:そうそう。iPhoneだけでもできちゃうかもしれない。
高木:そこに楽器挿せばそれなりの音がするし、マイクも…とはいえ、その頃のね。ぜんぶ用意しなきゃいけない良さが…
H:まぁだから、準備して練習していかないとスタジオでゆっくりできないわけだね。
高木:んー、まぁそうですよね。そうか。じゃあ、ソロアルバムのときだったんですね、わりと…
H:そうだね。ソロアルバムから自分の部屋でやったんで…わりと自由にやってたね。
高木:その頃ですかね?吉野さんが沢田研二さんの"危険なふたり"をミックスした…
H:そうそうそう(笑)
高木:それすごい話だなぁ、と思って(笑)
H:なんか、その音楽がかかってたね、僕の部屋に。沢田研二の…ミックスしてた(笑)
高木:それすごいですよね!(笑)まさか細野さんのところで…
H:まぁね、ぜんぜん気にならなかったけど(笑)
危険なふたり - 沢田研二
2020.09.06 Inter FM「Daisy Holiday!」より
手作りデイジー🌼#11
(以下、すべてH:)
細野晴臣です。いやー…残暑ってこんなに汗かいたっけ?いやぁ、参っちゃってますけどね。月初めに「手作り」というものをやっていきまして…毎月やる、というのは時間を感じるわけで。だって、12回やったら1年ですよね。そうすると1歳、歳をとるということなんでしょ?これは時間を感じちゃうわけですね。ということできょうも行き当たりばったりで…どうなっていくかな?これはね。だいたいパターンとして、ドあたまのほうは明るく陽気に始まって、だんだん落としていって、最後はよく眠れるように、と。周防いう感じで作ってますけど。
さて、ではきょうの1曲目は…マジー・マルセリーノ(Muzzy Marcellino)の口笛。古くから…例えば『紅の翼(The High and the Mighty)』の口笛とか。『名犬ラッシー(Lassie)』とか。そこら辺で口笛を吹いてるすごい方なんですよね。
On the Wing - Muzzy Marcellino with Russ Garcia and His Orchestra
(from『Birds of a fether...』)
"Hear No Evil, See No Evil"、これは日本語で言うと「見ざる言わざる聞かざる」という歌。歌っているのはリタ・ヘイワース(Rita Hayworth)…かと思いきや、ジョー・アン・グリア(Jo Ann Greer)という、まぁ、ゴーストシンガーですね。1953年の映画、『雨に濡れた欲情(Miss Sadie Thompson)』からです。
Hear No Evil, See No Evil - Jo Ann Greer
ベニー・グッドマン(Benny Goodman)という人はいちばんスウィングをよく知ってますね。ロックンロールですね、スウィングが。歌っているのはマーサ・ティルトン(Marth Tilton)で、"Bei Mir Bist Du Schön"。「素敵な貴方」。
Bei Mir Bist Du Schön - Marth Tilton with Benny Goodman
この音源はライヴ・ヴァージョンで、途中でヨレてるんですよね。ですからここらへんでちょっと、フェードアウトさせてください。
で、次の曲はですね、このベニー・グッドマン・オーケストラでドラムをやってたスターですね。ジーン・クルーパ(Gene Krupa)というドラマー。ジーン・クルーパのトリオでやってるライヴというのが、またこれがすごいんですね。ドラムスはジーン・クルーパ、ピアノはテディ・ナポレオン(Teddy Napoleon)、サキソフォンはチャーリー・ヴェンチュラ(Charlie Ventura)。"Limehouse Blues"。
Limehouse Blues - Gene Krupa Trio
次がすごいです!ラタ・マンゲシュカール(Lata Mangeshkar)が歌う、ヒンディーのブギウギです。これは『Hum Log』という1951年の映画の中の挿入歌で"Bogi Bogi Bogi"。
Bogi Bogi Bogi - Lata Mangeshkar
先月の話なんですけど、僕はチリの監督による…舞台がボリビアの、アンデス高原の話なんですけど。非常に今の時代を象徴しているような…ちょっと暗いんですけど、最後にはとても希望が持てるようなね、深い映画。『Gravity』という短編映画でした。これの音楽を…「救いのある音楽を」と言われて、とても難しかったんですけど。まぁ、なんとかこなしたんですが…そのときに僕は南米のチリ、ボリビア、ウルグアイ辺りのね。アルゼンチンもそうなんですけど。フォルクローレ(folclore)をずーっと研究してたんですが、この映画にいちばん合うのがアタウアルパ・ユパンキ(Atahualpa Yupanqui)という、アルゼンチンのフォルクローレの大御所ですね。それでフォルクローレで検索していたらテイラー・スウィフト(Taylor Swift)が引っかかってきまして、『folklore』というアルバムを聴いたんです。このパンデミックの時代、だれしも変わらざるを得ないんですけど、ある意味先取りしているということなんでしょうかね。そういう意味では今、音楽の曲がり角にいるんだな、とそう思います。後ほどアタウアルパ・ユパンキの曲も聴いてください。
映像作家・柿本ケンサクさんが立ち上げたリモート短編映画プロジェクト「+81FILM」に参加しました🌐細野晴臣はチリ編の音楽を担当しています。
— 細野晴臣_info (@hosonoharuomi_) August 19, 2020
本編は、「+81FILM」公式サイト(https://t.co/xMPUIQHcs7)と YouTube チャンネル(https://t.co/5gU1jpJZ7T)にて無料公開しています📽️
#細野晴臣
ずいぶん喋っちゃいましたけど…次の曲はザ・ブックス(The Books)という、ニューヨークで2000年代初頭から活動している…とてもユニークな2人組のユニットなんですけど。そのザ・ブックスで"The Lemon of Pink"。
The Lemon of Pink - The Books
(from『The Lemon of Pink』)
ザ・ブックスの"The Lemon of Pink"という曲でした。途中で「石焼き芋~」なんていう…あれは東京に来たときに録ったんでしょうかね。"Tokyo"という曲もあるんですけど。
さて、次の曲はですね………スウィング・スロー(Swing Slow)*。それでは『Swing Slow』から"Disappeared"。
*コシミハルの音声とシンクロさせるように発音。
Disappeared - Swing Slow
(from『Swing Slow』)
スウィング・スロー。コシミハルと僕のユニットで90年代の終わり頃に作ったアルバムですね。
ところで、2008年にブラジルのフェルナンド・メイレス(Fernando Meirelles)という監督が作った『ブラインドネス(Blindness)』という映画。この中で使われていたルイス・ボンファ(Luiz Bonfá)の"Sambolero"です。
Sambolero - Luiz Bonfá
*伊勢谷…
フォルクローレといえばアタウアルパ・ユパンキですね。アルゼンチン生まれ、1908年から1992年までこの世に居ましたが。スペイン系のお父さんとケチュア系インディオの母親のハーフなんですけど。そのスペインの優雅さと、先住民のフォルクローレ。ホントに純粋なギターを弾く人で…左利きなんですよね。ジミ・ヘンドリックス(Jimi Hendrix)と同じ、右利き用のギターを弦を逆さまに張り替えて弾いてるという。お弟子さんに日本人のソンコ・マージュ(Sonko Mayu)という方がいます。「おじいちゃんの歌」、スペイン語で"Canción Del Abuelo"。
Canción Del Abuelo - Atahualpa Yupanqui
きょうの最後は僕の歌で"Song Is Ended"。アーヴィング・バーリン(Irving Berlin)の作曲です。
The Song Is Ended - 細野晴臣
(from『Heavenly Music』)
2020.08.30 Inter FM「Daisy Holiday!」より
岡田崇の手作りデイジー🌼#3:John Altman~伯父さん特集
(以下、すべてO:)
こんばんは、岡田崇です。今夜のDaisy Holidayは細野さんに代わって僕が30分お送りします。「岡田崇の手作りデイジー」第3弾、どうぞ最後までよろしくお願いします。
8月第1週にお送りした細野さんの「手作りデイジー」でオンエアーされたオランダの女性シンガー、ベアトリス・ファン・デル・プール(Beatrice Van Der Poel)。1997年のオランダ映画『エメラルドの帯(De Gordel van smaragd / Tropic of Emerald)』のサントラからでしたが、その映画音楽を担当していたのはマンノ・ダムス(Menno Daams)というトランペット奏者です。この番組ではおなじみのオランダの楽団、ボー・ハンクス・セクステット(The Beau Hunks Sextette)のメンバーで、先日流れた曲の演奏もボー・ハンクスのメンバーによるものでした。彼女はこのサントラの翌年、1998年にオランダのBastaレコードからミス・ビー・スポイルド(Miss Bee Spoiled)という名義でデビューしています。では、そのデビューアルバムからアーサー・ジョンストン(Arthur Johnston)作曲の"Lotus Blossom"をお送りします。
(Sweet) Lotus Blossom - Miss Bee Spoiled
(from『Miss Bee Spoiled』)
アーサー・ジョンストンといえば、細野さんもカヴァーしていた"Pennies From Heaven"の作曲者です。1936年に映画『Pennies From Heaven(黄金の雨)』の劇中でビング・クロスビー(Bing Crosby)が歌い、ほかにもビリー・ホリデイ(Billie Holiday)やドリス・デイ(Doris Day)など数多くの歌手が歌ってきました。ジェームス・テイラー(James Taylor)の新作『American Standard』でもカヴァーされています。スティーヴ・マーティン(Steve Martin)主演の1981年に映画に同じく、同名の『Pennies From Heaven』というのがあります。日本では劇場未公開のようですが、昔レンタルビデオで見ました。バスビー・バークレー(Busby Berkeley)のオマージュシーンなど1930年代のミュージカル映画愛にあふれた作品で、とても楽しめます。ではそのサウンドトラックから、ビリー・メイ(Billy May)の編曲・指揮でスティーヴ・マーティンが歌う"Pennies From Heaven"を聴いてください。
Pennies From Heaven - Steve Martin
(from『Pennies From Heaven: Original Motion Picture Soundtrack』)
さて、少し話を戻して…ボー・ハンクス・セクステットの話題が出ましたので、彼らのレイモンド・スコット(Raymond Scott)カヴァー集の中から1曲お送りします。この曲は『Celebration on the Planet Mars』というアルバムに収録されています。僕がやっているレーベル、LI'L DAISYから詳しい日本語解説付きで日本版CD が発売されていますので、興味を持った方はぜひ聴いてもらえたら嬉しいです。では、ボー・ハンクス・セクステットの演奏で"Penguin"を聴いてみてください。
The Penguin - The Beau Hunks Sextette
(from『Celebration on the Planet Mars』)
1994年のイギリス映画『ファニーボーン 骨まで笑って(Funny Bones)』という、ジェリー・ルイス(Jerry Lewis)やジョージ・カール(George Carl)、リー・エヴァンス(Lee Evans)などたくさんの芸人さんが出演する映画の劇中で、この"Penguin"が流れます。この映画を観て細野さんはレイモンド・スコットを知った、と話していましたが、その映画音楽を担当していたのがジョン・アルトマン(John Altman)という方です。先日、American Society of Music Arrangers and Composers(ASMAC)という…アメリカの編曲家や作曲家の協会がありまして、そこの方に紹介して頂いて、このアルトマンさんとメールでやり取りをさせて頂きました。その中で、彼のおじさんがイギリスのアンブローズ楽団(Bert Ambrose And His Orchestra)の主任アレンジャーだったシド・フィリップス(Sid Phillips)だと聞いて、僕は驚きました。大興奮したというか。シド・フィリップス、シド・フィリップス…ほとんど知られていないと思いますが、シドが書くアンブローズ楽団のオリジナル曲はみんなヘンテコで。もちろんレイモンド・スコットの影響もあるんでしょうし、イギリスだとレイスコ以前にレジナルド・フォーサイス(Reginald Foresythe)の楽団がこういったノヴェルティ・ジャズを演奏していたので、イギリスにはこういったノヴェルティ・ジャズを生み出す土壌があるのかなぁ、なんて、とても興味のある作曲家だったんです。では、ジョン・アルトマンさんのおじさん、シド・フィリップスの曲で"Message from Mars"を聴いてみてください。
Message From Mars - Sidney Phillips And His Orchestra
映画音楽家ジョン・アルトマンさんのおじさん、シド・フィリップスの曲でした。アルトマンさんはほかにもアメリカ版『Shall We Dance?』の音楽やコマーシャル音楽などを数多く手掛けているようですが、個人的に興味があったのはやはり、モンティ・パイソン(Monty Python)関連のお仕事ですね。ボンゾ・ドッグ・バンド(The Bonzo Dog Band)のニール・イネス(Neil Innes)のソロや、ビートルズのパロディをやったラトルズ(The Rutles)の編曲やオーケストレーションなどもされています。 では、アルトマンさんが編曲したモンティ・パイソンの1979年の映画、『ライフ・オブ・ブライアン(Monty Python's Life of Brian)』のエンディングを飾ったエリック・アイドル(Eric Idle)の曲で…そうですね、コロナ禍の今にふさわしい曲なのかな。"Always Look On The Bright Side Of Life"。モンティ・パイソンです。
Always Look On The Bright Side Of Life - Monty Python
きょうはなぜかジョン・アルトマン特集のようになってきていますが、アルトマンさんにはもう1人おじさんがいました。ウルフ・フィリップス(Woolf Phillips)という指揮者で、ジュディ・ガーランド(Judy Garland)やマルクス・ブラザーズ(Marx Brothers)、フランク・シナトラ(Frank Sinatra)にナット・キング・コール(Nat King Cole)、ローレル&ハーディ(Laurel and Hardy)なんかの編曲・指揮をしていたというから、これまたすごい名前がズラリとですね。そのウルフ・フィリップスさんの『Lullaby Of Broadway』というアルバムから、ハリー・ウォーレン(Harry Warren)作曲、1930年のブロードウェイ[ミュージカル]『Sweet and Slow』で使われた曲で"Would You Like To Take A Walk"を。
Would You Like To Take A Walk - Woolf Phillips And His Orchestra
(from『Lullaby Of Broadway』)
さて、今夜の「真夜中のランチタイム・ミュージック」は…「おじさん」といえばそう、ジャック・タチ(Jacques Tati)の『ぼくの伯父さん(Mon Oncle)』ですね。先週、ジャック・タチの『ぼくの伯父さんの休暇(Les vacances de Monsieur Hulot)』をひさしぶりに観直してみました。1953年に制作されて、1978年までに3回、ジャック・タチによって手を加えられています。先週は1953年のヴァージョンで観たんですが、ずいぶん昔に劇場で観たのとは印象が違っていました。アラン・ロマン(Alain Romas)によるテーマ曲、このアレンジがぜんぜん違うんですね。ではジャック・タチの『ぼくの伯父さんの休暇』のテーマ曲を…コロムビア・シンフォネットの演奏でお楽しみください。
ぼくの伯父さんの休暇(Les Vacances de M. Hulot) - コロムビア・シンフォネット
頭のほうでジェームス・テイラーの名前が出ましたが、元奥さん、カーリー・サイモン(Carly Simon)のおじさんはピーター・ディーン(Peter Dean)というウクレレおじさんでした。では、ピーター・ディーンの演奏で"I'm a Ding Dong Daddy"をお送りします。
I'm a Ding Dong Daddy - Peter Dean
(from『Ding Dong Daddy』)
では最後に、マックス・スタイナー(Max Steiner)作曲の映画『避暑地の出来事(A Summer Place)』のテーマをスケッチショウの演奏でお送りします。次回は月初め恒例となった細野さんの「手作りデイジー」をお送りします。来週のこの時間をお楽しみに。おやすみなさい。
Theme From A Summer Place - Sketch Show
(from『Audio Sponge』)
ZZZ....(いびき)
2020.08.23 Inter FM「Daisy Holiday!」より
H:こんばんは。細野晴臣です。えー…ゲストの高田漣くんが来てくれてます。よろしくね。
高田:よろしくお願いします!ご無沙汰してます。
H:いや、ホントに…
高田:半年ぶりぐらいじゃないですかね?いや、もっとですね…
H:今年初めてぐらい?
高田:初めてですね、はい。
H:あっという間にもう、今年終わっちゃう(笑)
高田:ホントですね(笑)例年通りだと細野さんから「そろそろクリスマスだ」っていう発言が出る頃ですね(笑)
H:そうそうそう。もうね、そんなこと言ってる場合じゃない。ホントにそうだから(笑)
高田:(笑)
H:冗談になんなくなっちゃった。んー。こないだメンバーで、リモートでやったとき…
高田:はいはいはい。
H:リモートはイヤなんでしょ?(笑)
高田:そう、なんか…それでもたまに家でやらなきゃいけないこともあったんですけど、なんか…
H:イヤだよね(笑)好きになれないよね。
高田:そう(笑)せっかく家にいるのに、っていう…
H:(笑)
高田:でもそれだけじゃなくて、ちょっと僕…しばらくネット環境とか疎くしてたら、iPhoneとかMacも古くなってきちゃってて。
H:おんなじ。
高田:[通信速度が]遅くなったりということが多いみたいで…友人とのそういう飲み会みたいのもちょっとお断りしたりしていて(笑)
H:そうか。まぁ、おんなじだよ。ひとりでお酒飲んでても(笑)
高田:そうですね(笑)
H:どうしてたの?この半年…というか。
高田:僕…細野さんにはメールで書いたんですけど、ずーっと小説を書いてまして。
H:それがね、すごいよな(笑)小説家になっちゃったのかな…(笑)
高田:ホントに、自分でもどうしちゃったんだろう、っていうぐらい。
H:急にね。
高田:そうなんですよね。もう、なんだかんだ、短編で言うと6話ぐらい書いてて。
H:え!すごいな。読みたい(笑)
高田:続いてる話のやつもあるんですけど。いまちょうどいろんな方々が動いてくださってて。ちゃんと…どういう風な形にするか、みたいなことになりつつあるんですけど。
H:作家デビューか。
高田:まぁその書いてる内容も…雑誌記者みたいな人が主人公の話なんですけど。その中で細野さんみたいな…戦前の音楽の贋作を作っちゃった人がいて。
H:あー、アホな爺さんね(笑)
高田:(笑)それで、その人が偽物のSP盤を作って、それを撒いてしまって。それが日本歌謡史の大発見!みたいに騒がれちゃった、という男の人の話を中心に書いてたりとか。
H:それは僕じゃないな(笑)
高田:イメージ的に…それこそ「Harry Hosono」とか「多羅尾伴内」みたいな存在で、でもそれが架空の人物で…みたいなお話と、ぜんぜん違う話と。
H:ちょっとおもしろい。そんな発想、どっから出てくるの?(笑)
高田:なんでしょうね…(笑)この期間中は本ばっかり読んでたんで、それもあったのかもしれないですね。
H:ほんっとに閉じこもってたんだね、じゃあね。
高田:ホントに、たぶん…僕ほど閉じこもった人はいない、っていうぐらい(笑)
H:(笑)
H:なんだっけな…3月ぐらいのTwitterかな。漣くんの。
高田:はい。
H:いろいろ発言してたのはなんとなく知ってるんだよね。
高田:あー…なんでしたっけ?
H:ライヴがなくなったりしてて…どうなんだ!みたいなね。
高田:はいはいはい。
H:憤りを感じていたんだね。
高田:そうですね。最初のうちは習性というか…せっかくこういう時間だから、と思って音楽を作ろうとしてたんですよ。何曲か書いたりとか、デモテープも作ったりしてたんですけど。
H:うん。
高田:だんだん…今の状況を嘆いているものしかできないことに気づいて(笑)
H:そうか(笑)その通りだよ。
高田:なんか、それじゃあ、何年後かに聴いたときにどう思うかな?とか考えたら、まったく興味がなくなってしまって。そのときに。
H:なんかすごいわかるな。んー。
高田:それから…でも時間はあるんで、最初は冗談みたいに書き始めて。1本書いたらそこから急におもしろくなってしまって。
H:おもしろいね。この期間じゃないとそんなことは起こらなかったね。
高田:そうですね。本当に。
H:すごいすごい。いやー、なにが起こるかわからないっていうのはおもしろいな。
高田:そうやって、そういうのを書いてると…普段の連載とかでも音楽のことを書くことがあるんですけど。
H:そうだね。
高田:そこで覚えたこととかいろんな話とか。それこそメンバーのいろんなバカ話みたいのを少し脚色して、ぜんぜん違う形にしたりとかして書いてるんで。
H:エッセイとは違うから…小説だもんね。
高田:そうですね。わりと大掛かりなストーリーは別にあったりとかしてますね。
H:そういう物語って僕、考えられないんだよね。自分では。
高田:細野さんは、でも、映画とか観るのは好きですよね。
H:好きだよ。観たり読んだりするのは好きだけど、もちろん。ぜんぜん自分の中に物語っていうものがないんだよな(笑)
高田:おもしろいですね(笑)僕もでも、そうだったんですけど。なんでだか…自分でもちょっと病なんじゃないか、って思うぐらい…キャラクターがどんどんどんどん、書きながら会話をし出すんですよ。
H:すごい!それ作家の言ってるようなことだよ(笑)
高田:だから、一回…朝の8時ぐらいから書き始めるんですけど、放っておくと夜の8時、9時までずーっと書いてしまって。
H:それはね、本物だね。向いてるんだね。
高田:音楽のほうが集中力がないっていうか…(笑)
H:ちょっと待ってよ、音楽やめないで(笑)
高田:やめないです(笑)音楽だとどうしても「ああ、こんなもんかな」とか思っちゃうのが、[小説は]初めてだから逆にどこまでやっていいかもわからないし、やめどきもわからなくて。
H:あー、そうだろうね。
高田:そんな感じでずっと過ごしてますね。
H:始まったばっかりだもんね。
高田:そうですね。
H:それは楽しみだな。形になるのが…まぁ、来年ぐらいには見れるね。
高田:だといいな、と思って、いま…はい、動いてるんですけど。
H:じゃあその、忘れられた音楽を…
高田:いやいや、ぜんぜん…(笑)
H:音楽はどうなの?聴いてるの?
高田:聴いてます!すごく聴いてるし…あと、音楽に関する書籍とか。それこそ細野さんの『泰安洋行』の本(長谷川博一『追憶の泰安洋行』)もそうですし。
H:あー、あれね!
高田:ハリー・スミス(Harry Smith)の本(『ハリー・スミスは語る:音楽/映画/人類学/魔術』)とか…ちょうど読み損ねてた本とかもたくさんあって。すごい読んでますね。
H:たしかにね。普段読まないね。
高田:そう。時間がなかなかなくて読めなかったものを今、まとめて読んでて。
H:なるほど。
高田:で、もちろん、聴くのもよく聴いてますね。
H:なんか、じゃあ…どんなのを聴いてたのか。なんか持ってきて頂いたのかしら。
高田:はい。じゃあ…ウィーヴァーズ(The Weavers)の"Midnight Special"という曲を聴いてください。
H:おお…!
Midnight Special - The Weavers
H:なるほど。ウィーヴァーズってフォーク・グループで…こういうジャズっぽいこともやるんだね。
高田:そうなんですよね。さっき話してたハリー・スミスの本を読んでいて、細野さんとか、うちの父(高田渡)が聴いてたような昔のフォークソングみたいのをもう一度聴き直していて。
H:うん。
高田:だいたいはそういう…ギター一本、みたいなものが多かったんですけど、いざウィーヴァーズを聴き直してみたらけっこうモダンな編成のものが多くて。
H:そうだよね。僕もそう思ったときがあったな。「ライオンは寝ている("The Lion Sleeps Tonight",あるいは" Wimoweh")」を不思議なアレンジでやってて。
高田:はいはい。
H:ピート・シーガー(Pete Seeger)って入ってるの?この中。
高田:そうです、入ってました。
H:入ってるんだね。
高田:アメリカ音楽の良い部分がまだちゃんと残ってる、っていうか。モダンでびっくりしました。
H:モダンだね。イノセントの人たちだよね。へぇ…そうか。
H:今の時代、時期に自分の音楽を作ってる人って…まだちゃんと聴いてないんだよなぁ。どんな感じなんだろう?
高田:そうですね…
H:さっき言ってたようなことになってるのかな?
高田:どっちかですよね。すごく今の時代を風刺するような方もいらっしゃると思うんですけど、逆に…ちょうどそれこそTwitterとかでテイさん(テイ・トウワ)が仰ってたけど、逆に吹っ切れて明るいものを作らなきゃダメ、っていう人もいて。
H:うんうん。
高田:僕もどっちかというと後者のほうをやりたいとは思うんですけど、なかなか…(笑)
H:(笑)
高田:生きてるとまだそういう気持ちにはなり切れないですね。
H:そうなんだよね。これからだね。んー。
高田:そうですね。
H:そういう意味では…9年前の震災のときもそんなような感じだったじゃない?
高田:そうですね。ホントに、まったく同じですね。
H:で、音楽聴けなくなっちゃった人がいっぱいいてね。
高田:そうでしたね。
H:その前に僕、『HoSoNoVa』作ってて。4月に出ちゃったの。
高田:うんうん。
H:そういうこともあったけど。
高田:あのときは、でも…そういう時期だったから図らずも『HoSoNoVa』に癒された、って…僕もそうだったし、周りでもたくさんそういう方がいらっしゃって。
H:うん、それは聞いた。最初は「え?まさか出るの?」と思って…(笑)
高田:(笑)
H:こんな時に出したら…と思ってたんだけど、出たらホッとしたんですよね。
高田:うんうん。
H:あの頃も、その前と後ではやっぱり聴くものが変わってきちゃって。
高田:そうですね。
H:街の風景が…あの頃はもっと荒んでたんだよね。地震があったしね。
高田:うんうん、そうでしたね。
H:ちょっと似てるようでやっぱり似てないことだったな、あの頃と今はね。
高田:そうですね。今のほうが…より個人の心の部分というか。そういういろんなものが見え隠れするというか。
H:うん。
高田:逆にそれが…ある種の怖さも感じるし。
H:あるね。んー。得体が知れないよね。
高田:そうですね。目に見えな過ぎて怖い感じがします。
H:なにが相手なんだろう、って。
高田:ホントにそう、仰る通りですね。
H:あの頃…3月のあの日の後、僕はアルゼンチンのカルロス・ガルデル(Carlos Gardel)っていうタンゴの、すごい古ーい音ばっかり聴いてたわけ(笑)
高田:あー…
H:すごい物悲しい…タンゴの歌ね。最近はまたちょっと似てきたね。フォルクローレ聴いてたり(笑)
高田:はー!(笑)
H:どうしちゃったんだろう(笑)
高田:今まではそれほど聴いてなかったんですか?
H:いや、時々ね。たとえばユパンキ(Atahualpa Yupanqui)っていう人がすごい、昔から好きだったの。小っちゃい頃は名前だけ知ってたんだけど。
高田:うんうん。
H:すごい地味で、なんか、自分とは関係ない音楽だと思ってたわけ(笑)
高田:なるほど。
H:でもね…5,6年前かな?聴き直したらギターの音色がすごい好きで。弾き方とか。自分がやりたい音はこんな感じだな、と思ってたんだよね。そうやって聴いてたの。で、忘れてて。最近またちょっと聴いてみたら…ますます好きになっちゃった(笑)
高田:あー…なんか、きっと今の細野さんの気持ちにフィットするなにかがあるんでしょうね。
H:そうなんだよ。だから…ブギウギはぜんぜん聴いてないね(笑)
高田:(笑)
H:毎回この話しちゃう(笑)
高田:僕、でも、こないだ大地くん(伊藤大地)と斎藤圭土さんがやってたやつは配信で観ました。
H:あ、そっかそっか。参加してないんだっけ。
高田:そうそう、2人でやってて…でもすごいよかったですね。ピアノとドラムだけっていうのが…まぁ大地くんは普段自分のバンド(グッドラックヘイワ)でもやってるけど。
H:そうだよね。
高田:そのブギがまたすごく新鮮で…おもしろかったです。
H:聴きたいな。聴きたくなってきた。やっぱりいいわ、ブギは。すごくいい(笑)
高田:(笑)
H:昔は戦後に流行ったわけだからね。鼓舞するようなヴォーカルだったし。
高田:うんうん。
H:じゃあもう1曲、聴かせてもらおうかね。
高田:はい。これは以前細野さんに教えて頂いたアルバムなんですけど、『クロンチョン歴史物語』というアルバムの中の…イラマ・トリオ(Irama Trio)っていうんですかね?の、"Bengawan Solo"を聴きたいです。
H:おお、この音色もいいね。
高田:いいですね。
Bengawan Solo - Irama Trio
(from『クロンチョン歴史物語』)
H:すごいモダンな…
高田:すばらしいですね(笑)ちょうど僕…家で、自分の音楽を作るのは気が進まない、と思って。写経じゃないですけど、完璧なコピーというか。やってみようかなと思って。
H:んー。
高田:でも自分が弾くんじゃできないこともあるから…と思って、このアレンジをそのままピアノと弦楽四重奏で譜面だけ書いたんですよ。
H:すげえ(笑)
高田:それも別に誰かに聴かせるとかじゃなくて、ただ譜面に残しておこうと思って。こんな時間があるときはないから、と思って。
H:すごいすごい。それはおもしろい。
高田:やっぱり調べるとこのアレンジがすごくて。たぶん最初はA♭で歌われてて、間奏でちょっと転調して、戻ってきたらなぜか半音下がったGになってる。
H:ホント?(笑)聴いてるとわからないね。
高田:途中のヘンな合いの手のパートとかも、聴いてるとよくわからない音階っていうか…
H:普通の音楽じゃないよね。
高田:じゃないですね。だから、譜面で書いてていちいち驚いてました(笑)
H:そう(笑)よく聞き取れたね。
高田:もう、何度も何度も…それこそ時間はいくらでもあるので(笑)
H:それはでも、おもしろい試みだよ。さっきの小説の話じゃないけど、贋作みたいな(笑)
高田:そうですね(笑)たしかにそういえば昔、何度もやりたいと思っていたことだったけど。自分も飽きっぽいんで、なかなか…時間もなくてできなかったことなんで。
H:あー。それはこれからやりがいのある仕事になるような気がするよ。
高田:あー、ありがとうございます。やっぱり自分が弾くとなると自分の力量とかもあってできないことが、人のためにだったら書けるんで。
H:そうなんだよね。昔のクラシックの作曲家なんかそうだもんね。上手い人に弾いてもらえばいいわけでね(笑)
高田:(笑)
H:なるほど。それはなんかね、ちょっと刺激されたね。
高田:でもあれですよ?細野さんが普段僕らとずっとバンドでやってきたこととある意味同じようなことというか。リプリントしているような感じというか。
H:そうだよね。
高田:なんとなく自分でもそれが楽しくて。しばらくその作業もしてましたね。
H:とくにこの…イラマ・トリオだっけ?この世界でそういうことをやろうと思ってる人はいないから…(笑)
高田:(笑)
H:いや、ホントに不思議な音楽じゃない?
高田:そうですね。
H:アルバムを一通り聴いて…なんだろう、すぐに理解できないというか(笑)すごいロマンティックな印象が強い。んー。
高田:ちょうど…書いてたものとも若干関係してたんですけど、インドネシアのことにどんどんどんどん興味が出てしまって。
H:はいはい…
高田:ブックレットもすごくて、たくさんその歴史について書いてあって。僕、そのことに興味が出過ぎちゃって。
H:うん。
高田:こないだついに、デヴィ夫人の回想記(『デヴィ・スカルノ回想記: 栄光、 無念、 悔恨』)っていう…(笑)
高田:そう。その本はスカルノ大統領と一緒になるまでと、政変が起きてスハルト政権になる頃までのインドネシアの裏っ側のことが書いてあって。
H:大波乱だね。
高田:ものすごくおもしろくて…それもこの音楽のおかげでこの本に興味が出たりとか。
H:そうか。バックグラウンドが豊かだよね。そういう意味では。で、だいたい日本も関わってるじゃん。
高田:そうですね。
H:日本軍が来たりして、オランダが…
高田:元々いたりとか。
H:植民地だったのが解放されたりとか。いろいろね。いやー、歴史的にも深い場所ですよね。
高田:そうですね。音楽を聴いてて、細野さんにもいろいろお話を聞いてると、興味がある音楽とか場所っていろんな歴史的な折り重なり方をしていて。
H:複雑ですよね。
高田:それを紐解くいい時間だな、と思いながら過ごしてますね。
H:なるほど。そういうところでいまのような音楽が出てきてるわけだよね。
高田:そうですね。
H:これはなんか…ものになるな、それは(笑)
高田:(笑)
H:せっかく楽譜に起こすんだったらやっぱりそれをね…
高田:どなたか、ね…
H:やらせたくなるでしょ(笑)
高田:いつかそれもちゃんと…自分で聴いてみたいな、と思います。
H:なんかいいね。楽しみが増えた。老後の。
高田:(笑)
H:じゃあ…もう1曲ぐらい聴きたいですね。
高田:これも細野さん、ご存知だと思いますけど、キング・シスターズ(The King Sisters)のハワイアンばっかりを集めた『Aloha』っていうアルバムがあって。
H:んー。
高田:その中の"Song Of The Island"という曲を。
H:へぇ。
高田:旦那さんがアルヴィノ・レイ楽団のアルヴィノ・レイ(Alvino Rey)で。だからもう、バックがアルヴィノ・レイ楽団で。これも元の曲がもうないぐらいまでアレンジされている…すごい好きな作品です。
H:そうなんだ。
Song Of The Island - The King Sisters
(from『Aloha』)
H:これもすごいね、アレンジが。
高田:すごいですね(笑)
H:アルヴィノ・レイはスティール奏者で…なんか、トーキングマシンみたいなことをやり出した人だよね(笑)
高田:そうですね。すごい変わってますね…スティールギターの使い方もそうですし、ビッグバンドのアレンジも独特な…
H:独特だね。つかみどころがない(笑)
高田:曲が覚えづらくなっちゃってて…(笑)
H:そうそう(笑)わりとアヴァンギャルドな人が多いんだよね、あの時代ね。
高田:ホントにそうですね。やっぱり1940年代、50年代のアメリカの編曲家の方って押しなべて独特な…
H:そう、ヘン(笑)
高田:ヘンなんですよね。最近、それもおもしろくていろいろ聴いてますね。
H:それはもう、大変な世界に入っていくね(笑)
高田:岡田さん(岡田崇)にいろいろご教授願わないと…(笑)
H:そうそう(笑)
H:さて、時間が来ちゃいましたので…またその成果が見えるようになったら来てもらって。
高田:はい。
H:楽しみにしてます。高田漣くんでした。
高田:ありがとうございました。
H:はい。