2020.02.16 Inter FM「Daisy Holiday!」より

 

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H:こんばんは、細野晴臣です。2週にわたってお送りしてきたハマ・オカモトくんとの対談。今週が最終回となります。なお、この模様は3月に発売予定のハマくんのムック本に掲載されるということです。では、最終週のお話、どうぞ。

 

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ハマ:いまだに…それこそ大地さん(伊藤大地)とか、漣さん(高田漣)とか伊賀さん(伊賀航)とか、卓史さん(野村卓史)とかとやるときって、細野さんが[譜面を]書いて渡すんですか?

H:うん。

ハマ:へぇ~!

H:それを読みやすくするっていうね。で、なるべく1枚に収めたい、という(笑)

ハマ:すばらしい(笑)初めて細野さんとお会いした『おげんさんといっしょ』のとき…リハーサルでお会いしてるんですけど。

H:うんうん。あ、なんか譜面が置いてあって、見てたね?

ハマ:そうそう。あ、バレてました?(笑)

H:なんか、見てるなぁ、と思って(笑)

ハマ:そう。あの"恋"を細野さんが、「おげんさんヴァージョン」で弾くっていうときで…立夫さん(林立夫)がドラムで。

H:書き直したの。うん。

ハマ:そのときに…もちろん、あの曲は元々僕が弾いた曲だったので、細野さんが弾くっていうのも興味津々だったんですけど。

H:難しい曲だなぁ、と思った。

ハマ:難しい曲ですよね(笑)なんか、細野さんはどういう風に譜面を見てるんだろう、と思って…バレてたんですね(笑)僕、すごい見てて。

H:いや、みんな、なんか2,3人で寄ってたかって見てたじゃない(笑)

ハマ:そうそう(笑)そしたら、もう…俺、あれホント思い出せなくて。こっそり写真撮ればよかったと思ってるんですけど。めちゃくちゃわかりやすく色分けしてあって。

H:はいはいはい(笑)

ハマ:1番戻ったらこう、みたいな。

H:あのね、難しい曲ほどわかりやすく書かないとね。

ハマ:あれは細野さん、ホントにすごいと思いました、俺。あの書き方。

H:(笑)

ハマ:見たことない。他に。

H:そう?あれは…まだ残ってるかな。ちょっとチェックしてみるわ。

ハマ:ホントですか?そう、あの書き方の手法だけでも教えて欲しいと思って。

H:あ、じゃあ今度コピーして持ってくわ。うん。

ハマ:あ、ぜひ!僕、あの、すぐロストしちゃうんですよ。記号がわからないんで。

H:記号が大事なんだよね。

ハマ:どこに戻るか、っていうのがもう…見失っちゃうから、もう覚えたほうが早い、って思っちゃう。

H:うん。でもそのほうが正解だよ。覚えるのがいちばんいいんだよ(笑)

ハマ:そうですよね。ただ、[譜面を]見なきゃいけないときとかもあるじゃないですか。いやー、俺、あれはなんか…ショックを受けましたね、わかりやすさに。

H:そうか。林くんはもっとキレイだよ(笑)

ハマ:あ、立夫さんはたしかにそう。ホントそうですね。

H:だから、リハで譜面をもらうじゃない?それをぜんぶ書き直すからね。

ハマ:自分流に、ってことですよね。

H:うん。

ハマ:そう…あれ衝撃だったんだよな。たしか青とね…赤…

H:そうそうそう。

ハマ:まぁ蛍光ペンですよね、いわゆる。それでなぞってあったんだけど…

H:そうしないとね、迷子になっちゃうのがいちばんこわいじゃない?

ハマ:そうですね。ああいう曲は特に。そうだ、そう…それをいま思い出して言えてよかったな。実はこっそり見てたつもりがバレてたけど(笑)

H:いやいや、こっそりじゃなかったよ(笑)

ハマ:ホントですか?(笑)まじまじと見てたのかな…

H:へぇそうか、譜面に興味があるのか、と思ってね。

ハマ:そう。読めないんですけどね。その「手法」に興味を持っちゃいました。

H:なるほど。

 

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ハマ:僕はいま、自分と同じ歳のバンドマンとかプレイヤー…プレイヤーはもちろん、いっぱいいるんですけど。スタジオミュージシャンをやってるような。やっぱり「バンドにいるベーシスト」として、ポップスの現場だったりとか、バンド以外のところで呼んで頂くことが多くなってて。

H:なるほど。

ハマ:そうなると、より…さっき言ったような、最初にこういう流れを作った細野さんたちの仕事ぶりは、改めてすごくおもしろくて、聴いてて。ものすごく興味深い…

H:そうかそうか。たしかにバンドによって違うんだよね、記譜法が。

ハマ:そうですね。

H:で、僕がやってるやつはわりとコモンというか。共通した、一般的なものなんだよね。たぶん。だから、バンドの人たちはホントに特殊っていうか…すげぇ読みにくい譜面を書いてくれる(笑)

ハマ:わかります、そうですよね(笑)なので、こう…なんだろうな、細野さんの当時の痛烈だったお話を聴いてて、なんか自分も似たような経験を経てるな、と思うところもあれば、やっぱり聴いてて…時代もあると思いますけど。

H:あるね。

ハマ:そりゃあ強烈だ!と思うところもあるし。いちばんそういう話を…ナチュラルに細野さんに訊けないとダメだ、訊かないとな、と思って。他の…「細野晴臣、ベース史を掘る」みたいな企画とかっていうよりは、僕が僕のために…(笑)細野さんに直接お話を訊けるんだったら訊きたいな、と思うことばっかりなので。

H:うん。要するに…初めてやる曲ってなにが大事かって言うと、「行き方」と…進行ね?AとBとCがあるとしたらどうやって動いていくか。

ハマ:はい。

H:それと「リズム」じゃない。

ハマ:そうですね。

H:で、コード(和音)はコードネームだけでいいんだよね。だから、おたまじゃくしなんか使わないね(笑)記号だけでいいわけ。

ハマ:はい。

H:それはジャズから来てるんだと思うよ。ジャズも自由じゃない。

ハマ:んー、たしかに。

H:譜面書いてそのまま弾くジャズピアニストとかいないから(笑)

ハマ:そうですね。方向性だけはあって、その中で…ってことですもんね。うん。

H:そうそう。だからコードがいちばん大事、というかね。まぁ、ベースはわりとルート(根音)の音で…そんなに厳密じゃないけどね。「フラットファイブ(♭5 / -5)」とか出てくるじゃない?

ハマ:出てきますね。

H:そういうのはベースはあんまり関係ない…(笑)

ハマ:(笑)

H:(笑)

ハマ:すごいよくわかる…っていうとアレですけど、ホントその通りですね(笑)

H:でしょ?(笑)

ハマ:なんかすごい…ギターの人と鍵盤の人が「うーん…」ってなってるときに、「え?でもまぁ、ルート弾いといたらいいんだよね?」みたいな感じになってくるというか…(笑)

H:そうそう、おんなじ(笑)

ハマ:「ですね」とか言われて(笑)「あ、じゃあはーい」みたいな。ここで逆に…こっちが気を遣ってトリッキーなことをし過ぎると向こうがおかしくなってきちゃったりとかする…だからおとなしくしとこう、みたいな(笑)

H:たしかにね(笑)それはある。

ハマ:こっちはあんまり関係ないですからね(笑)おもしろいな~その節はすごいよくわかりますね。あとはまぁ、コードの成り立ちと…細野さんはでも、以前お話したときに…それこそ僕らのアルバムが出て、それをたまたま聴いて下さった、みたいな話をしてて。"Higher"という曲があるんですけど。

H:よかったよ。うん。

ハマ:なんか、「リズムでベースを弾くというのを久しぶりに聴いた」と仰って頂いて。それはすごいうれしかったんですけど。やっぱり細野さんもリズムを出すプレイヤーじゃないですか。とっても。

H:うん。

ハマ:まぁ、いろんなところでお話されてるチャック・レイニーChuck Rainey)とか。その影響がある、とかお話されていましたけど。

H:そうです。うん。

ハマ:やっぱりああいう…音符の長さであったりとか。「止める」とか「伸ばす」とかって…僕が知る限りで残ってる細野さんの録音で、ホント最初っから…ものすごいタイミングというか。やってのけてるなぁ、ってすごい思うんですけど。

H:そうかね?

ハマ:とはいえはっぴいえんどの頃とかって、そこまで16分っていう感じではないじゃないですか。

H:あの頃はまだね…

ハマ:ですよね。またちょっと、プレイヤーとしての性質が違うから…

H:どっちかって言うと白人系というか…(笑)

ハマ:そうですね。うーん。それは、はっぴいえんど自体が1回終わりってなる、ならない、とか[の時期]で…単純に細野さんがその当時聴いてた音楽の方向性がブラックにどんどん寄って行った?

H:そうそうそう。ティンパン(Tin Pan Alley)の頃からそうだね。聴くものがぜんぶ、ファンクばっかりになってきて。

ハマ:いちばん最初にこう、おやっ、となった…きっかけになったのってあるんですか?バンドとか曲とか。

H:大学の頃は、毎週のように新宿のクラブで…モータウンがしょっちゅうかかってる。

ハマ:踊りに行ってたんですか?聴きに行ってたんですか?

H:僕は聴きに行ってるんだけど、みんな踊ってるからついでに踊ったり(笑)

ハマ:ついでに(笑)

H:だから、まぁ、モータウンはやっぱり…でもコピーしたことは無いわけ。

ハマ:へぇ。聴くのは好きだった?

H:うんうん。で、どっかの…六本木のジョージ(George's)っていうオムライスのうまい、黒人の米兵ばっかり来るバーがあるんだけど(笑)ジュークボックスとか置いてあって、リズム&ブルースばっかり入ってる。最新の。で、松本隆といっしょにそこにしょっちゅう行ってたのね。

ハマ:へぇ。

H:アレサ・フランクリンAretha Franklin)みたいなママがいて(笑)

ハマ:(笑)

H:日本人なんだけど(笑)

ハマ:あ、日本人なんですか!日本人だけどアレサ・フランクリン…(笑)

H:髪型がすごい。

ハマ:もう、『ブルース・ブラザーズ(The Blues Brothers)』に出てくるアレサ・フランクリンみたいな…(笑)

H:そのジュークボックスの中身がすばらしくて。で、松本とそれをいつも聴いてて。たぶん、インプレッションズ(The Impressions)の最新のシングルが入ってて。それを聴いてて…「これからはこれだよね」って言ってたね(笑)

ハマ:はー…

H:「キックとベースが絡んでるよね」って(笑)そんな話をしてた。

  

 

Check Out Your Mind - The Impressions

 

 

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ハマ:じゃあそういうところから…まぁ、日本にもどんどん入ってくるわけじゃないですか、結局。その手の音楽が。

H:うんうん。

ハマ:それこそ細野さんが作家としてお仕事されていた1980年代とかの直前ぐらいまで、日本の音楽もすごい…ファンキーになっていく、って言うとちょっとアレですけど。そういう系のアレンジとかもすごい増えていったし。

H:そうね。

ハマ:じゃあやっぱりそういう…でもあれですね、普通に…松本さんの話にもありますけど、細野さんにとっては友達と音楽聴きに行ってて…

H:うん。

ハマ:ヒットチャートってわけじゃないんでしょうけど、そのママが好きだったり、お店が…まぁ、米兵の方に向けてる、っていうこともありますよね。

H:そう。当時は東京の六本木辺りは多かったの。米兵が遊びに来る街として。私服で来るんだけどね。で、ある絨毯バーで…しょっちゅう行くところだったんだけど。知り合いがやってたんで。

ハマ:はい。

H:靴脱いで上がるバーなの(笑)

ハマ:…っていう意味か!「絨毯バー」。へー。

H:そうそうそう(笑)そこに米兵たちがいて、音楽がかかって踊りだすわけ。それがすばらしかった。で、教えてもらったりしてた。

ハマ:あ、そのダンスを?

H:ダンスを。

ハマ:へぇ。

H:で、ミュージシャン仲間が集まってきて、みんなが踊りを覚えて。仲間内ではみんなブガルー(Boogaloo)を踊り出して…ブガルーっていうのが流行ってたわけ。

ハマ:はいはい。ダンスの。

H:うん。そういう黒人のノリっていうのを身体で覚えた、っていうことはあるね。

ハマ:あー、それはすごい大きいでしょうね、きっと。だって見てもいるし、生で。教えてもらってもいるという。

H:うん。

ハマ:のちに結局、ダンスと付随して音楽のジャンルも分かれるじゃないですか。バンプ(Bump)とか。ボックス(Box)とかもそうですけど。

H:うん。

ハマ:あー、じゃあもう、ホントに…ある意味自然な流れですね、きっと。

H:そうだね。その時代の影響だよね。だからそれまでは、踊りって言うとトゥイスト(Twist)とか…あれは別にリズム感要らないからね(笑)

ハマ:たしかに(笑)そうか、もっと体幹を使うっていうか。

H:そう。腰が落ちていくっていうか、首が落ちていくっていうかね。ファンキーな感じね。

ハマ:うんうん。それは結局…それこそ、いっしょに作業する時間が多かった茂さん(鈴木茂)とか立夫さんとかにも自然に…みんなで聴いてて。

H:そうだね。みんなで聴いてたね。

ハマ:ですよね。で、いざセッションとなるとそういうフレーバーが出てくるでしょうしね。

H:出てくる出てくる。そのとき聴いてたものが出てきちゃう。当時…『HOSONO HOUSE』作った頃はね、林くんはビリー・プレストンBilly Preston)ばっかり聴いてたんだよ。

ハマ:へぇ~!

H:いま聴くとそんなでもないんだけど、当時はすばらしかったんだよ。

ハマ:好きだったんですね。へぇ。

H:リズムが良かったのね。

ハマ:うん。やっぱりそれは反映されますよね。

H:うん。反映してたね。

  

 

Will It Go Round In Circles - Billy Preston

(from『Music Is My Life』)

 

 

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ハマ:いやー、おもしろいなぁ。そういう意味では…なんて言うんですかね、僕は驕ってるわけじゃなくて、「変わらない」というか。

H:うん。変わらないよ。

ハマ:自分の感覚ともぜんぜん…

H:ミュージシャンなんだよ(笑)

ハマ:なんか、それはすごくうれしいし…僕以外にもそうやってる人、いっぱいいるから。

H:だから、プレイヤーだからだよ。プレイヤーの人ってわりと少なくなってきてるから(笑)

ハマ:うん。

H:まぁ、バンドマンはさておき、ね。いろんなセッションをこなしてくっていうタイプの人はあんまりいないんで。

ハマ:たしかに。

H:だから…みんなラップトップで音楽作ってる時代だから。

ハマ:そうですね。スタジオ要らないですよね、極端に言うと。ホントに。最近…

H:うん。

ハマ:僕、まったくそこは明るくないんで…

H:あ、ホントに?

ハマ:まったく使えないんですよ。

H:あ、そうなの(笑)

ハマ:よく、なんか、「このデモに簡単でいいんでベース入れてください」みたいのが来るんですけど、なにも持ってないんで…(笑)

H:そうか(笑)

ハマ:持ってる人の家に行ってやる、みたいな…いまだにそうなんで、ちょっと取り残されてますけど。

H:じゃあ、ここでも使っていいんだよ。このスタジオ。

ハマ:いやいや!(笑)いきなり来て、細野さんに「ベース入れさせてください!」つって…(笑)

H:うん。ぜんぜん構わない。

ハマ:ホントですか!(笑)でもたしかに…そうですね。僕は自分の目線で見てもいないですし、細野さんから見ても「そういう人減ったな」って思うんだったら、たしかに減ってはいるのかなぁ、とは思いますね。

H:うん。

ハマ:でもそんな中で、僕はバンドの人なので。バンドから飛び出してってやって…そういう意味では技術的なことであったりとか、理論的なことで言うと自分より上手い人なんてごまんといるし。スタジオミュージシャンの方もいっぱいいるんですけど。

H:うん。

ハマ:やっぱりなんか、そういう…いま細野さんとずっと話してた、自分の「今」がすごい反映されたりとか。そういう余白が出るような演奏を楽しんで残せて。それを聴いて、こういう方法もあるんだな、と思ってみんながおもしろがってくれるのがいちばん本望だな、と思ってますね。ずっと。

H:うん。

ハマ:なので、やっぱり「バンドにいること」が大事だと思ってて。

H:なるほど。

ハマ:「バンドマンがやる演奏」のおもしろさみたいな。細野さんもマインド的にはきっと…そういうお仕事されてたときはその気があると思うので。

H:あるある。

ハマ:なんかそれが自分にとって…最初はどうなんだろうと思ってて、自信があんまりなかったんですけど。「バンドマンだしな…」みたいな。逆に。

H:うんうん。

ハマ:なんですけど、ここ数年はどんどん楽しくなっていってますし。10年前にやった自分の仕事とか、3年先、5年先は恥ずかしくて聴けたもんじゃなかったんですよ。

H:あ、ホント?(笑)

ハマ:再生したくない、みたいな。

H:あー、わかるわ。

ハマ:でも、10年経って、10年前初めてした外仕事とかの演奏を聴くと、なんかがんばってんな、みたいな。

H:新鮮な。

ハマ:新鮮だな、今できないな、とか。

H:そうなんだよ。昔の様にはできないんだよな(笑)

ハマ:できないんですよね。細野さんなんて振り返るとすごい歴史がありますけど、ご自身でも思います?

H:思うね。まぁ、でも当時はそれでよかったんだな、って思うよ。はっぴいえんどとか聴くと。

ハマ:うんうん。

H:あれは一人だけファンクやっても合わない…(笑)

ハマ:そうですね、バラバラだし(笑)そう、なんかそういうことを最近…ようやくおもしろく思えてきたので。

H:うん。

 

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ハマ:で、そんな中で去年…細野さんともDaisy Holidayでお話ししたり。イエローマジックショーもあるし。自分の考え的にもそうだし。今回の本を作るみたいなのそうだし。これはなんか…細野さんともう1回この話できたらいいな、と思ってたので。

H:なるほど。

ハマ:なんかすごい…なんでしょうね、「雪解け」っていうとヘンですけど。

H:雪解け(笑)

ハマ:すごい、サーッと気持ちが軽くなりました。とっても。あんまり細野さん、こういうお話…

H:いや、めったにこういう話、吹っ掛けられないっていうか…(笑)

ハマ:吹っ掛けられない(笑)よかったんですか?吹っ掛けちゃって…(笑)

H:いいんだよ(笑)

ハマ:よかったです。いや、訊くのもね、なんか…

H:いや、普段訊かれないことを訊かれるの好きだよ。

ハマ:ホントですか?でもなんか、ホントに昔の話…僕には計り知れない時間が経ってるけど、さっきも「たぶん南沙織…」とか「野口…(野口五郎)」とか、すごいなと思って。

H:あー。

ハマ:やっぱり憶えてるところは憶えてるんですよね、それは。

H:それは印象深いのは憶えてるよね。緊張したりすると憶えてるね(笑)

ハマ:そうか。だから、こう…そんなところを掘っていいのかな、と思いつつ…そこは自分の、なんなら使命かな、とも思い…訊けましたけど。

H:うんうん。

ハマ:でもホントに、きょうは…これはDaisy Holidayでも…?こんな感じで大丈夫だったんですかね?(笑)むしろなんか、すみません。ホントに僕の聞きたいことしか訊いてないですけど…

H:(笑)

ハマ:でも言いたかったのは…去年、50周年お疲れ様でした、ありがとうございました、っていうのと…

H:自分の10年…

ハマ:はい。っていうので細野さんとお話ししたかったので、来て頂いて光栄でした、という。

H:こちらこそ…

ハマ:すみません、お時間いっぱい頂いて…

H:もっと話せるけど、いいの?

ハマ:ホントですか?

H:いやいや、いい…(笑)

ハマ:でもね、もう、ホント…俺は聞きたいことはもう…あとはもう…だって、まだ俺はゴリゴリ細野さんといろんなところで会うつもりなんで。

H:おお。

ハマ:そのときにまた閃いたら…ということで。すみません、お時間頂いて。きょうはありがとうございます。

H:いやいや。ありがとう、こちらこそ。

 

 

H:なんかこう、隔世遺伝に近いよね。

ハマ:あー、たしかに…たしかにって自分で言うのもアレですけど。

H:50代、40代とこういう話したことないしね(笑)

ハマ:あー、そうですか。でもたしかに、manakaとか安部ちゃん(安部勇磨)もそうですけど…そういう僕もその世代なんで。

H:うん。なんか、似てるところがあるんだろうね。

ハマ:それは前回も仰って頂いて…うれしいです、とっても。

H:いろんなベーシストがいるけど、ぜんぜん話が通じない人もいると思うんだよね(笑)

ハマ:あー、わかる…それはホントに仰る通りですね。当時もいましたか?細野さんが30代のときとか。仕事してて。

H:いやー…いちばん僕に近いっていうか、ああすごいな、って思ってたのは小原くん(小原礼)だね。

ハマ:あー、礼さん。

H:上手ぇ…と思って。

ハマ:礼さんは…そうですね。細野さんの演奏もそうですけど、礼さんの演奏とかホント落ち込むもんな。見てて。

H:(笑)

ハマ:なんでこんな…礼さん、すばらしいですね。

H:うん。なんか、ベースに対するアプローチが似てる。

ハマ:んー、たしかに。それはホント思います、2人には。あと礼さんはすごい…なんだろう、探究心がずっとあるから。

H:そうだよね。

ハマ:細野さんもそうですけど、ホントに。話してて…「最近のフェンダーの新しいやつはピックガードがぜんぜん違うよな」とか。

H:あー、そう。

ハマ:「そうですよね」みたいな。「べっ甲がぜんぜん違いますよね」とか。

H:そうかそうか(笑)

ハマ:僕が去年見つけた…アメリカ人の男性のフェンダーオタク2人組が…ピックガードを専門で作ってるオタクが2人いて。

H:え、作ってるの?

ハマ:選べるんですよ、年代が。60年代、70年代、80年代…って選べて。劣化具合も選べて。当時そっくりのピックガードを作る職人がいて。

H:すごいマニアだな。

ハマ:それを礼さんに話したら「すぐ買うから教えてくれ」って言って(笑)その場で教えたりして。だから楽しいですね。話しててもね。

H:ベーシストならではの会話だね、それは。

ハマ:そうですね、そこは。そういう話をいつ会っても礼さんはしてくれるんで…僕も楽しいですね。

 

 

ハマ:細野さんは今後、作品作りにおいては…まぁ『HOCHONO HOUSE』でももちろん演奏されてましたけど。

H:うん。

ハマ:まだぜんぜん…タイミングが合えばベース欲はあるんですか?

H:あるよ。あるけど、自信がない(笑)

ハマ:そんなこと言わないで下さいよ(笑)でも"Nerd Strut"とかすごいカッコよかったな。源さん(星野源)で、インストで弾かれてたじゃないですか。

H:そうね、やったやった。

ハマ:あれもすごいカッコよかったし。

  

 

Nerd Strut - 星野源

(from『YELLOW DANCER』)

 

 

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ハマ:あと、達郎さん(山下達郎)と源さんと細野さんで鼎談されたじゃないですか。俺、あのページでいちばん笑ったのが…「改まって振り返ると話す機会がなかった」、と。2人が。

H:そうそう(笑)

ハマ:ウソでしょ?と思って。レコーディングしてるのに…でも「レコーディングの現場なんてそんな話さないもんね」みたいな話で。まぁたしかにな…と思って。

H:うん。

ハマ:「だから今だから言うけど、細野さんのベースは日本一ですよ」っていう話してて…(笑)

H:あのとき初めて聞いて、そうなの?と思った(笑)

ハマ:「そんな風に思ってくれてたの?」とか言って…いい会話だなぁ、と思って(笑)

H:(笑)

ハマ:いや、その通りですよ細野さん。ご自身ではね、わかんないけど…

H:ぜんぜん自信ないの。

ハマ:達郎さんがあのタイミングであれを言うっていうのに、俺すごい笑いましたけどね(笑)

H:(笑)

 

www.hoshinogen.com

 

ハマ:いいなぁ~、と思って。でも、その通りですよ。だからぜひ、ベースを弾く細野さんを。

H:そうね…おだてられたらやるよ。

ハマ:ホントですか?そんなこと言ったらもう、全方位型で、みんなで…(笑)

H:(笑)

ハマ:みんな言ってますから。安部勇磨が細野さんとちゃんと話をしたことがひとつのきっかけで『HOCHONO HOUSE』が生まれたのであれば、まだまだ俺らから言うことは山のようにあるぞ、っていう話を…(笑)

H:あー、話聞きたいね。んー。

ハマ:なのでちょっと、今度、僕ら世代のバンドマンを集結させ……

H:ぜひぜひ。刺激が欲しい。

ハマ:「細野さんに今やってほしいこと」を募って…(笑)

H:あー、聞きたいわ(笑)

ハマ:昔の作品の良さを伝えるのも僕らは好きですけど、これからやってほしいことを細野さんに言えるのも、たぶん…僕らがいまいちばん恐れずに言える世代なので…(笑)

H:いやー、ホント言ってほしいわ。

ハマ:そこはちょっと、物怖じせずにお伝えしますね、今度。軍団を率いて…

H:じゃあ、そういう機会を持ちましょうね。

ハマ:犬(安部)と猫(ハマ)で…(笑)犬と猫が先陣切ってやります。

H:芸人と違って飲みに行ったりつるんだりしないからね。なかなか…

ハマ:そうですね。なかなかそういう話をする機会もないんですよね。世代が近いからといって…というのもあるし。

H:うん。今度じゃあ、一席設けないとね(笑)

ハマ:ぜひ!じゃあ、それを…僕らが細野さんを囲む会。

H:うん。やろう。

ハマ:ですね。じゃあそれを目標に…

H:ぜひぜひ。お酒飲めないけど。

ハマ:じゃあうまいものを食いに…行きましょう。

H:はい。

ハマ:ありがとうございます。

H:はい、こちらこそ。おもしろかった。