2018.10.21 Inter FM「Daisy Holiday!」より

 やっぱりこういう回がいちばん好き…

daisy-holiday.sblo.jp

 

H:こんばんは、細野晴臣です。さて、えー…10月も、そろそろ終わりが見えてきて…
 
O:ですね。
 
H:岡田くんです。よろしく。
 
O:こんばんは。よろしくお願いします。
 
H:えーと。僕はね、毎日のようにスタジオ入ってるんですよ。だからなんにも…世間知らず、っていうの?(笑)
 
O:(笑)
 
H:えー…なにかある?
 
O:僕、二十何年海外からレコード買ってますけど…
 
H:そうだよね。
 
O:先週、シングル盤が届いたんですよ。お、来たな、と。何が来たんだろうと思って、封を開けようと思ってカッターを取り出したんですけど、既に封が開いてる感じだったんですね。
 
H:ほう。
 
O:よく通関…税関で中身を見たりする時があるんで、まあ、それなのかなと思って。ジャケットも入ってるし、と思って、中身を出したわけですね。
 
H:うん。
 
O:そしたら、こう…中身が…(笑)
 
H:無いの?
 
O:抜けて…
 
H:抜き取られたっていうこと?
 
O:ジャケットは入ってるんですけど、たぶんこの開いちゃった口から、運悪くレコード盤が飛び出して…どっかに今、盤だけがあるというですね…(笑)
 
H:ものはなんだったの、それ?
 
O:これは…フェビアン・アンドレ(Fabian Andre)というですね、"Dream a Little Dream of Me"の作家の…ルンバのやつなんですけど。
 
H:ああ、そう。貴重なシングルじゃん。残念。
 
O:(ここで)かけたかったんですけどね。
 
H:ね。どこに行ったの?
 
O:どっかにある、とは思うんですけど…郵便局とかFedExとかに問い合わせをいま、していて。
 
H:あ、してるんだ。なるほど。
 
O:連絡待ち、です。
 
H:すごい。大ごとになってきた。
 
O:(笑)
 
H:盗る奴だったらまるごと盗るもんね。中身だけ盗るってことはないよね。
 
O:ジャケットだけ残しとくはず無いと思うんで…
 
H:でも、財布でお金だけ抜き取る奴いるからな。
 
O:んー、まあね…(笑)ジャケットがビニールに入ってるんですけど、ビニールの向きさえ違ってれば中身は出なかったんでしょうけど…
 
H:あー、そこら辺がちょっとね。なるほど。
 
O:不運が重なりました。
 
H:いやー、出てくるかもしれない、っていうのは楽しみですね。
 
O:出てきたらいいですけどね。でも、たぶん…なんだろう、と思って捨てちゃう人いそうだな、と思って。
 
H:捨てちゃうかもね。ヤカン置きとかにする、っていうかも…(笑)
 
O:溶けちゃいますから(笑)
 
H:喫茶店でよくなかったっけ、そういうの。
 
O:レーベルをコースターにしてるところはありますね。
 
 
 
H:ではね…そういうわけで僕はなんにも持ってないんですよね。えー、お願いしますね。
 
O:はい。もし気になるものがありましたら…
 
H:リストがここにありますんで…えーとね、そうだな…エレクトロニック・カルテット(Electronic Quartett)ってどんなんですかね?
 
O:たぶんこれは…オンディオリンかオンド・マルトノを使ったフランスのカルテットですね。
 
H:あー。1950年代。
 
O:1950年代ですね。1958年ぐらいですね。
 
H:どんなの?あんまりオススメじゃないの?
 
O:いや、持ってきてるぐらいなので…
 
H:あー、じゃあ聴こうよ。
 
O:聴いてみましょうか。
 
H:"Always"。
 
 
  
 Always - Erectronic Quartett
 
 
 
H:…どこがエレクトロニックなの(笑)
 
O:(笑)まあ、「電気楽器を使ってる」ってことじゃないですかね、1958年だと。
 
H:1950年代かぁ…もう、ホント、大昔になってきちゃったな。んー。僕は1940年代生まれですけどね。
 
O:10歳ぐらいの頃ですね。
 
H:ええ、そうなんですよ。だから、こういう音楽いっぱい聴いてましたからね。
 
O:昔は…そうですよね、映画音楽とか、そういうのが普通に…
 
H:そう、ヒットチャートに出てきたりね。ラジオ聴けばなんらか、こういう音楽いっぱい聴けましたから。
 
O:いい時代ですね。
 
H:まあ、テレビが無かったしね。初期。1950年代は…無かったんじゃなかったかな。
 
 
 えーと…この感じでもうちょっと聴いていきたいですよね。ここにあるタイトルだけでリクエストします。
 
O:(笑)
 
H:"Mambo Magic"、どうでしょうか。
 
O:"Mambo Magic"。
 
H:レグ・オーウェン(Reg Owen)っていう人ね。
 
O:レグ・オーウェンって前に僕、細野さんから教えてもらった…
 
H:そうだっけ?教えたことはないよ、なんにも(笑)
 
O:"Paddle Wheel"っていう曲だったっけかな。
 
H:ふうん、よく憶えてるね、そんなこと(笑)
 
O:(笑)ライブラリー系の人ですね。レイモンド・スコットっぽいとか、アンドレ・ポップとか、「そんな感じのだよ」って言って…
 
H:僕が言ってたの?
 
O:はい。ここで。
 
H:なんでそんなこと知ってるんだろう、自分が(笑)
 
O:(笑)
 
H:ほんっと、どんどん忘れてくから…はい。じゃあその"Mambo Magic"。レグ・オーウェンで。
 
 
 
 
Mambo Magic - Reg Owen
 
 
 
H:いいね。僕こういうの好きなんだよね(笑)
 
O:(笑)
 
H:音がなんか、気持ちがいい。録り方がいいんだよな。まったくのMONOだけどね。
 
O:そうですね、この頃のは。
 
H:こういう音を今に置き換えてやろうと思ってたんだけど、なかなかできないもんなんだよね。意外と。
 
O:MONOでもちゃんと立体感っていうか、こう…
 
H:奥行きがある。
 
O:ありますよね。
 
H:やっぱりレコーディングの…スタジオの中での位置がね。
 
O:セッティングと、マイキングと。
 
H:うん。まあこの当時はもう、マイキングはマルチだろうけどね、たぶん。
 
O:そうですね。いまので1960年代じゃないですかね。1969年か。
 
H:そっか。まあ、こういう音を聴くのはホント、僕は楽しみで…
 
 
 いい?もっとリクエストして。
 
O:はい。
 
H:田村大三っていう方はどなたでしょうか?(笑)
 
O:大正生まれのですね、指笛の…
 
H:指笛!
 
O:指笛の人なんですよ。
 
H:めずらしいね、そりゃ。初めて聴くよ(笑)
 
O:小学校で体育の先生がピーッってやってるのを見て、指笛できるんじゃないか、と思ってやったらできるようになって。
 
H:すごいね。
 
O:戦前…街頭で童謡からクラシックまでやって指笛のレコードを…最終的にはカーネギーホールかなんかに出たらしいですよ。
 
H:すげえ(笑)なかなかいないもんね、指笛の人は。
 
O:指笛はいないですね。口笛の人はいますけど。
 
H:どうやってやるのか皆目見当もつかないんだけど…
 
O:人差し指入れて…こうやんのかな。
 
H:あの、沖縄の人がやるよね、よく。そう。その人がやってるのがこれは…『現金に手を出すな』、「グリスビーのブルース(Le Grisbi)」。
 
O:そうですね。
 
H:シブい曲をやるよね(笑)聴いていいですか?
 
O:はい。
 
H:田村大三、"現金に手を出すな"。
 
 
 
 
 
 
H:あの、これ…これ練習?練習してんの?(笑)
 
O:伴奏が…ちょっと心もとない感じで…(笑)
 
H:なんか、コードがすごいいい加減だったよね、サビの…(笑)
 
O:取れなかったんだな(笑)
 
H:なんか、みんな自信なさそうにやってんのね…(笑)
 
O:自信が無いのが音にすごい表れてますよね(笑)
 
H:表れるね。自信って大事だよな。ヘタでもいいから思いっきりやると、パンク的なね、勢いが出てくるけど…
 
O:(笑)
 
H:なんか、さびしくなってきちゃった。でも、指笛の人はすごいね。
 
O:すごいですよね。
 
H:一人だけ、でっかい音で。これは、録るの大変な音だよ。よくまあ録ったな。(音が)割れちゃう、歪んじゃうもんね。
 
O:あー。
 
H:すごい…口笛の百倍ぐらい強いね(笑)ちょっとなんか、興味があるな。指笛か。
 
O:「指笛協会」みたいなのがあるらしいですよ。
 
H:あるんだ。んー。やってみたいな。なんか、タクシー呼ぶ時、それで止めたいじゃん?(笑)
 
O:止まってくれるかなぁ…(笑)
 
H:たぶん日本ではムリだろうね(笑)
 
O:素通りされちゃいそう(笑)
 
H:あー、そういうシーンを観たことあるなぁ…まあいいや。はい。
 
 
 えーと…申し訳ないから僕もなんかかけようかな。
 
O:ぜひ。
 
H:唐突だけどね。最近、ちょっと聴いただけなんだけど。えー…まあちょっとソウル系のね、1950年代の。タムズ(The Tams)だな、Tamsのこういう曲。"Hey Girl Don't Bother Me"という曲ですね。
 
 
 
Hey Girl Don't Bother Me - The Tams
 
 
 
H:Tamsの"Hey Girl Don't Bother Me"。あの、左右にキッチリ分かれてるでしょ。
 
O:分かれてますね(笑)
 
H:この頃の音楽を(再発で)出すじゃない?そうすると、リマスターでこう…なんていうの、疑似ステレオにしちゃうじゃない。
 
O:うん。
 
H:たぶん当時…これ4トラックかなんかで録ってんのかな?
 
O:4トラックぐらいですよね。
 
H:1960年代だから。まあビートルズもよくやってたけど。でも、ホントはMONOで聴きたいんだよな。こういうのはね。
 
O:だからシングル盤で見つけて、モノラルの…
 
H:そうそう、シングル盤っていうのはいい音してたんだよね。中学の時にAtlanticのシングル盤買って聴いたらすげーいい音だったんだよな。
 
O:やっぱ、シングルはぜんぜん別物ですよね。
 
H:別だね。音圧が高いというかね。
 
O:CD化とかするのもMONOで…シングル盤からやってもらいたいですけどね。
 
H:ホントだなぁ…うん。ちょっと考えるわ。いまシングル考えてるから…(笑)難しいねー、ホントに、いま…デジタル時代って。
 
 
 じゃあね…はい、(リストに)戻ってですね…岡田コレクションからですね、なんだろう…"Cool Stunt"。このタイトルが気になるんでね。
 
O:あー。
 
H:どうですか。
 
O:三保敬太郎さんの曲ですね。渡辺晋とシックスジョーズのアルバムに入ってる。
 
H:三保さんが、曲を作ったっていうこと?
 
O:そうです。作曲がそうです。
 
H:すごく才能のある人ですよね、三保さんって。
 
O:そうですね。
 
H:♪タラララララララタララ…タララタッタ…
 
O:「11PM」ですね。
 
H:名曲だよね(笑)すごい人だな。じゃあその、渡辺晋さん…ナベプロ創始者ですね。ベーシストです。シックスジョーズで"Cool Stunt"。
 
 
 
Cool Stunt - 渡辺晋とシックスジョーズ
 
 
H:上手ぇ…すごいね。クオリティ高いですね…曲もちゃんとしてますよね。
 
O:そうですね。
 
H:こういうシーンが日本にあったっていうことだからね。これを土台にいまの芸能界ができてるっていう…(笑)
 
O:そうですね。不思議な感じがしますね。
 
H:ちゃんとしてたなぁ。僕はうれしい、感心しちゃう。見習うべき点があるね。んー。
 
O:(笑)
 
 
H:その三保さんのリーダーアルバムというか、そういうものはあるんですか?
 
O:はい。原六朗さんっていう作曲家がいるんですけど。
 
H:どういう方でしたっけね。
 
O:"素敵なランデブー"とか、美空ひばりの。その辺を書いてた方で。その『原六朗作品集』というのがあって、アレンジしてインストでやってるんですけど。それを三保敬太郎さんがアレンジと演奏をやってる…
 
H:三保さんっていうと、レーサーでもあるんだよね。
 
O:そうですよね。
 
H:まあ、すごい…ユニークな人ですよね。じゃあ、それを聴いてみたいと思います。"太陽はいつまでも"。では、きょうはこの曲でお別れしたいと思います。また来週。
 
 
 
太陽はいつまでも - 三保敬太郎とストリング・ポップス・オーケストラ 
(from『素敵なランデブ―:原六朗作品集』)