2018.08.12 Inter FM「Daisy Holiday!」より

アコースティックスウィングは最高…

 

daisy-holiday.sblo.jp


 (以下すべてH:)

  細野晴臣です。こんばんは。暑い夏が、ずっと続いてますが…まあ台風が来たときにちょっと下がったりして…えー、バテてますね。いっぱいロンドンとかで歩いてたんですけど、こっち帰ってきてから一歩も歩いてないんですね。一日…せいぜい200歩とか。暑くて歩けないですからね。で、部屋に籠ってですね、『ツイン・ピークス』全巻観たり、『Xファイル』も観ちゃいましたね。いやー、結構やっぱり、おもしろかったですね。ファンですから。
 それで、『Django』(邦題:『永遠のジャンゴ』)っていう映画も観て。ナチ(Nazis)とジャンゴ・ラインハルトDjango Reinhardt)の関係性とかもね、いろいろ…マヌーシュ・サウンドを交えて作られた映画ですけど、なかなかまあ…よかったですね。
 そんなわけで、ジャンゴ・ラインハルトをいっぱいかけようかな、と思います。まずは"Limehouse Blues"。
 
 
Limehouse Blues - Django Reinhardt
 
 
"Limehouse Blues"ですね。
 
 えーとですね…『永遠のジャンゴ』という、日本語のタイトルなんですけど。当時、ナチ政権下で、ナチがパリに侵攻してきまして。ユダヤ人がいろいろ災難に遭ってる中、当時は「ジプシー」って言ってましたけどね、ジプシーたちも弾圧を受けて、ジャンゴ・ラインハルトも危険を感じてスイスに亡命しようとしたりするんですね。そんなような話なんですけど。ま、でも、実際は音楽が本当に好きな人たちなんで、非常に享楽的な生活を送ってたんだと思うんですけどね。音楽を聴くとそれがよくわかるんですけど。
 じゃあ、サウンドトラックをちょっと聴いてみたいんですけど。映画の中でジャンゴの演奏も…まあ、(ジャンゴの)音楽をやってる。ジャンゴスタイルでやってるんですけど、ローゼンバーグ・トリオ(Rosenberg Trio)っていうんですかね…ローゼンベルグ・トリオか。"Blues En Mineur"。"Minor Blues"ですね。
 
 
Blues En Mineur - Rosenberg Trio
 
 
まあ、映画用に録ったんですごく音がいいですけど、ジャンゴ・ラインハルト自体の(=本人の)レコーディングはそれほどクオリティがいいわけではなくて、なかなかね…もっといい音で聴きたいな、と思ったらこういうサウンドもあるというわけですけど。でも、やはり演奏自体が素晴らしいんで、聴き応えはある、ということです。
 えーと、じゃあ次は…アメリカに渡って、アメリカのジャズミュージシャンたちと一緒にやったやつがあります。"Smoke Rings"。
 
 
Smoke Rings - Django Reinhardt
 
 
 同じくアメリカでレコーディングして、ハーモニカのラリー・アドラー(Larry Adler)と一緒にやった"My Melancholy Baby"
  
 
My Melancholy Baby - Django Reinhardt & Larry Adler
 
 
  ジャンゴ・ラインハルトはですね、左手が不自由だったんですよね。火傷を負ったということで、指が…なんかこう、2本の指だけで速弾きするという。それがすごいですよね。5本あってもあんなに速く弾けないんですけど…驚異的な速さ。速弾きが特徴だと…まあ、思うんですけど、実はゆったりしたやつが僕は好きなんですよね。そのちょっとフレンチな、ゆったりした曲を聴きたいと思います。"Billets Doux"。
 
 
Billets Doux ー Django Reinhardt & Stephane Grappelli 
 
 
この1930年代の録音だと思うんですけど、ステファン・グラッペリ(Stephane Grappelli)のバイオリンと一緒にやってますね。この時代はフランス・ホット・クラブ五重奏団(Quintette du Hot Club de France)というスタイルでやってまして。戦時中になりますとね、1940年代になりますとグラッペリはロンドンに亡命…というか、まあ、避難するんですね。そこで残ったのがジャンゴで、先ほど言ったように巻き込まれていくわけですけど。
 
 そんな感じで、後半は随分のびのびと長生きしたような気がします。いくつだったかな。んー…43歳か(笑)決して長生きではなかった、43歳で亡くなってますね。
 
 じゃあまた、曲をかけたいと思いますが…また、ステファン・グラッペリと一緒にやった、"Menilmontant"という曲です。
 
 
Menilmontant ー Django Reinhardt & Quintette Du Hot Club
 
 
えー、すごくよくかかる曲ですね、"Menilmontant"。
 
 で、あの…映画でもう1個。ウディ・アレンWoody Allen)の『ギター弾きの恋(Sweet and Lowdown)』でやっぱりラインハルトがモデルになってる人がチラチラ出てきて、それに憧れる主人公の物語でしたけど。まあ、ジャンゴ・ラインハルトに影響された人はいっぱいいるわけですね。かのレス・ポール(Les Paul)もそうですね。あと、最近までずっとそういう伝統が続いてて、スウィング系のアコースティックバンドがいっぱいいるわけです。本家のマヌーシュ・スウィングも、ずっと続いてるわけですね、伝統的に。素晴らしいギター奏者がいっぱい、今だにいるわけです。で、憧れるんですけど、あんな風には弾けないんで、聴くだけです。
 
 じゃあ、最後に"Body And Soul"。これはやっぱりアメリカでレコーディングして、ラリー・アドラーと一緒にやってますね。これはベスト・トラックだと思うんですけど。聴いてください、"Body And Soul"。では、これを聴きながら…また来週。
 
 
 
Body And Soul - Django Reinhardt & Larry Adler