2018.07.15 Inter FM「Daisy Holiday!」より

 

daisy-holiday.sblo.jp

 (以下すべてH:)

  こんばんは~。細野晴臣です。えー、自分的には非常に…久しぶりなんですけど。なんでかって言うと、6月末にロンドン、ブライトンっていうとこに行って演奏してきたんですね。まあ大体1週間ぐらいの旅でしたけど、帰ってきてからヒドい時差ボケで。治らないです。なんでだろう。こういうの初めて、ですね。でも、行った人はほとんどみんなそんな感じで。なんか、時間帯の所為なのかな。ただし、メンバーの伊藤大地くんと高田漣くんだけ、時差ボケが無い。どういう身体をしてるんだろう、と。そういう人もいるらしい。ただ、漣くんはワールド・カップボケしてて、なんか大変みたいですけどね(笑)
 それでですね…プレイリストってのを、どっかで僕は挙げてるんですよね。どこなの?Apple (Music)ね(⇒http://applemusic.com/haruomihosono50th)。じゃあね、そこら辺をなぞりながら音楽かけていきます。そのプレイリストの1曲目に挙げたのがね…『メッセージ(原題:Arrival)』という映画の"Kangaru"という曲ね。ヨハン・ヨハンソンJóhann Jóhannsson)という、惜しくも亡くなられた作曲家なんですけど、まずそれを聴いてください。
 
 
 
 
もう今や懐かしい、映画『メッセージ』から"Kangaru"という…これはエンドクレジットにかかってましたね。ヨハン・ヨハンソン作曲です。
 
 さて。ロンドンの気候ってのがね、いちばん良かったんですよ。とにかくあっち行って元気になっちゃって。一日何千歩も、多い時は16,000歩ぐらい歩いたりしてました。どんどん歩けちゃうという。もう、どんなに疲れてても足が前に出ていく、っていう。「ロンドンはどうだったのか」ってまだあんまり訊かれてないんですけど、おもしろかったですね。日本と変わらないです。演奏してる時のお客さんの反応がね。日本の方が多いかっていうと、そうでもないんですよね。もちろん、いらっしゃったんですけど。で、ブライトンに移って、そこがまた素晴らしい。とにかく連日、雲ひとつない快晴が続いてて、ここはロンドン、イギリスなのかと思うほどでしたけど。すっかり僕の名前がね、みんな「ハルオミ」じゃなくて「ハレオミ」と思ってるんじゃないか、と。なんか曇ったり雨が降ってると僕の顔を見るんですよね、スタッフが。
 (日本に)帰ってきて、これが暑くて。なんかニュースがね、いっぱいあったり。事件が多かったり。もちろん、西日本の豪雨が大変でしたけど。いろんなことが起こる国ですよね。まあ、それで誕生日を迎えちゃったんですよね、その頃。帰ってきてから。大体人間って誕生日前後が体調が悪いんですよ。なんかバイオリズムというかね、免疫が低下するのか。今もちょっと鼻声なんですけど。とにかく時差ボケがヒドい。ですから、夜寝らんない。まあ、昔から寝らんないんですけど(笑)最近はね、年とって、朝型になってきたと思ってたら…また夜型になっちゃいそうで。これは困ってるんですね、実は。
 で、寝らんないので何してるかっていうと、『ツイン・ピークス(Twin Peaks)』観てるんですよ。『リターン(The Return)』っていうやつ。やっと、DVDが出たんですね。それまでは謎だったんですよ。テレビ局でしか観られなかったという。ですからやっと観れて…なんともいえない気持ちで観てます。や、おもしろい、ですね。あのテンポというか。で、なんかいろいろカブるところがあったりね。例えば、パリス・シスターズ(The Paris Sisters)の"I Love How You Love Me"という曲。これ僕カヴァーしてるんですけど。随分前ですけど、アルバムに入れたんです(⇒『Heavenly Music』,2013年)。そのオリジナルというか、パリス・シスターズ版、聴いてください。それが『ツイン・ピークス』で突然かかったんです。
 
 
I Love How You Love Me - The Paris Sisters
 
 
短いね。2分ちょっとしかないですけど。えー、パリス・シスターズ。ホントに画期的な3人女性グループでした。フィル・スペクターPhil Spector)系、ジャック・ニッチェ(Jack Nitzsche)がプロデュースしてます。1960年代なんですけど。まあ、今現存してたら、たぶん、デヴィッド・リンチDavid Lynch)の映画に出てもおかしくない存在ですよね。
 で、『ツイン・ピークス』って23年ぶりだったのかな。展開(に頭)が追いつかないですね。先が読めなくて。なんという世界だろう、と。突然アートの世界が入ってきたり。まあ、思うまま作ってるんで、素晴らしいですよね。今のテレビ界には有り得ないような展開なんですけど。それで思い出すのが23年前のオリジナル、本編ですよね。あの頃もかなり没頭してましたね。ビデオ(VHS)の時代でしたから、それを借りて全部観てて。重要な場面を全部つなげたりしてね。その時のテーマ(曲)というのが、「ローラ・パーマーのテーマ("Laura Palmer's Theme")」これがね、残るんですよね。染み込んでくるんですよね。それを聴いてください。アンジェロ・バダラメンティ(Angelo Badalamenti)の作曲です。
 
 
Laura Palmer's Theme - Angelo Badalamenti
 
 
 えー、アンジェロ・バダラメンティという作曲家ですね。この前、『ツイン・ピークス』の前に、『タフガイは踊らない(Tough Guys Don't Dance)』という映画の音楽やってたんですけど。これはね、ビデオで僕は観てて…DVDになってるかどうかは知らないんですよね。ほんっとに知られてない映画なんですけど、なんと、ノーマン・メイラー(Norman Mailer)という活動家が作った映画なんですけど、雰囲気はまるで『ツイン・ピークス』みたいで。デヴィッド・リンチはおそらく、それにすごく影響されている、とは思うんですね。で、そのバダラメンティの音楽も、こういう世界に近いんですよ。ちょっと今聴くことができないのが残念なんですけど。もうひとつのルーツというのかな。それはですね、『ローズマリーの赤ちゃん(Rosemary's Baby)』という映画。ミア・ファーロウ(Mia Farrow)主演、(監督は)ロマン・ポランスキーRoman Polanski)ですね。ジョン・カサヴェテス(John Cassavetes)も出てます。これの音楽を聴いてください。共通点があるんじゃないかな、と思います。
 
 
Rosemary's Baby Main Theme - Krzysztof Komeda & Mia Farrow 
 
 
"Rosemary's Baby Main Theme"、です。歌は…声はミア・ファーロウで、作曲が…コメダ、と。コメダ珈琲じゃないんですけどね。クリストフ・コメダ(Krzysztof Komeda)、なのかな、うん。これはやっぱり、かなり影響を与えていると思いますね。映画自体がね。
 
 さてと。ちょっとここで告知をしたい、と思いますが。今日来れなかったんですよね、忙しくて。コシミハルの公演があるんで、今追い込みの真っただ中なんでしょうね。えー、公演日時、2018年7月18、水曜日。開演19時。そして19日、木曜日。これはマチネーですね。開演が15時と19時、2回あります。公演名『フォリー・バレリーヌ「秘密の旅」』。場所はですね、渋谷区文化総合センター大和田伝承ホールです。芸術監督・音楽監督・特別出演でコシミハルがやりますね。それで、共同振付に森本京子、林かおりという、かつての仲間がやってくれてます。で、若手のバレリーナが何人か…随分出ますね。照明は関根(聡)さんですね。これは僕も観に行きたいと思います。いろんな曲が、非常に豊かにかかる感じですね。ぜひ皆さんも観に行ってあげてください。
 
 
 
 で、話は変わって。誕生日の前の日にCAYという青山のクラブで、なんかイベントがあったんですけど。昔、神社でよくやってたモンゴロイド・ユニット(⇒環太平洋モンゴロイドユニット)というのがあるんですけど、その仲間である鎌田東二さん。法螺貝と笛なんですよね。それから三上敏視さんは太鼓と唄です。そういう人たちとやったんですけど。そういう時でも僕は生ギターを持ってって"Radio Activity"、そして"バナナ追分"をやったり。最近ね、そういう楽曲…歌ものが多いんで、それ以外のことがあまりできなくなってるんですけど。そしたら、会場にいた外国人2人がね、舞台の方にやってきて。段ボールがハッピーバースデーのカードになってて、でっかい段ボールに書いてるんですよね。名前忘れちゃったな…えー、カイルちゃんと、なんとかちゃん。ちゃん、自分で「ちゃん」付けてるんですよね、ローマ字で書いてあるんだけど。まあ仲のいい男の人…30代なのかな。仲良すぎる感じもあるっていう、2人がね。やさしい気持ちで書いてくれて。楽しいカードなんですよ。あまりにもそれが楽しいんで、写真撮ったりしてたんですけど。まあ、この最中に写真、アップしちゃったんですよね。この最中っていうのはつまり、いろいろな事件が起こるという最中にですね。まあ、しょうがないですよね。誕生日は来ちゃうんで。
 

 

  

 で、決して…なんていうの、楽しくないですよ、誕生日は。何にもやんないです。そんなことがあったぐらいで。発表しますと、71歳ですから。もうおじいちゃんですね。完全に。100%おじいちゃんですよ。爪を見ればわかる。足の爪。汚ったないんだよね(笑)しかも遠いじゃない、自分から足の爪って。届かないんだよ(笑)昔は近かったんですよね、地面も。足も。だから転んでも痛くなかったでしょ、そんなにね。今転ぶと大変ですよ。
 
 えー、それで…そんなことがありつつ。ロンドン、ブライトンの話は今度、バンドのメンバーを呼んで話したいと思います。きょうはこの続きで、もうちょいかけられますかね。えー、次の曲…「いつか夢で」という曲。これは『マレフィセント(Maleficent)』という、映画がありましたよね。それの最後にかかるディズニー定番の歌なんですけど、すごい暗くやってます。ラナ・デル・レイ(Lana Del Rey)の歌です。"Once Upon A Dream"という原題です。 
 
 
Once Upon A Dream - Lana Del Rey
 
 
 えー、じゃあきょうの最後の曲が、先ほどもかけた『ローズマリーの赤ちゃん』の主演だったミア・ファーロウのもうひとつの傑作ですね、『フォロー・ミー(Follow Me!)』。この映画はですね、キャロル・リード(Carol Reed)監督の遺作ですね。1972年です。まあ時間が無いので、曲をかけましょう。"Follow Me"、ジョン・バリー(John Barry)の作曲です。
 
 
Follow, Follow - Lana Del Rey