2019.01.06 Inter FM「Daisy Holiday!」より
H:はい、細野晴臣です。新年…2019年。また、かわいらしいお二人を招いてます。水原姉妹。
姉妹:イエーイ!あけましておめでとうございます!
希子:水原希子です。
佑果:佑果です。
H:はい。なんかもう、恒例になってきたね。
佑果:うれしいです!
希子:光栄です、本当に。こんな楽しい時間を…
佑果:過ごせるなんて…
希子:音楽共有して…
H:今年は、何年?亥年?
佑果:そうなりますね。
希子:亥です。
H:お二人は何?何年生まれ?
佑果:私、戌です。
H:あ、年女だったんだ。
佑果:ミラクルな1年でした。細野さんにも出会えたし…
希子:あ、そうだ!そうだね。
佑果:ロンドンにも…
H:来たね。
佑果:はい。コンサート観に行かせてもらったり…出させてもらったり。
H:出たね。
希子:ホントだ。
佑果:ホントに楽しい1年だったなぁ、と思います。
希子:福岡も出たもんね。
佑果:はい!
H:そうだそうだ、お二人だったね。
希子:盛りだくさんだったね。
佑果:はい。
H:希子ちゃんは何年?
希子:私は午です。
H:えー…いつだかわかんないけど…(笑)
佑果:午は…
H:数年前そうだったね。
希子:数年前です。馬は働きものなので…
H:働いてるよね。
希子:働いてます、本当に。よく働いてます…
H:僕は今年、年男だ。亥だ。
希子:あ、そうなんですか!
佑果:えー!知らなかったです。
H:僕は母親も亥年の蟹座で、そのお母さん…僕のおばあちゃんね。亥年で蟹座なの。3代続いて…(笑)
希子:えー、すごい。
佑果:そんなことがあるんだ…
希子:ちなみに、うちのおじいちゃんも亥です。母方の。
H:あ、ホント?ちょい待ち…同い年ってこと?(笑)
希子:いや、同い年じゃないかも…さらに(一回り)上ですね。
H:よかった(笑)んー。今年も忙しいんだろうね。
希子:今年は…
H:希子ちゃんはテレビドラマ出てるよね。
希子:そうです。いま、テレビドラマ絶賛撮影してて。2月までなんですけど。1月の後半から放映されるので…
H:そうかそっか。
希子:まあ、ちょっと…久しぶりのテレビドラマなので…弁護士のお話で、『グッドワイフ』っていうタイトルなんですけど。
H:うん。
希子:主演の常盤貴子さんが…16年ぶりに弁護士に復帰するというお話で、その旦那さんも弁護士なんですけど、旦那の汚職と浮気が原因で旦那さんが捕まっちゃうので…私が彼女を支えるパラリーガルの役で。女性が強く戦っていく、みたいな。すごくいいですよ。常盤さん、とても素敵な方なので。楽しくやってます。
H:でも、弁護士役って大変だろうね。専門用語とか。
希子:大変です!そう、普段私もう…ボーっとしてるんで…
佑果:(笑)
希子:もう専門用語の連発だし…まあ、すごく勉強にはなりますけど。
H:良い経験だよ。
希子:はい。これをふんばって…乗り越えようと思ってます。
H:佑果ちゃんも、忙しい?
佑果:私はそんなに忙しくないです(笑)でも、好きな音を集めて組み立てたり…そういうのにフォーカスできるようにしていきたいなぁ、って。来年の…目標はたくさんあります。
H:「今年」、ね。
希子:でも、DJ忙しくなったもんね。
佑果:DJ…2年前に始めて、たくさん…いろんな場所でDJするのを通して、音楽の良さみたいなものを毎回知って勉強する、みたいな…けっこう楽しくて。
H:じゃあ、早速…
佑果:あ、そうですね!(笑)
H:聴かせて。
佑果:じゃあ、まずは…何からかけようかな…
H:さっき話してた、ビッグ・ママ・ソーントン(Big Mama Thornton)…
佑果:あ!ビッグ・ママ・ソーントンの"Hound Dog"を聴きたいです。
H:あー、こういうのを聴いてるんだね。おもしろいなぁ…
希子:(笑)
佑果:カッコいい…!
Hound Dog - Big Mama Thornton
佑果:いや、こういう声が出せたらね!
希子:(笑)
佑果:どれだけカッコいいかって…思いながら聴いてます(笑)
H:ホントだよね。
希子:もうなんか…強いですね。パワー。
佑果:図太い声と、シブい…
H:「Big Mama」だから。
佑果:憧れますねぇ…
希子:私、昔エタ・ジェイムズ(Etta James)のライヴに行ったことがあって。彼女が亡くなる前に。
H:え、すごい!それは貴重だ。
希子:そう。お父さんに…16歳の時、テキサスに会いに行って。で、お父さんが「エタ・ジェイムズ、絶対に連れていきたい」って言って。で、私知らなくて。なんなのそれ、とか言って。生意気に。
H:(笑)
希子:で、連れていかれたら、あまりの…
H:ビックリしちゃった?
希子:もう、とにかくパワー。車椅子で出てきたんですけど。
H:あ、そうだったんだ。弱ってるはずなのに…
希子:弱ってないですよ、一切。ぜんぜん。ステージ立ったら強くて。めちゃくちゃ…ジーンときた瞬間でしたね。
佑果:うらやましい…
希子:やっぱり、女って強いんだな、って。
H:うんうん、強いよ(笑)
希子:彼女は愛をすごい歌うから、いっぱい傷付いてきたんだろうな、と思って。
H:そうそう、ビヨンセ(Beyoncé)がその役やってる映画あったね。
希子:ありましたね。
H:ビッグ・ママ・ソーントンの"Hound Dog"って…プレスリー(Elvis Presley)の"Hound Dog"が大ヒットして、それを子どもの頃聴いてたんだよ。で、大きくなってからこれ聴いたのね。で、ぜんぜん(こっちの方が)良いから…(笑)
佑果:(笑)
H:こりゃなんだろう?と思って。ノリがおもしろいじゃない。こういうのやりたい、って思ったのが30歳ぐらいの頃。
希子:えー。そうだったんですね。
H:まだやってないけどね、これ。
希子:あれ?(笑)いつかやりますか?ここまで来たら…
H:やりたい、やりたい。
希子:ソウルフルな…
H:や、でも歌がね…歌えないよ、こんな風には(笑)
佑果:そうなんですよ!だから憧れるなぁ…っていう。
H:憧れる。最近の日本の若い人、みんな同じ声してる…
希子:わかります。
佑果:個性、っていうのがね…
H:なんかみんな田原俊彦みたいな…あ、こんなこと言っちゃうと怒られちゃう(笑)
佑果:(笑)
希子:やっぱり、でも…ある程度自分の人生を本気で生きてないと、ここまでの声、っていうかパワーが…宿らないですよね。
佑果:ソウルがこもっている…
H:ソウルっていう音楽はそういうもんだからね。
佑果:魂…
H:だから、音楽ってほら…僕も歳とったけど、年寄りもいい味を出せるわけじゃない。年輪、とか。枯れてる、っていう。
希子:はい。
H:まだ日本のロックはそこまで行ってないじゃない。ブルース…演歌はね、あると思うけど。
希子:たしかに。
佑果:そうですね。
H:演歌はすごい強い声の人、いっぱいいるじゃない?
希子:そう。紅白歌合戦とか観てると、やっぱり演歌いいな、って思いますもんね(笑)
H:そうそう!思うよ。
希子:際立つんですよね、やっぱり…ソウルが出てるっていうか。
佑果:坂本冬美さんもね…
H:そうね。
佑果:HISの…
H:あ、HIS?
佑果:大好き…”日本の人”とか。
H:いい思い出だ、あれ。
希子:(笑)
佑果:いやー、あのアルバムはホントに大好きです。
H:いや、僕も好きなんだよ。
佑果:いつも聴いちゃいます。
H:あのね、パープル・ヘイズ("パープル・ヘイズ音頭")は清志郎(忌野清志郎)がアレンジしたんだけど、あんなの無いよ、世界に(笑)
希子:そうですよね。
H:ジミ・ヘンドリックスに聴かせたかった(笑)
佑果:ホントですよね!
希子:ワンアンドオンリーな。
佑果:すごくカッコいい…
H:では…希子ちゃん。
希子: はい。私はちょっと、最近忙しいので、自分のテンションを上げるために速いビートのを聴いてるんですけど。アゼリア・バンクス(Azealia Banks)という女性ラッパーがいまして。彼女自身はハードコアなタイプの女性なんですけど…彼女の曲を紹介したいと思います。
H:ぜひぜひ。
希子:"The Big Big Beat"です。
H:おお、いい音。
The Big Big Beat - Azealia Banks
H:んー…なんか、聴いちゃうよな、こういうの。心地よく。
希子:そうなんですよね。
H:リズムっておもしろい。
佑果:ね。楽しい。
希子:なんか、こういうビートに自分が乗せられて、忙しい時は…なんだろう、マシーンのようになるというか(笑)
H:(笑)
希子:よしいくぞ!みたいな。自分の中のリズムが速くなるので…こういう時は音楽に頼ろう、と思って。強制的にテンションを上げる、っていう。
H:あるよね。たしかにね、僕もこういうの聴くとテンション上がるね。
希子:ホントですか!
H:ちょっといま、声低いけど。
佑果:(笑)
希子:時にはね、テンションを強制的に上げなきゃいけない時があるから…
H:たしかにね…踊るの?
希子:踊ります!
H:どこでも踊るんだもんね。
希子:どこでも踊ります!
佑果:(笑)
希子:朝からすごい大変なシーンをいっぱいやらなきゃいけないっていう時は、ホントにテンションを上げないと乗り切れないから…
H:そりゃそうだ。
希子:現場でこれを自分のヘッドフォンで聴きながら踊ると、ホントに不思議に…それまでは、今日は大丈夫かなぁ…って思ってるムードが一瞬にして切り替わって…
H:んー。
希子:音楽ってちょっと脳みそをハッキングするというか…そういうのを最近、自分でめちゃくちゃ体感してて。
H:なるほど。
希子:やっぱり、音楽に乗っ取らせた方がいいんだな、と思って。
H:身を預けて。気持ちいいよね。
希子:たとえば、悲しい気持ちにならなきゃいけない時とかも、そういう音楽を聴いて脳みそを自らハッキングして悲しくなって…エモーションを音楽でコントロールできるというか。
H:おもしろいよなぁ。
希子:おもしろいです、すごく。音楽って。
H:なんか、最近見直されてるよ。認知症の人に音楽がすごく効果がある、とかね。
希子:あ、そうですか。絶対あると思います!
H:やっぱり、すごい存在だね。音楽ってね。
佑果:そうですね。音ってすごい、深いですよね。
H:深い。もうね、最近毎日スタジオでやってるんだけど、自分の作業を。日によってぜんぜん音が違って聞こえるし。なんかこう…つかみどころが無いんだよ。音って。
佑果:たしかに。
希子:毎日それと向き合わなきゃならないってある意味、毎日自分と向き合ってるようなものですよね(笑)すごい精神的な…
H:そう…そうなんだよ。よく言ってくれた(笑)
希子:ちょっとmeditationみたいな感じになりますよね。
H:なるねぇ。なかなか他では体験できないことを体験してるよ、今。まあでも…結局は楽しいんだよね。
希子:そうですね。佑果ちゃんもいつか音楽、がんばって作ってね。
佑果:ね!作るとしたらやっぱり、楽しいのがいいな、と思って。
H:いつでも作れるよ。今すぐ作れるんじゃない?
佑果:そうですね、パッと…形だけ…(笑)
H:あとは道具があれば。
佑果:そうですね。道具を集めよう…
H:おもちゃがいっぱいあるから。
希子:ここにおもちゃもあるし…
H:なんかね、期待しちゃうな。おもしろそう。
佑果:なんか、木琴の音とか鉄琴の音が好きで。
H:トイ・ミュージックみたいなね。
佑果:そういう音とビートを合わせたりとか…
希子:アイディア盛りだくさん。
佑果:言葉では表せないんですけど、いっぱい、ね…(笑)
希子:やっちゃおう!
佑果:あとは最近、水の音に耳をフォーカス…意識してしまって。たとえばお風呂に入ってると…水を叩くと場所によって音階があって。あ、水にもあるんだ!と思って。遅かったかもしれない…(笑)最近気づいて。
H:いや、なかなか、いい耳してるよ(笑)
佑果:あとは街で…金沢に最近行ったんですけど、街に川がたくさんあって。
H:あるね。
佑果:すっごい透き通った水が…流れてる音が、場所によってまた、ボリュームが出たり出なかったりとか。水も鳴いてる!とか思って…ヘンって言われるかもしれないけど(笑)
H:いや、でも…ホントにいい耳なんだよ。いい耳っていうか、音にすごく鋭敏だね。んー。
希子:よく街とか歩いてると、携帯で音をレコーディングとかしてるんですよ、佑果ちゃん。
佑果:そうですね。
H:なんか、タイプとしては自分にそっくり(笑)
希子:あ、そうですか?
佑果:(笑)
H:聴いてる音楽もなんか似てるし…
佑果:そうですね。
H:不思議な気持ちになっちゃうよ。
佑果:うれしいです(笑)
H;こういうのって…あんまりね、女性…女の子はそういう風に聴かないんだよね。あんまり探検していかないんだよね。
希子:あー…
H:いまある音楽をファーって聴いて…ルーツを探ったりとかしない。普通は。
希子:そうですね。私の周り…私たちの周りにはそういう…モニカ(茂木モニカ)も含め、そういう人が…(笑)
H:あー、集まってるんだね。
希子:集まってるんですね。みんなめちゃめちゃ個性強いんですけど(笑)
H:チームOK。
希子:チームOK、なかなか個性が強い…つわものたち…(笑)
佑果:それこそYMOのルーツとかも奥が深すぎる…ニュー・ウェーヴの世界とか。
H:そうそう、ニュー・ウェ-ヴ。
佑果:あんまり私、ニュー・ウェーヴを掘ってなかったんですけど、最近…
H:ニュー・ウェーヴも奥が深いよ(笑)
佑果:ディーヴォ(Devo)とか。こんなにカッコよかったんだ!と思って。最近聴いてたりとか。
H:もう聴くものいっぱいあるね、じゃあ。大変だ(笑)
佑果:足りないです!時間が…
希子:すばらしい音楽があり過ぎるんです、世の中には。
佑果:そうですね。この世に、もう…出尽くしちゃってるというか。
H:そう。だから、よりどりみどりだよ、いま。
佑果:そうですね。
H:探す人があんまりいない。自分が何が欲しいのかわかってないからね。
希子:たしかに。そこですね。選択肢はいっぱいあるのに。
H:ある。あるけど、掘り出せない、っていう。
希子:それはやっぱり、自分との…
H:そう。自分の問題だよね、やっぱり。
佑果:好きだから掘るんでしょうね。
H:好きなんだよ。
希子:みんな、でも、それぞれね。好きなものって形あるから…
H:じゃあちょっと聴かせて、好きなもの。
希子:あ、じゃあ、次の佑果ちゃんの好きなもの…
佑果:えっと…では、バーバラ&アーニー(Barbara & Ernie)っていう…
H:これは知らないな…
佑果:"Play With Fire"という音楽がありまして。1971年に出てるんですけど。これ、最近レコード屋さんに行って見つけて…とにかく、音楽がカッコいい…
Play With Fire - Barbara & Ernie
H:ふんふん。やっぱり70年代の音なんだね。おもしろいな。
佑果:70年代ってやっぱりカッコいいなぁ…タイムスリップできるとしたら私は70年代のカッコいいミュージシャンのライヴを観に行きまくりたい!って…できることなら(笑)
希子:でも、80年代も楽しそうだね(笑)
佑果:そう。でも、70年代って服もかわいい…サイケデリックなスピリットとか入ってる。なんか引き込まれる…
希子:あれ、幸宏さん(高橋幸宏)が言ってた…いや、違うよ、って。「70年代の後半から80年代に入った時がいちばん楽しかったよ」とか言ってたかな…
佑果:そうだね。
希子:言ってたような憶えが…
H:そうかもしれないけどね。なんだろう…こないだね、孫がベース弾いてるんだけど。
希子:はい。お会いしましたよね、私(笑)
H:ああ、そうだよね(笑)そのセッションがあって。浅草のライヴハウスで。いっぱいいろんな…「中南米研究会」みたいな大学生が集まって。
希子:おお、おもしろい!
H:すごいみんな上手いんだよ。ビックリしちゃって。で、集まってきた人がけっこう…なんて言うの、清潔で、オシャレで。かわいい女の子とかね。かわいい男の子とか(笑)キレイなの、みんな。で、昔のことを思い出して…昔はこうじゃなかった、汚かった、って思って…(笑)
佑果::えー!
希子:そっか…
H:みんなロングヘアーでヒゲ生やしてね。僕もそうだけど(笑)
希子:ヒッピー。
H:もうヒッピーの集会みたいな…パーティみたいのはあったけど。サイケで。
佑果:いやぁ…楽しそう…
H:不穏な感じ。危険な感じもあった(笑)それに比べてすごい今はクリーンだ。みんな…いい少年少女たちがね(笑)
希子:そっか…
佑果:なるほど。
H:だから、70年代は…けっこう汚いんだよ(笑)
希子:そうですよね(笑)
佑果:でも、ファンキーな感じがあるのって…ただgoodっていうよりかはおもしろい…
H:まあ、いろんな思い出があるよ、僕も。
佑果:あ、聞きたいです。エピソードを。
希子:「70年代汚いエピソード」を…(笑)
H:エピソード…ん?
(D:来週に回しましょうか…)
H:じゃあ…この続きは…(笑)
希子:細野さんの汚いエピソードが…(笑)
H:汚いエピソードは来週にします。
希子:楽しみ!(笑)
2018.12.30 Inter FM「Daisy Holiday!」より
時空の歪み…
H:こんばんは、細野晴臣です。さて!先週と同じメンバーです。
O:こんばんは、岡田崇です。
越:こんばんは、コシミハルです。
H:はい。先週も23日の夜中からだから…24日になってたんだよね。
O:はい。クリスマスイヴになってましたね。
H:きょうも…
O:もう、大晦日。
H:大晦日なんだね、実は。ついにね。
O:ついに…
H:どうします?
O:いや、別にどうともしないんですけど(笑)
H:平成が終わる、ってことはどうなの?
O:えー…でも、次のことが決まってないんでなんとも…
H:なんとも言えないよね(笑)未来は語れないよ、なんか。えー…平成ってどうだったの?好きなの?
O:あー…どうっすかね…30年…んー、なんとも…
H:なんだかわかんないような感じで。はい。どうですか、ミハルちゃんは。
越:うーん。でも、最近ね。
H:うん。
越:すごい、なんか…いろんなことが大きく変わってきてるな、って感じるの。
H:そうでしょう。
越:なんか、すごい波…変わるんだよね、きっとね?次元が。
H:変わる変わる。うん。
越:いろんな…音楽もそうだし、映像もぜんぶ。
H:そうだよ。その通りなの。
越:ね。暮らしも…いろんなところで変わってくものがいっぱいある。
H:すごいうねってるよね。なんだろうね…テクノロジー的には中国すごいじゃない、今。ついに日本が下降線をたどってるっていうかね。出遅れてるって言われてるでしょ。
越:うん。
H:まあね…でも、そういう技術はまだ持ってるから、中国に売ったりしてるわけでしょ。そういうこともあったりして…なんか、お金いっぱいもらってる会長がね、拘置所に入っちゃったりとか。
越:うん。
H:いろんなことがあってね。変わるんだよね。えー…じゃあ、そういう音楽をかけてください、岡田くん。
越:(笑)
O:どういう音楽をかければいいのでしょうか…(笑)
H:いいんだよ、なんでも(笑)
O:じゃあですね…先週はモンキーズ(The Monkees)かけましたけど、ブライアン・フェリー(Bryan Ferry)の新譜を。
H:新譜?
O:新譜が出てるんです。
越:おっ。
O:"Dance Away"…ロキシー・ミュージック(Roxy Music)のセルフカヴァーをやってるんですけど。
H:うん。
Dance Away - Bryan Ferry And His Orchestra
H:いやぁ、いいな。良いレコーディングだね、これ。歌ってないんだよね?
O:歌も…8曲くらい歌も入ってるんですけど。
H:いや、けっこうノスタルジックな…
O:これの前に…『The Jazz Age』ってタイトルだったかな?5年ぐらい前にこの手のアルバムを出してて、これが最近出たやつで…
H:この世代はみんなこういう感じなのかねぇ。
O:なんか、1920年代を舞台にしたベルリンの…『Babylon Berlin』っていうNetflix系のドラマがあって。
H:うん。
O:ブライアン・フェリー、出演もしてて。その中で使われた音楽を中心に作ったアルバムですね。
H:なかなかCDセット…ブックレットもいいね。これも欲しいな…モンキーズとブライアン・フェリーは買おう。
越:(笑)
O:毎度あり、ってことで…(笑)
H:(笑)
O:行商のようなことを毎回…(笑)
H:さあ、ミハルちゃんは…今年ね、プロデュースしたじゃないですか。
越:あ、バレエだ。
H:『秘密の旅』?
越:うん…そうだね、そういうタイトルだった(笑)
H:いや、けっこうよかったよ。けっこうって言っちゃうとアレだけど…
O:すごくよかったですね。
H:うん、すごくよかったね。あれ、再演するんでしょ?
越:そうですね、再演することになると思います。
H:それはよかったなぁ。一回じゃもったいないと思ってたの。いつ?
越:まだ決まってないんだけど…
H:まあ、じゃあその時また教えてくださいね。
越:はい。
H:んー…じゃあもう、これできょうは…
O:(笑)
H:もう、ヘトヘトなの(笑)寝てないからね。
O:そういえば。
H:うん。
O:2回ぐらい前の放送でジョー・ヘンリー(Joe Henry)特集やったじゃないですか。
H:はい。
O:あの中でですね、ボニー・レイット(Bonnie Raitt)の曲をかけたんですけど。
H:僕?
O:はい。あれ、ジョー・ヘンリーのプロデュースじゃなかったですよ。
H:ええー?
越:(笑)
O:(笑)
H:怒られちゃった(笑)
O:いやいや(笑)エンジニアは同じなんです。
H…でしょ?(笑)
O:あのアルバム、4曲ジョー・ヘンリーがやってて、他はボニー・レイット本人がやってるんですよ。
H:はぁ…いいよ、それで(笑)
O:で、レコーディングは同じ方なんで。ライアン・フリーランド(Ryan Freeland)って人が、ジョー・ヘンリーのあの一連のをぜんぶやってる…
H:あのエンジニアがすごいから…実はエンジニア特集だったんだよ。
O:エンジニア特集…「ライアン・フリーランド特集」だったってことですね?
H:だったの、ホントは。裏テーマがね。
O:スタジオもぜんぶ同じなんじゃないですかね。ガーフィールド・ハウス(The Garfield House)。
H:そうなんだよ。興味があるなぁ。そこで僕、レコーディングしたいな。
O:でも、ジョー・ヘンリー、そこをもう離れちゃったんですよ。
H:ホント?それは知らなかったな。
O:2015年かなんかに。引っ越しちゃったんですよ。9年ぐらい住んだのかな。いいところみたいですけどね。
H:もう…ミハルちゃんの言ったことだけど、音がまず、変わってきてるでしょ?いま聴いても…ブライアン・フェリーのも。
越:うん。音がすごい変わったね。
H:変わった。
越:でも、ずっと…あんまり、ほら、新しいのは聴かなかったじゃない?
H:うん。聴かなかったね。
越:すごい長かったよね、その時期がね。もう何十年…
H:そうそう…(笑)
越:で、聴いてもラジオとか、あとはおそうじタイムとかそういう感じだから…
H:遠くで聴くとね…ヘッドフォンで聴くと違うんだよ。
越:毎年毎年…すごく変化してるんだよね。
H:すごい変化だよ。
越:1年前でもだいぶ違うって、すごい流行が…洋服みたい。
H:これがやっぱり、2010年代の変化ですよね。で、2020年代はどうなるのかね…
越:で、なんでも…どっちにでも行けるよね。ほんとに、いろんな方向が…
H:今、それぞれ…音楽作ってる人はみんな考えてると思うよ。音のこと。「音楽」というよりも。「音」を考えてるよね(笑)
越:いま、すごい拡がって…大きいじゃない?音が。
H:そう。音像がね。変わってきたんだよ。さっきのブライアン・フェリーのも、Monoに近いじゃない。でも、適度に空間があるじゃない。
越:そうなんだよね。
H:すごい興味があるよね。どうなってくんだろう、っていう。いま僕が作ってるのもね…
越:どうなってるの?
H:どうなってるんだろう?(笑)
O:(笑)
越:どこへ向かってるの?(笑)
H:わからないんだ、これが…(笑)わからない、テイラー・スウィフトに向かってないことは確かだけど。
O:(笑)
H:ジョー・ヘンリーもね、興味があるし。いやぁ、ブライアン・フェリーもよかったなぁ。モンキーズもよかったし。んー…どうしよう。どうすんの?じゃあ今後の話する?
越:今後はどうするの?来年はどうなる?(笑)
H:つい1カ月ぐらい前、「グローバル」「グローバル」って言ってた時期があったでしょ?(笑)
越:なにもかも…
H:世の中の音楽はぜんぶグローバル…画一化されてるじゃない。音もね。
越:もう、ネットがあるから、なんでもそうなってきてるよね。
H:で、ミハルちゃんもそれに目覚めたみたいで…
越:そう。
H:「グローバル・ファッションだ」って騒いでたね。
越:そう。もう、ファッションもグローバルにしようみたいな…(笑)
H:(笑)どういうのをグローバル・ファッションって言うわけ?
越:なんか、トーンが似てる。コーディネートのトーンが似てる。
H:それも音楽に近いんだね、じゃあ。
越:そう。
H:なるほど…いやぁ…ホンっトにすごい変化だなぁと思って。ドキドキしちゃうんだよ、実は。
越:うん。
H:ね。なんだろう、これは。
越:岡田くんは、新しいのは聴かない…?(笑)
H:いや、いま聴いてるのはぜんぶ新しいよ(笑)
越:あ、これはそっか…(笑)
O:新しいのばっかかけてますから…(笑)
H:(笑)
O:大阪で買ってきたのはぜんぶ10inchとか、古いのばっかですけど…
H:そこら辺のね、変化が訪れてるっていうことだよね。きっと。
O:まあおもしろいですよね、聴いてて。
H:えー…じゃあさ、なんか聴こうか。はい。
越:新しいの聴きますか?
H:あ。新しいの聴かせて。
越:フランスの人で…フレーロ・ドゥラヴェガ(Fréro Delavega)って言うのかな。"Ton Visage"っていう曲です。
Ton Visage - Fréro Delavega
H:軽くていいね。
越:うん、すごい軽いよね。
H:最近、軽いの多いね。こういう。
越:うん。軽いのがいっぱい出てきてますね。
H:なんか、聴きやすいよね。フランスも揺れ動いてるでしょ、今。ルノー関係のことでも。政権が揺らいでるしね。なんだろうね、この騒ぎは。
越:うん。
H:あの、スウェーデンっていう国はグローバル国家なんだよね。キャッシュレスで、マイクロチップを手に埋め込んだりしてる人がだんだん出てきて…(笑)なに買うにもキャッシュレスだよ。中国もそうだけどね。
越:うん。
H:日本人はそれできないでしょ。やってる人いるけど。都市伝説の人とか…(笑)
O:埋めてますね(笑)
H:壊れたらどうすんの?あれ。ほじくるの?(笑)
越:こわい。
H:なんだかね、そういうことが…で、スウェーデンは外資系が多くなっちゃって、フランスもそうだったんだけど、民族主義が蠢いてたりね。「自分たちの文化が無くなる」って。だから、グローバリズムの反対語にはいろんな言葉があるんだよね。ナショナリズムとか。ポピュリズムとか。いろいろあるけど。んー。なにが正解かわからない、僕には。うん。そんな時代ですよ、いま。動いてる。
越:うん。
H:そんな音楽かけてください。
越:(笑)
O:えー…(笑)
H:(笑)
O:じゃあ、もう1曲新しいので…The Milk Carton Kidsでですね。
H:はい。
O:"Nothing Is Real"っていう曲を。
H:へえ…知らないなぁ。
Nothing Is Real - The Milk Carton Kids
(from 『All The Things That I Did And All The Things That I Didn't Do』)
H:ジョー・ヘンリーですね、これ。プロデュース。
O:そうです。
H:拡がってるもん。
O:「拡がってるもん」(笑)
H:こういう音楽って…ジョー・ヘンリーのソロもそうだけど、ヘッドフォンで聴くのと遠くで聴くのとでぜんぜん違うでしょ。
O:ぜんぜん違いますよね。
H:遠くで聴くと普通…っていうか、特に特徴が無い。
O:ライヴとかも普通ですよね。
H:でもヘッドフォンで聴くとね、すげぇと思うんだよね。なんだろう、これ?
O:このアルバムはすごいよかったですよ。全体が。
H:なんかそういう…テクノロジーの変化っていうのはあるけど、最近のニュースですごい記事を見たんですけど。
O:なんですか。
H:どこの国の…フランスだったかな?物質を縮める技術が出来た。『ミクロの決死圏』みたいな。
O:えー。
H:それはSFじゃないんだよ。なんかね、吸着ジェルっていうのを使って構造を作って、そこに分子を埋め込むとその物質が出来て、そのままそれを凝縮すると小っちゃくなる。恐ろしい技術だよ、これ。
O:どうなっちゃうんだろう。
H:いろんなことに応用できるわけ。癌細胞だけを攻撃する非常に小っちゃなロボットを作ったりとか。ビックリだね。ちょっと前までは3Dプリンターでいろんなものが出来るってビックリしてたけど。
O:そうですね。ずいぶんなんか…かわいい話になっちゃいますね、3Dプリンターの話がね。
H:もう、恐ろしいわ…なにが起こるかわからないよ。そんなようなニュースとかね。ビックリしました。
こういう感じで年は過ぎていくんですね。はい。
越:(笑)
O:取って付けたような…(笑)
H:とにかくね、1/8が締切なの…きょうも、大晦日も、正月も、返上しますよ。
O:お。
H:ま、お雑煮は食べるけどね。
O:楽しみですねぇ。
H:おもちはだいすきだからね!
O:んー、早速いまここに海苔が…
H:海苔もらったんだよ、きょう。みんなに配ったの、海苔。名刺みたいな形じゃない。
O:名刺代わりにさっき、海苔を…(笑)
越:(笑)
H:わたくし、こういう者です、っていう。…そういうわけで、最後に1曲、ミハルちゃんお願いしますね。きょうは僕、パソコン壊れてなにも…
越:はい。
O:海苔みたいな曲を…
越:海苔みたいな…(笑)ウィントン・マルサリス(Wynton Marsalis)の演奏で…
H:めずらしい。
越:"Everything Happens To Me"です。
H:どんな音かな。では、それを聴きながらですね…みなさん、また来年もよろしくね。
O:よろしくお願いします。
H:よいお年を。
O・越:よいお年を。
Everything Happens To Me - Wynton Marsalis
2018.12.23 Inter FM「Daisy Holiday!」より
クリスマス回2018
H:こんばんはー。細野晴臣です。
?:こんばんは!
H:こんばんは。はい、みなさん…あれ?(笑)
??:こんばんは。
H:ギクシャクしてるな(笑)
?:ワサワサ…幸せなんで。いや、クリスマスなんで。
H:名前言った?
O:岡田です。
H:はい。
越:コシミハルです。
H:えー…24日になっちゃったからね。
O:ですねぇ。
越:うん。
H:毎回…毎年やってますよね、何らかの。クリスマスは。クリスマスって人気無いんだって?
O:らしいですね。ハロウィンにお株をとられたというか。
H:そうだよね。若者はクリスマスに興味ないのかな?
O:んー、らしいですね。
H:子どもの頃の記憶は…クリスマスはホント、楽しかったよ。
O:そうですね。
H:どうなんですか?なんかやるの?クリスマスって。みなさん。
O:あたしゃ特に…
H:無いよね。なんにも無いよね。ある?
越:ううん、特にはね。
H:無いよね。だから、音楽だけだね。クリスマスムードって。ほんっと音楽は好きなんだ。いま流れてるのはルロイ・アンダーソン(Leroy Anderson)の"Sleigh Ride"ですけど。こっちはね、雪も降んないしね。東京は。んー。
とはいえ…えー、じゃあ…クリスマスムードの音楽をかけていきましょうよ。
O:はい。
H:岡田くんどうぞ。
O:あ、じゃあ…"Santa Claus Is Coming To Town"を。
H:誰?
O:クリスマス・ジャグ・バンド(Christmas Jug Band)です。ダン・ヒックス(Dan Hicks)がやってたバンドですね。
Santa Claus Is Coming To Town - Christmas Jug Band
H:はい。えー…ダン・ヒックスの声をひさしぶりに聴きました。
O:楽しいですね。
H:うん。こういう人、いなくなっちゃったね。アメリカにもね。今の政権になってからあんまり…こういう人が出てこないね(笑)
O:(笑)
H:えーと…クリスマス、というよりもう師走だよね。
O:んー…ワサワサ…
H:ワサワサしてるんだぁ…もう僕は大変なんだ、実は。いま。
O:大詰めですかね。
H:死にそうなの。いろいろ。すごい年寄りだよ、僕。考えてみると(笑)
O:(笑)
H:なんでこんなに働いてるんだろ、っていうか。…さっきからおとなしいよ、そこの人。
越:あ、はい。
H:参加して、参加。
越:(笑)
H:ひきこもりでしょ?
越:うん、あんまり歩かないね。
H:でもなんか、いろいろパフォーマンス観て回ってるよね、ミハルちゃんね。
越:そうね、舞台観るの好き。
H:最近なにを観たんでしょう。
越:最近?あ、歌舞伎…一幕見って言うんでしたっけ?
H:あ、そういうの観に行ったの?
越:1回だけ。一幕だけ観るっていうのを初めて…初体験しちゃった。すっごい楽しかったんですけど。
H:ものはなんだろう?
H:あれ観たの?
越:観ました。
H:あの太鼓のやつ観た?
越:あ、太鼓のではないですけど…すっごい綺麗だった。
H:あの玉三郎さん…僕も観に行ったんですけど。小鼓…能で使う太鼓ね。太鼓っていうの、あれ?和太鼓。ズラーッと並んで、大勢で、ユニゾンでやるんだけど、アフリカンビートなのね。
O:へぇ…
H:あー、なんか…グッとくるんだよ(笑)ツボに入ってくるんだよね。もう、すごいなぁと思って。観れてよかったなぁ、と。ああいうのはなかなか観れないね。
越:うん。
歌舞伎座百三十年 秀山祭九月大歌舞伎 【夜の部】 新作歌舞伎「幽玄」(東京都中央区) – 太鼓芸能集団 鼓童
H:歌舞伎座でやってるぐらいしかないのかな。楽しいね。一幕物って…もう1回言って?いちみもの?なんて言ったの?
越:「一幕見(ひとまくみ)」って言うんじゃないかな?一つの演目だけ観れる。だから、当日並ぶんですよ。すごい寒い中1時間ぐらい並んで…
H:へえ。短いのね?
越:短いです。いちばん最後のだけ観てました。
H:そうか。僕が行った時のは3,4時間かかったんだよね。全部観て(笑)
越:(笑)
H:途中でね、お弁当買って、客席で食べるんだよね。
越:そのチケットだといちばん上の席なの。4階?3階だったか、4階だったか。
H:ずいぶん上だね。
越:それがおもしろい。
O:俯瞰して観る感じですか?
越:うん。なんかね、幕の内弁当みたいな気分になる(笑)すごい綺麗だから、全体が。
H:そうだろうね。まあ、日本のオペラだからね。
越:うん。それを双眼鏡でね、ちょっとこう、覗き窓のように…
H:いいね。やみつきになるね、歌舞伎。
越:うん。楽しい。
H:でも洋モノも観てますよね。洋モノっていうんですかね。
越:そうね。マシュ-・ボーン(Matthew Bourne)のシンデレラ。観に行きましたね。
H:マシュー・ボーンね。有名な人だ。
越:それは良かったですよ。それはそれでまた、違う…時代設定が。戦争中、1940年代の。
マシュー・ボーンの「シンデレラ」 | ラインナップ | 東急シアターオーブ|TOKYU THEATRE Orb
H:岡田くんはどうですかね。
O:ぜんぜん行ってないですね。
H:ね。んー。
O:(笑)もう、レコード、レコードで。
H:レコードの人だよね。
O:大阪にレコードを買いには行きましたけどね。レコードフェアがあったんで。
H:ああ、そう。アナログ盤ってことだよね。
O:そうです。
H:もう、止まんないね。
O:いやいや(笑)売りに行きながら、買うって感じですね。出店もしながら。
H:すごい。商人だね。んー。
O:いやいや…(笑)
H:最近手に入ったのはなんだろうね。
O:なんでしょうね?
H:まあ、いっぱいあるからわかんないでしょうね。
O:はい、いろいろ買ってます(笑)
H:さあ、ミハルちゃんなんかかけてください。
越:あ、はい。じゃあ、えっと…コニー・スティーヴンス(Connie Stevens)で、"It's A Lovely Day Today"というの。
H:コニー・スティーヴンスか…
越:はい。
It's A Lovely Day Today - Connie Stevens
H:いいですね。
O:かわいい。
H:かわいいね。コニー・スティーヴンス。声もなんかかわいいんだよね
越:ね。独特のかわいい…ほんとかわいいね。キュートで。
H:アイドルだよね。
越:ねー。
H:えー…そういうね、クリスマス、ハッピー・ソングみたいのはいっぱいあるけど、"Baby, It's Cold Outside"っていう曲。最近、このクリスマスシーズンにアメリカで話題になってましたね。
O:放送…放送禁止なんですか?自粛?
H:禁止とまではいかないんだけど。なんかそういうクレーム付けたやつがいるんだろうね。女の人だよ。
O:信じらんないですね…
H:なんでかって言うと、口説き文句で出来てる歌だから、セクハラだ!みたいなことになって…(笑)
O:(笑)
H:それに怯えて、放送を自粛してたりなんだりしてたらしいけど。ただ日本はあんまりそういうこと関係無いから、そんなアホらしい話はないだろう、っていうんで、じゃんじゃんかけてあげたい(笑)ただ名曲だからね。そんな曲いっぱいあるじゃない、世の中。
O:ねえ…
H:昔っからそういう音楽…なんだか…そんなこと言ったらキリがないよね。ぜんぶかけちゃいけない、っていうことだよ。
O:アホらしい…(笑)
H:なんか、『華氏451(Fahrenheit 451)』みたい。「本を読んではいけない」みたいなね(笑)そんな時代に…ならないようにしないといけないっていうんで、じゃあここでもかけようかな。ジョニー・マーサーとマーガレット・ホワイティング(Johnny Mercer & Margaret Whiting)で、"Baby, It's Cold Outside"。
Baby, It's Cold Outside - Johnny Mercer & Margaret Whiting
H:なにを歌ってるんだか、だいたいはわかるけど…まあ、外に…外は寒いから行くなよ、みたいなね。部屋で仲良くしようよ、みたいなことなんだろうけど(笑)
O:(笑)
H:もう1個ヘンなニュースがあって。西洋…どこか、アメリカかヨーロッパかわかんないけど、学者がね、「クリスマス音楽はメンタルによくない」なんてね(笑)発表したり。
O:なんでだろう…
H:わからない(笑)ひねくれてるよな、歪んでる。素直じゃない、っていうかね。たしかにクリスマスで悩んでる人、若い人ではけっこういるわけだからね。無きゃ無いでいいや、っていうのはわかるけどね。んー。まあ、せいぜい音楽は楽しんでほしいな、って思いますね。
O:そうですね。
H:はー、疲れた。
O・越:(笑)
H:師走。なんかしゃべって、みんなで。
O:シーン…
H:ダメだな(笑)ホンっトにしゃべんないね。
越:………。
H:あれ?(笑)
O・越:(笑)
H:ラジオなんだよ、これ。しゃべんないと。
越:夜景とか観に行かないの?クリスマスどこも綺麗だよね。
H:あー、イルミネーションのところには人が集まるじゃない。
越:ね。この前、横浜の元町の山の上のほうに行ってみたんですけど。
H:港の見える丘公園っていうとこ?
越:ん?だったのかな。すごい綺麗だった。
H:いたるところイルミネーションでね。んー。祐天寺の、昭和通りだっけ?あそこもイルミネーションすごいよね。
越:レトロな(笑)
H:なんていうの、無いほうがいい(笑)あるとさびしくなるイルミネーションっていうのがあるんだよ。
O:(笑)
H:でも、それがまたいいんだよな、実は。
越:ちょっと映画のセットみたいですよね。
H:なんかこう、哀愁ただようっていうか、ノスタルジックになるんだよね。
O:昔ながらの、なんですか?赤と緑の。
H:そんなんじゃないの。なんかね…
越:ちょっと演出されてる…(笑)
H:なんか、ショボショボショボって光ってんだけどね(笑)誰も歩いてないんだよ、そこの通りを。
O:(笑)
H:昭和通りっていうんだよな。んー。あそこはでも、いいよ。ロケしたいな、と思って。
越:(笑)
H:最近は、キンキラキンの青白い光…
O:多いですね。
H:多いでしょ。でもそれよりもやっぱり、暖色系のほうに人が集まってるのがわかるな。
O:寒いですもん、やっぱり。青白い光。
H:寒いよね。
O:ぜんぜんクリスマスっぽくないし。
H:そうそうそう。寒いわりにあれ、白いLEDって…青白いやつね。すごいエネルギー強いんだよね。だから、影響力あるんだよね。眼に。それを発明したのは日本の技術者たちだけど。
えー、なにが大変かって言うと、締め切りがね、来年の1/8だったかな。僕、いまアルバム作ってまして。ずいぶん伸びちゃって…それでもまだ出来てないっていう。こんな難しい仕事は初めてかな。
O・越:(笑)
H:ホンっトに難しいことやりだしちゃって、もう後悔してて。まあ、もうすぐ…たぶん終わると思いますけど。毎日スタジオ入って。昨日もスタジオのソファで寝たんですよ。
O:あら…
H:で、朝7時ぐらいに…出るとね、もう(道路が)ラッシュだったりするんだよね。それが嫌でね。もうぜんぶダメ。ダメっつっちゃあいけないけど、パソコン壊れたの。
O:言ってましたね(笑)
H:なんにも取り出せなくなっちゃって。ログイン画面でパスワードを入力できなくなっちゃった。ウンともスンとも。
O:キーボードもぜんぜん、反応しないんですか?
H:マウスはね、動くんだけど。入力の四角いボックスに入れても反応しないわけ。で、いろんなことやったの。専門的な。セーフブート(SafeBoot)。知ってる?
越:なに?
O:わかんないです。
H:Shift押すんだけどね、起動するとき。あとPRAMのクリアっていうね。
O:あー。PとRを押しながらっていうやつ…
H:昔よくやってたよね。OS 9の頃。そんなことやってもダメで。
O:もう、なんだかわかんないですもんね、壊れると。
H:パソコンはやっぱりね、信頼できないわ。こうなってくると。ハードディスクもね。あるメーカーが衰退してて、壊れるんだよね。かつて有名だった…
O:有名なところが…
H:半導体の老舗がね。ダメになっちゃって。そうすっと壊れちゃうんだよ。壊れちゃった、って言ったら、その言った人(相手)もそのメーカーの壊れたって言ってたから(笑)ホンっトにねぇ、災難。壊れると。ついバックアップ取ってないから…
O:バックアップに次ぐバックアップを…
越:(笑)
H:もうみんなノイローゼだね。どうなっちゃうんだろう、この…この時代のデータ、みんな無くなっちゃうよね。蒸発しちゃうよ。
O:んー…
H:そんなことできょうはこれで…もうおしまいかな。
O・越:(笑)
H:んなことはないか(笑)だんだん暗くなってきちゃって…(笑)盛り下がりつつ終わるクリスマスっていうのもいいなぁ。昭和通りみたいな。しゃべって。
越:曲…
O:あの…"Snowfall"をかけようと思うんですけど。
H:おお。誰ヴァージョンかな。
O:モンキーズ(The Monkees)。
H:ええ!
O:新譜が出まして…(笑)
H:新譜。
H:それは…新録音で?今の?
O:新録音です。
H:メンバーは誰だかわかんないけど…
O:メンバー…デイビー・ジョーンズ(Davy Jones)だけ亡くなってて、他は…
H:マイク・ネスミス(Mike Nesmith)っていう人がいたね。
O:マイク・ネスミスが歌ってるんですね、"Snowfall"。息子さんのジョナサン・ネスミス(Jonathan Nesmith)といっしょに。
H:あ、そう。ちょっと聴きたいな。
Snowfall - The Monkees
(from 『Christmas Party』)
H:すんごい拡がってるね、左右に。最近の録音のね、特徴。
越:んー。
H:もう…拡がり過ぎぐらい拡がってる(笑)
O:けっこう、よかったですね。
H:いいね。マイク・ネスミスってそういう音楽が好きなんだね、きっと。"Beyond the Blue Horizon"もやってるしね、昔。んー、買おうかな。モンキーズか。すごいね。
O:(笑)
H:はい。じゃあ、まあ、こんな感じで。
O:はい。
H:もう、次は来年だよ…あ、じゃないや。
O:年末が。
越:年末がありますね。
H:次は年末ね、30日。
O:はい。
H:大きな師走ですね。師走。大晦日の前だから、晦日ね。んー。
越:はい。じゃあ次は…ナット・キング・コール(Nat King Cole)の…
H:声ちっちゃい。
越:ナット・キング・コールの"Deed I Do"。
H:"Deed I Do"?
越:うん。
H:ほう…クリスマス関係ない(笑)
O:(笑)
H:じゃあ、これで…"Deed I Do"を聴きながら、また来週。
Deed I Do - Nat King Cole
2018.12.16 Inter FM「Daisy Holiday!」より
Joe Henry特集回。
(以下、すべてH:)
こんばんは。細野晴臣です。えー、久しぶりにひとりで…やりますけど。きょうはもう12月16日で、押し迫ってきますね。僕はですね、まだ制作…後半なんですよね。なにを制作してるかって言うと、1973年にリリースした処女アルバム…処女じゃねぇか、童貞アルバムか(笑)『HOSONO HOUSE』ですね。それのリメイクをずっと、何ヶ月もやってます。年内には上がるという…目標なんですけどね。で、きょうはですね、それにまつわる話をしながら、進めたいと思います。
そうですね…ジョー・ヘンリー(Joe Henry)というプロデューサー、シンガーソングライターがいますが、彼の音をかけながらですね、話をしてこうと思います。まずはランブリン・ジャック・エリオット(Ramblin' Jack Elliott)の『A Stranger Here』というアルバムから"Rising High Water Blues"。
Rising High Water Blues - Ramblin' Jack Elliott
ランブリン・ジャック・エリオット、いままだ健在ですけど、1931年生まれで。このアルバム出したのが2009年で、77歳だったかな…76歳でしたね。健在です。ジャック・エリオットは1950年代からやってますので、ボブ・ディラン(Bob Dylan)以前のフォークシンガーとして有名だった人なんですけどね。フォークブルースもやってて、この『A Stranger Here』というアルバムは1940年代の、不況の時代のブルースを集めた音楽なんですよね。で、プロデューサーがジョー・ヘンリーという男。彼がデザインする音がすばらしいんで、当時出た時にビックリしました。なんだろう、奥行き、というかね。一緒に組んでるエンジニアの人がまた、すごい良いんだろうけど。これはすごく…そういう意味では刺激があるアルバムだったんですよね。歌ってるのはおじいちゃんなんですけどね(笑)
ジョー・ヘンリーの音楽がこの後…またしてもおじいちゃんが歌ってるアルバムを出したんで、それが輪をかけてまたよかったんですよ。まずはそれを聴いちゃいますかね。モーズ・アリソン(Mose Allison)という人が…惜しくも2年前に亡くなりましたけど、80代でアルバムを作って、それがすばらしかったという。『The Way Of The World』というアルバムから、"Some Right, Some Wrong"という曲です。
Some Right, Some Wrong - Mose Allison
(from 『The Way Of The World』)
モーズ・アリソンは1927年生まれですよね。だいぶ、高齢です。そのころにレコーディングした音なんですけど、プロダクションが良かった所為かね、これもすごく、影響されたアルバムです。で、数年前にモーズ・アリソンは日本に来て、Blue Noteで演ったのを観に行きましたけど、いやぁ、なんか達者ですよね。前のめりのピアノで。歌うんです。まあ、ジャズのシンガーソングライターのはしりですよね。トリオでやってたんですけど、走っていく前のめりのピアノにドラムスとベースが合わせていくっていう、絶妙なコンビネーションがすごくおもしろかったんですよね。まあ、惜しくも亡くなっちゃいましたけど。
で、言いたいことはですね、そのサウンド・プロデュースなんですよね。ちょうど僕、この頃はバンドでブギウギやったり、レコーディングしてましたので、かなり影響されたりしてましたけど。
思えばはっぴいえんどの頃から、もうそういう問題はつきまとってて。日本で作ったアルバムはわりとみんな気に入ってたんですよね。『風街ろまん』、自信作だったんですけど。その後アメリカに行ってロサンゼルスでレコーディングして、ヴァン・ダイク・パークス(Van Dyke Parks)と関わったりして。音の作り方を学んだんですよね。あ、今までとちょっと違うな、と。日本で作ってる時はあんまり考えなかった。横に並べてたんですよね、ステレオだったし。マルチレコーディングで。いま思えば、それが日本の伝統的な…巻物の絵みたいだったんですよね(笑)絵巻物っていうの?鳥獣戯画みたいな。横に並べていくっていう。まあ、それも斬新ですよね。浮世絵なんかもうそうですけど、全部が均等に描かれている。遠いものも近くに描いてあるし。っていうのはね、遠近法が西洋とはちょっと違うわけです。そもそも遠近法っていうのが無かったんで。逆に、西洋の絵も音もね、奥行きがあるんですよね。そこら辺が違うな、と。ロサンゼルスでヴァン・ダイク・パークスに教えられたようなもんですね。レイヤー感覚っていうんですか。積み重ねて、「奥」があるという。それの延長線上でずっと…欧米の音楽には脱帽してきた音楽人生でしたけど。ここに立ってまたね、そういうことが起こってるわけで。いっつもそうです。
いまやってる『HOSONO HOUSE』のリメイクっていうのは…1973年で、23,24歳の頃作ったアルバムなんで、デビューアルバムですよね。で、歌をあんまり…歌いたくない時期に録ったものだったし(笑)いま思えば、がんばって、背伸びして作ってたんですよね。それを今やるとどうなるんだろう、と。
ということで取りかかってみたものの…やり始めたら、実はひとりで作ってるので、なんだろう、壁にぶち当たったんですよね。やり始めたのを後悔しちゃって。やるんじゃなかった、なんて思いながらも。いろんなことを見直して。ああ、音の違いってのが如実にあるな、と。2010年代。これから2020年までの10年間に起こってることっていうのは、やっぱり聞きにくいっていうか、見えにくいっていうのかな。音像の世界が変わってきてるっていう。いちばん手っ取り早く言うと、音圧が無くなっちゃったと。その代わりにですね、「ヴァーチャルな音圧」が出てきてる、と。それは脳内で感じる音圧で、身体じゃないんですよね。昔から音圧っていうのは…例えば、ベースとキックドラムとか、ドンッっていう音が身体に響いたり。スピーカーで言えばコーンが揺れたり。非常にフィジカルな音だったんですよね。それを聴いて身体に影響があったり。それがいま無いんで、脳内に響いてるんですよね。ヘッドフォンで聴くとそれがよくわかるわけで。そもそもは映画から始まってるんじゃないかな、と思ってたんですけど。
で、そういうところでこないだ…ついこないだですけど、NASAが火星の風の音を発表したんで、それを聴いたんですよね。そうすると、天然自然の音なんですよ。なんて言うんだろう、スピーカーが再生しきれないような、不思議な音なんですけど。…これ今鳴ってるんですけど聞こえないね(笑)で、これを変換した音がこれですね。2オクターヴ上げた音がこれですね。で…これがまた変換して、ピッチを上げた音です。こうするとね、よく…この世でも聴ける音になるわけですけど。まあ、そう思うとですね、地球上の音も…風の音とか雷の音とか、ぜんぶ音圧があるわけですよね。フィジカルな音で。音で身体が動いたりしちゃうわけですよ。
それが今の音楽は(フィジカルな)音圧が減少してるんですよね。音圧の時代が終わった、っていう意見もあるみたいですけど。で、代わりに出てきてるのが脳内の、ヴァーチャルな音。これがね、今を席巻してるわけですよ、世間を。だんだん一般化してると思うんですけど。映画なんか観ると、だいたいそういう音になってますね。ある種のアルゴリズムが開発されて、完成して、洗練されてきてるっていう。
僕はそういうのを10年、20年放っぽらかして、生演奏に勤しんできたんで、ちょっとあわてたんです。で、ひとりで作るとそういうことに没頭するわけですよね。それでシステムを変えたりして。いろんなことを変えてるうちに時間が無くなったりして、困ってるわけですけど(笑)
そんな中で…今の流行りの音楽はだいたいそんなことなんで聴いてみてください。ヘッドフォンで聴くとよくわかるんですけど。ビックリするような音がいっぱいあるんですけど。それとはちょっと違うアプローチをしてるのがいままで聴いてきたジョー・ヘンリーのプロデュースなんですね。これは…まだ僕にもわからないことがいっぱいあるんですね。えー…まあ、ちょっとまた聴いてみましょうか。じゃあ、ボニー・レイット(Bonnie Raitt)の"Take My Love With You"という曲を。
Take My Love With You - Bonnie Raitt
(from 『Slipstream』)
ジョー・ヘンリーがプロデュースしたボニー・レイットのアルバムから"Take My Love With You"という曲でしたけど。ボニー・レイットなんていうとわりとメジャーなシンガーなんで、ジョー・ヘンリーもそこら辺を気遣ったんじゃないかな、と。聴きやすいですね。
さっきかけたジャック・エリオット、モーズ・アリソンはかなり音的な冒険っていうのをしてるんですよね。これはね、なかなか…真似が出来ないような音なんですよ、実は。っていうのは、使っているインターフェースは自分と同じものが多かったりするんですけど、そこに投入するアウトボード…いろんな古い機材いっぱいもってるんですね、エンジニアの人が。その数たるやすごいんで、とても集めることはできないですね、そういうものは。高価なものばっかりなんでしょうけど。そこら辺が真似できない。もう一つは、録ってるスタジオの音がすばらしいですね。これは日本ではなかなか…んー、見当たらない音なんですよ。スタジオ用に作った音、というよりも…家の響きというのかな。部屋の響き。それがすばらしい。ドラムの音も、(叩くときに)力を入れなくても録れるっていう。デッドなスタジオっていうのが日本には多いんですよね。デッドっていうのはつまり、音が壁にぜんぶ吸い込まれて…つまり音が回りこまないんで録りやすいんでしょうけど。そうすると、力いっぱい叩かないと音が響かないんですよね。しかもマイクを近づけるんで。スネアドラムとか、かなり近づけて録るんで、まるでラインで録ってるようなもんですよね。だから宅録に近いっていうかな。ところがこういう…ジョー・ヘンリーが録ってるのは、部屋鳴りをぜんぶ録ってるんですね。そこら辺の真似が出来ないっていう、感じでしょうか。まあ、目標ではあるんですけど。憧れるんですね、僕なんかは。
で、数年前にジョー・ヘンリーは自分のソロで歌うために(日本に)来たんです。フェスの一環なんでいろんな人が出たんですけど。ジョー・ヘンリーが出てきて、パーカッションと、ご本人は生ギターと歌で演ったんですけど…なんかこう、とても地味だったんですよね(笑)やっぱりレコードとは音が違うわけですね。ところがソロ(音源)を聴いてみると、これがすごいんですね。ヘッドフォンでやっぱり聴くんですけど。で、ラジオで聴くとどうなるかわからないんですけど。ソロは曲が良いとか悪いじゃなくて、音がすごいんで…どれでもいいかな(笑)えー、時間が経っちゃったんで最後の曲になりそうですね。またジョー・ヘンリー特集はしたいと思います。ソロのアルバム『Civilians』からそのタイトル曲、"Civilians"。
Civilians - Joe Henry
(from 『Civilians』)
PLANKTON プランクトン|ウォッチング・ザ・スカイ '10
2018.12.09 Inter FM「Daisy Holiday!」より
78rpm再生環境整備を検討…
H:こんばんは。細野晴臣です。えー、きょうは久しぶりにまた、岡田くん(岡田崇)を呼んでます。
O:こんばんは。
H:よろしく。えー…きょうは僕、眠いんですよ。
O:僕もです。
H:あ、そうなの?(笑)
O:寝ちゃいますか。
H:寝ちゃおうか(笑)そういう番組があるよね、テレビで。
O:ありますね(笑)NHKで。
H:あれ、寝ちゃったことあるよ、1回ね(笑)ラジオでああいうことやると…いいんだろうけど、しゃべんなくなっちゃうからね(笑)
O:(笑)
H:えーと…12月ですよ。困っちゃったんですよね、僕はね。
O:あら…
H:なんかもうね…制作してるんですけど、遅々として進まないというね。システムを入れ替えてるんで、入れ替えながら制作するって初めてなんで。
O:なかなか無いですよね。
H:無いよ(笑)どっちか普通…制作してから、やればいいのに。でもね、間に合わない…っていうか、気持ちがいま急いてるわけ。だって音が違うからね。30年前の使ってるから、僕。ヴィンテージっていうかね…
O:Macも新しくなると変わっちゃいますもんね。インターフェースが。
H:変わっちゃいますよ。ぜんぜん変わっちゃって。
O:もう、ぜんぶThunderboltにするのはやめて欲しいんですけど…(笑)
H:で、Thunderboltって出来たばっかりだから、まだ商品が少ないんだよ。長いケーブルが無いの。2mだけ、とかね。…専門的な話ですみません(笑)
O:なんか問題があるんですかね?2m以上だと。
H:いやー、わからないね…僕はさっぱりわからないことばっかりだよ(笑)
えー、とりあえず音楽聴きましょうかね。岡田くんの持ってきた…あれ?僕のが入ってるね。
O:ちょうど今度の水曜日に『銀河鉄道の夜・特別版』というのが…
H:あ、そうですね。そうです、そうです。鈴木惣一朗編集のね。
O:はい。
H:その中で…聴いちゃいますかね。
O:2枚組に今回なってるんで、その中の1曲目というか…これ、CMで使われたものですけど。
H:憶えが無い…(笑)
O:篠原勝之さん…でしたっけ。
H:あー、「ゲージツ家」ね。
O:「ゲージツ家」の…が、出てる某CMで。
H:銀河鉄道の夜のモチーフを使ってるっていうやつで。
O:そうですね。
H:なるほど。いいね、ステレオ感が。なんか…いい音なんだね(笑)へぇ、懐かしいや。もう1980年代ですよね。
O:そうですね、1985年ですね。
H:うんうん。まぁ、やってるといろいろ…いろんなことがあって…岡田くんはどうなの?変化はあるの?
O:変化…何をですか?
H:最近。
O:最近ですか(笑)最近、なんだろう…
H:他人の変化にいま、すごい興味があるの。
O:そうですか。んーと…
H:変わってなさそうだね。
O:変わってないかなぁ…
H:いいんだよ、変わってなくて(笑)
O:(笑)
H:だって、さっき話したパソコン関係の…もう、すごい変わってきてるでしょ?
O:うん。
H:そういえば最近iPad Proっていうのが出て、あれほら、ペンシルで直接…
O:タッチできて…
H:絵、描けるじゃない。あれはいいんじゃないかな、クリエイターには。どうですか?
O:ペンタブとか使ってますけどね。
H:そういうのやってるの?
O:はい。
H:あ、やってるんだ。じゃあ買わなきゃね。
O:(笑)
H:だって、本体要らないんだよね。Macの。独立してるの。
O:まあ、そうですよね。
H:そういう視点では…ルネッサンスだ!って騒いでる感じもあるけどね。…どうですかね、あんまり興味ないの?(笑)
O:(笑)ほんっとに、周辺機器を揃えるのが大変なんで、なるべくアップデートしないようにしたいですね。
H:みんなそうだよね。僕もそうだったのよ。で、30年ぐらい…(笑)
O:(笑)
H:けっこうそういう人は多いんだけど。この時期になって、やっぱりね…変えざるを得ない。
O:んー…でも、グラフィックのソフトとかでも、フォントとかも、ぜんぶ…いま、年会費みたいな感じの、クラウドみたいなシステムになっちゃってるんで…
H:あ、そうなんだよね。
O:もう、必然的に最新のシステムにしていったりとか。
H:自動的にアップデートされる。
O:されていきますよ。前は、古いソフト使いたいんでシステムを変えないでいたんですけど。いまはわりと…どんどん新しくなってってますけど…不便になっていくばかりで…iTunesとかね(笑)
H:なんか…そうだね、いろんな事が出来る代わりにね。
O:うーん、なんか使い勝手がどんどん…悪くなってってて。
H:昔はほら、シンプルだった。
O:あと、システムいじれて楽しかったですね。
H:そうそうそう。OS 9のころ。楽しかった(笑)
O:ねー。
H:その前にDOS/Vっていう時代が…これはAppleじゃない、IBMとかね。日立とか、NECとか。そういうの使ってたよね。
O:僕はさすがに、Appleからです。
H:あれ?若い…若いと言いたいね(笑)
O:(笑)大学の時にバイトに行ったデザイン事務所がちょっとPC使ってましたけど…
H:そうか。それも楽しかったよ。手づくり感があって。
O:ふんふん。
H:数値入力して画面を動かす、とかね。パソコンの基本だよね。単純で。で、それの延長に音楽で…そういうソフトっていうか、パソコンが出て来たんですよ。それでYMOが始まったっていう。それも数字で入力するんだからね。
O:そうですね。
H:ド…ドの音ね。C。これは「36」っていう数値。で、12足していくとオクターヴずつ上がってく、というね。あとは音の長さ。強さね、ヴェロシティ。わりと簡単に…楽しく出来たんですけどね。
O:それで出来ることと、いまのシステムだと出来ないことってありますよね、やっぱり。数値ならではの、っていうか。
H:あのね、テクノに向いてたの。
O:ですよね(笑)
H:パッキンパッキンにジャストなのね(笑)だから、MacでPerformerっていうの(DAWソフト)が出てきてね…すごくユルく感じたんだよね、最初。今では当たり前なんだけど…人間的っていうの?DOS/Vは人間的じゃなかったんだよ(笑)おもしろかったよ。
O:数字の世界ですもんね。
H:まあそんな話をしつつ。かける音楽は…昔の音楽を、聴きたいですよね。なんか推薦。
O:きょうは…とりとめのない感じで持ってきましたが…
H:まあ…
O:いつもそうなんですけど(笑)
H:(笑)
O:じゃあ、Larry Wagner & His Rhythmasters。
H:知らないですね。
O:これは先週届いたSP盤なんですけど。
H:すごいね。相変わらずだね。
O:"Autopsy On Schubert"という曲を。
H:「シューベルトの解剖」ってこと?
O:そういう意味なんですかね。
H:そうそう。うん。
Autopsy On Schubert - Larry Wagner & His Rhythmasters
H:いいね…音が良いね。なんだろう。
O:1938年ですよ、これ。
H:そんな古いんだ。モダンだな、んー。
O:カサ・ロマ・オーケストラ(Glen Gray & The Casa Loma Orchestra)とかのアレンジをやってた人みたいですね、ラリー・ワグナーさん。
H:ピアニストかな?
O:ピアノはまた別の人がクレジットに書いてあって…ヴィヴラフォンはエイドリアン・ロリーニ(Adrian Rollini)がやってて。ベースはルー・シュービ(Louis Shoobe)っていう、レイモンド・スコット・クインテット(Raymond Scott Quintette)の人が…
H:あ、そうなのか。ベテランばっかりだね。んー。なんだか、こう…音のバランスが良いなぁ、やっぱり。最近ね、音を聴いちゃうんだよ(笑)
O:(笑)
H:どんな音楽でもいいんだよ(笑)
O:ジャンル問わず?
H:ジャンル問わず聴いちゃう癖がついてて…こんなことは初めてなんだよね。みんな良い音だな、と思っちゃうんだよね。いちばんダメなのは自分だ、って思っちゃう。
O:いやいや…(笑)
H:そういう時が時々あるのね。んー。まあ、それで向上心が出てくるっていうか。
O:んー。
H:最近また、あの…「銀河鉄道」もそうですけど。前のが再発されたり…
O:はいはい。アメリカで…出てますね、いっぱい。
H:そうですね。Light in the Atticっていうレーベルからほぼ…大体は出てますよね。
O:…大体ではないですけど(笑)
H:違うか(笑)
O:『Omni Sight Seeing』と、『HOSONO HOUSE』。『Cochin Moon』。
H:『Philharmony』もあったかな。そこら辺か。ああ、あと『はらいそ』も出たな。CDとアナログ盤も出てて。あのレーベル…ロサンゼルスかな、サンフランシスコかな…
O:L.A.じゃないですか?
H:L.A.か。なかなか、きちんとした仕事をしてくれる…
O:そうですね、丁寧ですね。
H:すごく評判のいいレーベルですね。
O:なんか、音楽愛がちゃんとあって…
H:あるねぇ。なんかこう…日本人みたい、っていうかね(笑)
O:まあ、日本人の方がいらっしゃいますしね、レーベルに。
H:音楽好きの人がけっこう、また最近…活動しはじめててうれしいですけどね。ヨーロッパにもいるしね。
O:そうですね。
H:それで…「銀河鉄道」でしょ。それからYellow Magic Orchestraも『NEUE TANZ』が出て。テイくん(テイ・トウワ)と、まりん(砂原良徳)の。それと、幸宏(高橋幸宏)の「サラヴァ」(『Saravah Saravah!』)もすばらしかったですよ。
O:歌を歌い直して…
H:歌い直して、オケは当時の…でミックスして、と。音が良いんだよね。
O:マルチ(テープ)が残ってたんですね。
H:残ってた。うらやましいね。それがあったらやっちゃうだろうね。その中から1曲、聴いていいかな。記念に。
O:はい。ぜし。
H:あのね、ベースを僕、全曲弾いてるんですけど…いいんだよね(笑)
O:(笑)
H:こんな弾けるんだ、なんて思って(笑)最初、誰が弾いてるんだろう、と思って…自分だったんだよね。じゃあ、高橋幸宏の…リニューアル、っていうか、「サラヴァ」から"LA ROSA"。ベース聴いて。
LA ROSA - 高橋ユキヒロ
H:どうですかね。
O:いいですね。
H:ベース聴いてくれた?
O:聴いてましたよ、ベースばっかり!
H:ベースばっかりっていうわけにはいかないよ(笑)
O:(笑)
H:これね、1978年に作ったアルバムですよ、『Saravah!』。幸宏も若いし。ちょっと僕は上だったけど…僕も30歳前後でしょ?
O:31歳ですか。
H:31か。んー。
O:『はらいそ』と同じ年ですね。
H:あ、そうか。なんかチャック・レイニー(Chuck Rainey)みたいに弾いてるな、とかね。この頃いちばん上手かったのかな(笑)やっぱり技術っていうのは歳と共に変わって行くからね。枯れてくから(笑)
O:すごい…解像度が上がって。
H:そう。当時ね、こんなにベース聞こえなかったよ。よかったぁ…
O:当時聴いてた印象と違いますよね。
H:違うよね。昔、ぜんぜん出してくれなかったの、ベース(笑)やっと聞こえるようになってきた。よかった、やり直してくれて。
はい。えー、そんなことで…自分のことはいいんですけど。…ここになんか、"One Meatball"っていう曲が。岡田くんのリストに入ってるね。
O:あー、入ってますね。
H:これは?
O:これはなぜかと言うと、ラニー・シンクレア(Ranny Sinclair)というですね、女性歌手がいて。最近、長門芳郎さんがPIED PIPER DAYSというシリーズでコンピレーションを出して。それのジャケットを僕やったんですけど。
H:そうですか。
O:ガールもののコンピなんですけど。その中にラニー・シンクレアの曲が入っていたので、それを選曲してきたのと…そのラニー・シンクレアのお父さんが作曲者なんですね。"One Meatball"の。
H:あ、そうなんだ。で、いろんなひとが歌ってるんだね。
O:アンドリュズー・シスターズ(The Andrews Sisters)がオリジナルだと思いますね。
H:あ、ホント。ちゃんと僕、把握してない。どんな曲だろ。あれ、ライ・クーダー(Ry Cooder)もやってるの?
O:ライ・クーダーはカヴァー…1stアルバムでやってますね。
H:あ、そう!ちょっとそれ…どっち聴いたらいいかな。
O:ライ・クーダー聴いてみますか。
H:聴いてみましょうか。
One Meatball - Ry Cooder
(from 『Ry Cooder』)
H:そうか、これぜんぜん記憶がなかったな。1枚目か。
O:1枚目ですね。ヴァン・ダイク(Van Dyke Parks)がアレンジを担当してる…
H:ああ、そうか。そういえば…トニー・ジョー・ホワイト(Tony Joe White)がいつのまにか…いなくなっちゃったんですよ。
O:いなくなっちゃった?あっ…
H:そうなんだよ。あ、知らない?よね。
O:知らなかったです。
H:ニュースになんないんだよね。いなくなっちゃったっていうのはちょっと遠回しすぎるけど…(笑)亡くなっちゃったんですよ。
O:ええ…
H:僕も知らなかった。最近知ったんですよ。いつだったか、ちょっと憶えてないんですけど。そうかぁ、と思って。体格いいし、すごく丈夫そうな人だったからね。ポークサラダ("Polk Salad Annie")…ね。
…じゃあ、寝ますか(笑)
O:寝ますか(笑)
H:番組終わったら寝ちゃう人がいっぱいいますからね。聴きながら寝ちゃう人もいるし。最後まで聴いたことが無い、っていう人も、こないだいたな(笑)。
O:(笑)
H:寝ちゃうんだよ(笑)えー…じゃあ最後は、目の覚めるような曲、1曲かけますかね。
O:お願いします。
H:いやいやいや!岡田くん、お願いしますよ(笑)
O:じゃあ、"And So To Sleep Again"。パティ・ペイジ(Patti Page)で。
H:どういうこと、これ?眠いの?
O:眠いんじゃないですか?(笑)
H:ダメだなこれは(笑)では、また来週~
And So To Sleep Again - Patti Page
2018.12.02 Inter FM「Daisy Holiday!」より
全方位から情報量が多すぎてうれしい悲鳴…
H:細野晴臣です。えーとですね…先週はもう、時間が来ちゃったんで続きをやりたいと思いますが…ゲストのテイ・トウワ、そしてまりん(砂原良徳)両氏を迎えて…じゃあ、幸宏(高橋幸宏)の曲の終わりから、どうぞ。
SUNSET - 高橋ユキヒロ
テイ:これこそ今の…アレじゃないですか?「クワイエット・ストーム」じゃないですか?
H:そうだね。横に広がってるね(笑)
砂原:横に拡げました。
H:拡げたんだね。まりんの所為だ(笑)
砂原:なんか、幸宏さんと…ちょうどBEATNIKSのツアーの時にそのこと話してて。幸宏さんが、「別にノスタルジーだけじゃなくて、いま、せっかく新しくやってるんだから、やっぱり新しいものとして…」というようなことを言ってたんで。
H:正しいね。
砂原:じゃあ、そうしよう、ということになったんですね。
H:だから、いま、昔のやつを引っ張り出してきてリマスターするっていうのは大事だよ。たぶん。YMOもそうだったしね。
砂原:ちょっと前に、白黒の写真とかフィルムとかに着色して「ウワー、なんだこの感覚!」っていう…それにちょっと近いものが
H:あるね。
テイ:そうかもね。
H:ドキドキとするんだよね。
砂原:しますね。
テイ:やっぱり、10年前・20年前のリマスター技術ではできなかったことっていうのは…?
砂原:ありますね。なんか、変わってないようで実は変わってきてる…
H:すごい変わってるね。遠くから聴いてるとわかんないけど…(笑)
テイ:10年ぐらい前はヒスノイズ取るくらいでウワー、とか言ってた気がする(笑)カセットとかのね。
砂原:言ってましたね。
H:そうだったな(笑)そういう時代だったよ。
テイ:今はもうちょっと、音像をいじれるっていう…
H:そう。それがね、やっぱり次元が変わったけど…もう一つ思うのは、これは完成型の音像だと思って、これから先どこ行ったらいいの、っていうね…(笑)
砂原:あー。どうなるのかな、と思いつつやってるんですけど…まあ、どんなものでもそうなんですけど、「行くとこまで行く」っていうのが…すべてそうなんですよね。
H:ホントだよね(笑)ホンっトに人間って止まんないよね。
砂原:行くとこまで行っちゃうんですね。
テイ:まりんのほうが僕よりもミックスとか、マスタリングとか考えてるけど。
砂原:まあ、気にしてはいますね。
H:もう、だから、マスタリングのプロだよ。それは。
テイ:そう。
砂原:(笑)ぜんぜんそんなことはないんですけど…
テイ:だから、僕はまりんがいるんで考えなくていいっていうね。
H:いいねぇ。僕もそうしよう。次のやつは。
砂原:(笑)あの、欲求だけですよ。こういう風に聴きたい、っていう欲求がそうさせる…
H:それはそうだよね。おんなじ。
砂原:そうなんですよね。
H:もう、なんかね、感覚でしかないけど…例えば、2年前の音を[いま]聴くと、あ、これ違う…とかね。感覚じゃない。それは。音の。
砂原:はい。
H:その「差」がいますごい…大きな差があって、それで僕はドキドキしてたわけよ。なんか、ワクワクドキドキ。何を聴いてもすげぇ、と思って。
砂原:ただ、このことって口で言い表しにくいじゃないですか。「ここが赤いから、もっと赤くなるのが今っぽい」とか、そんな簡単なことじゃないんで…だから、なかなか人に言っても伝わりにくくて。テイさんとよく言ってたのは、「音圧感」みたいのはちゃんとキープしよう、というのはMETAFIVEやる時に言ってたり。あとは左右の広がりだったり…
H:例えば、昔だったらね、コンプレッサ使うじゃない。そうすると、音圧は出るけど、ヘッドフォンで聴くとヘッドフォンが揺れるの。今の音楽は、音圧があってもヘッドフォンは揺れないの。
砂原:あー、そういうことも出来ますね。
テイ:それは倍音のコントロールが上手い、っていうことですか?
H:倍音なんだよ、問題は。
テイ:ですよね。
H:ぜったいに倍音が肝なんだね。で、その分析っていうのはもう出来てて、昔。それが商品化されてるんでしょ、今は。全部。例えば、Appleの…Macに付いてるGarageband。
砂原:はい。
H:あれでさえ、そういう音になってるから…(笑)
砂原:まあ、みんな意識するんだと思うんですよね。開発してる人は。いまのコンプレッサの話じゃないですけど、例えば…圧縮するとその部分は「圧縮」されるんで、ヘッドフォンがブルブル震えちゃうんですけども…例えば、水で圧縮される感じと蒸気で圧縮される感じって違うじゃないですか。
H:なるほど。
砂原:水だと強過ぎるからこれを蒸気にしたいんだ、っていうと、そんなようなこともイメージとしてはできるんですよね。蒸気だと…圧力はあるんですけど、詰まった感じというか、密閉感は無くすことができたりとか。
H:そうだよね。透明のまんまだよね。そう、「透明感」っていうのがあるんだよね。
砂原:ありますね。やっぱり、湿度が高いと遠くまでの景色は見えないし、色もハッキリは見えないんですけど、それを視界をきれいにすることが出来たり。
H:今のテクノロジーはだいたい…例えばiPhoneにもカメラ2つ付いてるでしょ。あれを使って後で遠景をずらしたりとか。ピントをね。
テイ:後でピントを変えるとか。
H:そういうことにちょっと近いよね。
砂原:そうですね。
テイ:そうですね。だから、倍音を分離させたりとか、位相をいじって。一回、逆相だけ聴いて…そういうことって、マスタリングスタジオでしか見たことなかったようなことが、プリセットで…
H:そうそう。ミュージシャンがみんなやりだした(笑)
テイ:そういうことなんです(笑)だから、僕は言い訳ですけど、砂原くんみたいにならないように…
砂原:(笑)
テイ:「7年ぶり」のアルバムとかね(笑)気をつけて…Ozoneとかのプリセット聴いて…まじめな話すると、要するにやってることが、無駄な倍音とか出てる場合は、プリセットをかけた時にガラッと変わるわけです。だから、どのプリセットをしてもあんまり変わらなくなったら、まりんに渡していいかな、みたいな。
H:なるほどね。
砂原:あー、なるほどなるほど。
H:…すげー専門的な話だな(笑)
砂原:(笑)
テイ:全部カットでも大丈夫ですよ(笑)わかる人いるかな。
H:いや、いないと思うね(笑)
砂原:でも、言葉にはしづらいんですけど、さっき[*先週放送分]「グローバル」って細野さんが言いましたけど、世界中でそのことをみんながボンヤリ気にしてやってるんですよね、やっぱり。
H:まだボンヤリしてるんだよね。でも、アメリカの音楽産業はボンヤリしてないんだよね。すごい確信的にやってるじゃない。
砂原:なるほどなるほど。
H:それで僕はテイラー・スウィフト~、とか言ってるんだけど。
テイ:まあ、ファレル(Pharrell Williams)とかはこういう話出来そうですね。
H:ファレルはすごいな…もう、なんか、大先生になっちゃった(笑)
テイ:そうですね(笑)あんなになるとは思わなかったですよね。
H:いやぁ、僕にとってはテイくんもまりんも大先生なんだよ、いま。ホント。
テイ:いやいやいや…(笑)
砂原:細野さんの音楽聴いてやってきたつもりなんですけど、こっちは…(笑)
H:いや、もうね、71歳ですから…(笑)49歳?まだ?
砂原:そうなんですけど…
H:若い!(笑)テイくんいくつだっけ?
テイ:54歳、妻子持ちです(笑)
H:(笑)
砂原:でも、YMOを聴いてた世代ではわりと下のほう、なんですよね。
テイ:あー、かもね。
砂原:それでも50歳になるっていう感じなんですよね。
H:時間が経ったね。
砂原:そうですね。
テイ:僕より上の人も多いもんね、きっと。
砂原:いますよね。
H:いやー、こんな歳になってこんなことをやるとは思わなかったな、自分でも。
テイ:や、正直僕…細野さん、ここ10年以上ブギとか…どこでしたっけ、青山の地下とかで、近くでライヴを拝見したりとかしてて、楽しいなぁ、でも、打ち込みはもう聴けないなぁ、って…
H:それで、観に来なくなったんだね。
テイ:そんなことないですよ!(笑)
H:(笑)
砂原:でも、僕は細野さんがいまやってるもの…演奏とか。ふつうに音楽としても聴くんですけども、音像をすごい気にして聴いてましたよ、やっぱり。
H:おそろしいね…(笑)
砂原:あー、なにやってんのかなー、って…
H:いや、いまね、僕もそうやって聴いてるんだよね、他人の…音像を聴いてる。
テイ:やっぱ音が良いですよね。『HoSoNoVa』とかあの辺りの。
砂原:いや、全部良いですよ。
H:そうっすか?でもね、僕にとっては「前時代」の音なんで、やり直したいんだよね…(笑)マスタリングだけでもね、やりたい。
砂原:いま、それだけでもけっこう変わりますからね。
H:ただ、僕は別にポップ・ミュージックのグローバル・サウンドを目指してるわけじゃないんで…グローバルの「先」に何があるんだろう、って考えてたわけ。それはね、「ユニヴァーサル・サウンド」っていうんだよ(笑)
テイ・砂原:(笑)
H:それはね、可能性がすごいあるわけ。それは生(楽器)でもいいし。独自の音像っていうのを…今の音像に共通したものを拡張していくと、ユニヴァーサル・サウンドができる、っていう。
テイ:生の場合でも、録り音もやっぱり大事ですから。一時、ローファイみたいのが流行った時ってテキトーに録っておいて後はプラグインでどうにでもなる、みたいな時期もあったじゃないですか。
砂原:はいはい。
H:もう、プラグインは限界だね。
テイ:やっぱり録りは大事ですね。
砂原:大事ですよ。やっぱり、全工程がその方向に向いてるのが理想なんですよね。
H:そうそう。昔はね、暗中模索が多かったの。「あ、こんなの出来ちゃった」、「あ、こんな良いのが出来たな」とかね。たまたま出来たりして。今は、先に音像の理想があるわけだよね。それを目標として作っていくから、最初からその音像のソフトを入れて、やったりしてね。
砂原:そうですよね。抜いたり、外したりしながら…
H:聴き比べしてね。
テイ:やってますね。
H:やってるよね、みんな。そこら辺がね、今のミュージシャンは変わってきた。日本もグローバルを取り入れてる、っていうかね。徐々に出てきてるよね。そうじゃない音楽はアレッ?って思っちゃう(笑)
砂原:そうなんですよ(笑)どんなにリズムカッコよくても、歌上手くても、そこがダメだとぜんぜんおもしろくない、ってなっちゃうんですよね。
H:(笑)
砂原:それさえよかったらもう、ハードロックでも聴けるんじゃないか、みたいな感じなんですよ。
H:そうそうそう。ホント…おんなじ(笑)なんでもいま、聴いてるの。つい数か月前まではなんにも聴かなかった(笑)
テイ:すごいですね、その辺の細野さんのダイナミック・レンジというか。
H:いやー、こういうことは時々起こるよね。10年に1回かな。
テイ:やっぱりあの…一回僕、前細野さんにもお伝えしたと思うんですけど、最初に出会った頃の手前ぐらいが…僕はニューヨークにいたんで。で、細野さんはオーブ(The Orb)とか、イギリスもしくはサンフランシスコのアンビエント系の四つ打ちの人たちと行かれてたじゃないですか。
H:そうですね(笑)
テイ:その時がいちばん近いようで遠い気がした。僕は。でも、いま聴くとやっぱり良いなぁ、と思って。
H:近いの、遠いの、どっち?
テイ:いやいやいや…『Omni Sight Seeing』とか『Medicine Compilation』とか、カッコいいなと思って。あの時は僕…黒人以外よくないとか思ってたんで…(笑)
砂原:(笑)まあニューヨーク…
テイ:ニューヨークにいたんで…(笑)トライブ・コールド・クエスト(A Tribe Called Quest)とかと一緒だったんで。「白っちいな」とか。黒人の作る音楽以外ぜんぶ「白っちい」って思ってたんですよ(笑)
H:じゃあ僕の場合は「黄色っちい」っていう…
テイ:いやいやいや、よくわかんないなぁ、って思ってたんですけど…いまよりは。
H:なるほどね。
テイ:やっぱ、ワン・アンド・オンリーですよね。
砂原:あの頃はでも、まだ都市が音楽を鳴らしてる感じがありましたけど、今はだいぶ減ってきてる…
H:都市じゃないね。
テイ:そうですね。その、ユニヴァーサル・サウンドのことで言うと…うん。
砂原:なんか…例えば、インターネットでこういうコミューンがあって、そこにいるやつはこんな音を出してる、と。それは東京に住んでてもシスコに住んでても一緒だ、みたいな。そんな感じですよね。
テイ:そうだね。
H:うんうん。
砂原:かけます?
H:じゃあ、かけよう。
砂原:僕、じゃあ一個持ってきたのが…そんな新しくないんですよ。でも音像の話してたんで、これはけっこう良いかな、と。
H:楽しみだね。
砂原:この1曲目を…
Modern Hit Midget - Vilod
砂原:もう音像…でしかない、という(笑)
H:それだけで聴けるからね。
砂原:そうなんですよね。
H:あと、歌が上手いよね。連中。こういうの好きだよ。
テイ:まさにあの…細野さんの"肝炎"とか入ってるアルバムみたいな音が後ろで鳴ってるね。
H:あー、なんか…親しみがあるね(笑)
テイ:横尾さん(横尾忠則)とやった…『Cochin Moon』みたいな!『Cochin Moon』にビート乗っけただけ、みたいな(笑)
砂原:(笑)まあちょっと、音像の話があったんで…そんなに新しくはないんですけどね。2015年とかなんですけど。
H:まあ、その頃からあるよね。
テイ:あるよね、早い人は。
砂原:これはね…なんて読むんだろう。ヴァイロード…?あの、リカルド・ヴィラロボス(Ricardo Villalobos)さんのユニットなんですけどね。
テイ:あー、好き好き。去年L.A.かなんかでかかってて、買ったらその人だった。四つ打ち…
砂原:すげぇ、音像楽しいな、っていう。それだけ、っていう…(笑)
テイ:なんかあの、良い曲は書かなさそうだね(笑)
砂原:(笑)
H:なんか、最近…メロディとか和音とか、あんまり関係ないじゃない(笑)もうこれだけで…デザイン、かな。これはね。
テイ:だけど、細野さんはたぶん…『HOSONO HOUSE』って全部曲が良いじゃないですか。
H:これが難しい…!メロディと和音があるんで…(笑)
テイ:それを…ちょっと間引いて、ぼやかしたりして、半無意識で聴くとそれがわかる、みたいな感じになるとおもしろいかも…
H:難しいこと言うなぁ(笑)
テイ:まあ、言うのは簡単だけど…(笑)
砂原:そうなんですよね(笑)
H:もう始めちゃってるしね(笑)そうか、半無意識で…
砂原:メロディとコードとかがあんまりハッキリしてると…予測がついたりするじゃないですか。
H:それはしょうがないよ。
砂原:その予測をある程度わかんなくするためにちょっと音を抜いてったりして…
テイ:言うのは簡単だけど…
砂原:そうですね、言うのは簡単ですけど…
H:それは今回は出来ないかもな…
砂原:僕、そういうことやりたいなと思ってるんですけど、まだやれてませんけど…
テイ:まりんにも言うかな…「音符的」というか、言っちゃうんですけど。音符が読み書きできない所為かわかんないですけど…音符っぽ過ぎるとちょっと古臭いというか…
砂原:ありますね。あります。
H:わかるよ。すごいそれはわかる。
砂原:楽譜…「譜面っぽい」というか。
テイ:譜面的に次、展開来るな、みたいな。聴いててわかっちゃうっていうか。
H:まあ、それはあるだろうね。
テイ:だから…すごく、比較が難しいけど、それこそ絵を描く五木田くん(五木田智央)とかとよく話しますけど…絵、というか、二次元的なことと譜面的なことって近いのかな、って思って。僕らが話してることとももうちょっと…サウンド、ソニック・スカルプチャー的なことを言ってるのかな、っていう。前に出てくる、出てこない、とか。それは勿論歌詞とかとも渾然一体になってだと思うんですけど。ま、どっちがいいとかじゃなくて。
H:まあ、でも、今どきのね、音楽はそういうことだよね。メロディとか旋律から解放されてるから。譜面から。楽譜使ってないからね(笑)
テイ:そうですね。ただ、逆にサウンドデザイン的にイマイチだけど曲は良いのにな、っていうときは…音符的に良いのにな、みたいな。
砂原:ありますよね。それはけっこうありますね。
テイ:「音符的にいいね!」なんて言ったり…(笑)
砂原:褒めちゃったりして…(笑)
H:いいね…(笑)楽器もやらないの?
テイ:僕は…まりんは最近ベース弾いてるじゃない?シンセベース。
H:あ、そうだ。
砂原:僕は…弾こうと思って弾いたわけではなくて…(笑)
H:やらされてる(笑)
砂原:誰もいないのでやってます(笑)
テイ:ウチのバンドいなかったんで。
砂原:はい。
H:凝り性だもんね、まりんはね。
砂原:そんなことないんですけどね…まあ、METAFIVEの時はたまたま誰も弾く人がいなかったんで。そうなったんですけどね。はい。
H:じゃあ、テイくんなんかかけてよ。
テイ:いやー、この話の流れでかけるのは…
H:いいんだよ。大丈夫だ。
テイ:なに持ってきましたっけ…でもさっきの…あ、でもこれかな。あの毎回たぶん、細野さんのとこ来ると僕JBかけてると思うんですけど。
H:ああ。
テイ:昨日届いたJB…リマスターものを聴きましょうか。
H:へー、リマスターなんだね。
テイ:これたぶん、勝手にリマスター…
砂原:あ、勝手に…(笑)
テイ:勝手にリマスター、勝手にエクステンデッドみたいな。
砂原:(笑)
Can I Get Some Help - James Brown
テイ:最近、アナログ盤を…針って細いじゃないですか。あのカートリッジのところに這ってる4本の線があるの知ってますか?リード線って言うんですけど。
砂原:中に線がありますよね。
テイ:すっごい線が細いんですよ。それがパンパンになるぐらい太いやつが売ってて、それに換えたらけっこうね…中域から、スネアの低いとこからタムの胴鳴りとか…まあ、このレコードはそうでもないんですけど、気持ち良かったりしますね。
H:へー。
砂原:あそこを気にしたことなかったですね。
テイ:でしょ?そう、それを五木田くんが気にしてて…
H:オーディオマニアの世界ね。それね。
砂原:いつもあそこはまあ、細い線だなぁとは思って見てましたけど…そっかそっか。
H:線が太いほうがいいのか…
テイ:たぶん…それでまた聴き直したりとかして。やってますね。
H:なるほど。JBの映画観たんだけど、数年前。なんだっけ…誰かがやってた…
テイ:あー、あの演技してるほうのやつ?
[*引用者註:『Get on Up』(2014年)。]
H:そうそうそう。けっこうおもしろかったね。リハ…レコーディングの風景が出てきて、ラッパ…ブラスの人に注意するんだよね。JBが。「いやいや、オマエがやってるのは違う。ブラスもドラムなんだ。」というセリフがあって…(笑)
砂原:なんかあれですよね、生なんですけど実は全部パーツっぽいんですよね、聴いてると。
テイ:立ってるよね。
砂原:パターンだけで出来てる…で、打ち込みっぽくも聞こえる(笑)
H:そうそうそう。オークランドのほうでタワー・オブ・パワー(Tower Of Power)のああいう…リズムのようなラッパが引っ張るという。だから最近……あっ、それで思い出したけど、やっぱりスライ(Sly & The Family Stone)。すごい、音像が。独特。いまずっとグローバルっぽいのを聴いてて、スライ聴くとビックリする。
砂原:どんな風にビックリするんですか?
H:なんだろう、独自の…
砂原:あー、オリジナリティが…
H:そう、オリジナリティ。
砂原:そっか、帰って聴いてみよう…
H:たぶんね、自分で全部、めちゃくちゃやってるんだろうと思うんだけど…エンジニアが「あー、それはやっちゃダメ!」みたいなことをやってると思うんだけどね(笑)それがおもしろいんだな。
砂原:あー、そういうのやっぱりやりたくなりますよね。
H:ホントそう。
砂原:ダメって言われるとなおさら…(笑)
テイ:ドンカマを使ったのはけっこう早かったんじゃないですか?
H:いや、最初じゃないかね?
テイ:ああいう、ファンクの人で?
H:そう。
テイ:エレクトーンの人はいましたけどね(笑)
H:エレクトーンはいたね(笑)それで思い出したけど、当時、スライの『Fresh』が出る頃…1970年代だよね、その前まで、TIN PAN ALLEYで…はっぴいえんどが終わった後かな、鈴木茂と2人でヴィンテージレコードばっかり聴いてたわけ。
砂原:1960年代ですか?もっと前の…?
H:もっと前の。ガーシュイン(George Gershwin)とか。戦前とか。古いレコードを全部聴き漁ってたわけ。2人で。で、ある時、茂が僕に「このまんまで僕たち、大丈夫かな?」って言うんだよね(笑)
テイ:もう、帰ってこれなくなる不安…(笑)
H:そうそうそう。1年くらい、それ続けてたから…その時にラジオで『Fresh』がかかったわけ。あのドンカマのね(笑)
テイ:はいはい。
H:ウワーッと思って、いまと似てるんだよ。
テイ:目が覚めた。
砂原:わかりますね、そういうのありますね(笑)
テイ:今回の…細野さんのグローバル・サウンドに目覚めたきっかけは、作ってて…ある程度『HOSONO HOUSE』を打ち込まれてて、で聴き返してて、なんか違うな、って思ったんですか?
H:いや、すごい苦労したの。昔の音源使ってて、(理想の音が)出てこないから、加工にすごい時間かかって、こんなことやってられない、と思ってやめたの。で、いま入れ直してる…っていう感じ。だから、古い感じのも入ってるし、ヘンなアルバムになっちゃう。メロディもあるし。
テイ:打ち込みもあって…生楽器も弾かれてます?
H:生もやってる。
テイ:ぜんぜん想像がつかない。
砂原:つかないですね(笑)
H:だから僕もわかんない、ぜんぜん(笑)
テイ:そうですか…気になりますね、いちばん、そこが。
H:いやぁ、話は尽きないけど、聴いてる人はチンプンカンプンで…(笑)いや、僕はすごい有意義だったね。
砂原:なんか、話しにくい話なんですよね、やっぱり。
テイ:共通認識というかね。
H:まあ、今度ひとりで、どういう風な音楽がこうだ、っていうのをやってみるから、それで…今回はね、お話のほうが長かったんで。今度は音を聴いてもらって…っていうことをやりますから。大丈夫です。はい。
じゃあ、最後にですね…ジョー・ヘンリー(Joe Henry)の世界観を堪能して頂きたいですが…本人のソロもいいんだけど…おじいちゃんをリメイクするっていうプロデュースが一連とあって。ランブリン・ジャック・エリオット(Ramblin' Jack Elliott)っていう80歳以上のブルースシンガーを引っ張ってきて…引っ張ってきたのかどうかは知らないけど。すばらしい音でやったりね。その次はモーズ・アリソン(Mose Allison)っていう。昔のジャズのピアニストで。白人のね。シンガーソングライターみたいな。その人も老人だよ。その人のアルバムを作って…これも良い音だったんで、それを最後に…「ユニヴァーサル」として聴いてください。
My Brain - Mose Allison
2018.11.25 Inter FM「Daisy Holiday!」より
保存版…
H:こんばんは。細野晴臣です。さて今日は…2人のゲストをお招きしてます。どうぞ!
?:はい。えー、54歳妻子持ち…
H:(笑)…誰?名前言ってくれない?(笑)
テイ:テイ・トウワでーす。
H:はい。そして…
砂原:はい。私は49歳…砂原良徳です。
H:あれ、「まりん」じゃなかった?
砂原:「まりん」と呼ばれてますけども、私は砂原良徳っていうのが、本当の名前なんですけど…
H:知ってるけど(笑)
砂原:はい、こんばんは。
H:じゃあもう、これからは「まりん」って呼んでいいわけね?
砂原:はい。みなさん、そう呼んでいますね。
H:久しぶりですね。
砂原:そうですね、ご無沙汰してます。
H:テイくんも久しぶりだしね。
テイ:そうですね。たぶん…アレじゃないですか?2月の、いつもの新年会以来ぐらいじゃないですか?
H:そうだな。うんうん。で、僕はいまレコーディング中で…みんなは?
テイ:僕は…腰痛とか、いろいろ経て…
H:あれ?(笑)体調の話ね。
テイ:ま、でも…スケッチをしてますけれども。はい。
H:ああ。まりんは…
砂原:やり始めた感じですね。
H:ソロは…何枚目ぐらい?これで。
砂原:4?5?とか、そのくらい…そんなたくさん出てないんですけど。
テイ:ていうか、何年ぶり?
砂原:5~6年ぶりぐらい。
H:あ、そう。
テイ:来年出たとして?
砂原:…7、7[年ぶり]だそうです(笑)
テイ:来年出て7?
砂原:来年出て7年という…
(テイ:急に(マイク音量が)大きくなっちゃった…)
砂原:まあ、そんな感じですよ(笑)
H:はい。じゃあね、2人を呼んだきっかけっていうのは、まずYMOの『NEUE TANZ』のリマスターね。
砂原:はい。
H:これが、音が良かった。すばらしい。
砂原:ありがとうございます。
H:選曲もよかったよ。
テイ:(笑)
砂原:ありがとうございます(笑)
H:えー、その中から"Camouflage"を聴きます。
H:や、あのね…良い音だよ。今まででいちばん良い音だよね。
テイ:でも、まあ、いちばん新しいんで…そうじゃなきゃ困るよな、っていうのはありますよね(笑)
H:いや、でもね、大事なことがここにはあるのよ。つまり、僕はいま…リメイクをしてるわけ。1973年のソロ…デビューソロ[アルバム]を、曲はそのまま、リメイクしてる。で、ひとりでやってるわけ。
砂原:1973年っていうと、なんでしょうね?(リスナーに向かって)調べてくださいね、自分で。
H:…ああ、そうね(笑)デビュー作だから。ま、言ってもいいんだよ、別に(笑)『HOSONO HOUSE』っていう…(笑)アルバムで。ホント、若気の至りの…
砂原:いやいやいや…
H:いや、そうなんですよ。最初のだからね。で、ひとりでやるって言って、ここに…スタジオに篭ってやりだしたら、機材が全部古いんだよ。ウチの。自分が。
テイ:うーん。
H:ずっと10年、僕は生でやってたじゃん。
砂原:そうですね。
H:で、久しぶりに打ち込み…大好きだった打ち込みに…(笑)
2人:はい(笑)
H:ところがさ、音が出てこないわけ。
砂原:「出てこない」、というのは…
H:こう、なんていうか、前に出てこない。
砂原:あー…
テイ:はいはい。わかりますね…
H:わかるでしょ?(笑)で、この10年ぐらいで、ほら、音楽が変わって来たじゃん。
テイ:あのー、ずっとやっぱり変わってますよね。結局は。結局ずっと変わってるんですよ。
H:ずっと変わってる。だからね、1950年代の音、1960年代の音ってあるじゃん。
2人:はい。
H:やっぱり「2010年代の音」って、できたね。
砂原:あるんですよ。
H:そこら辺の話をしたかったんだけど…とにかくね、悶々としてたの。もっとしゃべっていい?僕。
2人:どうぞ。
H:2000年代の初期の頃に車でよくFM聴いてたんだけど、その頃の音楽が変わってきてるわけよ。低域が違うよね。2人:はい。
H:それは「クワイエット・ストーム(Quiet Storm)」っていう流れだったわけ。アメリカの。FM放送の連中がやりだした。それで、この音どうやって作るんだろう、と思ってたわけよ。低域出てないのに倍音が出てんだよね。
テイ:あー、わかりますね。
H:わかる?
テイ:あの、気配が…
H:そう、気配。これが謎だったわけ。で、誰に訊いてもわかんないの(笑)エンジニアに、君たちアメリカ行って勉強してくれ、って言ったんだけど、誰も行かないし(笑)それで、悶々としたまま忘れてたわけ。生のほうに、僕はずっと没頭しちゃったからさ。
2人:あー…
H:で、今回またやり始めて、またそこに戻っちゃったのね。問題が。それで、この機材はもうお別れだと思って…まあ、好きなものもあるけど、とにかく、新しいものを入れたの。噂に聞いてたようなね、ソフトを…(笑)
2人:はい。
H:で…歴史を辿ってったんだよね。「ニュー・ジャック・スウィング(New Jack Swing)」まで聴いて。
テイ:あら。
H:ぜんぜん聴いてなかったの、僕。テディ・ライリー(Teddy Riley)なんて知らなかったわけ。
テイ:あ、そうですか。え、でも聴かれてたんじゃないですか?
H:まあ、聴いてたよ。あの、ものすごい好きだったの。ただ、誰がやってるかは…マイケル・ジャクソンのいいやつもね、『Dangerous』もよかったし。ネプチューン(The Neptunes)も好きだし。おや?と思うやつは、みんなその系統の人たちで。でも、自分でやろうとしてなかったわけよ。だから、生でブギやってるとそっち行かない、っていうかね(笑)
テイ:そうですね。要らないですもんね。
H:でも今回は…そうはいかなかったわけね。それで、2人を呼んだの。どうなのか、と。
テイ:いやいや、恐縮です、本当に。
H:そこら辺の…ことはどうなってるの?テイくんはどうなってるの?
テイ:んーと…けっこう、でも、一緒に…[まりんと]同じの使ってるのもあるし。僕がもらって[、使ってみて]良いから、まりんにもあげてください、って言ったやつとかもあるかな。
砂原:はい。
H:なんだろう、それは。
砂原:ソフトウェアとか。あとは、まあ…数年前、METAFIVEとかでずっと一緒でしたから。
H:そうだね。
砂原:わりといろんなことを共有して…
H:なるほど。そういうのが大事だよな。僕、ひとりだったから(笑)
砂原:(笑)
テイ:まあでも、ブギはブギでね、うちらできないからね。
砂原:そうですね。生演奏もできない。
H:んー。それで…でも、ブギの音も今の音響のスタイルでやりたくなってきてるんだよね。
テイ:あー。打ち込みも入ってて…
H:打ち込みも好きだけど、生も…ジョー・ヘンリー(Joe Henry)っていう人がいて。
テイ:あ、名前は[聞いたことがあります]…
H:この人がまたすごいんだよね。で、何聴いてもポップ・ミュージックはすげぇ音じゃん。そう思うんだよ。
砂原:どういう風にすごい?
H:なんて言うんだろう…音が進化してるっていうか。
砂原:ああ。まあ、そうですね。なんか、音に…たとえば、かつてなかったような考え方っていうか…スピード、音の速さとか、そういうことはあんまり昔は言ってなかったですけど。「速いね」とか。「遅いね」とか。
H:そうだよね。
テイ:そうだね。
H:なんかね、こう、次元が変わったじゃん?そんな感じがするよね。
2人:はい。
H:それを…僕はずっと葛藤してて。なに聴いてもすごいと思っちゃった。モーニング娘。のミックス聴いて、負けた、と思ったわけ(笑)
砂原:誰がやってるんだろう…(笑)
H:クレジット無いからね(笑)ゲームオタクたちなのかな…よくわかんないんだよね(笑)「知らずにやってる」っていうね。ゲームの世界だとそういうのがあるかもしれない。
2人:んー。
H:あとは、映画の音も良いじゃん。最近のね。あれと共通した何かがあるでしょう?そういうシステムっていうかね。みんな…なんかこう、マニュアルっていうか、ルーティンがあって、僕が思ってるようなのじゃなくて簡単にやってるんだろう、と。思ってたの。
2人:はい。
H:1年ぐらい前からずっとそう思ってたんだけど。で…たとえば、こないだね、冨田ラボっていうのを聴いて。ビッッックリしちゃったんだ(笑)
テイ:ホントですか?
H:あ、ダメか(笑)
テイ:いやいや…でも、細野さんとかをたぶん、ね。尊敬しているような…
砂原:僕、自分のマネージャーとの間でその話題がちょっと出てましたね。
H:あ、ホント?
砂原:はい。おもしろい、ちゃんとやってるね。と。わかってるね、とか。
テイ:新しいやつ?
砂原:新しいやつと、1個前ぐらいだっけ…
H:新しいやつをね、たまたま聴いちゃったんだよ、僕は。たまたまなの。それがテイくんだったら、まあ、それはまたそれでね、いいんだろうけど。[名前を]出してないからね(笑)たまたま聴いちゃったんで、この音作りは異次元だな、と思って。で、モーニング娘。聴いたら、うわぁ、やっぱりすげぇなって…
2人:(笑)
H:それから、何聴いたかな…あっ、米津玄師を聴いたんだ、昨日。そしたらこれもよかったね。
テイ:んー…ぜんぜんわかんないです、僕。聴いてる?
砂原:わかんないっすね。
H:2年前のと今のとはやっぱり音が違うから、ああ、おんなじように変わってきてるってことにすごい興味があるわけ。いま。
2人:はい。
H:で、それを僕、「グローバル・サウンド」って言ってるの。ひとりで。グローバル…グローバル化してるんだよ。
テイ:あー。その、サウンドデザインが…
H:そうそうそう。デザイン。
砂原:わかりますね。
H:わかる?わかってくれるね…
砂原:あの、なんか「形」ありますよね。
H:球体のね。
砂原:はいはいはい。
H:あ、なんかおんなじようなこと考えてる(笑)
砂原:下のほうにキックがあって、その下に座布団みたいに、お皿みたいにベースがあってっていう…
H:空間がね。
砂原:そうですね。広域のパーカッションは左右にあって、これが真横にあるかのような…
H:それね、クワイエット・ストームの時から始まってるんだよね。
砂原:そうですよね。
H:左右の拡がりすげぇな、と思って…(笑)
砂原:あの、サウンド…2000年代以降くらいかな、音が「近い」ところにある、っていうことを言ってる方、けっこういたと思うんですよ。近くで演奏してるかのような。
H:はい。
砂原:で、近くに寄った時に…昔、左右の音はただ近くに、前のほうに寄ってくるだけだったんですけど、今は寄ってくると横に…左右に拡がってくんですね。
H:そうだよね。
砂原:ちょっとラジオじゃわかりにくいですけど(笑)真横に、耳のほうに向いていくっていうんですかね。なんか、「形」ありますよね。完全に。
テイ:お二人ともあれですよ、最終チェックを車で聴かれるじゃないですか。
砂原:はい。
H:そうそう。同じなんだね、車で聴くよ。
テイ:[まりんは]「いまから車で最終チェックしてきます」って、よく車に…
砂原:(笑)
H:おんなじだなぁ。話が合うね、まりん(笑)
砂原:車は、僕、けっこうあれですよ…ドアに空間無いですよ。完全デッドニングで。詰め物して。
H:あー、そこまでやってるんだ。
砂原:震えないようになってますね。
テイ:黒塗りの…
砂原:黒塗りっていうか…最初から黒かったんですけど(笑)
H:塗ったわけじゃないんだ(笑)
テイ:そうか(笑)
H:じゃあね、そのクワイエット・ストームの音を聴いてください。
2人:はい。
H:Amerie、"Hatin' On You"っていう曲です。
テイ:あの…パッドの音以外、短くて僕は好みでした。音は。
H:あー、短いのが好み…わかるわかる(笑)
テイ:短いのしかできないです、僕(笑)
砂原:テイさんは短いですもんね(笑)
テイ:いつも短いって言われるね(笑)
砂原:あとテイさんはパンを振る時、完全に振り切ることが多いじゃないですか。左右に。でも、それはそういう効果出ますよね。
テイ:悩まない…のかな。
H:悩まないんだ。いいなぁ。
テイ:ヘッドホンしないのと、車で音楽聴かないっていう。
H:ヘッドホンもしないの?
テイ:しないっすね、ほぼ。
砂原:僕もしません。
H:えー!あ、そう!
テイ:あ、違いが…(笑)
H:ここら辺がちょっと違うのね(笑)
テイ:いまひさしぶりにして、あ、音短い、とか思って。他人の音楽聴いて。
H:こういう音楽って、ヘッドホンして聴くとその世界が見えてくるじゃん。そう思わない?
テイ:わかりますね。
砂原:で、自分のやったの聴くと、うわぁこんななんだ、って気づくことが多いですね。
H:そっか。それは楽しいよな。
テイ:僕も、ほぼ仕上げの時に初めてゼンハイザーとかでして、ちょっと長かったなぁ、とか。
H:そういうこと?(笑)
テイ:もういいや、って…
砂原:まあ、短いと、あと、レベル入るんですよね。
テイ:そうなんですよ。短いと、入れれる…入れこめるっていう。
砂原:「レベルが入る」っていう…(笑)
テイ:だから、大きくしたいやつは特に短いこと…デュレーションを気にするっていうのが近年は…というか。
H:なるほど。
砂原:あとちょっと、昔は音多かったな、っていう。
H:あー、それはね。んー。
砂原:特に打ち込みは非常に整理しやすいですから、効率的に…この音出すんだったらこれは出さなくていい、とかっていうのをけっこうプログラムできるんで、生なんかよりは効率的に鳴らすことはできると思うんですよ。
H:そうだよね。
砂原:あと、まあ…画面で見て。
H:視覚的に。
テイ:そうですね、視覚的に…あと、小山田くん(小山田圭吾)もそうだけど、けっこううちら3人とかは…
砂原:縦ラインを見て、ダブってるのを消してく、っていうのをよくやりますね。
H:なるほど。
テイ:勝手に消しちゃったりとかして…(笑)
砂原:(笑)
テイ:これ忘れてるんじゃねぇかな、まりん、とか思って消しちゃったり…(笑)
H:ああ、そう(笑)
テイ:その瞬間にやっぱり何を効かす…まあ、1個とか2個とか。
砂原:そうですね。
テイ:ベースここ要らないね、とか。
H:おお、細かいね。んー。
テイ:それは音に出てないんだからしょうがないですよね。
砂原:いや、出てると思いますけどね…(笑)
テイ:そうかな…(笑)
砂原:出てますよ(笑)
H:んー、勉強になるなぁ…
テイ:いやいやいや…打ち込みの神様を前にね…(笑)
H:ぜんぜんダメよ。
テイ:いやいやいや…
H:昔は…若い頃はね、20代の頃なんかは「10年早い」とか注意されたの。「10年早いからウケないよ」とかね、言われてたわけ。今ね、「10年遅くてウケない」っていうね(笑)
砂原:いや、そんなことないと思いますけどね…
H:いや、出遅れてるんですよ。ホントに。
砂原:あと、なんかこう…打ち込みだけじゃなくても、生でも僕はなんとなく…音楽のジャンルとかリズムの…まあ流行りももちろんあるんですけど、それよりも「音像」が時代をいちばん象徴しているような感じが、すごいするんですよね。
H:そう。2010年代…も、そろそろ終わるけど、「音像の時代」だよね。
砂原:そうですよね。ですから、音像が「今」であれば、どんなに演奏が古くても「新しい」っていう…
H:そうなんだよ。
砂原:こないだ幸宏さん(高橋幸宏)の『Saravah!』も、実はマスタリングさせてもらったんですけど。
H:『Saravah!』もよかった!
砂原:あれもやっぱり、この考え方に沿ってマスタリングしたんですよね。
H:よかったよ、あれ。ちゃんと聞こえた。全部。
砂原:わりと気にしてやりました、それを。
テイ:あれ、ミックスも飯尾さん(飯尾芳史)がやり直したんだよね。
H:ミックスもよかったね。
テイ:あんまりやることない、って言ってたもんね。ミックス良かった。
H:最近の幸宏の中で、すごい好きだな、あれ(笑)最近のじゃないけどね。
砂原:なんかこう、聞こえが良くなった分…周りから聞こえてくるのは「こんな良いアルバムだったんだ!」っていう風にいう人がけっこう…
H:それはもう…リメイクっていうか、リマスターっていうか、甲斐があるよね。それはね。
砂原:そうですね。
テイ:"SUNSET"聴きません?細野さんのベースが聴きものという…
H:あっ…僕もそれね、ベース聴いちゃったよ、それ。好き(笑)
砂原:全体的にベースは僕…さっきの皿の話じゃないですけど、あの形になるべく近づけるように…
テイ:いちばん下じゃなくて…
砂原:はい。
H:そうなんだよ。これよく聴いたんだよ。こんなベース弾けたかな、とか思って。音が良かった。
SUNSET - 高橋ユキヒロ
H:えーっと、時間がもういくらあっても足りないんですけど、この続きはまた来週、ということで。お願いします。