2018.08.19 Inter FM「Daisy Holiday!」より

 真夏の夜のホニャララ…

 

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H:こんばんは。細野晴臣です。えーっと、久しぶりですね、岡田くん。
 
O:こんばんは、岡田崇です。
 
H:はい。よろしく。
 
O:よろしくお願いします。
 
H:新入荷、持ってきてくれましたよね。
 
O:新入荷…(笑)
 
H:新入荷っていうか、入荷…なんていうの?新しい音楽を…(笑)
 
O:いやいやいや…(笑)
 
H:この夏は大丈夫?暑さ。
 
O:いやー、もう、ダメ…ダメです。もう、どうしようっていうぐらい。
 
H:でも、街出るとみんな平気で歩いてるじゃない。
 
O:信じられない…
 
H:なんか暑そうにみえないんだよね、人がね。平気で歩いてるんで。まあ、でも、これからずっと夏はこうなるのかなと思うとね。
 
O:うんざりしますね。
 
H:だから、悪夢ばっかり見てるんだよね、僕。
 
O:あ、そうですか。
 
H:あとで話すよ。
 
O:はい(笑)
 
H:音楽ひとつ、ちょっと…入荷したやつを。
 
O:入荷…まあ、家から持ってきたものですが。じゃあ"Very Nice Is Bali Bali"というですね…
 
H:んー?
 
O:これはPatience & Prudenceが1957年に出したものです。
 
 
 
Very Nice Is Bali Bali - Patience & Prudence
 
 
H:なるほどね。あのー、ワンコードだ(笑)めずらしいよね、画期的だな。
 
O:短いし。
 
H:うん。ポップミュージックでワンコードって、この当時は考えられない…(笑)まあ、展開はしてるんだけどね。ルーツ音がずっと同じ…ミニマルになってますよね。すごい。新鮮でした。
 
 
 で、まあ今の音楽も、ちょっと悪夢っぽいけど…(笑)3つぐらい憶えてんの。1つ目はすごい短いんですけど。
 
O:ええ。
 
H:エレベーターに乗ってたんですよ。気が付くとエレベーターに乗ってて、そのエレベーターが延々と落下し続けるっていう…おそろしい夢を見ました。いつか底にぶつかるんだろう、という恐怖のまんまね。ずーっと落ちていくんだ。地獄だね(笑)で、目が覚めて。落ちる前にね。
 昔はね、エレベーターがどんどん上がっていって、天井突き抜けて空に飛んでく、っていう夢は見たんだけど。落ちてく夢っていうのはなかなかイヤだね(笑)岡田くんはどうですかね。夢、見るでしょう。
 
O:夢…でも最近見ないですね。
 
H:見てるんだけど憶えてないんだよ。
 
O:昔はよく見てましたけど…
 
H:どんな夢を見るの?岡田くんって。夢見るおじさん(笑)
 
O:なんか、松坂慶子に…
 
H:えー?(笑)
 
O:すごい昔ですよ。20年ぐらい前かな…
 
H:いいよいいよ、言い訳はいいから(笑)
 
O:松坂慶子に…『ど根性ガエル』のカエルの刺青を彫る夢を…
 
H:ばっかばかしい…(笑)
 
O:そういう感じの夢を見てる時期が…
 
H:それはどう言ったらいいんだろう…幼児的な…性的願望みたいな…(笑)ど根性ガエル松坂慶子ね。やー、岡田くん、やっぱりヘンだわ。
 
O:それはよく憶えてます。
 
H:ああそう。そういうの、絵にした方がおもしろいんじゃないかね。
 
 
 はい、まあ音楽…合間に音楽をかけながら夢の話をしましょう、じゃあ。はい。
 
O:じゃあですね…"Rococo"っていう曲、ですね。これは、こないだコシミハルさんの公演で…
 
H:そう!使ってましたね。すごく印象的なダンスシーンでしたよ。
 
O:水着を着た女の子ふたりが。
 
H:素晴らしかったね。あれ。
 
O:レイモンド・スコットのあんまり知られてない曲ですね。
 
H:あの舞台の音楽がすごい印象深いから、もう1回聴いてみたいな、と思ってたんですよ。
 
O:お、では…
 
 
 
Rococo - Raymond Scott
  *Performed by Metropole Orchestra
 
 
 
H:ああ、いいな。やっぱりなんか…独特ですね。
 
O:今のは1942年に書かれた曲ですけど、録音が残ってなくて。盤では出てないんですよね。
 
H:そうだったの?
 
O:で、ボー・ハンクスとメトロノーム・オーケストラで、再現盤っていうのが2000年代に出て、その中の…
※引用者註:おそらくメトロポール・オーケストラ(Metropole Orchestra)の言い間違い。2002年の『Kodachrome』か?(未確認)
 
H:つまりこれは、ボー・ハンクスがやってるってことね。
 
O:そうです。
 
H:…全然わかんなかった(笑)音は良かったけど。
 
O:1942年とかなんで、レコーディング・ストとか。まあ戦争中ですけど、あったんで。
 
H:あー…
 
O:この頃の音源ってけっこう、録音されてないのが多くて…
 
H:無いんだね。そうかそうか…
 
O:ラジオとかが普及してきたんで、実演家団体が…レコードとかラジオをかけると(自分たちの)仕事が無くなる、と。
 
H:なるほどね。
 
O:レコーディング・ストを…2年ぐらい、たしかやったんですよね。
 
H:そんなに長かったんだ。それはちょっと痛手ですね。なるほど…
 
 
 はい。えー、2つ目の悪夢。これはね、ちょっと強烈だったんだよな…でもいますっかり忘れちゃったな(笑)
 
O:(笑)
 
H:なんだっけな…死んじゃうんだ、そうそうそう。車に乗ってて…車から出て、誰かと話してるんですよ。街で、日本の街ね。東京かな…どこかわかんないけど。そしたら車に誰かが乗って、ワーって行っちゃうんだよ。で、追っかけたの。そしたら、廃車工場に入ってっちゃうのね、車が。で、探しに行くと…車があったんだけど、それは廃車にされてて、もう何年も経ってる古い車だったわけ。自分が乗ってた車が。「あれ?もう、ずいぶん時間が経ってるな」と思いつつ。ふと見ると、そこに大瀧詠一くんが、ニコニコして立ってるんだよ。で、なんか僕は「ああ、もう、自分はこの世にはいないんだ」と思ってね、車に…なんか、いつのまにか新しい車になってて。乗ってくと、街を走ってるつもりが、どんどん空に上がってっちゃう…っていう夢です。はい。
 
O:………
 
H:あれ?静かになっちゃった(笑)まあ、笑えないですよね。だからそういう…なんだろうな、死んじゃうこととか、けっこう…子供の頃はよく見てたんだよね。で、30代、40代の頃は見ないんだよね、そういうの。で、また子供心に戻ってきちゃってね。
 
O:んー。
 
H:子供の頃って、ガバッ、って起きて、死んじゃうんだ…って思ったね。
 
O:そうですか。
 
H:なかった?そういうの。ないか(笑)
 
O:いやー…
 
H:ま、人それぞれで…じゃあ、音楽ひとつよろしく。
 
O:はい。えーっと…じゃあ、Baby Dodds Trioというですね、ドラマーの方なんですが…その人の"Tootie Ma Is a Big Fine Thing"という曲を。
 
H:まったく知らないですね。
 
O:ニュー・オーリンズの方ですね。
  
 
Tootie Ma Is a Big Fine Thing - Baby Dodds Trio
 
 
H:いやー、聴くとすぐニュー・オーリンズだ、っていうのがわかるね(笑)
 
O:(笑)
 
H:民俗音楽だよね。ルンバ・ブギといったらもう、ね、ニュー・オーリンズの十八番ですよね。この人は知らなかったですけどね、Baby Dodds。
 
O:Baby Dodds。
 
H:ニュー・オーリンズのドラマーっていうと、アール・パーマー(Earl Palmer)がすごい有名ですよね。
 
O:この人はもっと、ぜんぜん前の人ですね。1890何年生まれ…
 
H:えー、すごい…なるほど。
 
 では、えー…悪夢。
 
O:悪夢…(笑)何があるかな…トイレの夢はよく見ますね。
 
H:あ、聞きたいな。漏らしちゃうやつ?違うか(笑)
 
O:いや…なんて言うんですかね…個室に入りたいんですけど、すごい幾何学的な形のトイレで、どっから見ても外から見えちゃうじゃん、っていうような個室ばっかで、ここじゃできねぇな、と思って別のフロアのトイレに行って、そこもちょっと、ああ…みたいな(笑)
 
H:(笑)
 
O:そういう、ずっとトイレに行きたいんだけど入れない、って言う夢はよく見ます。
 
H:起きるとそれ、おしっこしたいんじゃないの?そういうわけでもないの?
 
O:いや、あの…トイレ行こう、って言う感じではありますけど、もちろん。
 
H:でしょ?だいたいそうなんじゃないのかな。んー。
 
O:そういう、個室に入れない夢は見ますね…
 
H:あ、ホント。まあ、異次元の世界だね。なるほどね…
 
O:おしっこしようとしてなんか、こう…小便の…
 
H:小便(笑)
 
O:おしっこの…(笑)
 
H:小便という言葉を久しぶりに聞いたような気がする(笑)
 
O:なんか、東急文化会館かなんかのトイレに入るんですけど。おしっこしようとすると、壁が無いんですよ。無くって、崖っぷちになってて…
 
H:あー、なんかいいね、夢っぽくて。
 
O:下は川が流れてるんですよ。
 
H:あー、いいねいいね!(笑)
 
O:で、おしっこすると、なんか…おしっこしてるんだけど、おしっこと一緒に自分が…
 
H:おしっこって何回言った?(笑)
 
O:(笑)トイレの中に入ってっちゃって、下の川に…まあ下水だったのか。
 
H:ちょっとねえ、すごいわ。負けるわ。
 
O:流れていくんだけど、その川べりに死体がいっぱい積んであって…っていう、そういう夢を昔見ましたよ。
 
H:地獄のようだ…いやー、おもしろい。
 
O:それ、その頃ですよ。松坂慶子に刺青…彫った頃に見た夢ですね(笑)
 
H:そうか…(笑)いや、おもしろいよ。
 
O:ホントにそういう夢ばっかを、見てる時期が…
 
H:そうか、ライバルがここにいたか…誰にも負けないと思ってたんだけど(笑)
 
O:でも、文化会館のトイレっていうのはたぶん…実際に個室に入った時に、隣の個室から本を差し出されたことがあって…
 
H:それは夢じゃなくて?(笑)夢より怖いね。
 
O:夢じゃなくって、その…ゲイ雑誌っていうんですかね。
 
H:ゲイ?アッー…そういう経験があるわけね。
 
O:差し出されたんですけど、足でそーっと押し戻した経験があるんですけど。
 
H:映画っぽいな、それ、なんか…おもしろい経験いっぱいしてますね。
 
O:でも、そのテーマでもう一個あって。それは現実ですけど。シードホール(SEED HALL)で、ルビッチ(Ernst Lubitsch)の『天国は待ってくれる(Heaven Can Wait)』を観に行ったんですよ。
 
H:うんうん。
 
O:で、座ってたら、隣の男の人の方からピチャピチャ音がし出して…香水の匂いもし初めて、首周りに香水を付け始めて…映画中ですよ?で、なんかイヤだなぁ、と思ってたら、そっと手の上に手を乗っけてきて…
 
H:男性にモテるね。うらやましいね。
 
O:いやー……
 
H:それが女性だったらね。
 
O:握り返すところですけど…いや、わかんないけど…(笑)
 
H:そうなんだ(笑)
 
O:焦りましたよ。でも、映画終わるまで(席を)立たずに、身体を真横に向けて…映画終わって即行帰った…
 
H:手はずっと握られてたの?
 
O:いやいやいや、振りほどいて…
 
H:コミュニケーションはないわけね、会話とか。
 
O:ないですよ!
 
H:…自分のを話す気力が無くなっちゃった、もう。
 
O:いやいや(笑)もう1個あるじゃないですか。
 
H:音楽聴いたらね、じゃあ。
 
O:じゃあですね…これも絶対に知らないと思うんですけど、Dr.ペドロ・ホセ・ロボ(Dr. Pedro Jose Lobo)というですね…
 
H:紛らわしい名前だ。
 
O:この人よくわかんないんですけど、マカオの実業家…
 
H:マカオ!アジアだ。
 
O:アジアですね。で、マカオを牛耳ってた人らしくて、金の密輸とかを戦争中にやってて…
 
H:悪いやつだ。マカオのマフィアみたいな。
 
O:イアン・フレミング(Ian Fleming)が、ある時マカオまで来て、この人に取材をして…
 
H:おお!(『007』の)ゴールドフィンガー
 
O:ゴールドフィンガーに出てくる、オッド…なんて言うんだっけ?オッドジョブ(Oddjob)だったかな、その辺の金の密輸の話とかを参考にしたという…そういう、ホセ・ロボっていう人がいて。その人が音楽も作ってるんですね。
 
H:やってるんだ。参っちゃうなあ。
 
O:その人のですね、"Jumpa Rhumba"という曲を。
 
 
Jumpa Rhumba - Dr. Pedro Jose Lobo / Alvy West & His Orchestra
 
 
H:いや、なかなか…おもしろいよね(笑)
 
O:演奏はニューヨークのアルヴィ・ウェスト(Alvy West)っていう楽団が…あの、(フランク・)シナトラとかのバックとかもやっていた楽団が。
 
H:で、歌ってる人がトビーなんとか(Tobi Michaels)っていう人、女性がいて…じゃあ、そのペドロさんはなにやってるの?
 
O:さあ…曲を書いたのか…
 
H:んー…ま、当時のそういう人たちって陽気だね。
 
O:そうですね。
 
 
H:あのね…時間が無くなったんで、悪夢みたいな話は今度また、ね。
 
O:えー?(笑)
 
H:長いんだもん。
 
O:長いんだ…(笑)
 
H:長いんだよ。最初から最後まで話すと30分くらいかかる…(笑)
 
O:じゃあ、特集ですね(笑)
 
H:そういえば昔、「夢、それはドリーム」っていうのをやってたじゃない。
 
O:はい。
 
H:それでちょっと、作ってみようかね。久しぶりに。
 
O:ぜひ、お願いします(笑)
 
H:SE込みでね。まあ、じゃあ、きょうはそういうことで。最後の曲、になるかな。うん。お願いしますね。
 
O:はい。じゃあ、先週がジャンゴ(・ラインハルト)だったので…ガロート(Garoto)という、ブラジルの、同じ時期のギタリストで…
 
H:ほほう。
 
O:"Tristezas De Um Violao"、「ギターのかなしみ」という…
 
H:ちょっと期待しちゃうな。では、これを聴きながら、また来週。
 
 
Tristezas De Um Violao - Garoto
 
 

2018.08.12 Inter FM「Daisy Holiday!」より

アコースティックスウィングは最高…

 

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 (以下すべてH:)

  細野晴臣です。こんばんは。暑い夏が、ずっと続いてますが…まあ台風が来たときにちょっと下がったりして…えー、バテてますね。いっぱいロンドンとかで歩いてたんですけど、こっち帰ってきてから一歩も歩いてないんですね。一日…せいぜい200歩とか。暑くて歩けないですからね。で、部屋に籠ってですね、『ツイン・ピークス』全巻観たり、『Xファイル』も観ちゃいましたね。いやー、結構やっぱり、おもしろかったですね。ファンですから。
 それで、『Django』(邦題:『永遠のジャンゴ』)っていう映画も観て。ナチ(Nazis)とジャンゴ・ラインハルトDjango Reinhardt)の関係性とかもね、いろいろ…マヌーシュ・サウンドを交えて作られた映画ですけど、なかなかまあ…よかったですね。
 そんなわけで、ジャンゴ・ラインハルトをいっぱいかけようかな、と思います。まずは"Limehouse Blues"。
 
 
Limehouse Blues - Django Reinhardt
 
 
"Limehouse Blues"ですね。
 
 えーとですね…『永遠のジャンゴ』という、日本語のタイトルなんですけど。当時、ナチ政権下で、ナチがパリに侵攻してきまして。ユダヤ人がいろいろ災難に遭ってる中、当時は「ジプシー」って言ってましたけどね、ジプシーたちも弾圧を受けて、ジャンゴ・ラインハルトも危険を感じてスイスに亡命しようとしたりするんですね。そんなような話なんですけど。ま、でも、実際は音楽が本当に好きな人たちなんで、非常に享楽的な生活を送ってたんだと思うんですけどね。音楽を聴くとそれがよくわかるんですけど。
 じゃあ、サウンドトラックをちょっと聴いてみたいんですけど。映画の中でジャンゴの演奏も…まあ、(ジャンゴの)音楽をやってる。ジャンゴスタイルでやってるんですけど、ローゼンバーグ・トリオ(Rosenberg Trio)っていうんですかね…ローゼンベルグ・トリオか。"Blues En Mineur"。"Minor Blues"ですね。
 
 
Blues En Mineur - Rosenberg Trio
 
 
まあ、映画用に録ったんですごく音がいいですけど、ジャンゴ・ラインハルト自体の(=本人の)レコーディングはそれほどクオリティがいいわけではなくて、なかなかね…もっといい音で聴きたいな、と思ったらこういうサウンドもあるというわけですけど。でも、やはり演奏自体が素晴らしいんで、聴き応えはある、ということです。
 えーと、じゃあ次は…アメリカに渡って、アメリカのジャズミュージシャンたちと一緒にやったやつがあります。"Smoke Rings"。
 
 
Smoke Rings - Django Reinhardt
 
 
 同じくアメリカでレコーディングして、ハーモニカのラリー・アドラー(Larry Adler)と一緒にやった"My Melancholy Baby"
  
 
My Melancholy Baby - Django Reinhardt & Larry Adler
 
 
  ジャンゴ・ラインハルトはですね、左手が不自由だったんですよね。火傷を負ったということで、指が…なんかこう、2本の指だけで速弾きするという。それがすごいですよね。5本あってもあんなに速く弾けないんですけど…驚異的な速さ。速弾きが特徴だと…まあ、思うんですけど、実はゆったりしたやつが僕は好きなんですよね。そのちょっとフレンチな、ゆったりした曲を聴きたいと思います。"Billets Doux"。
 
 
Billets Doux ー Django Reinhardt & Stephane Grappelli 
 
 
この1930年代の録音だと思うんですけど、ステファン・グラッペリ(Stephane Grappelli)のバイオリンと一緒にやってますね。この時代はフランス・ホット・クラブ五重奏団(Quintette du Hot Club de France)というスタイルでやってまして。戦時中になりますとね、1940年代になりますとグラッペリはロンドンに亡命…というか、まあ、避難するんですね。そこで残ったのがジャンゴで、先ほど言ったように巻き込まれていくわけですけど。
 
 そんな感じで、後半は随分のびのびと長生きしたような気がします。いくつだったかな。んー…43歳か(笑)決して長生きではなかった、43歳で亡くなってますね。
 
 じゃあまた、曲をかけたいと思いますが…また、ステファン・グラッペリと一緒にやった、"Menilmontant"という曲です。
 
 
Menilmontant ー Django Reinhardt & Quintette Du Hot Club
 
 
えー、すごくよくかかる曲ですね、"Menilmontant"。
 
 で、あの…映画でもう1個。ウディ・アレンWoody Allen)の『ギター弾きの恋(Sweet and Lowdown)』でやっぱりラインハルトがモデルになってる人がチラチラ出てきて、それに憧れる主人公の物語でしたけど。まあ、ジャンゴ・ラインハルトに影響された人はいっぱいいるわけですね。かのレス・ポール(Les Paul)もそうですね。あと、最近までずっとそういう伝統が続いてて、スウィング系のアコースティックバンドがいっぱいいるわけです。本家のマヌーシュ・スウィングも、ずっと続いてるわけですね、伝統的に。素晴らしいギター奏者がいっぱい、今だにいるわけです。で、憧れるんですけど、あんな風には弾けないんで、聴くだけです。
 
 じゃあ、最後に"Body And Soul"。これはやっぱりアメリカでレコーディングして、ラリー・アドラーと一緒にやってますね。これはベスト・トラックだと思うんですけど。聴いてください、"Body And Soul"。では、これを聴きながら…また来週。
 
 
 
Body And Soul - Django Reinhardt & Larry Adler
 
 
 

2018.08.05 Inter FM「Daisy Holiday!」より

アメリカ南部・西部公演、非常に示唆的というか、かなり意義深いものになるはずなので、ぜひ実現してほしいですね…

 

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(H:…じゃあ、アタマだけ僕が言って、後は…)
 
(高田:伊賀くんが(笑))
 
(伊賀:やっちゃうんですか…)
 
(H:や、最初はまだやんないよ。大丈夫。)
 
 
⊿∈§∃Π(♪Minute Merengue)∇●∵Δ☆
 
 
H:こんばんは、細野晴臣です。今週も、先週の続きを、やります。メンバーが揃ってます。高田漣
 
高田:こんばんは。
 
H:伊賀航。
 
伊賀:こんばんはー。
 
 
大地:こんばんは。
 
 
野村:こんばんは。
 
H:細野晴臣です。言ったか。えー、それで、話の続きだと…ロンドン公演の話をして、先週。2日休んで…ブライトンというところに行きましたよね。そこは、どうでした?また違うじゃない、ロンドンと。
 
高田:はい。ブライトンは…着いてすぐにでしたっけ、細野さんと一緒にちょっと街の中を回ったんですけど。
 
H:そうそう。
 
高田:その後に、大地くんとか…大地くんと2人か。もうちょっと下町っぽいとこっていうか、丘の上の方に行って…
 
H:海と坂がある街だからね。
 
高田:その辺は楽器屋とレコード屋さんがたっくさんあって、なんかすごい「音楽の街」っていう感じがして。
 
H:ミュージシャンがけっこう住んでたりするのかしらね。
 
高田:かもしれないですね。なんか、大地くんと行ったギター屋さんで細野さんのポスターが貼ってあって…
 
H:あ、ホント?
 
高田:僕らこれ出るんだよ、って言ったら「えー?」って言われたりとかしましたね(笑)
 
H:僕も楽器屋に行ったけど、いい楽器屋だったなあ。
 
高田:ホントにそういう…音楽が根付いている街みたいですね。
 
H:そうだね。僕はね最初行ったときに、乱暴な車多いじゃん。
 
高田:はいはいはい、言ってましたね(笑)
 
H:「ブブーッ!」って言われて、なんだぁ?と思って。おっきな声でナントカって言ったんだよ。そしたらこっちを向くんだよ。運転手がね。若いやつらが。あいつらはあの…与太者だよ(笑)
 
高田:海のほうはちょっと荒々しいというか…なんか若者が多かったですね。
 
H:ああいうところには必ずいるよ。湘南だっているからね。
 
高田:まさにそんな雰囲気でしたね。
 
H:だからちょっと、最初の印象は悪かったの。ここは磁場が悪い、とか言って(笑)
 
高田:細野さん…(笑)そうでしたね。
 
H:ヘンな…なんていうの、あれ。タワー?
 
高田:展望台…ドーナッツ状の展望台が上下に上がるやつですね。
 
H:街にそぐわない…メタリックな、ね。あれの所為だと思って(笑)誰か乗ったの、あれ。

大地:乗ろうと思ったらちょうど時間が…

伊賀:満員だった…

H:(そもそも)乗ろうと思うんだ、あれに。

野村:僕は高いところダメなんで、ひたすら拒否してたんですけど。

高田:どうにか卓史くんを乗せようと…

H:野村君を乗せようと思ってたんだよね。

大地:乗せようと思ってたんですよ。「思い出作ろうよ」、って(笑)

野村:これじゃない思い出もいっぱいあると思う、って…

H:いやー、乗んなくていいよ。あれは本ッ当に、乗って後悔するものだと思うから…

高田:たぶん、そんなにはおもしろくないと思うんですよね。

H:おもしろくない、恐いだけだと思う。閉じ込められて…途中で止まったらどうすんだ、って…

野村:そうですよ、ホントに。

大地:あれの良さは、あれを目標にしてれば今どの辺に居るのかがわかるっていう(笑)

H:そうそう、そうだね。確かにそうだった。んー。

www.theguardian.com

 

H:まあ、そんなような街で…ライヴやった後1日くらいいたけど、やっぱりいい街だったな。気に入っちゃったよ。ごはんがおいしいし。

高田:そうですね。

H:坂によって特徴があるじゃん。

高田:うんうん、そうでしたね。

H:で、一つはアジアストリートみたいな…

高田:ありましたね。

H:中華ばっかりあって…けっこうおいしかったな。タイ料理とか。みんなは何食べてたの?最初にみんなで行ったイタリアン…

大地:海鮮食べたところ…

H:大地くんと漣くんが「味が薄い~」とか言ってた…

高田:(笑)

大地:ね。でもあれは意図した薄さなのかな、とか言って。

高田:なんか、イギリス最近多いみたいですね、ああいう薄いやつ。

大地:自分で塩かけて調整する。

高田:たぶん(店側が味付けに)自信が無いのかもしれないですけど…(笑)

H:そうだったんだね、うん。で、行く前から…アティック(Attic Records)の人だったかな、「フィッシュ&チップス好きか」って訊かれて。一回食べてマズかったの、昔ね。油っこくて。

高田:はい。

H:いや、そんなに好きじゃない、って言ったら「ブライトンのは最高だから食べろ」っていうの。

高田:あ、そうなんですか。

H:で、なんかその時に、イタリアンで、誰かが頼んだのをちょっともらったら…すげぇマズかった。

一同:(笑)

H:あれは美味しいものじゃないな。

高田:我々の中でいちばん揚げ物が好きなはずの細野さんが…(笑)

H:揚げ物はやっぱりね、衣を付けて揚げないと…いい感じにはならないんだよね。フリッターみたいのはダメなんだよね。

高田:なるほど。

H:あと魚が…ブライトンって魚獲れないんだってね(笑)

大地:その話おもしろかった…(笑)

高田:てっきり地元の海鮮が出てるのかと思ったら…

H:どっか違うところから持ってくるっていう。鱈で…フィッシュ&チップスって干し鱈みたいなので、ニオイきついんだよね。

高田:うんうん。

 

H:で、ライヴの話。まあ(ロンドンと)あんまり変わんないかな?ライヴどうでした?ブライトンは。

高田:ブライトンはまた会場がぜんぜん…違ったじゃないですか。ちょっと古い…

H:そう、オールド・マーケット(The Old Market)っていうね、古い建物だけど中身はライヴハウスだね。

高田:ああいう小っちゃな…小っちゃくもないですけど、ああいう小屋でできるっていうのもなかなか無い機会なんで…

H:そうだよね。

高田:ロンドンのバービカン(Barbican Hall)みたいなホールとは違う響きだったんで、おもしろかったですね。よりお客さんもダイレクトというか。

H:(高橋)幸宏がそこに観に来てくれて、ロンドンでは引っ張り出されちゃったんだけど(笑)ブライトンはリラックスして観てたのね。(ステージに)呼ばなかったから。そしたら「すごい感動した」って言われた。「ジーンときた」と。すごい良かったみたい。うれしいな。

高田:うんうん。

H:でもやってる方は変わらないよね、いつもとね。

高田:ホントにそうですね。鎌倉とかでやったような感じですね、イメージ的には(笑)

伊賀:熱海とかね(笑)

H:そうそうそう(笑)

 

大地:細野さんがインスタグラムに上げられてたスケボーの人たち。あの人たちは誰なんですか?

H:あの人たちはね、印象深いよ。(ライブが)終わった後に…僕はタバコを吸うんで外に、楽屋口から出ていったらあの連中がいて。僕のファーストネームじゃなくて…あ、ファーストネームでいいんだっけ。「晴臣」って呼ぶわけ。そしたら、20代じゃない、彼らね。

大地:若そうでしたね。

H:スケボーを担いでたようなタイプで。で、「晴臣」って呼ばれたの初めてだから…

大地:日本で呼ぶ人は…

H:お母さんしか、そういう風には…(笑)すごい不思議な気持ちっていうか…まあ親しみは感じるけどね。んー。

高田:(彼らは)観に来てたんですか?

H:観に来てたの。

高田:あ、それはすごい…

H:で、後で知ったら…彼らのインスタのムービーかな?に"Sports Men"が使われてた。

大地:へー。

H:あの歌が好きなんだね、彼らは。スケボーで街の中走ってる後ろに、昔のヴァージョンの"Sport Men"をかけてて。それをだから…使った(=Repost)んだけどね、うちで。歌詞に反応したんだろうな、と思ってね。

 

Sports Men - 細野晴臣

 (from 『Philharmony』)

 

H:で、あと…ロンドンにいる日本の人も来てたんで、それは新鮮だったな。そういう人が…女の子たち。まあ後は…変わらないな。

高田:ホントですね。なんかもっとこう…罵声とか。ウワーとかなるかな、って思って…(笑)

H:そうそう。

高田:そういうことも、何もなく…

H:例えばね、今度アメリカでやったらどうなんだろうとか、思ってた時があって。まあ、NYとかLAはさておき、例えばアトランタとかね。メンフィスとか。あるいはもっと田舎のほう、西部の。そういうところでブギやったらどうなんだろう。

高田:んー…

H:どう思う?

伊賀:あ、あの…

H:うん。

伊賀:ブライトンの打ち上げの時に…高橋幸宏さんが僕の目の前にいて、結構お話ししたんですけど。

H:ああ、ほんと?

伊賀:幸宏さんが、「細野さんの音楽を聴いてる外国の方は(我々が)ブギとかラテンとかをやっても、全部エキゾチック・ミュージックに聞こえてくるんじゃないか」、という風に仰ってて。

H:そうか。

伊賀:で、僕も…なるほどと思って。だから、細野さんが英語とかラテン語とかで歌ってるじゃないですか。

H:めちゃくちゃだけどね。

伊賀:それも全部…

H:エキゾチックなんだね。

伊賀:そういう風に聞こえてて、それがすごく好意的というか、おもしろい…興味深く聞こえてるんじゃないか、って仰ってて。

H:だったら良かったね。

伊賀:だからたぶん、どこに行ってもそういうような雰囲気ってあるのかな、と。だから逆に受け入れられやすい…

H:なるほど。なんかわかった。そうだったね。まじめに考え過ぎちゃったね(笑)

伊賀:僕もまじめに言っちゃって…(笑)すみません。

高田:(笑)

H:ブギをさ、アメリカの南部・西部辺りでやって…ウケるのか罵声か、どっちかだね。そう思ってたの。僕は昔ほら、ジェームス・ブラウンの前座をやったことがある。

高田:武道館の…

H:ジェームス・ブラウンのファンからはもう、「出てけ!」みたいなこと言われたから。テクノっぽいことやってた時期ね。

大地:あー…

H:まあ、ホントに座布団が飛んできたからね。イメージとしては。座布団は無かったんだけど…(笑)

高田:(笑)

H:そういう経験があるから、トラウマになってるんだよね。まあ、はっぴいえんどの時は石が飛んできたしね。大学祭で。学園祭で。

大地:いろんなものが飛んできてるんですね、細野さん…

H:そういう経験無いでしょ?みんな。

高田:無いですね…

H:なんか、幸せだね(笑)

大地:(笑)

H:昔は(新宿)花園神社あたりのクラブに、ハコで出てて。時々本牧から殴り込みが来たりね。

高田:んー。

H:で、僕たちは「隠れてくれ」って店の人に言われて、カウンターのうしろに隠れて。西部劇みたいで…(笑)

一同:(笑)

H:そういう時代を過ごしてきたからさ…今のミュージシャンは、なんか、品がいいよね。

大地:そうですね。ライヴハウスで喧嘩とかも、そんな無いですね。

H:無いよね。「殴り込み」なんて無いもんね。なんで殴りこみに来たのか知らないけど(笑)

 

 そうか。じゃあこっからだな。伊賀航ショウはね。

伊賀:あっ。えっ?

一同:(笑)

伊賀:まあ尺的には、もう、ね?

H:ちょうどいいよ。はい。では、伊賀くん、お願いします。

 

∽∽∽∽∽∽∽∽(♪伊賀航ショウの前テーマ)∽∽∽∽∽∽∽∽

 

伊賀:いや…えー…あのー…えっ?自分…あっ。そうですね…外…あっ、自分のことを話す…?

H:なんだなんだ(笑)

伊賀:自分のことを、お話しますと…外国、外国が苦手だっていう…外国とか、外国の人たち、のことが苦手だっていう…

H:言ってたよね。

伊賀:はい。それで…今回は、その辺、どれぐらいいけるかなって思って…思ってたんですけど、結局外国人の方と喋ったのも「Thank You」という言葉だけ…

高田:だけ?(笑)

伊賀:「Thank You」とは言いました。「Thank You」だけは…

H:Thank youだけは言ったのね?

伊賀:はい。だから、気持ちは伝わってると思うんですけど。あの、最後に…空港でチェックインした後に、飛行機の手前にコンビニがあって。

H:うんうんうん。

伊賀:サンドイッチ買おうと思ってコンビニに入って、で、サンドイッチ選んで、ジュース持って、レジに並んだんですよ。そしたら、僕より小っちゃい黒人が…

高田:店員だよね、もちろん。

伊賀:店員がレジのところでレジ打ってて、そんで、髪の毛もグリッグリで、三つ編みみたいにした…

高田:そこのディテール要るかな…(笑)

伊賀:もうエグいっていう意味で…(笑)その人に出したんですよ、サンドイッチとジュースを。そしたら、僕より小っちゃくて、上目遣いでなんか「@*#$?」って喋って。

H:うん。

伊賀:で、僕それが、なに言ったかわかんなくって、「は?」って言ったんですよ。言ったらずうっと黙って、僕のほう見て、ただ見てるんですよ。

H:うん。

伊賀:で、俺ももう「は?」って言ったっきり、なんにも言えなくなって、しばらく無音でふたりで見つめ合って…見つめ合いまして。ってなったところで、僕のお札を受け取って、お釣りを渡して、そのままなんにもなかったんですけど、あれは俺に何を言ったんだろうっていう…

高田:ぜったい、小銭出せっ、て話だよ、それは。

伊賀:小銭をねえ。

高田:小銭が見えたんだよ、伊賀くんの。だから、どうせ(帰国したら)使えないでしょ、小銭いくつか出してご覧なさいよ、っていう向こうの親切心で言ったのに、伊賀くんがそれで黙っちゃって、ジーッと見てるから向こうもジーッと見つめて…

H:恐かったのかな。

伊賀:だけど、ホントに、すごい威圧的な目というか。自分的には、「オマエ何やってんの?」みたいなこと言われているような気になってしまって委縮…委縮してしまったというか、なんだろうっていう風に考え込んでしまって…っていうことが、帰国直前にありました。

高田:いや、伊賀くんさ。

伊賀:はい。

高田:そもそもロンドン着いて、2泊あったじゃない。その朝…細野さんも食べたと思うんですけど、美味しい朝食会場があって…

H:イギリスは朝食がおいしいよね。

高田:おいしいですよね。伊賀くん2日間いたのに、1回もあそこの朝食を食べに行ってないんですよ。

H:ホント?(笑)

高田:それは、行ったら、また英語で話しかけられたらなんか答えられないんじゃないか、とか…

大地:部屋番号訊かれますからね。

高田:そう。というか、部屋番号言うだけなんですけど…(笑)それで伊賀くん、あれだよね、日本から持っていったスープとか…

伊賀:玄米スープね。

高田:だけでひもじさを堪えてたんでしょ?(笑)

伊賀:いやいやいや…

H:なにからなにまで日本を持ってっちゃったんだね。自分ごと。

伊賀:そうですねぇ。いや、それは反省しまして。ブライトンではね、一度、食べました。

高田:それもでも、あれですよ、伊賀くんの部屋に電話して、伊賀くん朝食行くよ、って無理やり言って…

H:誘ってあげたんだね。

高田:その電話の出方もちょっとイヤイヤ…「うーん…」みたいな。

伊賀:いやいや、違うんですよ。それ、朝ごはん食べた理由は…前の晩に漣くんたちとスーパーに行って、買い物したんですよ。

大地:ああ、しましたね。

伊賀:そしたら…みんなで、じゃあ、シメでラーメン食うかみたいな感じで、カップラーメン…

高田:地元のやつね。

伊賀:地元のカップラーメン買って、部屋でお湯を注いでね、漣くんもおんなじの買って、食べたんですけど。

H:うん。

伊賀:すっごいマズいんですよ。

H:マズいんだ。

高田:ホンットにマズいんですよ。あんなの食べたことないよね、あんなにマズいもの。

伊賀:ホンットにマズくて…

H:どこ製なんだろうな。

高田:あれどこですかね…

伊賀:カレーのラーメンなんですよ。

高田:カレーに間違いはないだろうって2人で言って買ったんですけど、カレーの味すらしなかったよね(笑)

伊賀:甘いんですよ。

大地:(笑)

伊賀:甘いカレーだったんですね。

高田:アンズみたいな味がね…

H:想像できない。

伊賀:それを今度、どっか…機会があったら細野さんに…

H:いや、機会は無いと思うけど(笑)

高田:それでお腹がすいちゃってた?

伊賀:っていうのもあるんですけど…

高田:だから来たんでしょ?(笑)

伊賀:いや、これからは…アメリカでは行くんで、朝ごはんに…

H:アメリカはハンバーガーショップがいっぱいあるからね。

伊賀:そっか。ハンバーガーですか。

高田:でも伊賀くん、帰りの空港では「オレは今まで間違ってた」と。「ただ英語が喋れないっていうだけでコンプレックスを持っていた」と。

伊賀:そうそうそう。

高田:で、なんか、急に「オレ、駅前留学しようかな」みたいなことを急に言い出して。最後帰りの日になって…

伊賀:結果、だから、英語が喋れれば相当楽しめるっていうことになんとなく気づいて…

H:そりゃそうだ。喋れないとおびえるタイプの人いるよね。どこも出かけなくなっちゃう。

伊賀:はい。僕です。

大地:(笑)

伊賀:卓史くんとかは、喋れないけど、出れるんですよね。

野村:俺は、朝食をいっぱい食べれば、外で英語でコミュニケーションとらなくても食事の面ではクリアできるという…

高田:ネガティブだな…(笑)

野村:ルームナンバーを言えば朝食をいっぱい食べれる、っていうルールを守って…

高田:まあでもそうだよね(笑)

伊賀:僕より一歩先を行ってますね。

野村:だから、伊賀さんにも…2日目、現れてないって聞いたんで勧めたんですけど、結局3日目しか行かなかったんですね。

H:なんだろうなあ…お腹すいてて、我慢してるの?

伊賀:いや、そんなことは…まあ、食べれば食べれるんですけど、まあ、無くても…大丈夫かなっていう気持ちも、ちょっとあったりとかして…

高田:台湾の時もそうだったよね(笑)

伊賀:台湾は…外国…アジア…やっぱり台湾は初めて…外国行ったの久々だったし、前の日コンビニでちょっとひと悶着あったんで…

H:知ってるよ、それ(笑)レジ袋が無い。

伊賀:レジ袋…そうですね。まあそれで、っていうのもあったんですけど。でもまあ、いろいろ反省する機会がありました。

H:そうだよ。反省した方がいい。だから、語学学校行くんでしょ?

伊賀:あのー、ちょっと考えてます。今。

H:じゃあ、今から英語でいこう。

伊賀:…レッツ。

大地:(爆笑)

高田:すごい…(笑)なんかちょっと、アレだね…出川(哲郎)的な可能性を感じるね、伊賀くんに…

 

伊賀:こんな感じですかね。

H:んー、そんな感じでいい。

高田:伊賀くんは、弟がイギリスに…

H:そうだよ。観に来てたね。ブライトンに来てたの?

伊賀:あ、両方来てたんですよ。

H:で、紹介してくれなかった。

大地:誰も会ってない…

高田:あ、僕だけ会ったんですよ。

伊賀:偶然出てきて…買い物の時にね。

H:じゃあもう、ペラペラなんでしょ?彼は。

伊賀:いや、これが…一緒にご飯とか食べに行ったんですけど、もう本当にテキトーな英語で。

H:そうなんだ。

伊賀:はい。あ、でも、気持ち…ちゃんと自分の言いたいことは絶対伝えれてて。で、聞いても(相手が何を言いたいか)わかるみたいで…

H:それでいいんだよね。

伊賀:もうね、意思…伝えたい気持ちみたいのがちゃんと…だから大地くんっぽいのかなと思って。気持ちが…強い気持ちがあるじゃない。

大地:気持ち…そうですね。

高田:伊賀くんには強い気持ちが無いの?(笑)

H:よわーい気持ちが…

伊賀:そうですね…もう、弟をホント、尊敬しました。僕、それを見て。こうなればいいのかな、っていう風にも思ったりとか。

高田:伊賀くんの弟って、(伊賀くんと)2人で細野さんの音楽とか聴いてたんでしょ?

伊賀:そうですそうです!もう2人で、FMのエアチェックとかして、カセットテープで録ったやつを、もう、擦り切れるほど…

H:あ、そう。

高田:だから、弟さんは、伊賀くんが細野さんのステージに立ってるっていうのが信じられないというか。

H:そうなんだ。それは初めて聞いた。

伊賀:絶対、もう間違いなく…もうみんな…

H:ん、なんだ?(笑)

伊賀:いや、細野さんのいる前でそういうこと言うのは、もうホントに…

H:言って言って(笑)

伊賀:恥ずかしいんですけど…ホントに、僕の小学校・中学校の時のアイドルですから。

H:アイドル(笑)初めて聞いたな…

伊賀:松田聖子か細野さんですから。

H:えー?(笑)

伊賀:カットでお願いします…

一同:(笑)

 

伊賀:そんな感じで大丈夫ですか?

H:うん。もうこれで、時間来ちゃったな。んー。じゃあちょっと、最後に…また、今年も後半、ツアーがあるので、ちょっとレパートリーを考えてますので、新しいモードでやりたいと思います。よろしくね、みなさん。

一同:よろしくお願いします。


◇◆◇◆◇◆◇(ジングル)◇◆◇◆◇◆◇◆◇


§§§§§§§§§§§§(ED)§§§§§§§§§§§§§

 
 
 
(伊賀:…レッツ。)
 
 

2018.07.29 Inter FM「Daisy Holiday!」より


※英語部分は100%フィーリングです。ゆるしてください。

 

daisy-holiday.sblo.jp

 

???:Ladies and Gentlemen, thank you so much for tuning in...This is "Daisy Vacation!".With a guest..
 
希子:Hi, 水原希子です。
 
佑果:Hi, 水原佑果です。
 
H:…あ、僕?僕は聴いてるだけです(笑)きょうはMac DeMarcoさんを迎えて、一本録ろうと思ったけど彼はもう行かなくちゃいけないんで、あいさつだけ録ってます。で、サポートしてくれるのは水原希子さん、佑果さん。お願いします。
 
 
^^^^^^^^^^^^ジングル^^^^^^^^^^^^
 
希子:きょうは細野さんがちょっと睡眠障害ということで、今おねむの時間になられているので、私と佑果とMacさんで引き継ごうと思います。はい。
 
Mac:Hi.
 
希子:Macさん、How you feeling today?
 
Mac:Little nervors, pretty sweaty, and excited, and...overjoyed. 
 
希子:「緊張していて、ちょっと汗をかいていて、でもとても興奮していて」…overjoyedというのは、「とても幸せを感じている」ところでございます。きょうは、私は通訳もやらせて頂いています(笑)
 
佑果:(笑)
 
希子:はい…佑果ちゃん?(笑)
 
H:ラジオはしゃべんないといけない。
 
佑果:そうでした(笑)えー、緊張しています。緊張して、何を話したらいいかわかりませんが、どうしましょう。
 
希子:では、私が引き継ぎましょう。はい。細野さん、最近お暑いですね。
 
H:暑いよ。もう、これは災害だって言われてるぐらい、危険な気候ですよ。Macさん大丈夫?この気候にビックリしたでしょ。
 
希子:”Aren't you feeling super-crazy about the weather in Tokyo now?”
 
Mac:I didn't know this is hot in Tokyo in a summer and..yeah, makes me feel completely crazy... But I think today, I'm finally getting used to. Took hot baths, calmin' nerves. And we have four more days away, so...
 
希子:「到着してからこんなに暑いとは思ってなくて、すごく驚いたんですけれども…」
 
H:だろうなぁ。
 
希子:「ようやく慣れてきて」
 
H:慣れるんだ、これ。慣れないよ僕は(笑)
 
希子:「きょうはあったかいお風呂に入って、全部熱を出して。あと滞在は4日なんですけれども。」
 
H:フジロックに。
 
希子:はい。"You gonna been FUJI ROCK."
 
Mac:Friday, by FUJI ROCK...red, it's the Red one? Red Stage?
 
希子:Red zone (=RED MARQUEE).
 
Mac:Never gone a fes on Japan. It should be cool, hopefully...I'm hoping it doesn't feel like every other single festival. 'cause I would be comin' to person. But not because we're still in Japan, so it's okay. But I.. yeah, more friends... I don't know how many I will see. 
 
希子:「音楽フェスティバルに出るのは、日本では初めてなんですけれども…」えーと…あー、忘れちゃったな、なんて言ってたか(笑)でも、とても楽しみにしていて。「他の自分が経験したフェスティバルみたいにはならなければいいな」、って思ってるみたいで。
 
H:んー。
 
希子:「でもきっと、自分が大好きな日本なので、楽しい経験になるだろうな」っていう。
 
H:楽しんで。
 
希子:"Enjoy, please."
 
Mac:We will.
 
希子:「友達もたくさん会いに来てくれるので…」
 
H:日本にいっぱい友達いるね。
 
希子:そう。"You have so much friends!"
 
Mac:Ah...Yeah!
 
一同:(笑)
 
希子:「そうですね、いっぱいいます。とてもうれしく思っています。」っていうことですね。
 
H:また、じゃあ、今度は…また来る時はここに来てください。
 
希子:"Next time you come to Tokyo, please come to my studio."
 
Mac:I would love friend.
 
希子:今のは通訳必要ないですね(笑)
 
 
 
H:どういう知り合いなの?佑果ちゃんと希子さんと。
 
希子:ここのつながり…So, we gonna talk all relationship.
 
Mac:Yeah.
 
希子:私とモニカは友達で…
 
H:ここにいらっしゃるモニカさん。
 
希子:はいモニカさん、茂木モニカさん。
 
茂木:カメラをやっています。
 
希子:こんにちは(笑)もう、ピカイチセクシーな私のお友達、モニカさんと佑果ちゃんと私は友達で、仕事仲間で。
 
H:んー。
 
希子:そしてモニカはキーラ(Kiera McNally)と友達で、それでMacさんと仲良くなって…
 
Kiera:こんにちは~。
 
H:かわいい(笑)
 
希子:キーラちゃんです。そういう関係で、まあ仲良くなったんですけれども。私はLAに行くたびに彼の家にお邪魔したりとか、彼はとっても気さくで、Kieraもとっても気さくで。
 
H:たしかに気さくそうだね。
 
希子:そう。家にいっぱいミュージシャンだったりとか、アーティスト集まって、みんなでBBQしたりとか、プール入ったりとか。
 
H:楽しそう。
 
茂木:プレイボーイの撮影もMacのプールで撮ったんです。思い出がいっぱい…
 
希子:そうです。プレイボーイっていう週刊誌があるんですけれども…(笑)
 
H:あの、ヌードの?
 
希子:そうです。去年、私とモニカの2人で…
 
H:え、出たの?
 
希子:撮影したんですよ、彼女に撮ってもらって。その時もMacの家で撮影したりとかして。
 
H:それはそれは…見たかったな(笑)
 
希子:あ、ぜひ!今度、お届けさせて頂きます。
 
H:えー、すごい。うん、うん、うん、ぜひ。
 
希子:セクシーな写真がバンバン…(笑)でも、とてもきれいな写真です。ナチュラルな。
 
Mac:You come the LA, come on a my studio, and do a model on the Playboy(笑)
 
H:行きたいね。
 
希子:なんでプレイボーイ…「プレイボーイの撮影しましょう」って(笑)
 
H:裸になれない…
 
希子:(笑)スタジオに…
 
H:うん。ぜひぜひ。
 
希子:ぜひ…
 
 
 
 
H:まあ、そんなことかな。
 
希子:あ、細野さん、お誕生日おめでとうございます!
 
佑果:おめでとうございます!
 
H:ありがとう。
 
希子:Happy birthday! Can you sing a happy birthday song for him, please?
 
Mac:Everybody, everybody.
 
希子:Okay, everybody.
 
H:うれしいね。
 
Mac:I want a key...♪(A)
 
一同:(Happy birthday to you, dear Hosono-san)
 
H:ありがとう。すごいうれしい。
 
希子:(笑)
 
H:うれしい…みんないくつなの?Macっていくつ?
 
希子:How old are you, Mac?
 
Mac:Twenty-eight.
 
希子:Did you turned twenty-eight this year?
 
Mac:うん。
 
希子:じゃあここ(※希子&Mac)は同い年で、私も28歳なので…
 
H:みんな20代じゃん。何この差…(笑)
 
希子:差、ないですよ(笑)まあ、こっちが一方的に、言ってるだけですけど。
 
H:ビックリだな。そうか…
 
希子:はい、twenty-eight…きょうは細野さんのスタジオに初めて来られてとてもうれしいです。
 
佑果:私もうれしい。
 
H:佑果ちゃんは2回目?
 
佑果:いや、初めてです!
 
H:あれ?来なかったっけ、こないだ…
 
希子:リハーサルの時?
 
佑果:は、ここではなかった…
 
H:じゃあみんな初めて…そうだそうだ。
 
佑果:うれしいです。
 
H:ありがとう。
 
希子:いいですか?
 
H:うん。もうすぐ(メンバーが)来ちゃうし。
 
希子:あ、来てる。
 
H:じゃあ、交代だ。バンドメンバーが来てる。
 
希子:The band has gonna...band is here, so they gonna do..
 
Mac:Rock'n'roll.
 
 
 
Salad Days - Mac DeMarco
 
 
 
◆☆∴∑∇@ジングル*∀∂△ΠЩ
 
 
H:えー、ではここからは…久しぶりにバンドのメンバーが来てくれました。みなさん、どう?
 
一同:こんばんは~~
 
H:元気がありそうな無さそうな…どっちなんだ(笑)
 
高田:あります…!
 
H:どうやって…こういう大勢で話すのって大変だよな。一人ずつ、じゃあ、話してかないといけない…じゃあ紹介がてらね…漣くんはどう?
 
高田:どうも高田漣です。こんばんは。
 
H:漣くんは時差ボケ無かったって聞いてるけど。
 
高田:そうですね。行きも帰りも全然。
 
H:すごいね、なんで?帰った人、みんなひどかったんだよ。
 
高田:なんか、普段からいっつも眠いし…で、わりと早起きなんですよ、普段から。
 
H:んー。
 
高田:だから向こうに行って…普通の人だと時差ボケだと思うような時間でも、4~5時に起きるとかって日本とあんまり変わらないんで、そのまんま…
 
H:(日本に)帰ってきても?
 
高田:帰ってきてもあんまり変わらないですね。
 
H:しかも、ワールドカップ観てたから。
 
高田:そうですね、ワールドカップ観て時差ボケになりました(笑)
 
H:帰ってすぐ仕事があったの?
 
高田:そうですね、いろいろやってましたね。
 
H:それは大変だ。伊賀くんもそう?
 
伊賀:僕もあんまり…仕事してたんですけど。
 
H:うん。
 
伊賀:時差ボケは…行ってから、向こう、ロンドンで…
 
H:向こうで時差ボケだった?
 
伊賀:もうアレですね、夜、2時くらいからずっと目が覚めて…で、ずっと、そのまま起きてライヴやってるみたいな。
 
高田:えー!
 
H:知らなかったな…
 
伊賀:なんか…でもこっち帰ってきたら普通に戻ったんですよ。
 
H:あれ?(笑)
 
伊賀:だから、たぶん、日本のまんまだった(笑)
 
高田:すごいね、それは(笑)
 
H:すごいよ、めずらしい人だよな。えー、じゃあ、大地くん、伊藤大地くんです。
 
大地:あ、こんばんは。自分も大丈夫でした。
 
H:大丈夫でしょ?なんかそういう噂を聞いた。強いな。
 
大地:たぶん、帰りの便の11時間のうち、10時間は寝てたんですよね。そのお陰かな、と。
 
H:爆睡したって言ってたね。
 
大地:爆睡でしたね。機内食も一切食べずに、って感じ。そこで調整効いたのかな。
 
H:なんか、旅慣れてるのかな。
 
大地:時差ボケ、たしかに、したことないかも…
 
H:だって…まあ、説明するの忘れてたけど、ロンドン公演がありまして…
 
一同:(笑)
 
高田:前フリなかったですね(笑)
 
H:なんの話だかわかんないだろうな(笑)ロンドン公演というのは6月の…何日だっけ…23日?…だっけ?そっか。で、翌々日は2時間車で行くとブライトンという…いいリゾート地で。そこでもライヴやりまして。で、1日、2日で僕たちは帰って来たんだけど、大地くんは残ったね。
 
大地:1泊、延泊して。
 
H:で、なんか…田舎に行ったんでしょ?
 
大地:よく行く場所なんですけど…どうしても行きたくなっちゃうんですよね。
 
H:どういうところなの?
 
大地:コッツウォルズっていう、古い村がそのまま残ってるところで。
 
H:いいところなんだろうね。
 
大地:いいとこなんですよ。
 
H:のんびりできるんだね。
 
大地:のんびりできるんですよ。夜とか誰もいない…
 
H:ホテルがあるの?
 
大地:ホテルはありますね。ペンションみたいなホテルに泊まって。
 
H:どうしてんの、そういうところで。
 
大地:そこで、なんか…風呂入ったりとか…(笑)
 
H:(笑)
 
高田:で、車で行ったんでしょ?
 
大地:車借りて…車好きなんで、借りて2時間ぐらい走って…
 
H:そうか。ロンドン市内ってすごい走りにくそうじゃん。
 
大地:もう、渋滞がすごくて…ロンドンの真ん中で借りちゃったんで…
 
H:出るのに時間がかかるよね。
 
大地:1時間…戻るのにも、ロンドン入ってから1時間…すごかったですね。
 
H:出ちゃえば楽だよね。
 
大地:出ちゃえばもう、ビュンビュンで。よかったです。天気も良かったですもんね、細野さんが行ってる間は。
 
高田:うん。
 
H:でも、今はもっといいみたいね。
 
高田:あ、そうなんですか?
 
H:過ごしやすいですよね。17℃ぐらいでしょ?
 
高田:僕らの時はちょっとまだ暑かったですよね。
 
H:でも、雲ひとつなかったね。
 
高田:ね、1週間…
 

H:えっと、あ…忘れてないよ、大丈夫(笑)野村卓史くん。
 
野村:はい、野村です。
 
H:どう?体調は。
 
野村:体調…えっ、あの…今の体調ですか?
 
H:そうそう、今だよ。昔の体調はどうでもいい(笑)
 
野村:すこぶる良好です。
 
H:あ、良好?時差ボケない?
 
野村:時差ボケは…帰った後2週間ぐらい引きずってましたね。
 
H:2週間もあったんだ(笑)
 
野村:そうですね、なんか徹夜しちゃったりしてるうちに、なかなか戻れなかったです。
 
H:だよね。だって…そもそもちょっと訊きたいんだけど、パスポートを忘れたじゃん、行く時。
 
高田:(笑)
 
野村:ええ、ええ。
 
H:あれはどういう心理なの?
 
野村:パスポートをしまってるうちの引き出しがあるんですけど。他にも、大事な印鑑だとか…
 
H:普通あるよね、そういうの。
 
野村:そこから出さずに…まったく、パスポートの必要性を忘れてしまってました。
 
H:こういう人がいるんだね(笑)時々いるよ。
 
野村:羽田で出発したじゃないですか。
 
H:うん。あ、勘違いしちゃったんじゃないの?国内と。
 
野村:そうなんですよ。
 
H:イギリスってどこだか知ってた?
 
一同:(笑)
 
野村:頭ではわかってたつもりなんですけど…(笑)
 
H:外国だってのはわかってた?
 
野村:そうですね。
 
H:昔ね、ハワイに一緒に行った、やっぱりキーボードの国府(輝幸)くんっていう人がいたんだけど、ニュー・オーリンズピアノの。久保田(麻琴)くんたちと一緒に行ったんだけど。彼はまあパスポートは持ってたんだけど、着いたところが日本だと思ってた。なんでかって言うと、店の人がみんな日本語をしゃべるじゃない。
 
高田:日系人も多いですもんね。
 
H:で、2,3日後になって気づいたんだよね。「ここは日本じゃないのか」と。キーボードの人ってそうなの?(笑)
 
一同:(笑)
 
野村:いやー、その…なるほどなるほど。
 
H:だから、リハ参加してないで、本番直前に来たよね。
 
野村:30分前でしたね、本番の。
 
H:すごいね。どんな気持ちで?なんてことはないって感じ?
 
野村:(笑)いやいやいや、そうですね…場が凍りついてるだろう、って思いまして、緊張しながら到着しました。
 
H:まあ、よくあるよ、そういうことは。僕もやったことあんの。
 
野村:お、そうなんですか。
 
H:もう演奏の…1分前に着いたっていう。YMO。札幌に行く時。寝坊しちゃったの、僕は。ひどいもんだよね。
 
 
 
◆☆∴∑∇@ジングル*∀∂△ΠЩ
 
 
 
H:さあ、そういう僕ですけど。今だに、睡眠障害が治んない。昨日はね…いや、昨日じゃない、きょうか。10時ぐらいまで寝らんなくて、朝の。
 
高田:えー。
 
H:なんかね、眠いんだけど目が覚めちゃう、っていう。最悪なんだよ。で、治んないんだよ。どうしたらいいの?で、なんでかっていうと、仕事を休んでたからね。仕事があった方がいいみたい(笑)
 
高田:その後どれくらいの…そっから寝たんですか、きょうは?
 
H:寝た。スマホで目覚ましを1時間ごとにかけて。10時に寝たから3~4時間でいいやって思って。13・14・15・16時、全部。13時に目が覚めたけどね。
 
高田:その後はもう寝てないんですか?
 
H:寝てないです。もう今眠いけどね。
 
高田:そりゃあそうですよね。
 
H:で、訊きたかったことは、ロンドン公演のことなんだよ。テーマはね。なんか、言いたいことはある?なんだろ、感想でも聞きたいかな。ひとりひとり、感想を聞かせてもらおうかな。漣くんから。
 
高田:そうですね…なんか、思ってた以上にお客さんの反応が良くって。あと…なんて言うんでしょうね、細野さんも終わった時に仰ってましたけど。
 
H:うん。
 
高田:なんか、海外での公演って感じがあんまりしなかったというか。
 
H:しなかったね。
 
高田:反応がすごい…本当にどっか、大阪、とかそういうところでやってるような感じでしたね。
 
H:そうそう。みんなそう思ったでしょ?
 
伊賀:とはいえ…外国人の方、多くいらっしゃったなと思って。
 
H:多かったんだよね。
 
伊賀:で、すごく盛り上がってて。外国人の方も楽しまれてる感じだな、と思って…
 
H:まあ、日本の人も多いと普通の感じになれるけど、(ステージから見ると)客席真っ暗だから。最初はそうなのかなと思ってたら、イギリスの人のほうが多かったんですね。
 
大地:(高橋)幸宏さんが最後の曲をやられるということで、幸宏さんが俺のドラムに座られて、俺はサイドで見てたんですよ。ステージ袖に移動して。
 
H:そうだよね。
 
大地:そしたら照明の向きが変わったんで客席が見えて、前列の人たちはけっこう、みんな現地の人っぽい人たちが前のめりでめっちゃ盛り上がってて、おお、って思って。
 
H:これが10年、20年ぐらい前はそうでもないんだよね。「外国人」だったんだよね、反応が。なんか、変わったんだね、今。この数年で。何かが。
 
高田:うんうん。
 
H:なんだろう、これ。みんな日本人みたいになっちゃったのかな(笑)
 
高田:なんかこう…音楽の聴き方が世界中で同じ様にっていうか…なんでしょうね、反応がおんなじな感じがしたんですよね。
 
H:そうなんだよね。それが僕の一番強い印象だね。
 
高田:日本で…たとえば細野さんの最近のだと、最初はラテンでしっとりというか、静かに始まっていって、だんだんエンジンがかかってきてブギで盛り上がってくる…それとおんなじタイミングでお客さんも盛り上がる、というか。その辺がすごく、やってて不思議でしたね。 
 
H:だからね、やってて、すごいリラックスしちゃった。
 
高田:ホントですね。うん。
 
H:今年は台湾・香港やって、もちろん初めてだから、外国。やる前すごく緊張するじゃん。たぶんみんなもそうだと思うけど。
 
高田:そうですね。
 
H:どういう反応なのか、っていうのがいちばんね、不安じゃない。まったくウケなかったらやっぱり…落ち込むからね(笑)
 
高田:ホントですよね(笑)
 
H:そういうこともあるはずだから…よく夢に見るもんね。フタ開けてみたらお客さんが一人もいなかったりね。そういう夢見ない?見るんだよ僕は(笑)
 
高田:わかります…演奏全然できない夢とか見ますね(笑)
 
H:知らない曲が始まっちゃったりね。全然歌ったことのない曲が始まって、イントロがもう終わって、さあ歌わなきゃ!知らない曲だ!、ってところで目が覚める。
 
高田:あります、あります(笑)
 
H:ある?それに近いよね、そういう初めてやるところって。そしたら…そこもやっぱり、台湾も香港も日本みたいだったね。日本みたいだった、っていうとヘンだけど。
 
高田:(日本と)変わらないっていうことですね。
 
H:これはどういう音楽が行ってもそうなのかな。わかんないけど。まあ、僕は不思議な気持ちでずっといたんだけどね。
 
高田:うんうん。
 
H:で、さすがにロンドンはもうちょっと違うだろうと思ってた。そしたらこれもおんなじだから、たぶん次はアメリカ…行っても同じようにできるかもしれないな、って今、思い始めてる。
 
高田:はい。
 
H:さっきここにMac DeMarcoが来てて、彼はロサンゼルスにいるんだけど。「いつ来るんだ」って言うから、来年行けたら行くよ、って言って。「みんな待ってるよ!」って言われて。何となく大丈夫そうだな、って思って。
 
一同:(笑)
 
高田:細野さん、ロンドンのライブ終わった直後に言ってましたもんね。「もうどこでも大丈夫だ!」って(笑)
 
H:傲慢なこと言ってた(笑)
 
高田:でもなんか、その感じは僕らも…
 
H:みんなもそうでしょ?
 
高田:ヘンにひよって、というか、合わせないでやって大丈夫だ、って思いましたね。
 
H:合わせなきゃ、って思ってたけど、そんな余裕ないじゃない。レパートリーも。で、日本と同じようにやっちゃったよね。それがよかったのかもね。
 
高田:細野さんも途中からMCも、英語だったり日本語だったりミックスしてたけど、でもそれが逆にお客さんクスクス笑ったりとか。その辺も同じでしたよね。
 
H:行く前はね、英語で全部やんなきゃ行けないかなあ、とかね。でもムリだな、と思って。英語でジョークを考えてたりしたんだけど…そんなのムリに決まってるじゃん(笑)
 
一同:(笑)
 
 
H:さあ、ここからは伊賀航ショウかな。
 
一同:(笑)
 
伊賀:こっから…3分しかない…(笑)
 
H:じゃあ、もうちょっと先に延ばすかな(笑)
 
 
 
 
El Negro Zumbon (Anna) - 細野晴臣
 from 『Vu Jà Dé』
 
 

2018.07.22 Inter FM「Daisy Holiday!」より

 

 ライブラリーものという深淵がこちらを見つめている…

 

daisy-holiday.sblo.jp

 

H:こんばんは。細野晴臣です。えー、久しぶりですね、岡田くん。
 
O:こんばんは、岡田崇、です。
 
H:変わんないね。
 
O:…でしょ?(笑)こないだまでは(鈴木)惣一朗さんがね、ずっと、3週間しゃべってたんで。
 
H:いっぱい、訊かれるよね。なんかいろいろね、うん。
 
O:すごかったですね。
 
H:まあその間僕はちょっと、イギリスに行ってたんですけどね。
 
O:おつかれさまでした。
 
H:いえいえ…
 
O:時差ボケが、まだ?
 
H:もう、ひどいね。何これ?これは病気だよね。
 
O:まあ、日本の気候が、また…
 
H:帰ってきてね、重いんだよ身体が。空気とか。
 
O:んー、やっぱ湿度が…
 
H:湿度の違いって大きいね。
 
O:ホントですよね。ロンドンはカラッカラですか?
 
H:もうカラッカラで、なんて言うんだろう…皮膚から水分が無くなっちゃう、みたいな。
 
O:(笑)
 
H:「気候が人間の性格を作る」って、よくわかるよ。だから。
 
O:日本はジメッと…
 
H:まあ、なんか、引力強い感じはあるね。
 
O:引力…
 
H:引力ってほら、各地で違うんだよね、多少。もちろん高山に行けば軽くなるし。たとえば音楽でもさ、音が地面に吸い込まれる感じしない?
 
O:あー…
 
H:日本で音作ってると、そう思う時があるんだよ。
 
O:なんか、あるのかもしれないですね。
 
H:で、はっぴいえんどの時、ロサンゼルスでレコーディングした時に…カラッカラじゃない、あそこ。音が飛んでくんだよね、まっすぐ、スピーカーから。「これ、引力弱いね」って(笑)
 
O:(笑)
 
H:思ってたんだ。うん。
 
O:でも影響はありますよね、絶対。
 
H:んー、あると思うんだ。
 
O:この湿度が…
 
H:参ったなあ。もうちょっといればよかったな、向こうに。
 
O:(笑)
 
H:えーと…いろいろ楽しいことはいっぱいあったよ。
 
O:そうですか。
 
H:うん…何があったかな、憶えてないけど。
 
O:(笑)
 
H:そうそう、お金落としたんだよね。
 
O:ええ…
 
H:まあ、小銭を替えて持ってたんだけど、足りなくなってまた両替して。1万円ぐらいかな…ごはん食べるのに現金で食べたりするんで。もうあまりにも歩いて、16,000歩ぐらい歩いて。
 
O:うんうん。
 
H:なんでかって言うと、ハロッズ (Harrods)に行ったんだよ。ものすごいね、あそこ。デパート。
 
O:でっかい、ですか?
 
H:迷路みたい。で、ピーターラビットのぬいぐるみ頼まれて…(笑)
 
O:(笑)
 
H:マジメだから僕は…
 
O:探しに行ったんですか(笑)
 
H:買ってかなきゃいけないと思って…あそこにしかないんだよ。そしたらもうブームは去ってて。
 
O:あー、映画がもう終わって…
 
H:店員に訊いてもわかんないんだよね。で、ベテランの女性店員に訊いたらやっとわかって。え、こんなとこに売ってんだ、って思って…で、本物のピーターラビットも置いてあるんだけど、それはマジメすぎてこわいのね。
 
O:あー。
 
H:漫画の、ぬいぐるみがおもしろいんだよね。胸押すとしゃべるし(笑)
 
O:(笑)
 
H:まあ、とにかく疲れて。その後タクシーに乗ってったら、タクシーにお金を落としちゃったのかな。
 
O:あら。
 
H:知らないまま、夜になってレストランに入って。美味しかったんだよ。あれ、お金…(笑)
 
O:(笑)
 
H:で、寄せ集めたらなんとか足りたの。
 
O:よかった…
 
H:足りなかったら一体どうするんだろう。あそこで僕働いて…
 
O:皿洗いから…(笑)
 
H:帰れなくなっちゃう…それもいいなあ。
 
O:(笑)
 
 
H:そんなことを話してると延々としゃべっちゃうんで、音楽聴かせてください。
 
O:じゃあ…最近イギリス製のライブラリーの10インチのレコードが何枚か届いたんですけれども、その中からエリック・ウィンストン(Eric Winstone)という楽団で、"Happy Hippo"です。
 
 
Happy Hippo - Eric Winstone
 
 
H:いいね、ハッピーで。先週はハッピーじゃない音楽をいっぱいかけたんだけど(笑)
 
O:ギャップが。
 
H:うん。やっぱり、いいよね。ハッピーもいいし、アンハッピーもいいですよね、音楽。えー…これ、イギリスのBBCのですかね?
 
O:BBCではないんですけれども、はい。でもBBCもおもしろい電子音楽あったりとか。
 
H:ありますよね。
 
O:いいですよね。
 
 
H:うん。えっと…イギリスの話ね。ブライトンという所は『小さな恋のメロディ(Melody)』でマーク・レスター(Mark Lester)が立ち寄るところなんですよ。
 
O:『さらば青春の光(Quadrophenia)』の舞台、ですよね。
 
H:それもそうだ。それは観てないんですけどね…なかなか、最初着いた時に、なんかあの…街にやんちゃな若者がけっこうウロチョロと…リゾートだからしょうがないんだよね。車の運転が荒っぽくて、ププー!っておどかされたりしてね。印象悪かったの、最初は。ここは磁場が悪いな、って(笑)
 
O:(笑)
 
H:で、ヘンな塔が建ってるんで、そいつの所為じゃないか、って思ったりね。なんか磁場が狂ってる、みたいな。でも、土地にいる人たちはやっぱり素晴らしいよね。
 
O:うんうん。
 
H:なかなか住みやすそうな…まあ観光地ですけどね。海岸縁のテラスでタンゴのダンスやってたりね。いいんだよ、なかなか。日本には無いなこれは。
 
O:無いですね。
 
H:ああやって踊る習慣というのがね、西洋にはありますよね。
 
O:ね。日本だとパラパラとかになっちゃいますから。
 
H:やめてくれ…
 
O:(笑)
 
H:まあ盆踊りぐらいかね。
 
O:そうですね。
 
H:まあそんな中で。ブライトンで公演した後に、若者たちが、男の子たちがね、「ハローミ」って呼ぶわけ。
 
O:(笑)
 
H:で、観に来てて。4,5人…5,6人かな?結構多い。スケートボードやってんだよね。
 
O:へえ。あ、いくつぐらいの…?
 
H:20代中盤かな?
 
O:若いんですね。
 
H:どっから来たのって言ったら、ダブリンとか言ってたから。アイルランドの方だよね。そっからスケートボードでやってきたのかな(笑)
 
O:まさか(笑)
 
H:まさかね…(笑)だから、そういう人も来てるんだ、って思って。で、彼らは"SPORTS MEN"っていう曲が好きで。
 
O:へえ。
 
H:自分たちの映像を作っててそれのバックに、昔作った"SPORTS MEN"を(BGMとして)使ってるんだよ。あれは歌詞がなんか…くるのかね?(笑)
 
O:(笑)
 
 
 
H:まあそんなようなこともあったりね。日本の人も居たし、イギリス人もいっぱい居たし。楽しかったな。また行きたいな。
 
O:みんな待ってるんじゃないですか、向こうで。
 
H:いや、もう飽きたんじゃないかな。1回観れば…
 
O:いやいや…(笑)
 
H:次は違うことやんないと。っていうかもう、変わり目なんですよ、僕。誕生日迎えた後。もう制作期間に入ってるんですよ、今、実は。
 
O:おおっ。
 
H:何にもやってないんですけど(笑)だって7月って大っ嫌いなんだよね、僕。悪いけど。7月に悪いな、ごめんなさい。すみません。
 
O:これからどんどん暑くなるし。
 
H:そう。学生時代は7月の誕生日の頃までずっと、期末試験だった…で、雨がいっぱい降ってたの、当時。まだ梅雨で。
 
O:梅雨ですもんね。
 
H:だから暑さと試験とで滅入ってたんですよね、7月は。その記憶があるんで。なんていう時に生まれたんだろう、と。夏に弱いんだよね、夏生まれが。
 
O:(笑)
 
H:いや、ホントに。まあそんなこんなで、身も心もおじいちゃんになりまして。何がめでたいんだか。えー…まだやりますけどね。
 
O:楽しみです。
 
H:いやいやいや…
 
O:いやいやいや…
 
H:はい。音楽かけましょうかね。
 
O:はい。じゃあ、また…さっきちょっと話に出ましたけど、BBC Radiophonicのジョン・ベイカー(John Baker)という人の曲を聴いてみましょうか。
 
H:はい。
 
O:電子音楽ですが…
 
 
 
Milky Way - John Baker
 
 
H:いい音ですよね。
 
O:ですね。
 
H:もうこういう音はあんまり出ないですね、今は。
 
O:んー。
 
H:なんかやりたくなるんだよなあ。
 
O:ぜし。
 
H:それで思い出したんですけど。
 
O:はい。
 
H:ブライトンだったか、ロンドンだったか…明和電機にいた人がね、あの、裏方でやってた人。電子部門みたいな人が来て。
 
O:はいはい。
 
H:えー、なんだ…レイモンド・スコットの使ってたあのシンセ、なんていうんだっけ?
 
O:シンセだと、クラヴィボックスですか?
 
H:それかな?
 
O:か、エレクトロニウムか。
 
H:どっちかだな。それを再現して作るみたいで。
 
O:んー。
 
H:それのプロジェクトをいまやってるんだ、って言って。なんかいろんな情報をくれて、小っちゃな電子楽器もらったりして。
 
O:へー。
 
H:一緒にね、DEVOの…
 
O:マーク・マザーズボー(Mark Mothersbaugh)。
 
H:が、参加してるみたい。
 
O:はいはい。マークのところに、エレクトロニウムは今、あるんで…
 
H:そうかそうか、それをまた、なんかやるのかしら。
 
O:ウンともスンとも鳴らないらしいです、モータウンで作ってたやつは。
 
H:鳴らないんだ(笑)じゃあそれを再現しようとしてるのかしらね。
 
O:んー…
 
H:あのね、その資料忘れちゃったの、きょう。今度ね。
 
O:今度…ぜし…楽しみに…
 
 
H:話は変わりますけど、こないだミシェル・ルグラン(Michel Legrand)が来てて。
 
O:はいはい、ブルーノートでしたっけ。
 
H:ブルーノートで、トリオでやってたんですよ。で、コメントを頼まれたんでちょっと書いたりしてね。その縁で観に行ったんですけど。初めて僕は観たんですよ。
 
O:あ、そうなんですね。
 
H:元気ですね。86歳だったかな…とにかく、まあ、僕よりおじいちゃんですけど、僕より元気ですね(笑)で、ピアノが上手い!
 
O:んー。
 
H:時々あの、暴走するけど、でも、すごい馴染んでるから。ピアニストなんだよね。非常にこなれてるというかね。でも、時々歌うんだよね。
 
O:あ、そうですか。おー。トリオでしたっけ、今回。
 
H:トリオだね。歌うとね…笑えるんだね、これが(笑)
 
O:(笑)
 
H:失礼ながら…おもしろかった。で、ほとんどジャズだよね。ジャズが好きだねー。で、"ロシュフォール"とか、ああいうヒット曲は最後に…タンゴでやったりね、いろんなスタイルでやってみせるっていう、ショウマン・シップがあるっていう。
 
O:んー。
 
H:その"Paris"っていう曲をかけたいんですよね。
 
O:あ、いいですね。
 
H:ミシェル・ルグラン。これは僕は小学生の時に毎日、毎朝、ラジオで聴いてた。
 
O:口笛の…
 
H:で、それは誰なんだろう、フランシス・ルマルク(Francis Lemarque)じゃない…で、探してくれたのが岡田くんですから(笑)
 
O:(笑)
 
H:えー、ミシェル・ルグランだったんだ!
 
O:意外と探しやすい盤だったっていう…(笑)
 
H:1950年代初期の…まだジャズの片鱗も無い感じのね、ムード音楽の。"A Paris"です。
 
 
A Paris - Michel Legrand & His Orchestra
 
 
H:というわけで…ラジオでは毎朝、前半の口笛とミュゼットの部分しかかからないんですよ。後半がこんなになるとは知らなかった(笑)
 
O:大盛り上がりですね。
 
H:そうですね。えー………もう、話すこと無い、ですね…疲れちゃった。
 
O:そういえば昨日、家の玄関で物音がして。
 
H:おや。
 
O:なんだろうと思って…知らない人が、鍵をガチャガチャ、ずっと。1分以上やって。
 
H:それ酔っ払いでしょ。
 
O:おばちゃんがフロアを間違えたみたいで。
 
H:あ、そっか(笑)
 
O:1分以上ガチャガチャガチャガチャやってて、こわ…って思って。
 
H:出たの?それで。
 
O:いや、放って置いてたんです。そしたら「あー!」って。表札見ておどろいて、別のフロアに行きました(笑)
 
H:それはまあ、しょうがないよね。
 
O:何だろうって思って。
 
H:それは猫もそうだもん。マンションで飼ってる猫が玄関から出ちゃうじゃない、そうするとパニックになって帰れないわけ。
 
O:うんうん。
 
H:で、(玄関の見た目が)全部おんなじじゃない。違う階のおんなじ所に行って、なんか大変なことになってるっていうね。
 
O:(笑)
 
H:前、僕もそういう事あったよ。僕は鍵かけてなかったんだけど、若者が入ってきちゃったの。酔っ払って(笑)で、なかなか帰んないんだ。
 
O:え、帰んない?
 
H:なんか居座っちゃうんだよ。しょうがないから引っ張り出して、説教して、追い返したの。そしたら携帯を落としていって、後で届けたんだよ。
 
O:親切…(笑)
 
H:いや、ほんっとにね。守らないと、身を守んないと、何が起こるか…僕は1曲かけたんで、じゃあ、もう1曲かけるかな…何がある?そっちは。
 
O:あ、じゃあ、アンブローゾ・オーケストラ(Ambrose Orchestra)をかけようかな。
 
H:はいはい。
 
O:じゃあまたイギリスですけど、1936年の録音で、"Creole Lady"という曲です。
  
 
Creole Lady - Ambrose and His Orchestra
 
 
H:カリプソのリズムですね。
 
O:そうですね。
 
H:イギリスが続くね。
 
O:なんとなく…(細野さんが)ロンドン帰りだったので。
 
H:ありがとうございます。
 
O:(笑)
 
 
H:えーとね…じゃあロンドンの話をもうひとつ。
 
O:はい。
 
H:市内に公園があるでしょ。ハイドパーク(Hyde Park)って言われてて。ニューヨークとおんなじような名前の。
 
O:はいはい。
 
H:その中にケンジントン・ガーデン(Kensington Gardens)っていう、これがまたすごい広いんだけど。あの、大きな都市があの大きな公園があるってすごいなって思って。
 
O:うんうん。
 
H:そこにはね、カモやリスがいるという。で、リスが…かわいいんだよ。出てくんだよ。人慣れしてるのかね。
 
O:リスかわいいですよね。アメリカの公園とかにもよくいる。
 
H:でも、リスが恐い人もいるのね。エサを漁りに来たりする…でもかわいかった。で、そこをあるくと、もう延々と歩くんで、大変なことになるんだけど。
 
O:(笑)
 
H:まあ、緑が多いね、ロンドンは。ビックリしたね、改めて。何度も行ってるのに、初めてそう思った。で、なんか街がいいじゃん。地震が無い国なんで。レンガ造りで。
 
O:そうですね。
 
H:ああいうレンガ造りの古い…みんな煙突があるんだよね。
 
O:んー。
 
H:今は使ってないような感じだけどね。煙突がいいなあ、と思ってね。みんなおんなじような形の煙突で。あんな建物が1軒、東京にあるだけで「オッシャレ~♪」ということになるんだろうけど。
 
O:(笑)
 
H:全部があれだからね。やっぱり違うね、都市って。んー。
 
O:日本はどんどん変わっていっちゃいますからね。
 
H:だから日本の良さって、まだほら、混沌とした下町とかね、いいじゃん。ああいう所が観光客に人気あるじゃん。自分だって観光客気分で、ああいう所好きだからね。そういうの整理しちゃうと…
 
O:ねー。
 
H:魅力無くなっちゃうね、なんにも。んー。ツルンツルンの都市じゃあね。なんとかしてくださいよ、っていう。見てるしかないんだからね。
 
O:んー。
 
 
H:そんなわけで…東京つかれた、っていう特集でした。最後に1曲ね。じゃあ、東京じゃなきゃどこだ、っていうんで、さっきはパリかけましたけど、もう1回パリかけちゃおうかな(笑)
 
O:(笑)
 
H:フランシス・ルマルクのオリジナルで聴いてください、"A Paris"。それではまた来週~。
 
 
A Paris - Francis Lemarque
 

2018.07.15 Inter FM「Daisy Holiday!」より

 

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 (以下すべてH:)

  こんばんは~。細野晴臣です。えー、自分的には非常に…久しぶりなんですけど。なんでかって言うと、6月末にロンドン、ブライトンっていうとこに行って演奏してきたんですね。まあ大体1週間ぐらいの旅でしたけど、帰ってきてからヒドい時差ボケで。治らないです。なんでだろう。こういうの初めて、ですね。でも、行った人はほとんどみんなそんな感じで。なんか、時間帯の所為なのかな。ただし、メンバーの伊藤大地くんと高田漣くんだけ、時差ボケが無い。どういう身体をしてるんだろう、と。そういう人もいるらしい。ただ、漣くんはワールド・カップボケしてて、なんか大変みたいですけどね(笑)
 それでですね…プレイリストってのを、どっかで僕は挙げてるんですよね。どこなの?Apple (Music)ね(⇒http://applemusic.com/haruomihosono50th)。じゃあね、そこら辺をなぞりながら音楽かけていきます。そのプレイリストの1曲目に挙げたのがね…『メッセージ(原題:Arrival)』という映画の"Kangaru"という曲ね。ヨハン・ヨハンソンJóhann Jóhannsson)という、惜しくも亡くなられた作曲家なんですけど、まずそれを聴いてください。
 
 
 
 
もう今や懐かしい、映画『メッセージ』から"Kangaru"という…これはエンドクレジットにかかってましたね。ヨハン・ヨハンソン作曲です。
 
 さて。ロンドンの気候ってのがね、いちばん良かったんですよ。とにかくあっち行って元気になっちゃって。一日何千歩も、多い時は16,000歩ぐらい歩いたりしてました。どんどん歩けちゃうという。もう、どんなに疲れてても足が前に出ていく、っていう。「ロンドンはどうだったのか」ってまだあんまり訊かれてないんですけど、おもしろかったですね。日本と変わらないです。演奏してる時のお客さんの反応がね。日本の方が多いかっていうと、そうでもないんですよね。もちろん、いらっしゃったんですけど。で、ブライトンに移って、そこがまた素晴らしい。とにかく連日、雲ひとつない快晴が続いてて、ここはロンドン、イギリスなのかと思うほどでしたけど。すっかり僕の名前がね、みんな「ハルオミ」じゃなくて「ハレオミ」と思ってるんじゃないか、と。なんか曇ったり雨が降ってると僕の顔を見るんですよね、スタッフが。
 (日本に)帰ってきて、これが暑くて。なんかニュースがね、いっぱいあったり。事件が多かったり。もちろん、西日本の豪雨が大変でしたけど。いろんなことが起こる国ですよね。まあ、それで誕生日を迎えちゃったんですよね、その頃。帰ってきてから。大体人間って誕生日前後が体調が悪いんですよ。なんかバイオリズムというかね、免疫が低下するのか。今もちょっと鼻声なんですけど。とにかく時差ボケがヒドい。ですから、夜寝らんない。まあ、昔から寝らんないんですけど(笑)最近はね、年とって、朝型になってきたと思ってたら…また夜型になっちゃいそうで。これは困ってるんですね、実は。
 で、寝らんないので何してるかっていうと、『ツイン・ピークス(Twin Peaks)』観てるんですよ。『リターン(The Return)』っていうやつ。やっと、DVDが出たんですね。それまでは謎だったんですよ。テレビ局でしか観られなかったという。ですからやっと観れて…なんともいえない気持ちで観てます。や、おもしろい、ですね。あのテンポというか。で、なんかいろいろカブるところがあったりね。例えば、パリス・シスターズ(The Paris Sisters)の"I Love How You Love Me"という曲。これ僕カヴァーしてるんですけど。随分前ですけど、アルバムに入れたんです(⇒『Heavenly Music』,2013年)。そのオリジナルというか、パリス・シスターズ版、聴いてください。それが『ツイン・ピークス』で突然かかったんです。
 
 
I Love How You Love Me - The Paris Sisters
 
 
短いね。2分ちょっとしかないですけど。えー、パリス・シスターズ。ホントに画期的な3人女性グループでした。フィル・スペクターPhil Spector)系、ジャック・ニッチェ(Jack Nitzsche)がプロデュースしてます。1960年代なんですけど。まあ、今現存してたら、たぶん、デヴィッド・リンチDavid Lynch)の映画に出てもおかしくない存在ですよね。
 で、『ツイン・ピークス』って23年ぶりだったのかな。展開(に頭)が追いつかないですね。先が読めなくて。なんという世界だろう、と。突然アートの世界が入ってきたり。まあ、思うまま作ってるんで、素晴らしいですよね。今のテレビ界には有り得ないような展開なんですけど。それで思い出すのが23年前のオリジナル、本編ですよね。あの頃もかなり没頭してましたね。ビデオ(VHS)の時代でしたから、それを借りて全部観てて。重要な場面を全部つなげたりしてね。その時のテーマ(曲)というのが、「ローラ・パーマーのテーマ("Laura Palmer's Theme")」これがね、残るんですよね。染み込んでくるんですよね。それを聴いてください。アンジェロ・バダラメンティ(Angelo Badalamenti)の作曲です。
 
 
Laura Palmer's Theme - Angelo Badalamenti
 
 
 えー、アンジェロ・バダラメンティという作曲家ですね。この前、『ツイン・ピークス』の前に、『タフガイは踊らない(Tough Guys Don't Dance)』という映画の音楽やってたんですけど。これはね、ビデオで僕は観てて…DVDになってるかどうかは知らないんですよね。ほんっとに知られてない映画なんですけど、なんと、ノーマン・メイラー(Norman Mailer)という活動家が作った映画なんですけど、雰囲気はまるで『ツイン・ピークス』みたいで。デヴィッド・リンチはおそらく、それにすごく影響されている、とは思うんですね。で、そのバダラメンティの音楽も、こういう世界に近いんですよ。ちょっと今聴くことができないのが残念なんですけど。もうひとつのルーツというのかな。それはですね、『ローズマリーの赤ちゃん(Rosemary's Baby)』という映画。ミア・ファーロウ(Mia Farrow)主演、(監督は)ロマン・ポランスキーRoman Polanski)ですね。ジョン・カサヴェテス(John Cassavetes)も出てます。これの音楽を聴いてください。共通点があるんじゃないかな、と思います。
 
 
Rosemary's Baby Main Theme - Krzysztof Komeda & Mia Farrow 
 
 
"Rosemary's Baby Main Theme"、です。歌は…声はミア・ファーロウで、作曲が…コメダ、と。コメダ珈琲じゃないんですけどね。クリストフ・コメダ(Krzysztof Komeda)、なのかな、うん。これはやっぱり、かなり影響を与えていると思いますね。映画自体がね。
 
 さてと。ちょっとここで告知をしたい、と思いますが。今日来れなかったんですよね、忙しくて。コシミハルの公演があるんで、今追い込みの真っただ中なんでしょうね。えー、公演日時、2018年7月18、水曜日。開演19時。そして19日、木曜日。これはマチネーですね。開演が15時と19時、2回あります。公演名『フォリー・バレリーヌ「秘密の旅」』。場所はですね、渋谷区文化総合センター大和田伝承ホールです。芸術監督・音楽監督・特別出演でコシミハルがやりますね。それで、共同振付に森本京子、林かおりという、かつての仲間がやってくれてます。で、若手のバレリーナが何人か…随分出ますね。照明は関根(聡)さんですね。これは僕も観に行きたいと思います。いろんな曲が、非常に豊かにかかる感じですね。ぜひ皆さんも観に行ってあげてください。
 
 
 
 で、話は変わって。誕生日の前の日にCAYという青山のクラブで、なんかイベントがあったんですけど。昔、神社でよくやってたモンゴロイド・ユニット(⇒環太平洋モンゴロイドユニット)というのがあるんですけど、その仲間である鎌田東二さん。法螺貝と笛なんですよね。それから三上敏視さんは太鼓と唄です。そういう人たちとやったんですけど。そういう時でも僕は生ギターを持ってって"Radio Activity"、そして"バナナ追分"をやったり。最近ね、そういう楽曲…歌ものが多いんで、それ以外のことがあまりできなくなってるんですけど。そしたら、会場にいた外国人2人がね、舞台の方にやってきて。段ボールがハッピーバースデーのカードになってて、でっかい段ボールに書いてるんですよね。名前忘れちゃったな…えー、カイルちゃんと、なんとかちゃん。ちゃん、自分で「ちゃん」付けてるんですよね、ローマ字で書いてあるんだけど。まあ仲のいい男の人…30代なのかな。仲良すぎる感じもあるっていう、2人がね。やさしい気持ちで書いてくれて。楽しいカードなんですよ。あまりにもそれが楽しいんで、写真撮ったりしてたんですけど。まあ、この最中に写真、アップしちゃったんですよね。この最中っていうのはつまり、いろいろな事件が起こるという最中にですね。まあ、しょうがないですよね。誕生日は来ちゃうんで。
 

 

  

 で、決して…なんていうの、楽しくないですよ、誕生日は。何にもやんないです。そんなことがあったぐらいで。発表しますと、71歳ですから。もうおじいちゃんですね。完全に。100%おじいちゃんですよ。爪を見ればわかる。足の爪。汚ったないんだよね(笑)しかも遠いじゃない、自分から足の爪って。届かないんだよ(笑)昔は近かったんですよね、地面も。足も。だから転んでも痛くなかったでしょ、そんなにね。今転ぶと大変ですよ。
 
 えー、それで…そんなことがありつつ。ロンドン、ブライトンの話は今度、バンドのメンバーを呼んで話したいと思います。きょうはこの続きで、もうちょいかけられますかね。えー、次の曲…「いつか夢で」という曲。これは『マレフィセント(Maleficent)』という、映画がありましたよね。それの最後にかかるディズニー定番の歌なんですけど、すごい暗くやってます。ラナ・デル・レイ(Lana Del Rey)の歌です。"Once Upon A Dream"という原題です。 
 
 
Once Upon A Dream - Lana Del Rey
 
 
 えー、じゃあきょうの最後の曲が、先ほどもかけた『ローズマリーの赤ちゃん』の主演だったミア・ファーロウのもうひとつの傑作ですね、『フォロー・ミー(Follow Me!)』。この映画はですね、キャロル・リード(Carol Reed)監督の遺作ですね。1972年です。まあ時間が無いので、曲をかけましょう。"Follow Me"、ジョン・バリー(John Barry)の作曲です。
 
 
Follow, Follow - Lana Del Rey
 
 

2018.07.08 Inter FM「Daisy Holiday!」より

世代的に完全に後追いな上に大遅刻かましてる引用者にとって大変意義深い3週間でした…


※願わくば'90~'00年代初頭辺りまで総括してほしい。はやく生まれたい…(?)

 

daisy-holiday.sblo.jp

 

H:こんばんは。細野晴臣です。さあて、これはね…
 
惣:あー、いっぱい話しちゃったね。
 
H:思わぬ、展開でね。長くなっちゃって。(放送が)3週(分)になっちゃうんでしょ?
 
惣:しょうがないんだな、これね。
 
H:で、一応そこに…
 
O:あ、岡田です。居ますよ、聴いてます。
 
惣:ボー・ハンクスが出たんだよね。
 
O:ボー・ハンクスのレイモンド・スコットカヴァー集、発売中です。きょうは聴いてます。
 
 
H:はい。じゃあ鈴木惣一朗くん。
 
惣:はい。じゃあノンスタンダード(NON-STANDARD)レーベルの時系列に沿って話をしてみようと思います。
 
H:オッケー。
 
惣:それでですね…(細野さんは)もう全然憶えてないから、何が行われてたのかを僕が言いますんで、何となく印象に残ってることがあれば…
 
H:いやー、教えて欲しいね。
 
惣:とにかく…『S・F・X』のレコーディングは1984年の11月ぐらいの時点でだいたい終わるんですよ。
 
H:うんうん。
 
惣:最後は"Dark Side Of The Star"というアンビエントで…
 
H:うん。
 
惣:現代音楽には「騒音音楽」という言い方もありますけれども、かなりtoo muchな…その後細野さんは「O.T.T.(Over The Top)」というコンセプトも仰ってますが、みんなを静める意味で…
 
H:チルアウト(chill out)だね。
 
惣:チルアウトですね。それを作るんですよ。それが1984年の11月11日と記録が残っていて…
 
H:具体的だね。
 
惣:そこで、まあ納めた、というか。
 
H:はい。
 
惣:でも実はそこから…レコーディングは終わりましたが、細野さんはスタートしていくんですね。つまり、レーベルとしてスタートしていく。
 
H:うんうん。 
 
惣:その翌月、12月に「細野晴臣エキゾチック・ナイト・ショー」という…
 
H:全然憶えてない(笑)
 
惣:僕は憶えています。なぜなら出てるから(笑)これは六本木の…前回も話がありましたが、WAVEの下のシネ・ヴィヴァンで。
 
H:あッ。そう言われると思い出す。
 
惣:夜中に…なんて言うんだろう、コンベンション?ライブ?みたいなものを。
 
H:なんか…どうだったんだろう、あれ。
 
惣:細野さんは"Body Snatchers"をこの時やってます。西村(麻聡)さんと一緒に。
 
H:あ、そうだ。西村くん、ベーシスト、居たねぇ。
 
惣:そう、西村さんとやっていて、僕それは見ているんですが。
 
H:見たんだ。
 
惣:だって出てるから(笑)中沢新一さんもいらっしゃいました。
 
H:あ、そうだ。
 
惣:で、ちょうど「観光音楽」なんて言い方をしている時期で。
 
H:そうだ、そうだ。
 
惣:僕は中沢さんに「ワールドスタンダードは観光音楽だ」って言われて、うまいことを言う人だな、と。その時は何も知らなかったんで、思いましたけど。"Body Snatchers"は僕、その時初めて聴いたんで、ビックリしました。
 
H:リリースする前だったのかね。
 
惣:そうです。で、翌年に入っていきます。こういう感じで流していっていいですか?
  
H:もちろん。
 
惣:で、憶えていることだけ言ってもらえればいいので。
 
H:時間無くなっちゃうけどね。
 
 
 
惣:そう。これ、締めないとダメになっちゃうんですけど…で、1985年。これをノンスタンダードの創成期と僕は思っていますけど。
 
H:はい。
 
惣:1月にMIKADOのアルバムが。
 
 
Un Naufrage En Hiver (冬のノフリージュ) - MIKADO
 
 
H:MIKADOか…
 
惣:MIKADOは細野さん…というか、YMOMIKADOをとっても好きだった。
 
H:好きだったね。
 
惣:それは、誰が見つけてきたんですか?
 
H:確か(高橋)幸宏と同時期に…ロンドンからカセットをいっぱい送ってくれる人がいて…
 
惣:へー。トシ矢嶋さんとか?
 
H:そう、トシ矢嶋。
 
惣:よく知ってるでしょ。
 
H:んー、よく知ってるね。その中に(MIKADOが)入ってたんだよ。
 
惣:あ、偶然?
 
H:うん。それがもうピカイチだったっていうか、音が良かったのね。それがきっかけで、ノンスタンダードで呼んだ時に2人が来たわけ、男女。フランスからね。
 
惣:はい。
 
H:で、録り直したんだけど、音が良くなかった(笑)そのことがすごく心残りというか。
 
惣:その「音が良くなかった」というのは、ちょっと僕も他人事ではなくて。
 
H:うん。
 
惣:細野さんはデモテープとか、カセットの音とか、そういう音が好きだった。
 
H:好きだね。
 
惣:たぶん今の耳で聴くと、最初のMIKADOは、細野さんが初めて聴いた時のものはローファイで、音があまりハイファイではなくて。
 
H:そうね。
 
惣:で、日本に来たらハイファイになっちゃった、という流れかな、と思うんですけど。
 
H:そうそうそう。
 
惣:この「音質と音楽性」って、音質が失われると音楽性もさらわれていく部分があるという…
 
H:その通り!!
 
惣:(笑)ということが、近年になってやっとわかってきました。
 
H:その通りなんだよ。これは大事な…誰も指摘しないんだよ。
 
惣:誰も指摘しないんですか?音響と音楽性のこと。
 
H:気がついてないんだよ。例えばね、1950年代に流行った歌謡曲、好きなんだよ。♪潮来花嫁さんは~、とかね。音が全部良いの。
 
惣:はい。
 
H:まあ"潮来花嫁さん"はどうか知らないけど、他の良い曲もリ・レコードが1970年代に流行るんだよね。
 
惣:リ・レコーディング、はい。
 
H:ステレオになって、ハイファイになって。それ聴くと、あんなに好きだった曲が(もう)好きじゃないワケだ。それはなぜかって言うと音質が違うからだよ。
 
惣:ね。
 
H:だからそれは大事なことなんだ、と、その時思ったわけ。
 
惣:今はIMAXハイレゾ、みたいな。くっきりハッキリ、4K8K!どうですか!みたいな感じでしょ。そんなに見えてどうするの、って、ちょっと古いですけど。
 
H:いや、本当にそう思うよ。
 
惣:そんなに聞こえてどうするの、って耳鳴りになると余計そう思うんですけど(笑)そんなに聞こえなくてもいいんじゃないかっていうのは…
 
H:谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』、これを読んでほしい。
 
惣:あ、言おうと思った…
 
H:「見えないことの美」っていうのはね。
 
惣:あります。繰り返しになりますけど、震災。2011年のころに細野さんとどっか繁華街にいて。『陰翳礼讃』の話をしたのをよく憶えています。それは渋谷の交差点の街が暗かった。電車も暗かった。
 
H:そうなんだよね、うん。
 
惣:で、(細野さんは)「気持ちいいね」、つって、暗いの気持ちいいねって、わかるわ~って(思って)。
 
H:うん。
 
惣:「(普段は)明る過ぎなんじゃない?」、みたいなことを細野さんは言っていて。それは音楽も同じなんじゃないか、って、あの辺りから疑り始めるというか。
 
H:なるほど。たとえばスリー・サンズ(The Three Suns)が好きなのは…素晴らしい陰影感があるでしょ。ロウソクの中で聴いているような音楽だ(笑)強弱とかね。
 
惣:うん。
 
H:今の音楽に無いのは強弱だから。陰影と強弱が無くなっちゃった。
 
惣:今朝、松本隆さんが「なぜ神戸にいるのか」っていうインタビューを受けてたんですよ。それは「風が吹いているからだ」って…
 
H:風男だね。
 
惣:その中で陰の話をしていたんですよ。で、結局『陰翳礼讃』の話をしていたんですけども。
 
H:ほうほう。
 
惣:光と陰…詩を書くときに陰の部分をまず描く、と。
 
H:なるほど。
 
惣:だけど、まあ阿久悠さんも生前に仰っていましたが、光の部分をみんな描くわけですよね。曲でも詩でもサウンドでも。で、陰の部分を描くことで立体的に見える、と。松本さんはいいこと仰りますね、と思いました。
 
H:まあそういう…クリエイティブな世界に欠かせない要素なんだろうね、うん。
 
惣:そうですね。この「光と陰があるから立体的に見える」。光だけだったらペタッとして、二次元的に見えるというか。
 
H:日本人は戦後、蛍光灯で暮らすようになったから。陰影が無くなっちゃった。
 
惣:ここ(=収録スタジオ)蛍光灯無いですね、やっぱり。
 
H:蛍光灯廃止。うん。
 
惣:蛍光灯、疲れるんですよね。僕は浴室を真っ暗にして寝て…入ってるんですよね。
 
H:寝てんの?
 
惣:寝てる時もあるけど。そんなに浴室が明るい理由があんのかな、って思って。洗う時に。
 
H:そうだよね。
 
惣:だから電気点けないで入ってたり。
 
H:まあわかるわ、それは。
 
惣:それが気持ちいいんで。…ちょっと脱線しましたが、戻ります。
 
H:はい。
 
 
惣:『S・F・X』を出した後、というか、直後になってくるんですけども、細野さんはそのまんま…何をやっていくかというと、ジェノヴァ、イタリア。その仕事が来るんですよ。1985年の春に。
 
H:はい。
 
惣:この時はイタリアに行かれてますよね?
 
H:行ってるよ、ジェノヴァに。インスタレーションを、メンフィス(Memphis)っていうデザイナーグループのね。コラボレーションをして、彼らがデザインをしたインスタレーションに音を…エンドレステープを仕込んで。公園に。ジェノヴァの公園にね。
 
惣:キヨッソーネ(Chiossone)公園というところだったそうです。
 
H:ああ、そうなんだ。
 
惣:で、そのエンドレステープが『エンドレス・トーキング』というアルバムに。
 
H:そうそう、まとめたんだ。
 
惣:それをやって、日本に帰ってきて。1985年の春、5月、当時NHKで『大黄河』という…
 
H:ん?
 
惣:『大黄河』っていう映画…ドラマがあったんです。
 
H:そうだっけ?
 
惣:それの(音楽の)コンペティションに細野さんと僕と宗次郎さんが入って、宗次郎さんが勝つんです。
 
H:あ、そうなの?知らなかった(笑)
 ※引用者註:『大黄河』はドラマ・映画ではなくドキュメンタリーとのこと。

NHK特集 大黄河 | NHK名作選(動画他)

 
惣:それを作った後に、YEN(レーベル)の卒業記念アルバムっていうのが出るんですよね。
 
H:ああ、まだYENがあったんだね。
 
惣:そう。♪又会う日まで~、っていうやつ。
 
H:なるほど。
 
惣:あれを僕(当時既に)ノンスタに入ってるんだけど、買いましたからね、普通に(笑)
 
H:ああそう(笑)
 
惣:あれ、終わってないんじゃない?みたいな。なのに始めちゃってていいの?みたいなことをビックリしてる時にですね、『観光』っていう本が出るんです。すごいでしょ?で、『観光』って本を僕は読んでる間に…
 
H:うん。
 
惣:「はっぴいえんどっていうのが再結成するからニッポン放送に来い」って言われたのが1985年6月です。
 
H・O:(笑)
 
H:ついてけないわ…
 
惣:「ALL TOGETHER NOW」という、国際青年記念、っていうね。
 
H:唐突に来たね、あれは。
 
惣:細野さん、よく受けましたね、これ(笑)
 
H:いやー、半信半疑だったね。なんか。困ったことは確かだよ。そんな時期じゃないな、っていう。
 
惣:まあ、みんなで相談したんだと思いますけれども…「ALL TOGETHER NOW」というコンサートが1985年6月15日に国立競技場で行われ。
 
H:んー。
 
惣:ノンスタンダードのメンバーはバックコーラスで、"さよならアメリカ、さよならニッポン"を合唱するっていう。
 
H:小西(康陽)くんがいたね(笑)
 
惣:小西くんも僕もみんな、ピチカートも(コシ)ミハルちゃんも、みんないました。で、まあそれがありました。
 
H:うんうん。
 
惣:で、細野さんは『コインシデンタル・ミュージック』っていう…当時CMをね、いっぱい…年がら年中やってて。
 
H:働き盛りだね。
 
惣:それのレコーディングに入っていくんですよ。
 
H:そうだね。
 
惣:で、ちょっとオーバーワークしてたのは事実で。かなりヘビースモーカーだったし、すごいイライラしてたし。
 
H:うん。
 
惣:で、今の平野ノラさんじゃないですけど、すごいでっかい携帯(電話)持ってて。
 
H・O:(笑)
 
惣:すごい憶えてるんですよ、僕。生まれて初めて携帯を見たのが細野さんだったんで…あの、平野ノラ調のヤツですよ。わかりますよね?
 
H:知ってるよ(笑)重いヤツね。
 
惣:トランシーバーみたいなヤツ。「はい、もしもし?!」っつって。なんかこう、この人大丈夫かな、みたいな(笑)
 
H:(笑)
 
惣:打ち合わせがね、まあ今も多いと思いますけど、非常に多く。
 
H:打ち合わせね…
 
惣:毎日打ち合わせしてましたよ。なんか。2、3人と。
 
H:やだやだ…
 
惣:もうボロボロっていうか。打ち合わせが終わったらそのままグリーン・バード(杉並)っていう、テイチクの、高円寺の方にあったスタジオに行って、朝までレコーディングするという。
 
H:そうだっけ。
 
惣:で、朝焼肉を食べて終わるという。体に非常に悪い生活を繰り返しながら、1985年は夏、7月に『銀河鉄道の夜』(発売)という…
 
H:その流れで作ってたわけ?「銀河鉄道」は。
 
惣:この流れです。春に作って、7月にはもう上映です。朝日ホールでトークイベントなんか…やった後に、もう今度、『ボーイ・ソプラノ』。ミハルちゃんのアルバムのレコーディングの手伝いに入っていくわけですよ。
 
H:すごいね。
 
惣:これはフリーダムっていう、代々木にね、今もありますけど。あそこに僕は見学しに行ったのを憶えてるんです。細野さんはもう、ヒゲで真っ黒けで。
 
H:(笑)
 
惣:カツ丼を出前で取りながら…
 
H:そんなことも憶えてんだ(笑)
 
惣:こういうことはよく憶えてるんです、人はね。でも、そのスピーカーから出てる音楽は、"野ばら"だったかどうかちょっとわかりませんけど、まあ素敵な音楽なわけ。
 
H:カツ丼じゃなかったね。
 
惣:その素敵な音楽とカツ丼とヒゲというのが、僕の『ボーイ・ソプラノ』の思い出…
 
一同:(笑)
 
 
野ばら - コシミハル
  (from『ボーイ・ソプラノ』)
 
 
 
 
惣:まあだから、現場というのはこういう厳しい世界なんだと。
 
H:そりゃそうだ…
 
惣:そんなに生易しい世界じゃないんだな、ということを知りながらですね、それが出て、先ほどのはっぴいえんどのライヴ盤(『THE HAPPY END』)がソニーで、すったもんだしながら出てるんですよ。
 
H:うんうん。
 
惣:これが1985年の9月ですよ。で、出まして。出たと思って、少し休めばいいものを、「F.O.E.」プロジェクトスタート。
 
H:休めばいいのに…(笑)
 
惣:休まないの。観音崎行ったんですよ、マリンスタジオって。
 
H:知ってるよ。
 
惣:いいとこだけどちょっと煮詰まるところで…
 
H:そうね。
 
惣:あ、「F.O.E.」はフレンズ・オブ・アース(Friends Of Earth)の略。
 
H:そう。「foe」ってそのまま訳すと「敵」になる。ヘンなの。
 
惣:そうわかっていたのに、そのままつけちゃったんですよね。
 
 
 
惣:えー、1985年。1985年の話をしています。さっき言ってた『ボーイ・ソプラノ』は11月21日に発売されます。F.O.E.始まってますよ。
 
H:んー。
 
惣:出たなと思ってたら、1985年の12月、師走に渡米します。
 
 
Sex Machine - F.O.E With James Brown
 
 
H:あれー…?
 
惣:例の取材です。
 
 
惣:まず最初に会ったのはビル・ラズウェルBill Laswell)。
 
 
惣:ニューヨークで会います。その後、アフリカ・バンバータAfrika Bambaataa)。
 
H:あー!
 
惣:憶えてますか。来日もしましたよね。
 
H:あのね、バンバータのいる事務所に行って"Body Snatchers"かけたの。聴かせたの。そしたら「クレイジー」って言われた。
 
惣:褒められたの?
 
H:いや、なんか…恐かったのかな。
 
惣:細野さんが?
 
H:じゃなくて…
 
惣:サウンドが?
 
H:うん。褒めた感じはしなかったんだよね。
 
惣:かなり、こう…強めの音楽ですからね。
 
H:うん。
 
惣:それで…まあアフリカ・バンバータに会い、それが12月10日なんですよ。で、12月11日にドクター・ジョンDr.John)に会うんですよ。
 
H:そうだっけ…?
 
惣:憶えてる?ニューヨークです。
 
H:あれ…全然憶えてないな。
 
惣:これすごいっすよ、この辺。取材ばっかりしてる。で、12月12日に、問題の日、ジェームス・ブラウンニューオーリンズで会うんです。
 
H:…アトランタだよ。
 
惣:アトランタなの?じゃあこれ間違ってるのかな…
 
H:なんか、野球場みたいな有名なところで、スーパーボウルみたいなところでライヴがあって。
 
惣:楽屋に?
 
H:うん、楽屋でインタビューした。それはたぶん前だったか後だったか、ライヴのね。もうね、(JBは)普通じゃないんだよ。なんかね一人で興奮して、人の話なんか聞いてる状態じゃないの。「Sex Machine!!」って連呼してるんだよ(笑)
 
惣:ホントに?それ。ものの本にはそう書いてありますけど。
 
H:ホントなんだよ。だからこっちも常軌を逸したことを言ってるんだよ。
 
惣:「Body Snatchers!!」とか。
 
H:うん…そうなの?(笑)
 
惣:細野さんが「Body Snatchers!!」って言ってたら会話になってないじゃないですか(笑)
 
H:全然なってなかった。まあ無理もないな、と思ってね。ライヴの時だから。
 
惣:この様子っていうのはその後、FMでオンエアーされたり、雑誌に載ったりして僕はその後知るんですけど。
 
H:そうだね。
 
惣:で、ジェームス・ブラウンに会った後、ローリー・アンダーソン(Laurie Anderson)に会ってるんですよね。
 
H:僕?
 
惣:12月13日。
 
H:どこで?
 
惣:ニューヨーク。ローリー・アンダーソンに会ってるんですよ。いいことしてますね、これね。
 
H:全然憶えてない(笑)
 
惣:この1週間、野中(英紀)くんが附いていったんですけど、通訳的に。で、1986年で発展期というか、ノンスタンダードが終わる年になっていくんですが。
 
H:うん。
 
惣:今の取材の様子は週刊FM、月刊プレイボーイとかいろんなところで掲載されたり、FM東京では「サウンド・マーケット」という形でずっと放送していて、僕もそれを聴きました。
 
H:そっかそっか。
 
惣:で、それがあった後に、JB来日するんですよね。
 
H:そうなんですよ。
 
惣:1986年で…青山CAYで、JBを呼んで、記者会見するんですよ。そんなことあります?
 
H:全っ然憶えてないよ(笑)
 
惣:そんなことあったら絶対見に行ったんだけど、これ行ってないんですよ。知らないんです。
 
H:夢なんじゃないの?
 
惣:調べた方がいらっしゃって、そういう風に書かれています。
 
H:へえ…
 
惣:で、これが2月3日なんです。1986年2月3日。それで翌日、2月4日に大阪城ホールでやるんですね。
 
H:ライヴね。
 
惣:F.O.E.とジェームス・ブラウンのジョイントライヴです。
 
H:そこだ、もう…それはね、忘れられない。
 
惣:この辺ちょっとツラい時期ですね、細野さん。で、僕はちょっと、ノンスタンダードそんなに続かないかなって、思い始めてた時期ですが…
 
H:(笑)
 
惣:いや、続いてほしかったんですよ?続いてほしかったんですが、続かないんじゃないかな、と、しっかり思ったのが2月8日、日本武道館で。
 
H:うん。
 
惣:東京でフレンズ・オブ・アースのジェームス・ブラウンとの…
 
H:あ、そっちを憶えてるんだ、僕は。
 
惣:大阪城ホールの後が武道館だった。
 
H:そうだったんだ。それはツラい思い出だ。
 
惣:細野さんはツラい思い出だったんで、今は訊きませんが…
 
H:いや、ジェームス・ブラウンを呼ぶっていうんで出てくれっていうんで、最初はこっち(F.O.E.)がトリだったわけ。そんなバカな、って言って前座にしてもらったわけ。
 
惣:うん
 
H:そしたらやっぱり、予想以上にブーイングがすごくて。ジェームス・ブラウンのファンっていうのはすごいコアだから。
 
惣:原理主義なんですよね、ソウルの。
 
 
惣:細野さんのソウルがわかっていないというか…
 
H:いや、わかるわけないっていうか、全然お呼びでない…
 
惣:まあ、そこでやってた音楽、スパーズ・アタックさんとか出てましたけど、ちょっとtoo muchな音楽だったので…
 
H:うん。
 
惣:細野さんが逃げるようにステージを降りられたのが印象的でした。
 
H:逃げたんだよ。座布団飛んできたから。
 
惣:座布団、ホントは無かったんですけどね。「座布団飛んだ」ってことに僕が言ったらなっちゃったっていう…すみません(笑)でも、この時にノンスタンダードの終焉を強く感じ始めた。
 
H:いちばん感じてたのは僕だよ。
 
惣:2番目は僕です。
 
H:そっか(笑)
 
惣:でね、それを感じさせた音楽が、その後に来るんですよ。
 
H:なんだい?
 
惣:それは、吉田喜重監督の『人間の約束』という(映画の)音楽を…
 
H:あー、その後なんだ。
 
惣:よくこれね、スタジオでも聴いてました。それがねえ、(細野さんは)「音楽要らない、いらない」って言って。
 
H:ちょうどね、僕の父親が倒れた時期なんだよ。
 
惣:そうそう、お父さんね。
 
H:で、映画の内容とシンクロしちゃうの。すごい気持ちが暗くなって、できない、ってつい言っちゃったんだ。今はそれを反省してるんだけどね。
 
惣:それが1986年の2月24日です。
 
H:いろんな事があったな。
 
 
 
惣:で、その翌月、3月20日。フレンズ・オブ・アース自体の『Sex Energy & Star』、最後のアルバムなんですけど、そのレコーディングが終わります。
 
H:なるほど?
 
惣:つまり、この間もレコーディングやってるんです。F.O.E.の。
 
H:うんうん。
 
惣:で、3月23日。レコーディングが終わったのは3月20日ね。その3日後にトラックダウンが終わった後、骨折します。
 
H:そこなんだよ。
 
惣:これ。この日の夜中。よく憶えてるんで。
 
H:世の中はね、ハレー彗星がやってきたの。
 
惣:えー、ハレー彗星が来たのは翌月なんです。
 
H:そっか。
 
惣:細野さんは見に行くんです。
 
H:見に行くね、翌月。うん。
 
惣:だから、まあシンクロしてるといえば、ハレー彗星の動きと細野さんの骨がシンクロしてたかもしれないですけど。
 
H:(笑)いやいや、そうやって憶えてるんだけなんだよ。ハレー彗星の年に足の骨折ったっていう。
 
惣:ココス島に行くんですね。細野さんは。
 
H:大雪が降ったんだよ。足の骨折った日はね。
 
惣:左足…
 
H:そうです。くるぶしを折っちゃって。
 
惣:パーカッションの浜口茂外也さんに発見され。
 
H:助けられ。「おじいちゃんが倒れてるよ」って誰かに言われて。見たら僕だったっていう。
 
惣:浜口さんが見つける辺り不思議ですよね。
 
H:不思議だね。おんぶしてくれて。
 
惣:で、僕が自分のを載せるわけじゃないですけど、1986年3月24日、翌日。
 
H:うん。
 
惣:僕とピチカート・ファイヴの小西くんが細野さんにインタビューする仕事があって。
 
H:そうね。
 
惣:それで僕は、(細野さんが)前日に足の骨を折ったって聞いたんで、流れたと思ってたら「いいよ」なんて言っちゃって。
 
H:んー。
 
惣:まあ、今とあんまり変わらないんですけど。「いいよ」ってなんでいいんだろう、みたいな感じなんですが。細野さんのお家に行きまして。
 
H:ああ、来たんだね。
 
惣:朝まで話を聞かせてもらいました。でも、その時の細野さんの様子は、まあ嬉しそうで。
 
H:解放されたからね。
 
惣:それまでの非常にツラそうな様子を見ていたんで、あー、これはホントになんか、終わりだ終わりだ!みたいな感じになっていって。
 
H:うん。
 
惣:ハレー彗星を見に行ってしまうんで。
 
H:そうそうそう。
 
惣:完全に、僕はね、終わったっていう…
 
H:そう、終わったんだよ(笑)
 
惣:でね、その月末が契約更新の月だったんですよ、テイチクとの。ちょうど。
 
H:あー、そう。
 
惣:それを更新しなかったんですよ。細野さんは。これは離脱です。ノンスタンダードレーベルのオーナーが、いち早く離脱されました。
 
H:(笑)
 
惣:で、残された所属バンド、アーティストはプロデューサー不在のままレコーディングを続行します。
 
H:ああ、そう。
 
惣:当時僕は知りませんでした。細野さんが契約更新しなかったことを。で、細野さんがちょっと休むんですよね、やっぱり。
 
H:んー。
 
惣:で、僕たちは、ワールドスタンダードとかSHI-SHONEN、ピチカートやアーバンダンスとかはレコーディングしてました。ずっと。
 
H:やってたんだ。
 
惣:でも細野さんはもうやんないわけですよ。居なくなっちゃったな、なんて思っていたら1986年の7月にミハルちゃんの『エコー・ド・ミハル』のレコーディングに入るんですよね。たぶん骨が治った。
 
H・O:(笑)
 
惣:それはSixtyレコードというところから、今は亡き。メルダックにありました。
 
H:ありましたね。
 
惣:Sixtyレコードと細野さんがね、急接近するという時期がこの先ちょっとあるんですけれども。
 
H:向こうの人が急接近してきたんだけどね。
 
惣:あ、細野さんがじゃないですよ、向こうのレーベル側が。近田春夫さんを筆頭に、細野さんのノンスタンダードとの契約が終わったというのを聞き付けて…
 
H:あー、そうだそうだ。
 
惣:それのレコーディングに、また入っていくんですよ。要するに、『エコー・ド・ミハル』が出たりしてくるんですが、"COME★BACK"という。
 
H:ラップだ。
 
惣:細野の『COME★BACK』というのが1987年の春、4月25日にリリースされます。この時点で完全に細野さんはノンスタじゃないんですよ。
 
H:(笑)
 
惣:僕は寝耳に水で、ショックっていうか。
 
H:そうだったんだ(笑)
 
惣:あっという間に2年が終わり、Sixtyレコードで『COME★BACK』してると。
 
H:(笑)
 
惣:聞いてないよ!って僕はよっぽど思ったらしくて、その翌月1987年の5月8日に「キーボードスペシャル」という本が当時あったんですけど、細野さんと対談するんですよね。これ憶えてなかった。
 
H:うん。
 
惣:細野さんに鈴木惣一朗が訊く、と。その時のタイトルが「歴史は早く次に行ってほしい」って書いてある。
 
H:あ、そう(笑)
 
惣:えー!みたいな(笑)その時の自分の気持ちを今思い返しますけど、たぶん愕然としたんじゃないかな、みたいな。
 
H:(笑)
 
惣:でも音楽業界は厳しい世界だな、と。この時に知ったという。
 
H:全然そんなこと考えてなかったけどね。
 
惣:これでノンスタンダードの2年にもわたる歴史はおしまいです。
 
H:お疲れ様です。話聞いてるだけで疲れちゃった。
 
惣:お疲れ様でした。
 
H:いやいや、本当に大変だった…
 
惣:ラジオではこの一部を流すと思いますが、ボックスにはすべて入れますから。
 
H:ああ、そうなんですか。
 
惣:1文字も漏らさず。みんな知りたいと思うので。…ということで岡田くん、大丈夫?
 
O:…何がですか(笑)
 
惣:はい。じゃあおしまい。お疲れさまでした。
 
H:またね、うん。
 
 
 
Pasio - World Standard
 (from『Double Happiness』)